平成9年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(大江康弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 46番大江康弘君。
 〔大江康弘君、登壇〕(拍手)
○大江康弘君 実は、今回は全く質問の予定がございませんでした。下川先生からも、「もう五期にもなって一年に二回もするというのは、おまえも情けないやつやな」、こんなおしかりも受けながら、途中でやめようかなということも考えたわけでありますけれども、むしろこの議政壇上に送り出してくれたのが当局の皆さんでありまして、当局の皆さんがやれやれと言うのであれば、その期待にこたえるのも政治家の責任ではないかなという思いもいたします。同時に、時期的にまさに今議会は、二十年、和歌山県政のためにご苦労をいただきました仮谷前知事のいわば追悼議会という位置づけになろうかなとも思います。二十年の万感の思いを込めながら、また仮谷前知事が西口現知事に託したいろんな思いにはせながらも、今の時代の流れの中で、きょう一番目に質問をさせていただきますが、今ほども尾崎要二先生が段々と細部にわたって質問をされ、当局も答えたわけでありますけれども、今から私がこの不適正支出に関して申し上げることは、一小松原の論理なのか、あるいは一部の県民、県外のこの和歌山県の実情を知らない人たちの論理なのか、また物言わぬ心ある多くの県民の皆さんの論理なのか、こういうことに思いをはせながら、不適正支出の問題について、以下ご質問させていただきたいと思います。
 どうも最近、県庁に来ても、県の出先機関を回ってみても、県の職員の皆さんの覇気のない空気、県事務所へ行ってもそうでありますし、県庁へ行ってもそうでありますが、何か生気を失った重苦しい空気というのは、知事さん、一体どこから出てきていると思うんですか。
 副知事の──副知事は何と言ったかな、山下さん──東京から来た人はすぐに名前がわからんので、山下副知事が、今、胸を張って、ああした、こうした、そういうことを尾崎議員の質問に関して答えておりましたけれども。和歌山県庁というのは、まさに県下五十市町村の自治体の権威者になるべきである。また、そういう位置づけである。その県庁が、今、時のあらしか何か知りませんけれども、このオンブズマンというものがまさに時代の申し子のような位置づけで、まあ私に言わしめれば、このオンブズマンというのはまさに敵失便乗体質といいましょうか、そういう正義感を振りかざして物を申してきておる。私は、大変不愉快に思う一人であります。オンブズマンなんかというものがこんなに時代の申し子になるんだったら、私はむしろダッコマンというのをつくってやろう。ダッコマンをつくって、県政のために頑張ってくれている皆さんを本当に心から、まさに母親が子供を慈しみ、愛して抱くがごとく、そういう団体を一回つくってやろうかなと、今思っておるわけであります。
 今までいわゆる不適正支出と言われたこの総額十四億余りになんなんとする金額というのは、知事さん、本当に県勢の発展にとってむだだったんですか。今、我々が現在ここにおるということ、今和歌山県が現実にずっと発展をしていっているということ自体が、言われるところのそういう不適正支出の予算も含まれておったんではないわけですか。今、私は、心ある県民の皆さんということを申し上げましたけれども、この部分の中で大変誤解が生まれておる。それは何か。最近の世論というのは、いわゆる世論操作といいまして、本当に底辺の住民の皆さんからほうふつと沸き起こってきたような世論ではない。マスコミの皆さんや一部の、何を意図としているのかわかりませんけれども、そういう人たちが意識的に醸し出しておる世論ではないかなと。それに慌てふためいて、おろおろしている姿を目の当たりにして見ておりますと、大変情けない思いをする一人であります。
 私は、今回のこの不適正支出という言葉自体が大変気に入らないわけでありますけれども、やはり言葉がなければ、この不適正支出ということしか当てはまらなければ──今、処分を決めたとかなんとかと。知事さんなんか、減給半分ですね。知事、これ生活やっていけますか。給料を半分に減らされて、しかも十年間でって。きょうは職員の皆さんも後ろでおられますし、部長の皆さんもおられますけれども、私が職員だったら県を訴えます。こんなこと、幹部の皆さん全員一致で決めたんだということを言われておりますけれども、もし私がそういう管理職の立場であって、今負担を求められたら、私は県を訴えます。こんな理不尽なことはない。
 ですから、今、副知事が胸を張って、処分をしただとか、いろんなことをこの四カ月にやったって、こんなことを短時日の間で──今まで県政がずっと流れてきたことの総括も含まれているわけでしょう。そういう総括に含まれてきた中での一部の不適正のことについて、わずか四カ月でこういう処分を決めたということに関して、非常に私は不満に思う一人であります。それだけに、処分というこの言葉の持つ重み、県民に誤解を与えていないかということ。職員個人が何か私的のために、何か自分個人のために書類を改ざんして、そしてお金をつくり上げてポケットへ入れたんではないかというようなとられ方をされておることも事実であります。こういう誤解を本当に解いていって、そして今までの支出をしてきたことが──聞けば、今、部長職で一年間の交際費が二十万だという。皆さん、お互いの常識、通常の観念の中で、和歌山県行政のトップである各部の部長が年間二十万の交際費でやれというところに無理があるんであって、今まであなた方がそういうことをきちっと、要るものは要る、要らないものは要らない、やっぱりこれは大事だな、こういうことをきちっとしなかったからこういう結果を生んだわけでしょう。何も、不適正の金額すべてが本当に悪かったというんではない。そして今県民が誤解をしているのは、その点でしょう。そういう負担を各等級ごとに十年間でやっていく、そのことだけで果たして問題がすべて解決したと言えるのかどうか。私は、この九月十七日に発表されたことに関して、根本的な解決ということは一切明記されておらないと思う一人であります。
 今申し上げた段々の事柄について、知事は、この和歌山県をどうしていくかと、自分が信頼した職員、それぞれの部や課が円滑に動けるように政策や施策に合った環境づくりをしてやるのが務めではないか、そしてそのことに対して県民に理解を求める、これも知事の仕事であろうと思うわけであります。不適正支出すべて悪、そして不適正支出関与者すべて処分、こんなことが今後慣例となって繰り返されていくということになれば、県民にとってこれほど不幸なことはないわけであります。
 この十七日に発表された処分内容は処分内容といたしましても、もう少し根本的な、西洋医学で言う対症療法ではなくて根本の問題は何なのかということを県民の皆さんに心を開いて知事が訴えるべきである。その中でどうしていったらいいのかということを、来年度の予算編成を前にして真剣に庁内で討議をしていただきたいと思います。
 そして、幹部の皆さんがご負担になる金額の中で、もし議会の中で関係がある部分だったら、私に限ってその補償をいたしますので。余り幹部の皆さんばかりに負担をされたら、我々物が言いにくくなる。やはり議会との関連のこともあるんですから、私は議会が関係がないということにはならないと思う一人であります。今回の十四億円余の中で関係がなければいいですよ。関係があるんだったら、そのことはきちっと議会に示していただくべきであるし、我々議会は当然、議会の権威としてどう対処するのかということを受けとめていかなければいけない問題でありますから、この点もひとつ、今後オンブズマンなんかに指摘されて、あのときこんなことがあったじゃないかということを言われないうちに調査もしておいていただきたいと思います。当然、議会の同志や同僚の皆さんも、この件に関しては決して逃げるような姿勢は、私と同様持っておらないと思います。ひとつその点、我々議会も、あらぬ疑いがかけられる前に調査をしていただけるのであればしていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。
 次に、土木行政についてご質問をさせていただきます。
 一番目のこの問題は、早く言えば、東京から来ていただいている部長以下皆さん、もう帰ってくださいよ、大変ご苦労さんでした、そういうことであります。私は、自治体の組織に参画をしたことがない一人でありますから、余り組織員づらして申し上げるのも僣越と思いますけれども、公務員の組織というのはなぜ時には硬直化したり、あるいは今回のこんなような状態が起こったときに右往左往するのかと言ったら、それは民間と違って日ごろから競争の原理が働いておらないからなんです。競争の原理が働かないから、当然公務員の組織というのはだんだん何か硬直化していく、そのために我々議会が存在するという、ある一面の存在感を思うわけであります。この硬直化しやすい県の組織の中、あるいは公務員の組織の中で唯一やる気を起こすのは何かと言ったら、私はポストの問題ではないかと思うんです。大学を出て、あるいは高校を出て、短大を出て、夢はせて和歌山県庁に入ってきた。和歌山県庁へ入ってきてだれしも思うのは、まず和歌山県のためになりたい。これは、心の中で緊張感を持って思うことであります。そして、年を重ねていくうちに、限られたポストに向かって自分もなりたいな、自分もあのいすに座ってみたいなと思うのは、これは人間の素直な気持ちではないかなと思います。
 戦後五十二年、お互いの地域はよくなったんです。情報網も発達した、交通手段も発達した、和歌山県が年々歳々小さくなっていっているんです。小さくなっていっているというのは、距離感ですよ。今、東京へでも一時間半あったらここから行けるわけなんです。そういう時代に、今、東京の本省の方から和歌山県に出向してきておる──出向してきていただいておる。松本先生に、きょうはおまえ謙虚になれよと言われたんです。尾崎先生みたいに謙虚になれと。私の謙虚の尺度というのはほかの人と違いますので、少し謙虚さはずれますけれども。今、東京から来ていただいておる本省の人がどれだけかと言いましたら、自治省から一名、大蔵省一名、通産省一名、厚生省二名、建設省五名。もう一度言います。建設省五名、運輸省一名。これ、何で五人も土木部に国から来てもらわなければいけない理由が今どきあるんですか。
 土木というのは、後でまた質問しますが、土木の技術屋さんの位置づけは事務屋さんの位置づけよりも格差があるわけなんです。今、和歌山県庁の知事部局で一般事務職が千九百九十人、技術職が千七百五十八人、合計で三千七百四十八人。そして、この中で部長職では事務が十人、技術が二人、次長で事務が二十四人、技術が八人、そして課長職以上では事務が八十八人で技術が六十四人となっておりますけれども、部長、次長のポストの格差を見ても大変な開きがあるのではないか。こういうところに持ってきて、こんな不適正支出等々でいろんなことがあったら、まさにやる気をなくす大きな相乗効果を──効果というわけではありませんけれども、そういうものを起こさせるわけであります。さすれば民間のように、技術職のポストをどうしてもふやすことができないというのであれば給料面でバランスをとってやる。これは、現実に民間がやっておることなんです。おまえはポストが欲しいのか、給料が欲しいのか。いや、おれはポストが欲しい。そしたら、給料はこれだけだよ。私は、ポストは要らない。そしたら給料は上げてやる。今、こういうことで大手企業の民間というのはやる気を起こさせているということを先般聞きました。公務員というのは税金を預かってその中で給料をいただいているわけですから、そういうことは極端には無理としても、この事務職と技術職との格差から来るいろんなひずみというのは、表面に出てこなくても水面下でいろいろ起こっているように思います。
 そこで、よその部局よりも多い土木部、これは本省から来るメリットというのは一体どこにあるのか教えていただきたいと思います。そして、なぜ突出してこれだけ土木部に東京から来ていただいている人が多いのか。
 実はおかしいなと思ったのは、過去に土木部長で座ったある方が、この和歌山県をもって退職をしたんです。和歌山県をもって退職して、後から聞いたら、わずか二年しかあの部長の席に座っておらないのに、和歌山県が退職金三千数百万円を払った。私に言わせれば、まさにこんなのが不適正支出なんです。何で、二年しか和歌山県におらなかった人が和歌山県で退職したら我が和歌山県が税金から退職金を見なければいけないのか。皆さん、こんな不条理なことを国が決めておるわけなんです。この間、人事課長を呼んで聞いたら、人事課長が、その逆もあると言う。逆もあるんだったら、戦後和歌山県の職員が中央省庁へ行って退職した例を出しみろと言ったら、一人もありませんと言うんです。こんな不条理なことが今どきまかり通っているということ自体、私は県の職員のやる気をなくさせておる大きな原因の一つであると思うわけであります。
 それだけに、私はこういう退職金制度を含めて、今後知事がもう少し──そこから先は、知事は任命権者であるし人事権者でありますから、余り生意気なことを言って知事ににらまれたら、我々は蛇ににらまれたカエルのような存在ですから、ここでしか物をよう言いませんけれども。山下副知事の場合は、我々──というよりも、私も議会で同意した一人であります。それだけに、副知事の場合は議会の意思というものが反映できる。いわゆる賛成か反対かというチャンスを与えてくれる。しかし、このひな壇に登っている東京から来られておる部長さんには、我々議会には少なくともその権限がないわけであります。
 かつて、アメリカの第五代大統領モンローというのが、一八二三年にモンロー主義というのを宣言した。このモンロー主義というのは一体何なのか。それは、アメリカの内にあるものをもっと大事にせよ、今アメリカは、ヨーロッパといろいろ交流してやっていくだけの時間的にもお金も余裕がない。人的にももっと内にあるものを大事にしていけという保護主義の制度であります。そのモンロー主義でアメリカが立ち直ったという歴史のひもを解いてみたとき、我が和歌山県もモンロー主義ではないですけれども、ウエストイズム、西口イズム、こういうものを押し出して、もっと身内の職員を大事にしてやる、もっと身内の職員にやる気を起こさす、こういうことを日ごろの中でもう少し考えてやってもらえないかなということをお願いしておきたいと思います。
 次に、公共事業の問題であります。
 今、公共事業についてはいろいろと問題が多く、国民注視の中であります。和歌山県にはいろいろ基幹産業がありますけれども、このおくれた和歌山県、これから発展をさせていかなければならない和歌山県にとって土木建設業の位置づけは、地場産業としての位置づけを超えた基幹産業と言ってもいいぐらいの位置づけではないかと思うんです。
 調べましたら、和歌山県の入札に参加をしておる業者数は今二千八百八です。この二千八百八の従業員数は三万五千七百十四名。これは、和歌山県のいろんな事業に携わる人の一〇%であります。これだけの数字を見ても、まさに基幹産業という位置づけができるんです。農業や漁業が県の助成の中で仕事をやっているのと同様に、土木建設業が基幹産業のような位置づけをされるのであれば、公共事業のとらえ方というのをもう少し県が変えていったらいいんではないか。
 公共事業の定義というのは一体何ですか。今、ここで私は質問をしておきます。公共事業というのは、ある業者が和歌山県の仕事をとった、その業者がガソリン一リットルでも地元の石油屋で買う、従業員が弁当一つ、あるいは昼休みにジュース一本を近所の店で買ってやる、これが公共事業の本来の目的だと思うんです。ただ単に、とった一業者がもうかるだけ、あるいは仕事ができたらそれでいい、そんなことではなくて、税金を使って行う公共事業の定義というのは、はしの一本に至るまで地域が潤わなければ公共事業の定義にはなっていかない。
 そういうことを考えたときに、今の和歌山県の土木行政の業者指導のあり方、そして次に申し上げる入札のあり方、こういうことが本当に言われるところの基幹産業である土木建設業者を育成しておるのか。和歌山県は、何か物を言われれば方向がすぐ建設省の方に向いていく。国の方に向いていく。国のご意向は、建設省のご意向は、こんなお伺いばかり立てておると私は思うのであります。全国四十七都道府県ありますけれども、和歌山県には和歌山県の実情があるわけなんです。和歌山県には和歌山県の実情があるならば、和歌山県には和歌山県のやり方があってしかるべきであります。だから私は、わざわざ東京の本省の人が部長に来ていただかなくてもいいのではないかということを申し上げておるわけであります。
 何もすべてを否定するわけではありませんけれども、もう少し和歌山県の実情というものを──土木部長、あなたも何年もおるわけでないんだったら、もっとほかの部長さんよりもしっかり県内を回りなさいよ。この間からの、この質問のいろいろ打ち合わせ──と言ったら語弊がありますけれども、そういう議事上のいろんな段取りの中で答弁のいろんなことを聞きに来てくれたときに、部長で来なかったのは土木部長、あなただけですよ。どこが偉いのか知らんですけれども。総務部長や公室長や、みんな来てくれた。土木部長、来んのは僕だけかもわかりません。ほかの議員さんとこだったら行くかもわかりませんけれども。そういう態度で和歌山県の土木行政を預かるというところに問題があると私は思うんです。
 今の土木行政の公共事業のとらえ方について疑問に思う点で、入札予定価格というのがありますね。入札予定価格というのがあって、そして制限価格というのがある。工事が出て、その工事を目いっぱいの額でとるというのを制限価格というんですけれども、例えば入札状況を調べてみたら、一億円の工事を八千万円弱で落としておる場合があるんです。こんな余裕のないとり方をして、果たしていい仕事ができるんだろうか。もっと建設業や土木業、あるいは公共事業というものを理解してくれて、地域が満遍なく潤っていくということを本当に考えてくれるんであれば、この制限価格との格差をもっと縮めてやるべきだ、もっと余裕のある仕事をさせてやるべきだ。それが、それぞれの公共事業が地域に潤っていく一つの手段ではないかなと思うんですけれども、この点についてもお伺いをしたいと思います。今後、土木建設業を和歌山県の基幹産業としてどのように育て発展させていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。
 最後に、串本フェリーの問題についてであります。
 先般九月十六日に、この十月一日から県の関係、町の関係、あるいは工事関係の車両の乗船を拒否するということを新聞で見ました。過日、仮谷前知事さんの県民葬のときにも、たしか平成七年二月であったと思いますけれども、仮谷前知事さんが生まれ故郷の串本町に最後に残された大きな仕事であるこの大島架橋の、あの起工式のビデオが出ておりました。大島架橋は、須江、樫野、この大島全体に住まれる人々にとっては悲願の本島との陸路であり、そういう意味において、仮谷前知事さんは亡くなられる前に本当にいい仕事をされたな、こういう感慨を持ったんですけれども、ここに来て仮谷前知事さんの、あの地元に対する大きな仕事がとんざをするんではないか、そういうような状態が先般から起こっているわけであります。
 この経過を聞きましても、誠意のない県の態度、町にすべて任せっ切りで、十一回会議を持ったといっても、二十五年間、公的な輸送機関としてその責任を果たしてきてくれたこのフェリー会社に対して本当に心のない対応しかできておらないということに、私は怒りを込めて申し上げたいのであります。
 土木部長も担当の道路建設課長も、現場に一度も足を運ばない、交渉者と一度も相まみえない、すべて地元の出先の串本事務所に任せっ切りで今日まで来たわけであります。あと二年後に竣工であります。そういう中で今回起こったこの問題に対して、県は一体どういうふうに責任を感じておられるのか。
 あの串本フェリーが、二十五年間、県の補助金一円もなしに、途中二億円の巨費を投じて現在就航させておるフェリーを尾道で進水させた。そのときも、県や公的機関からの補助金はない。まあ民間が勝手に車を乗せたり人を乗せたりしておるんだから、それは何も県の責任ではないということを言われるのかどうかわかりませんけれども、これは、例えば一般道路の用地交渉に行くのとわけが違うのです。あそこに従業しておる十人の皆さんが、橋ができたその日からたちまち職を失うということであります。今なぜこういう事態に陥ったかということは、新聞やその他で言われておるような金額の開きが大きいとか、決してそんなんではないんです。誠意のない県の態度、今まで十一回交渉してきても、県の代表者は何ひとつ物を言わず町に任せっ切り、こういう態度に業を煮やして今回の挙に出たわけであります。
 十月一日と言えばもう間近でありますけれども、今後あと数少ない日程の中で県は一体どうされるんですか。それを答えてください。そして、こういうことになるまでなぜ放置をしておったのか、それも答えてください。それと、今後も県はこのような態度で交渉に臨んでいくのか。
 聞けば、本四連絡橋というのができます。今回、補償対象になった規定というのは、本四連絡橋に準じた対処の仕方をしておるということを聞きました。しかし当局の皆さん、あなた方がいろいろ用地交渉だとか県の買収に行って──県は公的な不動産鑑定士を持っているわけですね。その不動産鑑定士の方が出したその価格で県が土地を買えた例があったら教えてください。今日まで二十五年間、細々とでありますけれども、離島と本島との間を一生懸命公的な足として活躍してくれたフェリー会社に対して今までの仕打ちは余りにもひどいということを申し上げずにはおられません。どうかひとつ、この対応も含めてご答弁をいただきたいと思います。
 今、三つの質問をさせていただきました。これは私個人の意見でありますが、最近、知事さんを見ておると、本当に我々県民の声が直接知事さんに伝わっておるのかな、議会の声が知事さんに伝わっておるのかな、どこかでとまっておるのではないかな、そんなことを心配する一人であります。何でもかんでも知事さんのところまで我々言うつもりもありませんし、そこはそれで、だれかがどこかで、それぞれの役割の中で整理をしてやらなければいけないことでありますけれども、もう少し我々の立場に立っていただけたらなということを最後にご要望しておきまして、私の質問といたします。
 ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの大江康弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 大江議員にお答えをいたします。
 不適正支出の事後処理などの問題であります。
 ちょっと事務当局で用意した答弁では大江議員のご質問には答えにならんと思いますから、この場でお答えをさせていただきます。
 大変率直なご意見がございまして、職員の立場に立ってのご意見だとも思いますし、私もごもっともと思う点も多々ございます。一番心配をいたしておりますのは、職員の意欲が減退しないように、そのことは私としても十分考えていかなきゃならんと思っております。
 ただしかし、先ほど尾崎議員にもお答えを申し上げましたけれども、今、国も地方も大きな改革の時期である、そういうふうな大きな歴史の転換期の中にあって、正しくないと思うものは思い切ってそれを正していくという、その勇気もまた必要であります。ですから、先ほどご指摘のございましたような予算編成上の問題があるとすれば、それは思い切って予算編成の上で直していかなければなりませんし、あるいは正しくない執行状況があれば、それも是正をしていかなければならん。そのことについては勇気を持ってやっていかなければならん。たまたまそのときにその立場にある者が、自分自身の中にはいろんな思いがあるといたしましても、その立場にある者が勇気を持って前進をすることが大変大事だと思いますので、職員の皆さんにも、そういう意味でその時代の認識という問題意識をしっかりと持っていただく努力を私もしていきたいと。決して職員の意欲がなくなったりすることのないようにこれからも努めていきたい。調査委員会の調査段階でも、そのことを強く委員会の方へ私からも要請をしておったところでございます。
 それから、もう一つ、土木行政などについてであります。
 本省からの部課長などの職員を受け入れるメリットがあるのかということであります。
 現在の段階からいたしまして、国から職員を受け入れることなどについては、その職員の持っている専門知識、あるいは豊富な経験などがその職場の活性化のためにも、また本県の職員との交流によって新しい血を導入するという意味では意義があろうと思いますし、今日までも県政の上に貢献をしてきてもらっていると思っております。また、離任の後にも本県のよき理解者となって助言をいただく等、国の関係なども緊密に築いていくという一面もあろうかと思います。ただしかし、議員ご指摘のように、本県に出向された部課長さんなど、本県に来た以上は本県の職員以上に県を思い努力をしていただかなければならないと思いますし、そのことは私の方からも強く申し上げておるところであります。
 土木の場合に、道路、河川、港湾、そういうふうな専門分野がございまして、そういうふうなところに国からの人材を派遣してもらっているのが実情でありますけれども、最近では、砂防課長であるとか都市計画課長は本省からの出向をやめて本県の職員と交代をいたしております。ご指摘の点は、十分配意をしてやってまいりたいと思います。
 知事に意見が届かないのではないかというご指摘もございました。「開かれた県政」をモットーとしておりますので、これからも努力をしてまいりたいと思います。
 以上であります。
○議長(木下秀男君) 総務部長中山次郎君。
 〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 不適正支出の事後処理についての三点、土木行政の二点についてお答え申し上げます。
 まず、今までの支出はむだか、また県民に誤解を与えていないかとのご質問でございますが、今回の調査により明らかになった不適正執行金の多くは、執行時、組織の運営上必要であった経費に充てられたものと考えてございます。交際費や食糧費で執行すべきところ、旅費の科目で支出し、慶弔費や飲食費に充てるなど、その事務処理に問題があったため、既に職員に支給されている旅費も含め、不適正執行金の全額を県へ返還することとしたものでございます。したがいまして、不適正執行金がむだな執行であり、すべてを否定するというものではなく、必要な経費であると考え執行したものでございますが、その執行方法等に適正を欠いたため返還するものでございます。
 また、議員が誤解を与えているのではないかと言われております、職員個人が私的に流用する等の行為はなかったものと確信してございます。なお、調査方法につきましても、できる限り短期間に終えるよう県内部の独自調査といたしましたが、各所属における徹底した調査の後、予算執行調査改善委員会が再度確認調査を行う等、二重三重のチェックを行っており、厳正な調査が行われたものと考えてございます。
 続きまして、今後の予算計上の仕方についてでございます。
 今回の問題を引き起こした要因の一つとして、予算と実態の間に乖離が存在したことが考えられます。このため、今後の予算編成に当たっては、今回の調査結果を踏まえて、交際費、備品購入費、会議等の負担金について、県議会初め県民の皆様のご理解をいただきながら、より実態に即した予算措置を行い、使途目的に沿った執行を徹底するとともに、交際費等にあっては統一的な執行基準の策定により予算執行の適正化を図ってまいる所存でございます。
 また、予算の執行段階におきましても、予算の地方機関への計画的な配当、予算流用制度の適切な活用、資金前渡制度の充実など、今回の問題発生の背景、要因を踏まえた改善策にのっとり、より実態に即した適正な執行に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、過去、本省から来た人が本県で退職したときにその退職金を全額県が支払ったというが、それはなぜかというご質問でございます。
 国家公務員が引き続いて県職員となり本県で退職した場合の退職手当については、県職員の退職手当に関する条例の規定により、国家公務員の期間を含めて本県で支給することとなってございます。一方、本県職員が国家公務員となり退職した場合は、国家公務員退職手当法の規定により国が退職手当を支給することとなる相互通算の規定となってございます。こうした規定は人事交流が円滑に行えるよう設けられたものでありますので、その趣旨をご理解いただきたいと思います。
 次に、今後、事務職と技術職との管理職ポストの格差是正はどうするのかというご質問でございます。
 職員の昇任につきましては、事務職、技術職の区別なく同様の考え方で行っているところであり、管理職の登用についても年々改善を図っているところでございます。
 管理職のポストの数については、事務職は一般行政分野すべてを対象とするのに対しまして、技術職の対象はそれぞれの専門分野に限られており、その分野においてどのような職制やポストが必要であるかを勘案し、適材適所の観点から職員を配置しているところでありますが、今後とも議員ご指摘のことも十分踏まえた人事管理に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 土木部長長沢小太郎君。
 〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 大江議員のご質問にお答えいたします。
 まず、土木行政についてでございます。
 公共事業の定義は何かということでございますが、公共施設の整備のために実施する公共投資は、地域に広く購買力を高め、活力を与え、地域経済の安定のみならず、県全体の活性化に大きな役割を果たしております。また、道路整備による工業製品や農産物などの輸送範囲の拡大等のように、地域経済の将来の発展基盤を構築するためにも必要不可欠なものでございます。本県においても、交通基盤の整備、潤いのある県土づくり、災害に強い県土づくり等の施策を推進することにより、社会経済に貢献できるものと考えております。
 次に、なぜ入札予定価格と制限価格との差が大きいのかというご質問ですが、公共工事の発注に当たっては、原価割れ受注の防止を図ることにより公共工事の適正な施行を確保し、また建設業の経営基盤を確保するなどのため、低入札価格調査制度あるいは最低制限価格制度が採用されているところでございます。
 国の方では、低入札価格調査制度を採用してございます。この制度は、予定価格の三分の二から十分の八・五の範囲内で建設原価に相当する額を調査基準価格として、これを下回った入札があった場合に適正な工事の施行が可能かどうか調査し、入札の適否を判断するものであります。
 県においても、政府調達に関する協定に基づく一般競争入札においては低入札価格調査制度を採用しているところでありますが、これ以外は最低制限価格制度を採用しております。この制度は、あらかじめ定められた一定の基準価格を下回った入札があった場合に、その入札を失格として排除するものであります。県の最低制限価格は、工事の種類、規模などを勘案の上、設定されており、おおむね国の調査基準価格の範囲内でございます。
 次に、県内土木建設業を地場産業として育てられないのかというご質問でございます。
 本県における建設産業は、今や県内総生産の一〇・四%、また就業者数においても一〇・〇%を占めるに至っておりまして、これを基幹産業として認識し、その育成には最重点的に取り組んでいるところでございます。そのため、県発注工事においては、県内業者を優先するとともに、昨年より大規模な工事、また高度な技術を要する工事等で実施しております公募型指名競争入札においても、県内業者についてはその参加要件を緩和し、受注機会の拡大、確保に努めているところであります。また、近年の機械化や技術力の向上に対応すべく、各種研修会等を通じて技術者の育成に努めるとともに、さらに優秀な人材を確保するため、県建設業協会とタイアップし、新規学卒者の入職促進にも努めているところであります。
 今後とも、県内建設業者の育成については積極的に取り組んでまいる所存であります。
 串本フェリーの問題についてのご質問でございます。
 なぜ今まで放置していたのか、どこが窓口となるかというご質問でございますが、大島架橋事業については、串本フェリーが公共輸送機関として地域に貢献してきたことを十分認識しており、このため架橋に伴う影響を緩和するための助成措置を講ずることとしております。これまで、地元事情に精通した串本町が窓口となり、平成七年から十一回にわたる交渉の場を持ってまいりましたが、対象が航路事業という特殊なケースであるため、金額の面で合意が得られていない状況にあります。
 この問題についてどう県が考えているのかというご質問ですが、県といたしましては、窓口である串本町とともに常に交渉の場に同席し、町に対し適宜助言、指導を行うなど、連携をとって交渉を進めてきておりますが、いまだ解決に至っておりません。この問題は地域住民に与える影響が大きいことから、早期に解決すべきものと認識してございます。
 今後の対応についてのご質問ですが、これについては金額に関する相違、従業員の再就職の問題に対して、県といたしましても、これまでの経過を十分に踏まえ、串本町初め地元の協力を得ながら、誠意を持って意思疎通を図りながら交渉を進め、本橋の完成までには解決できるよう努力してまいります。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(木下秀男君) 再質問がありませんので、以上で大江康弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(木下秀男君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時四十三分休憩
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