平成9年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(森本明雄議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時五分開議
○議長(町田 亘君) これより本日の会議を開きます。
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 【日程第一 議案第八十八号から議案第九十八号まで、及び報第一号から報第六号まで】
 【日程第二 一般質問】
○議長(町田 亘君) 日程第一、議案第八十八号から議案第九十八号まで、及び地方自治法第百七十九条の規定による知事専決処分報告報第一号から報第六号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 40番森本明雄君。
 〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 おはようございます。通告順に従い、順次質問を進めてまいります。
 最初に、携帯・自動車電話からの一一九番通報接続についてであります。
 生活やビジネスに便利と携帯電話は爆発的に普及し、本年三月末で加入が二千万台を超えました。携帯電話は、エリア内であればいつでもどこでもすぐに電話ができるという利点がある反面、一つの困った盲点があります。一一〇番通報はできても一一九番通報はつながらないところが十一県もあります。また、つながったとしても本来の消防本部の管轄外に通じてしまったりで、消防側が迅速に対応できないケースが相次いでいるのであります。
 例えば、「大清水に救急車をお願いします」「名古屋市緑区鳴海町の大清水ですか」「いいえ、豊橋市です」──携帯電話からの一一九番通報です。名古屋市と豊橋市では約七十キロメートルも離れています。
 一般電話からの一一九番通報を受け付ける市及び広域市町村の消防本部は、全国で九百二十五カ所、和歌山県内では二十一カ所、しかし携帯電話用の一一九番専用回線は、ほとんどの県で県庁所在地の消防本部にしか引かれていません。このため携帯電話からかけると、県内全域の一一九番通報は一つの市の消防本部に集中します。これとは別に、携帯電話は一一九番通報が全くできないところが和歌山県を含めて十一県、県庁所在地の消防本部にも専用回線が引かれていないからであります。事業者のNTTドコモは、県庁所在地における専用回線については各県と話し合いの上で引いてきたが、それから先の消防本部までの回線整備は義務範囲外という姿勢で、消防行政が絡んでいるだけに事業者だけでは解決できない問題とし、一方、消防庁は、各市町村の消防本部で整備してほしいのはやまやまだが、地方自治体だけが負担するのも無理があるとし、これといった決め手がなかったのが実情であります。
 こうした中、通信事業者、消防庁、消防関係機関と協議を進め、本年三月に都道府県を複数のブロックに分けて、各ブロックの代表消防本部が一たん通報を受けて、代表消防本部から所轄の消防本部に転送する方式を採用することを決定しました。そして、本年四月三十日、最終的には管轄消防本部が直結受信できるシステムとするが、当面は暫定措置として各県内で複数の代表消防本部による分散受信方式を採用することに決定しました。しかし、当方式の採用に当たっては、受信設備の改修、転送回線の整備に伴う経費負担の問題、及び採用に係る諸調整等の問題が生じ、関係機関の積極的な措置が強く望まれる等の趣旨の要望書が全国消防長会より事業者に提出されているところであります。
 携帯電話は、阪神・淡路大震災の際にも、機動性があり、その利点は緊急事態の対応に力を発揮します。それだけに、携帯電話の一一九番通報の盲点は早急に解消されなくてはならないと思います。まして、通話料の値下げなどで携帯電話の普及は今後さらに急増が見込まれるだけに、事業者や国、市町村とともに、県においてもさらに携帯電話の接続改善に取り組んでいただきたいのであります。県内における携帯電話の接続改善の計画内容、現時点での進捗状況、そして今後の県の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、放送大学についてであります。
 文部省に放送大学の全国化実現を要請していただきたい旨の質問を初めて行ったのは、昭和六十一年六月定例会でした。文部省の計画がなかなかはかどらないので、全国化までの暫定措置としてビデオによる学習センターの設置を求めました。それに対し、「生涯学習機会の提供の一環として放送大学ビデオ教材の整備について今後研究をしてまいりたい」と答弁をいただいたのが平成二年十二月定例会でした。昨年六月定例会で、公明県議団の新田議員の放送大学地域学習センターの設置についての質問に対し、「設置に向けて検討を進めてまいる」との答弁がありました。そして、本年度の当初予算に放送大学地域学習センターの設置事業費が計上されたところであります。
 昭和五十九年、関東平野においてテレビとFMラジオによる放送が開始されてから十三年、放送大学は、いつでも、だれでも気軽に大学の講義を受けられる画期的な制度であります。これまでにも一万人近い卒業生を輩出、現在も約六万五千人の学生が学んでおり、うち大学卒業資格取得を目指す全科履修生は約四〇%、なお放送大学を卒業して既存の大学院に百二十一名が進学をしているところであります。現在、放送授業を受けられる地域は、関東一都四県と長野・山梨両県の一部地域などで、それ以外の地域には地域学習センターの設置が進んでおり、本年度中に全国で三十六カ所がオープンの予定で、未設置県は和歌山県など四県となります。
 文部省によると、放送の全国化は通信衛星(CS)のデジタル放送を利用するもので、来年一月より放送開始予定と聞いています。これまで次期放送衛星(BS4)の後発機による全国化を目指していましたが、打ち上げ予定は平成十二年ごろに延期されることで、CSによる放送開始に踏み切ったものであります。全国化されると、受講生は約十万人と予測されています。放送の全国化に伴い、次の課題となるのがスクーリングを行う拠点の問題であります。放送大学だけではありませんが、通信制の大学を卒業するためには面接授業として一定の単位を修得する必要があります。これまで各地に整備を進められてきた地域学習センターは、ビデオテープ等を活用した学習の場であったわけでありますが、今後、全国化に伴って面接授業を行う場としての役割が大変大きくなると思います。
 現在、各地に整備されている地域学習センターはいずれも規模が小さく、面接授業を十分に行うということは大変難しいようであります。したがって、全科履修生つまり卒業を目的として勉強している全科履修生を受け入れて一定の面接授業もできるようにするためには、そのための人的、物的な整備が必要となってまいります。その際には、既存の大学等の機関の協力を十分に得る必要があります。文部省では、平成十年度から四年間を目途にして、すべての学習センターで全科履修生の受け入れができるよう体制を整えたい計画であります。
 本年六月に送付していただいた平成九年度和歌山大学総合大学化促進期成同盟会総会の資料の「和歌山大学生涯教育研究センター設置構想について」、その中に和歌山県に設置が予定されている放送大学学習センターとの連携事業の一項目が入っています。また、県が策定した平成十年度政府予算等に関する重点事項説明書に「放送大学地域学習センターの設置について」が新規項目として入りました。これで、放送大学地域学習センターも具体的に開設に向かって進み出したものと思います。
 最初に、地域学習センターの開設予定は平成十年度と聞いていますが、全国で最終の開設県になったその理由について、また現時点での大学等の協力についての進捗状況、さらに確実な開設時期、センターの場所、規模、学生の種類などについてお伺いをいたします。
 二つ目に、今日まで再三要望してきた問題でありますが、全国化に伴い、来年度中にも全科履修生の募集が始まるものと思います。しかし、大学卒業資格の取得ができない選科や科目履修生のみしか受け入れられない状況では、身近に大学の少ない県民は相も変わらず県内での高等教育受講の機会に恵まれないままであります。しかも、ビデオを使って学習する全国の地域学習センターでの受講は、卒業資格が取得できないことから伸び悩んでいると聞いています。したがって、現在その開設準備を進めている地域学習センターを学習センターに昇格させ、当然、スクーリングの実施、職員の充実などを図らなければなりません。レベルの高い教育、学習の機会を広く県民に提供すべきだと思いますが、所見と今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、ダイオキシン類発生防止対策等についてであります。
 一般廃棄物の処理は市町村の固有事務であります。しかし、ごみ焼却施設からのダイオキシン類の排出に対する削減対策は、一市町村で対応し切れる問題ではありません。厚生省が策定したガイドラインには都道府県の役割が示されており、非常に重要な立場であります。そうした観点から質問を進めてまいりたいと思います。
 ダイオキシン類は自然界には存在しない化学物質で、人類がつくり出した最強、最悪の毒物とも言われております。有機塩素化合物の生産過程や廃棄物の焼却過程等で非意図的に生成され、燃焼排ガスや化学物質の不純物として一般環境中に排出されています。その毒性については、動物実験において急性毒性、慢性毒性、発がん性、生殖毒性、免疫毒性等の広範囲にわたる毒性影響が報告されてきました。ダイオキシン類の人間への影響評価については、世界保健機関の国際がん研究機関が本年二月四日から十一日かけて行ったワーキンググループの検討結果として、発がん性について、これまでの「可能性がある」から「ある」に変更し、ダイオキシン類の発がん性を明確に認めました。環境庁では、ダイオキシンリスク評価検討会において、国際がん研究機関の見解を現在検討していると聞いています。
 厚生省では、省に設置した研究班において、耐容一日摂取量──TDIですが──その設定に当たって、疫学データについても広範な検討を行い、動物実験との整合性等も考慮した上で、ダイオキシン類の高濃度暴露と発がん性の関係は無視できないと評価した上で、TDIを体重一キログラム当たり一日十ピコグラムと定めました。日本においても、一九八〇年代からごみの焼却場を中心にして発生してきていると、その人体への影響等が非常に心配されてきました。また、十五、六年前になりますが、ベトナム戦争の枯れ葉剤の中にもダイオキシンが入っていて、ベトナムの住民、アメリカの兵隊さんの人体にも影響が出ているということで大変な問題になりました。毒性がどれだけ大変な影響を与えているのかということについてはいろいろと発表されていますが、研究も日本ではまだ途中なのかなと感じています。地上最強の猛毒化学物質サリンの二倍、DDTの百万倍とか言われています。その発生源については、約八割がごみ焼却からと言われています。
 昨年七月、厚生省では、都道府県あてに市町村が設置するごみ焼却施設の維持管理の状況の一環として、ダイオキシンの測定の実施について通知をしました。しかし市町村は、自分たちにそんな調査能力がないので民間に委託しました。だが、専門的な測定の業者は非常に少なく、またダイオキシンの測定に用いるガスマスについては、通常のガスマスでは測定できず、かなり高額なガスマスを用いなくてはいけない、さらに非常に高度な前処理が必要等々、したがって高額な測定料金を負担しています。さらに、サンプリングから分析まで一カ月程度を要しています。
 さて、総点検調査実施の結果については、本年五月末までに報告があったのは、全国で一千八百五十四施設のうち一千四百九十六施設と昨日報道されました。一千八百五十四施設というのは平成五年度の実績であります。今日までの測定報告を見てまいりますと、同じような炉を使用しながらダイオキシンの発生の値に大きく差があるものもあります。燃焼管理の方法がどうなっているのか、あるいは一酸化炭素の濃度が実際にどうなっているのか等々、さらに突っ込んで少しでも削減できる方向へヒントを得ることにおいて非常に貴重なデータと認識しています。できる限り多くのノウハウを引き出していただいて現状の改良に役立てていただきたいと思いますが、見解をお伺いいたします。
 そうした理由も含めて、未報告の施設に対し排出濃度の測定報告を求めていかなくてはなりませんが、いつまでに全施設の測定結果の報告がまとまるのか、お伺いいたします。
 また、県内焼却施設調査の信憑性についてどのように考えているのか、お伺いします。
 文部省では、ダイオキシンが発生するおそれがあるとして、公立学校の焼却炉によるごみ処理状況の全国調査を始め、六月中にも調査結果をまとめ、ダイオキシンの発生可能性があれば分別収集の徹底などを指導すると報道されました。埼玉県所沢市では、学校に設置されている焼却施設の運用を停止したところもあると聞きました。県教委は、学校等の教育現場におけるダイオキシン類の対応についてどこまで実態把握を行っているのか、お伺いいたします。
 次に、ごみ焼却施設のダイオキシンの排出濃度の測定の調査方法についてであります。
 ダイオキシンは、三百度ぐらいのときが一番よく排出されると言われています。すなわち、焼却炉の立ち上げ時や立ち下げ時にダイオキシン類の濃度が高くなるわけであります。しかし、今回の調査に当たって、排ガスの採取時点を焼却炉が八百度に達した時点、排ガス量や燃焼状態が安定した時点で採取をするようにとの指示がなされて出てきた数値がこの数値でありますので、一日の総排出量を推定するとさらに数値が高くなるものと思います。もちろん、施策を講じていく上では平常運転時においての比較をすることによって削減効果を見ていくというのは一つの方法だとは思いますが、正確に負荷量がどうかということになると、立ち上げ時、立ち下げ時においてどの程度排出しているかを把握する必要があるのではないかと思うのであります。見解をお伺いいたします。
 また、一つ一つの炉について、この炉はダイオキシンの排出量がどのくらいの炉なのかということを正確に把握した中で対応策をとらなければならないと思います。大きい施設の場合、焼却炉が一つでないと思います。今回の調査では平均して値を出すように指示が出されていると思いますので、一つ一つの炉についてどれだけのダイオキシンが排出されているのか的確に把握できないと思いますが、見解をお伺いいたします。
 ごみ焼却炉における焼却灰の処分は、市町村の共通の悩みであります。ごみ焼却炉から排出されるダイオキシン類の八割から九割が焼却灰の中に残っていることが指摘されています。電気集じん機やバグフィルターで捕捉されるダイオキシン含有量が多い飛散灰は、産業廃棄物処理法によって特別管理廃棄物として規制が強化されています。例えばコンクリートでもって固形化するなど、一定の処理を行った上で管理型処分場で埋立処分をすることになっています。なお、焼却灰に含まれるダイオキシン類を分解する溶融固化処理の技術開発が進み、既に実用化の段階に達していると思います。そして、スラグについては路盤材等としてリサイクルが可能で、安全な処理、最終処分場の延命にも効果があります。しかし、溶融固化処理を行う施設は、四月現在、全国で十七カ所しか設置されていません。県内各施設の実態と今後の対策についてお伺いをいたします。
 次に、作業員の健康問題についてであります。
 ダイオキシン類は、水に溶けなくて油に溶けやすい、体内の脂肪分の多い組織に蓄積され、よく排出されるのは母乳からだと言われています。環境庁には、ダイオキシン対策について有識者で構成する検討会があります。そのメンバーでもある摂南大学の宮田教授の調査によりますと、大阪の母乳汚染レベルは、ベトナム戦争当時、枯れ葉剤を大量に散布された南ベトナムのタイニン省の女性の母乳よりも倍近くもダイオキシン濃度が高い結果が出ているとのことであります。また、九州大学医療技術短期大学部の長山助教授の調査では、日本人の平均的な普通の生活をしている母親の母乳中、厚生省の研究班が決めたTDIの七倍から三十四倍という高さになっているということであります。こうしたことに対して厚生省では、母乳を採取して人体のダイオキシンの含有量を測定する初の全国的調査に乗り出すことを決めたようであります。
 その話は別といたしまして、ごみ焼却場の補修など、そういう仕事をされる方のダイオキシン摂取の濃度について、毛髪中のダイオキシン濃度が一般人の濃度と比較して約五倍の濃度であったことが、先ほどの宮田教授の調査の結果明らかになったようであります。平成五年に、こういった事業に特別の安全衛生管理要綱が定められ、県を通じて市町村への周知徹底に努めているとは思いますが、実態についてお伺いします。
 また、焼却施設における作業員の作業態様の実態等をよく調査の上、こういった有害物質等にさらされることのないよう、さらにこういった安全衛生管理上どういう手だてがあるか対策を進めなくてはならないと思いますが、お伺いいたします。
 本年一月に厚生省は、「ごみに係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」を作成いたしました。今後、これに基づいて具体的なダイオキシン類の発生防止対策を推進することになります。その中身を見ますと、新設の焼却炉においては欧米諸国並みの基準の〇・一ナノグラム、既設の焼却炉については恒久的──炉の型式等によって〇・五から五ナノグラム──な対策の推進、一定の施設──八十ナノグラム以上の施設については、緊急対策として政・省令ではない通達で、燃焼管理の徹底、施設の改善、施設の休廃止等の対策を講じるよう求めています。またガイドラインには、八十ナノグラムを超える施設については、飛灰中へのダイオキシンの移行をできるだけ少なくしていくために完全燃焼にできるだけ近づけていく、焼却灰にはそれでもダイオキシンが入ってくるので、できる限り高温で溶融するなどの無害化処理をする等々、さらに今後建設される焼却炉に対する国庫補助は原則として全連続炉のみとする、そして都道府県において広域化計画を策定し、小規模施設を集約化して計画的に広域化を図り、全連続炉による焼却及び灰の溶融固化等を推進するよう指導するとあります。
 厚生省は、平成二年にガイドラインを各焼却施設に対して出していますが、それは「技術的に実施可能な限りダイオキシン類の発生防止対策の推進」という内容であります。これは、技術的に可能でないならば、そのままでよいということと同じで、事実、現場ではほとんどの施設は徹底的な改善がなされないままに今日に至ったのが実情だと思います。今後、各施設ごとの状況に応じて対策が進められると思います。
 これは聞いた話ですが、岩手県久慈市にある久慈清掃センターでは、空気の安定供給などを通じて不完全燃焼の原因となる一酸化炭素の低減に取り組んだ結果、ダイオキシンの濃度は、調査時点の四百八十ナノグラムから四十三ナノグラムに低下したと言われています。また県内でも、湯浅の衛生センターごみ焼却場で、炉の電気集じん機の補修、ごみの燃焼温度を八百五十度以上の高温に保つなどの結果、九十九ナノグラムが十八ナノグラムに低下したと報道されていました。
 この一月に厚生省から示されたガイドラインは、当然達成できる、いわゆる現在の技術的に達成可能なレベル、もちろん現行の技術を最大限に駆使してということを前提に、炉の型式によって〇・一から五ナノグラムは達成できるであろうという考え方で示してきたものと思います。現実に五ナノグラム以下の施設は、三月末で全国で三百九十六施設、本県には一施設あります。今、市町村ではさまざまな方策を検討していると思います。施設の休廃に当たっては、近隣の市町村に一時的に処理を委託するような方法、あるいは施設の建てかえを早期に進めるなどありますが、ごみは毎日の生活から排出されるものであります。また、これを継続して処理していかなければ住民生活に支障を生じ、衛生上の問題も生じかねません。ごみ処理に大きな支障が生じることのないように対応しなくてはなりません。
 先ほど述べたように、ガイドラインは設備の休廃止を求めていますが、どちらかと言うと努力目標的な色合いが強く、法的拘束力はありません。しかし厚生省では、ダイオキシン類の排出抑制対策を講じるには規制的な措置の導入を必要と考え、まず、ごみを完全燃焼させてダイオキシンの発生を防ぐため、廃棄物を一定量ずつ燃焼室に投入する装置の設置を各焼却場に義務づける、次に、排出ガス処理設備内での合成を防ぐため、排ガス温度を摂氏二百度以下に冷却する装置の設置、三つには、ダイオキシンが付着したばいじんを除去するための能力の高い集じん装置の装着を義務づけるなどの各種の対策を打ち出しています。今後、生活環境審議会の専門委員会で、同省案をたたき台に規制の基準値などを定め、今夏にも省令を改正したい考えであります。
 一方、環境庁は、ダイオキシン類について大気汚染防止法の規制対象となる指定物質に組み入れることを決め、排出口でのダイオキシン類の抑制基準を設けて規制に踏み切る方針であります。そして、今夏にも政令の改正、秋には施行を目指す考えであります。規制対象については、焼却能力が一時間当たり二百キロを超えるもの、基準は新設で規模に応じ〇・一から五ナノグラム、既設では五年以内に一から十ナノグラムを達成、八十ナノグラムを超える施設については、一年以内にまず八十ナノグラム以内にすることを求めています。しかし、抑制基準を達成できない場合でも、当面は知事が改善勧告をするにとどめることになっています。
 以上の内容の方針が報道されていました。
 この環境庁の方針は、法規制に踏み切るとはいえ、一月に厚生省が策定したガイドラインと比べて少し緩やかな抑制基準となっています。このダイオキシン類の排出防止対策は、県民の健康に対する影響を未然に防止しなければならない観点から対策を急がなければならない重要な課題であります。厚生省の示されたガイドラインや予定される法規制、環境庁が予定している法規制などについて、来年、新焼却炉が完成予定の和歌山第二、御坊市にできる新清掃センター等を含めて県内すべての施設について達成できる見通しがあるのかどうか、実情と今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、濃度の基準値についてであります。
 濃度の測定をすると、これはダイオキシンの毒性から換算したトータルの量でありますが、緊急対策の必要性を判断するための基準ということで設定をしたものではあるとはいえ八十ナノグラム・パー・立方メートル、新設の炉については〇・一ナノグラム・パー・立方メートルであります。すると、八十ナノグラムと〇・一ナノグラムとは八百倍の違いがあります。もちろん、家庭からのごみは毎日排出されるわけで、それを毎日適正に焼却処理しなければならない面も持っていることは、先ほども述べたとおりであります。そういった日常のごみ処理と、より安全性を高めるということを同時並行的にやらなくてはいけないという難しい点も承知しています。しかし、毒性の強い物質が各施設によって基準が違うというのは余り好ましくないと思います。やはり、毒性が強ければ強いほど、より注意が必要であります。一定の基準というものを示すべきではないかと思います。これは厚生省が定めた基準値ではありますが、ダイオキシン類の低減化について市町村を直接に指導を行っていかなければならない立場の県としての率直な見解をお伺いいたします。
 全連続型炉は、ごみが連続的あるいは定量的に炉内に供給されることから、燃焼の安定化というのが他の方式に比べると高いわけであります。完全燃焼を図ることが容易になります。これに対して準連続炉あるいは機械化バッチ炉などといった間欠運転をする焼却炉のタイプは、通常、夜間時に運転を休止することになります。いわゆる立ち上げ、立ち下げが日々行われるということもあり、燃焼が比較的全連続炉に比べると安定しません。こうしたことから厚生省としても、ごみ焼却炉は安定的な運転が必要である、今後新設されるごみ焼却炉は原則として全連続型炉のタイプを進めていきたい考えに至ったようであります。
 さらに厚生省では、大規模な全連続炉に転換を進めるため、ごみ処理の広域化を図り、小規模なごみ処理施設は廃止させる方針を固め、県に対し広域化計画の策定をするよう通知が来ているところであります。これは、一月に策定したガイドラインをより明確に、具体的にその対策を示したものであります。しかし、これは明確にごみの量に関係をしてきます。人口が多くて全連続炉を設置できる地域はいいとしても、広い地域、少ない人口では全連続炉を設置することは非常に困難な問題が伴います。
 例えば、市町村に別々に機械化バッチ型や固定バッチ炉がある場合、みんなで話し合ってということだと思いますが、それでなくともナーバスになっているごみ焼却場について、広域化した市町村にまたがってどこにつくるのかということを広域行政の自治体の方々で話し合うことは大変な時間を要すると思います。また、各焼却炉の残耐用年数の違いがあります。広い地域、少ない人口で全連続炉を設置することが困難な地域については、どのような処理方法が適切なのか、個別に検討する必要があるのではないでしょうか。その中で、ダイオキシンの低減化を図りつつ、地域の実情に即した施設の整備を検討することが必要だと思いますが、どのようなお考えをお持ちでしょうか、お伺いします。
 また、各市町村の焼却場には古い施設、新しい施設があります。比較的新しい施設の場合、広域で新しい施設を設置すればペナルティーがあるのではないかと思いますが、ごみ処理施設の施設整備については、施設の更新、基幹施設の改良事業には廃棄物処理施設整備費国庫補助金があります。耐用年数に達する前に更新をするような場合、既存施設の耐用年数に一定の制限があると思います。もちろん、緊急性ということを考慮して国庫補助も可能だとは思いますが、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律があり、財産処分等いろいろ規制があります。特段の配慮がされるよう国に求めていかなくてはならないと思いますが、見解をお伺いいたします。
 次に、ダイオキシンの一日当たりの耐容量については、厚生省は十ピコグラム、環境庁は五ピコグラムと評価が違います。厚生省は、研究班の検討結果を経て設定した耐容一日摂取量すなわちTDIですが、これは健康影響という観点から定めたもので、一生涯にわたって一日当たり摂取しても耐容される量と言われています。一方、環境庁の健康リスク評価指針値は、環境保全対策を講ずるに当たっての目安となるように、人の健康を確保するために、より積極的に維持されることが望ましい水準と言われています。
 厚生省は健康への影響、環境庁は環境保全対策に当たっての目安と、その性質が異なってはいますが、こういった考え方が妥当なのかということについては大いに疑問のあるところであります。どのような見解をお持ちでしょうか、お伺いいたします。
 以上で、一回目の質問を終わります。
○議長(町田 亘君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 総務部長中山次郎君。
 〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 森本議員の、携帯・自動車電話等からの一一九番通報接続についての質問にお答えします。
 携帯電話等からの一一九番通報については、ご指摘のとおり、本県においてもいまだ接続がされておりませんが、携帯電話の急速な普及等により、この問題は社会問題として顕在化しつつあると同時に、人命救助等の緊急性という観点から重要な問題と認識しているところでございます。
 携帯電話からの一一九番通報は、災害発生地を管轄する消防本部に直接通報する方式が強く望まれるところでありますが、現在の通信事業者の技術開発状況においては対応が非常に困難でございます。こうしたことから、現在、県内を四地域に分割し、それぞれのブロック内で代表消防本部を選定し、当該消防本部から近隣の消防本部へ転送する、いわゆる分散受信方式システムの導入について消防機関とともに鋭意検討を重ねているところでございます。しかしながら、この方式を採用するに当たっては、消防本部間の接続方式や費用分担面の調整等困難が予想されますので、県といたしましても、関係機関と密接に協議しながら、こうした問題を解決の上、携帯電話からの一一九番通報接続を早期に実現すべく積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 生活文化部長中村協二君。
 〔中村協二君、登壇〕
○生活文化部長(中村協二君) 森本議員のご質問についてでございますが、ダイオキシン類発生防止対策等について、十一項目のうち十項目についてお答えをいたします。
 まず調査結果から得たノウハウを生かして現状の改良をという質問でございますが、ダイオキシン類の生成は、摂氏三百度から八百度の間で多く生成することから、議員のご指摘にもありました、燃焼特性の改善のための定量投入や分別収集、また排ガス処理施設の温度管理や処理施設の改善等、国等からの情報収集に努め、少しでもダイオキシンの削減につながる方策を市町村とともに研究してまいりたいと考えてございます。
 二番目は、全施設の測定結果の報告と信憑性についてでございます。県下の一般廃棄物焼却炉は三十一施設ございます。このうち、現在ダイオキシンの測定結果を報告されている市町村及び事務組合は二十八施設ございます。未報告の施設につきましては、現在更新中の施設と処理能力が五トン未満で当初報告の必要がないものとされていた施設もありますが、できるだけ早期に報告するよう指導してまいりたいと考えております。また、測定結果につきましては、緊急対策の基準値八十ナノグラムを超えた施設は海南市ほか三施設となってございまして、既設の恒久対策の基準値五ナノグラム以下の施設については白浜町ほか一施設となってございます。また、一部の市町村で転記ミスがありましたが、分析機関については高度な施設及び能力を持って測定されているところでございますので、測定結果は信頼いたしてございます。
 次に四番目の測定の調査方法についてでございますが、ダイオキシンの測定については、非常に低濃度で、かつ精度を要求されることから、現場での測定時間が四時間程度必要でございますので、ご指摘の点については望ましいこととは思いますが、現状では測定技術上困難があると考えます。また、各施設によって炉の型式や公害防止装置等も異なりますし、同一施設においても第一炉と第二炉が異なる状況にあるものもございますので、実態に応じた個別の炉に対して管理基準等を見直していく中で、初期変動等も含めてダイオキシンの測定等について今後研究していかなければならないと考えてございます。
 五番目のご質問、焼却灰の処理実態と今後の対策についてでございますが、電気集じん機等から個別に排出される集じん灰は、特別管理廃棄物としてセメント固化、薬剤処理等の無害化処理を行い処理することになってございます。現在、九市町村では既にこういった処理を実施してございますが、今後、灰の溶融スラグ処理等も含め、この方向で行うよう指導を行ってまいりたいと考えてございます。
 六番目の焼却施設における作業員の健康問題についてでございますが、県下市町村においては、安全衛生管理要綱はもちろん、作業環境の改善について日々努力されているところでございますが、これを機会になお一層、ダイオキシン問題も含めた作業環境の改善を指導してまいりたいと考えてございます。
 七項目め、ガイドライン達成について各施設の実情と今後の取り組みについてでございますが、各施設の現状については、八十ナノグラムを超えた施設が四カ所ございまして、それらの焼却炉については早急に緊急対策を行って濃度を下げるよう、また新設の炉については恒久対策基準を達成するように指導を行ってまいります。さらに、その他の焼却炉についても、できるだけ排出量の少ない焼却方法等を指導してまいりたいと考えております。
 八項目め、施設によって違う基準値ではないかというご質問でございますが、早急に実施すべき緊急対策基準値は八十ナノグラムであり、今後新設される施設に対する恒久対策基準は〇・一ナノグラムと定められてございます。ご質問にもございますように、非常に困難を伴いますが、できる限り恒久対策基準に向けて少しでもダイオキシンの削減対策に努力すべきものと考えております。
 九項目、地域の実情に即した整備についてでございますが、一日当たり百トン以上の全連続炉を考えますとき、広域化を図らなければならず、ご指摘のような問題もありますが、現段階ではダイオキシン対策としては広域化とごみ燃料化がございます。ごみ燃料化については、燃料化後の受け入れ先が問題でございますが、大規模な集合処理が可能なことからダイオキシン対策が可能であると考えられますので、今後市町村とともに研究してまいりたいと存じます。
 十項目めの新しい施設の更新にペナルティーがかかるのではないかというご質問でございますが、国の補助金の対応についてもご指摘の問題がございまして、大変苦慮しておるところであります。各県とも共通の課題でございますので、国及び他府県の動向を踏まえ、国への要望等、機会をとらえて積極的に行ってまいりたいと存じます。
 十一項目めの一日当たりの耐容量についてでございますが、厚生省の耐容一日摂取量は一般廃棄物焼却炉の排出口における排出基準を求めるための算定基礎でございます。また環境庁の方は、より積極的に維持することが望ましい水準、すなわち環境基準的な考え方をもって定められたものでございます。したがって、環境中のダイオキシンについては、行政目標として最終的には環境庁の基準に向かって推進すべきものと考えております。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 放送大学地域学習センターと学校におけるダイオキシン問題の二点についてお答えいたします。
 まず放送大学地域学習センターについてでございますが、国においては昭和六十年度から電波受信可能な関東圏の一都六県で放送による授業を開始しております。平成二年度から全国をブロックに分け、人口規模等を勘案しながらビデオ学習センターを順次指定し、整備してきたところであります。さらに六年度からは、放送大学の全国化事業として、各府県において大学等と連携しながら地域学習センターの設置を進めてきております。
 こうした中で本県といたしましても、その早期設置を重要な課題として受けとめ、取り組んできたところでありますが、設置場所の選定等から今日に至った次第でございます。現在、交通の利便性や施設の規模、機能等の観点から高松地区の和歌山大学キャンパスを活用して、十八歳以上の県民を対象に、平成十年度後期から開設できるよう放送大学学園及び文部省、並びに和歌山大学と協議を重ねているところです。
 議員ご指摘の学習センターについては、高度で多様な学習内容を広く県民に提供するとともに、本県の生涯学習推進の基盤整備を図る上で大変重要であると考えます。文部省においては、放送衛星の打ち上げ後に全国化を進めていく予定であると伺ってございますが、本県としては、国のこうした動向を踏まえ、地域学習センターから速やかに学習センターへの移行ができるよう積極的に働きかけてまいる所存でございます。
 次に、学校でのダイオキシンの問題についてお答えいたします。
 学校におけるごみ処理については、学校環境衛生基準に基づき指導しているところであります。このたび本県における公立学校の実態調査を実施いたしましたが、その結果によると、空き缶類、瓶・ガラス類、新聞紙・雑誌類については約九〇%が分別回収されております。また、ペットボトル・プラスチック・発泡スチロール類については四〇%程度という状況でございます。現在、必要な対応策といたしましては、分別収集を徹底するとともに、ダイオキシンの発生の疑いがある物質を焼却しないようにすることなど、全学校に対し指導してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(町田 亘君) 以上で、森本明雄君の質問が終了いたしました。

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