平成9年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


県議会の活動

議 事 日 程 第三号 平成九年六月二十五日(水曜日)
 午前十時開議
 第一 議案第八十八号から議案第九十八号まで、及び報第一号から報第六号まで(質疑)
 第二 一般質問
会議に付した事件
 一 議案第八十八号から議案第九十八号まで、及び報第一号から報第六号まで(質疑)
 二 一般質問
出 席 議 員(四十七人)
  1 番 大 沢 広太郎
 2 番 木 下 善 之
 3 番 小 川 武
 4 番 吉 井 和 視
 5 番 下 川 俊 樹
 6 番 井 出 益 弘
 7 番 藁 科 義 清
 8 番 門 三佐博
 9 番 永 井 佑 治
 10 番 新 島 雄
 11 番 向 井 嘉久藏
 12 番 佐 田 頴 一
 13 番 和 田 正 一
 14 番 阪 部 菊 雄
 15 番 西 本 長 弘
 16 番 馬 頭 哲 弥
 17 番 谷 洋 一
 18 番 山 下 直 也
 19 番 高 瀬 勝 助
 20 番 上 野 哲 弘
 21 番 堀 本 隆 男
 22 番 宇治田 栄 蔵
 23 番 宗 正 彦
 24 番 橋 本 進
 25 番 神 出 政 巳
 26 番 玉 置 公 良
 27 番 松 本 泰 造
 28 番 東 山 昭 久
 29 番 尾 崎 要 二
 30 番 野見山 海
 31 番 木 下 秀 男
 32 番 町 田 亘
 33 番 中 山 豊
 34 番 井 谷 勲
 35 番 鶴 田 至 弘
 36 番 森 正 樹
 37 番 村 岡 キミ子
 38 番 新 田 和 弘
 39 番 平 越 孝 哉
 40 番 森 本 明 雄
 41 番 長 坂 隆 司
 42 番 冨 安 民 浩
 43 番 飯 田 敬 文
 44 番 中 村 裕 一
 45 番 松 本 貞 次
 46 番 大 江 康 弘
 47 番 和 田 正 人
欠 欠 席 議 員(なし)
説明のため出席した者
 知 事 西 口 勇
 副知事 山 下 茂
 出納長 高 瀬 芳 彦
 知事公室長 野 見 典 展
 総務部長 中 山 次 郎
 企画部長 藤 谷 茂 樹
 生活文化部長 中 村 協 二
 福祉保健部長 小 西 悟
 商工労働部長 日 根 紀 男
 農林水産部長 平 松 俊 次
 土木部長 長 沢 小太郎
 企業局長 佐 野 萬瑳義
 教育委員会委員長
 山 本 昭
 教育長 西 川 時千代
 公安委員会委員 高 垣 宏
 警察本部長 青 山 幸 恭
 人事委員会委員長
 若 林 弘 澄
 代表監査委員 宮 市 武 彦
 選挙管理委員会委員長
 谷 口 庄 一
 以下、各部局次長・事務局長・財政課長
職務のため出席した事務局職員
 事務局長 西 畑 彰 久
 次 長 前 晴 夫
 議事課長 佐 竹 欣 司
 議事課副課長 島 光 正
 議事班長 松 谷 秋 男
 議事課主査 川 崎 良 雄
 議事課主事 大 浦 達 司
 総務課長 塩 路 義 和
 調査課長 湊 孝太郎
 (速記担当者)
 議事課主任 吉 川 欽 二
 議事課主査 鎌 田 繁
 議事課速記技師 中 尾 祐 一
 議事課速記技師 保 田 良 春
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 午前十時五分開議
○議長(町田 亘君) これより本日の会議を開きます。
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 【日程第一 議案第八十八号から議案第九十八号まで、及び報第一号から報第六号まで】
 【日程第二 一般質問】
○議長(町田 亘君) 日程第一、議案第八十八号から議案第九十八号まで、及び地方自治法第百七十九条の規定による知事専決処分報告報第一号から報第六号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 40番森本明雄君。
 〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 おはようございます。通告順に従い、順次質問を進めてまいります。
 最初に、携帯・自動車電話からの一一九番通報接続についてであります。
 生活やビジネスに便利と携帯電話は爆発的に普及し、本年三月末で加入が二千万台を超えました。携帯電話は、エリア内であればいつでもどこでもすぐに電話ができるという利点がある反面、一つの困った盲点があります。一一〇番通報はできても一一九番通報はつながらないところが十一県もあります。また、つながったとしても本来の消防本部の管轄外に通じてしまったりで、消防側が迅速に対応できないケースが相次いでいるのであります。
 例えば、「大清水に救急車をお願いします」「名古屋市緑区鳴海町の大清水ですか」「いいえ、豊橋市です」──携帯電話からの一一九番通報です。名古屋市と豊橋市では約七十キロメートルも離れています。
 一般電話からの一一九番通報を受け付ける市及び広域市町村の消防本部は、全国で九百二十五カ所、和歌山県内では二十一カ所、しかし携帯電話用の一一九番専用回線は、ほとんどの県で県庁所在地の消防本部にしか引かれていません。このため携帯電話からかけると、県内全域の一一九番通報は一つの市の消防本部に集中します。これとは別に、携帯電話は一一九番通報が全くできないところが和歌山県を含めて十一県、県庁所在地の消防本部にも専用回線が引かれていないからであります。事業者のNTTドコモは、県庁所在地における専用回線については各県と話し合いの上で引いてきたが、それから先の消防本部までの回線整備は義務範囲外という姿勢で、消防行政が絡んでいるだけに事業者だけでは解決できない問題とし、一方、消防庁は、各市町村の消防本部で整備してほしいのはやまやまだが、地方自治体だけが負担するのも無理があるとし、これといった決め手がなかったのが実情であります。
 こうした中、通信事業者、消防庁、消防関係機関と協議を進め、本年三月に都道府県を複数のブロックに分けて、各ブロックの代表消防本部が一たん通報を受けて、代表消防本部から所轄の消防本部に転送する方式を採用することを決定しました。そして、本年四月三十日、最終的には管轄消防本部が直結受信できるシステムとするが、当面は暫定措置として各県内で複数の代表消防本部による分散受信方式を採用することに決定しました。しかし、当方式の採用に当たっては、受信設備の改修、転送回線の整備に伴う経費負担の問題、及び採用に係る諸調整等の問題が生じ、関係機関の積極的な措置が強く望まれる等の趣旨の要望書が全国消防長会より事業者に提出されているところであります。
 携帯電話は、阪神・淡路大震災の際にも、機動性があり、その利点は緊急事態の対応に力を発揮します。それだけに、携帯電話の一一九番通報の盲点は早急に解消されなくてはならないと思います。まして、通話料の値下げなどで携帯電話の普及は今後さらに急増が見込まれるだけに、事業者や国、市町村とともに、県においてもさらに携帯電話の接続改善に取り組んでいただきたいのであります。県内における携帯電話の接続改善の計画内容、現時点での進捗状況、そして今後の県の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、放送大学についてであります。
 文部省に放送大学の全国化実現を要請していただきたい旨の質問を初めて行ったのは、昭和六十一年六月定例会でした。文部省の計画がなかなかはかどらないので、全国化までの暫定措置としてビデオによる学習センターの設置を求めました。それに対し、「生涯学習機会の提供の一環として放送大学ビデオ教材の整備について今後研究をしてまいりたい」と答弁をいただいたのが平成二年十二月定例会でした。昨年六月定例会で、公明県議団の新田議員の放送大学地域学習センターの設置についての質問に対し、「設置に向けて検討を進めてまいる」との答弁がありました。そして、本年度の当初予算に放送大学地域学習センターの設置事業費が計上されたところであります。
 昭和五十九年、関東平野においてテレビとFMラジオによる放送が開始されてから十三年、放送大学は、いつでも、だれでも気軽に大学の講義を受けられる画期的な制度であります。これまでにも一万人近い卒業生を輩出、現在も約六万五千人の学生が学んでおり、うち大学卒業資格取得を目指す全科履修生は約四〇%、なお放送大学を卒業して既存の大学院に百二十一名が進学をしているところであります。現在、放送授業を受けられる地域は、関東一都四県と長野・山梨両県の一部地域などで、それ以外の地域には地域学習センターの設置が進んでおり、本年度中に全国で三十六カ所がオープンの予定で、未設置県は和歌山県など四県となります。
 文部省によると、放送の全国化は通信衛星(CS)のデジタル放送を利用するもので、来年一月より放送開始予定と聞いています。これまで次期放送衛星(BS4)の後発機による全国化を目指していましたが、打ち上げ予定は平成十二年ごろに延期されることで、CSによる放送開始に踏み切ったものであります。全国化されると、受講生は約十万人と予測されています。放送の全国化に伴い、次の課題となるのがスクーリングを行う拠点の問題であります。放送大学だけではありませんが、通信制の大学を卒業するためには面接授業として一定の単位を修得する必要があります。これまで各地に整備を進められてきた地域学習センターは、ビデオテープ等を活用した学習の場であったわけでありますが、今後、全国化に伴って面接授業を行う場としての役割が大変大きくなると思います。
 現在、各地に整備されている地域学習センターはいずれも規模が小さく、面接授業を十分に行うということは大変難しいようであります。したがって、全科履修生つまり卒業を目的として勉強している全科履修生を受け入れて一定の面接授業もできるようにするためには、そのための人的、物的な整備が必要となってまいります。その際には、既存の大学等の機関の協力を十分に得る必要があります。文部省では、平成十年度から四年間を目途にして、すべての学習センターで全科履修生の受け入れができるよう体制を整えたい計画であります。
 本年六月に送付していただいた平成九年度和歌山大学総合大学化促進期成同盟会総会の資料の「和歌山大学生涯教育研究センター設置構想について」、その中に和歌山県に設置が予定されている放送大学学習センターとの連携事業の一項目が入っています。また、県が策定した平成十年度政府予算等に関する重点事項説明書に「放送大学地域学習センターの設置について」が新規項目として入りました。これで、放送大学地域学習センターも具体的に開設に向かって進み出したものと思います。
 最初に、地域学習センターの開設予定は平成十年度と聞いていますが、全国で最終の開設県になったその理由について、また現時点での大学等の協力についての進捗状況、さらに確実な開設時期、センターの場所、規模、学生の種類などについてお伺いをいたします。
 二つ目に、今日まで再三要望してきた問題でありますが、全国化に伴い、来年度中にも全科履修生の募集が始まるものと思います。しかし、大学卒業資格の取得ができない選科や科目履修生のみしか受け入れられない状況では、身近に大学の少ない県民は相も変わらず県内での高等教育受講の機会に恵まれないままであります。しかも、ビデオを使って学習する全国の地域学習センターでの受講は、卒業資格が取得できないことから伸び悩んでいると聞いています。したがって、現在その開設準備を進めている地域学習センターを学習センターに昇格させ、当然、スクーリングの実施、職員の充実などを図らなければなりません。レベルの高い教育、学習の機会を広く県民に提供すべきだと思いますが、所見と今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、ダイオキシン類発生防止対策等についてであります。
 一般廃棄物の処理は市町村の固有事務であります。しかし、ごみ焼却施設からのダイオキシン類の排出に対する削減対策は、一市町村で対応し切れる問題ではありません。厚生省が策定したガイドラインには都道府県の役割が示されており、非常に重要な立場であります。そうした観点から質問を進めてまいりたいと思います。
 ダイオキシン類は自然界には存在しない化学物質で、人類がつくり出した最強、最悪の毒物とも言われております。有機塩素化合物の生産過程や廃棄物の焼却過程等で非意図的に生成され、燃焼排ガスや化学物質の不純物として一般環境中に排出されています。その毒性については、動物実験において急性毒性、慢性毒性、発がん性、生殖毒性、免疫毒性等の広範囲にわたる毒性影響が報告されてきました。ダイオキシン類の人間への影響評価については、世界保健機関の国際がん研究機関が本年二月四日から十一日かけて行ったワーキンググループの検討結果として、発がん性について、これまでの「可能性がある」から「ある」に変更し、ダイオキシン類の発がん性を明確に認めました。環境庁では、ダイオキシンリスク評価検討会において、国際がん研究機関の見解を現在検討していると聞いています。
 厚生省では、省に設置した研究班において、耐容一日摂取量──TDIですが──その設定に当たって、疫学データについても広範な検討を行い、動物実験との整合性等も考慮した上で、ダイオキシン類の高濃度暴露と発がん性の関係は無視できないと評価した上で、TDIを体重一キログラム当たり一日十ピコグラムと定めました。日本においても、一九八〇年代からごみの焼却場を中心にして発生してきていると、その人体への影響等が非常に心配されてきました。また、十五、六年前になりますが、ベトナム戦争の枯れ葉剤の中にもダイオキシンが入っていて、ベトナムの住民、アメリカの兵隊さんの人体にも影響が出ているということで大変な問題になりました。毒性がどれだけ大変な影響を与えているのかということについてはいろいろと発表されていますが、研究も日本ではまだ途中なのかなと感じています。地上最強の猛毒化学物質サリンの二倍、DDTの百万倍とか言われています。その発生源については、約八割がごみ焼却からと言われています。
 昨年七月、厚生省では、都道府県あてに市町村が設置するごみ焼却施設の維持管理の状況の一環として、ダイオキシンの測定の実施について通知をしました。しかし市町村は、自分たちにそんな調査能力がないので民間に委託しました。だが、専門的な測定の業者は非常に少なく、またダイオキシンの測定に用いるガスマスについては、通常のガスマスでは測定できず、かなり高額なガスマスを用いなくてはいけない、さらに非常に高度な前処理が必要等々、したがって高額な測定料金を負担しています。さらに、サンプリングから分析まで一カ月程度を要しています。
 さて、総点検調査実施の結果については、本年五月末までに報告があったのは、全国で一千八百五十四施設のうち一千四百九十六施設と昨日報道されました。一千八百五十四施設というのは平成五年度の実績であります。今日までの測定報告を見てまいりますと、同じような炉を使用しながらダイオキシンの発生の値に大きく差があるものもあります。燃焼管理の方法がどうなっているのか、あるいは一酸化炭素の濃度が実際にどうなっているのか等々、さらに突っ込んで少しでも削減できる方向へヒントを得ることにおいて非常に貴重なデータと認識しています。できる限り多くのノウハウを引き出していただいて現状の改良に役立てていただきたいと思いますが、見解をお伺いいたします。
 そうした理由も含めて、未報告の施設に対し排出濃度の測定報告を求めていかなくてはなりませんが、いつまでに全施設の測定結果の報告がまとまるのか、お伺いいたします。
 また、県内焼却施設調査の信憑性についてどのように考えているのか、お伺いします。
 文部省では、ダイオキシンが発生するおそれがあるとして、公立学校の焼却炉によるごみ処理状況の全国調査を始め、六月中にも調査結果をまとめ、ダイオキシンの発生可能性があれば分別収集の徹底などを指導すると報道されました。埼玉県所沢市では、学校に設置されている焼却施設の運用を停止したところもあると聞きました。県教委は、学校等の教育現場におけるダイオキシン類の対応についてどこまで実態把握を行っているのか、お伺いいたします。
 次に、ごみ焼却施設のダイオキシンの排出濃度の測定の調査方法についてであります。
 ダイオキシンは、三百度ぐらいのときが一番よく排出されると言われています。すなわち、焼却炉の立ち上げ時や立ち下げ時にダイオキシン類の濃度が高くなるわけであります。しかし、今回の調査に当たって、排ガスの採取時点を焼却炉が八百度に達した時点、排ガス量や燃焼状態が安定した時点で採取をするようにとの指示がなされて出てきた数値がこの数値でありますので、一日の総排出量を推定するとさらに数値が高くなるものと思います。もちろん、施策を講じていく上では平常運転時においての比較をすることによって削減効果を見ていくというのは一つの方法だとは思いますが、正確に負荷量がどうかということになると、立ち上げ時、立ち下げ時においてどの程度排出しているかを把握する必要があるのではないかと思うのであります。見解をお伺いいたします。
 また、一つ一つの炉について、この炉はダイオキシンの排出量がどのくらいの炉なのかということを正確に把握した中で対応策をとらなければならないと思います。大きい施設の場合、焼却炉が一つでないと思います。今回の調査では平均して値を出すように指示が出されていると思いますので、一つ一つの炉についてどれだけのダイオキシンが排出されているのか的確に把握できないと思いますが、見解をお伺いいたします。
 ごみ焼却炉における焼却灰の処分は、市町村の共通の悩みであります。ごみ焼却炉から排出されるダイオキシン類の八割から九割が焼却灰の中に残っていることが指摘されています。電気集じん機やバグフィルターで捕捉されるダイオキシン含有量が多い飛散灰は、産業廃棄物処理法によって特別管理廃棄物として規制が強化されています。例えばコンクリートでもって固形化するなど、一定の処理を行った上で管理型処分場で埋立処分をすることになっています。なお、焼却灰に含まれるダイオキシン類を分解する溶融固化処理の技術開発が進み、既に実用化の段階に達していると思います。そして、スラグについては路盤材等としてリサイクルが可能で、安全な処理、最終処分場の延命にも効果があります。しかし、溶融固化処理を行う施設は、四月現在、全国で十七カ所しか設置されていません。県内各施設の実態と今後の対策についてお伺いをいたします。
 次に、作業員の健康問題についてであります。
 ダイオキシン類は、水に溶けなくて油に溶けやすい、体内の脂肪分の多い組織に蓄積され、よく排出されるのは母乳からだと言われています。環境庁には、ダイオキシン対策について有識者で構成する検討会があります。そのメンバーでもある摂南大学の宮田教授の調査によりますと、大阪の母乳汚染レベルは、ベトナム戦争当時、枯れ葉剤を大量に散布された南ベトナムのタイニン省の女性の母乳よりも倍近くもダイオキシン濃度が高い結果が出ているとのことであります。また、九州大学医療技術短期大学部の長山助教授の調査では、日本人の平均的な普通の生活をしている母親の母乳中、厚生省の研究班が決めたTDIの七倍から三十四倍という高さになっているということであります。こうしたことに対して厚生省では、母乳を採取して人体のダイオキシンの含有量を測定する初の全国的調査に乗り出すことを決めたようであります。
 その話は別といたしまして、ごみ焼却場の補修など、そういう仕事をされる方のダイオキシン摂取の濃度について、毛髪中のダイオキシン濃度が一般人の濃度と比較して約五倍の濃度であったことが、先ほどの宮田教授の調査の結果明らかになったようであります。平成五年に、こういった事業に特別の安全衛生管理要綱が定められ、県を通じて市町村への周知徹底に努めているとは思いますが、実態についてお伺いします。
 また、焼却施設における作業員の作業態様の実態等をよく調査の上、こういった有害物質等にさらされることのないよう、さらにこういった安全衛生管理上どういう手だてがあるか対策を進めなくてはならないと思いますが、お伺いいたします。
 本年一月に厚生省は、「ごみに係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」を作成いたしました。今後、これに基づいて具体的なダイオキシン類の発生防止対策を推進することになります。その中身を見ますと、新設の焼却炉においては欧米諸国並みの基準の〇・一ナノグラム、既設の焼却炉については恒久的──炉の型式等によって〇・五から五ナノグラム──な対策の推進、一定の施設──八十ナノグラム以上の施設については、緊急対策として政・省令ではない通達で、燃焼管理の徹底、施設の改善、施設の休廃止等の対策を講じるよう求めています。またガイドラインには、八十ナノグラムを超える施設については、飛灰中へのダイオキシンの移行をできるだけ少なくしていくために完全燃焼にできるだけ近づけていく、焼却灰にはそれでもダイオキシンが入ってくるので、できる限り高温で溶融するなどの無害化処理をする等々、さらに今後建設される焼却炉に対する国庫補助は原則として全連続炉のみとする、そして都道府県において広域化計画を策定し、小規模施設を集約化して計画的に広域化を図り、全連続炉による焼却及び灰の溶融固化等を推進するよう指導するとあります。
 厚生省は、平成二年にガイドラインを各焼却施設に対して出していますが、それは「技術的に実施可能な限りダイオキシン類の発生防止対策の推進」という内容であります。これは、技術的に可能でないならば、そのままでよいということと同じで、事実、現場ではほとんどの施設は徹底的な改善がなされないままに今日に至ったのが実情だと思います。今後、各施設ごとの状況に応じて対策が進められると思います。
 これは聞いた話ですが、岩手県久慈市にある久慈清掃センターでは、空気の安定供給などを通じて不完全燃焼の原因となる一酸化炭素の低減に取り組んだ結果、ダイオキシンの濃度は、調査時点の四百八十ナノグラムから四十三ナノグラムに低下したと言われています。また県内でも、湯浅の衛生センターごみ焼却場で、炉の電気集じん機の補修、ごみの燃焼温度を八百五十度以上の高温に保つなどの結果、九十九ナノグラムが十八ナノグラムに低下したと報道されていました。
 この一月に厚生省から示されたガイドラインは、当然達成できる、いわゆる現在の技術的に達成可能なレベル、もちろん現行の技術を最大限に駆使してということを前提に、炉の型式によって〇・一から五ナノグラムは達成できるであろうという考え方で示してきたものと思います。現実に五ナノグラム以下の施設は、三月末で全国で三百九十六施設、本県には一施設あります。今、市町村ではさまざまな方策を検討していると思います。施設の休廃に当たっては、近隣の市町村に一時的に処理を委託するような方法、あるいは施設の建てかえを早期に進めるなどありますが、ごみは毎日の生活から排出されるものであります。また、これを継続して処理していかなければ住民生活に支障を生じ、衛生上の問題も生じかねません。ごみ処理に大きな支障が生じることのないように対応しなくてはなりません。
 先ほど述べたように、ガイドラインは設備の休廃止を求めていますが、どちらかと言うと努力目標的な色合いが強く、法的拘束力はありません。しかし厚生省では、ダイオキシン類の排出抑制対策を講じるには規制的な措置の導入を必要と考え、まず、ごみを完全燃焼させてダイオキシンの発生を防ぐため、廃棄物を一定量ずつ燃焼室に投入する装置の設置を各焼却場に義務づける、次に、排出ガス処理設備内での合成を防ぐため、排ガス温度を摂氏二百度以下に冷却する装置の設置、三つには、ダイオキシンが付着したばいじんを除去するための能力の高い集じん装置の装着を義務づけるなどの各種の対策を打ち出しています。今後、生活環境審議会の専門委員会で、同省案をたたき台に規制の基準値などを定め、今夏にも省令を改正したい考えであります。
 一方、環境庁は、ダイオキシン類について大気汚染防止法の規制対象となる指定物質に組み入れることを決め、排出口でのダイオキシン類の抑制基準を設けて規制に踏み切る方針であります。そして、今夏にも政令の改正、秋には施行を目指す考えであります。規制対象については、焼却能力が一時間当たり二百キロを超えるもの、基準は新設で規模に応じ〇・一から五ナノグラム、既設では五年以内に一から十ナノグラムを達成、八十ナノグラムを超える施設については、一年以内にまず八十ナノグラム以内にすることを求めています。しかし、抑制基準を達成できない場合でも、当面は知事が改善勧告をするにとどめることになっています。
 以上の内容の方針が報道されていました。
 この環境庁の方針は、法規制に踏み切るとはいえ、一月に厚生省が策定したガイドラインと比べて少し緩やかな抑制基準となっています。このダイオキシン類の排出防止対策は、県民の健康に対する影響を未然に防止しなければならない観点から対策を急がなければならない重要な課題であります。厚生省の示されたガイドラインや予定される法規制、環境庁が予定している法規制などについて、来年、新焼却炉が完成予定の和歌山第二、御坊市にできる新清掃センター等を含めて県内すべての施設について達成できる見通しがあるのかどうか、実情と今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、濃度の基準値についてであります。
 濃度の測定をすると、これはダイオキシンの毒性から換算したトータルの量でありますが、緊急対策の必要性を判断するための基準ということで設定をしたものではあるとはいえ八十ナノグラム・パー・立方メートル、新設の炉については〇・一ナノグラム・パー・立方メートルであります。すると、八十ナノグラムと〇・一ナノグラムとは八百倍の違いがあります。もちろん、家庭からのごみは毎日排出されるわけで、それを毎日適正に焼却処理しなければならない面も持っていることは、先ほども述べたとおりであります。そういった日常のごみ処理と、より安全性を高めるということを同時並行的にやらなくてはいけないという難しい点も承知しています。しかし、毒性の強い物質が各施設によって基準が違うというのは余り好ましくないと思います。やはり、毒性が強ければ強いほど、より注意が必要であります。一定の基準というものを示すべきではないかと思います。これは厚生省が定めた基準値ではありますが、ダイオキシン類の低減化について市町村を直接に指導を行っていかなければならない立場の県としての率直な見解をお伺いいたします。
 全連続型炉は、ごみが連続的あるいは定量的に炉内に供給されることから、燃焼の安定化というのが他の方式に比べると高いわけであります。完全燃焼を図ることが容易になります。これに対して準連続炉あるいは機械化バッチ炉などといった間欠運転をする焼却炉のタイプは、通常、夜間時に運転を休止することになります。いわゆる立ち上げ、立ち下げが日々行われるということもあり、燃焼が比較的全連続炉に比べると安定しません。こうしたことから厚生省としても、ごみ焼却炉は安定的な運転が必要である、今後新設されるごみ焼却炉は原則として全連続型炉のタイプを進めていきたい考えに至ったようであります。
 さらに厚生省では、大規模な全連続炉に転換を進めるため、ごみ処理の広域化を図り、小規模なごみ処理施設は廃止させる方針を固め、県に対し広域化計画の策定をするよう通知が来ているところであります。これは、一月に策定したガイドラインをより明確に、具体的にその対策を示したものであります。しかし、これは明確にごみの量に関係をしてきます。人口が多くて全連続炉を設置できる地域はいいとしても、広い地域、少ない人口では全連続炉を設置することは非常に困難な問題が伴います。
 例えば、市町村に別々に機械化バッチ型や固定バッチ炉がある場合、みんなで話し合ってということだと思いますが、それでなくともナーバスになっているごみ焼却場について、広域化した市町村にまたがってどこにつくるのかということを広域行政の自治体の方々で話し合うことは大変な時間を要すると思います。また、各焼却炉の残耐用年数の違いがあります。広い地域、少ない人口で全連続炉を設置することが困難な地域については、どのような処理方法が適切なのか、個別に検討する必要があるのではないでしょうか。その中で、ダイオキシンの低減化を図りつつ、地域の実情に即した施設の整備を検討することが必要だと思いますが、どのようなお考えをお持ちでしょうか、お伺いします。
 また、各市町村の焼却場には古い施設、新しい施設があります。比較的新しい施設の場合、広域で新しい施設を設置すればペナルティーがあるのではないかと思いますが、ごみ処理施設の施設整備については、施設の更新、基幹施設の改良事業には廃棄物処理施設整備費国庫補助金があります。耐用年数に達する前に更新をするような場合、既存施設の耐用年数に一定の制限があると思います。もちろん、緊急性ということを考慮して国庫補助も可能だとは思いますが、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律があり、財産処分等いろいろ規制があります。特段の配慮がされるよう国に求めていかなくてはならないと思いますが、見解をお伺いいたします。
 次に、ダイオキシンの一日当たりの耐容量については、厚生省は十ピコグラム、環境庁は五ピコグラムと評価が違います。厚生省は、研究班の検討結果を経て設定した耐容一日摂取量すなわちTDIですが、これは健康影響という観点から定めたもので、一生涯にわたって一日当たり摂取しても耐容される量と言われています。一方、環境庁の健康リスク評価指針値は、環境保全対策を講ずるに当たっての目安となるように、人の健康を確保するために、より積極的に維持されることが望ましい水準と言われています。
 厚生省は健康への影響、環境庁は環境保全対策に当たっての目安と、その性質が異なってはいますが、こういった考え方が妥当なのかということについては大いに疑問のあるところであります。どのような見解をお持ちでしょうか、お伺いいたします。
 以上で、一回目の質問を終わります。
○議長(町田 亘君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 総務部長中山次郎君。
 〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 森本議員の、携帯・自動車電話等からの一一九番通報接続についての質問にお答えします。
 携帯電話等からの一一九番通報については、ご指摘のとおり、本県においてもいまだ接続がされておりませんが、携帯電話の急速な普及等により、この問題は社会問題として顕在化しつつあると同時に、人命救助等の緊急性という観点から重要な問題と認識しているところでございます。
 携帯電話からの一一九番通報は、災害発生地を管轄する消防本部に直接通報する方式が強く望まれるところでありますが、現在の通信事業者の技術開発状況においては対応が非常に困難でございます。こうしたことから、現在、県内を四地域に分割し、それぞれのブロック内で代表消防本部を選定し、当該消防本部から近隣の消防本部へ転送する、いわゆる分散受信方式システムの導入について消防機関とともに鋭意検討を重ねているところでございます。しかしながら、この方式を採用するに当たっては、消防本部間の接続方式や費用分担面の調整等困難が予想されますので、県といたしましても、関係機関と密接に協議しながら、こうした問題を解決の上、携帯電話からの一一九番通報接続を早期に実現すべく積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 生活文化部長中村協二君。
 〔中村協二君、登壇〕
○生活文化部長(中村協二君) 森本議員のご質問についてでございますが、ダイオキシン類発生防止対策等について、十一項目のうち十項目についてお答えをいたします。
 まず調査結果から得たノウハウを生かして現状の改良をという質問でございますが、ダイオキシン類の生成は、摂氏三百度から八百度の間で多く生成することから、議員のご指摘にもありました、燃焼特性の改善のための定量投入や分別収集、また排ガス処理施設の温度管理や処理施設の改善等、国等からの情報収集に努め、少しでもダイオキシンの削減につながる方策を市町村とともに研究してまいりたいと考えてございます。
 二番目は、全施設の測定結果の報告と信憑性についてでございます。県下の一般廃棄物焼却炉は三十一施設ございます。このうち、現在ダイオキシンの測定結果を報告されている市町村及び事務組合は二十八施設ございます。未報告の施設につきましては、現在更新中の施設と処理能力が五トン未満で当初報告の必要がないものとされていた施設もありますが、できるだけ早期に報告するよう指導してまいりたいと考えております。また、測定結果につきましては、緊急対策の基準値八十ナノグラムを超えた施設は海南市ほか三施設となってございまして、既設の恒久対策の基準値五ナノグラム以下の施設については白浜町ほか一施設となってございます。また、一部の市町村で転記ミスがありましたが、分析機関については高度な施設及び能力を持って測定されているところでございますので、測定結果は信頼いたしてございます。
 次に四番目の測定の調査方法についてでございますが、ダイオキシンの測定については、非常に低濃度で、かつ精度を要求されることから、現場での測定時間が四時間程度必要でございますので、ご指摘の点については望ましいこととは思いますが、現状では測定技術上困難があると考えます。また、各施設によって炉の型式や公害防止装置等も異なりますし、同一施設においても第一炉と第二炉が異なる状況にあるものもございますので、実態に応じた個別の炉に対して管理基準等を見直していく中で、初期変動等も含めてダイオキシンの測定等について今後研究していかなければならないと考えてございます。
 五番目のご質問、焼却灰の処理実態と今後の対策についてでございますが、電気集じん機等から個別に排出される集じん灰は、特別管理廃棄物としてセメント固化、薬剤処理等の無害化処理を行い処理することになってございます。現在、九市町村では既にこういった処理を実施してございますが、今後、灰の溶融スラグ処理等も含め、この方向で行うよう指導を行ってまいりたいと考えてございます。
 六番目の焼却施設における作業員の健康問題についてでございますが、県下市町村においては、安全衛生管理要綱はもちろん、作業環境の改善について日々努力されているところでございますが、これを機会になお一層、ダイオキシン問題も含めた作業環境の改善を指導してまいりたいと考えてございます。
 七項目め、ガイドライン達成について各施設の実情と今後の取り組みについてでございますが、各施設の現状については、八十ナノグラムを超えた施設が四カ所ございまして、それらの焼却炉については早急に緊急対策を行って濃度を下げるよう、また新設の炉については恒久対策基準を達成するように指導を行ってまいります。さらに、その他の焼却炉についても、できるだけ排出量の少ない焼却方法等を指導してまいりたいと考えております。
 八項目め、施設によって違う基準値ではないかというご質問でございますが、早急に実施すべき緊急対策基準値は八十ナノグラムであり、今後新設される施設に対する恒久対策基準は〇・一ナノグラムと定められてございます。ご質問にもございますように、非常に困難を伴いますが、できる限り恒久対策基準に向けて少しでもダイオキシンの削減対策に努力すべきものと考えております。
 九項目、地域の実情に即した整備についてでございますが、一日当たり百トン以上の全連続炉を考えますとき、広域化を図らなければならず、ご指摘のような問題もありますが、現段階ではダイオキシン対策としては広域化とごみ燃料化がございます。ごみ燃料化については、燃料化後の受け入れ先が問題でございますが、大規模な集合処理が可能なことからダイオキシン対策が可能であると考えられますので、今後市町村とともに研究してまいりたいと存じます。
 十項目めの新しい施設の更新にペナルティーがかかるのではないかというご質問でございますが、国の補助金の対応についてもご指摘の問題がございまして、大変苦慮しておるところであります。各県とも共通の課題でございますので、国及び他府県の動向を踏まえ、国への要望等、機会をとらえて積極的に行ってまいりたいと存じます。
 十一項目めの一日当たりの耐容量についてでございますが、厚生省の耐容一日摂取量は一般廃棄物焼却炉の排出口における排出基準を求めるための算定基礎でございます。また環境庁の方は、より積極的に維持することが望ましい水準、すなわち環境基準的な考え方をもって定められたものでございます。したがって、環境中のダイオキシンについては、行政目標として最終的には環境庁の基準に向かって推進すべきものと考えております。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 放送大学地域学習センターと学校におけるダイオキシン問題の二点についてお答えいたします。
 まず放送大学地域学習センターについてでございますが、国においては昭和六十年度から電波受信可能な関東圏の一都六県で放送による授業を開始しております。平成二年度から全国をブロックに分け、人口規模等を勘案しながらビデオ学習センターを順次指定し、整備してきたところであります。さらに六年度からは、放送大学の全国化事業として、各府県において大学等と連携しながら地域学習センターの設置を進めてきております。
 こうした中で本県といたしましても、その早期設置を重要な課題として受けとめ、取り組んできたところでありますが、設置場所の選定等から今日に至った次第でございます。現在、交通の利便性や施設の規模、機能等の観点から高松地区の和歌山大学キャンパスを活用して、十八歳以上の県民を対象に、平成十年度後期から開設できるよう放送大学学園及び文部省、並びに和歌山大学と協議を重ねているところです。
 議員ご指摘の学習センターについては、高度で多様な学習内容を広く県民に提供するとともに、本県の生涯学習推進の基盤整備を図る上で大変重要であると考えます。文部省においては、放送衛星の打ち上げ後に全国化を進めていく予定であると伺ってございますが、本県としては、国のこうした動向を踏まえ、地域学習センターから速やかに学習センターへの移行ができるよう積極的に働きかけてまいる所存でございます。
 次に、学校でのダイオキシンの問題についてお答えいたします。
 学校におけるごみ処理については、学校環境衛生基準に基づき指導しているところであります。このたび本県における公立学校の実態調査を実施いたしましたが、その結果によると、空き缶類、瓶・ガラス類、新聞紙・雑誌類については約九〇%が分別回収されております。また、ペットボトル・プラスチック・発泡スチロール類については四〇%程度という状況でございます。現在、必要な対応策といたしましては、分別収集を徹底するとともに、ダイオキシンの発生の疑いがある物質を焼却しないようにすることなど、全学校に対し指導してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(町田 亘君) 以上で、森本明雄君の質問が終了いたしました。
○議長(町田 亘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 25番神出政巳君。
 〔神出政巳君、登壇〕(拍手)
○神出政巳君 おはようございます。
 議長のお許しを得ましたので、通告に基づき順次質問させていただきます。
 「成功は必ず、怠惰・自己満足・思い上がりを内包し、一度成功した者は、次の機会にはえてしてボートのオールを休めているものである。 社会の解体は自己決定能力の喪失から始まり、その原因は変化に対し新しい適切な制度が生まれず、はかない自我・制度・技術の偶像化に執着することに求められる」と、イギリスの歴史家トインビーは、著作「歴史の研究」に多くの教訓を残しております。諸文明の盛衰を環境変化という挑戦(チャレンジ)とそれへの対応(レスポンス)という視点から分析しております。
 日本は今、政・官・財社会を構成する各種の組織が自己決定能力を失い、解体過程に入っているところであります。少なくともそういう仮説を立て、各人、各組織が自己の現状を冷静に判断すべき大切なときであります。しかし、いたずらに悲観論のみを声高に叫ぶのはどうかと思われます。かといって、国際化・メガコンペ大競争時代という歴史の挑戦に迅速に対応しなければ、日本が世界の時代の流れの中から取り残されてしまう危険性は大であります。今や、各界各層のリーダーは自己責任の時代が来たことを強く自覚し、変革の時到来に備えるべきであります。
 本県においても西口知事は、「本気で変える」という理念のもとに、就任以来二回の予算編成、機構改革初め多くの課題に取り組み続けてこられました。
 予算編成についてお伺いします。
 前回登壇しお尋ねしたときの答弁は、国、県とも非常に厳しい財政状況であり、必要な財源確保が課題である、県職員が地方自治の根本である「最少の経費で最大の効果を挙げる」ということを再認識し、県民ニーズに対応しながら、行政改革大綱に沿って効率的、効果的な行財政を進めていくことが大切と考える、財源の重点配分、事業の重点整備化にも一層取り組みたいとのことでした。そのとおりであり、納得したところであります。
 しかし、その後、国の方は大きく揺れ動いてきました。二〇〇三年度までに国と地方の財政健全化を目標とし、橋本首相を議長とする政府・与党の財政構造改革会議は、六月三日、分野ごとの数値目標を盛り込んだ歳出削減策を最終報告としてまとめ、十六日には向こう六年間の時限立法で歳出削減策を盛り込んだ仮称・財政構造改革法案の骨格を了承しました。九八年度の公共事業は、前年度比七%減、社会保障の増額は三千億円以下など、個別分野の歳出削減目標を反映し、法的な拘束力を持たせたのが特徴であるこの法案は、秋の臨時国会に提出、成立を目指すというものであります。あたかもこのようなとき、六月十九日、知事は上京され、新規九項目を加え、四十四項目から成る本県の平成十年度政府予算等に関する重点事項を県選出国会議員、そして各省庁へ説明、要望に回ってこられたところであります。
 仮称・財政構造改革法案に対する見解、今後の対応、平成十年度政府予算等に関する重点事項の要望活動の感触、平成十年度県予算編成に臨む基本方針について、知事より答弁願います。
 引き続き、知事にお尋ねします。
 以前の議会で、先輩の堀本・新田両議員からもご指摘のあった三重県などの予算編成見直しの動きについてどのようなお考えをお持ちなのか、担当部への検討の指示はなされているのか、答弁願います。
 使い切り予算返上、節約システム、事業自己評価など、システム改革を伴わなければ、職員一人一人に節約、合理化意識の徹底は図れないものと思われます。この新しい試みは、厳しい財政状況に追い込まれた大阪府で早ければ来年度予算編成から節約システムを主に導入とのこと、また奈良県でも知事の指示で財政課、人事課で検討中とのことであります。
 引き続き、大きな観点より機構改革ということで、仮称・南近畿政府構想について、知事にお尋ねします。
 「地方行革 合併に活路」ということで、市町村合併の構想が全国で百十カ所に及んでいることが日経新聞の調査で明らかになりました。三年前の調査に比べ三割近くふえているとの記事が六月五日付朝刊に掲載されました。他県の知事が熱心に取り組んでいる主なものでは、埼玉県の顔となる都市の誕生に向けて政令市の実現ということで、浦和、大宮、与野の三市合併構想を掲げる「さいたま新都心計画」、そして山口市と小郡町の合併、中核都市づくりなどであります。また、東京都と茨城県では合併交付金を制度化しており、熊本県が特別融資枠や補償制度を設置しているところであります。
 全国市長会や全国町村会など地方六団体が五月末に研究会を設置するなど、合併実現を目指す機運が全国的に高まりつつある地方分権の流れの中で、福祉や都市計画を初め行財政改革を強化することが求められています。介護保険導入をにらみ、体制を整えなければならない差し迫った課題もあります。地方財政が悪化する中で地方行革を進めることもねらいであり、経費節減効果は職員数、議員数が減ることで給与、報酬総額の大幅な減額が見込め、これに加え重複する公共施設などを効率化することもできます。反面、合併を推進するには障害も多いとのこと、財政バランス、行政サービスの低下の懸念等、効率性だけでは推進できないとの反対論も強い、今後は地方制度調査会が検討している政府の支援策では、財政支援に加え住民投票制度の活用なども重点になるということであります。
 以上の動きの中で、和歌山県下の五十市町村では目立った動きはないものの、社団法人橋本青年会議所が橋本、伊都は一つということで、昨年秋より運動が芽生え始めてきたところであります。県行政の中では、とりわけ農林水産部関係での農協合併や森林組合合併の指導も強まってきたところでありますが、ここで提言し、知事にお尋ねします。
 以前にも、先輩議員の方々が本会議でただされた将来の和歌山県像ということであります。私が思うには、市町村合併は県主導でということはなかなか難しいように思います。おのおのの地域住民、行政の考え方が優先されます。そして、近い将来に幾度も合併ということは困難でありますので、和歌山県で推進する場合、自立できる地域づくりを目指し、例えば圏域よりも広い、近々緩和が予定される中核市要件を満たす受け皿、すなわちせめて県内で三ないし五カ所、衆議院の小選挙区に匹敵するぐらいの箇所に集約できるよう対処されてはと、私見を申し上げておきます。
 そこで、将来の和歌山県像というものを考えるとき、まず県は県で、和歌山、奈良、三重の三県合併というか、地方連合政府づくりを考えてみてはいかがということであります。今春、策定がめどとなっていた公共事業費の抑制で九月以降に延びた新しい全国総合開発計画や、第十二次道路整備五カ年計画への紀淡連絡道路の明文化、事業化初め、大阪湾ベイエリア開発推進、関西国際空港整備促進等では、西口知事は常々、オール関西、近畿二府四県プラスアルファ等の各界各層への呼びかけを行い、運動の先頭に立たれているわけであります。来るべき二十一世紀には、世界の流れに対応し、外交、防衛問題等にのみ携わる小さな中央政府と、地方連邦制、道州制による地方政府の役割分担は待ったなしになるものと考えます。
 そのようなとき西口知事は、就任以来、紀伊半島三県知事会議、教育長会議、土木部長会議等を今日まで持ってこられたところであり、議会の方でも三県正副議長会議を持っております。とりわけ、共通の課題が多い三県であります。予算規模、人口を見ると、和歌山、奈良、三重の本年度当初予算の合計は約一兆九千億円、今春の人口合計は約四百四十万人、ちなみに兵庫一県では、予算はほぼ同じく約一兆九千億円、人口は百万人多い約五百四十万人であります。前段申し上げた市町村合併の際のメリットとデメリットも勘案され、まず試みに、この世紀末のときに、百年前の江戸時代にはほぼ一つであったこの三県の副知事同士ぐらいのレベルで、仮称・南近畿政府の実現について協議を始めてみてはいかがでしょうか、答弁願います。
 次に、公共工事費削減の流れと街路整備について、土木部長にお尋ねします。
 本県では、六月十六日、政府の指針、四月の閣議決定、自治省事務次官通達に基づき、近畿二府四県で初めて、公共工事のコスト削減に取り組むため、土木部長を部会長とする公共工事コスト縮減対策部会を設置されたとのことであります。副知事を会長とする県公共事業施行対策連絡会議内に置かれ、土木部技術調査課が事務局となるとのことであります。主な議題は、公共施設の工事計画、設計の見直しほか、十二月と年度末に集中する工事期を年間満遍なく振り分け、人件費、資材費、発注単価の安定化を図るなどとなっており、九九年度末までの三年間で工事請負費を一〇%カット、九七年度当初予算ベースで約百四十億円を目標にするとのことであります。国の財政構造改革会議がまとめた公共工事費抑制策、九八年度には七%減、三年で一五%縮減まで進めるということに対応していこうとするものでありますが、社会資本の整備がおくれている本県にとっては大変厳しいものであります。
 そこで、公共工事費削減の中で、見直しの詳細について土木部長より答弁願います。
 また、特に道路整備については県政の重点課題の一つとして、財源確保では西口知事は朝日新聞朝刊「論壇」に投稿されるなど、ありとあらゆる手段を講じ、ご尽力いただいているわけでありますが、気にかかるのは中でも市街地内の道路のおくれであります。
 和歌山県の都市計画道路の整備状況は、平成六年度末で七市十四町で、計画延長五百七十六・九三キロメートルに対し、整備済み延長百七十八・二九キロメートル、整備率で三〇・九%であります。郡部、内陸、山間部の道路整備は頑張っているように思えるのでありますが、市街地内の幹線道路である県道で、幅員が狭隘で交通に支障のあるものや渋滞しているものがあり、その整備がなかなか進まないのが現状であります。これは、事業用地の確保のための地元調整の難しさや用地買収に多額の予算を要することが主な原因であります。整備を進めていくには、用地交渉等の事業推進体制の充実や予算の確保などが必要なのは当然でありますが、さらに公共事業を取り巻く状況が厳しくなる中、効率的な事業実施を進めるために、既に決定されている計画を、例えば道路の機能に応じた幅員の縮小も含めた検討をするなど、必要に応じて見直しを行ったり、重点的な事業実施をさらに進めるなど、限られた財源の中で早く効果が出るように計画的に進める必要があると思いますが、都市計画道路の整備について土木部長より答弁願います。
 続きまして、港湾内の遊漁船等の係留について、土木部長にお尋ねします。
 近年、マリンスポーツやアウトレジャーの人気が高まり、水難事故やトラブルがふえていることから、水上の安全対策やマナー向上を促進する和歌山県水上安全協会の設立発起人会が六月十二日、サンピア和歌山で開かれたとのことであります。西口知事ほか県内有力企業の代表者など約五十名の発起人が参加、席上、知事は、利用者や関係事業者の安全意識、マナーの向上などの安全対策を推進していくことが重要と指摘され、続いて同協会の設立の経緯が説明されたということであります。同協会が行う主な事業は、水難事故の速報や事業者、利用者に対する救急法の講習、危険水域の調査などであり、ちなみに県警本部の発表によれば、昨年の水難事故は五十九件あり、死者は三十一名と、過去十年間で件数は最高、死者数は二番目に高い発生とのことであります。
 そこで、常々、私自身感じていることでありますが、水上の安全対策やマナー向上を促進することと同時に、遊漁船やプレジャーボートなどの保管について、もう少しきちっと対処できないかということであります。
 近年、漁港施設整備では、漁港利用調整事業としてフィッシャリーナ整備事業で、漁業関係者の理解のもと遊漁船の停泊できる漁港整備にも取り組まれているところであり、民間でも立派なマリーナができつつあるところであります。しかし、和歌山下津港、海南築港、琴の浦湾初めかなりの港湾施設で正式許可のないまま係留されている実態を目の当たりにするところであります。
 第一点、現状をどのように把握され、考えておられるのか。
 第二点、現在、正式に許可のないまま係留している遊漁船等に対し正式許可を与えるべく指導し、きちっと賃料を取り、その財源で港湾のしゅんせつや施設の整備を図っていけないのか。
 第三点として、今後、遊漁船等の売買時には自動車の場合の車庫証明と同じく、係留場所の証明を義務づけられないのかを関係機関と協議できないか。
 以上、土木部長より答弁願います。
 最後に、路上生活者対策について取り上げたいと思います。
 最近、JR和歌山駅近くや和歌山城公園内初め、拙宅の周辺でも、路上生活者、野宿生活者、マスコミ用語ではホームレスの人々の姿をよく見かけるようになってきたところであります。
 以下、三件の関係事例を申し上げます。
 一つは、昨年一月二十四日には、東京都庁により新宿駅西口地下街で約四百名のホームレスが強制排除された件であります。通行妨害、悪臭などの苦情が新宿駅や近隣商店街から出され、東京都による動く歩道建設工事にも支障を来し、退去勧告をしたが従わなかったためということであり、四名の公務執行妨害による逮捕者も出ました。ことし五月のメーデーには、新宿駅前広場において全都野宿者の集会が持たれ、「仕事を与えよ。住むところを与えよ」とのシュプレヒコールが繰り返されたとのことであります。
 二つ目は、一方、大阪府下でことし三月に、「ホームレスをからかうのがおもしろかった」と、寝屋川市の中学生十四名がホームレス男性に対するエアガン襲撃事件で摘発された件であります。検挙された少年たちは、罪の意識もなく、動機について淡々と供述したと報道されております。彼らは、非行歴もない表面上まじめな生徒であり、それだけに余りに常軌を逸した行動は、通っていた中学校関係者を中心に大きなショックを与えているとのことでありました。襲撃事件で被害に遭ったホームレスの男性六十三歳は、アシの茂る淀川の河川敷で、散乱した生活用品や壊されたテント小屋を見詰めながら、「悔しいというより惨めな気持ちになった」と事件を振り返ったということであります。
 少年問題に詳しい森田洋司大阪市立大学教授は、ホームレスを邪魔な存在ととらえる大人社会の偏見がそのまま子供たちに反映していると分析、欲求に素直に生きる考えが、そのまま抑制のきかない未成熟な子供たちを生んだと、凶悪化する少年犯罪の背景を説明されています。大人社会は、少年の暴走のきっかけばかりか、増長させる環境までもつくっているとも言えるのであります。
 三つ目は、同じく大阪市あいりん地区での日雇い労務者たちの胃袋を支えてきた炊き出しが、四月から一日三食から一日二食に減ったとの件であります。四年前の米不足の際に大量流入し、余ったものをかき集めたタイ米が底をつき始めたということで、長引く不況で仕事の少ない時期だけに、労働者たちの生活に重くのしかかっているということであります。炊き出しをしている釜ケ崎炊き出しの会では、「路上生活者の中には体を壊している人も少なくない。どんな米でもいいから援助してほしい」と呼びかけをしているとのことであります。大阪市では、ここ十五年来、毎年、百五十人を超す人々が、公園や路上、簡易ホテルで、家族や親族にみとられることなく亡くなっているとのことであります。
 以上、ご紹介した東京や大阪の話は、本県にとっても他人事とは言えない身近に迫った問題でもあります。もちろん、路上生活者の一人一人が継続して働く意欲がない、計画性のある社会生活ができないということが最も大きな要因であり対処法が難しいのでありますが、県当局におかれては、このような一つの社会現象に対し、市町村と連携をし、実態の把握や今後の対策、そして治安上の体制整備に担当部局で取り組まれるよう要望し、第一問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(町田 亘君) ただいまの神出政巳君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 神出議員にお答えをいたします。
 まず、国の財政構造改革についての見解をということでございます。
 国においては、去る六月三日、財政構造改革を推進し、歳出の改革と縮減を着実かつ強力に進めていく旨の閣議決定がなされたわけでございまして、目下、そのための法案づくりの作業が進められてございます。このたびの財政構造改革は、主要先進国の中でも最悪の危機的状況にある我が国財政の構造的改革を進めることが、来るべき二十一世紀において効率的で信頼できる行政を確立し、安心で豊かな福祉社会、健全で活力ある経済社会を実現するために避けて通れない課題であるという考え方に立つものでございます。今後、官と民、国と地方を通じて総力を挙げて取り組んでいかなければならないと考えてございます。ただ、その場合においても、単なる財政収支の改善、あるいは一律の歳出カットという次元にとどまるべきものではなく、各地域の実情を十分に踏まえ、活力ある地域社会を築いていくんだという視点が不可欠であろうと考えてございます。
 去る六月十九日には、平成十年度の政府予算等に関する重点事項の要望活動を行ったわけであります。財政構造改革の推進方策が閣議決定された直後でもございましたので、各省庁では厳しさと同時に戸惑いも感じられたわけでございます。しかし、真に整備がおくれている分野、地域への重点化、国土の均衡ある発展と整備水準についての地域間格差の是正が重要な課題であるという認識は得られたと思っております。今後とも、半島に位置する本県の社会資本の整備充実、あるいは高齢化への対応策の必要性など、本県の実情をしっかりと訴えまして関係者の理解を得るべく、さまざまな機会を通じ、さらにまた議会の先生方のご協力も賜りながら、政府予算の獲得に向けてさらに努力を続けてまいりたいと考えてございます。
 次に平成十年度の予算編成については、今申し上げた国の財政構造改革の動き、あるいは社会経済動向等を慎重に見きわめながら検討していきたいと考えておりますけれども、県財政を取り巻く諸条件から総合的に判断いたしまして、少なくとも現時点における見通しとしては、次年度予算は極めて厳しいものになると思っております。しかしながら、その中にあって喫緊の政策課題に適切に対応いたしまして和歌山新時代の展望を開いていくためには、限られた財政資金の重点配分、歳出の合理化、効率化をより徹底していく必要があろうと思っております。今後、そのための取り組みを進めてまいりたいと考えているところであります。
 また、他の府県においても、同様の問題認識から予算編成システムに種々の改善策を講じようとしていることは、議員お話しのとおりでございます。こうした事例も参考にしながら、本県の実情に合った予算編成システムの改善を図ってまいりたいと思っております。そのための具体策として、次年度予算編成の基本方向を検討する庁内政策協議を早急に実施いたしまして、複数部局にまたがる政策テーマなどについては組織横断型の予算編成手法を導入するなど、新たな視点からの予算編成作業を既に事務当局に指示しているところでございます。
 次に、ご提言の本県と奈良県、三重県との問題でございます。
 目下、紀伊半島三県知事会議などの場において、太平洋新国土軸の構築、総合交通体系の整備、災害時における協力体制の確立、南紀熊野体験博を中心とした紀伊半島リレーイベントの実施などの広域的事業について三県共同で取り組むことに合意をしておるわけであります。
 具体的には、本年度から三県の高等学校のテレビ会議システムの導入、紀伊半島民俗芸能サミットの開催、三県共同組織である吉野熊野地域振興協議会の東牟婁県事務所内への設置など、事業の具体化を図っておるわけでございます。今後とも、こういった広域的に展開が可能な事業を積極的に推進することによりまして、三県の協調、連携の強化を図っていきたいと思っております。
 議員からご提言のございました、仮称でありますが南近畿政府構想については、昨今、市町村合併あるいは全国十二州制などの論議もあるわけでございます。先般も、広域行政などについて自治大臣と知事会有志との政策懇談会がございまして、私も出席をして意見交換なども行ったところであります。かつて本県にも阪奈和合併が議論された時期もあるわけでございますけれども、今お話のありました三県合併構想などについては、将来の広域的な圏域の一つのご提言ということで目下は承らせていただきたいと思っております。
 以上であります。
○議長(町田 亘君) 土木部長長沢小太郎君。
 〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 神出議員のご質問にお答えいたします。
 まず、公共工事費削減の中での見直しについての見解でございます。
 厳しい財政事情のもと、限られた財源を有効に活用し、より効果的な公共事業の執行を図るために、工事費のコスト縮減を推進していく必要がございます。土木部では、本年度、施行の効率化や再資源の活用等についてのモデル工事を行うこととしております。さらに、本年四月に閣議決定された公共工事コスト縮減対策に関する行動指針を踏まえ、県として全庁的な取り組みを行うために、公共工事コスト縮減対策部会を設置したところでございます。対策の内容については、工事の計画、設計、発注、実施の各段階での効率化等により、公共工事のコストを少なくとも一〇%以上の縮減を目指すこととしております。このため、平成十一年度末までにすべての施策を完了し、この期間中におおむねの縮減効果が得られるよう努力をしてまいりたいと考えております。
 次に、都市計画道路の整備に関するご質問でございます。
 都市計画道路は、市街地における都市活動を支える重要な基盤施設であり、都市生活を安全快適に送るために必要不可欠なものであります。県、市町村ともに都市計画道路の整備に積極的に取り組んでいるところであり、事業執行体制の強化や予算の確保に今後とも努めてまいります。また既定の計画についても、社会情勢の変化等に伴い、計画の見直しが必要なところについては、都市計画の主体である市町村の意向を踏まえながら進めてまいります。
 公共事業を取り巻く状況が厳しくなっているところから、早期に事業効果を発揮させるために重点的に整備を進めることが必要と認識しており、効率的、効果的な事業実施のための道路全体の整備プログラムを策定すべく検討を進めております。
 次に、港湾内の遊漁船等の係留についてのご質問でございます。
 現状の把握についてでございますが、遊漁船等プレジャーボートの放置状況調査については、昨年の平成八年度を含めて過去三回実施して状況の把握に努めているところであります。平成八年度調査に基づく県内の遊漁船等プレジャーボートの状況については、その総数は約五千八百隻で、そのうちマリーナ等の施設への保管艇は約一千隻のみであり、いわゆる放置艇は約四千八百隻となっております。また、このうち港湾区域内への放置艇は約二千七百隻となっております。
 次に、正式に許可し、適切な対応をということでございますが、放置艇が引き起こす問題として、係留場所の私物化、公共施設の破損、船舶航行の支障、災害発生時の被害の拡大、周辺住民とのトラブル等、種々の問題を含んでおり、対策として適切な受け皿の問題が喫緊の課題と考えております。
 そこで県では、一千隻収容規模の和歌山マリーナシティを整備中のほか、平成八年度までに和歌山下津港内の三カ所に遊漁船等の小型船舶を係留するためのプレジャーボートスポットの整備を行い、およそ百三十隻を収容しているところであります。なお、施設の使用料については、議員ご指摘の施設整備費用に充当するまでには及びませんが、和歌山下津港等の港湾の維持及び管理費用に充てられることとなっております。
 最後に、遊漁船等への係留場所の義務づけについてでございますが、受け皿となる施設が大幅に不足している現状では非常に困難であります。現在、国においては、運輸省、建設省及び水産庁が協力して、港湾、漁港及び河川におけるプレジャーボートの係留、保管のあり方を検討しているところであり、今後その動向を踏まえながら、安全で秩序あるプレジャーボートの係留、保管方法を検討してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(町田 亘君) 以上で、神出政巳君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(町田 亘君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時三十三分休憩
 ─────────────────────
 午後一時四分再開
○副議長(下川俊樹君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(下川俊樹君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 17番谷 洋一君。
 〔谷 洋一君、登壇〕(拍手)
○谷 洋一君 私は、ふるさと東牟婁地方の活性化の観点から、南紀熊野体験博の成功に向けての諸問題、救急医療問題、吉野熊野地域振興協議会の具体的方向の三点についてお尋ねいたします。
 まず、南紀熊野体験博についてお尋ねいたします。
 熊野地域の振興は焦眉の急を要する問題でありますが、紀南地域全体の活性化の起爆剤として、かねてから西口知事が提唱されていた南紀活性化イベントと呼ばれていたものがついに「南紀熊野体験博」という形で具体化されたことは、まことに喜ばしいことであると感じています。
 先ごろ、私のところにも南紀熊野体験博の基本計画書を送っていただきましたが、この基本計画書によりますと、「開催の目的と意義」として、「『ジャパンエキスポ 南紀熊野体験博 リゾートピアわかやま99』は、『世界リゾート博』の成功を受け継いで、さらにすすんで現実体験としてのリゾートライフを提案し、実証し、実現することを開催の目的とする。 また同時に、ジャパンエキスポの認定のもとに、南紀熊野地域の豊かなリゾート資源の高度な活用を図り、活力に富んだ個性豊かな地域経済社会の構築の実現をめざす」とあります。まさにこのことが、私がかねてから主張してきた点なのでございます。
 過疎化や高齢化の進行に悩む熊野地域──その熊野地域の活性化について、私は昨年六月議会においても質問し、昨今の全国的な自然志向、アウトドア志向は願ってもない天の時であり、熊野独自のすばらしい自然や歴史という地の利を生かし、地域の温かい人の和を形づくることが必要だということをお話しさせていただきました。そういった条件を十分に踏まえたすばらしい博覧会が実行されるよう、東牟婁・西牟婁地域の住民はもとより、多くの県民が大いに期待し、注目するところであります。
 そこでまず、この博覧会を熊野地域の振興という観点からどのような位置づけをしておられるのか、基本的な認識について知事のご所見をお伺いしたいと思います。
 次に、体験博の具体的な問題について幾つかお伺いしたいと思います。
 まず一点目として、基本計画書を読んで、ある程度私なりに博覧会のグランドデザインというか概要については理解しているつもりですが、改めて、どんな特徴を持つ博覧会であるのか、説明をお願いしたいと思います。
 二点目は、他府県との連携についてであります。ご承知のとおり、南紀熊野地域は奈良県や三重県と隣接しており、基本計画書においても、関連広域地域として奈良県や三重県の名前が挙がっております。また去る六月一日には、和歌山県、奈良県、三重県の三県が集まって、吉野熊野地域の活性化を図るため吉野熊野地域振興協議会が設立されましたが、これらの県との連携は具体的にどうなっているのか、お伺いいたします。
 三点目は、現在の進捗状況についてであります。今回の体験博は平成十一年四月から実施される予定であるとのことですので、計算いたしますと、既に残された期間は一年九カ月程度しかございません。非常に切迫した状況であると考えられますが、県及び市町村の取り組み等、現在の進捗状況はどうなっているのか。
 以上三点につきまして、生活文化部長の答弁をお願いしたいと思います。
 それから最後に、地域住民からの提言を一つ披露したいと思います。
 基本計画書によりますと、今回の体験博について、「個別イベントの企画、実施に南紀熊野のそれぞれの地域の住民が主導して企画、プロデュース、運営を行うことを基本とする」とされております。いわゆる住民主導の考え方であります。私も、地域の活性化を目的とするならば、住民主導による地域の盛り上がりが非常に重要ではないかと考えており、そういった地域の盛り上がりの中から沸き上がってくる住民のアイデア等を吸い上げて博覧会のイベント等に反映させることが大切ではないかと考えています。
 先ほども述べましたように、この博覧会は多くの県民が注目するところであり、特に直接対象地域である東牟婁地域等の住民の期待は大きく、早くも私のところに地元の方々からさまざまな提言、要望が寄せられております。その中で特に検討していただいてはと思われるものがございました。それは、シンボルパークとして予定されている那智勝浦町体育文化会館の多目的アリーナにおいて、南紀熊野体験博のテーマを明快に、しかもダイナミックに表現するために大型特殊映像システムを設置して、それによるシミュレーター体験というものを設定してはどうかという提言であります。
 一九七〇年に大阪万国博で初の試みとして行われた仮設シアターにおける体験映像シミュレーターは、その後の東京の宇宙博、筑波の科学博等で大きな注目を浴び、特殊撮影、特殊映写技術の進歩と相まって、今や博覧会になくてはならない出し物の一つとなっています。世界リゾート博におけるドーム映像「水と大地のうた」の空中撮影による臨場感あふれる映像は、今でも私たちの脳裏に鮮明に焼きついています。
 古来より先人たちが究極の信仰を求めて訪れた熊野三山、数多くの人たちに踏み締められコケむした熊野古道、日本一の高さを誇る那智の滝、静寂の瀞八丁、黒潮躍る熊野灘のほか、熊野の地には数え切れないほどのロマンあふれるリゾート資源がいっぱいです。これらの資源が高度な特殊撮影技術やコンピューターグラフィックスを組み合わせた映像におさめられ、さらに立体映写等の最先端技術を駆使した視覚表現システムで巨大スクリーンに再現できたら、これはまさにこの博覧会のテーマである「こころにリゾート実感」そのものであり、訪れた人々は臨場感あふれる、リアルでダイナミックな映像に魅了され、当地方のすばらしさをきっと隅々まで体感し、満喫していただけるのではないでしょうか。さらに、体験博終了後においても町づくり事業の中核的な施設として活用することができると考えますが、いかがでしょうか。一考されるよう提案いたします。
 続きまして、紀南地域における救急医療等の充実についてお尋ねします。
 この問題につきましては、昨年の六月議会においてもお尋ねし、「圏域内における医療機関の機能分担と連携を進めていくためにも、地域の実情やご要望をお聞きしながら必要な協力を行い、新宮・東牟婁地域の県民の皆様が安心して住み続けられる医療体制の実現に努めてまいりたい」との部長答弁がありましたが、先日、新宮市の三月議会において市民病院の蜂伏地区への移転が決まったところであり、ぜひこの機会に新宮医療圏における広域的な地域医療のあり方について関係者が幅広く議論を行うべきではないかと考え、今回、再度お尋ねする次第です。
 新宮医療圏においては、医療機関の数や病床数などで見ると、単位人口当たりでは県平均を上回る値でありながら、私たち地域住民の間には、医療サービスが不足をしているという現実の感覚があるのも事実であります。これは、心筋梗塞や脳卒中等の救急患者に対する高度な医療が当地域には不足しているというところから来ているのではないかと思われます。
 そこで、新宮医療圏を含む紀南における救急医療体制の整備について県は基本的にどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
 また、近年の医学の進歩により医療の高度化・専門化が進む中で、個々の病院があらゆる医療ニーズにこたえられるように整備することは極めて困難なことであるということについては、私も理解しているつもりであります。国保直営の串本病院が、国保古座川病院が、那智勝浦町立温泉病院が、それぞれに地域の医療ニーズのすべてに対応しようとしても、それには無理が生じるでしょう。また財政面では、これら町営の病院は建物が老朽化し、経営面でも、町の一般会計から多額の繰入金を受け入れて何とか運営を続けているという厳しい状況もあります。
 いずれにいたしましても、人間にとって最も大事な命の問題です。東牟婁の住民は、病気になったらどうなるのかという不安に駆られ、県の医療行政に大きな期待を寄せているところです。新宮市民病院の整備内容が今まさに決定されようとしているこの時期に、これら町営の病院がそれぞれにどう機能分担して高度医療、専門医療に対応すべきか、地域医療の体制整備をどう図るべきか、関係者が一丸となって議論、検討を行う必要があります。
 この際に危惧していますのは、この問題は広域的に調整が図られなければならない問題であるがゆえに、県が積極的に指導または調整に乗り出さなければなかなかその検討も進まないのではないかということであります。この点について県当局はどう考えておられるのか。
 以上、紀南地域における病院間の連携促進、救急医療体制の整備に関して、福祉保健部長の答弁をお願いします。
 最後に、吉野熊野地域振興協議会についてお尋ねします。
 紀伊半島南部に位置する吉野熊野地域は、その独特な立地環境と風土により、古来からの伝統が脈々と受け継がれてまいりました。今議会冒頭に西口知事もお話しになりましたように、熊野は日本人の文化的、精神的なよりどころとして風格を備えた地域であり、また同時に自然、文化、歴史など固有のすぐれた資源を有している地域でもあります。しかしその一方で、本地域は日本最大の半島の南端に位置する厳しい地理、地形から他の地域と比較して人口の減少が著しく、過疎・高齢化が進展している状況にあります。産業面においても、かつて主要産業として隆盛を見た林業は、木材価格の低迷や外国製品の参入により衰退を余儀なくされ、農業、工業の集積も乏しく、押しなべて社会経済活動は低迷していると言わざるを得ません。
 こうした厳しい課題に対応すべく、西口知事を先頭にして県行政としてもこれまで、南紀熊野体験博、熊野地域活性化計画、熊野学研究センターなど、夢のある施策やさまざまな取り組みを展開されてまいりました。特に、昭和五十六年以来八回を経過した三県知事会議については、そのほとんどがこの周辺地域で開催されてまいりました。その中で、交通体系、観光振興等各種施策について、三重、奈良、和歌山三県の知事が活発な意見交換をし、内外に提案されてきたところであります。さらに、昨年は知事同士の議論の場もあり、実際に三県共同による調査事業を実施し、人づくり、リレーイベント等具体的な提案をするなど、新たな展開も芽生えつつあります。
 こうした流れの中、一つの成果として、去る六月一日、吉野熊野地域振興協議会が設立されたのであります。この協議会は、「奈良・三重・和歌山の三県境が接し、特に半島性が強い吉野・熊野地域について、奈良県・三重県・和歌山県の三県が協力して総合的・広域的な振興事業に取り組み、地域の活性化に寄与することを目的とする」となっております。また組織として、東牟婁振興局長を会長に、副会長として三重県県民局長、監事に奈良県企画部長、そこへ三県の地域振興局長を加えた協議会があり、その事務局を東牟婁県事務所内に置き、地域行政室長が事務局長を兼務し、本県はもとより三重県から専属の職員が配置されるなど、まさに地域に根差した実働的な協議会であると承知しております。さらに、その事業内容は、一、広域的に行う熊野体験博と連携したイベント等に関する事業、二、地域資源の利活用に関する事業、三、地域間の連携・調整に関する事業などとなっております。
 もとより熊野地域、吉野地域は奈良、三重、和歌山の三県境に接しつつ、歴史的、文化的にも密接にかかわりを持ちながら経過してきたところであります。そして、今も同じ課題を持ち、同じような苦しみを分かち合っております。今回、議論を超え、県境を越えてさらに一歩踏み出した本格的な協議会が発足したことは、この地域にとって大変意義深い一歩であると確信する次第であります。
 現在、熊野地域では毎年百五十万人を上回る観光宿泊客が訪れており、素材としての熊野は、徐々にではありますが、広く全国に浸透しつつあると言えます。長期的な視野に立って各種の施策展開の現状と余暇活用へと向かう時代の流れを考え合わせれば、今後、当地はかつてなかったような活気を帯びてくるのではないかと考えています。
 活性化に向けた土壌は、まさに調いつつあると言えるでしょう。二十一世紀まであと三年足らず。内外で大きな変化が叫ばれて久しいものがありますが、我が国の行く末を見きわめるような明確な答えは出ておりません。しかし熊野地域においては、現況とそれを取り巻く状況を顧みるとき、地域の未来がうっすらと見えてきているのではないかと考えております。そして、この数年間は、その未来へ向けて歴史的な変化を遂げなければならないときであると考えております。私たちは、厳しい現状と課題の解決に向けて、これからが正念場であることを肝に銘じなければなりません。
 そうした時期に設立されたこの協議会には、地域からも大きな期待が寄せられております。今回設立した協議会の趣旨を果たすことが熊野の未来につながるのであれば、私たちは今こそ懸命に動かなければならない。県と市町村、行政と民間、その垣根を超えて一人一人が未来のため、ふるさとのため何ができるのか、何をすればよいのか懸命に考え、動き始めなければならないと考えております。
 そこで、このたび設立された吉野熊野地域振興協議会は、長期的にはいかなるビジョンを持って、今後当面は具体的に何をしていこうとするのか、企画部長の答弁をお願いしたいと思います。
 以上で、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○副議長(下川俊樹君) ただいまの谷洋一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 谷議員にお答えをいたします。
 南紀熊野体験博に関する所見ということであります。
 私はかねがね申し上げておるわけでありますけれども、豊かな歴史文化をはぐくんできた和歌山県、それは古くから日本人の安らぎの地であり、心のふるさとであったわけで、このことを私たちはもっと認識し、誇りを持たなければならない、そのように思っております。
 本県が安らぎやいやしの最適地、すなわちこの体験博の基本テーマとしている「こころにリゾート実感」のできる地域であることを全国、さらには海外に広く情報発信をしていきたいと考えておるわけであります。
 議員のご意見にもございましたように、全国的な自然志向、アウトドア志向と相まって、本県の持つ豊かな自然や歴史、文化といった地域資源はその価値をますます高めてきつつあると思います。そうした流れを受けて県といたしましては、本年、第二回全国アウトドアスポーツフェア、さらに平成十年度には第一回シオフアジア子どもフェスティバル、仮称でございますが紀伊半島フィッシングフェスティバル98、また先日、平成十一年度の本県での開催が決定した地域伝統芸能全国フェスティバルといったフェスティバルであるとか、紀伊半島の一体的な振興の観点から奈良、三重の三県共同で開催をする紀伊半島民俗芸能サミット、さらに南紀熊野体験博に呼応した紀伊半島リレーイベントの実施が予定をされておりまして、それぞれの地域の盛り上がりや期待、関心度が大変高まっておるわけでございます。
 そうした中で、南紀熊野体験博により生み出される地域の担い手あるいは新たな地域産業などといった地域活力の高まりを博覧会終了後も継続をし、定着をさせることがさらに地域振興につながるものだと考えております。極めて重要なことだと思いますので、議員の一層のご協力をお願い申し上げます。
 以上であります。
○副議長(下川俊樹君) 生活文化部長中村協二君。
 〔中村協二君、登壇〕
○生活文化部長(中村協二君) 谷議員の南紀熊野体験博についての四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、特徴についてでございます。
 南紀熊野体験博は、一カ所に会場を定めて入場客を囲い込む従来の博覧会と異なりまして、南紀熊野地域を中心とする広域エリアでの展開を基本といたしております。具体的には、この体験博を象徴し、そこへ行けばこの博覧会の全体像がわかり、各地域で行われているイベントへの参加意欲をかき立てられるような場所として、田辺市の新庄総合公園と那智勝浦海岸の二カ所にシンボルパークを設置いたします。また、体験博の基本テーマである「こころにリゾート実感」を具体的にあらわす空間として、中辺路町から本宮町に至る熊野古道沿いをシンボル空間と位置づけておりまして、こうした広域展開が最大の特徴でございます。
 また、この地域のすばらしい自然、熊野古道や熊野三山に代表される歴史文化、地域の伝統行事等、地域のすべての資源を活用し、訪れた人々に実際の体験を通してこの地域のすばらしさを実感していただこうと考えてございます。したがいまして、体験博の中では、十万人のアリの熊野もうでのような大がかりなイベントにも増して、地域の皆さんが主体的に企画立案し運営していくイベント、例えば地域の人が豊かな経験を生かして釣りや山歩きなどのリーダーあるいはガイドを務めるといった体験型のイベントを重要視しておりまして、このことも特徴の一つと考えてございます。
 二番目は、他府県との連携についてでございます。
 ご承知のとおり、基本計画において三重県、奈良県は関連広域地域とされておりまして、さきの紀伊半島知事会議においても、南紀熊野体験博を紀伊半島全体のイベントとして位置づけることに両県知事の理解を得たところでございます。これを受けて平成十年度に、先ほど知事からも話がありました、三県共同で紀伊半島フィッシングフェスティバルを開催いたします。また、十一年度には南紀熊野体験博とそれに呼応したイベントが各県で計画されておりまして、熊野古道などの三県に共通した財産を生かしながら、相互のイベント実施、広報協力等、具体的な連携を図っていきたいと考えてございます。
 三点目、進捗状況についてでございます。
 まず、主催団体である南紀熊野体験博実行委員会は本年四月二十五日に設立をいたしまして、五月二十一日には第一回の理事会が開催され、基本計画が承認されたところでございます。さらに、六月一日に全庁体制から成る南紀熊野体験博推進本部を設置いたしまして、県としての推進体制を整えたところでございます。一方、西牟婁・東牟婁の市町村につきましては、田辺市、新宮市が県事務所に職員を派遣しているほか、順次推進組織を設置し、活動を始めているところでございます。
 なお、実行委員会では、現在、ロゴ、シンボルマークの制作等、広報宣伝活動に取りかかるとともに、県民の皆様方の意見をお聞きしながら、九月末を目途に実施計画を策定する作業を進めているところでございます。
 四点目のご提言でございます。
 議員ご提言の最先端の映像システムでございますが、これまでの博覧会では立体映像等を使った出展が数多く見受けられまして、博覧会のセールスポイントになっている場合もございます。今回の南紀熊野体験博は、南紀熊野地域を中心に、実際の体験を通してそのすばらしさを知っていただくことを主眼にいたしてございます。
 今後、実施計画を策定していく中で地域のすばらしさをいかに知っていただくか、またそのためにはどのような工夫が必要なのか、議員のご提言も含め、検討していきたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
 〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 谷議員にお答えをいたします。
 紀南地域における救急医療についてでございます。
 重症の救急患者に対応する二次救急医療につきましては、休日・夜間における病院群輪番制が中心的な役割を担っておりますが、東牟婁地方においては、当制度が平成四年度から実施されているところでございます。
 〔副議長退席、議長着席〕
 心筋梗塞、脳卒中などの重篤救急患者に対応する三次救急医療につきましては、厚生省の指導基準が人口百万人に一カ所となっているいわゆる救命救急センターが和歌山市内に設置されてございます。
 紀南地方における今後の二次以上の救急医療につきましては、病院群輪番制の区域拡大を促進するとともに、より高次の救急医療が提供できる体制づくりを進めていくことが重要であると考えてございます。
 議員ご指摘のように、新宮医療圏における病院連携のあり方についても、早急に検討すべき課題でございます。県といたしましては、平成九年度から医療体制リニューアル事業を創設し、新宮市民病院の移転整備の問題等も含めて、県、地元市町村及び病院関係者等の間で十分に議論を行ってまいりたいと考えてございます。
 なお、特に救急医療の整備につきましては、不採算性が強い医療部門であることから、補助制度等の充実について、国に対して要望活動を続けてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 谷議員ご質問の吉野熊野地域振興協議会についてお答え申し上げます。
 この協議会は、議員お話しのとおり、「県境が接し、特に半島性が強い吉野・熊野地域について、奈良県・三重県・和歌山県の三県が協力して総合的・広域的な振興事業に取り組み、地域の活性化に寄与することを目的とする」ものであります。
 一概に振興事業と申しても非常に幅広いものがございますが、同じ歴史文化を共有し、同じ課題を抱えた地域でありますので、それぞれの地域の魅力や個性を広域的に連携することで活性化への新たな弾みとなる展開を実施していこうとするものであり、本協議会の設立の意義には大変大きなものがあると考えてございます。
 当面は、広域的に行う南紀熊野体験博と連携したイベント等に関する事業として、来年、仮称でございますが紀伊半島フィッシングフェスティバル98を開催するため、その準備を進めていきたいと考えてございます。また、地域資源の利活用に関する事業として、古街道、自然・歴史・文化資源の活用調査を国土庁から受託して実施いたします。さらに、吉野熊野の魅力を一層浸透させるため、地域資源のデータベース化と情報発信の手法の検討を進めたいと考えております。このほか、広域的な連携を強めるための事業展開や地域課題の解決に寄与する展開も視野に入れながら事業を進めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(町田 亘君) 以上で、谷洋一君の質問が終了いたしました。
○議長(町田 亘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 26番玉置公良君。
 〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 私は、今回、知的障害者の年金着服問題とその対応について、そして水産資源の保護と水産業の振興について、とりわけ白浜地区のタイの一本釣り漁業のことについて、この二つについて質問をしてまいりたいと思います。
 実はきょう、それぞれの関係者の方も議場の傍聴にお見えでございます。知的障害者の保護者の方、また関係者の方、そして「水産業」と言えば、きょうはバス一台をチャーターして白浜からこの議場に来てくれております。そういったことをどうかご配慮いただきまして、県当局の答弁をお願いしたいと思います。
 まず最初に、知的障害者の年金着服問題とその対応について質問をしてまいります。
 「知的障害者の年金着服 縫製工場経営者姿消す 和歌山」という、こういった記事でございますけれども、昨年の十二月二日付の読売新聞に大きな見出しで掲載された社会面のトップ記事が衝撃的に私の目に飛び込んできました。この種の事件は、滋賀県のサングループを初め、全国的にも表面化してきているのが現状であります。私も、まさか和歌山県で起こるとはと、驚きを隠せなかったうちの一人であります。
 新聞報道によりますと、この経営者は十五人の知的障害者や身体障害者の人々を雇用し、長期にわたって給料を支払わず、知的障害者六人で少なく見積もってもその額は一億二千万円にも上ると言われております。また年金についても、保護者の方には、選挙に行かせてあげたいからなどとうその状況を巧妙につくり上げて住民票を移し、年金は個人の口座に貯金をしておくと言って、三人の方の障害者年金を三年の間、合計六百万円余り着服していました。その上、個人の健康保険証を使い、障害者の方の名義でサラ金から借金を重ねていたのであります。その被害額は数千万円にも上ると報道をされています。さらに、雇用調整金を初めとする多額の各種労働助成金も巧妙な手口で受け取っていたのであります。この事件は、被害者の家族から相談を受け、差別とたたかう共同体全国連合という組織が再発防止のための具体的な方策、さらには救援対策などに取り組んでいます。
 きょうは、先ほども申しましたように、その保護者の方々や家族の方々もこの議場に来てもらっています。──県行政においては、福祉、労働行政関係者を中心に、この問題の真相を明らかにし、再発防止のため真摯な取り組みをしていかなければならないと私は考えます。
 そこで、以下四点について質問をし、県当局の見解を求めたいと思います。
 まず第一点は、被害者や家族、また働いていた健常者の方々のヒアリングを通じての事件の全容について明らかにされたいと思います。
 第二点は、事件が発覚するまでに、以前から何度か通報や訴えがあったと聞いています。それに対する行政の対応のおくれや調査が不十分だったことなどがこの事件の解決をおくらせた一つの原因であったと考えますが、県当局のご見解を明らかにされたいと思います。
 例えば、平成六年と平成七年に通報、匿名通報があったとき、親から二カ月給料がおくれていると訴えのあった人しか調べておらず、しかも会社から出された書類のみを信用して、障害者の方たちからは直接の聞き取りすらしていないと聞いています。そのとき当事者に、この会社どうや、給料ちゃんともらっているんか、そういうことを聞いていれば、二カ月どころか長期にわたって給料をもらっていないというのがわかったのではないかと思うのであります。
 職業安定所からも、六人以上の障害者をこの会社に紹介して入社をさせています。職業安定所の窓口で、社長さんが親切だからと言われて入社した方もいると聞いております。こうした実態が、私たちの調査や市民団体との話し合いの中で明らかになりました。
 例えば職業安定所の仕事で言えば、職業安定所は職を求める各人の能力に適当な職業を紹介する責務を果たすため、とりわけ知的障害者の方の就職後において、必要に応じて職業指導を行う義務があり、労働条件に問題がある場合には労働基準監督署へ通報する義務があります。
 第三点は、被害者の方々のサラ金などの救済対策の指導助言を早急に行われるとともに、県としての救済対策はどのように考えているのか。また、これから起こったときの救済対策も含め、見解を伺いたいと思います。
 第四点は再発防止対策についてですが、一つ目は、この問題を教訓として、県は障害者権利擁護連絡協議会を設置しました。この目的及び協議会に当事者の意見が反映されることが必要であると考えますが、ご見解を伺いたいと思います。
 二つ目は、滋賀県がサングループ事件の教訓から県として予算をつけ、専任の相談員を配置し、障害者権利擁護相談室の設置をしました。また、知的障害者の権利擁護相談窓口の開設は、東京都、大阪府、埼玉県、石川県等、全国的にも広がってきています。このような相談窓口が本県にも必要であると考えますが、見解を伺いたいと思います。
 三つ目は、再発防止に向けて、県民挙げて障害者の人権学習、啓発を行うことが必要だと考えますが、見解を伺いたいと思います。
 四つ目は、福祉施設や障害者雇用企業の実態調査を行い、再発防止に努めることが大事だと考えますが、見解を伺いたいと思います。
 最後に、本当に障害者の人権が尊重される社会をつくるために二度とこのような問題を起こさない県行政の取り組みを強く要望し、この問題の質問を終わります。
 続きまして、水産資源保護と和歌山県の水産業の振興について質問をしてまいります。
 本県の各種漁業、養殖業は盛んに営まれ、平成八年の総漁獲量は六万八千六百トンとなっています。最近の漁業を取り巻く情勢は、輸入水産物の増加による水産物価格の低迷、漁業資源の低下、それに今では五千六百八十人と言われている漁業就業者の問題と、その少なくなりつつある漁業就業者のうち約四六%の方が六十歳以上という高齢化の進行など厳しい状況下にある中で、国連海洋法条約の発効に基づく生物資源の保存管理に関する措置が義務づけられ、新たな海洋時代を迎えようとしています。
 私は、本県が最重要問題として取り組まれている資源管理型漁業の推進の関係で、今回大変深刻な問題となっている白浜町椿沖のタイの一本釣り漁師の切実な叫びを知事に訴え、誠意のある答弁を求めるものであります。
 先ほども申しましたが、きょう、地元の漁協の漁師の方々や婦人部の方々、また後継者の青年がこの議場に詰めかけています。白浜から椿にかけての地先は複雑な地形に富み、特に椿沖は、天然礁があり、一本釣りの漁場として昔から全国的に有名なところであります。昔は四国や淡路島、沼島からも操業に来るという有名な漁場であり、現在でも和歌山市方面など遠くからも多くの船が操業し、県下でも屈指のタイの漁場となっています。
 椿沖が、なぜタイの絶好の漁場であるのか。それは、富田川河口周辺の砂浜では小さなエビが大量に生息しているのでタイにとっては絶好のえさ場となっており、格好のタイの育成場であることから、全国的にも名高いところであると言われています。国や県、そして町もこの有名な漁場を応援するため、昭和五十一年度から天然礁を補完し、魚を集める効果を高める魚礁設置事業を継続的に行い、その総事業費は約一億九千万円にも及び、漁業者所得の向上を図ってきました。こうした県当局のご援助、ご指導に対して心から感謝をするものであります。しかし、こうした応援や地元漁協の努力にもかかわらず一本釣りの水揚げは伸び悩み、今大変深刻な状態にあり、一本釣り漁師の一揆が起こると言われてもおかしくないところまで来ていると聞いています。
 白浜漁業協同組合の漁法は沿岸漁業が中心となっており、現在、正組合員は百八十三名で、そのうち一本釣りの漁師は約八十名であります。漁業規模は零細であり、一本釣りの水揚げが伸び悩み、特にタイの水揚げは、ことしに入り著しく減少しているのであります。
 白浜漁業協同組合の中でも椿の場合は、年間五千万円の水揚げのうち四千万円は漁期の三月から五月にかけて行うタイの一本釣りであり、特にことしは例年の四分の一に当たる一千万円の水揚げしかないのであります。一本釣りの漁師たちは燃料代とえさ代に追われ、漁協でも、その資金面で深刻な状態にあると聞いています。また、三月から五月の漁期に和歌山市方面から来ていた一本釣りの漁師たちも、例年、月七十万円から八十万円の水揚げがあったのに、ことしは月五万円から六万円しかないので早々と引き揚げたと言われています。その原因は何なのか。
 紀北から日高郡にかけての漁協では、小型底びき網漁業が盛んに行われております。県では、水産資源の保護のため、和歌山県漁業調整規則第四十条の規定により操業禁止区域が定められていますが、この区域をめぐって紀南地方の地元漁業者とのトラブルが以前から絶えません。
 見にくいのですが。(地図を示す)そういったことで、小型の底びき網漁業を禁止区域とするために、日ノ御埼から日置川町の市江──灯台の突端です──この線を結んだ約四十五キロの内側が底びきの禁止区域でございます。そして昭和五十一年に、底びき網漁業を制限していくため、禁止区域から西方沖合千メーターを操業の自粛区域として協定を結んでおります。これは、県も入ってもらい、立ち会いをしてもらって協定を結びました。しかし今、ここにつきいそ漁業ということで椿沖のタイの一本釣りのところがあるわけです。ここを何とか底びき網の操業から守っていただいて保護区域にしてほしいというのが願いでございます。
 そしてもう一つは、昭和五十七年十二月に、一月と二月の期間を夜間操業を禁止する協定も締結されました。以降、それら協定の更新については、県当局が立ち会いのもと、再締結されてきました。
 椿沖の一本釣りの漁場は底びき禁止線の外側にあるわけですけれども、つきいそ漁業権を取得しているのでその区域は底びき網操業から守られているように見えるのですが、地元漁業者の話では、底びき網は夜間に設置された魚礁の周辺をジグザクで走行し、魚礁に網が根がかりしたのか網を切り、その網の一部は魚礁にかかったままである、また、よく釣れていたときも夜に底びき網操業があったために次の日から全然釣れなくなったと、そういった苦情が相次いでいます。
 底びき網は、引くときに魚をとらえるだけではなく、引くことによって魚はおびえ、地元の漁師がまきえをして丹精込めて育てた漁場を荒らしてしまい、底びき網が小さな魚までもの水産資源を根こそぎさらってしまうのであります。このようなことではつきいそ漁業権というものが有名無実となり、何のために魚礁設置事業をしているのか、地元は大変腹立たしい思いをしています。
 この問題につきましては、きょう私の後ろで議事を進行していただいている先輩の町田議長さんも昭和五十六年六月県議会において一般質問をされまして、昭和五十七年から現行の一月と二月の夜間操業の禁止協定など一定の前進を図ったところでありますが、それ以降も違反操業が続きまして、この問題について地元漁業者や町も、平成三年から平成八年まで四回にわたって県や和歌山海区漁業調整委員会などに対して訴えと要望を行ってきました。平成三年九月には、違反操業に対応するために、共同漁業権と言いますが地先権の拡大を県海区漁業調整委員会事務局に要望いたしました。また、平成四年二月には地先権の拡大を知事に陳情いたしました。平成七年十一月には、県水産課漁業取締班と底びきなどの違反操業に対する対応について協議をして取り組んでまいりました。平成八年一月には、漁協青年部と県水産課漁業取締班の合同作業による地先権の確認や、また違反操業に対応するために地先権の拡大を県水産課に陳情するなどの活動を行ってきました。しかし、この訴えや要望に対しても、県として和歌山海区漁業調整委員会には意見具申をしてもらえませんでした。また、県水産課漁業取締班に実情を訴え、監視体制についてご指導をいただいているところでありますが、全面的に解決するものではありません。今回、地元漁業者の怒りも大変なものであり、最初に述べましたように漁業一揆が起こるところまで来ていると聞いていますので、その願いを県は重く受けとめるべきであります。
 私は、その問題解決のための提言を行います。先ほど申しましたように、この近くに白浜町の見草崎がありますけれども、ここから真西に沖合七キロを底びきの禁止区域、保護区域にしてほしい、そういうことの提案をしたいと思います。
 資源管理型漁業の推進は、結局、底びき網漁業の漁業者にとっても大変大事なことにつながるはずであります。県当局も水産資源保護の重要性は認識されているはずであり、これからの目指す方向でもあります。日ノ御埼から市江崎突端までの底びき禁止線は長さ四十五キロにも及び、その南端のわずかな海域を保護区域にすることで水産資源の保護が実現をするのであります。底びき網漁業者のリスクはほとんどなく、逆に資源保護による効果が期待できるものであると私は思います。
 今、この椿地区でも、七人もの若者がUターン就職でふるさとに帰り、一本釣り漁師として後を継いでおります。後継者問題も含め、年々減少している一本釣り漁業者を育てていくためにも、また全国的にも県下的にもすばらしい漁場であり、共存共栄の精神で資源管理型漁業を目指していくためにも、なおさら早急に保護をしなくてはならない地域であると私は思います。
 昭和五十六年六月県議会で、当時の町田議員の一般質問に対する経済部長答弁として、「たとえば、保護区域の設定なども具体的な手段として検討してまいりたいと存じております」と回答しているのであります。それから十六年の歳月が流れましたが、いまだこのことは実現をいたしておりません。地元の漁師は、断腸の思いであります。
 そこで、第一点は椿沖の一本釣り漁場及び漁業の現状認識について、二点目は椿沖の一本釣り漁場の保護について、昭和五十六年六月県議会答弁以降、県としてどのような取り組みをしてきたのか、農林水産部長からの答弁を求めたいと思います。そして、最後の三点目の保護区域の設定実施についての見解を西口知事に求めたいと思います。
 今こそ思い切った施策を講じない限り、この問題は永久に解決できないものであると思います。安心してとれる環境を整え、漁場を守り育てていくのが行政の務めであります。細い細い一本の釣り糸に何人もの家族がぶら下がって生計を立てている零細な漁師とその家族の切実な願い、心情を受けとめていただき、知事の心の通った温かい答弁を求め、私の質問を終わりたいと思います。
 ご清聴ありがとうございました。
 〔傍聴席で拍手する者あり〕
○議長(町田 亘君) 傍聴席の方にお願いいたします。
 この議場の傍聴席での拍手等は禁止されておりますので、ご協力をお願いいたします。
○議長(町田 亘君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 玉置議員にお答えをいたします。
 水産業に関連してのご質問でありますけれども、この問題は、お話にございましたように昭和五十六年以来の課題でございます。ご質問にございました保護区域の設定につきましては、水産資源の保護を図る上で大変重要であると私も認識をいたしております。
 ただ、ご承知のように漁業は、同一海面において多種多様な漁法で操業が行われております。そういう意味で、保護区域の設定ということについても、各種漁業者の利害にかかわる大変難しい問題でもございます。しかしながら、きょう多くお見えでありますけれども、私も地元漁業者の実情ということも十分理解をしておりますので、問題解決に向けて関係漁業者のご意見をお聞きいたしますと同時に、水産庁や海区漁業調整委員会とも協議をしてまいりたいと考えております。
 以上であります。
○議長(町田 亘君) 福祉保健部長小西 悟君。
 〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 玉置議員ご質問の、知的障害者の年金着服問題とその対応の以下三点についてお答えをいたします。
 まず、事件の全容についてでございますが、この事件は、和歌山市の縫製会社が昨年十月末に工場を閉鎖したことにより障害者の家族から関係機関を通じて連絡が入り、障害者の所在等を調査し、対応に当たってきたところでございます。
 当会社は、従業員が二十五名、うち障害者は十五名で、そのうち知的障害者九名、身体障害者五名、精神障害者一名であり、身寄りのない方が四名ございましたので、安全・生活の場を確保する必要があるため、事件発覚後、直ちに施設等への入所措置を図ったところでございます。
 なお、今後も事件の正確な実態の把握に努めてまいる所存でございます。
 次に被害者の方々のサラ金救済対策でございますが、県といたしましては、金銭的な救済は現行の制度から申し上げて無理かと考えますが、今後適切な方法を検討し、被害者に対する相談・助言を行ってまいりたいと考えてございます。
 また、今後の救済対策ということでございますが、今後はこのような事件の再発を未然に防止することが肝要であると考え、障害者の財産管理等については成年後見制度の早期創設等を国に要望してまいりたいと考えてございます。
 次に再発防止についてでございますが、この三月二十五日に、障害者が職業的に自立し、安心した生活が送れるよう、就労の場における障害者の権利擁護を目的といたしまして、県だけでなく国の機関も含めた関係機関から成る障害者権利擁護連絡協議会を設置したところでございます。これによりまして、関係機関の連携を強化し密にすることにより、行政として速やかに対応しようとするものでございます。
 当協議会の設置目的でもある再発防止の観点から、当事者のご意見を聞き、当協議会に反映できるよう検討してまいりたいと考えてございます。
 次に相談窓口の件でございますが、障害者の人権擁護のための相談業務の必要性につきましては、県としても十分認識してございます。障害者本人や家族の方々が気楽に相談できるよう、今後、他府県の状況等を参考にしながら積極的に検討してまいりたいと考えてございます。
 障害者の人権に対する啓発につきましては、障害者施策の重点施策として位置づけ、今後も関係機関との協力のもと、広報活動はもとより、体験学習等の普及によって障害者の人権擁護の推進に一層努めてまいる所存でございます。
 次に福祉施設での実態調査につきましては、定期的な監査によって、財産管理を初め入所者等に対して適切な対応がなされているか等の調査、指導を行っているところでございますが、今後も指導の強化徹底に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 商工労働部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○商工労働部長(日根紀男君) 知的障害者の年金着服問題とその対応についてのご質問のうち、二点についてお答えいたします。
 まず、本問題に対するこれまでの行政の対応と見解についてであります。
 障害者の方々の職業紹介につきましては、保護者の立ち会いのもと、きめ細かな職業相談を行い、当該事業所と相談の上、職場適応訓練等の支援措置を講じたところでございます。また就職後においても、事業主に職場生活の状況などを聴取するとともに、本人とも面談の上、職場定着のための必要な指導を行ったところでございます。
 この問題につきましては、平成六年十月と七年八月に障害者の保護者等から相談がございまして、公共職業安定所では当該事業所を訪問し、事業主に事情聴取をしたところ、賃金遅払い等、労働条件に係る問題でございましたので、その対応方について労働基準監督署に対して直ちに通報したところでございます。
 なお、当該事業所は十五人の障害者の方々を雇用し、障害者雇用に積極的であるというふうに評価をしておりましたので、期待しておりました。それだけに、このたびの問題についてはまことに残念に思う次第であります。
 次に再発防止策についてでありますが、議員ご承知のとおり、障害者の方々が職場に定着し、安心して職業生活が送れるよう、三人以上の障害者を雇用している企業には障害者職業生活相談員を設置しているところであります。
 今後は、事業主や障害者への助言・指導をさらに強化するとともに、障害者職業生活相談員からは定期的に状況報告を求めるなど、実態把握に努めてまいります。また、この問題を契機として設置された和歌山県障害者権利擁護連絡協議会とも連携し、関係機関との情報交換を密にして再発防止に努めてまいりたいと存じます。
○議長(町田 亘君) 農林水産部長平松俊次君。
 〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 水産資源保護と和歌山県の水産業の振興についてのうち、椿沖の一本釣り漁場及び漁業の現状認識ということについてお答えさせていただきます。
 議員お話しのとおり、椿沖は県下でも有数のマダイの好漁場であるとともに、白浜漁協において一本釣りは重要な漁業であると認識してございます。しかしながら、近年、全般的に資源の減少が見られるとともに、魚価が低迷していることもあり、漁業経営は大変厳しい状況にございます。
 県におきましては、漁業資源の保護増殖を図るため、これまでも栽培漁業や資源管理型漁業の推進を図ってまいりましたが、さらに栽培漁業センターの充実を図り、マダイ百万尾の種苗生産に取り組んでいるところでございます。当該地区におきましても、引き続きマダイの稚魚放流や魚礁設置を積極的に実施し、経営の安定に努めてまいりたいと存じます。
 次に、椿沖の一本釣り漁場保護について、昭和五十六年六月県議会答弁以降県として具体的にどんな取り組みをしてきたかということでございますが、関係者と話し合いを行ってまいりましたが関係漁業者の意見集約に至らず、残念ながら海区漁業調整委員会に対し正式に協議するに至ってはございません。しかしながら、小型底びき網漁業の操業につきましては、かねてからトラブルが発生しておりますので、県としては適正な操業遵守のための指導を行ってまいったところでございます。
 昭和五十七年には小型底びき網漁業の夜間操業についての協定が結ばれてございますが、このような漁業者間による協定の締結は漁業秩序の確立のために有効な手段の一つと考えてございますので、これからもこうした指導に努めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 26番玉置公良君。
○玉置公良君 答弁、ありがとうございました。
 まず、知的障害者の年金着服問題とその対応についての答弁から、四点についてのみ要望を述べておきたいと思います。
 一点は被害者の救済対策ですが、被害者に対する相談・助言について、行っていくことが答弁されました。したがって、きょうも議会傍聴に来ている家族の方もありますが、早急にこういう方々と連絡をとり合って、弁護士のお世話など、相談や助言を要請しておきたいと思います。
 二つ目は、連絡協議会において当事者の意見を聞き協議会に反映できるようにしたい、こういった答弁がございました。当事者を入れてこの問題の真相を究明し、再発防止の教訓としていくよう要請をしておきたいと思います。
 第三点目は、障害者の人権擁護のための相談業務の必要性について、積極的に設置していく方向が答弁の中で明らかになりました。一日も早くその実現を望みたいと思っております。
 第四点目は、県行政として、障害者雇用企業や障害者の方々に対し、職場定着の助言・指導は最初の一年間だけで、あとは生活相談員に任せておった。この問題を契機に、今の答弁から言えば、毎年職安としてやっていくという方針が表明されました。また実態把握についても、生活相談員からも定期的に状況報告を求めるといった表明がされました。さらに、国基準を上回る生活指導員制度を今県は確立しておりますけれども、こういった面について私は評価をしておきたいと思っております。
 今回の事件は、事業者に対して行政も保護者も、雇ってもらっているといった意識の中で、そこを事業者が巧みについた、そして人を人として扱わない、また人としての権利を踏みにじる、あくどいことをされ、お金をだまし取られたと、そういった事件だったと思います。そこには、よく考えますと、知的障害者という当事者の人権をそれぞれの立場立場で無視をしてきたのが見えてくると思います。
 先般、二週間ぐらい前でしたけれども、車いすの方がちょうど和歌山市内の公園の障害者トイレに入って手を洗おうとしたところ、洗面所が高くて体を乗り出して手を洗わなくてはならなかった。それを救うためには、やっぱり行政が障害者当事者の声を聞いてつくってほしい、聞いていないからそんなことになるんだということを言われておりました。こういった問題も含めて、今、県も条例をつくって取り組まれようとしていますので、なお一層の取り組みをお願いしたいと思います。
 そして、一人一人の県民が、また行政や関係機関がこの問題を自分自身の問題ととらえ、二度とこのような事件を引き起こさないために歩み始めなければならないと私は思っております。また、県行政における障害福祉、労働行政の責任は大変大きいものがあると思いますので、なお一層の取り組みを要請しておきたいと思います。
 続きまして、水産資源保護と和歌山県の水産業の振興についてであります。
 きょう、県議会の傍聴に、仕事を休み、白浜漁協から約五十名の方々がバスで来られました。皆さんは、生活の糧を海に求める一本釣りの漁師や家族であります。寒風吹く荒れた海の中で、道糸一本で家族の生活を支えております。長年の願いであったこの保護区域の設定についての知事の答弁を、恐らく祈るような気持ちで今聞かれたことだろうと思っております。
 知事は地元の一本釣り漁師のこの実情や願いを十分理解していただいた、そしてその実情を踏まえて知事としてこの問題解決に向けて乗り出すことを約束していただいた、そういった答弁であったと私は理解をしております。どうか、この十六年間ほうりっ放されてきたと言っても過言ではないこの一本釣り漁師の願いに対し、一日も早い解決への取り組みを改めて要請しておきたいと思います。
 また、部長の方から、白浜漁協の当該地区において引き続いてマダイの稚魚放流や魚礁設置を積極的に実施していきたい、経営の安定に努めてまいりたい、そういった約束をしていただきました。きょうは組合長さんも見えておりますけれども、今後とも地元の声を聞きながら水産行政を進めていただきたいと思います。
 なお、不法操業に対する漁業の取り締まりも全力を挙げていただくことを最後に要請しながら、私の質問を終わりたいと思います。
○議長(町田 亘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○議長(町田 亘君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時二十二分散会

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