平成9年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(上野哲弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時三分開議
○議長(町田 亘君) これより本日の会議を開きます。
 ─────────────────────
 【日程第一 議案第一号から議案第八十七号まで】
 【日程第二 一般質問】
○議長(町田 亘君) 日程第一、議案第一号から議案第八十七号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 20番上野哲弘君。
 〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 おはようございます。
 まず、地域振興における県の取り組みについてからお伺いいたします。
 地域振興を考える場合、それぞれ第一次産業、第二次産業、第三次産業の分野があり、その地域に応じた施策が必要となってまいります。今議会、第三次産業である商店街の振興については山下議員が質問されましたが、現在の日本はあらゆる分野で問題を抱え、一つの転換期にあると実感しているところであります。
 さて、私の質問でありますが、特に過疎地の振興についてお伺いするものですけれども、知恵と発想の転換がその原点になるものと思っております。
 まず、行政組織から考えてみたいと思います。
 現在の組織は、国、県、市町村と縦割り行政であり、地方自治が主体であると言いながら、仕組みは中央集権であります。また地方自治体においても、その線引きされた地域しか目を向けず、住民生活に直結しない施策がなされているようにも見受けられます。また従来型の行政における問題点として、縦割り行政の弊害や各自治体における金太郎あめ的施策等が指摘されているところであり、そのことが今日的社会にマッチしないということで、国においてふるさと創生一億円事業等、地域の特性を生かす施策が打ち出されたところであります。今、国においても行政改革が叫ばれ、地方分権とあわせて行政のあり方が問われているわけでありますが、地域振興にも大いにかかわってくるものでありますので、新たな体制づくりと発想が必要になってくると思います。特に県内における地方自治体の枠が足かせとなり、広域にまたがる国及び県事業がスムーズに運ばない事例が最近よく見かけられますが、県当局において広域行政の必要性と地方自治体の連携についての所見と指導についてお伺いいたします。
 これまで、議会での質問は地域振興に関するものばかりでしたので、常に新たな切り口をと考えてまいりましたが、今議会、知事の言う地方機関を地域ごとに総合調整する職、すなわち地方において振興局長制度を設けるということですので、県行政において新たな展開がされるものと期待しているところであります。今回設置の振興局長の役割について、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、それらのことを念頭に置いて、地域振興と行政組織とのかかわりを過去にさかのぼって考え、質問したいと思います。
 過去にさかのぼるということで、幕藩体制下の和歌山藩を取り上げてみました。まず、和歌山藩の藩域と領内の支配体制でありますが、前段の藩域については、現在の和歌山県に三重県松阪までの大半の領土が和歌山藩であったわけであります。つまり、現在の和歌山県は和歌山藩の領土よりかなり減少されていることになります。
 話が少しそれますが、三重県の北川知事は鈴鹿市出身だそうです。実は鈴鹿市も和歌山藩領でありましたので、三県サミットにおいて北川知事が特に紀州に関心があるのは、そのことが関係するのではないかと推測しております。
 次に支配体制でありますが、藩は領内における集落から庄屋を出させ、その集落の数カ所から数十カ所を統轄さすために大庄屋を決め、その上にお代官が配置されていました。大庄屋の数は、東牟婁郡を例にとると十六あり、その内訳は新宮藩分が十三、和歌山本藩分が三であります。その村落数は百七十七カ村となっております。大庄屋は地元首長であり、お代官は本藩の出先機関と言えます。
 それでは、地域振興を図る上で、かつて集落はどのようなものであり、どうなったのかを検証し、今後の振興策を考えてみたいと思います。
 東牟婁郡那智勝浦町の成立において旧町村が合併したわけでありますが、合併前は七カ町村から成っており、その七カ町村以前の集落を合計すると三十一カ村であったことがわかります。すなわち、那智勝浦町は最小の地域社会である集落が三十一集合して成り立ったものであります。それらの地域社会を構築してきた集落が現在どのようになってしまったのか、熊野川町の学校数から検証してみたいと思います。
 同町は二十四の集落から成り立っており、かつて小学校十二校、中学校四校が設置されておりましたが、現在、小学校一、中学校一の計二校になってしまっており、実に十六校中十四校が廃校か休校になっているわけであります。以前は、それぞれの村落において学校までも設け、それなりの地域社会を形成し、その存在意義があったわけでありますが、人口の流出による農林業の衰退、耕作放棄地等の増大、それに伴う学校の廃校等、その存在意義が大きく薄れ、これらの要因により廃村への道へとたどらざるを得ない状況にあります。県において、これら村落の振興策についてどのようなことが考えられるのか、お伺いいたします。
 次に、公共施設における木材利用についてお伺いします。
 先日、ウルグアイ・ラウンド議員連盟による視察において静岡県へ行きましたところ、行政による指導かどうかはわかりませんが、駅前の工事現場において工事用バリケードが木製でされていました。我々の常識では鉄パイプあるいは鉄板でつくられるものと認識しておりましたが、少し考えを変えれば木製でもできるものであると認識を新たにしたところであります。
 今、県においても、公共事業あるいは施設に木材を使用するプロジェクトができているように聞いておりますが、これまでの実績と取り組みについてお伺いいたします。
 あわせて、コンクリートによる近代建築がすべてであった時代から、今日、木造による公共施設が多数できていると思われます。発想が変われば従来手法の変更も不可能ではないと考えますが、木造建築の将来についてお伺いいたします。
 次にボランティアの育成ということで、これはきのう玉置議員も質問されましたが、少し私も質問したいと思います。
 知事説明にも、「個性と魅力にあふれ、躍動する地域づくりは、県民の皆様一人一人の創意と情熱、そして行動にかかっております。(中略)今やこうした住民サイドの主体的な活動が大きなウエートを占める時代なのだと痛感いたします」とありましたように、まさしくそのとおりかと思います。その意味から、今後ますますボランティア活動というものがあらゆる面で必要になってくるのではないでしょうか。災害や福祉に限らず多方面のボランティアが求められる今日、ただ単に民間だけに任していいのか、もっと行政においても受け身でなくて積極的に開拓すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
 かつて、半島振興大会において鈴木健二氏が、これから何をやるにしても現場に行かなければ何の役にも立たないと現場主義を申されておりましたけれども、まさにそのとおりかと思います。この運動を広く推し進めるために、行政側においてもボランティア活動ができるシステムにすべきであると思いますが、所見をお伺いいたします。
 次に、中山間地域における土地利用についてお伺いします。
 これも大先輩の馬頭議員がおっしゃられましたが、私も少しお伺いしたいと思います。
 現在、和歌山県はもとより全国的に中山間地域の人口が流出し、過疎化がますます拡大しております。当該地域の人口の流出は、地域社会を崩壊に導き、主幹産業である農林業が衰退し、都市との格差が広がる中、日本社会にそのゆがみをもたらしております。また、日本の食糧自給率は四二%と聞いておりますが、二十一世紀初頭には世界人口八十五億人と予想され、食糧危機が叫ばれております。特に海外からの輸入に大きく依存している日本にとって、このような事態を憂慮されているところでもあります。
 さて、さきに述べたように、農村における人口の流出と高齢化による農業従事者の減少が深刻な問題であることは言うまでもありません。中山間地域の振興を考える上で、那智勝浦町色川地区の例を挙げると、当地区の人口は、昭和三十七年当時二千六百三十四人、世帯数五百九十五戸であり、平成八年で人口五百四十一人、世帯数二百四十七戸となっております。本来ならさらに過疎化が進んでいるところでありますが、他府県から色川地区に入植し、その地域に応じた農業がなされております。その新規人口は百人を数え、三十数世帯が色川地区で生活しております。しかし、大半の地区では人口の流出や高齢化が顕在化し、特に耕作放棄地が増加しており、これらの放棄地の利用が最優先と考えます。耕作放棄地は地区内で点在し、また現状では耕作不適地となっている場合も見受けられ、直ちに解消することは難しいと考えられますが、このままでは産業廃棄物の捨て場となる可能性もあります。農地を含む土地に対する住民意識は、先祖伝来の土地としての保有意識が強く、人に貸さない状況にあると聞いております。県下における放棄地の現状や解消に向けた市町村等への指導とあわせて、圃場整備や農道の新設などによる農業後継者への土地利用策等について農林水産部長からお聞かせ願います。
 次に、熊野地域活性化計画についてお伺いいたします。
 これは、前仮谷知事が地域の現状を考えて、県、地方自治体及び地域住民の総力をかけた計画案として出されたものであると受けとめておりますが、本計画についての経過と現状についてお伺いいたします。
 今日、日本経済がバブルで崩壊し、銀行、ノンバンクにおいて多額の不良債権が発生したところであります。特に県下においては、阪和銀行の業務停止等、金融不安は現在も続いているところであります。そのような中、地域活性化の第一弾としての熊野地域活性化計画は非常に厳しい立場にあろうかと思いますが、この際、新たな発想による具体案の早期決定を願うものであります。
 本来、地域振興は地元自治体と地域住民が考えるものであり、県が特に手出しをすべきではないと思いますが、今の時代、急激な国際化、情報化社会が構築されているところであり、単に自治体や民間人が振興策を考えても十分競争に勝てるだけの体制づくりは不可能に近いものがあります。特に、人材の育成なり確保については一番重要であろうと考えます。この計画をスタートするに当たり、県の役割として人材と情報が大きなウエートを占めるものと考えますが、その所見をお伺いいたします。
 なお、平成八年度の地方自治大賞の選考がなされた新聞記事がありましたので、地域振興の具体例を申し上げ、情報として考えたいと思います。
 「群馬県の最北にある新治村は、かつて江戸と越後を結ぶ旧三国街道の宿場として栄えた。しかし、時代の変遷とともに過疎化と高齢化に直面。それをはね返す起爆剤になったのが、伝統工芸の技を継承する『たくみの里』事業だった。(中略)街道沿いには、『くるみの家』『和紙の家』『藍染めの家』など、伝統の技を披露」、結果、首都圏を中心に観光客が跡を絶たない。「自然石を積み重ねた六百メートルにわたる水路では、農家の人々が野菜を洗う姿が見られる。かつて全国各地で見られた純農村地帯にタイムスリップしたようだ」。
 この事例は一地方自治体の計画であり、特に目新しい事業ではありませんが、前段にも申し上げたとおり、三重県の約半分がかつての和歌山藩の領土でありました。その和歌山藩代官所跡が三重県熊野市に存在し、聞くところによりますと、代官屋敷再建の運動もされているようであります。熊野地域活性化計画では、こうした歴史的な観点も踏まえ、三重、奈良、和歌山、特に三重県との関係強化を視野に入れた広域的な計画にすべきであると思います。また、今後三県が連携した地域振興の具体案づくりを進めるべきであると考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、南紀熊野体験博についてお伺いいたします。
 知事は、去る一月の新春記者会見の席で、南紀熊野体験博の開催を発表されました。また、二月にはこの博覧会が通産省からジャパンエキスポに認定され、いよいよ熊野地域が全国の注目を浴びる絶好の機会が訪れるのではないかと期待が大きく膨らんでおるところであります。さらに、この南紀熊野体験博は紀南地域の非常に広い範囲を会場とすることになっており、このような広域的な博覧会は全国的に見ても他に例を見ないものではないかと思います。しかしながら、熊野の精神を生かし、こうした広域的な博覧会を成功させるためには、行政だけが一生懸命になって取り組んでいくのではなく、地域住民一人一人の積極的な参加が必要であります。そのために行政においては、民間に対しあらゆる分野のボランティア精神を積極的に訴え、仕掛けをすべきかと考えます。
 例えば、新宮市及び周辺自治体において、民間と協力して熊野川を利用した各種イベントを立案し行動すべく、博覧会開催に向けての機運が非常に高まっております。こうした地域の盛り上がりを背景に、単なる打ち上げ花火のような一過性のものに終わるのではなく、熊野の精神を生かし、二十一世紀に向けた熊野地域の活性化に大きな影響を与えるようなすばらしい博覧会にするために、具体的にどのような取り組みを行っていくのか、また今後のスケジュールはどう考えているのか、以上について当局のお考えをお伺いいたします。
 以上で、第一回の質問を終わります。
○議長(町田 亘君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 上野議員にお答えをいたします。
 振興局長制度についてのご質問であります。
 本県は、ご承知のように県域が南北に大変長く、それぞれの地域の持つ特性、あるいは行政課題に対応する必要がございます。こういったことから、今回の行政改革での目標の一つとして、地域ごとの実情に応じた施策を総合的に展開できる体制を検討してきたところでございます。その結果、本年四月の組織改正に合わせて、地域における地方機関の組織横断的連携を強化いたしまして、各行政分野ごとの施策の総合調整を図ることを目的として振興局長を各地域に配置し、地域の課題に対応した総合行政を推進してまいりたいと考えておるところであります。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 農林水産部長平松俊次君。
 〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 上野議員の地域振興における県の取り組みについてのうち、集落の振興策についてお答えをいたします。
 山村過疎地域の活性化のため、国においては昭和四十年に山村振興、四十五年には過疎地域活性化特別措置法が制定されました。県といたしましても、山村過疎地域の振興を県政の重要な課題と位置づけ、生産基盤整備や生活環境整備、集落再編整備など、国庫補助事業並びに県単独事業を実施し、地域特性を生かした地域振興対策に積極的に取り組んでまいったところでございます。しかしながら、山村の集落においては若者の流出と高齢化が現在も進んでいるところでございます。今後も、地域関係者の自主的、主体的な地域づくりの取り組み等を支援しながら、山村過疎地域の振興施策として、国庫補助事業や平成八年度に新たに創設した県単独事業の山村21創造事業などを活用し、若者のU・J・Iターン者の定住対策、地域資源を活用した都市との交流施設の整備、地域特産品の産地化等の促進と複合経営の推進、特色ある地域づくりなどを重点的に実施し、さらに関係部局と連携を図りながら地域の活性化に総合的に取り組み、住んでよかったと思える魅力ある地域づくりを積極的に進めてまいります。
 次に、公共施設の木材利用についてでございます。
 公共施設の木材利用については、従来、体育館などの学校施設や治山事業など、公共事業への木材使用を推進してきたところでございます。さらに去る一月二十七日、庁内関係部局を横断的に網羅した木の国プロジェクト推進会議を設置し、木材協同組合など関係業界の供給体制との連携のもと、各種公共施設、公共事業への紀州材を中心とした木材の利用推進を、より強力かつ具体的に進めることといたしてございます。また九年度においても、木造建築物設計マニュアルの作成や特許技術を生かした新しい商品の開発など、既成の観念にとらわれない木材の使い方を積極的に提案してまいりたいと考えてございます。
 一般的に、建築物は、それぞれの時代の文化、人々の感性、産業構造などが絡み合って具現化したものでございますが、自然、本物志向の潮流が見られる今日、時代を先取りした公共木造施設を先導的に建設促進し、紀州木の国の統一イメージの発信と、人に優しい木の文化の復権を目指してまいりたいと考えてございます。
 続きまして、中山間地域における土地利用についてでございます。
 地域農業の担い手育成の観点や、地域経済の活性化の上からも重要な課題であると認識してございます。議員お話しのとおり、山間地の農地については、担い手の減少や高齢化の進行と土地に対する資産的保有意識が強いことなどから利用調整が進みにくく、耕作放棄地が増加の傾向にございます。
 このため県においては、市町村、農業委員会、土地改良区など関係者が一体となって行っている、いわゆる農地銀行による農地情報の収集や貸借の仲介、また県農業公社が行う農地あっせん事業による担い手農業者への円滑な農地集積など、農地流動化の推進を指導しているところでございます。
 今後とも、農家の意識改革と地域における粘り強い農用地利用の推進活動を行い、地域の実態に合った土地基盤の整備や農地の利用集積、市民農園などへの活用を図るとともに、地域特産品の生産振興や新たな担い手の参入も視野に入れた土地利用対策に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 総務部長中山次郎君。
 〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 広域行政についてお答えします。
 地方公共団体が多岐にわたる行政施策を効率的に実施していくためには、市町村の区域を超えた広域行政の推進ということが今後ますます重要となってくるものと考えてございます。地方公共団体が広域行政を推進する手法といたしましては、これまで一部事務組合や協議会等の制度の活用が図られてきたところでございますけれども、平成六年の地方自治法の改正によって、より独自性の強い広域連合制度が創設されたところでございまして、広域行政推進体制も多様化しているところでございます。
 県といたしましては、それぞれの地域の状況を勘案しながら、より効果的な広域行政が展開されるよう、ブロックごとに検討会や講演会を開催するなど、市町村に情報の提供や助言を行い、適切な指導を行ってまいりたいと考えてございます。
○議長(町田 亘君) 生活文化部長中村協二君。
 〔中村協二君、登壇〕
○生活文化部長(中村協二君) 上野議員にお答えをいたします。
 地域振興における県の取り組みについてのうち、ボランティアの育成についてでございます。
 阪神・淡路大震災を契機として、ボランティア活動を初めとする市民活動の重要性が認識され、市民活動促進法いわゆるNPO法案が国会においても議論されております。お互いに相手のことを思いやり、だれもが住みよい社会を形成していくためにも、地域振興の面からも行政とボランティアが新しいパートナーシップを築き上げていくことが不可欠な時代になってまいりました。
 今後、ボランティア等社会活動への参加促進のための基本方針づくりに取り組むとともに、ボランティアガイドブックの作成等による情報提供を積極的に進めてまいりたいと存じます。
 なお、本年一月に県職員がボランティア活動に積極的に参加できるようボランティア休暇制度が創設されたところでございますが、この制度を活用してロシアタンカー事故による重油除去ボランティア等に百名を超える職員が参加したところでございます。今後とも、ボランティア活動への参加機運の醸成、参加の機会づくりに努めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 上野議員にお答え申し上げます。
 熊野地域活性化計画の経過と現状についてでございます。
 この計画については、平成四年に基礎調査、平成五年から六年にかけて計画策定、平成七年に体験プログラムを実施し、今年度は計画の中核をなす活性化組織の設立に向けて関連施策と整合を図りながら、地元市町村等関係団体と調整を進めてきているところでございます。
 次に人材と情報についてでございますが、議員ご指摘のとおり、熊野地域活性化計画において、かなめとなる従来の行政を一歩踏み出した活性化事業を展開するためには、地域活性化のための情熱とノウハウを持った人材が不可欠と考えており、そうした人材の育成や参画を念頭に置きながら施策を進めてまいりたいと考えてございます。
 またこの熊野地域活性化計画は、新宮定住圏を対象とし、市町村の行政枠を踏み出して広域的な活性化を図るものであり、三重県、奈良県の周辺地域にとっても活性化につながるものと考えてございます。
 三重、奈良、和歌山の三県の連携については、昨年五月の知事会議での合意を受け、紀伊半島の広域的な振興を図るため、三県境が接し、特に半島性が強い吉野・熊野地域において三県が共同して実施できる具体的事業や協力体制について調査検討を行っており、実現可能なものから平成九年度事業として実施することといたしてございます。
 次に南紀熊野体験博(仮称)については、去る二月十七日に第一回会議を開催した南紀熊野体験博準備委員会において基本計画案をご検討いただいているところでありますが、平成十一年四月から九月までの約六カ月間を会期とし、熊野の歴史や文化を背景にして、和歌山県全体の魅力を全国に向けてより一層アピールできるような各種のイベント展開を行ってまいりたいと考えています。
 議員ご指摘のように、この博覧会は紀南地域を直接対象地域、紀北、紀中及び三重、奈良両県を関連地域とする広域的な展開を特徴としておりますが、こうした形態のイベントをジャパンエキスポとして開催するのは全国でも初めての試みであります。
 具体的なイベントといたしましては、全国的な情報発信力を持つテーマイベントの展開、地域の既存イベントを生かしつつ新たな魅力を創出するイベントを加えた地域ネットワークイベントの展開、常設型のイベント会場としてのシンボルパークの展開、熊野古道を中心としたシンボル空間の展開、対象地域の市町村がそれぞれの地域の魅力を生かして実施するリゾート体験エリアの展開といった五つのタイプのイベントを効果的に組み合わせてまいりたいと考えております。
 しかし、これらのイベントの成功には、全国から和歌山を訪れる多くの皆さんを温かくもてなし、迎え入れ、喜んでいただくという、それぞれの地域の皆様方による積極的な取り組みが何よりも重要であろうと存じます。このため、今後の計画づくりや実施体制の整備に当たっては、できる限り地域の皆様方の意見を取り入れてまりいたいと考えてございます。
 なお今後のスケジュールについては、新年度には実施母体となる実行委員会を設立するとともに、その事務局として推進組織を庁内に設置し、実施計画及び各種個別事業計画の策定、シンボルパーク等の会場設計、各種広報宣伝活動などに取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 20番上野哲弘君。
○上野哲弘君 ただいまご答弁をいただきました。それぞれ質問内容は、すべて地域振興に関するものであります。その基本的スタンスは広域行政の推進であり、同時に地域を構成する海岸部、山間部を含めた集落についても十分検討すべきものであると思っております。また、過疎が著しい地域の振興については、知恵と発想の転換が特に必要であろうかと思っております。耕作放棄地対策や農地等の集約化が絶対条件になるのではないかという感じを持っております。
 話は変わりますが、阪神のグリーンウェルという選手が、母国アメリカで八十平方キロの土地を所有していることが新聞に出ておりました。その数字は、新宮市の面積とほぼ同じであります。アメリカとは比較になりませんが、今後のことを考えると、できるだけ集約化を行い、時代に応じた第一次産業の構築と脱皮が求められるのではないかと思っております。
 また、一昨日の朝日新聞に、「人も地域も育てる『Iターン』」という見出しで、「地域活性化フォーラム」の特集が記事として出ておりました。地域にとって参考になる意見が出されておりましたので、ちょっと紹介したいと思います。
 その中で、富山市在住の早稲田大学教授の宮口氏が、「東京が合う人ばかりではない。自然とゆとりを求める人に、これまでもて余してきた地方の空間が、価値と可能性を持ち始めた」、さらに「なんで楽しい山村が壊れていくのか、関心をもった。前向きに考えると、地方は新しいセンスで新しい生活づくりを考える人には、新しい可能性を持った土地だ」、こういうようなことを述べられております。これに対して、受け入れ側となる自治体について少し厳しい意見があります。これらのいわゆる故郷探しファアにおいて、その土地に対する情報をどこから手に入れたかという問いに対し、最も多い回答は転職情報誌だったということです。そういう面で、自治体の評価は非常に低いということがうたわれております。これから、それを基礎にして、地域間協力と競争で新しい動きに期待したいと出ております。
 そういう意味で南紀熊野体験博は、これらの人たちのニーズにこたえるグッドタイミングな企画であったと思っております。また、この体験博を開催する意義もさることながら、それに至る過程が真の地域振興になるのではないかという感じを持っております。今後二年間、地元自治体はもとより、地域住民も意欲を持って行動できるよう、県当局の対応に万全を期していただき、またそれらを要望いたしまして一般質問を終わりたいと思います。
○議長(町田 亘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問が終了いたしました。

このページの先頭へ