平成9年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(馬頭哲弥議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時四分開議
○議長(町田 亘君) これより本日の会議を開きます。
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 【日程第一 議案第一号から議案第八十七号まで】
 【日程第二 一般質問】
○議長(町田 亘君) 日程第一、議案第一号から議案第八十七号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 16番馬頭哲弥君。
 〔馬頭哲弥君、登壇〕(拍手)
○馬頭哲弥君 おはようございます。
 梅の花が咲いた後はコブシの花が咲き、やがて桃、アンズ、桜の季節を迎えようする、まさに百花斉放の春の兆しが見えてまいりました。景気は、このぬくもりがまだまだの状況にございますが、一日も早い回復が待たれてならないところでございます。
 さて、まず最初に、一昨年晩秋から初冬にかけて仮谷志良前知事の勇退の後を受けて行われた激しい県知事選挙において、西口勇新知事がめでたく誕生いたしました。私は、仮谷さんが大橋さんの後を受けて知事選を戦われて以来、同志の一人として二十年に余る年月、何かとご指導を賜ってまいった一人でございます。平成六年六月議会におきまして、その進退についてご所見をお伺いいたしました。やりとりしたときのことを今もよく覚えておる次第であります。国、県を問わず、よき人からよき人へ、よき継続のあるところ、政治はまさに安定するものでございます。仮谷から西口へと自然な流れの中で県政に対する県民の信頼感がその継続を許したものと、このように思う次第でございます。
 仮谷さんは、最近、「寒梅花をつけしや」という、まことにいい本を発表されました。名著であります。長きにわたって県政を担当された人ならではの、含蓄のある文章であります。政治を行う上で最も大事なことは、何よりもまずその時代の理念がその人に乗り移っているかどうかにあると思うのでございます。
 さて、ことしは、二十世紀のまさに終わり近くに位置する、大事な年でございます。人類が事実上文明社会に突入した時代の幕あけが、約百年余り前のことであります。数え切れない戦争もございました。文明社会がだんだん開けてまいるとともに、激しい革命が世界で起きました。飢餓もありました。伝染病が数限りなく人々を苦しめた時期でございます。宗教、イデオロギーの対立と抗争、そうしてとうとう原子爆弾まで生み落とすに至ったのが人類文明の悲劇の始まりでもあったと思うのであります。まさに歴史の消長ただならぬ時代であったと思います。発達する機械文明に伴い、社会の発展とともに文明もまた栄辱の道をたどり来ったという感慨を持つものであります。
 徳川三百年の武家政治から明治維新へ、そしてまた大東亜戦争へと。今はまた、一体何が起こるのかわからんような激しい時代の渦が巻き起こって、未知混迷の現在とでも言いましょうか、そういう百有余年の日本における三つの大きな節目が我々の記憶にあるわけであります。まさに時流は飛ぶがごとく、歴史は猛烈なスピードで展開をいたしております。しかもこれは、まことに困ったことに予測つきがたい。見当もつかない。何が起こるかわからない。「政治は一寸先はやみ」という名言がございますけれども、今の時代はまさに一寸先はやみであるのではなかろうか、そういうところに人々の不安や焦燥感というものがあるのではないだろうかと思う次第でございます。
 知事は、就任以来、こういう予測つきがたいあらしの前に立たんとする気概を示されて仕事に打ち込んでおられますが、まず在任一年有半の県政を振り返られて、またこれから和歌山県の進む方向に大きなリーダーシップをとられるお立場として、そのご感想をお尋ねしておきたいと思います。
 次に、阪和銀行の問題についていささか私見を申し述べたいと思います。
 昨年の十一月二十一日、阪和銀行は、事実上、倒産を余儀なくされました。田辺市に起源を持つ地方銀行として、多くの人々から愛され親しまれた地元銀行であります。先年、何者かに射殺された小山副社長は、私の母校の先輩でもあります。言うなれば経済戦争の犠牲者でありまして、この壇上から心よりご冥福を祈りたい気持ちでございます。
 本題に入ります。
 阪和銀行が大蔵省の業務停止命令を受けてからおよそ百日、銀行の歴史始まって以来の出来事でございまして、大変な、数え切れない、しかも割り切れない問題を今、県内にぶちまけております。間もなくこの三月の決算期がやってまいりますと、その打たれたボディーブローが激しくきいてくるのではないかという強い懸念を覚えるものでございます。
 私は、本議場から大蔵省に対し、和歌山県民の名において、この際言うべきを言い、ただすべきをただしておかなければならないと考えまして、あえて答弁者なきこの壇上に立った次第であります。副題を「大蔵省に物申す」、かくいたしたゆえんであります。
 皆さん、これが大蔵省の発した業務停止命令であります。この紙一枚です。こんな半ぺらの紙に「命令書」とだけあります。実に簡潔、要領を得た、血も涙もない紙一枚であります。見えにくいと思いますが、よく見ておいてください。これが本件の発端となった大蔵省の業務停止命令でございます。
 まず最初に、私は、阪和銀行問題を語る前に、この件が、こういう紙一枚のやり方が憲法の保障する条項に違反するものであるという判断を持つものであります。銀行法二十六条の持つ力は憲法を超える超法規であるのかということであります。
 日本国憲法は、ご承知のように、第十一条、第十二条、第十三条において国民の基本的人権と自由及び権利を明確に保障いたしております。いわく、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」、このように規定されております。同第二十七条は、労働の自由と権利及び生活権を保障いたしております。また、本件が県及び地方自治体に対しても直接間接の負担と迷惑を与えたことは、紛れもないことであります。地方自治の精神をも、私は冒涜したと思うのであります。
 ご高承のとおり、この銀行に働く社員の皆さんは八百五十二人、ほかに雇用関係にある人が百数十名、合わせて千人になんなんとする人たちが、この一枚の命令書によってたちまちその職を失うに至りました。一家族大体三・五人と計算をいたしまして、三千三百四十三人の人がたちまち生活に支障を来すことになったわけであります。いわゆる首が飛んだのであります。憲法で定める労働権も生活権もこの命令書一枚で吹っ飛んでしまったのでありますから、これは重大な人権問題でもあると考えておる次第であります。
 まだまだあります。これまで阪和銀行と取引関係にあった事業者や預金者、年金や恩給受給者等々のこうむった迷惑と損害、一夜にして紙くずとなった株券、株主に対する財産権の侵害については、第二十九条で定められております。これが侵されたと考えます。
 大蔵省銀行局が発したこの命令書が国民の権利をじゅうりんしたことにはならんというのか、私はこのことを聞きたいのであります。国家権力の国民に対する背信行為だと、こう考えます。明らかに憲法違反であります。これはしかし、国政の場においてもっと詰めてもらわなきゃならない。このことが、きっと次々に地方銀行にも波及するであろうと思うのであります。そのときに、日本国じゅうに和歌山県が今こうむっておるような大変な迷惑が及んでいきますと、今度は政権が吹っ飛ぶような騒ぎどころでなくなってくるのではないか、こう思う次第であります。
 大蔵省銀行局が、今申し上げたようにこの紙一枚で国民の権利をじゅうりんしたことにはならんというのか。もう一遍、このことを皆さんとともに考えさせていただきたいと思います。
 県もまた、財政、大変困難な時期であります。景気の落ち込んだ時代であります。それが、大変な持ち出しを余儀なくされました。私は、軽輩ながら政権与党・自民党に所属する一議員として、こういった政府のやり方というのには断固反対するものであります。大蔵官僚の持つ権力の前に憲法も影を潜めるような国は、皆さん、ファシズムですよ。これから申し上げるこうした中央官僚の独善と欺瞞の前に民主国家を支える民主主義のルールいずこにありや、と私は叫びたい気持ちでございます。これではこの国は危ない、こんなことが金融改革と言うのなら大蔵省の土台から資本主義の崩壊が始まっている、とさえ言えなくはないと思います。特にこのところの中央官僚のひけらかす正義は、国民の側、我々の側から見たら、全く不正義であります。
 そもそも、大蔵省が絶対的な権限を振りかざす上に、世界的に見ても日本の銀行は効率化、合理化がおくれております。競争力も弱い。そういう業種でございます。今まで、少なくとも上昇気流に乗ってその景気のよさに調子に乗り過ぎた嫌いもあると思いますけれども、日本の業種の中でも国際競争などに最も弱いのが、メーカーなどと比べて銀行であると思います。バブルがはじけた後でもリストラなどを余りやっていないという。そういうのが地銀に特に多いのではないか。だから私は、阪和銀行はいつつぶれてもおかしくない銀行のうちの一つであった、不良債権を抱え込んでおった状態というのはまさに銀行業務のあえぎの一番のもとであったということはよく承知をいたしておりますけれども、これはしかし経営者の責任に帰するものであります。
 しかし、私はここで幾つかの事例を議員各位の前に開陳してご判断を仰ぎたいと思うのであります。
 その一つは、銀行の監督権は大蔵省にあるわけでありますが、監査は、阪和さんの場合、朝日監査法人が受け持っております。この監査法人が大蔵省の胸三寸で一夜にしてひっくり返るというようなことがあったらどうなるとお考えでしょうか。こういう事態が実際に起こっておるわけであります。こんなことが許されるのか、監査とはそれじゃ何なのか、そういう根本問題にこれまた抵触しておるのが、この阪和問題の監査のあり方であります。
 そもそも、阪和銀行の下には業績悪化の原因になった関連二社がありました。立て直しはまずここからということで、大蔵省主導のもとに阪和はこの二社の清算を行いました。私は、涙をのんでこの二社を清算せざるを得なかったと察しておるのであります。当時の専務さんは、大蔵省OBの岡田直さんです。今は常任監査役でおられる。その後、大蔵省から、ご承知の新居頭取が見えた。日銀からは、渡辺専務が入られた。まさに新しい体制がしかれたという状態でございました。
 時間がありませんので初めから詳細を申し上げられませんが、今申し上げたような二社の清算によって取引先にも損害を与えましたし、銀行自身もまた、みずからの債権を放棄する羽目になったわけであります。これによって百五十八億円の赤字を新たに計上せざるを得なくなるとともに、創業以来の任意積立金を一挙に取り崩すことになりました。しかし、このとき新居頭取さんは、行員の皆さんや株主である阪和会の皆さんを前にして力強く言われたことがある。これによって阪和はもう峠を越した、大丈夫です、みんなで頑張っていけば阪和銀行は立て直しがきくんだよ、ということを言われたと聞きます。ハッパをかけたんです。行員の皆さんもその一言で、これから頑張れば大丈夫と確信したと思うのであります。これが、平成七年二月時点であります。
 経営改善のめどは、平成七年度から平成十一年までの五カ年を目標に立てられました。こうして経営改善計画は、大蔵省の指導どおり忠実に実行されようとしておったわけであります。したがって株価も、当時は三百五十円ぐらいしたんじゃないかと思います。業務停止命令直前には二百五十円台を維持しておったと思いますから、社員への持ち株も奨励するなどして、みんなで頑張ろうという意欲が出ておったと聞いております。平成八年九月の中間決算時には五千万円の黒字を計上できるなと、こういうところまで来たんです。本当にこれだったら阪和は立て直しがきくなという意欲も、いよいよ若い行員さんの中にもわいたと私は聞いております。
 五千万円の黒字を計上する予定となっていたところに、先ほども紹介した朝日監査法人の監査が、またありました。三億七千万円の赤字となる修正発表をここですることになったのです。これが十一月五日。この下方修正も、大蔵省は、貸出金の償却を促進するということで強く指導したようであります。この時点でも、しかし阪和銀行は乗り切れると考えておったと言います。しかしその後、不思議なことに朝日監査法人の態度は急転して、回収不能債権の償却を強硬に主張し始めた。ころっと変わってきたわけであります。そして、阪和は上場企業でもありますから、大量の債権を再度償却する事態になりました。その結果、修正発表の二週間後に、九月中間決算の税引き後損益として三百三十八億円の赤字となる。これでは自己資金で到底カバーできない。二百十八億七千八百万円の債務超過に陥ったというのが経路でございます。大蔵省の厳しい指導どおりやってきたのに、急転直下、約束の方針が一方的に破棄されてしまったということであります。これが監査法人豹変のなぞであります。関西の経済界では、「これは関西金融界のやみだ」と、こういうふうに言われております。犯罪ですよ、これは。
 そして、十一月二十一日の停止命令となるわけです。この期間、わずか十六日。これで、監査法人が大蔵省の言いなりになって修正、再修正を繰り返し、銀行にとどめを刺すカルテを書き直してまいったということがよくおわかりいただけると思うのであります。私も調べてみましたが、本来的には、銀行の不良債権の償却について、監督官庁といえども余りあれこれ指図し強くそれを要求するようなことは権限のほかであるという判断が、監査法人の社会にはあるのであります。朝日監査法人の会長さんは、大蔵省のOBである。ツーツーであるからであったのではないかという──今では憶測の域は出ませんけれども。そうでなかったら、もうちょっと再建計画について約束が進められてきたはずではないかと思うのであります。
 大蔵省は直接手を染めないけれども、これではむしろ最もあくどい粉飾決算だと思っております。病院だったら、手を加えれば助かる患者に対して、日本で一番偉い病院からやってきた博士が、「あんた、助かるんだよ。元気を出しなさい。大丈夫ですよ。あんたの病状は峠を越しましたよ」と言うてくれて、もうあすをも知れぬと自分もあきらめておった人が、今度は希望を持って助かろうという一心にすがって、このお医者さんを頼りにしておったら再び元気になれるんだと思っておったところへ、裏ではカルテを書きかえ書きかえして最後にとどめの注射をポンとやったと、こういうことであります。
 私は、これが銀行行政の改革だと大蔵省が言い張るのならば、改めて大蔵省に問いたい。私に言わせれば、それじゃあのバブルをあおったのはだれなんだ、バブルをこんな状態にしたのは、それを容認したのはだれなんだと聞きたい。歴史に悪名を刻んだ住専の処理とここに巣くった連中はどこから来た人だ。天下りのここの人らはだれだったんだ。土地値上げを黙認しながら、バブルがはじけ始めると総量規制などと言って思いつきばったりのことをやったのは、それじゃだれなんだ。どこの省なんだ。(「大蔵省」と呼ぶ者あり)──そうだ。そのとおり。あらゆる金融機関に不動産関連融資を、もう土地に関しては貸してはなりませんよと言うてブレーキをかけたでしょう。そのときしかし、住専は別格だったんです。これには全然さわってない。住専は別格の存在であるけど、その他の金融機関は金を貸してはならないという、こういう指導というのか通達というのかをしておるわけです。お構いなしだったわけであります。
 身内をかばって家の中から火を出すとは、このことだと思う。バブル崩壊の四年で一千兆円が消えて飛んだという。一千兆円です。その結果、国内外合わせておよそ百兆円の不良債権を銀行は抱えるに至ったという。まさにバブルどころじゃない。プールの底が抜けて飛んだようなものであります。そしてその結果として、皆さん、大蔵省から責任者は一人も出ておらんではないですか。これでは伏魔殿ですよ。責任者がいないわけであります。
 いずれの公務員を問わず、国家・地方を問わず、国民が主人公であります。共産党の皆さんはそういうビラを張っておったな。びっくりした、あれ。同志やなと思いましたよ。しかし、国民に対して忠誠心を誓うのが公務員の道でしょう。義務でしょう。私は絶対的な義務だと思っております。ところが、とんでもないことに霞ケ関には、いまだかくのごとく国民を意のままに操れると考えておる官尊民卑の思想がのさばっておるのであります。天、人ともに絶対に許してはならんことでないでしょうか。無能・無責任の小俗吏どもにこの国が滅ぼされてたまるか、中山さん。そうでしょう。(「そう」と呼ぶ者あり)
 もう一つおまけに言わせてもらえば、新居頭取・渡辺専務のコンビは阪和を助けにきた助っ人ではなくて、幕府・大蔵省差し回しの刺客だったということがはっきりしたんだ。頭取は、二十一日に命令が来るや、さっさとやめてしまった。あっという間に、この日にやめておる。取締役会を開いて問うたのか問わなかったのかは、もう知らん。そんなこと、もう聞きに行く気もならん。しかし、やめてしまった。戦争で言えば、司令官の敵前逃亡ですよ。敵前逃亡というのは戦争中にもあったことです。部下をほったらかして逃げてしもうた。私は、本当は本議場へ頭取さんに来てほしいところでありますが、議会の規則はこれを認めないからやむを得ませんので、一人こうやって孤独な演説をやっておるわけです。
 加えて、その一週間前に頭取は大蔵省へ呼ばれたんです。業務停止命令を出しますよ、二十一日ごろですよということを言われて、新居さんは今度母屋から注射された。ああ、もうあかんなと。ところが、帰ってきて知事にも報告もしてなければ、取締役会を開いて、これはえらいことになりますよという打ち明けたことも、全くやっておらない。黙っておった。だんまりであります。そして、二十一日。
 知事は、翌二十二日に大蔵省にすっ飛んでいった。直接出向いて、厳しく大蔵省に対して抗議をされました。その文書も見せてもらいました。阪和銀行従業員組合の皆さんは、本年二月十三日付で大蔵省に対して、これに対する異議の申し立てをいたしました。しかし二月二十四日、にべもなくこれが却下されております。株主会も、一月二日、阪和会会長さんらが大蔵省で意見陳述を行いましたが、それはもう型どおりの、意見を聞きましょうということで、課長と係長が出てきた。カエルの面に何とやらであります。それっきりです。我々議会も、皆さん、思い起こしていただけば、十二月議会で政府に対して意見書決議を送っております。大蔵省にとっては予定のコースでも、こちらは死活問題なんです。地方が受ける衝撃というのは、それこそ死活問題につながってくるわけであります。
 私は、国政の「橋龍」さんのこれからの緊急課題は、大蔵省の監督権を大幅に削減することだと思っておるわけであります。しかし、このいずれも最後の手段は法廷で争われることになると思います。私は、断固裁判をやるべきだと思います。
 皆さん、「一寸の虫にも五分の魂」という言葉がございます。国家権力というものが繰り返して国民を困らせ、難渋させ、苦しめておる矛盾と横暴の前に、我々は小なりといえども和歌山県民の正義と良心に立って要求することがあります。大蔵省は県民に対しその理不尽と不正を謝罪せよ、と言いたいのであります。知事に謝れ、県民に謝れということである。まずこれから始まらなければならんと思います。その上で、職員、株主が希望するように救済対策も樹立して心を改めて新規の銀行設立を認めるよう、私はこの壇上から求めたいのであります。本件について、知事の総括的なご所見を問うものであります。
 次に、当局にお尋ねいたします。
 一、県資金による支援の見通しはどうか。
 二、大蔵大臣が年度内に発足させると発表した清算銀行設立はどうなっているのか。
 三、社員再就職の見込みについて。
 四、株主、取引関係者、その他銀行とかかわりのあった方々の受けた実損というものは──計算はできないだろうけれども、実損というものが現実にたくさんあるわけです。これはどういうふうに考えられるか。どれくらいの量であるか。
 五、その後の県経済への影響と今後の見通しはどうか。関連倒産の実態はどうか。
 六、県、国機関も含めて金融機関の協力体制は万全であるかどうか。
 以上で、阪和銀行問題を終わります。
 次に、農業問題についてお尋ねをいたします。
 その一つは、これからの農業についてでございます。
 人間が幾ら高度な科学技術を誇りましても、自然を相手にする農業の前には一かけらの食べ物もつくれないのは、子供でも知っておることであります。肝心の土や水や気象の状況といった天然自然の基本を忘れた工業化農業がだんだん行き詰まってまいるのは、明らかなことでございます。
 私は、世界はとっくに食糧安保の時代に入っておると考える一人であります。社会経済の大きな転換期に直面して、食糧自給率の問題が今のままでいいわけはございません。うまいこと計算して四二%だなんて言っているけれども、これもうそがあると思います。和歌山県も、強いとは言えない県であります。我が県の農業は、その形態いかんで農村のあり方や生活観そのものが自然科学や文化論にまで発展していく大きな可能性を持った県だと思うのでありますが、農業の将来をどのように想定されているか、お答え願いたいのであります。
 次に、梅の問題であります。
 私どもは、県民の皆さんのご心配を大変煩わしておる地元の者であります。知事は、就任以来、本問題に直面されまして、特にこの年度の予算では特別な対応をお考えいただきました。感謝を申し上げなければなりません。地球環境が汚染されつつある今日であります。この地上に生存する生命体はまさに存亡の危機にあると、あらゆるマスコミも、これは当たっていることを書いております。私は、そのとおりと思います。自然との共存を叫びながらここに至った文明社会は、あらゆる分野に反省と厳しい選択が迫られる今日でございます。
 梅と言えば、皆さん、日本では長い歴史──松・竹・梅と、めでたごとの三つのものが代名詞のように「松竹梅」と表現されてまいりました。今や、松が枯れました。十年余り前には、竹やぶがすっころこんと枯れました。六十年に一遍枯れるのだそうでありますが、ともかくも竹やぶは枯れて、まだその残骸が残っております。元気が出ておりません。今度は、梅であります。梅は衰弱症。これもだんだん弱ってきておる。松竹梅がなくなったら日本の文化性も陰りが出てくるゆえんであります。今度は「松竹梅」とは言えなくなってまいります。
 日本の農業は、ハード面ではかなり整備されてまいりましたが、土壌や微生物、また自然の植生であるとか環境など、そういった目に見えない部分については、残念ながら研究がおろそかであったように思います。これは、国も県も認めるところだと思います。特に梅は、我が県の特産品として地域経済に大きな影響を持つに至っております。
 衰弱症は十年ぐらい前から出てまいって発見されております。被害地が拡大して、農林水産部も必死の対応を続けております。これはよくやってくれておると、私は申し上げたいと思います。しかし残念ながら、まだ解明に至っておりません。梅等、落葉果樹専門の研究所の設置が望まれるところであります。
 知事は、去る六日、日本における最高権威と言われるような専門家十人をもって構成する研究機関を設置されました。早々に会議も持たれたと聞いております。これらのことも含めてご見解を承りたいのであります。
 次に、新旧白浜空港の利活用についてであります。
 お尋ねをいたします。新しい空港は、路線もふやしました。利用者もだんだんふえつつあります。随分便利になりました。今はMD87という飛行機で百三十四人乗りですが、ジェット機になったらやっぱり速いです。天気のよい日は五十分そこそこで東京に着きます。今度は二千メートルの工事が進められますが、エアバス三〇〇で三百人が運べることになります。これで太平洋湾岸の空港とも、近隣の外国とも結ばれていく空港の位置取りができると思いますが、いかがお考えでありますか。
 旧滑走路の方は、何か積極案をお持ちであるか。私は、ヘリの免許取得の学校の設置及び大きなヘリポート基地をつくってはどうかと考えております。また、国内外の自家用機の駐機場によって、空へ大きく玄関を持つ空港として羽ばたけるように整備されてはどうだろうか。特に観光立県和歌山であります。ビジネスにも大きに役に立つと思います。私案でありますが、ご提案申し上げてお考えを承りたいと思います。
 最後に、「風格ある県土和歌山を目指せ」と題しましたが、このことは、仮谷さんが県政を担当された時点にも申し上げたことであります。
 和歌山県には和歌山県の風格がなければならんと思うのであります。品性が伴うた県土であってほしいと願うものであります。府県それぞれの個性、独自性は積み重ねられた歴史の顔そのものであると考えますけれども、我が県の海、山、川、豊かな自然環境は、これは皆さん、すごい県民の資産であります。その県民性は、当然この風土に根差すものであると思います。知事はどのようなお考えをお持ちであるか、お聞かせいただきたいと思います。
 終わりに、身も心も県民にささげ尽くさんとする西口知事に私は草田男の一句を呈し、激励にかえたいと思います。「勇気こそ地の塩なれや梅真白」──これで、終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(町田 亘君) ただいまの馬頭哲弥君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 馬頭議員にお答えをいたします。
 まず、知事就任から一年有余経過しての感想と県の目指さんとする方向についてのご質問でございます。
 私が知事に就任してからの一年三カ月の間において、内外の諸情勢は大きな変革・変動を見せておるわけでございます。就任以来、スピーディーな行政運営、開かれた県政をモットーにして、さまざまな政策課題あるいは懸案の処理、県民の皆さんとの対話などに、私自身思うに少し欲張り過ぎたと言えるかもしれませんけれども、大変過密なスケジュールを組み、まさに全力で疾走してきたというのが偽らざる心境でございます。
 次の時代への橋渡しという大変重要なこの時期に誤りなく和歌山県を導いていくためには一層気を引き締めて県政の運営に当たっていきたい、そういうふうに決意をしております。
 また、本議会の冒頭でも申し上げましたけれども、時代は大きな転換期にあり、機能や効率を優先した社会から感性や創造性が重視される時代へと進みつつあります。こうした社会の潮流の中にあって二十一世紀は和歌山県の時代であるという確信のもとに、恵まれた自然、豊かな歴史・文化資源を生かして、ゆとりと充実の和歌山県を目指し、ここに生まれてよかった、住んでよかったと思っていただける県づくり、だれからも和歌山を訪れたいと思われるような、住みたくなるような安らぎの県づくりに取り組んでまいりたいと思っております。
 次に阪和銀行の問題でありますが、阪和銀行問題について馬頭議員の大変ご識見の高いご意見を承りました。
 ご指摘がございましたように、今回の阪和銀行の業務停止命令などによりまして、またそのことが県経済あるいは県民生活に多くの影響が生じるとともに従業員の雇用問題等、多くの課題が予測されました。そういうことから私自身も大蔵大臣にも再三お目にかかり、これらの対応を強く要請をしてまいりました。しかし、現在もなおいろんな問題が残されており、万全の対策がなされているとは言いがたく、まことに遺憾に思っておるところであります。
 私といたしましては、県政を担当する立場で、阪和銀行が地域に密着した金融機関であるということから、いろんな問題に対してもこれから全力を挙げて頑張っていきたいと思っております。
 次に農業の問題でありますけれども、農業は、自然と人間とのつながりの中で営まれる、いわゆる生命産業だと思っております。たとえ時代の変化があっても、その存立意義と役割は変わらないものだと考えております。
 こうした中で、議員からお話がございましたように、二十一世紀における食糧需給が大変懸念をされております。農業は本県の基幹産業であり、これまでも農業振興を県政の重要課題として位置づけて積極的な取り組みを行ってまいっておるわけでございます。その結果、本県では限られた耕地を有効に活用した集約的な農業が展開をされており、京阪神圏への生鮮食料品の供給基地としての役割を果たしてきてございます。今後とも、二十一世紀に向け、本県の特性を生かした三H農業を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 また一方で、心の豊かさが求められる中で、我が国の中でも最も恵まれた自然や地域に根差した文化をはぐくんできた本県の農山村に大きな期待が寄せられております。農地や景観など地域の持つ資源を有効に活用しながら、都会にも開かれた魅力ある地域づくりを一層進めていきたいと考えております。
 最後に、風格ある県土づくりを目指せというご提言とともに温かい激励をいただき、大変ありがとうございました。私も常々、内外に確固たる存在を示す風格や品格のある和歌山県を目指したいと思っております。
 県としての風格や品格というものは、自然環境や景観、あるいは歴史や文化、日々の営みの積み重ねによって形づくられていくものであろうと思っております。何よりも、自分たちがすばらしいふるさとに生きているのだという県民の皆様方の自信と誇りによって支えられ、高められていくものであろうと思っております。私が常々申し上げている「ふるさとに自信と誇りを持とう」ということも、そうした趣旨から申し上げておるわけでございます。
 お話の結びの句に「勇気」という言葉がございました。私も、ことしの仕事始めに職員の皆さんに、「勇気と根気を」ということを呼びかけたわけであります。今後とも、県民の皆さん方とともに和歌山県の新時代を築き上げるため、勇往邁進、全力を傾注してまいりたいと考えております。
 以上であります。
○議長(町田 亘君) 出納長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○出納長(高瀬芳彦君) 阪和銀行問題についてのご質問のうち、二点についてお答えいたします。
 まず、県資金による支援についてでございますが、県内中小企業者の資金需要に対応するため五十億円の融資枠を設定したところでございます。大蔵省より業務停止命令のあった翌日、特別融資制度を創設しているところでございます。
 融資状況といたしまして、平成九年二月末現在で、融資あっせん件数は二百八十六件、融資実行は二百五十五件の三十七億円となってございます。なお、現在では日に一、二件のあっせん件数と落ちつきを見せており、今年度については対応できるものと考えてございます。
 しかしながら、今後の資金需要の動向等からまだ予断を許されない状況が続いており、平成九年度においても特別融資を実施するため、引き続き融資枠五十億円の予算を今議会にお願いしてございます。
 次に、株主や年金受給者を含めた一般的取引関係者への影響についてでございますが、県としては、県経済や県民生活に及ぼす影響が大変大きいものと懸念し、阪和銀行問題対策本部において特別融資制度の対策を各般にわたり講じてきたところでございます。
 例えば年金については、同銀行の口座を通じて給付を受けておられた方々は約一万一千件に及びますが、口座変更の手続が速やかに行われるよう広報に努めるとともに、最寄りに他の金融機関がない方々については郵便局を通じた支払いが可能となるよう、処置を講じてまいりました。この年金を初めとする各種の公的給付金については、現在滞りなく給付されており、事態は鎮静化しているものと見てございます。
 なお、阪和銀行株につきましては、既に上場は廃止されており、今後は商法等の規定により処理されるものと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 商工労働部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○商工労働部長(日根紀男君) 阪和銀行問題についてお答えをいたします。
 新銀行の設立はどうなっているかということでございますが、新銀行設立等阪和銀行の処理スキームについては、昨年の十二月十三日に大蔵省から発表されてございます。その内容は、一、阪和銀行貸し付け債権等の資産のすべてを預金保険機構で引き受け、資産の管理・回収は整理回収銀行で行う、二、預金の払い戻しを中心とした整理・清算のための新銀行を設立するという二つから構成されてございます。
 新銀行の設立時期については本年四月上旬の予定と聞いており、本日の新聞各紙で、新銀行の社長内定というふうに報道もされてございます。発足のための体制づくりが最終段階に入っているものと思っております。
 それから、阪和銀行社員の再就職の状況はどうかということでございますが、従業員の雇用問題に対処するため、国、県、経済団体等から成る阪和銀行雇用問題連絡調整会議を設置し、積極的な求人開拓及び情報の収集に努めてきたところでございます。
 連絡調整会議の各委員のご努力、また企業等のご理解、ご協力により、これまで約千人を超える求人情報が集まっております。この情報を阪和銀行に提供するとともに、各ハローワークにおいて職業紹介を行い、再就職の促進に努めているところでございます。今後とも、本連絡調整会議の積極的な活動により、一人でも多くの従業員が再就職できるように支援してまいりたいと考えております。
 その後の県経済への影響と今後の見通しはどうかということでございますが、倒産に関しては、幾つか新聞でも報じられているところでございますけれども、県としては、内容的に業績不振等の要因によるものもあり、現時点で影響は最小限にとどまっておるものと考えてございます。
 また、今後の見通しにつきましては、決算期を迎えて資金需要が高まる時期でもございますので、さらに注意深く見守っていく必要があると考えてございます。
 次に、国、県及びその他金融機関の協力体制は万全かということでございますが、阪和銀行の取引先企業の資金需要に対し、県は特別融資により対応をしてまいるとともに、県の信用保証協会、政府系金融機関や民間金融機関に対して強く協力要請を行ってきたところでございます。その結果、保証協会や各金融機関の協力をいただきまして、これまで阪和銀行と正常な取引関係にあった中小企業者の当面の資金需要は、大きな混乱がなく対応できてまいったものと考えております。今後とも、協力要請をして万全を期してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 農林水産部長平松俊次君。
 〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 農業問題のうち、梅問題についてお答え申し上げます。
 梅の生育不良につきましては、これまで地元協議会を初め関係者の懸命な努力にもかかわらず、現段階において原因究明に至ってございません。そこで、原因の早期解明を図るため、果樹園芸を初め植物生理や大気環境など、おのおのの分野を代表する学識経験者十名にお願いを申し上げ、去る三月六日、県うめ対策研究会を開催し、多くの示唆に富んだご意見をいただくとともに、今後も大所高所からのご指導を賜りながら試験研究の推進等に生かしてまいりたいと存じます。
 なお、この問題も含め本県果樹農業の将来を展望するとき、試験研究の果たす役割は大きく、その重要性は今後より一層高まるものと考えまして、梅等落葉果樹を含めた試験研究体制のあり方について研究を進めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 土木部長長沢小太郎君。
 〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 馬頭議員の、新空港便を今後どう結んでいくのかというご質問にお答えいたします。
 白浜空港が二千メートル化されますと、現在運航している日本エアシステムの新規購入機種であるMD90、MD81、あるいは議員ご指摘のA三〇〇といった多様な機種の乗り入れが可能となりますが、これにより乗客定員もふえ、利便性や快適性も向上しますので、より多くのお客様を迎え入れることができるようになります。また、航続距離も長くなりますので、海外も含め、いろんな地域とのネットワークが可能になります。
 県といたしましては、福岡便や広島便に続き、今後、気候風土の異なる地域である仙台との路線実現に取り組むなど、紀南地域と全国との交流と連携の活発化を支えるための空のネットワークの充実に努力してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 馬頭議員にお答え申し上げます。
 旧南紀白浜空港跡地の恒久的な利用につきましては、紀南地域全体の活性化に寄与するものであること、新空港の利用促進に資するものであることなどを基本として、民間活力の導入を図ってまいりたいと考えているところであります。
 これまで跡地の利活用について各方面からさまざまな案が提案され、現在、土地利用に関する各種の条件整理や整備計画案の検討を進めているところでございます。しかしながら、民間資本の導入を軸とする恒久的整備にはなお公図訂正等クリアすべき諸課題があり、ある程度の時間を要するものと思われます。
 議員ご提案のヘリコプター操縦士及び航空整備士免許取得者養成学校の設置や自家用機等の駐機場の整備案も含め、空港の特性を生かした跡地利用計画案の検討を行ってまいりたいと考えてございます。
 なお、当面の利用方策として、昨年七月、県及び地元白浜町による暫定利用連絡会を設置し、行政のみならず民間の方々も含め、その利用について促進しているところでございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(町田 亘君) 再質問がございませんので、以上で馬頭哲弥君の質問が終了いたしました。

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