平成8年12月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(井谷 勲議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(町田 亘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番井谷 勲君。
 〔井谷 勲君、登壇〕(拍手)
○井谷 勲君 議長に登壇することのお許しをいただきましたことを、厚く感謝申し上げます。通告に従い、順次質問させていただきます。
 まず初めに、根来山森林体験パーク(仮称)の整備についてお尋ねいたします。
 知事は、前の選挙期間中、一貫して和歌山県の活性化を図るためには半島性からの脱却が前提となる、そのためには大阪、京都、神戸と並ぶ関西第四の都市を紀北地域を中心に形成していかなければならないとして、和歌山百万都市圏計画(グリーンダイヤモンド構想)を打ち出されました。和歌山のあすを語るとき、一つの大きな見識であり、県民もこの壮大な構想の実現に大いに期待を寄せております。この構想の中心に位置するのが、岩出町を中心とする那賀地域であります。
 これまで那賀地域は、県長期総合計画の中で和泉かつらぎ研究学園ゾーンとして位置づけられ、地域の経済活性化の先導的役割を担う産業、研究開発機能、居住機能、先端産業等の立地を図る南麓サイエンスパーク計画が推進され、その結果、国道二十四号和歌山バイパスを初め、府県間道路泉佐野岩出線、県道泉佐野打田線や紀の川広域農道等の道路整備、松下電池工業株式会社和歌山工場の誘致、近畿大学生物理工学部の開学等の大きな成果を上げているところであります。この間の、知事を初め県当局のご努力に敬意を表するものであります。
 さて、このような地域振興策の結果、当地域は急速に都市化が進み、大きな発展を見ているところであります。私は、これからの町づくりにあっては、ただ単に便利さを追求するのではなく、やはり良好な自然環境と調和し、快適で住みよい、質の高い生活環境の創造が重要であると思うわけであります。近年、都市の皆さんは、アウトドアブームということもあって、海や川などに出かけ、自然の中で思い切り遊ぶ楽しさを味わう傾向が見られます。そして、特に本県の場合、森林が多く、キャンプやハイキング、野鳥観察等、山へ出かける機会が大変多いのであります。幸いにこの地域には、このたび金剛山生駒紀泉国定公園として編入された和泉葛城山系を中心とした豊かな森林があります。このような都市に近い森林を、ぜひとも県民の皆様のレクリエーションの場として活用すべきであると考えるものであります。
 県においても、これまで植物公園緑花センターを整備し、根来寺等、文化施設と相まって、多くの県民に憩いと安らぎの場を提供されているところでありますが、今般さらに岩出町根来において森林公園を整備するとお聞きし、本議会に財産取得議案を上程されておりますことはまことに時宜を得たものと、大いに賛同するものであります。
 この根来山における森林公園の整備についての知事のお考えをお尋ねいたします。
 また農林水産部長に、森林公園整備の今後のスケジュールについてお尋ねいたします。
 次に、県経済活性化の先導的役割を果たしている南麓サイエンスパーク計画に関連してであります。
 今、申し上げたように、この計画の推進によりこれまで大きな成果を上げてきておりますが、岩出町を中心とするこの地域の将来といいますか二十一世紀をイメージするとき、河川を初めとする社会資本の整備に、より一層取り組まねばならないと考えております。
 そこで今回は、社会資本の一方の柱をなす河川についてお尋ねします。
 南麓サイエンスパーク計画に関連する河川整備については、早くから改修に着手している春日川、木積川、佐川、烏子川と岩出町を流れる住吉川、根来川が対象河川となっております。昨年七月二日、三日の出水により内水被害が発生した状況を見ると、特に住吉川、根来川の改修を急ぐ必要があると考えるのでございます。住吉川、根来川について、今日までの取り組みと今後の方針について土木部長にお聞かせ願いたいと思います。
 次に第三点として、紀の川左岸の道路整備について質問させていただきます。前回の一般質問では紀の川右岸側の道路整備についてお伺いしましたので、今回は左岸側の道路についてお尋ねいたします。
 那賀郡内の道路整備については、仮谷前知事時代から積極的に取り組んでいただいているところであり、特に左岸側では国道四百二十四号の桃山貴志川バイパスを初め、県道かつらぎ桃山線、和歌山橋本線等の路線において整備促進を図っていただいております。十月十四日には、和歌山橋本線の貴志川大橋を含めた貴志川バイパスの竣工式が行われ、供用が開始されました。貴志川によってこれまで東西に分断されていた町域が一体化され、町民ともども非常に喜んでいるところであります。
 そこで土木部長に、国道四百二十四号、県道かつらぎ桃山線の二路線についてお尋ねいたします。
 国道四百二十四号は、田辺市の四十二号を起点として、県の内陸部を縦断して打田町に至る広域幹線道路であり、那賀郡内においては関西国際空港の開港に伴い工業団地も沿線に立地するなど、流域の産業経済活動にとって非常に重要な路線となっております。当路線は、郡内ではそのほとんどが整備されておりますが、打田町の竹房橋南詰めから桃山町市場までの現在の道路は幅員が狭く、大型車が対向できない状況にあります。当該区間ではバイパス計画があると聞いておりますが、その事業進捗はどうか、お伺いいたします。
 また、県道かつらぎ桃山線は、かつらぎ町志賀から桃山町市場に至る那賀郡の南部山間地を貫く幹線道路であり、竜門山によって紀の川沿いの地域から隔てられた南部の地域にとっては、産業経済のみならず生活道路としても不可欠な重要な路線であります。またこの路線は、かつらぎ町内で現在整備が進められている国道四百八十号へ連絡することになっており、那賀郡内から高野山に至る観光道路として重要性がより一層増してくるのではないかと考えております。こうした視点に立って、かねてから重点的にこの路線の整備を進めていただいていると思いますが、なお残されている区間も多くございます。
 そこで、現在、桃山町神田地内、黒川地内、また粉河町下鞆淵地内等で行われている整備の進捗についてお伺いいたします。
 また、粉河町下鞆淵から桃山町黒川に至る黒川峠を越える区間は幅員が狭く勾配も厳しいため、この路線の最大難所となっております。ぜひともこの改修をお願いするところであります。この区間の整備の見通しも、あわせてお聞かせ願いたいのであります。
 次に第四点として、農業関係の試験研究機関の整備についてお尋ねいたします。
 農業関係の試験研究機関は、現在、貴志川町の農業試験場を初め吉備町の果樹園芸試験場、すさみ町の畜産試験場、古座川町の山村産業試験場など六機関が、地域性も加味され配置されております。そして、これまで先輩諸氏を初めとする関係者の熱意ある取り組みもあり、本県農業の発展に大きく寄与してきたことは既にご承知のとおりでございます。私も、長らく農協系統組織に身を置き、農業生産と深いかかわりを持ってきた一人として、試験研究機関の重要性については人一倍認識しているものと自負もいたしております。この間、県の試験研究機関が果たしてきた成果と申しますか実績を見てみると、改めて感慨深いものがございます。
 その主なものとしては、傾斜地の果樹園が他府県に比べて非常に多い地域の実態から、いかに省力化し労働の軽減を図るかということで全国に先駆けて開発された多目的スプリンクラー施設があります。この施設はかなり県下に普及しており、ふだんの農薬散布に加えて、干ばつ時における畑地かん水など多目的利用が図られており、中でも最近の異常干ばつには最大の威力を発揮し、農家の期待に十分こたえる結果となっております。このほか、渋柿の脱渋技術の確立に向けた取り組みや、最近では採卵鶏の産卵能力を向上させる技術として超音波を照射する方法などが開発されてございます。
 時間の関係もあり、紹介はこれぐらいにいたしますが、いずれにいたしましても、こうした技術開発が日々積み重ねられ、その結果として果実の粗生産額が全国一となり、果樹王国和歌山が築かれたのであります。山が多く、傾斜地を利用した農業振興を余儀なくされる本県では、国が言う米を中心とした規模の大きな土地利用型農業の展開には難しいものがあります。やはり、先人たちの英知と努力によって営々として営まれてきた果樹を中心とした集約的農業、言いかえれば、もうかる農業しか生きる道はないと考えるのでございます。しかしながら、農業につきましても、従来に増して厳しさがより一層加わりつつある今日であります。ウルグアイ・ラウンド農業合意に代表されるように、国際化の波が押し寄せ、外国も視野に入れながら、産地間競争に打ち勝っていかねばならない多難な時代を迎えております。
 その一方で、農業生産の担い手はと言うと、後継者が減少し、高齢化も一段と進むという厳しい状況に直面しております。また、人々の価値観も時代とともに大きく変化しております。経済や効率といったものから生活や環境が重視される中で、農業についても、つくるだけに重点を置いていた時代から、新しい観点での農業、農村が見直される時代へと重心を移してきております。
 こうした情勢の中で、先般、国では科学技術基本法に基づき、今後十年を見通した農林水産業の研究方向とも言うべき農林水産研究基本目標が示されたのであります。そのポイントは、表現としてかたいものがありますが、一、国際化の進展という新たな国際環境のもとで、生産性の向上や高品質化、省力化技術など生産現場に直結した技術の確立、二、広い視野に立ち、革新的技術を活用した新しい産業の創出、三、地球規模の食糧、環境、資源問題の解決を目指した取り組みなどが挙げられ、それに伴い、国では試験研究機関の体制整備が進められようとしております。その具体的な動きとして、平成八年度は本県とかかわりの深い果樹試験場で二カ所の分場を統合し、新たにかんきつ部を新設する、また生産現場に近い地域農試において技術と経営の専門家を入れた総合研究部が新設されるなど、再編強化が図られつつあります。
 一方、本県の現状はどうかと見ると、生産基盤である樹園地の大半が急傾斜地であるという地域の実態や、農業就業人口のうち約六割が女性で占められ、また四一・七%が六十五歳以上の高齢者という厳しい農業環境にあります。また、紀南地域の基幹産業である梅において、生育不良という大きな問題を抱えております。次の時代を見据え、本県農業の新たな展望を切り開いていくためには、松本議員も申されたように、まず「隗より始めよ」であります。農業振興の基礎を担う試験研究の一層の充実こそが一番重要ではないかと考えているものであります。
 そこで、県として将来を見据えた試験研究機関の整備についてどういう考えをお持ちか、農林水産部長のご所見をお伺いいたします。
 次に第五点として、農業分野先端技術に関する共同研究の推進についてお尋ねいたします。
 先ほども少し触れましたが、本県農業はミカン、柿、梅等の果樹、エンドウ等の野菜、最近ではカスミソウやスターチス等が日本一の産地になるなど、他県に類を見ない園芸産地として発展していることは周知のとおりでございます。一方、生産現場では、現在、以前のような米を中心とした単一の技術の時代から、品目や品種も多様化し、消費者の要求も、おいしさに加え、安全性や健康面が強く求められるようになっており、こうしたことに対する技術面での迅速な対応がますます重要性を増してきております。しかし、このままでは消費者ニーズの変化に対応した農業生産の速い動きに技術が対応し切れない事態が来るのではないかと危惧するものであります。特に、技術の時代と言われる二十一世紀を間近に控える今日、先端技術の開発普及は重要なかぎを握るものであり、新技術を取り込んだ新しい経営体の育成等を積極的に進める必要があろうと思います。新しい時代には新しい技術が似合うものであります。しかしながら、先端技術の開発には汗を流さねばなりません。従来の研究体制の殻を破り、人的交流も含んだ大学などの専門機関との共同研究を積極的に推進することが、多様な時代を迎えるに当たって非常に肝要であります。一方、県単独ではなかなか難しいのではないかと思うのであります。
 そこで、農業分野の先端技術であるバイオテクノロジー研究における共同研究の取り組みの現状について、また今後の考え方について、農林水産部長にお聞かせ願いたいと思います。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(町田 亘君) ただいまの井谷勲君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 井谷議員のご質問にお答えをいたします。
 根来山森林体験パークにつきましては、岩出町根来の県植物公園緑花センターの北側にございます国有林約百九十五ヘクタールを取得し、整備しようとするものでございます。
 議員のお話にございましたように、私は和歌山百万都市圏計画としてグリーンダイヤモンド構想などを提唱いたしておりますけれども、その実現のためには、さまざまなプロジェクトを実行していかなければならないと考えてございます。その中で、那賀郡を中心とする一帯は豊かな自然環境を有してございまして、森林公園を初め学術研究施設を整備いたしまして、二十一世紀を先取りした、自然と共生する新しい町づくりを進めていきたい、そのような構想を描いておるわけであります。このために、根来山森林体験パークをその核として位置づけて整備を図ってまいりたいと考えております。
 他の問題は、関係部長から答弁いたします。
○議長(町田 亘君) 農林水産部長平松俊次君。
 〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 根来山森林体験パーク(仮称)の整備計画についてでございます。
 今後のスケジュールでございますが、今年度中に用地取得ができるよう今議会にお願いしてございます。来年度、基本設計を樹立するとともに、事業に着手し、できるだけ早い機会にオープンできるよう取り組んでまいりたいと考えてございます。
 整備の考え方といたしましては、都市に近いという特色を生かし、県民が気軽に訪れ、森林内の作業に直接参加したり、青少年や子供たちが、森の中で泥まみれ、汗まみれになって冒険遊びができるような、自然と触れ合える都市近郊型、体験型の森林公園にいたしたいと考えております。
 次に、試験研究機関の整備についてのご質問でございます。
 農業における試験研究機関については、技術開発は本県農業の発展を図る上で大きな役割を果たすものであると考えてございまして、行政や普及組織との連携に努めながら、農家との結びつきを第一義とした試験研究機関の充実が重要であると認識してございます。
 こうした中で本県の試験研究機関は、有田川流域のミカンを初め、産地を背景とした専門試験場として立地しており、これまで地域に密着した技術開発に取り組み、幾つかの成果も上げてきてございます。しかしながら、議員お話しのとおり、農業についても国際化の進展や多様化する消費者ニーズがあり、また本県では担い手の減少や急傾斜地に広がる果樹園という厳しい現実に加え、紀南地域における梅の生育不良といった課題もございます。こうした情勢を踏まえつつ、二十一世紀における三H農業の展開も視野に入れる中で、産地の実態を反映した研究はもとより、技術革新の波にも対応できるよう、人材の育成はもちろんのこと、試験研究体制の整備充実に向け積極的な取り組みを進めてまいりたいと考えてございます。
 次に、農業分野先端技術の共同研究の推進についてでございます。
 議員ご指摘のとおり、新技術を活用し、本県農業のより一層の発展を目指すことは大変重要なことではないかと考えてございます。農業分野のバイオテクノロジーに関する研究については、本県特産の果樹、花卉等の新品種を育成するため、暖地園芸センターを中心に、国や他府県を初め、農協連合会等との共同研究を推進してまいりました。平成八年度からは、新たに近畿大学生物理工学部との共同研究により、遺伝子診断技術を活用した高品質果樹及び花卉の新品種の育成に取り組んでございます。これまでの成果の一例としては、カスミソウで紀州パール、スイートピーでオーロラブルーの新品種を育成したほか、イチゴなどで優良苗の増植、配布をしてございます。
 また、近赤外線利用によるミカンの選果システム、省力化のための機械等についても民間との共同開発に取り組んでございます。
 今後とも、関係機関、大学、民間等との共同研究を重ねてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 土木部長長沢小太郎君。
 〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 井谷議員のご質問にお答えします。
 まず、住吉川、根来川の改修整備についてでございます。
 住吉川については、紀の川の合流地点から県道粉河加太線までの間、延長四千四百三十メートルについて、平成六年から小規模河川改修事業により取り組んでいるところでございます。今年度、下流側からおおむね国道二十四号バイパスまでの測量設計を完了する予定でございます。平成九年度から用地測量を実施し、一部用地取得に着手することを予定しておりますので、地権者の方々のご協力をお願いしたいと考えております。
 また根来川につきましては、山田川合流地点から根来新橋までの間、延長千五百メートルについて、平成三年から堤防改修事業により取り組んでいるところでございます。平成八年度までに四筆の用地買収を行っております。平成九年度も引き続き用地取得の促進を図り、早期に護岸工事に着手したいと考えております。
 続きまして、紀の川左岸の道路整備のうち、国道四百二十四号の整備状況についてでございます。
 国道四百二十四号の打田町竹房橋南詰めから桃山町市場までのバイパス計画につきましては、平成六年度から打田桃山バイパスとして事業化いたしております。当計画区間には公図の混乱地域が多く、現在、地籍調査を進めているところでございます。来年の秋ごろには、この作業が完了した箇所から本格的に用地買収に入る予定としております。今後は、地元関係の方々のご協力を得ながら、早期に工事に着手できるよう努力してまいります。
 続きまして、県道かつらぎ桃山線の道路整備につきましては、現在事業中の桃山町神田地区延長二・三キロメートルのうち、現道拡幅の一・三キロメートルを平成二年度に完了いたしましたが、残る一キロメートルのバイパスについても平成九年度末完了の予定でございます。さらに、桃山町黒川地区の延長八百四十メートルについては平成十一年度末、粉河町下鞆淵地区の延長五百メートルについては平成十年度末の、それぞれの完成を目標に工事の促進を図っているところでございます。また、桃山町と粉河町町界の黒川峠付近の未改良部分約四キロメートルにつきましては、現在概略調査を進めているところであり、今後、両町及び地元のご協力を得ながら、早期事業着手に向け努力してまいります。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(町田 亘君) 以上で、井谷勲君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(町田 亘君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時三十九分休憩
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