平成8年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(新田和弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時四分開議
○議長(町田 亘君) これより本日の会議を開きます。
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 【日程第一 議案第百四十三号から議案第百七十号まで及び報第七号】
 【日程第二 一般質問】
○議長(町田 亘君) 日程第一、議案第百四十三号から議案第百七十号まで、及び地方自治法第百七十九条による知事専決処分報告報第七号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 38番新田和弘君。
 〔新田和弘君、登壇〕(拍手)
○新田和弘君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 まず初めに、少子化への対応と育児支援施策についてお尋ねをいたします。
 我が国の出生数は、昭和四十八年の第二次ベビーブーム時の二百九万人をピークとし、その後、継続的な減少傾向をたどり、平成七年には出生数が百十八万七千人と、百二十万人を割り込む過去最低となりました。このことは、合計特殊出生率が平成七年には過去最低の一・四三となり、人口維持に必要な数値である二・○八を大きく下回ったことを示しております。こうした状況は本県においても同様の動向を示し、平成五年の出生数は九千七百三十七人と過去最低を記録し、平成七年には九千八百八十人と一万人台を割り込み、合計特殊出生率も一・五一と全国平均を少し上回る程度で、少子化が進みつつあります。
 少子化の要因のまず第一は、我が国において近年、結婚年齢が上昇しているのみならず、結婚に対する意識の変化により未婚率が著しく上昇し、結婚しない男女が増加しています。特に、二十五歳から二十九歳までの女性について見ると、未婚率が昭和五十年に二○・九%であったものが平成六年には四六・○%と、飛躍的に増大しております。さらに、我が国の出生に関する大きな特徴として、婚外出生割合がほぼ一%前後と著しく低いことが挙げられます。出生率が二・○以上に回復しているスウェーデンの婚外出生割合は五○・四%、デンマークが四六・八%と、かなり高率に達しております。このことは、結婚した後に出産をするのが一般的な我が国と、同棲して出産し、その後結婚することが珍しくないヨーロッパとの出産・結婚観の違いが際立った対照を見せております。
 少子化の要因の第二は、女性の社会進出の増加が挙げられます。女性の高学歴化として、高校、大学の進学率を性別に見ると、高校進学率では昭和四十四年を境に女性の方が男性を上回り、平成六年では女性九六・八%、男性九四・六%となっています。また大学、短大への進学率を見ても、平成元年以降女性の進学率が男性を上回り、平成六年では女性四五・九%、男性四○・九%となっています。また女性の職場進出も増加しており、これを雇用者について見ると、昭和四十年から平成六年までの三十年間に女性の雇用者は千五百三万人ふえ、平成六年では雇用者として働く女性は二千三十四万人と、雇用者全体の三八・八%を占めるに至っております。しかし、女性の年齢別に見た労働力率をグラフにあらわすと、三十歳から三十四歳の部分が大きく減少する明確なM字型カーブを描いているのが特徴であります。このM字型カーブは、女性の就労を支援し、少子化に対応するためにも、女性が働きながら子供を生み育てることのできる環境づくりを進めていかなければならないことを物語っております。
 少子化要因の第三は、教育費等の子育てコストの増大が挙げられます。平成五年の「厚生白書」の試算によると、一人の子供が成人に達するまでに要する費用はおよそ二千万円を上回るとのことであります。加えて今日、子供のいじめ、不登校や、親の側にも育児不安、育児ノイローゼを初め、最近では幼児・児童虐待といった深刻な問題が起こっており、少子化が一段と進行する状況にあります。
 こうした状況を踏まえて厚生省は、平成六年三月に、二十一世紀福祉ビジョン少子・高齢社会に向けてとのビジョンを発表しました。同ビジョンでは、育児支援策に関し、安心して子供を生み育てられる社会的支援体制を整備するため、子育てを社会的に支援していくための総合的な計画、いわゆるエンゼルプランの策定の必要性が訴えられました。さらに、同年三月に児童手当法が改正され、四月には児童の権利に関する条約批准がなされてきました。同年十二月に、文部・厚生・労働・建設の四大臣合意による「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」と題するエンゼルプランが策定されました。同プランは、今後おおむね十年間を目途として、子育てに対する社会的支援を総合的かつ計画的に推進するため、保育、雇用、教育、住宅など各般にわたる施策が策定されました。また、エンゼルプランの施策の具体化の一環として、近年の保育ニーズの多様化に対応し、緊急に整備すべき保育対策として、平成六年十二月に、大蔵・厚生・自治の三大臣の合意により緊急保育対策等五カ年事業が策定されました。これにより、平成七年から十一年までの五年間に推進すべき保育対策の具体的目標が定められました。
 その項目を挙げてみると、ゼロ歳から二歳の低年齢保育六十万人の実施、延長保育七千カ所、一時的保育三千カ所、乳幼児健康支援デイサービス事業五百カ所、放課後児童クラブ九千カ所、保育所の多機能化のための整備千五百カ所、地域子育て支援センター三千カ所を実現するとしております。さらに、雇用保険法、健康保険法、国民年金法等の改正が行われ、平成七年四月より育児休業給付及び育児休業期間中の厚生年金保険料や健康保険料の本人負担額が免除されるようになりました。
 本年十二月三日、厚生省の中央児童福祉審議会基本問題部会が中間報告書をまとめました。同報告書は、少子社会にふさわしい保育システム、児童自立支援システムの確立、母子家庭の実態と施策の方向の三つの柱で取りまとめられており、保育システムでは子育てと就労の両立のため社会的支援の強化が必要とし、保育時間の延長や乳児保育の実施などサービスの多様化を図り、利用者が保育所や保育サービスを選択できるようにすべきと指摘しております。保育料については、サラリーマン世帯に不公平感の強かった所得税額にリンクした負担額から、保育コストや子供の年齢などで算出する均一保育料体系への変更を提案しております。さらに、全国に六千カ所ある放課後児童クラブを児童福祉法の体系の中に取り入れ、積極的に普及させるよう求めております。
 こうした国の施策等を受けて、本県においても県の少子化対策として、平成五年十一月に子育てに関する県民意識調査を実施し、平成七年三月には和歌山県子育て環境づくり推進協議会より子供が健やかに生まれ育つ環境づくりへの提言を受けて、平成八年度当初予算に五百万円を計上し、喜の国エンゼルプランの策定を目指しているところであります。
 そこで、西口知事にお尋ねをいたします。
 知事は、国のエンゼルプランや子育て環境づくり推進協議会の提言を受けてどのような喜の国エンゼルプランの策定を目指しているのか、さらに今後それらの施策をどう実施していくのか、お尋ねをいたします。
 次に、関係部長にお尋ねをいたします。
 一、緊急保育対策等五カ年事業の本県における実施状況と今後の施策をどう進めるのか。
 二、乳児や多子世帯の保育料の軽減や共働きの中間所得層の負担軽減や保育料の適正化を今後どう改善するのか。
 三、大阪府を初め兵庫県、滋賀県で実施されている保育所活動事業及び民間保育所運営費補助に対する県単事業を本県にも導入されてはどうか。
 四、平成七年四月よりすべての事業所で育児休業制度が導入されることになりましたが、本県での定着状況はどうか、また平成七年四月より開始された育児休業給付及び保険料負担の免除等の状況はどうか。
 以上、四点をお尋ねいたします。
 次に、第十五期中央教育審議会の答申を踏まえた文教施策についてお尋ねいたします。
 本年九月に、山口県のある大学附属中学校あてに学園祭の中止を求める手紙が届きました。その手紙には、「もし行事が行われるなら、自分は自殺をする」と書かれていました。学校側は、とりあえず学園祭を中止する決定をしました。これ以来、自殺を予告する手紙が全国的に広まる状況にあります。去る十一月二十九日の産経新聞にも、広島市西区の公立中学校に「二学期の期末試験を実施すれば自殺する」という内容の匿名の手紙が相次いで二通送付されてきたため、同校では期末試験の初日を通常授業に切りかえた旨の報道がありました。
 このように、ターゲットは学園祭だけではなく、体育祭、テストと拡大され、集団行動が求められる学校行事にねらいがつけられているのが特徴であります。今日、連鎖反応的に各地で起きているこの問題について私たちが注目しなければならないことは、学校の行事を中止させるのに自分の命を担保にしていることであります。私たちの子供時代では、せいぜい雨が降って行事が中止にならないかなと期待する程度でありましたが、四十年後の現在では子供の意識が大きく変わっていることを実感させられる次第であります。それは、自分の命を担保にできるほど今の子供たちにとっては命の重さが失われてきており、家族の存在が子供の命を引きとめておく力になっていないのではないかと危惧するからであります。
 また、いじめによる自殺事件においても、愛知県西尾市の中学二年生だった大河内君がみずから命を絶って二年が経過しました。この間に、文部省初め教育委員会、学校などで、いじめ問題の解決へのさまざまな取り組みや対策が推進されてきましたが、マスコミの報道によりますと、まことに残念なことに、平成八年においても小学生一人、中学生五人、高校生一人の七人がいじめを苦に自殺したと報じられております。子供たちは、学校や教育に必要以上にとらわれ、縛られている事態に陥り、生きる力を失い、家族にとって自分の生きていることが大きな要素であることが見えなくなってしまっているのではないかと心配するものであります。
 さらに先月、五十二歳の父親が中学三年生の息子を、家族に暴力を振るうという理由で金属バットで殴り殺してしまうという悲しい事件が起こりました。この男の子は、小学校一年から中学校一年まで七年間、学校を一日も休んだことがなかったそうです。それが、二年の夏休み明けから休み始め、登校拒否現象があらわれ、不登校状態の始まりと時を前後して家庭内暴力も始まりました。暴力が次第にひどくなるので、母親と姉は避難をし、家は父と子の二人暮らしとなりました。そして、息子にいきなり顔を殴られたことが引き金となり、父が息子を殺す悲劇が起こってしまいました。七年以上にわたる無欠席から息切れし、登校拒否に陥り、家庭内暴力へと進行する状況は典型的な事例と言って片づけられるものではありません。ここにも、学校あるいは教育が親子を縛ってしまう余り、本来安らぎの場であるはずの家庭が暴力の場に変わり、家族における親と子のいたわり合いの気持ちがどこかへ行ってしまったのかと、家庭が今まさに危機に瀕していることを実感しています。
 本年七月、文部省の第十五期中央教育審議会より、二十一世紀を展望した我が国の教育のあり方についての第一次答申がありました。また同じ時期に、文部省のいじめ問題に関する専門家会議である児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議が「いじめ問題に関する総合的な取り組みについて 今こそ子供たちのために我々一人一人が行動するとき」と題する報告を取りまとめました。答申では、これから求められる資質や能力を、一、自分が課題を見つけ、みずから学び、みずから考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力、二、みずからを律しつつ、他人と協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性とたくましく生きるための健康や体力、答申はこれらを「生きる力」と称し、今後の教育は、学校や家庭や地域社会が緊密に連携を図り、ゆとりの中で子供たちに生きる力をはぐくんでいくことが極めて重要であると述べております。さらに、これからの学校教育のあり方として、学校が「生きる力」の育成を基本として、知識を教え込む教育から、みずから学び、みずから考える教育への転換を目指すべきであり、特にボランティア活動、自然体験などの体験学習の充実を提言しております。
 本県においては、みずから学び、みずから考える教育への転換として、和歌山高校への総合学科の導入、さらに学校間連携の導入が行われてきております。平成九年度からは、吉備高校に総合学科が導入される運びと伺っております。ボランティア活動及び体験学習については、高校では平成五年から勤労体験学習総合推進事業が実施され、さらに平成八年から県立校十校で輝けハイスクール支援事業が行われています。小中学校における体験学習として、自然教室推進事業などが実施されてきております。
 そこで、教育長にお尋ねをいたします。
 一、吉備高校への総合学科の導入及び学校間連携の拡大にどう取り組まれるのか。
 二、生きる力を養う体験学習の実施を今後どう推進されるのか。
 以上二点、お尋ねをいたします。
 次に、答申では、いじめ、登校拒否の問題は、家庭、学校、地域社会が緊密に連携して取り組む重要性を強調しています。さらに報告においても、いじめの問題の解決に向けた具体的な取り組みとして、家庭、地域社会では家庭教育の重要性を再認識し、真に心の居場所となる家庭づくりなどが挙げられ、学校ではいじめる子供に対する適切な指導、及びいじめられる子供への弾力的な対応などが示されております。さらに教育委員会では、家庭教育に対する支援の充実や学校での取り組みに対する支援の充実などが示され、国においても一人一人を大切にして個性を生かす教育の充実や教員の資質・能力の向上などが示されております。
 そこで、教育長にお尋ねいたします。
 一、いじめ、登校拒否の本県の実態と、答申、報告を受けて今後の方策はどう進められるのか。
 二、今日、問題化している自殺予告等の問題を今後本県ではどう指導していくのか。
 三、家庭教育の充実と真の心の居場所となる家庭づくりをどう進めていくのか。
 四、急速に変化していく社会の中で、学校が諸課題に適切に対応していく上で、教員が社会の構成員としての視野をさらに広げるため、長期間にわたり学校以外の施設等において研修を行う長期社会体験研修が平成八年度から実施され、和歌山県初め七県一市で二百二十四人が参加することになりました。去る十月三十一日の新聞に、いじめ、不登校など教師の柔軟な対応が求められる中で、社会人としての視野を広げ、教育に還元させることを目的に、県内の学校から三十九人が民間企業に派遣される長期社会体験研修が実施された旨の報道がありました。教員の長期社会体験研修の実施状況と、今後どう進められるのか。
 五、子供たちにゆとりを確保するために、答申では、完全学校週五日制の実施を二十一世紀初頭を目途に進めることを提言しております。産業界におきましても、平成九年度から週法定労働時間四十時間制に全面移行する運びであります。ただし、二カ年間は行政指導期間とするとあるもので、来年、さらには西暦二○○○年までには産業界が週休二日制を達成する方途が示されております。そこで、完全学校週五日制の実施へ本県はどう取り組まれるのか。
 以上五点をお尋ねいたしまして、第一問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○議長(町田 亘君) ただいまの新田和弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 新田議員の、少子化等への対応についてのご質問でございます。
 我が国の少子化の進行の背景といたしましては、議員お話しのとおりでありますけれども、本県においても合計特殊出生率は平成五年の一・四六人を最低にいたしまして平成七年は一・五一人と、全国平均を若干上回る大変厳しい状況でございます。少子化対策は緊急な課題となっておるわけでございます。
 こうした中で、平成七年三月に、子育て環境づくり推進協議会から子供が健やかに生まれ育つ環境づくりへの提言をいただきまして、子育て環境づくりに積極的な取り組みがなされなければならないわけでございます。
 議員ご質問の喜の国エンゼルプランでございますけれども、協議会からいただきました提言に沿って、一つ目に社会的な啓発、二つ目に子育てと仕事の両立支援、三つ目に子育て家庭への支援、四つ目に子育てに優しい地域環境の整備、五つ目にゆとりある教育の推進、六つ目に推進体制の整備、この六項目について、平成九年度を初年度とする十八年度までの十カ年間に取り組むべき施策の基本的方向を示したいと考えてございます。計画の具体的施策の推進につきましては、二十一世紀を担う若い世代の育成のために、行政はもとより、家庭、地域社会、さらに企業等、社会全体で取り組み、子供を安心して生み健やかに育てられる環境づくりの推進に努めていきたいと考えております。
 以上であります。
○議長(町田 亘君) 福祉保健部長小西 悟君。
 〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 新田議員にお答えを申し上げます。
 まず、緊急保育対策等五カ年計画の本県における実施状況と今後の推進についてでございます。
 本県の緊急保育対策等五カ年事業の実施状況は、特別保育として乳児保育三十七カ所三百八人、障害児保育、国制度五十二カ所八十一人、県単独制度八十カ所百四十三人、延長保育は国制度、県単制度合わせて五十五カ所で実施しております。また、保育所地域活動事業三十六カ所、地域子育て支援センター一カ所、放課後児童クラブは十カ所で実施しております。
 今後、実施主体である市町村が積極的に地域のニーズを把握し、計画的に事業を実施するよう指導してまいります。特に、特別保育未実施の市町村に対しては、地域のニーズや社会的な要請にこたえられるよう強力に指導してまいりたいと考えてございます。
 本年度策定する喜の国エンゼルプランでは、特別保育推進のための具体的数値目標を設定し、未実施となっている一時的保育や開所時間延長、病後児保育を対象とした乳幼児健康支援デイサービス事業等の推進を図るとともに、国の法改正の動向を見ながら、育児と就労の両立支援のための利用しやすい保育所づくりを目指してまいりたいと考えてございます。
 次に、保育料の負担軽減、適正化についてでございます。
 保育料は、児童福祉法に基づき十階層区分の徴収基準が示されており、市町村長が各自治体の実情に応じて徴収金を定めることとされています。保育料の軽減について、国では平成七年度より乳児保育の加算については廃止されており、また多子世帯の三人目からの徴収基準が十分の一に軽減され、本年度さらに所得制限が撤廃されたところであります。
 議員ご指摘のとおり、共働き家庭の高負担感、サラリーマン世帯と自営業者間の負担の不公平感があると言われているのも事実であり、現在、中央児童福祉審議会でもこの問題が討議されており、ご指摘のような中間報告が出されたところであります。県といたしましては、子育ての経済的負担を軽減する観点から、同一世帯から保育所と児童福祉施設に措置されている場合についても軽減制度の適用を図れるよう国へ要望しているところであります。
 次に保育所地域活動事業は、保育所の有する専門的機能を幅広く住民に提供し、地域福祉の向上を図っていく事業で、老人福祉施設の訪問や育児講座の開設、地域の異年齢児との交流の場の提供などメニュー事業であり、本県では三十六カ所の保育所で実施されています。今後も、この国庫補助事業のさらなる充実とともに、県単独事業につきましては、地域の要望を見ながら検討してまいりたいと考えています。
 次に、民間運営費補助についてでございます。
 少子化による充足率の問題や労働時間短縮における職員の増員等、運営上の困難が言われているところでありますが、特別保育、地域活動事業などを積極的に進めていただく中で、措置費の上積みや補助金の増額により対処していただいているところであります。県といたしましては、県単独の運営費補助は現時点において考えてございませんが、今まで国に対し措置費の改善を強く要望しているところであり、検討されている法改正において措置費がどのように改善されていくか見守ってまいりたいと考えてございます。
 次に、育児休業制度に伴う保険料負担の免除の状況についてでございます。
 一歳未満の子を養育するため、育児・介護休業法により育児休業をしている健康保険及び厚生年金保険の被保険者については、本人の申し出により被保険者負担分の保険料が免除されることとなっております。本県における免除申請件数は、法施行時の平成七年度が二百六十二件、平成八年度は十月末現在で百四十六件で、月平均で約二十件となっております。事業主及び被保険者に対する周知に努めているところですが、育児・介護休業法を所管する商工労働部門とも連携をとりながら一層の周知を図りたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 商工労働部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○商工労働部長(日根紀男君) 本県における育児休業制度の定着状況についてでございます。
 県で実施している労働時間等実態調査によると、就業規則、労働協約等に育児休業制度を定めている事業所は平成六年十二月時点で三九・三%でありましたのが、本年九月時点の調査では四八・九%と、この間、二年間で約一○ポイントの伸びを示しております。
 次に育児休業給付の支給状況でございますが、平成七年四月一日に制度が創設されて以来、本年十月末現在までの受給者の実人員は四百七十九名となってございます。県といたしましては、指導監督機関である和歌山婦人少年室と連携を図りながら、啓発セミナーの開催やパンフレットの配布等により育児休業制度の定着に努めているところでございます。
 また育児休業給付につきましては、雇用保険適用事業所の事業主や各種団体等を対象に制度説明会を実施するとともに、被保険者に対しても冊子を配布するなど、幅広く周知に努めているところでございます。今後、より一層の周知啓発に取り組んでまいりたいと考えてございます。
○議長(町田 亘君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題七点についてお答えいたします。
 来年四月開設予定の吉備高校の総合学科につきましては、福祉や新しい農業を目指すグリーンテクノ等の特色ある六つの系列を設け、百二十余りの科目から生徒が主体的に選択して学べるようになっております。また、生徒全員に園芸の授業を通して、命の大切さや働くことの喜びなどを学ばせることとしております。
 学校間連携につきましては、現在、和歌山市内及び田辺・西牟婁地方で実施しておりますが、これまでの成果を踏まえ、来年度は伊都地方の六校間での実施を目指して準備を進めるとともに、県内各地域での多様な連携の実施についても研究を行っているところであります。
 次に、体験学習についてでございます。
 小中学校では、飼育、栽培、社会見学を初め、少年自然の家を利用した活動、また高校では課題研究やさまざまなボランティア活動への参加などを進めてございます。子供にとって、生きて働く学力を身につけ、豊かな感性、主体性をはぐくむ上で重要な教育的意義を持つものでございますので、今後はさらに家庭や地域社会など、学校外でのさまざまな体験活動を一層重視してまいりたいと考えます。
 次に、平成七年度、本県のいじめ発生件数は公立学校合わせて二百五十五件となっており、登校拒否については三十日以上欠席した児童生徒は小中学校で一千二名となっております。
 こうした状況を厳しく受けとめ、本年度は新たにいじめ防止ポスターの作成や県内八地方での登校拒否・いじめを考えるフォーラムの開催、学校等へのカウンセラー派遣事業などを実施してまいりました。とりわけ、文部省のいじめ対策地域連携モデル市町村の指定を受けた湯浅町では、地域ぐるみのいじめのない街づくり推進会議を設置して、あいさつ運動や啓発を進めてございます。今後とも、学校、家庭、地域社会が連携した取り組みを一層推進してまいりたいと存じます。
 なお、いじめを防止するための年度途中での学級編制がえや転校などにつきましては、弾力的な措置等について周知を図ってございます。
 次に、最近子供が学校行事やテストの中止を求めて自殺を予告する電話をかけるといったことが相次いでおり、このような風潮を憂慮しているところでございます。こうした予告に対しては、当該生徒の命を守るという観点と他の児童生徒全体に学習機会を確保するという両面から慎重に対応する必要があります。
 教育委員会といたしましては、こうした行為が決して悩みや問題の解決につながらないばかりか、多くの生徒を混乱させること、またとうとい命を軽視するという許されない行為であることを徹底するよう指導してございます。また、このような予告があったときは、学校は全教職員の一致協力のもとに児童生徒の状況を的確に把握するとともに、家庭やPTA及び関係機関とも十分連携を図りながら、万全を期した上で態度を決定することが大切であります。今後とも、子供の気持ちを受けとめる相談体制の充実を図るとともに、適切な対応について、県立学校並びに市町村教育委員会に対し指導してまいりたいと考えております。
 次に家庭教育の充実についてでありますが、近年、核家族化や少子化、地域における連帯感の希薄化などが一段と進む中、家庭環境も大きく変化してきてございます。こうした時代にあっては、子供の人間形成の基礎となる生活習慣や豊かな情操などを培う家庭教育の重要性をいま一度見直す必要があると考えます。
 教育委員会といたしましては、医師や専門家の協力を得て、家庭教育充実事業として子育てに関する情報提供をテレビ放送やパンフレットなどで行うとともに、親が気軽に利用できる巡回相談、電話相談の充実に努めているところであります。今後は、特に父親が積極的に家庭教育へ参加できる事業や親子の社会体験、交流等を取り入れた事業を実施するなどして、家庭の教育力を回復させるための環境づくりを支援してまいりたいと考えてございます。
 次に、教員の長期社会体験研修についてでございます。
 この研修は、教員の社会的視野を広げる観点から、文部省が今年度初めて全国七府県一市において取り組む事業であり、本県もこれを受けて実施しているものでございます。今年度は小・中・高校及び特殊教育諸学校から合計三十七名の教員を、七月末から最大限八カ月間、銀行、大規模小売店、製造業、特別養護老人ホームなど二十六カ所に派遣いたしております。
 先般、本県で開催した近畿の教育委員会議においても体験発表を行ったところですが、研修を修了した教員からは、仕事に対する強い自覚と厳しい姿勢を実感できた、組織内での連携の強さを学んだ、学校以外における子供の姿を通して家庭教育の実態をかいま見ることができたなどの報告を受けております。本研修での社会体験がこれからの学校教育のさまざまな場で生かされるものと、期待しているところでございます。今後とも、より充実した研修となるよう、期間、内容などに工夫を加えながら、引き続き実施してまいりたいと考えてございます。
 最後に学校週五日制につきましては、新しい学力観に立つ教育を推進するための重要な施策として、現在まで月二回実施し、研究してまいりました。特に平成七、八年度には、県内八地域において本県独自の学校外活動推進モデル事業を実施し、学校と社会教育関係団体が協力してさまざまなプログラムを提供し、五日制の完全実施を展望した基盤づくりを進めてまいりました。今後、こうした事業の成果を生かし、市町村等との連携を図りながら、地域社会の持つ教育機能の有効な活用に努めるとともに、公民館などの社会教育施設の活性化を図り、子供が仲間と楽しく学び合い、活動できる場の充実に一層努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 38番新田和弘君。
○新田和弘君 ただいま西口知事さん初め関係部長の皆さんからご答弁をいただきましたので、若干要望を申し上げさせていただきたいと思います。
 十一月二十五日の新聞の社説に、「国民生活白書」について、「結婚と子育ての夢広げよ」という記事がございました。その中で、子育ては楽しいとする母親が国際比較されておりまして、楽しいとする母親がアメリカでは七二%、韓国では五四%、それに比べて日本が二三%である。これについて新聞の方は、現役世代の負担をもっと軽くして、結婚とか子育てに夢を持てるようにすべきではないかと述べておりました。
 そういう意味からも、先ほど答弁がございました緊急保育対策等五カ年事業、並びに喜の国エンゼルプランの今後十年にわたる施策を強力に推進していただきたいと思う次第でございます。
 二点目に、教育の問題でございます。
 これも十二月二日の朝日新聞に「おやじの背中」というコラムがございまして、女優の中村メイコさんがこういう文章を載せております。「父は、寺子屋式マンツーマンで私を教育してくれました。自由人で『何もかも一律にそろいすぎる学校教育はきらいだ』という考えでしたから、私は小学校までで、中学校は行っていません。 『夕焼けはなぜ赤い』。小学校三年の時、理科の試験でそんな問題が出たことがあります。父にきいていた通り『空が恥ずかしがってるから』と書いたら、ペンペンッと乱暴にバツがついて返ってきました。『どうしてうそを教えたの』と言うと、父はとたんに不機嫌になって『どちらもうそじゃない。考えて出す答えはいくつもあっていい』」云々と、この文章を通じて中村メイ子さんは、お父さんから教わった一番大切なものとして、「『答えはひとつじゃない、それが人生』の発想だった」ということを知ったと述べております。
 そういった意味で、私は今回、この子育ての問題、教育の問題を通じて、改めて家庭教育の重要性ということを皆さんに申し上げたかった次第でございます。
 本県においては、昭和四十二年十月の第三日曜日から「家庭の日」というのが設置されて既に三十年を迎えようしているわけでございますが、現在の少子化の問題、また教育問題における家庭のあり方等を含めて、今後県におかれても、この「家庭の日」を十二分に活用して、各家庭がすばらしい心の居場所となれるような家庭づくりができるようご要望をさせていただき、質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(町田 亘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で新田和弘君の質問が終了いたしました。

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