平成8年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(宇治田栄蔵議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

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 【日程第三 議案第百四十三号から議案第百六十六号まで及び報第七号】
 【日程第四 一般質問】
○議長(町田 亘君) 次に日程第三、議案第百四十三号から議案第百六十六号まで、及び地方自治法第百七十九条の規定による知事専決処分報告報第七号をあわせ一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第四、一般質問を行います。
 22番宇治田栄蔵君。
 〔宇治田栄蔵君、登壇〕(拍手)
○宇治田栄蔵君 議長のお許しを得て、平成八年十二月県議会冒頭に一般質問の機会を与えていただきました先輩・同僚議員に感謝申し上げ、質問をさせていただきます。
 西口知事には、昨年十一月、県民の熱い期待を担って初登庁以来はや一年、「県民の声を県政に」の公約どおり、きのくにホットラインの開設や女性一〇〇人委員会の設置をされました。また、県庁内の機構改革、香港駐在員事務所の開設、湯浅御坊道路の開通など、その政治手腕を遺憾なく発揮してこられました。これからも、ますます県民の期待にこたえる県政を推し進めていかれることを念じております。
 それでは、まず阪和銀行問題についてお尋ねいたします。
 阪和銀行は、昭和十六年に「紀南無尽」と「福徳無尽」が合併して「興紀無尽」となり、戦後、昭和二十六年に相互銀行法に基づき「興紀相互銀行」として発足し、県内の中小企業の発展に資金面から貢献してきたところであります。平成元年の普通銀行転換で「阪和銀行」となり現在に至ったもので、ことし九月末現在、預金残高五千七十四億円、貸出金残高四千三百八十四億円、資本金五十六億円、従業員数八百四十一人で、県内はもとより大阪府南部を中心に五十三店舗を有する県内二番目の地方銀行として、県内経済の発展に大きく寄与してきました。
 同行が創立四十周年記念事業として刊行した「興紀相互銀行史」の「むすび」をかりて同行の沿革を紹介しますと、「当行の歴史は昭和十六年八月十六日興紀無尽株式会社の創立にはじまるが、その淵源をたずねると、大正十四年一月紀南無尽株式会社の創業にさかのぼる。同社の創始者故福田順次郎は卓越した識見と経営手腕を発揮し、また『信義を重んずる人づくり』を念願して社員教育に情熱を注ぎ、ゆるぎない社礎を築きあげた。しかし、創業五十六年の道程はけっして平坦なものではなかった。紀南無尽草創期において一社員の起こした不祥事は、経営の根幹をゆさぶる規模であった。また、迂余曲折を経てようやく福徳無尽との合同が成立し、興紀無尽創立にこぎつけるまでには、筆舌につくしがたい苦労がともなった。 新会社創立まもなく、わが国は大戦に突入した。戦時下の経営維持にはひとしおの困難をしいられ、最大店舗和歌山支店が戦火をこうむって全焼する不幸が重なった。さらに戦後、経済民情の混乱の中で、会社の再建整備にすべてを賭けた経営陣・社員ともどもの、日に夜をつぐ苦闘があった。 会社再建整備の大業を完了し、その後の相互銀行転換を機に、折からのすみやかな経済成長の波にも乗ってめざましい発展をとげた当行は、高度経済成長から安定経済成長へと移行する変革の中で、さらに着実な業容拡大の歩みをつづけた。 いまここに記念すべき創立四十周年(創業五十六周年)を迎えることとなったが、その歴史をかえりみて地域顧客の支持協力の恩恵とともに、歴代経営者・諸先輩の刻苦奮励の足跡に深い感銘をおぼえるのである」というものでありました。共存共栄を創業の精神とし、信義を重んずる人づくりを念願して社員教育に情熱を注ぎ、自主独立の健全経営を維持することが同行のモットーでありました。
 ところが、バブル期、系列ノンバンク二社による不動産融資を行い、特に住専借り手一位である富士住建とは密接な関係になり、巨額の資金を貸し込む一方、共同出資でノンバンク大阪ファイナンスを設立し、行員を派遣するなどしました。バブル崩壊とともに融資の大半が焦げつき、不良債権を抱えることとなったのであります。そこで同行は、ノンバンク二社再建のため、二社に融資している金融機関に対し金利減免などの支援を要請する一方、不良債権の回収に全力を挙げていました。そのノンバンク再建中の平成五年八月五日、債権回収担当の小山友三郎副頭取が射殺される事件が起きたのであります。このように不幸な事件に見舞われたとはいえ、再建の努力を積み重ね、大蔵省から頭取が派遣されていることでもあり、平静を取り戻すものと思っていました。
 十一月二十一日、新聞・テレビは、「阪和銀行に業務停止命令 銀行で戦後初」、「債務超過二百億円 再建は困難 頭取は引責辞任」との見出しで、本県第二位の金融機関である阪和銀行の経営破綻を報じました。
 大蔵省は、二十一日午前八時、経営不振から九月中間決算で大幅な赤字を計上する見通しとなった第二地方銀行の阪和銀行に業務停止を命令した。銀行に業務停止命令を出すのは戦後で初めて。同省が実施した検査の結果、二百億円以上の債務超過の状態であることが明らかになり、経営を継続することが困難と判断した。預金は全額保護される。同行の整理清算に当たっては、債権の受け皿となる新銀行を設置するとともに、預金保険による資金援助を要請すると発表。
 また三塚大蔵大臣は、同日午前十時、阪和銀行への業務停止命令について記者会見し、阪和銀行の財務状況が大幅な債務超過の状況にある点を指摘、「速やかに対処することが金融システムの早期の機能回復につながる」と、早期処理に踏み切った理由を説明しました。
 大蔵大臣の談話は、次のとおりでありました。
 「阪和銀行は、昭和五十年代後半から不動産関連向け融資を積極化させてきたが、バブル経済の崩壊とその後の不動産価格の低下等により資産内容の悪化が急速に進み、今般の大蔵省検査の実態把握などを通じ、償却を要する資産の額が同行の自己資本の額を大幅に上回り、自主再建が困難な状況であることが判明した。一昨年来、金融機関の破綻が相次いで発生していることはまことに残念であり、各金融機関は今後とも経営の健全性確保に向けて一層の努力を払うことを期待したい。いずれにしても、大蔵省としては、金融機関が破綻に陥った場合には、処理を先送りせず速やかに対処することが我が国金融システムの早期の機能回復につながるものと考えており、今回の阪和銀行の問題についてもこのような観点に立ち、今後、預金者保護及び信用秩序の維持を図ることを基本として早急に処理方法を取りまとめる所存である。具体的には、当行を整理・清算するための新銀行を設立した上で営業譲渡を行うこととし、その際、預金保険制度を活用して預金者を保護しつつ整理・清算を円滑に進めることを基本とした処理を行うこととしたいと考えている。なお、預金については、過去の金融機関の破綻時においていずれの場合にもすべての預金が保護されたのと同様に、今回もすべての預金が保護されることとなるので、預金者におかれては心配されることなく、良識ある行動をとられることを希望する」というものでありました。
 阪和銀行本店では、二十一日午前十時十五分、新居頭取ら幹部五人が報道陣約五十人の前に姿を見せた。新居頭取は、「このような事態に至り、深く深くおわびいたします」と切り出し、頭取を辞任することを明らかにしました。新居頭取の会見内容は、次のとおりであります。
 「弊行は、創業以来、地域金融機関としての役割を果たすべく、金融サービスの充実と経営の効率化に努めてまいりました。しかしながら、いわゆるバブル経済の崩壊に伴い、関連ノンバンク二社不良債権問題に端を発し、信用の低下、資金繰り悪化等、銀行経営にとって容易でない状況に直面いたしました。このため、関係先のご理解を得て平成七年三月には、弊行は関連ノンバンク二社に対する支援を打ち切り、二社は法的措置を講ずるとともに、平成七年七月には経営体制を一新し、信頼の回復と自主再建を目指し、役員報酬・従業員賞与等の大幅カット、人員の圧縮、諸経費の削減、所有不動産の売却等、経営の合理化を進める一方、不良債権の回収と預貸金の増強に鋭意取り組んでまいりました。しかしながら、関連ノンバンク二社への支援負担が多大であったことに加え、不動産市況の低迷と地価の下落による担保価値の毀損により資産内容の悪化を招来し、資産内容の抜本的改善には至りませんでした。弊行の不良債権の処理能力には限界があり、自主再建が困難であるとの認識から、これ以上通常の営業を続けることができないとの判断により、本日午前八時、大蔵大臣から銀行法第二十六条による業務の一部停止命令を受けるに至りました。こうしたことになりました上は、地域金融機関としての社会的責任を痛感し、業務の一部停止命令を受けて開催した取締役会において取締役頭取を辞任いたしました。なお、後の体制につきましては、頭取の代行に専務取締役の渡部善治が就任いたしました。大蔵大臣談話及び日銀総裁談話の中にもありますとおり、お客様のご預金は元金、利息とも全額保護されておりますので、預金者の皆様方におかれましてはくれぐれも冷静な対応をお願いしたいと存じます。お取引先の皆様、株主の皆様、並びに関係各位の皆様には、長年にわたり引き立てを賜りながら、このような多大のご迷惑をおかけすることとなりましたことはまことに申しわけなく、深くおわび申し上げますとともに、何とぞご理解を賜りたく、お願い申し上げる次第でございます」というものであります。
 阪和銀行本店では、午前九時にシャッターが開くと、預金の解約を求めて約百人が詰めかけました。また、同銀行の発祥地である田辺市の田辺支店では、営業開始前に預金者ら約四十人が列をつくりました。各支店では、行員が「預金、利息は保証されます」と書かれたチラシを配り、混乱防止に努めました。和歌山県警は、県内の同銀行本支店三十二カ所に警官六百五十人を動員し、警戒に当たりました。本店では、預金者の列は建物の外まであふれ、午後三時の閉店になっても百人以上が店内に残り、最後の客が店を出たのは午後六時過ぎでございました。この日一日の預金引き出し総額は二百十億円に上り、預金口座の解約も約一%の一万五千七百十三でありました。本店、支店とも大きな混乱はなかったけれども、定期預金の解約が認められなかった客が「自分の預金がなぜ。支払いに困る」と、銀行に不満をぶつける姿も見られました。
 和歌山商工会議所では、加盟事業所三千八百八十五社のうち一三%の五百十八社が阪和銀行と取引があり、三百十六社が主力銀行にしています。事務局はこの日、約百社に聞き取り調査をし、小林謙三会頭が中小企業金融公庫和歌山支店など三カ所と県信用保証協会を回って、「年末を控えて最も資金の必要な時期、資金の貸し出しなどに迅速かつ弾力的な対処をお願いしたい」と要請しました。
 市内のある工業会社の営業部長はこの日、別の銀行に当座預金の口座をつくるため四軒の金融機関を回ったが、目的を果たせなかった。阪和銀行に預けてある三百万円分の定期預金の証書を見せたが、担当者から「返事には二週間かかる。仮に口座をつくることができても時間が必要だ」と言われたと言います。
 このように、阪和銀行の業務停止命令は本県経済や県民生活に大きな影響を及ぼすものであり、県民に大変な衝撃を与えるものでありました。今回の処理のことが大蔵省からあらかじめ何らかの形で県知事に事前連絡があってしかるべきであると私は考えます。事実をお聞かせ願いたいと思います。
 県においては、二十一日に直ちに阪和銀行問題緊急連絡会議を設置し、取り組み体制を整え、影響調査、情報収集を行い、総額五十億円の県特別融資制度を創設、また二十二日には知事が上京され、三塚大蔵大臣、事務次官、銀行局長に直接会われ、信用秩序の維持や中小企業者の経済活動に支障のないよう万全の措置をとっていただくよう要請を行われました。さらに、二十七日に同緊急連絡会議を和歌山県阪和銀行問題対策本部に改組し、対策に万全を期していると聞いてございます。しかしながら、この問題は地域経済や県民生活にとって多くの課題を抱えているものと考えます。そこで、以下、質問をさせていただきます。
 阪和銀行は、再建のため大蔵省OBの新居氏が頭取に派遣されたのに破綻をいたしました。新居頭取が辞任して責任をとったと伝えられていますが、これだけでよいものでしょうか。また、大蔵省の阪和銀行に対する処理は、整理・清算するための新銀行を設立して営業を譲渡するという冷酷な処理方法をとっています。すなわち、新銀行は主に預金の払い戻しと債権の回収を実施し、新たな貸し出しなどはしない、存続期間は数年間の時限銀行となる見通しと言われております。さきに破綻した兵庫銀行(現在のみどり銀行)や太平洋銀行(現在のわかしお銀行)では、存続のための受け皿となる新銀行を設立し、行員も新銀行に引き継がれました。何ゆえに、このような差異の生じる処理を受けなければならないのでしょうか。阪和銀行の今後並びに県経済に与える影響の見通しについて、知事の見解をお伺いいたします。
 次に、行員の雇用問題についてお伺いいたします。
 さきに破綻した兵庫銀行の行員は一部を除いて雇用が確保されたのに対し、阪和銀行では業務停止命令を受けたことで約八百四十人の行員が大量解雇されることになります。新設される受け皿銀行に移れても、清算業務が終わればその銀行自体が解体される運命が待っています。同様に破綻した銀行の処理について、余りにも差があり過ぎるのではないでしょうか。怒りを覚えるものであります。
 しかしながら、現実問題として今回、整理・清算方式が初めて適用された結果、阪和銀行八百余人の従業員の今後の雇用が問題となります。県内景気は依然として厳しく、特に雇用情勢は有効求人倍率が本年十月で〇・六八倍と厳しい状態が続いている中、なかなか難しい問題と考えますが、このことについて知事の見解をお聞かせ願います。
 次に、県は十一月二十七日、和歌山県阪和銀行問題対策本部を設置し、全庁的な対策を行っているとのことですが、この対策本部の設置の目的、内容、役割や今までの活動状況について、本部長である出納長にお尋ねいたします。
 特に、阪和銀行の口座で年金を引き落としているお年寄りから「年金は期日どおり受け取れるのか」という相談があり、生活の不安を感じておられます。阪和銀行を受け取り窓口としている人や家庭は、年金受給者は約一万一千人、生活保護が三百七件、児童福祉手当が五百六件あります。このような方々の不安を解消するためどのように対応されたか、対策本部長である出納長にお尋ねをいたします。
 県経済への影響を最小限にするためには、阪和銀行と取引関係にあった中小企業者の経営の安定化が重要であると考えます。県は金融の円滑化のため直ちに総額五十億円の県特別融資制度を創設し実施するなど、迅速な対応をとられましたが、現在までの利用件数等の実績はどのぐらいあるのか、五十億円で十分な融資ができるのか、また、その他既存の制度融資の弾力的な運用を行うなど周到な対策が望まれるところでありますが、これらのことについて商工労働部長にお伺いをいたします。また、連鎖倒産の防止についてどのような対策を考えているのか、お聞かせを願います。
 これに関連して、十二月二日、「関西相互住宅」と関連の商業金融会社「カンサイファイナンス」が和歌山地裁に自己破産を申請し、同社の代理人弁護士は「メーンバンクである阪和銀行の経営破綻で融資が滞り、自己破産に陥った」と説明しました。十二月五日、同社の債務総額は三百九十八億円、債権者は四千七百七十三人であることが破産管財人より明らかにされました。
 関西相互住宅は、一九七四年に県知事から積立式宅地建物販売業の許可を取得しており、県への報告では同社の積立金総額は六億九千万円で、その三分の一の二億三千万円は銀行に預けられているということです。県は、許可権者としてこの事件をどのように把握しているのか、また被害者対策をどのように考えているのか、お聞かせ願います。
 また、出資法違反などの法律違反があるとの報道がされており、十二月七日、社長の橋本英喜らが逮捕されましたが、警察としてどう対応するのか、お聞かせを願いたいと思います。
 以上で、阪和銀行に関する質問を終わらせていただきます。
 次に、小選挙区比例代表並立制の評価について質問をさせていただきます。
 去る十月二十日、第四十一回衆議院議員選挙が行われました。今回の選挙は、政治改革、選挙制度改革により改められた小選挙区比例代表並立制で実施された最初の選挙である点で、特に注目を集めました。この小選挙区比例代表並立制は、細川政権のとき政治改革の名のもとで導入された制度であり、次のような利点があると説明されました。
 中選挙区制度では、過半数を獲得するために政党は複数の候補者を当選させなければならない。すると、必ず同じ政党の候補者同士によるサービス合戦が始まり、それがために政党に派閥を生じさせる。派閥が金を集め、個人が金を集める。そこに汚職を生む土壌があり、派閥の弊害も生じる。小選挙区になれば派閥は解消されるし、金のかからない選挙が実現できる。小選挙区の導入によって政党対政党の争いとなって政策中心の選挙となり、結果として政権交代のある政治システムとなる。政権与党が失政を犯したり腐敗したりした場合、必然的に政権交代の可能性が高まるから緊張した与野党間の政争が可能となる。しかし、単純小選挙区制では大政党に有利に過ぎ、価値観の多様化した時代に少数意見を尊重し生かすことが難しくなる。そこで、比例制を取り入れ、小選挙区比例代表並立制という現行制度が採用されたのであります。
 しかしながら、結果を見ますと、派閥は解消されず、従来どおりであります。選挙は、選挙区が縮小したことにより、これまで以上に後援会などのかたい地盤が威力を増し、金もかかるようになったとの指摘が多いようであります。また、政策は行政改革と消費税で論争されましたが、政策により政党を選ぶというほどその相違は明らかにされませんでした。政党の基本理念も、共産党を除いて大きな差は見られませんでした。このように、選挙の結果を見れば、説明されたような効果は余り認められなかったと言わなければなりません。そればかりか、この制度にはさまざまな矛盾があることが明らかになりました。
 第一は、今回の衆議院議員選挙での当選者は、当選の仕方によって、一、小選挙区で当選した議員、二、比例選に単独立候補して当選した議員、三、小選挙区で落選したが、重複立候補した比例選で当選した議員の三種類に分けられます。同じ衆議院議員であるが、発言力などに微妙な違いが出てくることが予想されることであります。
 十月二十二日、朝日新聞「天声人語」では、「今度の新制度の当選者は金バッジ、銀バッジ、銅バッジの三種類に分けられる。金バッジは小選挙区での勝者、銀は比例区の選出、そして銅は、小選挙区で落選し、重複立候補によって復活した人だという そんな話を聞いたけれど」云々と記しております。
 小選挙区で当選した議員と、小選挙区で落選し重複立候補で復活した議員とでは、選挙で信任されたか否かで政治家としての実質的価値は異なります。衆議院を構成する議員にこのような差の出る選挙制度は、好ましくないものと考えます。
 第二は、供託金没収でも復活で当選という事例が生じたことであります。
 東京二十二区の選挙結果は、次のとおりでありました。伊藤達也、六万九千七百七票、当選、山花貞夫、六万三千九百七十四票、比例区当選、進藤勇治、四万九千八百三十七票、落選、松田佳子、三万五千七百六十二票、落選、保坂展人、一万三千九百四票、比例区当選、佐藤和友、二千五百二十六票、落選というものでありました。保坂氏の得票は有効投票のわずか五・九%であり、法定得票数にも達していないのに当選したのであります。小選挙区なら法定得票数(有効投票の六分の一)に届かず、当選資格がない、三百万円の供託金も没収される、その程度の得票数の候補者が比例選で当選する、議員の資格を得るというのです。これでは何のための選挙か。民主主義に反する結果となります。
 第三は、保坂氏は五位であるにもかかわらず、三位、四位の候補者を追い越して当選しているということであります。これは民意を反映したものとは言えず、選挙民にとって納得できない結果と言わなければなりません。このように、上位の候補者を追い越して当選した議員は二十三人に上りました。
 第四は、東京二十二区の例で見られるように、一つの小選挙区で三人の当選者が出るという結果が生じたことであります。これでは、何のための小選挙区かということになります。また、地域間のバランスも悪く、実質的に一票の価値が異なるという法のもとの平等の原理に反することにもなります。
 このように見ますと、今回の総選挙の実施によって、小選挙区比例代表並立制は矛盾に満ちた制度であり、欠陥の多い制度と言わなければなりません。従来の中選挙区制の方が、より民主的で公平な制度であると考えます。知事は、今回の総選挙を見てこの制度をどのように評価しておられるか、見解をお聞かせ願います。
 最後に、武道館の建設についてお尋ねをいたします。
 武道館の建設については、本年二月県議会において長坂議員がその必要性について質問されたところでありますが、武道関係者の一人として大変ありがたく感謝するとともに、強力な援軍を得た思いでございます。私からも再度、武道館の建設の必要性について質問をさせていただきます。
 我が国が世界に誇る伝統的な文化である武道は、単にわざを競い合うだけではなく、心身を鍛錬し、人間形成を本来的なねらいとしているものであり、今日の学校教育において大きな役割を果たしております。世界の国々においてもその文化的価値が高く評価され、国際的な競技として普及発展しているところであります。各都道府県においては、このような教育的、文化的意義を踏まえて武道館の建設に積極的に取り組み、すばらしい施設内容と設備を備えた公立武道館が次々と建設されている現状であります。
 本県の県立武道館は、昭和四十四年に和歌山市和歌浦に建設され、昭和四十六年の黒潮国体では柔道競技の練習場として使用され、以後、本県の武道振興の中核施設として重要な役割を果たしてまいりました。しかし、建設から二十七年を経過した現在、老朽化が激しく、また施設面積が狭いため公式大会の会場としてその機能を果たさないばかりか、講習会や平素のけいこにも十分に利用できない状況にあり、残念ながらこのような施設を有する県は本県をおいてほかにありません。
 知事も武道館建設の必要性については十分理解され、百三十六の選挙公約の八十二項で「スポーツ王国和歌山を目指して」と題し、「武道のメッカとなる国際試合の可能な県立武道館を建設します」と言われています。私も、国体の空手道競技の監督などを通し他府県の武道館で試合やけいこをしてまいりましたが、その施設の充実ぶりには驚くばかりであります。
 県下の幼少年から高齢者に至る武道愛好者が生涯を通じて武道に親しむとともに、全国的規模の大会や錬成会を開催し本県武道の競技力の向上を図る武道鍛錬の拠点として、新武道館が必要であります。県におかれては新武道館の建設についてどのように取り組まれておるのか、お聞かせ願います。
 以上で、私の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(町田 亘君) ただいまの宇治田栄蔵君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 宇治田議員にお答えをいたします。
 まず阪和銀行に関連してのご質問でありますけれども、阪和銀行の業務停止命令の事前連絡についてであります。
 阪和銀行が大蔵省の直接指導監督下にあるとはいいながら、私が連絡を受けましたのは、大変遺憾ながら、十一月二十一日、業務停止命令の出された当日でありますが、その未明、午前三時ごろでございました。
 また、阪和銀行の今後につきましては、十一月二十一日の大蔵大臣談話では整理・清算するための新銀行を設立した上で営業譲渡を行うことを基本とした処理を考えるということだけでございまして、まだ明確にされていない段階でございます。
 また、県経済への影響につきましては、同銀行が県内に三十二店舗を有し、中小企業者を中心に多くの取引や預金者を有するなど、県経済への及ぼす影響は大変大きいものと考えてございます。こうしたこともございまして、去る十一月二十二日、業務停止命令の出た翌日でありますけれども、上京をいたしまして、大蔵大臣初め関係幹部に対して信用秩序の維持等、万全の措置をとるように強く要請をしたところでございます。大臣を初め幹部の皆さんからは、積極的に努力する旨の回答を得たところでございます。また、十二月四日、東京で開催をした政府予算の要望の際に、本県選出の国会議員の先生方に対しまして実情を訴えたところでもございます。
 県といたしましては、年末を控えて同銀行と取引のある県内中小企業の資金需要が高まってくることも考え、資金繰り等に支障が生じないように他の金融機関への協力を要請するとともに、県としても五十億円の特別対策融資制度を創設いたしまして、その措置を講じたところでもございます。
 阪和銀行の行員の問題につきましては、県としても八百人余の今後の雇用の確保に大きな懸念を抱いてございまして、大蔵省に参りましたときにも、大臣初め銀行局長などにも雇用問題についても積極的に対応するよう強く要請をしたところでございます。また後日、商工労働部長が、このことを文書にまとめまして、大蔵省銀行局あるいは日銀、近畿財務局等へ要請文として派遣をしたところでございます。
 議員ご指摘のように、県内の雇用情勢も依然として極めて厳しい状況にございます。阪和銀行自身の努力はもちろんでございますけれども、県としても、先ほど申し上げましたように、大蔵省当局を初め関係方面の対応をしっかりと求めていくと同時に、県としてもできる限りの支援をしてまいりたいと考えております。
 このたびの阪和銀行の業務停止命令により、中小企業者に対する影響、雇用問題はもちろんでございますけれども、年金支給の遅延等、県民生活に与える影響も大きいわけでございますので、今後とも対策本部において積極的に対応してまいりたいと考えてございます。
 次に、小選挙区比例代表並立制による衆議院議員の選挙制度についての評価というお尋ねでございます。
 この選挙制度につきましては、先般の総選挙の直後から、選挙結果の分析に基づき幾つかの疑問点等が報道機関などからも提起をされまして、国民の間にも、ただいま議員からご指摘がございましたような制度の是非を含め、種々のご意見があることはよく承知をしておるところでございます。
 しかしながら、事は国権の最高機関たる国会の構成にかかわる事柄でもございますので、私から意見を申し述べることはいかがかと思いますけれども、今後、国民の十分な理解が得られるように国政の場における議論に期待をいたしたい、そのように考えております。
 武道館の問題については、教育長から答弁をいたします。
○議長(町田 亘君) 出納長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○出納長(高瀬芳彦君) 阪和銀行の関係で、二点お答えいたします。
 阪和銀行問題対策本部の取り組みについてでございますが、十一月二十一日に阪和銀行への業務停止命令を受け、県としては即日、阪和銀行問題緊急連絡会議を設置、さらにその後、影響が広範に及んでいるため、十一月二十七日には県民生活の安定並びに中小企業者の円滑な経済活動に支障が生じないよう阪和銀行問題対策本部を設置し、全庁的な取り組みを行っているところでございます。
 対策本部におきましては、影響調査の実施、各種行政相談、福祉給付等の口座変更などについての県民への広報、また、中小企業者の経営安定のため特別融資制度の創設、和歌山銀行協会等、県内金融六団体に対して年金受給者のためのつなぎ融資等の協力依頼を行うなど、各部局間の調整及び大蔵省等の関係機関との連絡調整などを行ってまいったところでございます。これまで、連絡会議を三回、対策本部会議を二回開催して各部の取り組み状況報告を求めたところでございます。年金の相談件数が約八千件、融資相談が約五百件、特別融資のあっせん件数が六十二件、年金の口座変更済みの件数が一万件を超える状況となってございます。
 次に年金等生活者への問題でございますが、阪和銀行を利用して年金福祉給付、失業等給付などの受給口座を設けている県民の方々から口座変更等について多くの相談や問い合わせが関係部局に寄せられるなど、県民の生活に大きな影響が出ているところでございます。速やかに口座変更の手続をとるように関係各部並びに県事務所の窓口で周知徹底に努めるとともに、テレビ、ラジオ等で広報を行ってきたところでございます。その結果、現時点では口座の変更も大部分が完了し、ほぼこの問題については鎮静化を見たところでございます。
 なお、年金につきましては、口座振替の手続の関係上、十二月十三日の受給日が十二月二十五日になりますので、受給日までの生活対策として低利のつなぎ融資等、県内金融六団体により実施されることになってございます。
 今後とも、対策本部としては、県民生活の安定、県経済の安定、雇用問題などについて、できる限りの努力を行っていきたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 商工労働部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○商工労働部長(日根紀男君) 阪和銀行問題について、二点についてお答えをいたします。
 中小企業対策としての特別対策資金融資についてでございますが、十一月二十五日から融資の申し込みの受け付けを行ってございます。十二月五日現在の申し込み状況は、建設業、卸小売業、サービス業を中心に六十二件、十三億四千八百万円の申し込みとなってございます。また、このほか政府系金融機関においても四十数件、約十億円の申し込みがあると聞いておりまして、当初設定しております五十億円の融資枠で当面は対応できるものと考えてございます。今後、申し込み状況等を見ながら、増額についても検討してまいりたいと考えてございます。
 次に連鎖倒産の問題でございますが、阪和銀行と取引ができなくなったことによる資金繰り悪化が要因となって経営困難に至らないか、懸念されるところでございます。このため、特別対策資金以外にも県制度融資の一般振興資金の活用を図るとともに、政府系及び地元金融機関とも連携をとりながら中小企業者の資金需要に対応し、関連倒産に至らないよう最大限の努力をいたしてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 土木部長長沢小太郎君。
 〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 宇治田栄蔵議員の、関西相互住宅株式会社に関するご質問にお答えします。
 関西相互住宅株式会社につきましては、積立式宅地建物販売業法に基づき県知事の許可を受けた業者であります。県といたしましては、これまで、この業法の規定に基づき、毎年度の事業報告について審査を行ってまいりましたが、特に問題点は見受けられませんでした。このため、関西相互住宅株式会社の経営の実態について疑いを持ち、法律で義務づけられている以上の検査等を行う必要性を感じることは困難でありました。
 また、被害状況につきましては、議員もご指摘されましたように、破産申し立てによる和歌山地方裁判所の宣告によりますと、債権者は約四千七百七十三名に対して合計約三百九十八億八千百万円の債務となってございます。債務の詳細等については、まだ十分には把握いたしておりません。
 県としては、積立式宅地建物販売業法に基づき販売契約とみなされる契約をされている方に対し、法律に基づき、確保している営業保証金の配当に向けて作業を行ってまいりたいと考えております。積立式宅地建物販売業法に基づけば、一定以上の期間に積立式宅地建物販売の契約をした方から債権の申し出をすべきことを公告し、請求のあった事項に対して権利の調査を実施した上、権利のある方に対し配当を行っていくこととなりますが、具体的な方法や日程等につきましては破産管財人と連絡をとりつつ進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 警察本部長青山幸恭君。
 〔青山幸恭君、登壇〕
○警察本部長(青山幸恭君) 宇治田議員のご質問にお答えいたします。
 関西相互住宅株式会社が去る十二月二日、和歌山地方裁判所に自己破産の申し立てを行い、破産宣告の言い渡しがなされ、警察の相談窓口等にも多数の顧客等からの相談が寄せられてきたところであります。
 県警察といたしましても、本件について重大な関心を持って鋭意事実の確認等をしてまいったところでございますが、同社がいわゆる出資法に違反して多数の顧客を募り、預かり金をしていた疑いで、去る十二月七日、生活安全部長を長とする約八十名体制によります関西相互住宅株式会社による出資法違反事件捜査本部を設置し、同日、約百名の体制をもって本社など七カ所の捜索を行うとともに、代表取締役橋本英喜など三名を逮捕し、鋭意捜査を進めているところであります。
 今後、事件の解明に向けて捜査に全力を尽くしてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 武道館の建設についてお答えいたします。
 現在の県立武道館は昭和四十四年に建設され、以来、本県の武道振興に大いに活用されてまいりました。しかし、建設後二十七年を経過した現在、老朽化が激しく、武道愛好家の活動の拠点となり、また武道の各種大会が開催できる総合武道館の必要性を強く認識しているところでございます。
 このため、教育委員会が所管するスポーツ施設の計画的な整備の中に武道館を含め、全県的な視野に立ったスポーツ施設の配置について、現在、関係部局と協議を進めているところでございます。
 以上です。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 22番宇治田栄蔵君。
○宇治田栄蔵君 今回、阪和銀行に大蔵省から業務停止命令が下されましたが、先ほどの知事の答弁にもございましたように、当日の午前三時ということで、私どもはもとより県民みんなが突然の命令に本当に驚いたわけでございます。
 これから、県民生活にもその影響がじわじわと及んでくることが予想されます。県におかれましても、県民生活に影響が最も少ないように、特に中小企業者等の資金繰り、そしてまた行員の雇用問題等について、できるだけの努力をされることをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
○議長(町田 亘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で宇治田栄蔵君の質問が終了いたしました。

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