平成8年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(上野哲弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(町田 亘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 26番上野哲弘君。
 〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 一般質問を行います。
 まず最初に、地方分権について質問いたします。
 平成五年六月に、憲政史上初めて衆参両議院において地方分権の推進に関する決議が全会一致で採択されました。これを受けて昨年五月に地方分権推進法が五年間の時限立法で成立し、いよいよ地方の時代が具体化されようとしています。
 地方分権の推進は国を挙げての課題であり、中央省庁も積極的に取り組んでいただけるものと思いますが、現実には、各省庁のみずからの権限を守ろうとする姿勢が非常に強いと聞いております。我々はこの壁を打ち破り、真の意味での地方分権を実現するためには、地方自治体側に、国からの権限を譲ってもらうのではなく奪い取るものだという気概が必要だと考えております。そのためには、行政と住民が一体となって地方分権を実現する機運を地方から盛り上げていくことが不可欠であります。
 先日、本県において地方分権推進のためのシンポジウムが開催され、熱気あふれる議論が交わされたことはまことに意義深いことだと、大いに評価するところであります。シンポジウムにおけるパネルディスカッションにおいてパネリストの松原弁護士は、地方分権になると三つのことが実現すると発言されました。一つ目は逃げない行政の実現、二つ目は行政サービスへの競争原理の導入、三つ目はふるさとづくりの夢を安心して語れるようになる、というものであります。私も、そのとおりかと思います。
 地方分権により地方自治体のみずから治める責任の範囲は飛躍的に拡大し、地方の職員も、事務を進めるに当たり、国の各省庁の指示を口実にして主体的な判断を回避することが困難な事態に直面し、安易に各省庁の指示を仰ぐこともできなくなります。地方自治体はこれまで以上に地域住民の期待と批判に鋭敏かつ誠実に応答する責任を負うことになり、「逃げない行政」が実現されるものと思います。また、国の縦割り行政の弊害が是正され、地方自治体は地域の総合的な経営主体として、他の地域と競争しつつ、地域の実情に則した自主的かつ責任ある行政が展開できるようになり、住民へのサービスが向上するものと考えられます。さらに、国がつくった画一的な基準に縛られることなく地域の個性を競うことができるようになり、多様で魅力ある地域振興が図られるものと思います。しかし一方で、地方自治体の責任がそれだけ増すことになるわけであります。
 県には地方分権の時代に対応するための体制づくりが求められていると思いますが、本県の現状と地方分権に関する知事の所見をお伺いいたします。
 それでは、各論についてお伺いいたします。
 他府県での一連のゼネコン汚職事件を契機として、地方分権により地方の首長の権限が強化されると地方での不祥事がふえるとの意見が出されています。私は、このような意見は極めて短絡的な発想であると思いますが、こういった分権慎重論に対する知事の所見をお伺いします。
 引き続き、総務部長にお伺いいたします。
 まず財源問題についてでありますが、地方分権を実効あるものとするためには、国と地方の税体系、補助金・負担金のあり方など、財政、税制のあり方を抜本的に見直し、地方の事務量に見合った財源を地方が確保する必要があると思います。本県としては、分権に見合う税についてどのように考えておられるのか、お聞かせください。
 次に、当面、都道府県により重点を置いて国からの権限移譲が進められるようですけれども、私は最終的に、住民により身近な存在であり地域づくりの主体である市町村への移譲を進めることが必要と考えています。県と市町村との関係は今後どのようにあるべきか、お伺いいたします。
 また、地方分権が推進された場合、国から地方に権限が移譲されることになります。地方分権を進める上で、市町村は広域行政を推進し、その受け入れ体制を整備する必要があると思いますが、あわせて県の役割をお伺いいたします。
 市町村が地方分権に対応するためには、従来からの「国が考え、地方が実行する」という体制から「地方がみずから考え、みずから実施する」体制への移行を行う必要があると考えます。こういった意味で、平成元年のふるさと創生一億円事業は、地方の知恵や能力をはかる試金石であったと思います。ふるさと創生事業の内容と成果はどのようなものであったのか、所見を伺います。
 以上、地方分権に関してさまざまな観点から質問申し上げます。明快な答弁をお願いするところであります。
 続きまして、紀南地方における医療・福祉ゾーンの確立についてであります。
 ただいま玉置議員から、医療・福祉に関する総論について詳しく発言がありました。私の方は少し各論になろうかと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 今日、我が国においては、これまで経験したことのない高齢化社会が到来しております。国におきましては、将来の国民福祉の充実に向かって介護保険の導入を考えており、最重点の国民的課題として高齢化対策が進められておるところであります。また、地方分権にもありますように、国、県、市町村の行政のあり方について論議されているところでもあり、また地方においては、一自治体のみの行政ではなく広域行政の必要性が叫ばれておるところでもあります。
 そのような観点から、紀南地域における医療・福祉について県当局の所見をお伺いいたします。
 これまでの行政は、国、県、市町村と縦に流れているため、縦割り行政と言われるゆえんであります。この際、地方分権の一環として、県主導による横割り行政の推進を強く求めるものであります。
 そのような中、前段でも申し上げましたように、高齢化社会に向けての整備、すなわち高齢者にとって自由で快適な生活を送れる住みやすい地域づくりとして、平成元年、厚生省においてふるさと21健康長寿のまちづくり構想が打ち出され、新宮市が地域指定されたところであります。現在、県開発公社の造成による新宮市佐野・蜂伏地域には公的施設、民間施設が整備されております。その内容は、次のとおりであります。県立みくまの養護学校、県立なぎ看護学校、第三セクター方式による健康増進センターピーアップ・シングウ、医療法人による老人保健施設みさき、社会福祉法人による特別養護老人ホーム温泉ハウスくまの等が運営されております。また、地域医療の中核として、病院も当地への設置を考えておるようであります。
 そこで、お伺いいたします。
 これだけの施設が集約された地域は県下でもないようでありますが、さらに保健婦養成あるいは理学療養士等福祉大学的施設も考えられると思います。また、この点につきましては、当地域は三重、奈良、和歌山の三県による施設も考えられると思いますので、所見をお伺いいたします。
 その目的とするところは、さらなる施設の整備により広域的医療・福祉ゾーンとして確立されれば、二十一世紀に向けて特色ある地域づくりを目指せるものと思いますが、いかがでしょうか。
 先日、NHKテレビの番組で介護移住が取り上げられておりましたが、医療・福祉と移住における住宅地の販売についてお伺いいたします。
 その放映内容でありますが、淡路島五色町のことであります。町長みずから移住のための町造成地を販売しており、その販売手段として老後の保障を購入者に植えつけていたと思います。当蜂伏団地周辺が医療・福祉ゾーンとして確立されれば全国的にも注目されると思いますが、県及び開発公社の今後の販売対策と残地の概要及び利用目的について所見を伺うものであります。
 当然ながら、介護移住は年金生活者がその主な対象となりますが、五色町の福祉対策の一環としての介護移住について、その所見をあわせてお伺いいたします。
 続きまして、新宮港第二期整備事業についてお伺いいたします。
 新宮港につきましては、一昨年の議会で質問いたしました。当時は巴川製紙新宮工場の閉鎖が問題となり、二期工事にも少なからず影響があったと思われますが、私の質問に対して山根土木部長から次のような答弁がありました。巴川製紙が閉鎖になっても新宮港二期工事は何ら変更がない、むしろ新たな地域振興を考える上で港の活用を積極的に推し進めたい旨の発言であったと思います。それから約二年、国の第九次港湾整備五カ年計画にも組み入れ、早期に事業着手を図るべく地元市町と話を進められていると伺っておりますが、二期工事のタイムスケジュールについて答弁を求めるものであります。
 ご承知のとおり、新宮港の管理者は和歌山県であります。港は県がつくるものであるならば、なぜこのように遅延してしまったのか。新宮市あるいは那智勝浦町双方の納得のいく話し合いができていなかったことも一つの原因ではあったと思いますが、県がその問題とするところをもっと的確に把握して対処すべきではなかったのか。その点についてお伺いしたいと思います。それと申しますのは、この事業着手ができないのではないかと、地元において不安を感じている人もおられますので、心強い答弁をお願いするものであります。
 古い話になりますが、昭和四十四年八月二十七日、那智勝浦町宇久井から新宮港第一期事業着手に際して数項目の要望提示があり、その実現を条件に承認するとなっております。その主なものに宇久井港の整備と同港域の開発が示されているわけですが、その点についてどのように対処されたのか。港湾整備はもとより、地域振興の面からお伺いいたします。
 新宮港は、今さら申すまでもなく、紀南地域の産業振興の一つの起爆剤として期待している一方、否定的な人々も少なくありません。それと申しますのは、港を活用するためのバックボーンが小さ過ぎるからであります。私も、今のままで推移するならば余り期待できないと思いますが、しかし我々としては、あらゆる可能性を求めて突き進むしか道がないと考えております。
 先日、太平洋新国土軸建設促進議員連盟において、多くの先輩・同僚議員とともに紀淡海峡を渡り、神戸まで最新の高速船ジェットフォイルに同乗いたしました。時速八十四キロ、快適な船旅で、海の交通に対して再認識したところであります。今後ますます技術が進歩し、テクノスーパーライナーのような大型高速船が島国である日本の周辺あるいはアジア地域を濶歩する時代が到来すれば将来においてこの新宮港の位置が重要視されるものと思いますが、当局の所見をお伺いいたします。
 続いて港と道路についてでありますが、新宮港の活用に真剣に取り組むならば、港と直結した幹線道路が必要となってきます。高速道路紀南延伸もさることながら、五條・新宮間の高規格道路がその第一義と考えます。将来は太平洋新国土軸に直結し、紀伊半島縦貫道路としてはもとより、舞鶴からの日本海太平洋道路として注目を浴びることになろうかと思います。この道路の最近の状況をお聞かせ願います。
 次に湾と地域振興についてでありますが、現在はもとより将来においても日本全国四十七都道府県中で海のない県は、群馬、栃木、埼玉、長野、山梨、岐阜、滋賀、そして奈良県であります。この奈良県に対して、地域振興を考える上で海の活用を、行政はもとより民間団体にも広く呼びかけることが必要かと思います。奈良県とは国道百六十八号、百六十九号でつながっており、海の振興を考える上で、また宇久井側の振興策の一環として、奈良県海の家などの誘致も考えられると思います。
 さて、今、那智勝浦町宇久井の振興策について一部触れましたが、最後に私は、新宮市と那智勝浦町にまたがる港湾整備と地域振興の基本について申し上げたいと思います。
 これまでの一般質問は、ほとんど地域振興で終始いたしました。この地域振興を考える上で一番問題となるのは、縦割り行政であります。すべての公共事業は国、県、市町村とつながっており、この港にしても、国、県、新宮市が主体となっています。しかし、航空写真で上から見ますと、この湾は新宮と那智勝浦が共有しているわけです。そうならば、なぜ同一認識でこの事業を進めなかったのか。今、縦でなく、横のつながりが叫ばれております。港湾整備における県の役割について、広域行政の観点から所見をお伺いします。
 以上、第一問を終わります。
○議長(町田 亘君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 上野議員にお答えをいたします。
 地方分権についての所見ということでございますが、和歌山に住む私たち自身がみずからの創意と責任のもとに、住んでよかったと言える和歌山をつくるためには、必要以上の国の関与をなくし、国から地方への権限移譲と事務量に見合う財源を確保することが不可欠であると思っております。
 特に財源の確保につきましては、地方分権が名ばかりの分権とならないように、地方分権推進委員会の勧告を控えた今こそ本音の議論を大いに行うことが必要であると思っております。また、真の意味での地方分権を実現するためには、広範な世論の高まりが必要であります。その意味で、先日、地方分権推進のためのシンポジウムを開催いたしましたところ、多数の県民の皆様にご参加をいただき、熱気あふれる議論を交わしていただくことができました。今回のシンポジウムは、県民の皆さんと行政が一体となって地方分権の実現に取り組む契機となったものと思っております。
 なお、本県における体制づくりに関しましては、地方分権に対応した行財政運営を進めるための新しい体制づくりを目指し、行政改革を進めているところでございます。
 次に、地方分権により地方での不祥事がふえるなどという分権慎重論も一部にあることは、承知をいたしております。こういった考え方は、議員ご指摘のとおり、極めて短絡的な発想であろうと思っております。むしろ、地方分権の推進に伴い、住民に身近なところへ権限が移譲されることになりますので、国に権限が集中している現状と比較して、住民への情報提供、参加機会の拡大等の方策をとることにより、行政執行に対する住民のチェック機能も強化することができるというふうに考えております。
 他の問題は、関係部長から答弁いたします。
○議長(町田 亘君) 総務部長中山次郎君。
 〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 地方分権に関する四点についてお答えを申し上げます。
 まず、分権に見合う税についてでございますが、現行の地方税制につきましては、地方の歳出規模に比べて地方税収の割合が小さいことや、都道府県税が景気の影響を受けやすい不安定な構造になっているなどの問題があると指摘されてございます。
 地方分権の推進が時代の要請となっている今日、地方公共団体がその責任を適切に果たしていくためには裏づけとなる財源の確保が重要でございまして、この財源の充実確保を図るため、安定的で伸長性のある税体系の確立等について引き続き国に対して要望してまいりたいと考えてございます。
 次に分権における県と市町村の関係についてでございますが、県勢の発展には、県と市町村が適切なパートナーシップに基づいて相互協力関係の一層の強化を図ることが必要でございます。そのためには、各市町村がそれぞれの歴史、文化、自然条件などの個性を生かした、多様で活力ある町づくりを進めることができますように、市町村の自主性、自立性を確保しなければならないと考えてございます。
 今後とも、住民に身近な行政は住民に身近なところで処理することを基本に、国から地方への分権の動きに並行して、県から市町村への権限移譲等について、市町村のご意見をお伺いしながら積極的に進めてまいりたいと考えてございます。
 次に分権を進める上での広域行政についてでございますが、地方分権という時代の大きな流れの中、将来、国から地方に権限移譲されることが予想されまして、住民に最も身近な地方公共団体である市町村が今後重要な役割を担うものと考えてございます。このような状況におきまして、多岐にわたる行政施策を効率的に実施していくためには、市町村の区域を超えた広域行政の推進ということが今後ますます重要になってくるものと考えてございます。
 市町村が広域行政を推進する手段といたしまして、これまで一部事務組合や協議会等の制度の活用が図られてきたところでございますが、平成六年の地方自治法の改正によって国等からの権限移譲に対応できる広域連合制度が創設されるなど、広域行政推進体制も多様化しているところでございます。
 今後は、それぞれの市町村の地域の状況を勘案しながら、地方分権推進の担い手としてふさわしい、より効果的な広域行政が展開されますよう、県としても適切な指導を行ってまいります。
 次に、分権の試金石としてのふるさと創生事業についてでございますが、議員ご承知のとおり、昭和六十三年度から平成元年度にかけての、地方が知恵を出して国が支援するという新しい発想に基づくみずから考えみずから行う地域づくり事業、いわゆるふるさと創生一億円事業を一つの契機といたしまして、本県の各市町村においても、温泉開発等、地域の特性を生かした個性豊かな地域づくりの取り組みが行われてきたところでございます。
 このふるさと創生一億円事業は、全国の市町村に対して一律に一億円が交付され、市町村は住民の意見等を取り入れて地域の特性を生かした各種事業を実施するということでありまして、本県の各市町村においても、それぞれの地域の特性を生かした事業に活用されているところでございます。県といたしましても、これら市町村の自主的、主体的な町づくりへの取り組みに対し、今後も積極的に支援してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 福祉保健部長小西 悟君。
 〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 上野議員ご質問の、紀南地域における医療・福祉ゾーンの確立についての二点につき、お答えいたします。
 紀南地域における人材育成機関として、昨年四月、新宮市になぎ看護学校を開設してございます。また新宮市は、全国に先駆けて厚生省のふるさと21健康長寿のまちづくり構想に基づいてその指定を受け、平成元年度に基本構想を策定し、蜂伏地区を福祉エリアゾーンと位置づけて計画の推進が図られたところでございます。
 議員のお話のとおり、当該地区には各種福祉施設等の集積が進み、福祉エリアゾーンとして整備が進んできているところでございます。県といたしましても、今後も新宮市が進める保健・福祉・医療の計画に対し、十分協議してまいりたいと存じます。
 次に介護移住についての所見でございますが、五色町のケースはその地域に合った特色ある施策であると考えておりますが、こうした施策についても今後の参考とさせていただき、さらに個性豊かな魅力ある福祉の基盤づくりに向け、市町村と協議しながら推進してまいりたいと思います。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 上野議員のご質問にお答え申し上げます。
 新宮蜂伏団地は平成二年四月より分譲開始し、一般分譲区画数四百区画に対し七年度末までの分譲数は百八十区画で、残区画は二百二十区画でございます。また、公益施設用地には健康・医療及び福祉施設が建設され、徐々にではありますが、団地内も熟成しつつあります。
 議員ご指摘のように、当団地には健康・福祉施設が集約された形で立地してございますが、さらに背後地には熊野の山々、前面には太平洋が広がり、自然環境がすばらしい土地でもございます。
 残区画の販売促進につきましては、現在、土地需要が低迷している状況でございますので厳しいものがございますが、こうした当団地の特性をPRし、地元新宮や東牟婁地域だけではなく京阪神地域にも販売網を広げるとともに、ふるさとで暮らしたいと考えているUターン希望者や自然豊かなところで過ごしたいと考えている都市住民にもターゲットを当て、分譲促進に努めてまいりたいと考えてございます。
 当団地は、いまだ多くの未分譲地を抱えてございますが、今後、公的利用も含め、一日も早く成熟した団地として地域の発展に寄与できるよう、地元新宮市のご協力も得ながら、直接当団地の管理・販売に携わっている県土地開発公社ともども知恵を絞ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 土木部長長沢小太郎君。
 〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 上野議員の、新宮港第二期整備事業についてのご質問にお答えいたします。
 まず最初に進捗状況についてでございますが、新宮港は新宮市及び那智勝浦町にまたがっており、紀伊半島南部に立地する唯一の外貿港湾でありまして、この港を紀南振興の重要な拠点と位置づけております。
 そこで、昭和四十五年から昭和五十四年に整備した第一期計画に引き続き、地場産業振興のための基盤整備、外貿貨物需要に対応した大水深岸壁の整備、さらに震災等大規模災害時における緊急物資等の海上輸送のための耐震岸壁や避難緑地の整備を盛り込んだ第二期計画を定め、事業化の努力を行っているところであります。しかしながら、事業を進めるに際しては地元自治体や漁業関係者の理解と協力が不可欠でありますけれども、残念ながら今日まで十分なコンセンサスが得られていないところであります。
 県といたしましては、地元情勢も徐々に好転していると考えておりまして、引き続き関係各位のご理解とご支援を得て鋭意調整を進め、早急に事業化を図ってまいりたいと考えております。
 次に、関連する道路状況についてのご質問でございます。
 議員ご質問の地域高規格道路についてでございますが、この道路は全国的な高規格幹線道路と一体となって幹線道路ネットワークを形成するものでありまして、自動車専用道路またはそれと同等の機能を有し、沿道交通状況に応じて時速六十キロメートルから八十キロメートル以上の速度サービスを提供できる、質の高い道路であります。
 地域高規格道路の五條新宮道路は、紀伊半島縦貫道路として太平洋沿岸部と半島の内陸部を連結強化する目的で、新宮市から奈良県五條市までの間が整備を進める路線として計画路線に指定されております。このうち、新宮市内約十キロメートルの区間が調査区間に指定されており、今後必要な調査を実施し、整備区間の指定を経て事業化の運びになります。奈良県側については、県境部の十津川道路のうち八キロメートルが事業化されており、また大塔村内の八キロメートルが調査区間に指定されております。
 今後、県といたしましても、奈良県と連携を図りながら必要な調査を進め、整備促進に努めてまいります。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 26番上野哲弘君。
 〔上野哲弘君、登壇〕
○上野哲弘君 どうも議席では発言しにくいので、登壇させていただきます。
 ただいま、地方分権につきまして、総論及び各論について答弁をいただきました。この分権論議は、私なりの理解を申し上げるならば、狭い意味での分権と広い意味での分権があると考えます。前者は、霞ケ関と県庁、市役所及び町村役場ということであります。後者は、根本的に国と地方自治の問題であると思います。この質問では、広い意味での分権について伺いたいと思います。
 地方分権推進法には、「国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動の事務規定(中略)若しくは全国的視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施」等に専念すべきであるとうたわれております。これらの条文と五年間の時限立法で、どれほどの分権が実現されるのか。すなわち、広い意味での地方自治が語れるのか。地方分権推進委員会の中間報告で感じたことを伺います。
 次に、税についてであります。地方自治あるいは地方分権を論ずる場合、地方が自由に使える税の確保が最大の論点になるものと思いますが、答弁では、安定的で伸長性のあるものであると言われております。具体的にどのようなことが考えられるのか、あわせてお願いします。
 さて、税についての質問の中で、どうも私の考えていることが当局の方となかなか接点が見出せないようなこともあり、これを再質問する予定にしておったのですが、まとまりませんので私なりの考えを申し上げたいと思います。国がやるべき仕事と地方がやらなければならない仕事の区別、またアメリカ合衆国における州政府のこと、日本における幕藩体制等、地方自治の本質にかかわることが頭の中をよぎって、どうもまとまらなくなったわけであります。そこで、この分権論議をする場合の基本的なことで申し上げたいと思います。
 中央集権の中での分権論議にはおのずから限度があり、それによって地方分権が骨抜きになったり申しわけ程度の権限移譲にとどまるのではないか、我々は地方の者としてもっと大きく論ずべきであるとの認識に至り、以下申し上げたいと思います。
 このような話があります。江戸幕府終えん間近、十五代将軍徳川慶喜は、討幕の機運が盛り上がってきた慶応三年十月、大政を奉還し、江戸幕府を終わらせました。しかし慶喜は、引退したのではなく、あくまでも徳川家を中心とした国家体制をつくろうとしました。これに反発した西郷、岩倉が策をもって討幕へと進めたのであります。当時、大名諸侯はそれでもよいと考えておりましたが、西郷らは強引に討幕に走り、その結果、明治維新となったのであります。
 この話を地方分権に置きかえますと、大名諸侯と同じく申しわけ程度の権限移譲による緩やかな改革になるか、それとも明治維新のような税を含んだ大胆な改革に持っていくか──歴史が証明するところであります。また、「歴史は繰り返す」とも言います。地方自治から中央集権へ、今度は中央集権から地方自治へ移行することにより、新たな社会の構築が始まろうとしております。
 現在の政治状況を考えますと、案外早い時期に税を含んだ地方分権が可能になり、二十一世紀の日本社会は、幕藩体制のよさも取り入れた地方自治になるかもわかりません。行政の間ではこの論議にある程度の制約があろうかと思いますが、地方の住民においては広い意味での地方分権を論じてもいいのではないか、そのような思いで質問に至ったところであります。今回は私の意見として申し上げ、要望といたします。
 次に介護保険についてでありますが、この問題の基本は、移住を考えた場合、福祉の問題について市町村がいろんな面で面倒を見なければだめだという意味合いで、今の国の体制はそういう中での介護となっているわけですけれども、もう少しこれを広く取り上げて国民全般の問題とした場合、先ほど申し上げたように、医療を充実すれば市町村長の財政に負担がかかるという論議がありますが、しかしよく考えてみると、地域医療を充実することが国民全体にとっていいのであれば、もっと国はこれを支援すべきではないか。
 先ほど申しました医療・福祉ゾーンの確立について、これからどんどん全国的な範囲の中で移住を求めてくる可能性が出てくるわけです。しかし、そういう負担を地元市町村でしなければならないのであれば、余り歓迎されないものとなります。しかしながら、どこかでこれを面倒見なければだめだという考えからすると、今、地方分権のこと、税のことを申し上げましたが、もっと国家的な中でそういうものを推進する、地方の市町村が負担しないような社会をつくるべきではないか。そういう面から申し上げました。
 また、明治維新の話もしました。税については、今の中央集権がよいという判断じゃなしに、今までの歴史の中でも──ここは和歌山藩です。お互いに年貢を取ってこの地域を治めたわけです。そういう面から考えると、これからの社会ということも踏まえ、今後いろんな発想を出して考えていくべきではないかと、そのような思いをいたしました。これは一つの私の意見であります。これを要望としまして、再質問を終わります。
○議長(町田 亘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
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○議長(町田 亘君) この際、お諮りいたします。議案第百三十九号平成八年度和歌山県一般会計補正予算については、衆議院議員選挙執行の必要上、急を要するため、都合により委員会付託等を省略し、本日直ちに採決いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(町田 亘君) ご異議なしと認めます。よって、議案第百三十九号は委員会の付託等を省略し、直ちに採決することに決定いたしました。
 議案第百三十九号を採決いたします。
 本案を原案のとおり決することに賛成の諸君は、ご起立願います。
 〔賛成者起立〕
○議長(町田 亘君) 起立全員であります。よって、本案は原案のとおり可決されました。
○議長(町田 亘君) なお、この際、お諮りいたします。ただいま議案第百三十九号の補正予算が議案第百八号の補正予算に先立って議決されましたので、その結果、議案第百三十九号の議案中、補正前の金額等、数字を整理する必要が生じておりますが、これについては、会議規則第四十二条の規定により、その整理を議長に委任されたいと思います。これにご異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(町田 亘君) ご異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
 なお、これに基づき整理いたしました結果については後刻報告いたしたいと存じますので、ご了承を願います。
○議長(町田 亘君) この際、暫時いたします。
 午前十一時二十八分休憩
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