平成8年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(村岡キミ子議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○副議長(下川俊樹君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 36番村岡キミ子君。
 〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 質問をいたします前に、初めに、カイワレダイコンがO157の食材として疑われていると言われてまいりましたけれども、きょう、厚生省が最終的な報告として報道をしました。私もそれを読みましたけれども、何ともすっきりしない、複雑な思いです。これを見てみますと、カイワレダイコンの生産過程、そして業者から出荷され運ばれていくトラックの中の温度が異常に高くなる、ましてやO157というのは菌が増殖しやすいと、こういうような状況のもとで、ここに原因があるのではないかという一歩踏み込んだ報告をしたわけですけれども、しかし果たしてこれで終息していいのかなと、複雑な思いをいたしております。そういう中で質問をするわけですけれども、既に原稿を書き上げておりましたのでそのままになると思いますが、ご了承いただきたいと思います。
 それでは、質問を申し上げてまいります。
 まず、病原性大腸菌O157対策について申し上げます。以下、「病原性大腸菌O157」を略して「O157」と読みかえさせていただきたいと思います。
 この夏、秋田、山梨の両県を除く四十五都道府県で猛威を振るったO157による集団食中毒は、新たな発病者も出なくなりました。沈静化に向かってはおります。しかし、今もって原因、感染路が究明されていない状況では、私たちの不安は今後とも続くことになります。
 これまでの患者数は、爆発的に、しかも大規模的に発生した堺の六十二の小学校児童六千五百人を含め、全国で九千五百人を超え、十一人のとうとい命が奪われました。WHO・世界保健機関は、けた違いの記録的な患者数と驚き、世界各国に注意を促したと伝えられております。
 本県におきましては、六十五名の患者が発生をいたしました。私は、集団発生した二カ所の老人福祉施設に入居されている皆さん方に感染が拡大することを大変心配いたしましたが、保健所や関係施設等の積極的な対応でとどまりました。安心しているところでございます。
 堺市などで発症しているO157の発生源は、学校給食ではないだろうかと言われるものの、まだまだ究明に至っていません。新聞の報道そのものでありますけれども。しかし、堺市はその可能性を認めてまいりました。堺市は学校給食検討委員会を発足させて、十月末予定の給食再開に向けた安全対策の具体的方向をまとめ、その実施に進もうといたしております。
 ところで、ここでは行政側の対応が深くかかわってまいります。厚生省あるいは大阪府、堺市の対応のおくれが随分指摘されてまいりました。厚生省にあっては、O157の発症が今に始まった事件でないことは十分承知していました。一九八四年に発生し、その後、一九九〇年から九四年までの間に八件、患者数九百人にも及ぶ集団中毒症が発生してまいりました。当時、この治療・研究にかかわった多くの研究者や臨床医たちが報告書を提出し、その中で厚生省に対し、特別な対策が必要であることを厳しく再三指摘をしてきた。にもかかわらず全く何の対策もしてこなかったのが、厚生省です。その責任は重大だと思います。
 去る八月十三日、堺市で患者の診療に当たった耳原病院の関係者たちは、厚生省に緊急対策を要請するため赴きました。そこでのやりとりの中で耳原病院の医師たちは、必要な情報が現場に届くよう厚生省は府・市を指導すべきではないかと申し上げたところ、厚生省のその場にいた方から、なぜ情報が必要なのですか、こういう答えが返ってきたそうです。そこに参加していた人たちは唖然としたそうです。この状態を見る限り、さきの薬害エイズのときの厚生省の態度と全く同じであります。そして、阪神・淡路大震災の教訓も全く生かされていない厚生省の態度に、私は新たな怒りを覚えるものです。
 大阪府の場合を見てみますと、堺市が政令指定都市であるということからかもわかりませんが、要請をひたすら待つ姿勢にあったということです。また堺市には、現場任せという状態が行政側の方にありました。しかし、六千人という集団発生は、一つの町にとっては非常事態のはずであります。こういう実態についても、多くのマスコミが報道をしておりました。それに比べ、現場で働く職員労働組合や教職員組合、あるいは調理師などの労働組合は、いち早くこの問題をとらえてそれぞれ対策本部をつくりました。保健所においても、地域を回って住民の不安にこたえる相談活動、予防活動に積極的な取り組みをし、住民の方々からは随分喜ばれたと、私の友人も言っておりました。皆さん、この違いは何なのでしょうか。このように行政のおくれた対応があの市民のパニックを長引かせ、さらに感染拡大につながったのではないでしょうか、と私は思うのです。
 さて、本県の対応を見てみますと、県は、患者が発生した七月十九日の四日後にはO157対策本部あるいは支部を設置いたしました。そして、全庁的な取り組み、住民の不安にこたえるための全戸配布ビラは随分役立ちました。二十四時間体制による相談窓口が設置され、多くの方が相談をしてまいりました。関係機関との連絡体制や専門家等による対策委員会の設置、他業種関係の講習会や県民の要望にこたえての講師派遣の紹介など、大変効果的な体制づくりに対して私は大いに評価をしたいと思います。そして、衛生公害研究センターや各保健所の方々の休日を返上し残業をも押してのご苦労に、この席から感謝を申し上げたいと思います。本当にご苦労さまでございます。
 さて、O157集団発生の原因究明がおくれる中、厚生大臣みずからが疑惑の食材として公表したカイワレダイコンを初めとして、レタスやキュウリなどの野菜農家、肉・魚などの生鮮食料品、飲食店は、売り上げに大打撃を受けました。経営基盤が危険な状況に追い込まれる中小業者まで出てまいりました。私ども日本共産党県議団は、この方々に対する何らかの措置をと融資制度を申し入れてまいりましたし、また直接これにかかわっていらっしゃる和歌山商工団体も知事に対して緊急融資制度を要望してまいりました。その結果、このことを十分理解していただき、その制度が予算化されたことについても私は評価をしたいと思います。
 副知事、あなたは今日までO157対策本部長としてその任務を遂行されてまいったわけです。そこで、このO157について、これまでの状況の中で、県民と行政の立場に立ってたくさんのことを学び考えられたことだと思いますが、教訓としてはどのようなことがおありでしょうか、ぜひお聞かせ願いたいと思います。
 さきにも申し上げましたこのO157による集団中毒症の原因は、引き続き追求されなければなりません。行政として、衛生公害研究センターや国立研究所あるいは医大など、専門機関等との連携を一層強めながら全力で取り組んでくださることを要望するものでありますが、生活文化部長、いかがなものでしょうか。
 次に、教育長にお尋ねを申し上げます。
 今、学校給食は大丈夫だろうかと、給食に対する不安は、子供たちや保護者あるいは教職員、特に給食づくりに携わっている栄養士さんや調理師さんには強いものがございます。学校給食が原因ではないかという、その可能性を認めた堺市の状況を踏まえたのでしょう。文部省は急遽、学校給食施設・設備の環境衛生整備指針を通知しております。その中には、早急に整備の必要な事項と今後整備が望ましいとする事項を明記しているところです。本県はどのような対応になるのでしょうか。
 今議会に専決処分予算として提案されているO157対策費に一億五千万円が使われるだろうと想像するわけですけれども、学校給食に係る額、その具体的内容をわかる範囲においてお聞かせ願いたいと思います。
 学校給食には、栄養士はもちろんのこと、調理員なくしては成り立ちません。調理員の配置基準は三十六年前のままであります。現状では、献立の多彩化やアトピー性皮膚炎対策も求められるようになりました。とりわけ養護学校には、知的障害者や肢体障害者、またこれらの重複者、重度の障害を持つ方々が通学をして一生懸命頑張っておられます。自分でスプーンやはしの持てない人、そしゃくできない人、座る・立つ・歩くことも困難な児童生徒もおり、とても細やかな料理の工夫と努力が必要です。ここで働く調理員さんたちは、「私たちは一日わずか一回ではありますが、三分の一お母さんとして、家の食事をつくる以上に手をかけ、安全でおいしい給食づくりに頑張っています」、こうおっしゃっています。子供の立場に立つ手づくりの、安全でおいしい給食の実施には十分な人手が必要です。
 そこで、県立特殊教育諸学校九校の雇用形態を見てみますと、全調理員中六〇%が非常勤職員となっています。正規職員と同じ職場で同じ仕事をしながら賃金に、待遇に何で格差があるのか、給料の割には仕事がきつい、今の配置基準では現実に人手が足らない、これがみんなの切実な声です。
 文部省は、一九八五年、臨調行革の名のもとに「学校給食業務の運営合理化について」とした通知を行い、市町村教育委員会に対しても、県がこれを指導することを求めています。その学校給食は教育の一環と位置づけているにもかかわらず、調理員のパート化や共同調理場方式あるいは民間委託等への転換で人件費削減を進めようという、まさに容認できない合理化です。
 今、社会問題となっているO157対策の徹底が課せられているときです。今こそ調理員の職務の重要性にかんがみ、臨時職員化も改め、計画的に正規職員に切りかえていく方針をと願うものでありますが、いかがお考えでしょうか。
 学校給食には栄養職員の配置を基本に考えなければならないと私は思うのです。しかし文部省の配置基準は、一九九五年で六百名の児童に対して一人の配置と指示をしております。しかも、聞くところによりますと、市町村単位ではなくて県全体の児童数に対して配置するという、こういう広域的なものであります。子供の成長と食生活を豊かにするためにも、専門職の配置は今どうしても必要だと思います。
 栄養士本来の活動は、栄養改善法第九条の二に、このように記してあります。「継続的に一回百食以上又は一日二百五十食以上の食事を供給する施設の設置者は、栄養の指導を行なわせるため、当該集団給食施設に栄養士を置くように努めなければならない」と規定しています。こういうことから考えても、せめて自校方式の学校に配置を求めたいと思います。教育長の所見を伺いたい。
 次に、O157に絡んでの保健所の充実強化についてお尋ねを申し上げます。
 言うまでもなく保健所の最大の任務は、地域の健康を守り、さらに増進させることにあります。保健所は、地域住民に対して生まれたときから一生涯にわたりサービスを提供すること、しかも無料を原則にと義務づけられています。ところが来年四月一日から、地域保健法施行に伴い、人口十万人に一カ所の保健所だったのが三十万人に一カ所と、広域保健所になろうとしています。住民から見れば遠い存在となろうとしているのです。今、このO157問題に絡んで、保健所の方々が一生懸命努力をされる中で、保健所に対する地域住民の信頼と期待は確実に高まっていると思うんです。私はそう確信するものです。
 なお、今後保健所において、特に検査体制の問題でありますが、日常的に検査の知識や技術を向上させるため、衛生公害研究センターあるいは大学等とお互いに交流しながら、緊急時には即応できる人的体制も含めて確立しておくことが必要ではないでしょうか。
 また、住民みずからも正しい知識を学ぶ機会として、保健所による衛生教育を事業として計画できないものかどうか、伺いたいと思います。O157発生当時、患者に対していじめにまで発展したことやパニックの状態を思うとき、ぜひこのことは実現していただきたいと願うものですが、いかがでしょう。
 とりわけ、今、古座保健所が問題になってまいりました。古座保健所を二次医療圏の中に入れるならば新宮との統合が言われるわけですけれども、しかし今のところ、私たちは、住民のこの願いから見れば統廃合すべきではないと思っています。保健所の統廃合は住民の暮らしを後退させることになりはしないかと懸念いたします。
 学校給食施設への立入検査は、保健所の職員衛生法に基づき、保健所が年十二回行うことになっています。これらについてきちんと行われているのでしょうか。また、食肉処理場におけるO157の検査も行われていないと聞いております。安心して安全なおいしい肉が食べられるための保障の一つとしても必要となるでしょう。こうした問題などを考えてみても、県民の命と安全を守る保健所体制の一層の拡充強化が必要なときです。統廃合はやめるべきです。所見をお聞かせ願いたい。
 次に衛生公害研究センターの充実についてでありますが、衛生公害研究センターは、このO157のときに実に大きな役割を果たしました。検便を初めとしてさまざまな食品の検査を行い、原因究明の一助をなしたわけです。しかし、私もセンターの施設等について見学をしてまいりましたが、とても老朽化がひどくて、至るところが狭いと言えます。これでは研究センターとして十分な力を発揮できないとも思いました。研究センターという名にふさわしい施設整備をするために今後どのようなセンターを目指すのか、所見をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、青少年健全育成条例の一部改正案に関連して質問を申し上げます。条例に則してお伺いするとともに、青少年健全育成の立場から問題提起をさせていただき、質問とするものです。
 ことし六月の県の調査では、テレホンクラブはドライブスルー型のものを含めて県下に十店、ツーショットダイヤルと言われる遊びに必要なプリペイドカードの自動販売機は五十一店置かれています。カードの自動販売機は一年半の間に数倍にふえていることになります。こうしたゆがんだ性関係を助長する営業に対しては、地域住民から批判の声が上がっています。カードの自動販売機に対して業者や土地の提供者へ要請の結果、自主的に撤去した業者がいることも聞いております。また、テレホンクラブ宣伝など、いわゆるポルノチラシが各家庭に投げ込まれることへの抗議行動として、女性のグループの皆さんが「チラシお断り」のシールを作成して張り出す活動に乗り出すなど、女性の人権侵害、青年の性をゆがめる営業、情報に対して批判の世論と行動が広がっています。こうした性をゆがめる情報は、性を含めた人間社会の営みを非人間的に商品化し、人間べっ視で置きかえるものです。そして、青少年の心を深くむしばみ、社会全体の荒廃にもつながることが懸念されます。
 退廃文化の克服については、法的・行政的手段の強化ではなく、民主的批判と広範な国民各層の良識に基づく世論と運動によって進められることが大切です。同時に、人間の尊厳を守るとともに、健全で民主的な文化・芸術の多面的な発展が必要だと考えるものです。
 また、少女たちがなぜ売春に近づくことになるのか、この点を考える必要があります。自分の存在意義を確認できる場を欲していると言えるでしょう。学校や家庭で人間として大切にされているという実感がない、生きがいを持つことが困難にされている環境を直視しなければなりません。長引く不況のもとでの生活苦、長時間・過密労働などによる家族の結びつきの弱さ、差別・選別の教育など、解決すべき課題は山積しています。
 テレホンクラブの規制については、条例制定に踏み出す自治体がふえてまいりました。出店をやめる業者も出るなど、一定の効果を上げていると聞き及んでいます。しかし、業者が新たな方法を編み出すことも考えられますし、行政的な規制では青少年の心の根本問題に迫ることはできません。
 性とは何か。単なる行為ではなく、心の問題、生き方の問題、人間的な自立の問題としてとらえることが必要ではないかと考えます。青少年が性を大切にして豊かな人間として成長していくため、性的な自己決定能力を身につけていくように援助していくことが大人の責任ではないかと私は思います。行政的な規制を行う際には、言論、表現、出版、営業の自由を不当に侵すことがないかについても十分留意する必要があると思うのです。
 テレホンクラブの営業に一定の規制を行うことについては基本的に賛成するものですが、幾つかの点でお尋ねしていきたいと思います。
 第二十六条「いん行又はわいせつ行為の禁止」の項に関連してお尋ねいたします。
 第二十六条自体は従前からある規定ですが、今回の改正では罰則が強化されています。条文は、次のように述べています。「何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつ行為をしてはならない」、「何人も、青少年に対し、前項の行為を見せ、又はその方法を教えてはならない」。それ自身当然の倫理であることは、だれもが認めるところであります。しかしながら、この条項に基づいて処罰の対象となる事実を立件しようとする際、問題は起こらないのか、これが疑問点であります。つまり、盛り場での補導中心の対応がなされることはないのかという問題です。処罰の対象になるのは大人でありますが、当然、少女からの事情聴取も行わなければ事実は明確にならないでしょう。売春をあっせんする人が介在しないケースも多いことでしょう。
 最近は、テレクラを利用しない、シール売春なるものも行われていると聞きます。少女の間では、自分の顔写真のシールをつくるのがはやっているそうです。少女はこのシールを若者が集まる場所に張ります。そして、自分のポケットベルの番号を書いて、電話が欲しいとアピールするそうです。シールや口コミを通じて、いわゆる援助交際の相手を見つけることができるというわけです。
 盛り場で少女に職務質問、補導した後、その少女の行動経歴や性的体験の有無、交際相手、どのような経緯で行為に至ったのかなど、根掘り葉掘り質問することになりはしないのか。性はすぐれて個人的な問題であることを考えるとき、こうした事情聴取によって少女の心を傷つけ、自尊心を損なうおそれはないのかどうか、これが危惧されるところです。補導した際、成人に対するよりも過度にプライバシーに干渉することになりはしないか、青年に期待される自立性の育成に障害が生まれないかという問題があるのではないでしょうか。
 二十六条の運用は、従来どのように行われてきたのか。そして、懲罰強化の改定案の考え方の中で運用に変化があるのかどうか、お答え願います。
 次に、第十三条の「有害指定等」について質問を申し上げます。
 指定については、第三十条で県児童福祉審議会への諮問が定められております。「緊急を要する場合は、この限りでない」とされています。今回の改定では、緊急を要するとされる内容については第十三条の第五項で定められ、条文に内容が伴ったとされていますが、ここでも出版に対する過度の警察の介入が懸念をされます。わざわざ指定の対象となる「卑わいな姿態」などとされる数量まで定められています。その数量の根拠はどこにあるのでしょうか。従来の月一回の検討以上に緊急を要する場合とはどういう場合か、だれが判断することになるのでしょうか、お示し願います。
 最後に、先ほど、青年の性的な自己決定能力の育成は大人の責任ではないかと申し上げたことに関連して、教育委員会の考え方についても質問を申し上げます。
 教育委員会においては、「学校における性教育の手引」がことし三月に改定をされたところです。各学校へ送付をされて活用されているとのことであります。報告書がまとめられていますが、報告書が上がっている学校に限らず、各学校で積極的な活用がなされているのでしょうか、お示しください。
 また、性教育を学校内だけのものにせず、父母、地域社会に問題提起を行うことも大切と考えるものです。教育委員会の取り組みの現状と今後の性教育のあり方についての教育長のご所見をお伺いするものです。
 以上で、第一回を終わります。
○副議長(下川俊樹君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 副知事山下 茂君。
 〔山下 茂君、登壇〕
○副知事(山下 茂君) 村岡議員にお答えを申し上げます。
 病原性大腸菌O157の関係でございます。
 このたびのO157の本県での発症につきましては、七月十九日に初めての患者が発生して以来、現在に至るまで累計で六十五名を確認したわけでございますが、現在は一名の軽症の方がなお治療中でありますけれども、それ以外の方々は既に完治されております。
 県では、最初に発生を見た直後に対策本部を設置し、総合的な対策の実施に当たってまいってきたところでございまして、今日までおよそ二カ月余りが経過しておりますが、この間に県民の皆様から寄せられた相談件数はおよそ三千七百件、検便の件数が約一万六千件を数えました。こうしたことから見ましても、県民の方々の今回の食中毒事件に対する関心の高さを痛感したところでございます。
 病原性大腸菌O157は感染症としての性質を持つことから、従来の、いわば一般的な食中毒の範疇を超えるものであり、新しい知識と取り組み体制が必要となったわけでございます。
 このたびの経験を通じまして、初動体制を確立すること、県民の皆さんへ的確な情報を提供すること、そして食中毒の予防三原則である「清潔、迅速、加熱または冷却」の正しい知識の普及啓発に努めること、並びに平時から保健所、衛生公害研究センター及び医療機関など各関係機関の間での連携の必要性を強く認識したところでございます。こうしたこことが今後にも教訓になるものと考えております。
 病原性大腸菌O157につきましては、県の組織を挙げて対策本部を設置し、市町村とも連携をしながら種々対策を講じてまいりましたが、本県では大発生までに至らなかったことは、対策の実施や県民の皆さんへの情報提供などに関係をされた数多くの機関の皆様方のご理解、ご苦労、そしてご努力があったればこそであると、改めて厚く御礼を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。
○副議長(下川俊樹君) 生活文化部長中村協二君。
 〔中村協二君、登壇〕
○生活文化部長(中村協二君) 村岡議員にお答えをいたします。
 病原性大腸菌O157対策の二点についてお答えをいたします。
 原因と感染ルートの究明につきましては、集団発生施設の保存食検査、調理場内のふき取り検査、飲料水検査、喫食調査並びに食材についての流通経路調査を実施したほか、患者分離菌株のDNAパターン分析結果等から総合的に検討いたしましたが、現時点においては発生原因並びに感染ルートを特定するに至っておりません。
 また、本日、国においても、堺市の学童集団下痢症について最終的には発生原因の特定ができなかった旨の発表がなされたところでありますが、今後とも国と連携して適切に対処してまいる所存でございます。
 衛生公害研究センターの充実についてでございますが、今回発生した病原性大腸菌O157につきましては、衛生公害研究センターにおいて、微生物部の職員が中心になり、検査機関としての役割を担って対応してまいったところございます。今後、このような事態が発生した場合には、保健所を含めた効果的な検査体制を講じて対処してまいりたいと考えております。
 次に、衛生公害研究センターの充実につきましては、平成七年十二月に西防波堤沖埋立地利用計画検討委員会より三工区に環境保健中核研究施設を設置すべきであるとの提言を受けたこと、また当センターの老朽化等の現状や今回のO157対策における当センターの役割、環境・保健・食品衛生等に対する県民ニーズの高まりも踏まえた中で、現在、庁内の関係各課において再編整備について検討しているところでございます。
 次に、和歌山県青少年健全育成条例の一部改正につきまして、二十六条と十三条の運用について答弁申し上げます。
 青少年を取り巻く社会環境は、アダルト雑誌、ビデオ、さらにパソコンソフト等のニューメディアの出現に伴い、悪化の一途をたどっております。もとより青少年育成は、青少年の自主性を尊重しつつ発達段階に応じ、家庭、学校及び地域社会が緊密に連携して育成していくことが大切であります。しかしながら、青少年の健全育成を阻害するテレホンクラブ等、性風俗に関連する営業の出現に伴い、保護者、住民の自主的な活動のみでは解決困難な現状にあるところから、今回、和歌山県青少年健全育成条例の一部改正案を上程し、審議をお願いしているところでございます。
 議員ご質問の性被害者である青少年に対しましては、青少年の心情等に配慮して慎重に対処すべきと考えております。
 また、淫行処罰規定の罰則引き上げについてでありますが、青少年を健全に育成する立場にある成人が女子中学生・高校生の性非行、性被害の相手方となっている現状から、その相手方となった成人の行為を厳しく罰する姿勢を示すことにより成人の自覚を促すとともに、抑止効果を期待したものでございます。
 次に図書等の有害指定についてでありますが、あらかじめ児童福祉審議会文化財部会の審議を得た卑わいな姿態の図書類については、総ページ数の五分の一以上、ビデオ等では時間が三分を超える等の一定の基準に該当する図書等について自動的に有害図書類とみなす方式を導入し、現行の個別指定方式を補完しようとするものでございます。
 青少年に対しましては、有害とみなす図書等の数量規定については、アダルト雑誌の目的が単なる性的感情を刺激する内容が主たるものでありますので、最近の他府県の傾向等も勘案して規定したものでございます。
 また、第三十条における緊急指定につきましては、児童福祉審議会文化財部会を開催するいとまのない、早急に指定その他の処分を行わなければ所期の効果を上げることができない短期間に行われる有害興行等に対して知事専決によって有害指定とし、事後、文化財部会に報告をすることとなってございます。
 以上でございます。
○副議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
 〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 病原性大腸菌O157対策に関連して、保健所の充実強化についてお答えをいたします。
 予防対策につきましては、食中毒の防止等の一次予防対策とともに、二次感染防止の観点から、患者接触者の状況把握、検便、消毒の指導等を実施してきたところでございます。今後も、医療機関、市町村等関係機関との連携を図りながら、患者発生時における迅速、的確な対応に努めてまいりたいと考えております。
 また、保健所における細菌検査等の体制整備につきましては、検査技師がより的確に業務を実施できるよう、県衛生公害研究センターとの役割分担を図りながら、より一層技術の向上を図ってまいります。
 住民への衛生教育につきましては、食中毒防止のための知識の普及や感染源、感染経路、看護方法についての正しい知識の提供を通じて感染の拡大防止を図るとともに、患者発生時、住民が誤解や偏見を持たないように健康教育の充実に努めてまいります。
 さらに、保健所の統廃合の問題についてでございますが、これからの県立保健所においては、より専門的な、より広域的な機能が求められ、そのための体制整備が全国的な課題となっています。本県におきましても、県内の関係団体や市町村の代表及び学識経験者等で構成する和歌山県地域保健対策会議を設置して、今後の保健所のあり方等についてご審議をいただいているところでございます。
 この問題につきましては、今後、地域保健法のもとで、今回問題となった伝染病等の対策も含め、保健所が機能を発揮できる体制をどのように組んでいくべきかという要請と、地域住民にどのように保健サービスの利便性を担保していくかという要請とを総合的に勘案しながら、慎重に検討を進めてまいりたいと考えてございます。
○副議長(下川俊樹君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 学校給食に係って、三点についてお答えいたします。
 このたびの病原性大腸菌O157に関連した対策予算のうち、学校給食等に係る経費として約六千万円をお願いしてございます。この内訳は、県立学校の給食保存用冷凍庫六十三台及び保存容器などの購入経費のほか、県内二十三カ所四十六品目の食材・食品検査、及び給食関係従事者など約千人に対する緊急の検便等に要する経費でございます。
 次に給食調理員についてでございますが、特殊教育諸学校においては、児童生徒の障害に応じた調理が必要であることや児童生徒数の推移等を勘案しながらその適正配置に努め、文部省基準の定数を確保いたしてございます。しかしながら、この基準は昭和三十五年に出されたものでございますので、児童生徒の実態等を踏まえながら、加配措置として臨時職員を任用してきたところでございます。
 四十年近く経過したこの基準については、その見直しも必要であるとの観点から、今後、全国教育長協議会や主管課長協議会等を通じて国に要望してまいりたいと考えてございます。
 次に学校栄養職員の配置状況でございますが、現在、平成五年度から実施されている国の第六次定数改善計画に従い、平成十年度の完成をめどに順次改善を進めているところでございます。現在の進捗状況は九八%となっております。今後とも、完成年度に向けて定数の確保に努力してまいる所存でございます。
 次に、性の問題と青少年育成についてであります。
 児童生徒を取り巻く社会環境や生活条件が著しく変化し、身体的な発育や性的成熟の時期が早まり、その性意識や性行動にも変化が見られ、さまざまな問題が引き起こされております。こうしたことから性教育の充実が急務となっており、本年三月に本県独自に「学校における性教育の手引」を作成し、県内の小・中・高等学校、特殊教育諸学校に配付いたしました。各学校においては、正しい知識と望ましい態度を習得させるため、教科、特別活動など、学校教育活動全体を通じてこの手引書を積極的に活用していると報告を受けております。
 また、今日の緊急課題であるエイズ問題につきましては、教職員の研修会はもちろんのこと、各学校における取り組み、研究地域を指定するなど、エイズ教育の推進に努めております。
 今後とも、児童生徒が生命の大切さを理解し、人間尊重、男女平等の精神に基づき、正しい異性観と性の価値観を確立するため、学校教育はもとより、家庭や地域社会との連携を深めていくよう、さらに指導してまいりたいと考えます。
 以上でございます。
○副議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 36番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 これは要望にかえていきたいと思います。
 学校給食でございますけれども、文部省が学校給食施設・設備の環境衛生整備指針というものを出しましたね。ここには、先ほども言いましたように、早急に整備が必要な事項と整備を図ることが望ましい事項ということで、区別して指針を出しているわけです。冷蔵庫や冷凍庫というものは対策予算で組まれたわけですけれども、しかし、この際ぜひ学校の給食設備、施設設備を総点検して、必要なことはきちっと計画的に改善をしていく必要があるんじゃないかと思います。そこで、給食設備、施設設備の点検、あわせて給食員の皆さんが現場でどういうことを望んでいるのかということをこの際くみ上げて、改善できるものは改善していくことが今この時期においては必要ではないかと思いますので、その点について今後十分検討をしていただけたらありがたいと思います。
 それと、今度、紀伊の和医大の基礎のところへ養護学校が建設されることになっているわけですけれども、この学校については、この整備指針を十分生かして建設設計をしていただきたいと思います。
 今でも、給食員の皆さんから、シャワー室や休憩室、それから冷暖房設備、こういった問題等についてのご要望が特に強いと私も聞きました。そういう点で、ぜひ今後の課題として検討を加えていっていただきたいとお願いをしておきます。
 それから、副知事より対策本部長としての教訓をお聞かせいただいたのですが、この教訓そのものを今後どう生かしていくのかということが大きな課題になると思うんです。よく「のど元過ぎれば」と言われますけれども、この教訓がそのまま棚上げされることは許されないと思います。
 それで、私は一つ提案をしておきたいと思います。大事に至らなかったという点では本当によかったと思うんですが、副知事がおっしゃったそのものを、岡山県はいち早く「岡山県腸管出血性大腸菌感染症対策要領」というものにまとめていらっしゃるんです。これを見ますと、初動体制から連絡体制といったものを網羅してつくり上げられ、そしてこの九月五日から発効するとなっております。そういうように、ぜひ各関係機関のものをもう一回総括した上で、そして不足している部分についてはプラスして要綱なりまとめをつくり上げていただきたいなと思います。
 それとあわせて、保健所などの方々には特別体制の必要なときが多いと思うんですけれども、日常活動にプラスをされた大事な問題ですので、ぜひその際には現場の声を十分くみ上げてつくっていただきたいと思います。
 それから、古座保健所の問題は今いろいろと検討が続いているわけですけれども、この問題から始まって、どこの保健所でも今度は相当努力をされたと思うんです。そういう点では、住民の皆さんたちは、今までの保健所という見方をしていないと思うんです。住民の皆さんは、この地域においてこの保健所が今後とも住民の健康を維持増進させる中核になる、そこに行けば、この人たちがいれば私たちの健康を何でも相談できると、今、そういうような保健所としての期待感が高くなっていると思うんです。そういう点から、保健所について厚生省が出してきているこのことについても、やらなあかんのや、縮小せなあかんのやということのみを先行させて考えるべきではないと思います。古座、あるいは海南もその次に上ってくるわけですが、慎重の上にも慎重をということで方向を決定していただきたいし、また廃止すべきではないという立場から考えていただきたいと強調しておきます。
 以上です。
○副議長(下川俊樹君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
○副議長(下川俊樹君) この際、本日の会議時間は、議事の都合により、あらかじめこれを延長いたします。
○副議長(下川俊樹君) この際、暫時休憩いたします。
 午後三時四十五分休憩
  ─────────────────────
 午後五時二十三分再開
○副議長(下川俊樹君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(下川俊樹君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後五時二十四分散会

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