平成8年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(森本明雄議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(町田 亘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 39番森本明雄君。
 〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 順次、質問を進めてまいります。
 最初に、シルバー人材センターであります。
 日銀は、八月二十八日、景気は一本調子の回復にはなっていないとしながらも、緩やかな回復という景気判断に変化はないと強調しました。しかし一方では、現在の失業率や求人倍率にあらわれているように、高齢者の就労環境は大変厳しい状況となっています。国や自治体は就業支援に向けてさまざまな施策を実施していますが、その一環としてシルバー人材センターが存在しています。そのねらいは、臨時的かつ短期的な就業の機会の確保に置かれています。
 シルバー人材センターは、全国で約七百団体、会員数約三十五万人、県内には四団体、会員数一千四百五十四人であります。今度、都道府県ごとに連合を設置し、シルバー人材センターのない地域であっても、どこでも高齢者がシルバー人材センター事業によって仕事の提供を受けることができるように、あるいは社会的にそのことが大きな成果を上げることができるように改正されました。会員数を、二十一世紀初頭には三倍の百万人に拡大すると言われています。それには、絶対的な受注件数をふやす必要がございます。会員の拡大と空白地域での事業実施、並びに仕事量の確保について、その対応をお伺いいたします。
 全国シルバー人材センター協会で行っているシルバー人材センターに対する発注者の意識調査によりますと、これまでシルバー人材センターに仕事を依頼する上での不安点として、責任ある仕事をしてくれるかということが二二・二%とかなり高い比率を占めています。やはり、臨時的かつ短期的では仕事を発注する企業側も二の足を踏むのでしょうか。このことは、結局、仕事のあっせん面で非効率の現象を生んでいるのではないかと懸念します。もちろん、行政言葉で言うと、シルバー人材センターは常用雇用労働を卒業した後、任意的な就業を希望する高齢者のための組織ということ、それを担保するための基本的な要件ということは十分わかっていますが、仕事開拓上のネックになってはいないでしょうか、お伺いいたします。
 会員の就業意欲は高いものがあると思われますが、会員の希望する就業時間や希望日数あるいは月間配分金の希望額、すなわち会員の要望とその実績についてお伺いいたします。
 次に、安全教育についてであります。
 事故の発生状況でありますが、全国では平成二年度が三千五百十六件、六年度が三千九百六十四件で、発生率は二年度が一・五六%、六年度が一・一九%であります。県内では、事故発生は全くないということであります。非常に喜ばしいことではございますが、今後、会員、地域、仕事量それぞれの拡大に伴い、事故発生の可能性が高くなってまいります。より以上の安全教育の実施が重要となってまいりますが、取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、医薬分業の推進についてであります。
 国民医療費の九五年度見込み額が二十七兆千六百億円に達し、前年度比五・三%増と国民所得の伸び率一・○%を大幅に上回り、対国民所得比も七・二%に乗りました。こうした問題に対して、検討を重ねてきた医療保険審議会が七月末に出した第二次中間報告では、現在は医療費に含まれているため一ないし三割にとどまっている薬剤費の患者負担についても、これを五割に引き上げる案が示され、論議を呼んでいます。
 我が国の医療費に占める薬剤費の比率は三○%寸前にあり、欧米諸国と比較して飛び抜けて高いのであります。したがって、薬代の半額自己負担といった国民負担増で薬剤費を抑制していこうとする前に、なお残る薬価差益問題や薬漬け、検査漬けと言われる医療体質からの脱却にも取り組んでもらいたいものであります。薬剤費というのは国民医療費約二十七兆円の中で約三○%を占めますので、八兆円の公共事業だという議論もあるようであります。また、年間の薬価差益は約一兆円とも言われています。今後の少子・高齢社会の中で医療費の増嵩ということは大変大きな問題ですので、今日までも医療機関の薬価差益依存の経営体質の改善、薬剤の過剰使用の排除について議論がされてきたと思います。国民、県民の負担も含めて、合理化できることは何とかしてほしいと私は思うのであります。
 今日まで、エイズの問題に限らず、ソリブジンの問題とか医薬品による副作用の問題が非常ににぎわしてまいりました。医薬品の副作用を防止するという点については、薬剤師によるチェックを十分に行う必要があります。また、高齢化社会の中で、多科受診、重複服用、相互作用を防止するという面で正しい面分業を定着する必要があります。まさに、質の高い医薬分業を進めることが県民医療にとって大変重要なことと思います。
 医療供給体制の上からの医薬分業については、本年四月末に医療審議会から「今後の医療供給体制のあり方について」という意見具申がされました。医療計画において、かかりつけ薬局による医薬分業等、医療関係施設相互の機能や業務の連携についてということで、都道府県で必ず定めるのが適当であるということが示されました。従来、地域医療計画の中で任意的な記載事項として示されていましたが、この地域医療計画を従来の地域における必要病床数だけではなく、かかりつけ薬局による医薬分業、医療関係施設相互の機能や業務の連携等を医療計画の中に必ず明記するという方向で医療計画の見直しが提言されたものであります。したがって、医薬分業についても医療計画の中に必ず具体的に盛り込んでいくという方向が示されたと思います。このことは、医薬分業の推進がますます重要であることが示されたものだと思います。
 本県における医薬分業の進展状況は、人口千人当たり、処方せん発行枚数については、平成五年で二十・六枚、全国四十四位、全国平均は百四十・六枚であります。処方せんの受け取り率は、五年度で二・二%、全国四十四位、全国平均一五・八%、六年度は二・六五%、七年度は四・一四%です。年々増加の傾向にあるとはいえ、全国平均に比べると極めて低い現状であり、今後強力な推進が必要だと思います。現状に対する認識と質の高い医薬分業推進の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、教育問題であります。
 明治の初めに今の教育制度ができて、義務教育の年限を少しずつ延ばしながら、また内容も変化させながら全体のレベルを上げることに努力してきたと思います。それはそれなりに成果があったと思いますが、戦後、今の制度になって五十年、その間の世の中の変化は非常に大きく、子供たちの状況も大きく変わりました。そうしたことを考えますと、現在の教育制度のあり方が基本的に見直されるべきではないか、二十一世紀を迎えるに当たってそう思うのであります。
 教育が限界に来ている、一つの壁にぶつかっているという認識は、教育界の方も感じていると思います。例えば、よく言われることは現在の六・三・三・四、この制度が始まったのは私が中学に進学する昭和二十二年でした。戦争が終わって、何もなくなってしまった焼け野原、その中で今まで六年間だった義務教育を九年間にすることは大変な事業だったと思うのであります。しかし、一生懸命頑張って、その結果、中学まではほとんどすべての子供が行くようになり、その当時三○%前後だった高校進学率も、その後の経済成長やその他の理由で向上して、今では九○%台後半の進学率となりました。すべての子供に九年間の義務教育をしなければいけないということが最大の目標でつくられた六・三・三制、今はその意味はほとんどなくなり、むしろその後の高校にほとんど全部が進学し、いろいろな種類のいろいろな能力を持った、いろいろな特徴の子供が高校に入り、それで高校の中においていろいろな問題が起こっています。五十年間たちますと、政治、経済のさまざまな制度も制度疲労が生じてきます。
 そうしたことを考えますと、六・三・三制を前提とする今の学校の制度、教育の制度というものにメスを入れることによって、現在、現象としてあらわれているさまざまな問題の解決の糸口になるのではないかと思えてならないのであります。ご所見をお伺いいたします。
 今、入学試験が過熱しています。受験地獄とも言われています。教育に地獄ということは決してあってはならないことであります。その中で、特に中学から高校に進学するときに大きなプレッシャーになっているようです。この年齢というのは、勉強の面ではもちろんですが、スポーツ、音楽、いろんな趣味、教養、自分の好きな技術などを覚え、鍛えられ、伸びていくという非常に重要なときだと思います。そのど真ん中で入学試験にだけ煩わされ、スポーツをやめ、絵や音楽の勉強をやめます。本来ならば、その持っている自分の一番いい特性を伸ばすことができたかもしれない人が、そこでとまってしまいます。結果的に人生全体として大きな損失であり、社会全体にとっても損失だと思うのであります。できれば、中学三年と高校三年をもっとスムーズにつなぐ中高一貫の制度にすることができないのかと思うのであります。
 中教審は、七月十九日、第一次答申を文部大臣に提出いたしました。次は、一人一人の能力・適性に応じた教育のあり方はいかにあるべきかという第二のテーマに移って審議するものと思われます。その際には、中と高のつなぎ問題について鋭意検討していくものと思います。
 今、全国的に見て、中高一貫教育は、多くの私立や国立大附属校で実施されており、それぞれ非常に高く評価されているところであります。公立では、特例措置として宮崎県で県立の中学校、高等学校をつくって中高一貫の教育を展開しています。開校は平成六年で今三年目に入っていますが、高校入試に追われることなく、ゆとりある教育が実施されていることの意味は大きいと思います。
 中高一貫教育につきましては、昭和四十六年の中教審答申の中で、既に教育の荒廃や受験戦争などの弊害が指摘され、中高一貫教育を含めた学制改革を提言しています。また、昭和六十年には臨教審が提言しているところであります。ところが、ほとんど手がつけられないまま四半世紀が経過しました。教育改革には学制改革が必要だという意見は一致していても、どこをどうするかについては議論百出で、具体案としてまとまらなかったというのが真相だと思うのであります。教師と生徒の双方のレベルアップを図るため、本県にモデル校を設けて中高一貫教育の導入を図ってはどうかと思います。中高一貫教育の評価と導入についてお伺いいたします。
 県立高校と中学校を指定して中・高を通して系統的な教育を行う中高連携教育につきましては、西牟婁郡、伊都郡を地域指定し、中・高連携推進支援モデル事業を実施するため、教育の内容について検討しているとお聞きしていますが、実施に至るスケジュールと実施内容についてお伺いいたします。
 なお、ぜひ実施していただきたい内容として、まず教科活動の連携として教師の相互派遣、そして派遣教師による授業は、中学と高校の教師が同じ教壇に立ち一つの授業を受け持つチームティーチング方式であります。例えば、大学を出たての教師にはベテランの教師、スポーツマンの教師には学究タイプの教師と、いろんな組み合わせで違った視点があれば子供たちそれぞれに目が行き届きます。また、二人いれば相談し合いながらできます。また、こうした教科活動だけにとどまらず、生徒間の交流活動としてクラブ活動の連携や合同行事の実施などで中・高生の教育レベルの向上を図り、地域の特色を生かした教育を進めていただきたいのであります。そして、さらに指定地域の拡大を願うものであります。ご所見をお伺いいたします。
 臨教審が生涯学習体系に移行という大きな方針を打ち出してから、平成二年には生涯学習振興法も制定されました。また、生涯学習審議会も設置されました。その間、県教委を初めとして関係団体の取り組みも大変活発になってきています。各地の公民館などで地域住民のニーズに沿った多種多様な学級や講座が開設されています。県民の学習意欲も高まってきています。実際に学習者の数もふえているのが現状だと思います。しかし、学習の機会の確保については充実してきていると思いますが、学習はしたいが身近なところに施設や場所がないという理由で学習活動をしていない人も少なくないと思うのであります。したがって、身近なところでの学習機会を拡充することが大きな課題の一つであると思います。
 また、学習の内容についてでありますが、現状では趣味や教養あるいは高齢者の健康問題などを扱った講座が多く見受けられます。それは人生を豊かにするもので大変重要なことでありますが、科学技術の高度化、情報化、国際化といった社会の変化に対応して、継続的に新しい知識や技術を身につけられるよう学習機会の充実を図ることも重要な課題だと思います。こういった職業生活に結びつくような知識、技術の習得は、これまで企業内教育において行われてきたものでありますが、近年、産業構造や雇用形態も変わってまいりました。また、雇用される側の個人の意識も変わってきました。今後、こういった面で社会人を対象としたリカレント教育の果たす役割が大きくなるものと思います。さらに、学校五日制が実施されている中で、青少年の学校外活動をより積極的に推進していくことも重要な課題だと思いますが、今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、PTAについてであります。
 戦後、昭和二十二年から二十五年ごろにかけて全国のほとんどの小・中・高において結成され、いろんな活動を進めています。文部省とのかかわりにつきましては、昭和二十九年に社会教育審議会父母と先生の会分科審議会があり、そこでPTAの参考規約が示され、これが当時におけるPTA規約の参考として役割を果たしてきたと思います。
 PTAは、それぞれの学校を中心にして、学校に在籍する児童生徒の親及び教師によって学校ごとに組織されている任意の団体であります。任意団体ならば、主体的にお父さん、お母さんがつくるということになりますが、そうではなく、参考規約は文部省の通達によって全国に徹底されているという、何か変則的で不自然な位置づけになっていると思うのであります。そして、参考規約ではありますが、実質、県教委がつくったというより、それぞれの学校で規定されている規約は参考規約とほとんど同じ内容になっているのではないでしょうか。そういう意味では、参考規約とはいえ非常に拘束力のあるものと考えられます。そのPTAは何となくありますが、全員会員で、メンバーに入っているのか入っていないのか自覚もないままに、一部のお父さん、お母さんは自分の子供を学校に行かせています。実質は校長先生の下請機関のようになっていると批判する父母の声もあります。
 文部省ではPTAについて、実態は学校の後援会的な役割を果たしているところが多い、学校としては、後援会的な役割だけではなく、学校とPTAが一体となって学校運営をどうしていくかということを学校の側から相談する場というようなことに積極的に位置づけて運営をしてもらいたいと言っています。しかし、保護者個人が自分の子供について教師から意見を聞く機会はあっても対等ではありません。まして、学校運営にかかわることについては一方的にお伺いするだけで、対等に意見交換をするということは非常に少ないと思います。
 今、学校と家庭をつなぐ唯一の組織がPTAであります。とりわけ、いじめに代表される諸問題にしても、学校と家庭の連携と、地域社会も含めての連携と情報交換がますます大事になってきます。PTAは法律上根拠がある組織ではなく任意団体ですので、その構成員で規約を決め、団体の運営を行っていく、そして少なくとも個々の会員がそれぞれの都合に合わせてPTAの活動に参加できるような活動形態の工夫、職業を持っている人たちがPTA活動にも参加できるような条件づくり、また学校教育における父母の位置づけを明確にする必要があるのではないかと思います。PTAも設置されて五十年近くたっているわけで、制度疲労を起こしているのではないでしょうか。そういう意味で、PTA活動の活性化を図るため、一度見直しする必要があると思います。PTA活動の現状と活性化への取り組みについてお伺いいたします。
 平成六年十一月二十七日に、愛知県西尾市で中学生の自殺事件がありました。十二月にそれを受けて出された文部省の通達の中に、いじめに関する定義について触れられています。「自分より弱い者に対して、一方的に身体的、心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実を確認しているもの。なお、起こった場所は、学校の内外を問わないもの」となっています。これは、裏読みすると、確認していないものはいじめではないと言っているように受け取れます。その後、昨年「学校としてその事実を確認しているもの」の文言が削除されました。これは、各学校においていじめがあるのではないかとの問題意識を持つとともに、いじめであるかどうかの判断は、あくまでもいじめられている子供の認識の問題であるということ、表面的、形式的な判断で済ませることなく、子供の立場に立って細心の注意を払い、積極的ないじめの実態把握が行われるようにするため講じた措置であったと思います。ただ、いじめ対策緊急会議の緊急アピールの文章に、「いじめがあるのではないかとの問題意識を持って」という、「あるのではないか」という認識の甘さというものは、本当に大切な問題として取り組んだのかどうか疑いを持たれてもおかしくはありませんでした。
 例えば、日本PTA全国協議会の調査書に、学校とPTAがいじめについて全く話し合っていないというところが三四%、学校とPTAがいじめ対策委員会を設置していないところが七四%になっています。また、文部省のいじめ専門家会議が本年七月十六日に出した最終報告は、いじめ問題での学校の限界を認めましたが、それに対し日本PTA全国協議会長は、「一昨年末、文部省が学校に設けるよう提言したいじめ対策委員会にしても、PTA会長でその存在を知る人は少ない。学校とPTAがもっと連絡を密にしていかないと、せっかくの提言が生きない」と、学校と保護者の連携の強化を訴えるコメントが報道されました。さらに最終報告では、家庭の積極的なかかわりなど、社会全体でいじめに取り組むことへの期待、さらに家庭、地域、学校の一層の連携の強化を求める声など、さまざまな注文が出されたようであります。
 現代の教育問題とは、実に教育する側の問題と言えます。しかし、家庭や地域においても、本来的に備わっていた教育力が衰えていると思います。すなわち、教育のエネルギーの源泉が枯れつつあるのが現状だと思うのであります。
 日本のいじめは、大人の嫉妬社会がそのまま映し出されているとも言われています。まず、事件の中心には被害者と加害者がいます。それを取り巻くように、見て見ぬふりを決め込む人やはやし立てたりする人、一方で全く無関心の人がいます。それが、当事者同士の関係をさらに複雑にします。いじめの問題は、決して当事者間だけでなく、クラス全体の問題であり、場合によっては学年、学校全体の問題でもあります。そうした意味で、犠牲者が出ても、なお「いじめはなかった」と言う学校、「いじめはなかったと信ずる」と言う教師、これでは無責任と言われても仕方がありません。
 いじめは、早期発見、早期対応が第一であります。しかし、子供は千差万別で、興味も関心も違います。きょうはこうであっても、あすはどうなるのか。一人の子においても、一瞬、一瞬の変化の連続で、小さなサインを毎日いっぱい出していると言われています。ある識者は、「教師の生命のレーダーがフル回転していなければ、心のエネルギーがないと子供の心はキャッチできるものではない。すなわち、絶対に理解してみせるという強い責任感、何としてもこの子を守ってあげたいという深い愛情、そして教師自身、いかなる理由があろうともいじめは絶対に許さないと言い切る毅然たる態度と確信の大きさ、私がいれば大丈夫、必ず解決するという雰囲気が自然のうちに生徒に伝わっていく」と指摘しています。いわゆる教育とは人格と人格の触れ合いから生まれます。よき人間にしかよき人間は育てられないのは道理だと思います。結局は、人間としての生き方が問われているのだと思います。いじめ問題についての私の考え方に対する見解をお伺いいたします。
 いずれにしても、いじめ根絶への取り組みについては対症療法に偏るのではなく、今後、学校、家庭、地域社会がそれぞれの役割を果たせるよう、そして中でも学校においては、第一に子供たちとの対話を中心とし、一人一人を大切に、その個性を生かす教育を着実に推進し、抜本解決に向けた積極的な取り組みを望むものであります。ご所見をお伺いします。
 登校拒否やいじめ防止の緊急対策として、スクールカウンセラーの学校配置が平成七年度より導入されました。八年度は全国五百六校、具体的には各県十校で、来年度は全国で約千校に倍増する方針と報道されています。県教委では、それに加えて学校や団体などの要請に応じてカウンセラー派遣事業を始めました。こうした事業は、臨床心理士といった資格などを持つ高度な専門家に委嘱し、学校において、子供、教師、保護者等のカウンセリング、あるいは指導助言に当たっていただくものと思います。
 大学院の修士を修了した方で一年以上の実務経験を持っていることが、臨床心理士の基本的な資格と理解されているようであります。その高度な専門家については、まだこの分野において国家資格というようなものができていないように聞いています。厚生省、文部省との間で意見が合わずに、特にサイコセラピーの分野で資格化がおくれているようであります。また権限については、教育相談体制の整備の一環として位置づけられていると思われるスクールカウンセラーの配置、カウンセラー派遣事業だと思いますので、専門家の派遣、それから学校外の方に学校外から新しい目で学校も見ていただき、子供たちとも接してもらいたいというねらいもあるものと思います。そうだといたしますと、非常勤の形で行かれた相談員の方が、まさに大変な子供の相手をしてやればいいんだということでやっていたのではいつまでたっても問題は減らないと思います。つまり、そういう問題が起こってくる学校運営にいろんな問題があるのだから、カウンセラーの任務の明確な位置づけや権限を与えていく必要があるのではないかと思いますが、見解をお伺いいたします。
 最近、一年半ほどの間に出された文部省の通知や報告書を見る機会がありました。その中で、対策上最も重要な役割を果たさなければならない学校についてはたくさんの項目が挙げられています。学級担任の自覚と責任、教職員相互間の緊密な情報交換、職員会議の活用、全校的な組織の設置、校内研修の実施、外部講師の活用、関係機関、保護者との連携強化、教育相談の充実、積極的な生徒指導の展開等々、そのほか膨大な校務の通知がされています。
 こういった事項が完全に学校現場で実施されれば問題はありませんが、こういった通知があるたびに学校現場ではいろんな会議や研修の連続になります。校外にはいろいろな関係機関がありますので、その連携など多くの時間がとられます。いじめの早期発見や解決のためには教師と生徒の接触の時間を本来多くしなければならないのが、逆にこういった通知が来るたびに減っていくという皮肉な結果に陥りがちであります。しかしながら、学校が子供の教育の場である以上、生徒の前で「忙しい」と言えば、もうその時点で生徒を遠ざけてしまうことになります。どこまで行っても、生徒のための教師であります。教師のために生徒がいるのではありません。子供の教育を第一に考えるべきであります。
 一方で、最近は教育に対する要請も極めて多様化しており、私たちの気がつかないところで大変な思いをしていることも多いと思われます。今後は、校務の運営の効率化を図りつつ、教師の負担に配慮しながら、教育現場に充実を期することが肝要だと思いますが、対応についてお伺いいたします。
 以上で、質問を終わります。
○議長(町田 亘君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 商工労働部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○商工労働部長(日根紀男君) シルバー人材センターについての、四点のご質問にお答えいたします。
 会員の拡大と空白地域での事業実施、並びに仕事量の確保についてでございます。
 シルバー人材センターは、現在、和歌山市、田辺市、橋本市、新宮市に設置されておりまして、その活動範囲は、それぞれ市の行政区域内となっております。空白地域での事業の実施につきましては、本年度、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部が改正され、今後三年間で各都道府県に設立されるシルバー人材センター連合のもとで、議員お話しのように、未設置の市町村においても事業実施が可能となったところでございます。しかしながら、本県の地理的な条件もございまして、既設の四シルバー人材センターにおいて全県下をカバーするには困難な面も見受けられますので、新たに広域的なシルバー人材センターの設置を推進してまいる所存でございます。
 また、会員数の拡大、仕事量の確保につきましては、既設のセンター及び今後設立される予定の県連合に対しまして、仕事の開拓、開発を図るよう十分指導してまいりたいと考えております。
 次に、仕事に関する上での問題点でありますが、シルバー人材センターは、地域社会に貢献するもの、また地域社会の日常に密着した臨時的、短期的な仕事であって、高年齢者向きの仕事を受注していくこととされております。今後とも、企業、関係団体等に本制度の周知、理解を求めながら、地域社会のニーズに見合った高年齢者向けの仕事の確保を図ってまいりたいと存じます。
 次に、会員の要望と実績でありますが、就業希望につきましては、大部分の方は年齢、体力を考慮して短時間就労を希望されております。また実績につきましては、平成七年度においては就業延べ人員九万二千人日余り、配分金三億七千万円余りとなっておりまして、ほぼ希望者のニーズを満たしているものと考えております。
 安全教育につきましては、各シルバー人材センターごとに安全就業推進員を配置し、会員に対する各種研修等を実施しておりますが、今後、会員数や仕事量の増加に伴い、作業の安全確保と交通事故防止等にさらに努めるよう指導してまいります。
 いずれにいたしましても、二十一世紀の超高齢社会の到来が見込まれる中でシルバー人材センター事業は高年齢者対策の重要な施策でございますので、今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 福祉保健部長小西 悟君。
 〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 森本議員にお答えをいたします。
 医薬分業の推進についてでございますが、議員ご指摘のとおり、医薬分業は、薬剤師と医師等が相互に連携することにより医療の質の向上を図るものであり、全国的に普及進展しつつあるところであります。
 本県の現状につきましては、処方せん受け取り率は全国と比べると低い位置にあるものの、平成六年度は前年度比三二・三%の増、七年度には四七・一%の増と着実に普及しておりまして、平成七年度中に病院外に発行された処方せん枚数は五十三万五千枚に上っております。
 和歌山県の医療行政の基本方針として地域保健医療計画が定められており、この中で県民の医療の充実を図る有効な手段として医薬分業の推進を位置づけてございます。
 分業により患者が受けられる主な利益といたしましては、一つには、薬局が医薬品の履歴管理をすることにより、複数の診療機関受診による同じ薬の重複服用や薬の組み合わせによる相互作用などの副作用を防ぐことができます。二つ目には、薬を処方した医師、歯科医師と薬剤師が連携して患者に服薬指導することにより、患者の薬に対する理解が深まり、薬物療法の有効性、安全性が向上します。三点目は、診療機関が手元の薬の制限を受けることなく患者に最も適切な薬を選択することができます。
 こういった患者にメリットのある医薬分業を定着させるために、県では薬局のハード、ソフト両面からの基準として薬局業務運営ガイドラインを示し、適正な調剤薬局の育成に努めるとともに、医薬分業の環境整備といたしまして、医薬分業推進懇談会、医薬分業定着促進事業、医薬分業普及啓発事業、薬剤師バンク及び未就業薬剤師研修事業のほか、社団法人和歌山県薬剤師会に対し、専門家である医療従事者だけでなく一般県民にも最新のあらゆる医薬品情報を提供するための薬事情報センターの設置を促し、これの運営補助を行っているところでございます。
 今、医療環境の急速な変化に伴い、一層の院外処方せんの増加が見込まれますが、患者が安心して調剤を受けられ、さらにより有効で安全な薬物治療が受けられるように、これら医薬分業推進関連事業の充実強化に努めてまいる所存でございます。
○議長(町田 亘君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題、八点についてお答えいたします。
 現行の六・三・三制の学校教育体系は、戦後、我が国の教育の普及、向上に大きな役割を果たしてきました。とりわけ、初等・中等教育の水準は世界各国から評価されているところでございます。
 しかし、時代の進展や社会の変化に伴い、子供たちを取り巻く環境が大きく変わる中で、いじめ、登校拒否問題などの病理現象や過度の受験競争など、今日の学校教育にはさまざまな課題が生じてきてございます。こうした中で本県では、より柔軟で多様な教育の推進に向けて、現行制度を基本としながら、総合学科の設置、高校入試の改善、学校間連携を実施するなど、でき得る限りの施策を講じてきているところであります。
 中高一貫教育につきましては、現在、中央教育審議会で一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の改善という観点から審議が進められているところであり、その結果等を踏まえるとともに、ご指摘の宮崎県における先導的な取り組みの成果等をも見守りながら今後研究してまいりたいと考えてございます。
 中・高連携推進支援モデル事業は、高校教育改革が急速に進展する中で、これまで以上に中・高が連携・協力して取り組むことが求められていることを踏まえ、本年度から二カ年間、伊都、西牟婁の両地方で実践的な研究を行うこととしたものでございます。両地方においては、英語、数学などの教科における中・高のつながりを重視した指導、教員の専門性・指導力の向上、中学校の進路指導の改善等、さまざまな観点から研究・協議を行っております。
 この十月からは、中学校、高等学校教員の交流による公開授業の実施など、具体的な取り組みを進めることといたしております。この事業は、中学校、高等学校双方の教育力を高める重要な役割を担うものであることから、その成果を踏まえ、他地方への拡大について検討してまいりたいと考えております。
 次に、生涯学習の機会の拡充や内容の充実についてであります。
 県民の多様化、高度化するニーズにこたえることは、生涯学習社会を構築していく上で重要な課題であると考えてございます。
 現在、市町村や大学等と連携・協力して、各種講座、研修会などを開催しておりますし、小・中学校の開放はもとより、県立学校二十五校においてもパソコンや語学などに関する多様な講座を開催しております。また学習情報の提供におきましても、きのくに志学館を拠点とし、県内すべての市町村とネットワーク化を図ってございます。今後、小・中県立学校でのインターネットの活用や公民館における衛星通信の利用など、遠隔地間や学校、施設間での情報化、国際化等に対応する学習機会の充実に努めるとともに、放送大学の利用につきましても研究を進めてまいりたいと考えてございます。
 また、青少年の学校外活動につきましては、学校外活動推進モデル事業を実施するなどして、子供の自然体験や社会体験学習の充実に向けてさまざまな取り組みを行ってございます。今後とも、市町村等と連携してその充実に努めてまいる所存でございます。
 次に、PTA活動の現状と活性化についてでありますが、議員ご指摘のとおり、PTAは、単に学校の後援会的活動に偏ることなく、保護者と教師が対等の立場で協力し、互いに学び合う団体であると受けとめてございます。こうしたことから、学校週五日制や登校拒否、いじめ問題、飲酒・喫煙問題、交通事故防止など、緊急な課題について互いに積極的に討議するとともに、会員意識の高揚も図っているところでございます。
 特に今年度は、登校拒否・いじめを考えるフォーラムを各地方ごとに開催し、既に四地方でPTA関係者を中心に約二千五百名の参加者を得て研修を深めたところでございます。今後とも、PTA規約のあり方の検討や会員一人一人が進んで参加できる多様な活動形態の工夫など、PTAの自主的な活性化への取り組みを支援してまいりたいと考えております。
 次に、いじめ問題についてであります。
 この問題は、子供の人権と命にかかわる重大な社会問題であると受けとめてございます。いじめはどの学校にもあるという前提に立つとともに、いじめは絶対に許されないという認識のもとに取り組むよう指導しているところでもあります。
 各学校においては、議員ご指摘のとおり、すべての教師が子供の心の痛みや悩みをしっかりと受けとめ、子供を信じ切り、深い愛情を持って子供にかかわっていくこと、さらには学校を開き、保護者や地域社会とともに子供のことを考えていくことが大切であると考えております。
 こうしたことから、今年度、県独自にカウンセラー派遣事業を新設するとともに、先ほど申し上げました登校拒否・いじめを考えるフォーラムなどを通じ、学校、家庭、地域社会が連携して取り組む体制づくりに努めているところであります。また、登校拒否・いじめ対策委員会において、今後の取り組みのあり方について検討を進めております。
 次に、本年度十二校に配置しておりますスクールカウンセラーについてでありますが、各学校では、校長の指導監督のもとに、児童生徒へのカウンセリングはもとより、教職員、保護者に対する指導助言を行っております。その専門性を生かし、カウンセラーを校内組織に位置づけ、全職員の協力体制のもとに指導の充実改善を図るよう今後とも指導してまいりたいと考えます。
 最後に、学校の校務運営等についてでありますが、各学校にあっては、子供の実態を十分に踏まえて、学校行事や会議など校務運営の改善、効率化を図り、児童生徒との触れ合いと好ましい人間関係を基盤にした教育を展開することが基本であります。今後とも、こうしたことに配慮しつつ指導してまいりたいと考えます。
 以上でございます。
○議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 39番森本明雄君。
○森本明雄君 答弁に対していろいろとご意見を申し上げたいことがあるわけでございますが、時間の関係もありますので一点だけ。
 不登校問題やいじめ問題に対する緊急対策としてスクールカウンセラーの学校配置とかカウンセラーの派遣制度というのがなされておるわけでございまして、本来ならば学校配置にしても全校配置をしなくてはならないわけですけれども、一体いつのことやらわからないわけです。もちろん、県教委としては、それを補完する意味でカウンセラーの派遣制度を始めていただいたわけです。ただ、要請に応じてカウンセラーを派遣するということで、いろいろな問題があったら言ってきてください、すぐ派遣します、そして問題解決に当たりましょうと、ちょっと聞けば積極的な考え方にとれるのでありますけれども、いじめ問題というのは非常に陰湿な問題でもありますし、なかなか表面化してこない、顕在していない。顕在しているのはごく一部で、大半は潜在化しているわけです。そして、たまたま表面に顕在した問題についてカウンセラーの派遣を行って対応するわけです。
 先ほども一回目の質問の中でちょっと触れましたように、あくまでもこれは対症療法であって原因療法にならないのではないかと私は考えておるわけです。ましてや、任務の位置づけや権限というのはございません。それは法律を改正しなかったならばできない問題であって、県教委でどうのこうのと言うことはできないのではないかと思います。そういった不備もあるわけでして、県教委としても、そういう面を十分に補えるように、もっと大きな立場で学校運営のあり方にまで突っ込んでいろいろな助言をしていけるように、学校の運営のあり方を改革でき得るような立場を与えていくことが大事ではないかと思うわけです。したがって、要請に応じるということは要請待ちでという考え方になりますので、非常に保守的な、消極的な待ちの姿勢ではないかと思います。私は、教育改革にかけては西川教育長は日本一と思っておるわけでございますが、その教育長にしてはちょっと消極的ではないかなと思います。
 きょうの新聞にも、「県立高校 中途退学者大幅に増 多い『不適応』『進路変更』」とございましたが、いわゆる不登校が中途退学につながることを考えましても、こういった問題解決のために、もう少し積極的な対策、対応が必要ではないかと思っております。どうかその点、今後十分配慮して対応していただきたいと、意見だけ申し上げておきます。
○議長(町田 亘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で森本明雄君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(町田 亘君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時二十八分休憩
  ─────────────────────

このページの先頭へ