平成8年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(村岡キミ子議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 36番村岡キミ子君。
 〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 おはようございます。
 許可をいただきましたので、早速、質問に入らせていただきます。
 本日の「紀伊民報」にも報道されておりましたが、私も梅生育不良問題についてお尋ねをいたします。
 知事と県議会議長に対しては、田辺市議会等から直接来られて要望が行われたようであります。この新聞記事によると、立ち枯れの原因究明と御坊第二火力発電所への慎重な取り組みを特に求めたいということでおいでになったようで、その中で「畑に立ってぼうぜんとする毎日。すでに、耕作放棄や離農が見受けられる。御坊第二火電建設計画には慎重な対応を」と、強く求めておられるようであります。県も、この方々の要望に議長とともに真剣に受けとめられ、早期解決を目指して頑張るという返事に対して、皆さんは安心して帰られたようであります。私も、この問題について本当に胸を痛めております。
 最初に、梅の生育不良、いわゆる梅衰弱症問題について、私も質問をいたします。
 今、田辺や南部、南部川地方では梅の収穫がそろそろ終わろうという時期になってまいりました。先日、私は田辺市で収穫中の農家の方からお話を聞き、梅拾いのお仕事を見させていただきました。仕事も朝の五時ごろから夕方は七時ごろまで、梅拾いや出荷で大変忙しいとのことでした。
 稲成の山際の畑に行きますと、三年前から梅衰弱症があらわれてきたということでした。そちらには暖地園芸試験場の実験が行われている梅の木もあり、約二町の畑に五百本の南高梅を植えておられますが、元気な梅の木はそのうちの三分の一しかなく、何本かの木は葉がほとんどなくなっていました。症状の出ている木は葉の色が薄くなり、実も小さく、実の量も本当にわずかしかありません。ここの農家の方は、「後継ぎの子供は改植しようかと言っているけれども、わしは廃園にしようかと思うとる」、こう言われました。改植してもまた衰弱症にやられてしまうかもしれないのですから、苗木を買ってきて植え直す気持ちにはなれないとのことでした。
 その後、県の移動観測車が置いてある秋津川の谷川に行きました。もう大分前に衰弱症にかかった畑の梅の木が、完全に枯れたまま哀れな姿で放置されていました。新聞報道によりますと、秋津川地区だけで三十カ所の梅畑が廃園になっているとのことであります。農家の方々の気持ちを思うと胸が痛みます。
 生育不良は、県が被害状況の調査を始めた一九九二年度で、南部川村を中心とした日高地方で約四千五百本、田辺地方で約五千百本でした。それが昨年八月段階で、田辺地方だけで二万本に達しています。被害が出始めてから、ことしでほぼ十年を超える年月が経過したことになります。何ら有効な対策がとられることなく、また関係者の皆さんの懸命な努力にもかかわらず原因が解明されないまま今日に至っている、こう言っても言い過ぎではないのではないでしょうか。
 知事も十分ご承知のことですが、田辺・南部地方は全国に誇る梅の産地であります。また、梅以外には転換できない畑の多いのが実情です。その梅が今、生育不良という大きな脅威にさらされ、農家の皆さんはその原因解明と回復のための対策を切実に求めていらっしゃいます。今や、梅はミカンと並ぶ和歌山県の主要農産物に成長してまいりました。農家の皆さんが祈るような気持ちで願っている、生育不良の原因を徹底的に解明するということ、また対策を確立するまでやり切るという知事の決意のほどをお聞かせ願いたいと思うわけです。
 私はこの問題を一年前にもお尋ねし、原因究明に向けてのプロジェクトチームの体制づくりを要望いたしました。ようやく暖地園芸試験場において六人から成る梅対策チームがつくられ、鋭意研究を重ねておられることに敬意をあらわしたいと思います。しかし、実際は他の部署から研究者を回し、しかも三年をめどとした特別チームだと聞いております。研究に当たられている皆さんが大変なご努力をされていることは承知していますが、ミカンに次ぐ農産物である梅の研究者がこれまで育っていなかったこと自体に、和歌山県行政として大きな問題があると思います。
 知事は農業振興を公約の柱の一つとされていますが、果樹王国を自称する和歌山県の農業研究体制が、和歌山よりも農業生産額で低い東京や三重県など、またミカンどころの静岡、愛媛、あるいは梅産地である群馬県などと比較しても不十分である実態をどう考えておられるのでしょうか。
 昨年二月、紀南農協の農家の皆さんが約八千人の署名を添えて、仮谷元知事に「梅試験場の設置で基礎研究の充実を」と要望されております。これは、今回の生育不良の問題にとどまらず、梅の品種改良や栽培技術、加工の研究開発など、農家の皆さんと協力して紀州の梅の将来を確固たるものにする上で、県行政の責任として県が梅の研究施設を持つ必要があるのではないでしょうか。知事のご見解を伺うものです。
 次に、原因解明の研究に関連して質問を申し上げます。
 関西電力がことしの二月に作成された「大気環境と梅」という広報資料では、御坊火電の操業前と後において大気の環境濃度に大差がないこと、また電力中央研究所及び県の果樹園芸試験場の試験結果から、「二酸化硫黄や酸性雨等の影響によって生じる症状は現地で見られる梅生育不良の症状とは異なります」とか、「現状レベルの二酸化硫黄、二酸化窒素、オゾン濃度では梅に対して被害が認められないことがわかりました」と結論づけています。県の果樹園芸試験場の試験研究結果が関電の広報資料に掲載され、大まかな表現ではありますが、大気と梅生育不良とは関係がないと言っているわけですから、試験結果を引用された県として、こうした関電の見解に同意されているのでしょうか。農林水産部長の見解をお示しください。
 関電が引用している果樹園芸試験場の試験結果は、一九八〇年から八七年にかけて行われ、八八年三月の日付で「農作物の大気環境保全対策試験成績書」としてまとめられましたが、その成績書の「背景と目的」には、次のように記されています。
 「御坊火力発電所の稼働による大気環境の影響予測によると、発電所を起点として半径十四~二十四キロメートル付近が、亜硫酸ガス、窒素酸化物、浮遊ばいじんの最大着地点となり、その影響は十六市町村の地域におよぶ」。また、「環境影響予測から判断すれば、直接の影響は考えられないものの、硫黄酸化物等の恒常的な排出により、土壌の酸性化を始めとして、農作物等に対する低濃度汚染の慢性影響、特に作物体への蓄積による不可視的作用、散布農薬との関連性等未解決な問題が多い。 本試験は御坊火力発電所の稼働に伴う農業地帯の大気環境の変化並びに作物への影響等を追跡調査するとともに基礎試験等も併せて行ない、その対策に必要な資料を整備しようとするものである」と、こういうふうに書かれております。
 調査の対象になった作物は、夏ミカン、ハッサク、梅、スモモ、水稲、ウスイエンドウなど六種の野菜と菊、センリョウ、松、杉、ヒノキの合わせて十六種の作物とあります。梅については、畑に植えられている梅の木の生育調査と亜硫酸ガスの暴露試験が行われております。この調査は、四カ所の畑で、それぞれ三本の梅の木について、木の容積や幹の周りの長さ、果実の重さ、葉の硫黄分析など、五つの項目について行われ、その結果は二十年生、十四年生の木において八四年以降、木の容積が小さくなる傾向が見られたとのことです。また、亜硫酸ガスの暴露試験では、八五年の二月から四月にかけて、三種類のガス濃度ごとに一本の木を置いて、新しく出た枝の本数や重さ、果実の重さなどを調べ、ガス濃度の濃いところに置いた梅の木の方が薄いところに置いたものより新しい枝が重かったということであります。
 関電はこの調査や試験から梅生育不良と大気は関係がないと言っているわけですが、問題は、果樹園芸試験場の調査や試験は衰弱症、生育不良の発生が認められてからのものではないことです。県では病理面や土壌面、栽培管理面からの原因究明が行われ、大気観測も行われてはおりますが、生育不良が発生した段階でのこうした暴露試験や実験は行われていないのではないでしょうか。田辺市で話をお聞きした農家の方は、「わしらは火電が原因だと言っているわけではないが、火電が原因でないと関電が言うのなら、そのことをもっとわかるようにはっきりさせてほしい」と言われておりました。
 私は、病理面や栽培面などともに、大気面からも綿密な科学的調査、試験が必要だと考えます。農家の方は、雨が実際に降ったときや霧が発生したときの実際の大気の状況、また硫黄分などだけでなく他の汚染物質の影響の可能性、それらの汚染物質の複合的な汚染が梅の生育に影響していないのかどうかなども全面的に研究をする必要があるのではないかとおっしゃっています。いかがでしょうか。農林水産部長のご所見を求めたいと思います。
 また、農家の皆さんは、改植をしようにも、展望が持てないことや資金の面で困難に直面をしておられます。自作農維持資金への利子補給が行われておりますが、利子補給期間が五年、据置期間が自作農維持資金で三年だけです。県行政としてこれでいいとお考えではないと思うわけです。生育不良で困っておられる農家の皆さんに、この際、無利子あるいはさらに利子補給の追加、期間の延長、据置期間の延長など、資金面からのバックアップが必要と思いますが、いかがでしょうか。
 最後に、知事にお伺いします。
 この三月には田辺市、また六月には南部川村や白浜町、上富田町の各議会において、梅の生育障害問題とかかわり、その原因解明と御坊第二火力発電所建設への慎重な対応を求める意見書がそれぞれ全会一致で可決され、知事のもとにもその内容が届けられたと聞いております。いずれも、御坊火力と梅問題との関係で疑いがぬぐい切れていないとして、第二火力を推進することに懸念が表明されているところです。
 生育不良症の原因が今もってわからないことから、農家の皆さんが第二火力の推進に不安を持つのは当然だと私は考えます。知事は、こうした議会等の総意を踏まえた梅生育障害の原因解明に全力を挙げられるとともに、第二火力建設計画にも慎重に対応することが真に県民の財産と暮らしを守る立場に立つ知事の姿勢だと考えるものですが、知事の見解を伺いたいと思います。
 次に、介護問題について質問を申し上げます。
 介護保険の法案提出は、さきの第百三十六国会では見送られました。これは、国民の間で十分なコンセンサスが得られていないもとでは当然です。厚生省が示している介護保険制度案大綱は、重大な問題を含んでいます。全国知事会や市長会、町村会などが必要な財源措置などの要望書を出してこられたことを見ても、地方自治体がさまざまな懸念を持っていることを知ることができます。橋本首相は十月にも臨時国会を召集し、法案を提出する意向とされています。大綱をそのまま法案化して国会に提出するような安易な態度をとるべきではないと考えるものです。改めて問題点を指摘し、知事初め関係部長の見解を求めるものです。
 さきの二月定例議会で私は、介護保険制度について公正、民主の五つの条件が必要だと申し述べてまいりました。それは、介護問題の解決の第一義的な責任が国と地方自治体及び企業にあることを明確にした上で、一つには介護の水準を抜本的に充実させること、二つには措置制度を併存させて保険制度と組み合わせること、三つには高齢者や低所得者から保険料の徴収を行わないこと、保険料は定率制とし、企業負担を導入すること、四つには医療と介護の両方の前進に役立つものとし、若年障害者も給付対象にすること、五つにはいかなる形であれ消費税の増税とリンクをさせないこと、この五つの点について提案をしてまいったところです。
 厚生省の介護保険制度案大綱では、事業主体を市町村及び東京の特別区とし、被保険者は四十歳以上としました。介護サービスの提供は高齢者に限定をいたしております。介護を求める人は市町村に申請をし、その申請が認められればホームヘルプサービスやデイサービス、訪問看護サービス、訪問入浴サービスなどの在宅サービスと特別養護老人ホームなどにおける施設サービスが受けられます。その介護費用の負担は、保険料が二分の一、国、地方公共団体がそれぞれ四分の一の負担となっています。在宅サービスを先行させ、施設サービスは二年後を目途とするということになっているようです。
 しかし、大綱の前提となっている介護サービスは新ゴールドプラン程度のものであって、これが達成されたとしても、ホームヘルパーは国が目標としている十七万人にすぎず、五十万人程度しかそのサービスを受けられないという計算になります。施設サービスも七十万人程度にすぎず、寝たきりや痴呆性老人など介護を必要とする人が二〇〇〇年には何と二百八十万人と予想されるもとでは、余りにも不十分ではありませんか。
 また今、国保料を払えない人が少なくとも全国で二百五十万人あると推定されています。本県を見てみますと、一九九四年度で見ると国保加入者が十四万世帯で、そのうちの一万六千五百世帯が滞納をしている状況にあります。この現状を見るとき、低所得者や高齢者で介護保険料を払えない人が出てくることは容易に想像をできるわけです。こうした人たちに介護を保障するためには、公的資金で賄う措置制度を併存させなければならないと思います。しかし、大綱は措置制度の対象を「判断能力がなく、身寄りもない人」に限定し、現在よりも一層狭めようとしていますし、保険料を滞納すれば即座にサービスの水準を下げることも明記いたしております。
 財源面でも重大な問題を含んでいます。介護保険の運営は国と市町村が協力すべきだと考えるものですが、この大綱は財源が不足した場合、その穴埋めを市町村に押しつけています。自治体間の財政力の差がそのままサービスの水準の差となる心配が大いにあります。これらの点では、老人保健福祉審議会答申も低所得者への配慮が必要である、市町村に対する財政上の措置を講ずる必要があるなどと意見を明らかにしているところです。
 厚生省が示している大綱について、幾つか危惧される点を今申し述べてまいりました。国民の間で公的介護制度の確立を求める声が強いだけに、なおさらその願いに合致しない点を指摘しないわけにはまいりません。県としてはこの大綱をどう評価しておられるのでしょうか。
 冒頭でも申し上げたとおり、介護サービスの水準は実に不十分です。これでは、「負担あって介護なし」ということになりかねません。現行の老人保健福祉計画を抜本的に拡充することが求められます。特別養護老人ホームの増設を初め、施設整備、ホームヘルパーなどマンパワーの確保などに係る必要な財政投入を強く政府へ働きかけるとともに、県単独でも施策の充実を図るべきだと考えます。いかがでしょうか。老人保健福祉計画の目標見直し作業の現状についても福祉保健部長の答弁を求めたいと思います。
 新たな制度を発足させるに当たっては、何よりも介護にかかわっている家族、ホームヘルパー、施設を運営している人など、介護の最前線で頑張っておられる方々の願いや国が示している案への意見などをよく聞くことが何よりも大事だと私は考えます。
 先日、私は、県下からおよそ八百人の女性が集い、語り合った母親大会に参加をしてまいりました。高齢者問題がテーマであった分科会では、さまざまな悩み、願いが出されました。ある女性は九十歳の父親を介護しており、週一回、ホームヘルプのサービスを受けております。しかし、働きながら介護しているその方は「ヘルパーをせめて隔日に派遣してほしい」と訴えておられましたし、また、「夜間に来てほしいこともあるし、昼間自分が家にいないために、一日一回の給食サービス、週一回の入浴サービスもあればありがたい。こんなささやかな願いがかなわないのでしょうか」と話しておられました。
 特別養護老人ホームで働く女性は、「人員は国の基準どおりあるが、とても足りない。お年寄りがおむつをしないで済む生活をさせてあげたいが、今の人員ではとてもそういうわけにもいかない。介護保険制度で本当に介護が充実するのか。長生きすることが幸せなのだろうかと、定年を前にして考え込んでしまう」という発言が相次ぎました。別の女性は、「中学校区に一つぐらいの規模で特別養護老人ホームが欲しい。『おはぎをつくったよ』と言って届けられるぐらいの距離に建てられるようにならないものか」とも訴えておられました。
 県下で特別養護老人ホームへの入所を待っておられる人は、和歌山市で四百九人、県下では依然として七百人を下らないと見られる状態で、これは今後も続くでありましょう。介護保険の制度化が直ちに国民の願いを満たすものにならないことは明白であります。老人保健福祉計画を全体として拡充させる、これが国民、私たちの願いです。行政が国民の願いを真っ正面から受けとめて、介護を求めているすべての人に公平にサービスを提供する、行き届いた福祉を保障するという立場で取り組むことが重要だと思うのです。
 そう考えるとき、ある特別養護老人ホームの施設長さんがおっしゃった言葉が気になります。「福祉のサービスを受けることを恥ずかしいと思っている人が何と多いことか」というお話でした。国民の生存権が憲法で明確に規定されていることは言うまでもなく、国家は国民の生活を保障しなければなりません。福祉は何か恩恵を施してもらうもので世話になるのは申しわけないと、多くの国民が、特にお年寄りがそう思っていらっしゃるとすれば、社会保障政策の不十分さ、権利としての福祉が確立されていないことの反映と見なければなりません。
 行政の姿勢を端的に示す具体例を一つ紹介しておきたいと思います。
 和歌山での問題ではありません。大阪市で今、ホームヘルパーの派遣を求めた裁判が行われています。原告は寝たきりの女性で、骨折して入院をされました。そして、その退院に際して、どうしても家で過ごしたいというそのお母さんの強い願いの中で、息子さんは定年を前に仕事をやめて母親を介護することを決意されました。そして生活保護を申請しましたが、役所の方では「六十歳だから働きなさい」と、その保護申請を受け付けもいたしませんでしたし、なかなか認められず、弁護士の力をかりてようやく認められたそうです。しかし、それまでヘルパーの派遣を週二回お願いしておりましたが──これは介護ではなくて家事ヘルパーの派遣でありました──この週二回の家事ヘルパーの派遣中止の通知が送られてきたそうです。これに対しても異議申し立てをする中で認められました。しかし、母親はその後寝たきりの上、その息子さんも看護疲れから体調を崩したため、介護ヘルパーも必要になりました。このことを申請しましたが、「家族による介護を受けられる人には派遣されない」との冷たい回答でした。その後ようやく介護ヘルパーの派遣もされるようになりましたが、大阪市の派遣基準では週五回、十八時間の派遣が基準として示されており、それが可能なはずでありますが、その三分の一の派遣しか認められませんでした。このため、「だれでも必要なときに遠慮せずに十分なホームヘルプサービスが受けられるようにと、裁判に訴えざるを得なかった」とおっしゃっています。
 この事例のように、介護をしている人が仕事をやめたり職場を休んだりせざるを得ないこと、ストレスや睡眠不足に悩んでいることは、介護問題の深刻さをあらわしています。
 こういう点で、厚生省は昨年九月、秋田、静岡、京都など十三の都府県、三つの政令指定都市で、昨年の四月一日から十日までに六十五歳以上で亡くなった人の介護状況を調べました。調査員が約五千五百世帯を訪問、介護者らと面接し、八七・二%の回答を得たといいます。その結果によりますと、だれが介護しているかという点では、同居家族が六六・八%で最も多く、死亡者との続柄では妻、長男の妻、長女が多く、平均年齢は六十・四歳と高齢でした。介護していた人のうち五四・四%が仕事を持っていましたが、そのうち介護のために仕事をやめた人が二〇・六%、休職または休暇をとった人が一一・七%ありました。介護で困ったこととして、精神的負担が五二・七%、十分睡眠がとれなかったと回答した人が四五・七%にも上りました。こうした現状を見てもさきに法制化された介護休業制度も充実が求められるところですが、その施行が九九年四月からに先送りされており、介護する家族の深刻な実態にこたえていないと言わざるを得ません。
 以上、介護にかかわる諸問題を述べてまいりました。介護問題を考えるとき、今焦点の介護保険制度に限らず、さまざまな角度からのより一層の施策の充実が求められるところです。公的介護保険制度についてはもちろんのこと、介護に関する現行の施策を県民に周知し、サービスの利用を促進するとともに切実な要求を集約する、これが実のある制度をつくるために求められているのではないでしょうか。福祉保健部長、この取り組みの現状と方針についてお答えください。
 最後に、高齢者はだれもが公平なサービスを人生の最後まで受けられることを求めています。このことを強調し、介護問題の質問を終わります。
 最後に、消費税について知事の見解をお伺いするものです。
 橋本内閣は二十五日、現在三%の消費税率を引き上げて来年四月から五%とすることを閣議決定しました。消費税増税は九四年十一月、国会で可決をされましたが、私ども日本共産党は一貫して反対を主張してまいりました。その際、税率についてはことし九月末までに見直すこととしていましたが、与党・政府は国会で真剣な議論もしないまま、国民の大多数が反対している消費税増税を一方的に決めてしまったわけです。
 朝日生命の「経済月報」七月号は、年収七百万円の平均世帯で税率アップの負担は約八万円ふえるとしています。昨年度から二年間実施されてきた特別減税が廃止されたとするならばさらに六万円、合わせて十四万円も負担がふえると試算をいたしております。
 消費税導入の口実となったのは、高齢化社会に備えるため、福祉のためということでした。あれから七年、国民は福祉の向上を実感しているでしょうか。福祉への財政支出が本当に充実してきたのでしょうか。答えはいずれもノーではないでしょうか。老人保健福祉計画、いわゆるゴールドプランがスタートした九〇年から九四年までに国庫に入った消費税収は二十二兆三千七百万円余に上りますが、ゴールドプランに基づく施策の費用は九千七百億円と、わずかにその四・三%にすぎません。増税の一方で、財政再建を叫びながら同時に浪費の構造は温存していることも許せないことです。さきに決まりました住専処理への六千八百五十億円の税金投入、十四兆円とも言われる首都移転の費用、今年度から五年間で二十五兆円もの支出を計画している軍事費など、国民無視のむだ遣いを続けながら増税を押しつけるやり方を国民が納得できないのは当然です。
 増税は、とりわけ低所得層、お年寄りなどに耐えがたい負担を強いることになります。そして、国民の消費を冷え込ませる影響も大きく、景気の足を引っ張ることにもつながりかねません。年金保険料の引き上げ、入院給食費の患者負担の押しつけなど、社会保障制度が次々と切り下げられる中での消費税増税は、許されるものではありません。零細の小売り業者などでは、仕入れで消費税を払っていてもお客さんからもらっていないという方も少なくありません。「五%に上がったらもらわないとやっていけないけれど、お客さんに負担をかけるのは忍びない」という声も聞こえてきます。また、税率アップは三年前の総選挙ではどの政党も公約に掲げていなかったものであります。道理も国民の合意もない消費税増税は早速中止すべきであります。
 そもそも、消費税に財源を求めること自体間違っており、廃止すべきです。財源確保は、歳入面では大企業優遇の税制の是正など、歳出面では軍事費やゼネコン奉仕型の公共事業費の節減、軍事費の削減、国債利払い費の低金利への借りかえなどで対応すべきだと思うのです。そして、当面、少なくとも食料品は非課税とするなどの措置がとられるべきだと考えます。
 知事、税率アップの閣議決定への見解をお伺いいたしますし、そして答えられるならば、当面食料品非課税を国へ要望するとともに、県の公共料金についても非課税とすべきだと考えますが、いかがでしょうか。お答え願いたいと思います。
 以上で、第一問を終わります。
○議長(橋本 進君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 村岡議員にお答えをいたします。
 まず、梅の生育不良についての問題でございます。
 これまで、暖地園芸センターあるいは果樹園芸試験場が中心となりまして、県のうめ対策協議会及び現地のうめ対策協議会と連携を図りながら原因究明のための試験研究に取り組んできたところでございますが、現段階においては原因がまだ明らかになってございません。私も、去る二月に現地に赴いて農家の方々から切実な気持ちをお聞きし、まことに胸が痛む思いがいたしました。
 県としては梅を紀南地域の基幹産業として位置づけてございまして、生育不良の早期解明は本県農業の重要課題であると思ってございます。そこで、限られたスタッフ、厳しい財政状況の中ではございますけれども、最大限の努力をいたしまして、暖地園芸センター内に専属六名から成る梅対策チームを新たに設置し、これを核にして果樹園芸試験場や地域普及センター等との連携強化を図るなどいたしまして、試験研究体制の充実に努めたところでございます。
 現在、土壌改良あるいは現地栄養診断に加え、大気環境試験を盛り込んだ新たな対策を実施しつつあるわけでございます。今後とも、原因究明に向け、県試験研究機関を中心として総力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。
 また、梅専門の研究施設についてでございます。
 現在、農業関係の試験研究機関として、暖地園芸センターを含めて四試験場ございます。過去には農業関係の試験研究機関の統合などが議論された時期もありますが、必要ということで四試験場が確保されておりまして、それぞれ各地域の課題に積極的に対応しておる現状でございます。
 お話の件につきましては、私も地元から強い要望があるということは十分承知をしておりますけれども、先ほど申し上げたように、現段階として暖地園芸センターに専属チームを配置したということなどもございまして、今直ちにはまいりません。将来、試験研究機関の整備、研究員の配置などについて努力をしていきたいと考えております。
 次に、田辺市議会等の意見書についてのご質問でございますけれども、このことについては先日、吉井議員にもお答えをしたところでございまして、現在、県に対して周辺市町村議会から梅の生育不良に対する原因解明等の意見書が出されておるわけでございます。今後、こうしたことも十分念頭に置きながら、地域振興の立場で対応していきたいと思っております。
 次に、厚生省の介護保険制度案大綱についてでございます。
 高齢者の介護を社会全体で支え合う新たな仕組みをつくる公的介護保険制度については、寝たきり等の要介護者の増加に伴う深刻な問題に対処するために、県民の皆さんが安心できる制度として、過疎化、高齢化の顕著な本県にとっては必要であると考えておるところでございます。
 ただ、制度の導入に当たりましては、老人保健福祉審議会においても附帯意見があったわけでございまして、国においてもまだまだ議論されるものと考えてございます。そういった中で地方公共団体の意見も十分考慮され、だれもが公平で必要なサービスを受けられる制度となるように、さきの政府要望におきましても厚生省などに強く要望してまいりました。
 最後に、消費税アップの問題でございます。
 消費税の税率につきましては、去る六月二十五日、平成六年秋の税制改革を着実に実施していくことが必要であるとの観点から、既に法律で規定されている五%で施行することが閣議決定されたわけでございます。平成六年秋の税制改革では、活力ある福祉社会の実現を目指す視点に立ちまして、バランスのとれた税体系の構築を図るために、所得課税の軽減と消費課税の充実を柱とする税制改革関連法が成立をしておりまして、五%の消費税率は既に先行実施されている所得税等の減税とおおむね見合うものであるとされておるわけでございます。
 税制は、我が国の経済や国民生活に大きな影響を及ぼす国政上の重要な問題でございます。また、高齢化の進展等に伴って社会保障の費用の増加が見込まれておるわけであります。ただ、私といたしましては、今後も引き続き、国民の税負担に関する議論が幅広くされることを期待いたしますと同時に、高齢者や障害者など真に手を差し伸べるべき方々が安心して自立した生活が送れるような社会が必要であると思っております。
 以上であります。
○議長(橋本 進君) 農林水産部長平松俊次君。
 〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 村岡議員にお答えいたします。
 生育不良と大気は無関係とする関電の見解に同意するのかということでございます。
 生育不良と大気環境の関係についてでございますが、昭和五十五年度から昭和六十二年度の農作物の大気環境保全対策試験について、果樹園芸試験場で昭和六十三年に取りまとめたものでございます。この中で、梅についても対策試験を田辺市、南部川村、南部町でおのおの実施してございますが、葉中硫黄含有率では年次、場所による差が見られず、大気の環境基準を下回る調査結果を得てございます。
 いずれにしましても、原因が明らかでない段階にあって、農家の不安には切実なものがあることは存じております。農林水産部としては、関係機関等の協力もいただきながら、科学的な見地に立ち、多面的な調査研究に全力を挙げて取り組んでいるところでございます。
 次に、もっと積極的な大気面からの科学的調査研究をとのお尋ねでございますが、大気環境については、関係機関において、これまで酸性雨を初め二酸化硫黄、二酸化窒素、オキシダント等の各項目について移動測定車による調査が実施されており、県内及び全国の平均的な状況と大差はない結果となってございます。大気環境による農作物への影響を把握する試験方法として空気浄化試験や現地実証試験などがございますが、農林水産部としては、地元のうめ対策協議会などの意見もいただきつつ、調査研究を進めてまいりたいと考えております。
 次に、梅生育不良に対する資金面からの支援対策についてでございますが、地元市町村からの要望もあり、平成六年度に自作農維持資金を活用した梅生育不良特別対策利子補給を実施したところでございます。今後、資金面からの支援策については関係市町村、農協等の意向や農家の要望を調査し、研究してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 福祉保健部長鈴木英明君。
 〔鈴木英明君、登壇〕
○福祉保健部長(鈴木英明君) 介護問題のご質問のうち、ゴールドプランの拡充の取り組み及び介護に関する施策の周知等についてお答えいたします。
 まず、ゴールドプランの拡充の取り組みにつきましては、県では平成五年に策定した和歌山県老人保健福祉計画に基づき、施設サービス、在宅サービスの基盤整備に努めており、その整備状況につきましてはほぼ順調に進んでいるところでございます。
 こうした状況の中で、特別養護老人ホームについては既に計画数の三千床を上回っておりますが、今なお入所待機者が多いなどの現状に対応するため、目標量を超える整備を推し進めることとし、国に対しても財源措置を要望するとともに、今後の整備方針として特別養護老人ホーム整備アクションプランを決定したところでございます。国においては、介護保険導入の際、整備目標の見直しを検討されると聞いておりますので、和歌山県老人保健福祉計画の整備目標についても、国の動向を踏まえながら必要に応じ対応してまいりたいと考えております。
 なお、県単独での施策については、財政事情をも考えると大変厳しいものと考えておりますが、今後、必要性も含めて検討してまいりたいと考えております。
 次に、介護保険制度の周知への対応につきましては、今日まで国からの情報収集に努めながら、県市長会、県町村会、市町村等に対して情報提供を行い、それぞれに意見の集約を行ってきたところでございます。今後、この制度の情報提供については、国の動向も見きわめながら対応してまいりたいと考えております。また、県において行っている種々の介護福祉サービスにつきましては、「県民の友」も含め、よりよい情報提供について、市町村とも協力しながら、さらに県民の皆様にご理解いただけるよう啓発に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 36番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 答弁をいただいたんですが、梅の生育不良の問題です。
 農家の皆さんたちは、原因が明らかにならないので先行き不安でたまらないというのが実態なんですよ。地域的に見ると、みんなそれぞれ後継者は随分育っていらっしゃるんですが、後継者の人たちがこれから先、安心して梅をつくっていけるのかどうかという点ではもう耐えがたいところに来ていると、私は痛切に感じたんです。それは、知事もそういうふうにおっしゃっておるわけですけれども。
 知事は今、とりあえず対策チームをつくったから、これで一生懸命頑張ってもらうんだと言われましたけれども、地元の皆さんたちは、やっぱり梅独自の研究センター、研究施設をつくってほしいと。これはもう切実です。今、四つの試験場があって、暖地園芸センターにチームをつくって一生懸命頑張っているから当面そういうものは考えられない、将来的には検討をしていくとおっしゃるんですが、今これだけ困っているときに思い切った対策をとらないと、将来といったって、いつのことかわからないでしょう。これだけみんなが必死になっているときに、不安が増長しているときに、廃園がもうどんどん進んでいっているときに、将来なんて言わないで、やっぱり思い切った対策を今とるべきだと私は思うんです。知事の決意がそういう点に出てくると思うんだけれども、そのことについてはぜひもう一回、考えてください。
 それから、火力発電所とのかかわりなんですが、やっぱり農家の皆さんたちはぬぐい切れないということなんです。
 福井県の芦原町には北陸電力の火力発電所が二基あって、一つは四十六年から稼働、そして五十三年にもう一つつくられたという状況ですけれども、この芦原町では、四十七年以降、二十年間一貫して大気汚染と農作物、杉や植物との関係について調査を行ってきて、その二十年間の調査結果が平成五年十月に出されているんです。和歌山県の場合には、継続した調査というものがないですね。住民は、そういう行政側の姿勢をずっと一貫して見てきているんです。
 芦原町では、同時に住民の健康調査も二十年間行っています。そして、一貫して調査した結果、やはり火力発電所による被害も考えられるという一定の方向が見出されてきているんです。やはり和歌山県も、今後それぞれの市町村と協力をして、そういう継続した調査を行うことが必要だと思うんです。芦原町の場合、京都大学とか富山医科薬科大学といったところに調査を依頼して、そして住民が「ここもやってくれ」と言うところは全部網羅をしてやってきたというようなことが載っています。そういう点でも貴重な資料だと私は思っていますけれども、和歌山県も、県の主要農産物、基幹産業として位置づけているならば、それぐらいのものがあって当然だと思いますし、よそに負けないほどの研究施設を早急につくるべきだと私は思うわけです。そういう点で、ぜひ検討を加えていただきたいと思います。
 介護問題については、今いろいろな問題があります。新聞やテレビでもいっぱい報道はされるんですけれども、いまだに末端の人たちは中身が全くわかっていないというのが現実なんです。それは前回からも繰り返し申し上げておりますが、最終的な修正案がこの秋にも法案として出されようとしているこの時期に、どういう内容が論議をされているのか、どういうものが具体的になっているのかということについて、県民の皆さんたちがちゃんとつかんだ上で法案ができるべきだと思うんです。その仕事をするのが、市町村であり県行政の責任だと思うんです。
 その意見を吸収して国へ反映させる方法について、よりよい方法でとおっしゃいましたけれども、ぜひ早期に、そのよりよい方法を具体的に教えてください。そうでないと、保険はあっても十分なサービスが受けられないというのが現実的になってくると思うんです。
 時間がありませんので、委員会でもう少しさせていただきたいと思います。
○議長(橋本 進君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時十八分休憩
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