平成8年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番鶴田至弘君。
 〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 まず、公営住宅法の改正に関連した問題でございます。
 公営住宅法の改正は、この法制定以来の抜本的な改正とも言われておりまして、公営住宅入居者はもちろん、公団住宅、公社住宅を初め今後の我が国の住宅政策全体に大きな影響を与えるものと思われます。今後、県や市町村が公営住宅建設を初め住宅政策を進めていく上で重要な問題でありますから、その基本について考え方をお尋ねしておきたいと思います。
 まず、入居者の収入基準の問題であります。
 私たちは、公営住宅の入居について県民の方々からしばしば相談を受けることがあります。民間の賃貸マンションの家賃の高さにはなかなか耐えられない、かといって最低居住水準以下の築後相当年数を経過した長屋式の建物にはもうひとつなじめないという若い方々が公営住宅を求めてまいりますが、大抵の場合、収入基準を超過いたします。それも、大幅ではなくてわずかに超過する。そのために、公営住宅へ入居のための応募もできないというような状態があるわけです。国がつくった収入基準の下方から三三%まで、年収五百万円以下でないと資格がないということになっております。ところが、今度の改正では収入を下から二五%までと切り下げまして、一段と厳しくなってくるわけです。公営住宅の対象とする範囲が、今までも相当厳しかったけれども、さらに厳しくなる、それが今度の法改正の一つの特色であります。
 一方、高齢者、心身障害者の場合は、収入基準が下から三三%だったのが四○%にまで広げられました。これはこれで大変結構なことだと思いますが、身障者や高齢の住宅困窮者はもともと対象人口が健常者ほど多いわけではありませんから、全体として公営住宅の対象枠が狭まってきたと言えると思います。この点をどのようにお考えになっておられますか。ひとつお聞かせいただきたいと思います。
 それから、家賃の定め方の問題です。
 現行の個別原価方式から応益応能型に変えられました。応能ということで、収入の低い人には家賃補助などでその額が抑えられるという制度ができました。これはこれで結構だと思うのですが、応募基準より収入がふえていくと──ふえていくのが当然なわけでありますが、収入超過者として民間家賃を基準にして家賃を定める、立地条件によって高くするというような市場原理がまともに導入されてきたわけです。これによって、かなりの住宅で毎年家賃の値上がりが予想されることになります。
 実は、東京都がこの法を先取りいたしまして、昨年よりこの制度を執行したそうであります。たちまち東京都営住宅が大幅な家賃値上げとなったそうで、今度の改正後の事態が予想されるところであります。あるいはまた、収入によって立ち退きを強く迫る条項を置くなど、入居者にとっても大変苦しい事態が生まれることが予想されます。こういう問題をどういうふうにお考えでしょうか。
 さらにもう一つの問題は、公営住宅の新規建設が漸次後退する面が強くあらわれていることであります。昨今、公営住宅建設は、老朽化した住宅の建てかえが六割以上を占めていると言われています。現に和歌山県でも、六期五カ年計画では五一%が建てかえでした。ところが一方、特定優良賃貸住宅制度という制度がありまして、民間の住宅に一定の補助を出して公営住宅としてその運用を図るというようになっておりまして、新規建設の大きな部分がこの特定優良賃貸住宅の方向に傾いてきております。本県でもまだわずかでありますが、その動きも出始めました。
 また一方では、一種、二種の制度廃止による建設補助金ですが、従来、一種では二分の一、二種では三分の二の補助があったものを一律二分の一にして補助金削減を行うなど、公営住宅建設の抑制につながるような兆候が出てきております。
 特定優良賃貸住宅を含め、いずれも自治体が公営住宅を建設管理する直接供給方式から徐々に手を引いて、新規建設は民間の方にという道を開いていると考えられるわけです。こういう問題をどのようにお考えでしょうか。
 このように改正法は、住民の立場から見ればいろいろと問題の多い法となっております。公営住宅を建設し管理していく任務は地方自治体の仕事でございます。法律がこのように変わってはまいりましたけれども、自治体は今後どう対応していくか。さまざまに出てくる矛盾を緩和していくために自治体としての裁量を発揮することができると思うわけでありますが、この法改正によって生じるであろう矛盾に対して今後地方自治体としてどのように対応していくのか、お考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
 次に、平成三年度より始まり昨年度終結した和歌山県第六期住宅建設五カ年計画についてお尋ねをいたします。
 この計画によると、公営住宅建設の目標は、県営、市町村営含めて千九百戸でありました。しかし、その達成率は六六%にとどまり、千二百七十一戸となっています。しかも、そのうち五一%の六百四十六戸が建てかえでありましたから、新規建設は四九%で六百二十五戸にとどまったわけであります。
 先ほども申し上げましたが、公営住宅の建設の主流が新規建設より建てかえの方に移ってきているという傾向は、時期的な問題もあるわけですが、先ほど紹介した法改正の趣旨が既にこういう格好であらわれてきております。もちろん、老朽化した住宅を新しくするということについては異を唱えるものではありませんが、新規の住宅要望には五年間で県全体で六百戸余りしかこたえられなかったということは、県民の要求から見て相当低いのではないかと思われます。住宅の要求がどれだけ強いかというのは、その応募状況に出ております。
 例えば、比較的新しい空き家募集の最近の状況を見てみますと、和歌山市の県営の三葛、楠見、千旦住宅などでは十倍から十六倍という応募状況です。和歌山市営住宅では、市の比較的中心部では一戸の募集に三十倍、四十倍という数字が何カ所もあらわれてまいります。もちろん、老朽化した住宅や利便の関係で敬遠されるというところもありますが、平均しても四倍から五倍という数字になります。しかも、収入基準をわずかに上回るために応募ができなかった層を加えると、これをはるかに上回る数字になることが予測されます。このような状況から見て、この六期五カ年計画の達成率をどのように評価されるのか、お考えをお示しいただきたいと思います。
 次に、本県は最低居住水準以下の住宅が多いという問題に関連してです。
 最低居住水準とは、夫婦独立の寝室、六歳から十七歳の子供は二人で一室、成人は個室、その他、専用のトイレ、浴室、洗面所等を備えていることが条件であるそうですが、本県にはそれをクリアできない住宅が一○%あるとされています。全国的に見ると、悪い方から十番目、ワーストテンに位置しています。本県よりも悪いところは、沖縄という特別の困難を抱えたところを除くと、東京、大阪、兵庫、神奈川、埼玉等、大都市を抱えた都府県であります。その都府県の真後ろに和歌山県が続いているわけです。県下の住宅約三十五万戸の一割が基礎的な条件を満たし得ていない、その克服が遅々として進まない、そういう状況は公営住宅の新規建設を切実に求められていることを物語っていると思いますが、いかがお考えでしょうか。
 ところで、従来の公営住宅建設計画は総数だけを示して、新規建設か建てかえかが明示されていません。新たな住宅供給計画を明らかにすることが大切だと思いますが、新規に何戸建設するのかというようなことも県民の前に明らかにしていく必要があると思います。いかがでございましょうか。
 新しい計画として七期五カ年計画を策定するに当たり、平成七年にきのくに住宅マスタープランなるものを策定したと聞きます。このマスタープランが計画策定の一つのベースになるものだと思われますが、そこで県下市町村からヒアリングを行い、市町村が新たな五カ年計画中に建設を必要とする公営住宅数を集約した数字が、公営住宅二千三百戸、特定優良賃貸住宅五百戸、改良住宅五百三十戸となるそうであります。これに対して国の方から内示があり、二千三百戸の公営住宅に対して千六百戸、市町村の考えた数の六九・五%、特定優良賃貸住宅は五百戸に対して国の内示の方が六百戸と百戸上回って一二○%、改良住宅では七四%となっています。民間賃貸住宅の半公営化政策以外は、市町村の要望より低くなっています。しかも、今までの達成率の平均が七○%とすれば、公営住宅に限ってみても二千三百戸の希望に対して千百戸ぐらいしか建築できないということになり、四八%程度にしかなりません。また、その数字自体、新規建設を意味するのではなく、五○%以上が建てかえだとすると、これは新しい住宅を求める県民の要望から相当かけ離れた低い水準だと言わなければならないのではないかと思います。
 また、特定優良賃貸住宅は大きな位置を占めており、公営住宅の新設抑制、建てかえ主流という流れの中でこの分野の位置が高くなってきていますが、家賃の値上がり、直接公営住宅建設の抑制を一層加速する可能性があります。いずれにしろ、直接公営住宅に対する要望は相当強いものがあります。計画策定の充足とその完遂を求めるものでありますが、当局の見解をお示しいただきたいと思います。
 関連して、高齢者住宅についてお尋ねをいたします。
 高齢化社会の到来ということでさまざまな対応が行われておりますが、住宅対策も当然であります。最近、公営住宅の中に高齢者向けの住宅が併設されるようになりました。この高齢者住宅の建設計画を、持ち家に対しても公営に対しても行っていかなければならないわけですが、基本的な計画をどうお持ちでしょうか。
 法改正によって高齢者の公営住宅入居基準が少々緩和されたわけですが、高齢者住宅の増設に直結するわけではありません。また、エレベーターのない高層の四階や五階にお年寄りが上りおりしている状況も決して少なくありません。今後、そういう風景をますます頻繁に見かけるようになるやもしれません。どのような施策をお考えになっておられますか。
 住宅関係の最後に、持ち家推進についての知事の公約に関係してお尋ねいたします。
 知事は、昨年の選挙において一三六の公約あるいは提言なるものを発表いたしました。その七十六番目に「年収三倍マイホームプラン」という項目があります。そこには、「勤労者のための低利融資制度や関係団体との協力による住宅建設を行い、大都市圏で勤労者の年収の五倍といわれる住宅を年収の三倍で購入できるようにします」とあります。
 和歌山県は、大都市に比べると相対的な意味で若干地価が安いので、平均で五倍を下回ることは十分可能であると思いますが、この公約の実現にどのような政策をもって進めようとされておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
 続いて、森林と林業の問題についてお尋ねをいたします。
 私は、昭和三十年代までは日高郡の山村で生活しておりまして、日雇い労務者であった父親に連れられて雑木の切り出しや炭焼きの手伝いなどを時にはやっていたものです。そのせいでしょうか、今も森林の香りに魅せられて山歩きを趣味としておりますが、森林や林業についての知識はほとんどないに等しいものであります。
 その私が、過日、本宮、龍神等の森林組合や林業労働者と話し合いを持つ機会が与えられ、過去に先輩の幾人かの議員が森林と林業問題についてこの場で質問されていたのを現場で改めて実感として受けとめる思いでありました。そして、過去数年間の本議会における先輩議員の質問と答弁を読み、現況が必ずしも好転しないどころか一段と厳しくなっていることを改めて痛感した次第です。そこで、つたない知識からでありますが、以下、質問をさせていただきます。
 森林は、天然のダム、生命の源、酸素の供給所──一昨日は、海の恋人という話も聞きましたが、森林の果たす役割の偉大さはもう私が語るまでもないところだと思います。県の山間部に入り、その山の頂に立つと、和歌山県の森の豊かさに大きな感動を覚えずにはおられません。人間が自然の小さな一部分であり、この大自然の中にはぐくまれ、生かされているという思いを抱かせてくれます。同時に、整然と植林された広大な人工林の姿を見るとき、営々とした人間の営みの偉大さをもまた教えられるものであります。
 しかし、ご承知のとおり、今、その森林がさまざまな困難にさらされております。県下の林業は、今、極めて厳しい状況に置かれています。木材価格は、十年前に比べると杉やヒノキは七五%以下に落ち込み、十五年前の最盛期に比べると五○%にまで落ち込んで、到底、経営は成り立たない状況であります。五十年育てた木を売っても、再植林し、数年の養林費を差し引くと、生計に回せる金は何ほども残らないと言われます。当然、仕事は安定せず、賃金は抑制され、労働者は減少の一途をたどるという悪循環が生まれています。植林しても、育林しても、こう安くてはどうしようもないという切実な声が聞こえてまいります。そんな中で再造林への意欲もなかなかわきがたく、過去、五年間伐採された面積から再造林された面積を引いてみると、これは極めて単純な計算ですが、四百五十ヘクタールがまだ再造林されておりません。憂うべき事態であろうと思います。
 しかし、そんな困難な中でも林家と森林組合の方々が、何とかこの困難を乗り越えたいと本当に真剣な努力をされている姿を目にしてまいりました。自分たちの生活を守り、村を守り、そして森林を守ることから逃げ出すことはできない、自分たちはこの山にしがみついてこの務めを果たすしかないのだと、その思いを語っておられた森林組合の方々や林家の方々、労働者の方々の声をお聞きしてきたところであります。
 国土保全という基本的な役割を果たす森林を保護・育成すること、それらの仕事に従事する方々の経営と生活を守ることは、行政の基本的な任務の一つであろうと思います。知事にあっては、和歌山県の森林と林業についての現状認識と、またその行政責務の認識についていかがお持ちなっているかをお示しいただきたいと思います。
 次に、この重要な森林資源の保全・育成と林業振興についての国政のあり方について、知事の所見をお伺いしたいと思います。
 私は、日本の森林と林業がかくも困難な事態になっている根本的な原因に国の林業政策があると思います。その典型的な政策が、全く無制限な外材輸入政策だと思います。この外材輸入は外国の森林破壊にもつながり、国際的な批判を浴びることになったわけですが、実際、インドネシア政府はついに原木輸出の禁止措置をとるに至り、タイは輸出国から輸入国になったと言われ、フィリピンの熱帯雨林は切り尽くされて一割以下になってしまったと報ぜられています。そのようにして安価な外材を輸入することが、相対的に高価な国内産材を圧迫し、国内の多くの林業、木材産業に打撃を与え、林業生産活動の停滞、木材産業の衰退を引き起こし、林業の担い手である労働者の確保すら難しいという状況をつくってきました。
 一九九四年の「林業白書」は、木材産業は、現在、円高の進行等に伴う外材輸入の増大、木材価格の低迷等により困難な状況に直面している、これに伴い、それぞれの時代と状況に応じて森林文化の展開とその世の中に対する文化の発信の場となってきた山村の活力も低下してきたと述べているところであります。
 しかし、今政府がやろうとしていることは、この無制限な外材輸入の規制どころか、さらに木材を輸入住宅という形で今後どんどんふやしていく方向になっております。これでは日本全体が依然として無防備に外材市場にさらされるわけで、国産材の出場は厳しい状態のままであります。これらの問題は国政上の問題ではありますが、和歌山の森林資源の保全・育成、林業の活性化と密接に関係したことであり、知事としても国に対する何らかの働きかけが必要なところであろうと思いますが、知事の所信をお聞きする次第です。
 次に、県としての森林保全と林業振興に対する従来の対策と効果、今後の対策等についてお尋ねをいたします。
 このような重要な森林と林業に対し、従来から県としても相当の手だてを講じてこられたところでありますが、仮谷元知事は、和歌山県は農業はまだ何とかなるが、林業を何とかしなければ大変なことになるという意味の答弁をこの場で行ったことがあります。それなりの力点として取り組んでおられたようでありますが、しかし、国の政治絡み、経済情勢の絡みの中で、実際、県下の森林と林業は厳しさの一途をたどっているのが現状であります。つまり、従来の施策が厳しさに対する防護策にまだなり切れていない、今までの延長線上の政策ではこの下降線をとめられない、上向きにすることができないということを物語っているものだと思います。
 生産コスト対策として、林道の建設が重点的に取り組まれてまいりました。年々その延長も長くなり、作業の効率化に資しているところでありますが、実際の林道延長の要望にはまだまだこたえ切れていない現状であります。和歌山県の山間部の地形からくる困難性もあるのでしょうが、全国と比較してもその格差がなかなか縮まらない。林道密度という山林面積に比した林道の比をあらわした数値がありますが、全国の数値と比べるとその格差がだんだんと広がってくる。すなわち、おくれの幅が大きくなってきている傾向さえ見られます。
 例えば、一九八六年(昭和六十一年)の林業密度の全国との差は○・三八でした。ところが、一九九五年(平成七年)の数値は全国比と比べると○・七六となっており、○・三八の格差が○・七六と広がってきている。毎年少しずつ格差が増大しているわけであります。その理由は地形が急峻であるということもあろうかと思いますが、この調子でいけばますます格差は広がり、本県のおくれが大きくなりかねません。また最近は、大型林道というか大型の生活基盤道路のような路線が整備されつつあります。非常に大事なことでありますが、生産現場近くの林道とか作業道の整備の要望が働く人々の間から非常に強く出されてきています。一九九二年(平成四年)ごろから、林道整備の事業費は年々十五億円ぐらいずつ大幅に伸びております。しかし、林道の延長の伸びは従来とほとんど変わりません。その伸びた事業費は専ら大型林道の方に投入されるからだと思いますが、それはそれで大変結構です。しかし、現場近くにもっと林道と作業道をという声にどうこたえていかれるか、所信をお聞かせいただきたいと思います。
 和歌山県の地形からくる困難性が林道延長をおくらせているとするならば、それを乗り越える予算措置がない限り、県民の要望にこたえられないことになります。国に対する特別措置の要求とか県独自の事業費の拡大とかということになると思いますが、その手だてが必要だと思います。いかがでしょうか。
 具体的な問題で、林道建設への受益者負担金が市町村によって異なり、平均五%程度に定められているようですが、実際には、作業の困難な中で超過負担のような形で一○%ほどになっていると聞きます。この軽減の要望も林家から出されたところでありますが、軽減の措置をお考えいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 生産コスト低減のための一方策として、作業機の近代化、高性能化が必要であります。既にさまざまな施策が進められているところでありますが、若手労働者の確保のためにも作業機の近代化は一層促進しなければなりません。しかし、この深刻な不振であります。林家も自力でそれを進めることが困難なことははっきりしています。当局の援助の策の強化が求められます、いかがでしょうか。
 また、担い手対策についてお尋ねをいたします。
 林業労働者は、減少の一途をたどっています。今では、県下に千数百人、森林組合に組織される労働者は六百人程度と言われています。厳しい労働、相対的に低い賃金、山村生活という不便さ、どれをとっても若い人々を引きつける条件ではありません。県もそれらを緩和するためにさまざまな施策を講じられておることは承知しておりますが、担い手対策は一段と強めていかなければならない現状にあります。賃金や福祉施策の一層の厚い支援が必要であります。そのための基金がつくられておりますが、この超低金利時代、基金の利息による施策の拡大はなかなか望めません。森林組合の作業員養成やUターン、あるいは林業体験者の滞在住宅の補助金制度などの拡充も含めて考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 また、直接的な雇用安定のための制度も必要だと思います。今、仕事がなくて、若い林業労働者が梅の収穫の手伝いに行っていると聞きました。梅雨時、林業労働は相対的に少なくなるときでありますが、意欲的に参加した若い方々が失望されないだろうかと胸を痛めます。雇用安定資金などの制度で若手労働者が今後とも一層安心して働けるような制度をつくる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 次に、販路の拡大についてお尋ねをいたします。
 木材製品の価格が木のぬくもりによって再評価され始めているとはいえ、まだまだ新建材や化学製品の力に押され、その市場を奪われております。販路の拡大のための総合的な施策が必要とされるところであります。知事の公約の百二十五番目にその公約があります。しかし、今までも公共建築物の木造化や木造住宅の推進などは言われてきたところです。現実にそれがなかなか進まない。公共建築物も、県下市町村の庁舎を見ても堂々たる鉄筋であります。学校などには極めて部分的に木造化の気配が見えますが、その姿はまれであります。県下の公共建築物の今後の新築、改築等の大まかな計画や見通しは既に手元にあると思われますが、それに沿って木造化──もちろん、すべてを木造というわけにはまいりませんが、計画的に進めることが必要だと思います。単に木造化をお願いしますと言うだけではなくて、計画化することが大事ではないでしょうか。また、それを県下だけではなく、木材生産県と共同して全国的な運動にしていく必要があります。国の方も公共建築物の木造化とは言っておりますが、それは政策化されておりません。県独自で、あるいは国や市町村が一緒になって財政的に誘導されるようにすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 また、民間需要拡大のための研究やPRも重要であります。阪神大震災の後、木造家屋の評価の下落に対して、木造住宅の優良性を積極的にPRすることの重要性についての質問が本議会でもありましたが、まことにそのとおりだと思われます。あの大地震で倒壊した高速道路の架橋のそばに、びくともしないでその姿を保持した木造住宅が何軒かあったそうですが、それらの住宅は龍神村の森林組合のチームが建設した家屋だったそうであります。法隆寺は、千年の歴史を私たちの目に映しています。鉄とコンクリートこそ文化だと考えていた思想を、「木の国」の思想で見直す時期に来ているのだと思います。研究機関の拡充やPRがもっと大規模にされるべきだと思います。県のイメージPR、一過性のリゾート博には莫大な宣伝費が使われました。和歌山の森林と林業のためにも大胆な県費の投入によるPRがあってもよかろうと考えるものですが、いかがでしょうか。
 私は過去に幾度か、先輩議員の森林、林業に関する質問を聞きながら学ばせていただいたところでありますが、このような問題は、私も含めてまだまだ県民の中に十分理解されていない面もあろうかと思います。「山の日」などという森の重要性を考える日をつくられておられるようでありますが、それを一層県民のものにするために努力が必要であろうと思われます。どのような計画をお持ちなのか、お示しをいただきたいと思います。
 以上で、第一問を終わります。
○議長(橋本 進君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員にお答えをいたします。
 まず、住宅問題に関連してでありますけれども、具体的には土木部長から答弁をいたします。
 ただ、一三六のマイホームプランなどに関連がございましたので、少しお答えを申し上げたいと思います。
 お話のように、私は昨年、県内各地域を回りまして、多くの方々との対話を重ねてきたわけであります。その中で、すべての人が和歌山に住んでよかったということが実感できるふるさとをつくることが県政究極の目的であろうということを私も実感したわけであります。特に勤労者の方々は、ゆとりと充実ということを目標に掲げておられました。特に、その中では持ち家対策が重要なこととして提起されたわけであります。そういうことで、私の政策の中にも持ち家プラン、マイホームプランというものを提案させていただいたところでございます。
 しかし、お話のように、現段階でご質問のございました具体的なことについてはまだ成案を得ておりません。今後、ご質問のございました住宅建設のコスト低減を初め融資の問題等、関係部局あるいは住宅供給公社を含めて総合的に研究をしていきたいと思っておりますのでご理解をいただきたいと思います。
 続いて、森林資源の保全・育成と林業振興の問題について、その基本的な考え方でございます。
 本県の三十六万四千ヘクタールに及ぶ森林は、木材生産機能のみならず、水源の涵養、山地災害の防止、生活環境の保全、保健休養の場、さらに中山議員からお話のありました漁業資源の振興のためにも、大変有益な機能を果たしておるわけでございます。県民生活にとってかけがえのない財産であると認識をしているところであります。こういったことから、「木の国」と称される本県の発展にとって森林、林業の育成は、古くから林業、木材産業が基幹産業となってきたことからも重要な行政課題だと考えてございます。
 従来も、林業生産基盤、生活環境の整備などについては進めてきたわけでありますけれども、本年から新たに山村21創造事業、県産材流通安定促進事業という市場に木材を出す場合の助成、そういう事業などに力点を置いて施策を講じました。森林、林業、木材産業は大変厳しい状況にありますので、山村地域の活性化も含めて取り組んでまいりたいと考えております。
 それに対する国策の問題でありますけれども、森林、林業を取り巻く情勢は、木材価格の低迷などにより大変厳しい状況にあります。特にご指摘がございましたけれども、昭和三十六年ごろに我が国の高度経済成長に伴う木材需要の増大に対処するために外材を輸入したわけであります。そのことが、近年の著しい円高基調の中で価格競争力を強め、需給構造の変化と相まって国内林業の低迷の要因の一つとなってきているということであろうかと思います。しかし、自由貿易体制が国際的にも推移している中で、輸入規制を行うということは極めて困難なことであるわけであります。
 県といたしましては、活発な林業活動を展開するために、外材に対抗でき、また産地間競争に打ちかつ施策として、林道網の整備による低コストの生産、質の高い労働力対策を進める森林・山村対策を国に強く働きかけてまいったところでございます。先日も林野庁長官にお会いし、現下の大変厳しい状況を国においても十分認識され、森林の維持、継続的な経営、山村地域の定住促進を図るために積極的に施策を講じてもらうように強く要請も行ったところでございます。今後も努力してまいりたいと思います。
○議長(橋本 進君) 土木部長長沢小太郎君。
 〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 鶴田議員にお答えいたします。
 まず、公営住宅法の改正についてでございます。
 公営住宅制度は、自力では最低居住水準を確保することができない住宅困窮者の居住の安定を図る上で大きな役割を果たしてまいりました。今回、制度の目的に照らして住宅困窮者の意味をもう一度見詰め直し、高齢者、障害者に一層配慮した制度とすることにより、本格的な高齢化社会における在宅福祉の基礎づくりを図ることとして抜本的な改正がなされました。
 改正内容は、入居者資格の的確化、家賃決定方式の変更、需要に応じた的確な供給、福祉施策との連携の強化など多岐にわたっております。
 ご質問の入居収入基準については、一般世帯では改正前の収入の上限月収十九万八千円に対して、改正後は月収約二十万円とほぼ変わらず、高齢者や障害者世帯では優遇措置があり、入居しやすくなっております。また家賃制度では、適切で公平な入居者の負担を実現するため、入居者の収入と住宅の立地条件、規模等を勘案して能力に応じた額をもとに算出することになっております。
 建設費補助では、第一種、二種の区分を廃止し、すべて二分の一に統一されましたが、補助裏の起債充当率の拡充、長期にわたる家賃対策費補助で手厚く補助されることに改正されております。これらの点も含め、今回の法改正は総合的に見ると、公営住宅事業のより一層の充実に寄与するものと考えております。
 今後とも、県といたしましては、法律の趣旨に沿い、真に住宅に困窮する者に対し良好な居住環境を備えた公営住宅の的確な供給に努めてまいります。
 次に、県の公営住宅の六期、七期五カ年計画についてお答えさせていただきます。
 第六期住宅建設五カ年計画では、良質な住宅ストック及び住環境の形成、並びに高齢化社会への対応等を目標として取り組んでまいりました。議員ご指摘のうち、公営住宅の建てかえ及び達成率について申し述べさせていただきますと、県内の住宅は建設後長期間経過したものも多く、老朽化していることから、実施している建てかえ事業を促進する中で戸数をふやすことも図ってまいりました。一方、新規建設事業については、昨今、公営住宅に適した用地の取得難等の問題も生じているのも事実でございます。県も含め各事業主体の実情を勘案すると、新規、建てかえ合わせて全体として一応の成果があったものと考えておりますが、質的な向上を求めた需要が多いことも認識してございます。
 なお、高齢者対策についてでございますが、これら建設に際し、すべての住戸について段差解消等、標準的な高齢者仕様の供給も行っているところでございます。
 次に、第七期住宅建設五カ年計画については、県民の住生活の質の向上を目指し、一、生き生きとした長寿社会を実現するための環境整備、一、地域活性化に資する住宅、住環境の整備、一、住宅建設コストの低減等、各施策について議員ご指摘の最低居住水準未満の解消も視野に入れながら、各事業主体と十分に連携を図り、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、入居資格等で公営住宅では対応できない中堅勤労者に対して、特定優良賃貸住宅制度の促進も図っていきたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 農林水産部長平松俊次君。
 〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 鶴田議員にお答えいたします。
 林道の整備に関する件でございますが、林業経営の基礎的基盤であるところの林道整備については、従来より広域基幹林道を中心に、支線林道、作業林道など林内路網の体系的な整備を進めているところでございます。
 林道密度については、お説のように、本県の林道は地域の実情から他所管の道路に移管されるケースが多く、林道密度は低い数字となっていますが、コスト低減の指標となる林内路網密度はヘクタール当たり十七・七メートルで、全国平均の密度を大きく上回ってございます。また、県単独事業である小規模林道開設事業等に加え、昨年度からさらに作業道緊急整備事業を実施し、林家の林業経営に密着した路網整備に努めるとともに、負担の軽減に努めたところでございます。今後とも、林業機械導入の条件となる林道、作業道の整備を進め、高性能林業機械の普及定着を図ることにより経営コストの低減に努めてまいる所存でございます。
 なお、急峻な地形が原因となって開設単価が他県と比べて高い状況にあるため、毎年国に対して予算枠の拡大を最重点として要望し、所要額を確保しているところでございます。
 次に、担い手対策についてでございます。
 林業で働く人々が年間を通してできるだけ安定した所得を確保できるよう、これまでの特用林産物を組み合わせた複合経営などの推進に加え、本年度から新たに農作業との相互支援体制づくりに取り組むとともに、就労条件の改善等、林業事業体が行う雇用環境を整備していくこととしてございます。
 また、Iターン、Uターン等の新規参入者のための事業により雇用の安定を図るとともに、昨年度から県単独で実施している定住促進住宅の整備をより一層進めてまいりたいと考えてございます。
 なお、社会保障対策については、県単独として掛金助成を行い、各種保険への加入を促進してきた結果、加入率は飛躍的に向上してございます。今後とも、基金を含め、担い手対策を強化していきたいと考えてございます。
 木材の販路拡大についてでございます。
 庁内連絡体制を強化し、現在、和歌山市に建築中の多目的ホールのフロア等に県産材を使用するなど、木の国にふさわしい公共建築物の木造化を推進しているところでございます。今後、こうした施策の一層の展開により、県民の皆様に木のよさを理解していただくとともに、昨年度実施いたしました耐震性モデル木造住宅などを拠点に県産材の利用推進を広く啓発普及していく所存でございます。
 また、森林資源の大宗を占める杉材の利用促進を図るため、表面圧密等、本県独自の技術開発を進めてまいりましたが、今後、特許取得した三技術を含め、民間への技術定着など、業界と一体となった試験研究の充実に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、県としての従来の対策と効果、今後の対策として、森林、林業に関する県民運動についてのご意見がございましたが、森林、林業の県民へのPRは、本県の七七%を占める森林の重要性を県民すべてが考え、育てるという観点から、「紀州山の日」の制定とPR行事の開催、「みどりの日」の緑の感謝祭の開催を初め、次代を担う小学生を対象に配布しております副読本「わかやまの農林水産業」の利用や教育の場に参加した森からのメッセージ運動の活動など、広く森林、林業に対する理解を県民に呼びかけてきたところでございます。今後とも、森林、林業、山村に対する理解が深まるよう、支援体制の確立に向け積極的に取り組んでまいる所存でございます。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、残り時間が少ないので短時間で行います。
 公営住宅法の改正の問題について答弁をいただきましたけれども、その答弁を聞いていますと、どこから見てもこの法改正は県当局にとってはバラ色に見えるようであります。私は先ほどから、県民の公営住宅に対する要望との関係でどれだけ強いものがあるかということを相当細かく述べたわけですが、その間をこの法律が埋めていくことにはほとんどなっていないという現実をどのようにお考えになっているのか、私は非常に不思議に思います。
 また収入基準の問題ですが、ほとんど変わらないとおっしゃられる。ほとんど変わらないのだったら、なぜわざわざ基準まで法律で変えるのか。変わるんですよ、これは。法改正によって五十万円の差が出てくるんです。平均値と言われましたけれども、実際はそのぎりぎりのところでたくさんの方々が、公営住宅に入居したいけれどもなかなかできないという事態にあるんです。そこの差を少しもお考えになっていないというのは非常に残念に思います。
 自治体の裁量がこういうところでこれからまだまだ発揮されますから。私がお願いしたのは、法にはたくさんの矛盾があるけれども、県民との間のこの矛盾を自治体の裁量で何とか埋めてほしいということです。法がバラ色であるならば、まるでそういう才覚が生まれようがないんですね。そこのところをしっかり研究をして、どう解決するか。これからまだ時間がありますから、考えてください。七期計画の中でそれを生かすように努力をしていただきたいと思います。
 森林の問題については、非常に多岐にわたって当局が努力してきておられるのを承知いたしておりますが、今後、この情勢の厳しさにかんがみ一段の努力をされるよう心から切望いたしまして、第二問を要望としてとどめさせていただきます。
○議長(橋本 進君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時四十五分休憩
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