平成8年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


県議会の活動

議 事 日 程 第四号 平成八年七月四日(木曜日)
     午前十時開議
 第一 議案第八十六号から議案第九十七号まで、及び報第一号から報第五号まで(質疑)
 第二 一般質問
会議に付した事件
 一 議案第八十六号から議案第九十七号まで、及び報第一号から報第五号まで(質疑)
 二 一般質問
出 席 議 員(四十七人)
 1 番 大 沢 広太郎
 2 番 木 下 善 之
 3 番 小 川   武
 4 番 吉 井 和 視
 5 番 下 川 俊 樹
 6 番 井 出 益 弘
 7 番 藁 科 義 清
 8 番 門   三佐博
 9 番 永 井 佑 治
 10 番 新 島   雄
 11 番 向 井 嘉久藏
 12 番 佐 田 頴 一
 13 番 和 田 正 一
 14 番 阪 部 菊 雄
 15 番 西 本 長 弘
 16 番 馬 頭 哲 弥
 17 番 谷   洋 一
 18 番 長 坂 隆 司
 19 番 高 瀬 勝 助
 20 番 堀 本 隆 男
 21 番 宇治田 栄 蔵
 22 番 宗   正 彦
 23 番 橋 本   進
 24 番 井 谷   勲
 25 番 玉 置 公 良
 26 番 上 野 哲 弘
 27 番 東 山 昭 久
 28 番 尾 崎 要 二
 29 番 野見山   海
 30 番 木 下 秀 男
 31 番 町 田   亘
 32 番 中 山   豊
 33 番 山 下 直 也
 34 番 鶴 田 至 弘
 35 番 森   正 樹
 36 番 村 岡 キミ子
 37 番 新 田 和 弘
 38 番 平 越 孝 哉
 39 番 森 本 明 雄
 40 番 神 出 政 巳
 41 番 松 本 泰 造
 42 番 冨 安 民 浩
 43 番 飯 田 敬 文
 44 番 中 村 裕 一
 45 番 松 本 貞 次
 46 番 大 江 康 弘
 47 番 和 田 正 人
欠 席 議 員(なし)
説明のため出席した者
 知 事 西 口   勇
 副知事 山 下   茂
 出納長 高 瀬 芳 彦
 知事公室長 野 見 典 展
 総務部長 中 山 次 郎
 企画部長 藤 谷 茂 樹
 生活文化部長 中 村 協 二
 福祉保健部長 鈴 木 英 明
 商工労働部長 日 根 紀 男
 農林水産部長 平 松 俊 次
 土木部長 長 沢 小太郎
 企業局長 佐 野 萬瑳義
 教育委員会委員長職務代行者
    安 藤 精 一
 教育長 西 川 時千代
 公安委員会委員 高 垣   宏
 警察本部長 青 山 幸 恭
 人事委員会委員長
    若 林 弘 澄
 代表監査委員 天 谷 一 郎
 選挙管理委員会委員長職務代理者
    高 垣 修 三
 以下、各部局次長・事務局長・財政課長
職務のため出席した事務局職員
 事務局長 西 畑 彰 久
 次 長 中 西 俊 二
 議事課長 佐 竹 欣 司
 議事課副課長 島   光 正
 議事班長 松 谷 秋 男
 議事課主査 山 本 保 誠
 議事課主事 大 浦 達 司
 総務課長 塩 路 義 和
 調査課長 湊   孝太郎
 (速記担当者)
 議事課主任 吉 川 欽 二
 議事課主査 鎌 田   繁
 議事課速記技師 中 尾 祐 一
 議事課速記技師 保 田 良 春
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 午前十時三分開議
○議長(橋本 進君) これより本日の会議を開きます。
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 【日程第一 議案第八十六号から議案第九十七号まで、及び報第一号から報第五号まで】
 【日程第二 一般質問】
○議長(橋本 進君) 日程第一、議案第八十六号から議案第九十七号まで、及び知事専決処分報告報第一号から報第五号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 11番向井嘉久藏君。
 〔向井嘉久藏君、登壇〕(拍手)
○向井嘉久藏君 おはようございます。
 ただいま議長から一般質問のお許しが出ましたので、質問をさせていただきたいと思います。
 本日の私の一般質問の項目はただ一つ、産業廃棄物についてでございます。いつもでございますと、三百七十一号バイパス、京奈和自動車道、市脇・清水間の架橋、登壇させていただくときには必ずこれらについて質問をさせていただいておりました。きょうは、どうしてもこの産業廃棄物に絞って質問をさせていただくことになりました。緊急質問のような形でございます。
 私は、産業廃棄物についての質問をこの議場でさせていただくのは二度目でございます。市議会のときにも産業廃棄物について相当突っ込んで質問もし、調べもしましたが、行政の壁というんですか、法律の壁、そういう厚い壁があることも知らされました。住民が本当に苦慮している問題であっても、様式さえ整ってしまえば行政としても許可をおろさざるを得ない今の法律について疑問を感じつつ、この産業廃棄物についてご質問を申し上げたいと思うのであります。
 昨夜とけさ、自宅に地元の方からの激励の電話が入りました。また、この現場の写真がけさ私の手元に届けられました。そういうことで、産業廃棄物の処理場ができた地元は非常に苦労しておるというか、毎日の生活が大変である、これから何年続くかわからんということで、本当に泣きの涙で暮らしているということに尽きると思うんです。
 私は、前回の質問では産業廃棄物についての県条例を制定していただきたいということを申し上げましたが、探しておったら、やっぱりありました。県にもあるわけです。「和歌山県環境公害関係条例・規則集」というのがございまして、昭和四十六年七月十九日に条例第二十一号でつくられておりました。五たび改正されておりますが、こういうのが現在あるわけでございます。この中を見させていただいたら、まさしく私がきょう質問しようとすることをいみじくもうたっております。私は、こういう条例があることに感動しました。四十六年に既にこういうものがつくられているということでございますので、和歌山県公害防止条例の前文を少し紹介させていただきたいと思うのでございます。
 「前文 豊かな自然とすぐれた文化を基調に、県民のたゆまない努力により着実な歩みを続け、さらに、県民すべての不安のない充実した生活の確立を目ざしつつある和歌山県にとって、最近の大気の汚染、水質の汚濁など自然を破壊し、県民の健康と快適な生活環境を脅かす公害は、誠に重大な障害である。 これらの公害は、今後更に激化する傾向にある。 ここに、我ら和歌山県民は、次の原則を宣言するとともに、この実現を期するため、この条例を制定する。 一 すべて県民は、健康で快適な生活環境を保障されなければならない。 二 すべて県民は、他人の健康と生活環境を侵してはならない。 三 事業者、県、市町村及び県民は、一体となって公害の防止に邁進しなければならない」、こういう三項目の崇高な目標に向かって県条例は制定されているのであります。
 私は、この県公害防止条例の精神にのっとり、質問をいたしてまいりたいと思います。
 産業廃棄物に関しての一般質問は、平成六年十月六日にいたしましてから二度目でございます。そのときの趣旨は、「今、県下では他府県から産業廃棄物と称する膨大な量のごみが毎日運び込まれて捨てられている。このままでは和歌山県は近畿のごみ捨て場になってしまう。法律で認められているので、遠く県境を越え運び込まれるのを見過ごさなければならないのか。取り締まる根拠がないから見過ごさなければならないのか。法律で認められたものであれば、産業廃棄物の発生した地元で処理するのがよいと思うがいかがか。何ゆえわざわざ遠く和歌山県へ捨てに来るのか。以下について伺いたい」ということで質問しております。
 こういうことを前回は申し上げております。その中で、質問といたしまして、一番目に県条例の制定、二番目に県下自治体への指導強化、三番目に保健所の廃棄物検査体制並びに設備の充実についてただしました。これに対し当時の江口保健環境部長は、廃棄物の最終処分場を設置する際は市町村長の意見を聞くこととしている、県外からの流入については、行政指導による制限を実施している県もあるので十分に研究をいたしたい、三番目の保健所の検査については実施していないということでした。
 私は、今回の質問では、前回の質問に対しどのような改善策をとってきたのか、特に県外からの流入については行政指導による制限を実施している県もあるので十分に研究したいと発言されておりますので、これについてお尋ねしたいと思うのでございます。
 二番目に、これは県の資料でございますが、県下産業廃棄物最終処分場、現在は安定型十カ所、管理型一カ所ございますが、これに対してどのような指導、監督、調査をなさっておるのか。
 三番目に、現在計画中の事前調査書の提出件数並びに進行状況について。
 四番目に、これがちょっと問題でございますが、法律に基づき許可された以外の三千平方メートル以下の処分場の把握と指導について。
 法律では、三千平方メートル以上は申請して県の許可、知事の許可をとりなさい、ところが三千平方メートル以下の処分場は届けなくてもいいとなっています。三千平方メートル以上の処分場であっても、残土の処理については別に届けなくてもいいとなっているそうでございます。
 五番目に、前項処分場業者の知事への届け出の義務づけと市町村長への連絡と意見の聴取についてお伺いしたいと思います。
 ただいま質問いたしました趣旨をご理解いただくために、私の地元橋本市の現況を少し説明させていただきたいと思います。
 橋本市では、三千平方メートル以上の処理場が一カ所、これは県が許可したところには入っておりません。三千平方メートル以下が五カ所、それから申請手続中が二カ所ございます。申請手続中のところはえらい大きいところでございまして、一つは二万一千八百平方メートル、もう一つは七万二千三百五十一平方メートルでございます。
 平成八年六月二十一日付の産経新聞によりますと、見出しで「橋本市で計画の産廃最終処理場 反対署名三千人 近く県に提出 九度山町の住民団体 『水源の汚染心配』」とあります。また、二十九日付の各紙には九度山町議会の反対決議声明が報じられております。
 ここで、知事にお伺いしたいと思うのでございます。
 私の手元にいただいた県の資料によりますと、法的には住民の反対を根拠として不許可とすることはできないとあります。住民の声を大切に考え、担当部を保健から生活文化部に変えて前向きに対処する姿勢を示した知事にお伺いしたいのでございます。
 また、市町村長の意見の取り扱いについてもあわせてお伺いしておきたいと存じます。
 私がいただいた県の資料のうち、ほかの一カ所の事前調査書、調査結果では、法的には住民の反対を根拠として不許可とすることはできないとしながらも、現在は住民の反対運動は発生していないと記されています。住民の声が関係ないんだったらわざわざそんなこと書かんでもいいのと違うか、私はそう思うのですが、何のためにこんなことが書いてあるのか、担当部長にお伺いしたいと思います。
 前段四で申し上げた、知事許可を必要としない三千平方メートル以下の処分場でのトラブルが近隣住民との間で多発しております。私の地元橋本市であった事例ですが、調査資料に基づき、さきに述べた法律に基づいて許可された以外の三千平方メートル以下の処分場の把握と指導、また三千平方メートル以下の処分場業者の知事への届け出義務化と市町村長への連絡と意見の聴取、これらの参考にしていただくために紹介させていただきたいと存じます。
 この事例は去る六月二十三日、橋本市で行われた「動く県庁 知事と語る会」の席上でも地元被害住民から発言がございました。知事は、早期の解決を図りたいとその場でお答えし、動く県庁を終わってから、すぐ現場へ駆けつけられ、現場を確認し、発言された方に解決を約束されております。その後の県の行動も素早いものがございまして、地元住民は感謝しております。このことは申し添えておきたいと存じます。
 それでは、橋本市並びに県からいただいた資料に基づいて紹介させていただきますので、ご了承いただきたいと思います。
 平成六年五月二十日、事業計画書が高野口保健所長に提出されました。このときの広さは二千八百平方メートル──すなわち三千平方メートル以下でございます。残土・安定五品目ということでございます。当時の橋本市の担当部長は、この処理場は不適当でないというご意見を持っていたようでございます。
 平成六年六月十日、橋本市で調査した結果、道路の各所に残土引き受けの立て看板が立っておりました。これはご承知のように、自家処分であればいいんですが、お金を取って処分をするということになると県への届け出が要るということで──残土引き受けというのは、ただで置かせますということではございません。有料ということになるわけですから、橋本市はそれを自家残土のみにするよう指導しております。
 平成七年一月十一日、焼却炉を設置しております。これは、許可の不要なものでございます。例えば、建物をつぶして廃材が出たら、その廃材を燃やすという程度のものでございます。焼却炉設置の許可は不要でございます。
 平成七年五月三十一日、火災が発生しております。橋本市消防本部からいただいた「火災速報」という資料があります。これは消防が調べたままを書いたものですが、それによると、山積みの廃材に火をつけ、その場を離れた間に周囲の廃材に延焼した。出動消防車八台、人員七十二人。こういう「火災速報」が出ております。これは橋本市から聞いたわけではございませんが、出動した地元の消防団の方の話でございますと、「火は消さんといてくれ」と言われた。実際は消しておるんですが、「今、燃やしておるんだから火は消すな」と言われたそうです。
 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令に規定する廃棄物の収集、運搬、処分等の基準について」の「産業廃棄物処理基準」の中で、こういう質問があってそれに回答されております。「焚き火程度の規模の焼却であっても、焼却する産業廃棄物の種類により、悪臭、ばい煙等に係る生活環境保全上の支障が生じていれば、改正令第六条第二号イ──これは一般廃棄物の焼却と同様としておりますが──で引用する第三条第二号イ──これは一般廃棄物を焼却する場合には焼却設備を用いて焼却すること──の規定に違反していると解してよいか」、「お見込みのとおり」、こうなっています。たき火程度のものでも規制されておるわけです。にもかかわらず、山積みした廃材に火をつけて、その場を離れて、付近の人がびっくりして通報した、こういう事態が起こっておるわけです。
 これらを初めとして、高野口保健所、橋本市に出された悪臭、異臭、ばい煙、排煙、ハエの苦情が記録されているだけでも十回を数え、苦情は今も続いております。この事業所への許可を出すに当たっての疑問点についてお尋ねしたいと思います。
 一、産業廃棄物収集運搬業並びに産業廃棄物処分業許可の──これは四月三日に許可されておりますが──おりていない業者に──当時はおりていなかったんですが──許可を必要とする焼却炉設置許可されていること。これは八年三月七日に許可されている。
 二、産業廃棄物処理施設の申請受付日が平成八年三月十一日であるのに、許可日は平成八年三月七日であること。
 私が県からいただいた、「産業廃棄物処理施設使用前検査結果について」という八年四月三日に知事名で出されておる書類にはそういうふうに載っております。この疑問について質問したいと思います。
 三、地元橋本市は、許可が既に三月七日におりているのを知らずに、三月二十九日付で橋本市長名で業者に設置許可申請に伴う市長の意見を送付しております。
 その意見を紹介させていただきますと、何々殿、橋本市長、「産業廃棄物処理(中間処理)施設設置許可申請に伴う橋本市の意見について」、「貴社においては、平成六年以来、土砂・残土・安定五品目による自己処分埋め立てとして今日まで実施されていますが、付近の住民の方々より様々な苦情が寄せられており、その対応については十分とは言えないのが実態であります。 今回の中間処理施設(焼却炉)の設置については、本来ならば地元地区等の理解を得たのち市の意見書を添付し本申請を行うところであるにもかかわらず本市の意見書提出まえに、すでに工事が完成していることについては、非常に遺憾に存じます。 市としては、地元及び周辺区長ならびに水利関係者の同意がない限り同意することはできません」、こう言うている。これが三月二十九日です。三月七日には既に許可がおりています。この辺がちょっと理解に苦しむところです。
 以上述べたように、過去に苦情が絶えなかった業者を、法に規定する技術上の基準に適合しているとして、留意事項(過去に指導したが守られなかった事項)を付して許可しております。許可に当たっては、通り一遍の書類審査だけではなく、過去も調査して審査する必要があるのではないでしょうか。
 過去に、橋本市内産業廃棄物投棄において住民運動で阻止した経緯もあります。しかし、その後が大変でございました。業者は、県市を相手に損害賠償を求め、訴訟したのであります。裁判所は和解案を勧告いたしました。和解のため相当な犠牲を払っております。橋本市議会で解決特別委員会をつくり、私もそのときのメンバーでございましたが、解決金たしか三千万円──元手は四百五十万円と聞いていますが──と橋本市内の新しく開発する団地でのごみの収集権を渡して解決しております。県にも相当な犠牲を払っていただきました。
 また、橋本市内で無許可で産業廃棄物の不法投棄をしていた業者を、警察力をおかりして、一週間にわたる積み出し地の内偵、尾行等により検挙いたしました。この事件については新聞でも報道されておりますので、記憶にある方もおられるかと思います。
 このように投棄が始まってからでは遅く、事前の情報、行政の指導、住民の環境を守る意識が一体となって初めて成果が上がるものと思います。神戸や大阪から高速道路を使って、なぜ和歌山県に産業廃棄物が運び込まれるのか。兵庫、大阪の規制が厳しいからであります。また、これらの地区の住民の方々の意識が高いから、それを許さないのであります。細かく事例を出して質問いたしましたが、県、市町村の積極的な行政指導と、業者の方には住民に迷惑のかからないように、きめ細かい気配り、最善の努力と改善をお願いしたいと思うのであります。
 終わりに、私は地元に発生した産業廃棄物の適切な処理についてまで反対しているものではないということを申し添えておきたいと存じます。
 産業廃棄物については非常に難しい問題がさまざま絡んでおりますが、残念でたまらないのは、私にこの写真をきょう届けてくれた方のところへ、今、細かく紹介した業者の方から、どういうつもりであったのか私には理解をしかねますが、電話がかかってきたそうです。「死ぬまで燃やし続けてやる」、どういう意味でしょうか。七月一日から、急にこの処理場に搬入するトラックの台数がふえました。業者は、県には「ご指導のとおりいたします。今残っているものだけを処分させてください」──これは三年分ぐらいあるそうですが──こういう話があったようにも承るわけでございますが、県に言うことと地元の方に言うことと非常に矛盾がある。また、地元の反対する方からこういうことを聞きました。「この焼却炉とめたら一日百万円やぞ」、何を意味しているのか私に理解できませんが、そういうことがあったということをご報告させていただきまして、本日の一般質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの向井嘉久藏君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 向井議員にお答えをいたします。
 産業廃棄物に関連したお話であります。まさに今日的な課題と言われております産業廃棄物の処理については、本県のみならず全国的な問題であろうかと思いますけれども、大変重要であり、かつ困難なテーマであると考えております。
 ご質問にございましたけれども、先日、橋本市で実施いたしましたいわゆる「動く県庁」において、橋本市民の方から、県が許可した産業廃棄物処理施設からの公害問題について大変厳しいご指摘を受けたわけでございます。改めて産業廃棄物処理施設の許可の難しさ、同時にその後の指導における現場での迅速な対応の必要性を痛感したところでございます。
 ご指摘の件については、翌日、担当課長が現場で事業者を厳しく指導いたしました。今、お話によりますと、その厳しさが県だけのものであるかもしれませんが、ともかく厳しく指導をし、お話のあったご本人にもその事情を十分説明させていただいたところでございます。
 今後、出先機関における環境行政のあり方についても再点検をいたしまして、改善するところは改善をし、廃棄物処理施設の許可に際しては、市町村長のご意見を十分尊重いたしまして慎重な審査に当たるとともに厳正に対応していきたいと考えております。
 以上であります。
○議長(橋本 進君) 生活文化部長中村協二君。
 〔中村協二君、登壇〕
○生活文化部長(中村協二君) 向井議員にお答えをいたします。
 産業廃棄物に関するご質問のうち、五点についてお答えをいたします。
 まず、前回のご質問にありました、県外からの流入についての行政指導による制限の研究結果についてのご質問でございます。
 産業廃棄物は、発生した場所で処理、処分されることが理想でございますが、現実には全国を広域的に移動いたしております。産業廃棄物の流入量の多い二十八の道県においては、事前協議制度等を定め、行政指導を行っている状況にございますが、本県においては、汚泥、廃油、廃液等の相当量を県外で処理しているため、こうした制度は設けてございませんでした。しかしながら、お話のように、最近、特に他府県から持ち込まれる産業廃棄物による問題が多発してございますので、本県においても事前協議等の行政指導要綱の制定について早急に検討してまいりたいと存じます。
 次は、三千平方メートル以上の産業廃棄物処分場に対する指導、監督、調査についてであります。
 産業廃棄物処理施設を許可いたしますと、事業者は施設の設置工事に着手し、完成後、県が検査を実施してから施設を使用させることといたしてございます。また毎年、いつ、どこから、何を、どれだけ搬入したかを報告させるとともに、必要の都度、保健所により立入調査を実施し、適正処理を指導いたしてございますが、今後は市町村とも連絡を密にし、定期的な監視を行ってまいりたいと存じます。
 なお、現在、県下で安定型十六、管理型五の計二十一カ所の最終処分場が計画されてございますが、いずれも事前調査の結果に基づいて関係機関の指導事項に対応中でございます。したがいまして、許可申請には至ってございません。県といたしましては、市町村長の意見を初め、こうした関係機関の指導事項にすべて対処した後でなければ許可申請を受理しない考えでございます。
 次に、法律に基づき許可された以外の三千平方メートル未満の処分場の把握と指導についてでございます。
 許可を必要としない三千平方メートル未満の処分場の数については十分に把握できてはございませんが、平成七年度から市町村、警察本部及び産業廃棄物協会と連携し、陸・海・空からのパトロールを実施してございますので、今後できる限り把握するよう努めてまいりたいと考えてございます。
 なお、許可対象外の小規模処分場についても、問題のあるものについては法律に基づく処理基準を遵守するよう指導してまいりたいと考えております。
 次に、三千平方メートル未満の処分場の知事への届け出義務等についてでございます。
 現行の法制度では、三千平方メートル未満の処分場の届け出義務等の規定はございません。しかしながら、現在、厚生省において廃棄物処理法の改正作業中であり、この中でミニ処分場をすべて許可対象にするといった議論もあると聞いてございます。県といたしましては、こうした国の動向を見きわめながら適切に対応してまいりたいと存じます。
 最後に、議員ご指摘の産業廃棄物処分場許可に当たっての疑問点についてでございます。
 当該案件は、既に設置されていた焼却炉からの悪臭等による苦情があり、早急に公害防止装置である二次燃焼装置と排ガス処理設備を設置させなければならないため許可を取得させたものでございます。許可後については、保健所と警察本部に対して許可の内容を通知するとともに、事業者に対する指導を依頼いたしてございます。当該廃棄物処理施設は完成してございますが、現段階では公害防止装置が十分機能してございませんので、引き続き改善を指導中でございます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 11番向井嘉久藏君。
○向井嘉久藏君 ご答弁ありがとうございます。
 私は、先ほども申し上げましたように、産業廃棄物を調査するに当たって、法律の壁にぶち当たるということで、許可する方も大変だなあと思いました。許可したら、それだけの責任が伴ってきます。だから、苦渋の選択をなさる場合もあるのではないかと思うわけです。しかし、提出された書類が技術上すべての問題をクリアして出てまいったときには許可をせざるを得ない。こういうところが法の盲点であろうと思うわけです。しかし、先ほど申し上げましたように、過去に相当な苦情や出火、これらのことがその書類の上からでは審査されていなかったのではないかということが残念でならないのであります。法律を守る立場とあわせて、県民を守る意識を持ち合わせていただくことをお願いしたいと思います。
 しかし、ありがたいことに知事は、この問題を知って、すぐ現場へ駆けつけ、発言のあった方に説明をし、釈明をして帰られた。その後、県の担当課に直接指示をなさって、明くる日にはすぐに対処していただいた。こういう素早い動きが本当に毎日苦労している方の支えともなるのではなかろうかと思いますので、どうか今後とも県民の立場の行政をお願いしたいと思うのでございます。
 もう一点は、今述べたとおり、許可は慎重にしていただきたい。現在橋本市で起こっている公害については、今部長からご説明もありましたとおり、許可を取得させたものであるということであります。立場が反対ではなかろうかと思います。許可を申請してきたら許可を与えるのが県の行政であろうと思いますが、業者に言うて許可を取得させた。それと、申請してから許可をおろすまでに物すごく短期間であった。普通こういうものの申請には、長いものでは二年、三年と相当な期間を要するわけでございます。この件については、既に地元で非常な苦情が発生しておった。だから、許可を取得させて県の行政が及ぶようにしたいというのが趣旨であったと思うのです。指導力を発揮するにはそれしかないという結論を得て取得させたものであろうと思うのですが、私に言わせたら、業者にその逆手をとられたのではないかと思います。こういうことをこれからどんどんやっていったら、取得期間を短くしようと思ったら先に苦情を発生させておいて、それを逆手にとってやれば何年も待たんでもいいという、業者にとっては非常にメリットのあるやり方です。私は、こういうことを絶対したらあかんのと違うかなと思います。申請をしていないところは、無許可で処理をしているということで警察に告訴したり、それなりの手続があったろうと思いますが、これは考え方の違いであろうと思いますので、話はやめておきます。
 いずれにいたしましても、この問題については、いろいろと逆手、逆手で業者の思うつぼにはまっていったようなところもありますので、今後とも厳しくご指導いただいて地元住民の方々の不安を解消していただきますように要望しておきまして、私の一般質問を終わります。
 ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で向井嘉久藏君の質問が終了いたしました。
○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番鶴田至弘君。
 〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 まず、公営住宅法の改正に関連した問題でございます。
 公営住宅法の改正は、この法制定以来の抜本的な改正とも言われておりまして、公営住宅入居者はもちろん、公団住宅、公社住宅を初め今後の我が国の住宅政策全体に大きな影響を与えるものと思われます。今後、県や市町村が公営住宅建設を初め住宅政策を進めていく上で重要な問題でありますから、その基本について考え方をお尋ねしておきたいと思います。
 まず、入居者の収入基準の問題であります。
 私たちは、公営住宅の入居について県民の方々からしばしば相談を受けることがあります。民間の賃貸マンションの家賃の高さにはなかなか耐えられない、かといって最低居住水準以下の築後相当年数を経過した長屋式の建物にはもうひとつなじめないという若い方々が公営住宅を求めてまいりますが、大抵の場合、収入基準を超過いたします。それも、大幅ではなくてわずかに超過する。そのために、公営住宅へ入居のための応募もできないというような状態があるわけです。国がつくった収入基準の下方から三三%まで、年収五百万円以下でないと資格がないということになっております。ところが、今度の改正では収入を下から二五%までと切り下げまして、一段と厳しくなってくるわけです。公営住宅の対象とする範囲が、今までも相当厳しかったけれども、さらに厳しくなる、それが今度の法改正の一つの特色であります。
 一方、高齢者、心身障害者の場合は、収入基準が下から三三%だったのが四○%にまで広げられました。これはこれで大変結構なことだと思いますが、身障者や高齢の住宅困窮者はもともと対象人口が健常者ほど多いわけではありませんから、全体として公営住宅の対象枠が狭まってきたと言えると思います。この点をどのようにお考えになっておられますか。ひとつお聞かせいただきたいと思います。
 それから、家賃の定め方の問題です。
 現行の個別原価方式から応益応能型に変えられました。応能ということで、収入の低い人には家賃補助などでその額が抑えられるという制度ができました。これはこれで結構だと思うのですが、応募基準より収入がふえていくと──ふえていくのが当然なわけでありますが、収入超過者として民間家賃を基準にして家賃を定める、立地条件によって高くするというような市場原理がまともに導入されてきたわけです。これによって、かなりの住宅で毎年家賃の値上がりが予想されることになります。
 実は、東京都がこの法を先取りいたしまして、昨年よりこの制度を執行したそうであります。たちまち東京都営住宅が大幅な家賃値上げとなったそうで、今度の改正後の事態が予想されるところであります。あるいはまた、収入によって立ち退きを強く迫る条項を置くなど、入居者にとっても大変苦しい事態が生まれることが予想されます。こういう問題をどういうふうにお考えでしょうか。
 さらにもう一つの問題は、公営住宅の新規建設が漸次後退する面が強くあらわれていることであります。昨今、公営住宅建設は、老朽化した住宅の建てかえが六割以上を占めていると言われています。現に和歌山県でも、六期五カ年計画では五一%が建てかえでした。ところが一方、特定優良賃貸住宅制度という制度がありまして、民間の住宅に一定の補助を出して公営住宅としてその運用を図るというようになっておりまして、新規建設の大きな部分がこの特定優良賃貸住宅の方向に傾いてきております。本県でもまだわずかでありますが、その動きも出始めました。
 また一方では、一種、二種の制度廃止による建設補助金ですが、従来、一種では二分の一、二種では三分の二の補助があったものを一律二分の一にして補助金削減を行うなど、公営住宅建設の抑制につながるような兆候が出てきております。
 特定優良賃貸住宅を含め、いずれも自治体が公営住宅を建設管理する直接供給方式から徐々に手を引いて、新規建設は民間の方にという道を開いていると考えられるわけです。こういう問題をどのようにお考えでしょうか。
 このように改正法は、住民の立場から見ればいろいろと問題の多い法となっております。公営住宅を建設し管理していく任務は地方自治体の仕事でございます。法律がこのように変わってはまいりましたけれども、自治体は今後どう対応していくか。さまざまに出てくる矛盾を緩和していくために自治体としての裁量を発揮することができると思うわけでありますが、この法改正によって生じるであろう矛盾に対して今後地方自治体としてどのように対応していくのか、お考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
 次に、平成三年度より始まり昨年度終結した和歌山県第六期住宅建設五カ年計画についてお尋ねをいたします。
 この計画によると、公営住宅建設の目標は、県営、市町村営含めて千九百戸でありました。しかし、その達成率は六六%にとどまり、千二百七十一戸となっています。しかも、そのうち五一%の六百四十六戸が建てかえでありましたから、新規建設は四九%で六百二十五戸にとどまったわけであります。
 先ほども申し上げましたが、公営住宅の建設の主流が新規建設より建てかえの方に移ってきているという傾向は、時期的な問題もあるわけですが、先ほど紹介した法改正の趣旨が既にこういう格好であらわれてきております。もちろん、老朽化した住宅を新しくするということについては異を唱えるものではありませんが、新規の住宅要望には五年間で県全体で六百戸余りしかこたえられなかったということは、県民の要求から見て相当低いのではないかと思われます。住宅の要求がどれだけ強いかというのは、その応募状況に出ております。
 例えば、比較的新しい空き家募集の最近の状況を見てみますと、和歌山市の県営の三葛、楠見、千旦住宅などでは十倍から十六倍という応募状況です。和歌山市営住宅では、市の比較的中心部では一戸の募集に三十倍、四十倍という数字が何カ所もあらわれてまいります。もちろん、老朽化した住宅や利便の関係で敬遠されるというところもありますが、平均しても四倍から五倍という数字になります。しかも、収入基準をわずかに上回るために応募ができなかった層を加えると、これをはるかに上回る数字になることが予測されます。このような状況から見て、この六期五カ年計画の達成率をどのように評価されるのか、お考えをお示しいただきたいと思います。
 次に、本県は最低居住水準以下の住宅が多いという問題に関連してです。
 最低居住水準とは、夫婦独立の寝室、六歳から十七歳の子供は二人で一室、成人は個室、その他、専用のトイレ、浴室、洗面所等を備えていることが条件であるそうですが、本県にはそれをクリアできない住宅が一○%あるとされています。全国的に見ると、悪い方から十番目、ワーストテンに位置しています。本県よりも悪いところは、沖縄という特別の困難を抱えたところを除くと、東京、大阪、兵庫、神奈川、埼玉等、大都市を抱えた都府県であります。その都府県の真後ろに和歌山県が続いているわけです。県下の住宅約三十五万戸の一割が基礎的な条件を満たし得ていない、その克服が遅々として進まない、そういう状況は公営住宅の新規建設を切実に求められていることを物語っていると思いますが、いかがお考えでしょうか。
 ところで、従来の公営住宅建設計画は総数だけを示して、新規建設か建てかえかが明示されていません。新たな住宅供給計画を明らかにすることが大切だと思いますが、新規に何戸建設するのかというようなことも県民の前に明らかにしていく必要があると思います。いかがでございましょうか。
 新しい計画として七期五カ年計画を策定するに当たり、平成七年にきのくに住宅マスタープランなるものを策定したと聞きます。このマスタープランが計画策定の一つのベースになるものだと思われますが、そこで県下市町村からヒアリングを行い、市町村が新たな五カ年計画中に建設を必要とする公営住宅数を集約した数字が、公営住宅二千三百戸、特定優良賃貸住宅五百戸、改良住宅五百三十戸となるそうであります。これに対して国の方から内示があり、二千三百戸の公営住宅に対して千六百戸、市町村の考えた数の六九・五%、特定優良賃貸住宅は五百戸に対して国の内示の方が六百戸と百戸上回って一二○%、改良住宅では七四%となっています。民間賃貸住宅の半公営化政策以外は、市町村の要望より低くなっています。しかも、今までの達成率の平均が七○%とすれば、公営住宅に限ってみても二千三百戸の希望に対して千百戸ぐらいしか建築できないということになり、四八%程度にしかなりません。また、その数字自体、新規建設を意味するのではなく、五○%以上が建てかえだとすると、これは新しい住宅を求める県民の要望から相当かけ離れた低い水準だと言わなければならないのではないかと思います。
 また、特定優良賃貸住宅は大きな位置を占めており、公営住宅の新設抑制、建てかえ主流という流れの中でこの分野の位置が高くなってきていますが、家賃の値上がり、直接公営住宅建設の抑制を一層加速する可能性があります。いずれにしろ、直接公営住宅に対する要望は相当強いものがあります。計画策定の充足とその完遂を求めるものでありますが、当局の見解をお示しいただきたいと思います。
 関連して、高齢者住宅についてお尋ねをいたします。
 高齢化社会の到来ということでさまざまな対応が行われておりますが、住宅対策も当然であります。最近、公営住宅の中に高齢者向けの住宅が併設されるようになりました。この高齢者住宅の建設計画を、持ち家に対しても公営に対しても行っていかなければならないわけですが、基本的な計画をどうお持ちでしょうか。
 法改正によって高齢者の公営住宅入居基準が少々緩和されたわけですが、高齢者住宅の増設に直結するわけではありません。また、エレベーターのない高層の四階や五階にお年寄りが上りおりしている状況も決して少なくありません。今後、そういう風景をますます頻繁に見かけるようになるやもしれません。どのような施策をお考えになっておられますか。
 住宅関係の最後に、持ち家推進についての知事の公約に関係してお尋ねいたします。
 知事は、昨年の選挙において一三六の公約あるいは提言なるものを発表いたしました。その七十六番目に「年収三倍マイホームプラン」という項目があります。そこには、「勤労者のための低利融資制度や関係団体との協力による住宅建設を行い、大都市圏で勤労者の年収の五倍といわれる住宅を年収の三倍で購入できるようにします」とあります。
 和歌山県は、大都市に比べると相対的な意味で若干地価が安いので、平均で五倍を下回ることは十分可能であると思いますが、この公約の実現にどのような政策をもって進めようとされておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
 続いて、森林と林業の問題についてお尋ねをいたします。
 私は、昭和三十年代までは日高郡の山村で生活しておりまして、日雇い労務者であった父親に連れられて雑木の切り出しや炭焼きの手伝いなどを時にはやっていたものです。そのせいでしょうか、今も森林の香りに魅せられて山歩きを趣味としておりますが、森林や林業についての知識はほとんどないに等しいものであります。
 その私が、過日、本宮、龍神等の森林組合や林業労働者と話し合いを持つ機会が与えられ、過去に先輩の幾人かの議員が森林と林業問題についてこの場で質問されていたのを現場で改めて実感として受けとめる思いでありました。そして、過去数年間の本議会における先輩議員の質問と答弁を読み、現況が必ずしも好転しないどころか一段と厳しくなっていることを改めて痛感した次第です。そこで、つたない知識からでありますが、以下、質問をさせていただきます。
 森林は、天然のダム、生命の源、酸素の供給所──一昨日は、海の恋人という話も聞きましたが、森林の果たす役割の偉大さはもう私が語るまでもないところだと思います。県の山間部に入り、その山の頂に立つと、和歌山県の森の豊かさに大きな感動を覚えずにはおられません。人間が自然の小さな一部分であり、この大自然の中にはぐくまれ、生かされているという思いを抱かせてくれます。同時に、整然と植林された広大な人工林の姿を見るとき、営々とした人間の営みの偉大さをもまた教えられるものであります。
 しかし、ご承知のとおり、今、その森林がさまざまな困難にさらされております。県下の林業は、今、極めて厳しい状況に置かれています。木材価格は、十年前に比べると杉やヒノキは七五%以下に落ち込み、十五年前の最盛期に比べると五○%にまで落ち込んで、到底、経営は成り立たない状況であります。五十年育てた木を売っても、再植林し、数年の養林費を差し引くと、生計に回せる金は何ほども残らないと言われます。当然、仕事は安定せず、賃金は抑制され、労働者は減少の一途をたどるという悪循環が生まれています。植林しても、育林しても、こう安くてはどうしようもないという切実な声が聞こえてまいります。そんな中で再造林への意欲もなかなかわきがたく、過去、五年間伐採された面積から再造林された面積を引いてみると、これは極めて単純な計算ですが、四百五十ヘクタールがまだ再造林されておりません。憂うべき事態であろうと思います。
 しかし、そんな困難な中でも林家と森林組合の方々が、何とかこの困難を乗り越えたいと本当に真剣な努力をされている姿を目にしてまいりました。自分たちの生活を守り、村を守り、そして森林を守ることから逃げ出すことはできない、自分たちはこの山にしがみついてこの務めを果たすしかないのだと、その思いを語っておられた森林組合の方々や林家の方々、労働者の方々の声をお聞きしてきたところであります。
 国土保全という基本的な役割を果たす森林を保護・育成すること、それらの仕事に従事する方々の経営と生活を守ることは、行政の基本的な任務の一つであろうと思います。知事にあっては、和歌山県の森林と林業についての現状認識と、またその行政責務の認識についていかがお持ちなっているかをお示しいただきたいと思います。
 次に、この重要な森林資源の保全・育成と林業振興についての国政のあり方について、知事の所見をお伺いしたいと思います。
 私は、日本の森林と林業がかくも困難な事態になっている根本的な原因に国の林業政策があると思います。その典型的な政策が、全く無制限な外材輸入政策だと思います。この外材輸入は外国の森林破壊にもつながり、国際的な批判を浴びることになったわけですが、実際、インドネシア政府はついに原木輸出の禁止措置をとるに至り、タイは輸出国から輸入国になったと言われ、フィリピンの熱帯雨林は切り尽くされて一割以下になってしまったと報ぜられています。そのようにして安価な外材を輸入することが、相対的に高価な国内産材を圧迫し、国内の多くの林業、木材産業に打撃を与え、林業生産活動の停滞、木材産業の衰退を引き起こし、林業の担い手である労働者の確保すら難しいという状況をつくってきました。
 一九九四年の「林業白書」は、木材産業は、現在、円高の進行等に伴う外材輸入の増大、木材価格の低迷等により困難な状況に直面している、これに伴い、それぞれの時代と状況に応じて森林文化の展開とその世の中に対する文化の発信の場となってきた山村の活力も低下してきたと述べているところであります。
 しかし、今政府がやろうとしていることは、この無制限な外材輸入の規制どころか、さらに木材を輸入住宅という形で今後どんどんふやしていく方向になっております。これでは日本全体が依然として無防備に外材市場にさらされるわけで、国産材の出場は厳しい状態のままであります。これらの問題は国政上の問題ではありますが、和歌山の森林資源の保全・育成、林業の活性化と密接に関係したことであり、知事としても国に対する何らかの働きかけが必要なところであろうと思いますが、知事の所信をお聞きする次第です。
 次に、県としての森林保全と林業振興に対する従来の対策と効果、今後の対策等についてお尋ねをいたします。
 このような重要な森林と林業に対し、従来から県としても相当の手だてを講じてこられたところでありますが、仮谷元知事は、和歌山県は農業はまだ何とかなるが、林業を何とかしなければ大変なことになるという意味の答弁をこの場で行ったことがあります。それなりの力点として取り組んでおられたようでありますが、しかし、国の政治絡み、経済情勢の絡みの中で、実際、県下の森林と林業は厳しさの一途をたどっているのが現状であります。つまり、従来の施策が厳しさに対する防護策にまだなり切れていない、今までの延長線上の政策ではこの下降線をとめられない、上向きにすることができないということを物語っているものだと思います。
 生産コスト対策として、林道の建設が重点的に取り組まれてまいりました。年々その延長も長くなり、作業の効率化に資しているところでありますが、実際の林道延長の要望にはまだまだこたえ切れていない現状であります。和歌山県の山間部の地形からくる困難性もあるのでしょうが、全国と比較してもその格差がなかなか縮まらない。林道密度という山林面積に比した林道の比をあらわした数値がありますが、全国の数値と比べるとその格差がだんだんと広がってくる。すなわち、おくれの幅が大きくなってきている傾向さえ見られます。
 例えば、一九八六年(昭和六十一年)の林業密度の全国との差は○・三八でした。ところが、一九九五年(平成七年)の数値は全国比と比べると○・七六となっており、○・三八の格差が○・七六と広がってきている。毎年少しずつ格差が増大しているわけであります。その理由は地形が急峻であるということもあろうかと思いますが、この調子でいけばますます格差は広がり、本県のおくれが大きくなりかねません。また最近は、大型林道というか大型の生活基盤道路のような路線が整備されつつあります。非常に大事なことでありますが、生産現場近くの林道とか作業道の整備の要望が働く人々の間から非常に強く出されてきています。一九九二年(平成四年)ごろから、林道整備の事業費は年々十五億円ぐらいずつ大幅に伸びております。しかし、林道の延長の伸びは従来とほとんど変わりません。その伸びた事業費は専ら大型林道の方に投入されるからだと思いますが、それはそれで大変結構です。しかし、現場近くにもっと林道と作業道をという声にどうこたえていかれるか、所信をお聞かせいただきたいと思います。
 和歌山県の地形からくる困難性が林道延長をおくらせているとするならば、それを乗り越える予算措置がない限り、県民の要望にこたえられないことになります。国に対する特別措置の要求とか県独自の事業費の拡大とかということになると思いますが、その手だてが必要だと思います。いかがでしょうか。
 具体的な問題で、林道建設への受益者負担金が市町村によって異なり、平均五%程度に定められているようですが、実際には、作業の困難な中で超過負担のような形で一○%ほどになっていると聞きます。この軽減の要望も林家から出されたところでありますが、軽減の措置をお考えいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 生産コスト低減のための一方策として、作業機の近代化、高性能化が必要であります。既にさまざまな施策が進められているところでありますが、若手労働者の確保のためにも作業機の近代化は一層促進しなければなりません。しかし、この深刻な不振であります。林家も自力でそれを進めることが困難なことははっきりしています。当局の援助の策の強化が求められます、いかがでしょうか。
 また、担い手対策についてお尋ねをいたします。
 林業労働者は、減少の一途をたどっています。今では、県下に千数百人、森林組合に組織される労働者は六百人程度と言われています。厳しい労働、相対的に低い賃金、山村生活という不便さ、どれをとっても若い人々を引きつける条件ではありません。県もそれらを緩和するためにさまざまな施策を講じられておることは承知しておりますが、担い手対策は一段と強めていかなければならない現状にあります。賃金や福祉施策の一層の厚い支援が必要であります。そのための基金がつくられておりますが、この超低金利時代、基金の利息による施策の拡大はなかなか望めません。森林組合の作業員養成やUターン、あるいは林業体験者の滞在住宅の補助金制度などの拡充も含めて考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 また、直接的な雇用安定のための制度も必要だと思います。今、仕事がなくて、若い林業労働者が梅の収穫の手伝いに行っていると聞きました。梅雨時、林業労働は相対的に少なくなるときでありますが、意欲的に参加した若い方々が失望されないだろうかと胸を痛めます。雇用安定資金などの制度で若手労働者が今後とも一層安心して働けるような制度をつくる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 次に、販路の拡大についてお尋ねをいたします。
 木材製品の価格が木のぬくもりによって再評価され始めているとはいえ、まだまだ新建材や化学製品の力に押され、その市場を奪われております。販路の拡大のための総合的な施策が必要とされるところであります。知事の公約の百二十五番目にその公約があります。しかし、今までも公共建築物の木造化や木造住宅の推進などは言われてきたところです。現実にそれがなかなか進まない。公共建築物も、県下市町村の庁舎を見ても堂々たる鉄筋であります。学校などには極めて部分的に木造化の気配が見えますが、その姿はまれであります。県下の公共建築物の今後の新築、改築等の大まかな計画や見通しは既に手元にあると思われますが、それに沿って木造化──もちろん、すべてを木造というわけにはまいりませんが、計画的に進めることが必要だと思います。単に木造化をお願いしますと言うだけではなくて、計画化することが大事ではないでしょうか。また、それを県下だけではなく、木材生産県と共同して全国的な運動にしていく必要があります。国の方も公共建築物の木造化とは言っておりますが、それは政策化されておりません。県独自で、あるいは国や市町村が一緒になって財政的に誘導されるようにすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 また、民間需要拡大のための研究やPRも重要であります。阪神大震災の後、木造家屋の評価の下落に対して、木造住宅の優良性を積極的にPRすることの重要性についての質問が本議会でもありましたが、まことにそのとおりだと思われます。あの大地震で倒壊した高速道路の架橋のそばに、びくともしないでその姿を保持した木造住宅が何軒かあったそうですが、それらの住宅は龍神村の森林組合のチームが建設した家屋だったそうであります。法隆寺は、千年の歴史を私たちの目に映しています。鉄とコンクリートこそ文化だと考えていた思想を、「木の国」の思想で見直す時期に来ているのだと思います。研究機関の拡充やPRがもっと大規模にされるべきだと思います。県のイメージPR、一過性のリゾート博には莫大な宣伝費が使われました。和歌山の森林と林業のためにも大胆な県費の投入によるPRがあってもよかろうと考えるものですが、いかがでしょうか。
 私は過去に幾度か、先輩議員の森林、林業に関する質問を聞きながら学ばせていただいたところでありますが、このような問題は、私も含めてまだまだ県民の中に十分理解されていない面もあろうかと思います。「山の日」などという森の重要性を考える日をつくられておられるようでありますが、それを一層県民のものにするために努力が必要であろうと思われます。どのような計画をお持ちなのか、お示しをいただきたいと思います。
 以上で、第一問を終わります。
○議長(橋本 進君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員にお答えをいたします。
 まず、住宅問題に関連してでありますけれども、具体的には土木部長から答弁をいたします。
 ただ、一三六のマイホームプランなどに関連がございましたので、少しお答えを申し上げたいと思います。
 お話のように、私は昨年、県内各地域を回りまして、多くの方々との対話を重ねてきたわけであります。その中で、すべての人が和歌山に住んでよかったということが実感できるふるさとをつくることが県政究極の目的であろうということを私も実感したわけであります。特に勤労者の方々は、ゆとりと充実ということを目標に掲げておられました。特に、その中では持ち家対策が重要なこととして提起されたわけであります。そういうことで、私の政策の中にも持ち家プラン、マイホームプランというものを提案させていただいたところでございます。
 しかし、お話のように、現段階でご質問のございました具体的なことについてはまだ成案を得ておりません。今後、ご質問のございました住宅建設のコスト低減を初め融資の問題等、関係部局あるいは住宅供給公社を含めて総合的に研究をしていきたいと思っておりますのでご理解をいただきたいと思います。
 続いて、森林資源の保全・育成と林業振興の問題について、その基本的な考え方でございます。
 本県の三十六万四千ヘクタールに及ぶ森林は、木材生産機能のみならず、水源の涵養、山地災害の防止、生活環境の保全、保健休養の場、さらに中山議員からお話のありました漁業資源の振興のためにも、大変有益な機能を果たしておるわけでございます。県民生活にとってかけがえのない財産であると認識をしているところであります。こういったことから、「木の国」と称される本県の発展にとって森林、林業の育成は、古くから林業、木材産業が基幹産業となってきたことからも重要な行政課題だと考えてございます。
 従来も、林業生産基盤、生活環境の整備などについては進めてきたわけでありますけれども、本年から新たに山村21創造事業、県産材流通安定促進事業という市場に木材を出す場合の助成、そういう事業などに力点を置いて施策を講じました。森林、林業、木材産業は大変厳しい状況にありますので、山村地域の活性化も含めて取り組んでまいりたいと考えております。
 それに対する国策の問題でありますけれども、森林、林業を取り巻く情勢は、木材価格の低迷などにより大変厳しい状況にあります。特にご指摘がございましたけれども、昭和三十六年ごろに我が国の高度経済成長に伴う木材需要の増大に対処するために外材を輸入したわけであります。そのことが、近年の著しい円高基調の中で価格競争力を強め、需給構造の変化と相まって国内林業の低迷の要因の一つとなってきているということであろうかと思います。しかし、自由貿易体制が国際的にも推移している中で、輸入規制を行うということは極めて困難なことであるわけであります。
 県といたしましては、活発な林業活動を展開するために、外材に対抗でき、また産地間競争に打ちかつ施策として、林道網の整備による低コストの生産、質の高い労働力対策を進める森林・山村対策を国に強く働きかけてまいったところでございます。先日も林野庁長官にお会いし、現下の大変厳しい状況を国においても十分認識され、森林の維持、継続的な経営、山村地域の定住促進を図るために積極的に施策を講じてもらうように強く要請も行ったところでございます。今後も努力してまいりたいと思います。
○議長(橋本 進君) 土木部長長沢小太郎君。
 〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 鶴田議員にお答えいたします。
 まず、公営住宅法の改正についてでございます。
 公営住宅制度は、自力では最低居住水準を確保することができない住宅困窮者の居住の安定を図る上で大きな役割を果たしてまいりました。今回、制度の目的に照らして住宅困窮者の意味をもう一度見詰め直し、高齢者、障害者に一層配慮した制度とすることにより、本格的な高齢化社会における在宅福祉の基礎づくりを図ることとして抜本的な改正がなされました。
 改正内容は、入居者資格の的確化、家賃決定方式の変更、需要に応じた的確な供給、福祉施策との連携の強化など多岐にわたっております。
 ご質問の入居収入基準については、一般世帯では改正前の収入の上限月収十九万八千円に対して、改正後は月収約二十万円とほぼ変わらず、高齢者や障害者世帯では優遇措置があり、入居しやすくなっております。また家賃制度では、適切で公平な入居者の負担を実現するため、入居者の収入と住宅の立地条件、規模等を勘案して能力に応じた額をもとに算出することになっております。
 建設費補助では、第一種、二種の区分を廃止し、すべて二分の一に統一されましたが、補助裏の起債充当率の拡充、長期にわたる家賃対策費補助で手厚く補助されることに改正されております。これらの点も含め、今回の法改正は総合的に見ると、公営住宅事業のより一層の充実に寄与するものと考えております。
 今後とも、県といたしましては、法律の趣旨に沿い、真に住宅に困窮する者に対し良好な居住環境を備えた公営住宅の的確な供給に努めてまいります。
 次に、県の公営住宅の六期、七期五カ年計画についてお答えさせていただきます。
 第六期住宅建設五カ年計画では、良質な住宅ストック及び住環境の形成、並びに高齢化社会への対応等を目標として取り組んでまいりました。議員ご指摘のうち、公営住宅の建てかえ及び達成率について申し述べさせていただきますと、県内の住宅は建設後長期間経過したものも多く、老朽化していることから、実施している建てかえ事業を促進する中で戸数をふやすことも図ってまいりました。一方、新規建設事業については、昨今、公営住宅に適した用地の取得難等の問題も生じているのも事実でございます。県も含め各事業主体の実情を勘案すると、新規、建てかえ合わせて全体として一応の成果があったものと考えておりますが、質的な向上を求めた需要が多いことも認識してございます。
 なお、高齢者対策についてでございますが、これら建設に際し、すべての住戸について段差解消等、標準的な高齢者仕様の供給も行っているところでございます。
 次に、第七期住宅建設五カ年計画については、県民の住生活の質の向上を目指し、一、生き生きとした長寿社会を実現するための環境整備、一、地域活性化に資する住宅、住環境の整備、一、住宅建設コストの低減等、各施策について議員ご指摘の最低居住水準未満の解消も視野に入れながら、各事業主体と十分に連携を図り、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、入居資格等で公営住宅では対応できない中堅勤労者に対して、特定優良賃貸住宅制度の促進も図っていきたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 農林水産部長平松俊次君。
 〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 鶴田議員にお答えいたします。
 林道の整備に関する件でございますが、林業経営の基礎的基盤であるところの林道整備については、従来より広域基幹林道を中心に、支線林道、作業林道など林内路網の体系的な整備を進めているところでございます。
 林道密度については、お説のように、本県の林道は地域の実情から他所管の道路に移管されるケースが多く、林道密度は低い数字となっていますが、コスト低減の指標となる林内路網密度はヘクタール当たり十七・七メートルで、全国平均の密度を大きく上回ってございます。また、県単独事業である小規模林道開設事業等に加え、昨年度からさらに作業道緊急整備事業を実施し、林家の林業経営に密着した路網整備に努めるとともに、負担の軽減に努めたところでございます。今後とも、林業機械導入の条件となる林道、作業道の整備を進め、高性能林業機械の普及定着を図ることにより経営コストの低減に努めてまいる所存でございます。
 なお、急峻な地形が原因となって開設単価が他県と比べて高い状況にあるため、毎年国に対して予算枠の拡大を最重点として要望し、所要額を確保しているところでございます。
 次に、担い手対策についてでございます。
 林業で働く人々が年間を通してできるだけ安定した所得を確保できるよう、これまでの特用林産物を組み合わせた複合経営などの推進に加え、本年度から新たに農作業との相互支援体制づくりに取り組むとともに、就労条件の改善等、林業事業体が行う雇用環境を整備していくこととしてございます。
 また、Iターン、Uターン等の新規参入者のための事業により雇用の安定を図るとともに、昨年度から県単独で実施している定住促進住宅の整備をより一層進めてまいりたいと考えてございます。
 なお、社会保障対策については、県単独として掛金助成を行い、各種保険への加入を促進してきた結果、加入率は飛躍的に向上してございます。今後とも、基金を含め、担い手対策を強化していきたいと考えてございます。
 木材の販路拡大についてでございます。
 庁内連絡体制を強化し、現在、和歌山市に建築中の多目的ホールのフロア等に県産材を使用するなど、木の国にふさわしい公共建築物の木造化を推進しているところでございます。今後、こうした施策の一層の展開により、県民の皆様に木のよさを理解していただくとともに、昨年度実施いたしました耐震性モデル木造住宅などを拠点に県産材の利用推進を広く啓発普及していく所存でございます。
 また、森林資源の大宗を占める杉材の利用促進を図るため、表面圧密等、本県独自の技術開発を進めてまいりましたが、今後、特許取得した三技術を含め、民間への技術定着など、業界と一体となった試験研究の充実に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、県としての従来の対策と効果、今後の対策として、森林、林業に関する県民運動についてのご意見がございましたが、森林、林業の県民へのPRは、本県の七七%を占める森林の重要性を県民すべてが考え、育てるという観点から、「紀州山の日」の制定とPR行事の開催、「みどりの日」の緑の感謝祭の開催を初め、次代を担う小学生を対象に配布しております副読本「わかやまの農林水産業」の利用や教育の場に参加した森からのメッセージ運動の活動など、広く森林、林業に対する理解を県民に呼びかけてきたところでございます。今後とも、森林、林業、山村に対する理解が深まるよう、支援体制の確立に向け積極的に取り組んでまいる所存でございます。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、残り時間が少ないので短時間で行います。
 公営住宅法の改正の問題について答弁をいただきましたけれども、その答弁を聞いていますと、どこから見てもこの法改正は県当局にとってはバラ色に見えるようであります。私は先ほどから、県民の公営住宅に対する要望との関係でどれだけ強いものがあるかということを相当細かく述べたわけですが、その間をこの法律が埋めていくことにはほとんどなっていないという現実をどのようにお考えになっているのか、私は非常に不思議に思います。
 また収入基準の問題ですが、ほとんど変わらないとおっしゃられる。ほとんど変わらないのだったら、なぜわざわざ基準まで法律で変えるのか。変わるんですよ、これは。法改正によって五十万円の差が出てくるんです。平均値と言われましたけれども、実際はそのぎりぎりのところでたくさんの方々が、公営住宅に入居したいけれどもなかなかできないという事態にあるんです。そこの差を少しもお考えになっていないというのは非常に残念に思います。
 自治体の裁量がこういうところでこれからまだまだ発揮されますから。私がお願いしたのは、法にはたくさんの矛盾があるけれども、県民との間のこの矛盾を自治体の裁量で何とか埋めてほしいということです。法がバラ色であるならば、まるでそういう才覚が生まれようがないんですね。そこのところをしっかり研究をして、どう解決するか。これからまだ時間がありますから、考えてください。七期計画の中でそれを生かすように努力をしていただきたいと思います。
 森林の問題については、非常に多岐にわたって当局が努力してきておられるのを承知いたしておりますが、今後、この情勢の厳しさにかんがみ一段の努力をされるよう心から切望いたしまして、第二問を要望としてとどめさせていただきます。
○議長(橋本 進君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時四十五分休憩
  ─────────────────────
 午後一時四分再開
○副議長(木下秀男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 26番上野哲弘君。
 〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 通告に基づきまして、一般質問を行います。
 まず第一に、「熊野川」の名称についてお伺いいたします。
 昭和六十二年二月の定例県議会において、「熊野川くだすはや瀬のみなれ棹 さすがみなれぬ浪の通路」と後鳥羽上皇の和歌に始まる熊野川についての一般質問をなされたのは、長年県政に携わってこられた故植野為隼先生でありました。さらに、熊野川の名称というのは「紀伊續風土記」に「熊野第一の大河なるを以て熊野川の名あり」と記されており、太古より自然発生的に名づけられたものであると、明快に述べられております。紀伊半島の大河として紀の川と並び称される熊野川への思いを歴史を踏まえて述べられたものであります。
 その熊野川が何ゆえをもって「新宮川」と名づけられたのか、その名称の由来について国及び県当局の所見をお伺いし、同時に私が調査した内容を申し上げ、今後の対応について答弁を求めるものであります。
 私の記憶するところでは、この熊野川が「新宮川」として地域住民の前にあらわれたのは、たしか熊野川が昭和四十五年に一級河川新宮川として認定されてからのことであろうかと思います。昭和五十年以降でありますが、私が新宮市議会水対策特別委員を務めていた当時から、熊野川を「新宮川」と呼称することに疑問を抱いておりました。その理由たるや単純明快で、我々が学生であった昭和二十年代、三十年代の教科書はすべて「熊野川」となっていたからで、古文書等の文献においても大半そのように記されております。
 問題の「熊野」と「新宮」という名称についてでありますが、「紀伊續風土記」における「新宮城下」の項で次のように記載されております。「新宮の地は古の熊野村にして日本書紀神武紀に(中略)越狹野到熊野神邑」とあり、また「熊野年代記」には、神武帝から十二代目の景行天皇五十八年の項に「熊野新宮建」と記載されており、神倉神社に対する新しい宮の建立から「新宮」の名がつけられたものと言われておるところであります。
 本題に入ります。昭和三十年代、この水系におけるダム建設において和歌山県はこの川を「熊野川水系」として公式文書を作成しており、当時は行政においても、また地域住民のほとんども「熊野川」と認識していたはずであります。それでは、なぜ「新宮川」となったのか。全く根拠がないものなのか。調査の結果、そうでもありませんでした。それなりの文書が古文書等で残されております。江戸期及び現代の資料から「新宮川」の名称について検証したいと思います。
 まず、「紀伊國名所圖會」から引用します。「熊野川」の項では、次のように記されております。「熊野川 新宮城下の口にあり、水源は和州吉野より出る(中略)當國第一の河なり此地にて新宮川と号す」、すなわち新宮市街あたりを指して「新宮川」と称していると思われます。
 「熊野年鑑」においては、平安期の仁明天皇の時代(西暦八四五年ごろ)、「新宮川口砂山ト成」、続いて「新宮川口大鮫入」、また承応元年(西暦一六五二年)には「二月九日新宮川大水出川口へ大船四十八艘流人二百余人死」とあります。
さらに小野芳彦先生の「熊野史」では、「天和二年(西暦一六八二)」の項に「九月十四日御舟御館江戸鐡砲洲より寄進雑賀屋彌兵衛船積。十四日新宮川に入是御館の始也」とあり、速玉神社の御船祭の船みこしのことが記されております。
 以上の資料から考えてみますと、歴史的にも「新宮川」と呼ばれていたことは間違いないところでありますが、昭和八年、新宮市制施行時の新宮市全図では、「熊野川」と記載されている中、河口については「新宮川口」となっており、このことから、「新宮川」の名称はごく短い範囲の中でしか使われておらず、川本来の意味から申しますとある程度の長さが必要であり、川全体を「新宮川」と称するには少し無理があるように思います。
 ご存じのとおり、新宮市は旧新宮町と三輪崎町が昭和八年に合併したものであり、さらに昭和三十一年に高田村が加わったものであります。その面積は、旧新宮町八・六九平方キロ、三輪崎町十五・四七平方キロ、高田村五十五・五平方キロと、新宮面積はわずか八・六九平方キロであり、熊野川河口から二ないし三キロメートル程度の距離しかありません。この川の総延長百八十二・六キロメートルからすれば微々たる長さであります。
 その全体について、「東牟婁郡誌」は次のように記しております。「熊野川 其の上流は十津川及ひ北山川より成る。 十津川は其の上流を天ノ川と謂い、大和國大峰山脈中の大峯山に發し、支流洞川を合せ西南に流れ坂本に至りて十津川となり、南流して一大横谷をなして山嶽重疊の間を縫ひ曲折甚たしく幾多の支流を容れて七色に至りて本郡に入り、本宮を經て、九重村宮井に於て北山川と合す、其の間音無川、大塔川、笹尾川等の支流あり。 北山川は、大和國大臺ケ原山の西麓に發し、大峰山脈の東麓を南流し、一大横谷をなして本郡に入り、桃崎川、玉置川、入鹿川を合して西南に轉し、屈曲頗る甚たしく九重村宮井に於て十津川と合す。其の下流玉置口附近に於て峽谷をなせる部分を瀞八町と稱す。 十津川、北山川の相合してより川は熊野川と稱へられ小口川、楊枝川、高田川、鮒田川の支流を合せ、蜿蜒曲廻東南牟婁の郡界をなして東南流して新宮町を過きて熊野浦に注く」となっております。
 以上、「熊野川」、「新宮川」について申し上げましたが、この際、「新宮川」の行政名称を「熊野川」にしていただきたい旨の新宮市議会の決議、さらに植野為隼元県議の質問に対する仮谷前知事の答弁では流域住民の意見の統一を見て対処すると言われていることをあわせ、県当局の所見をお伺いいたします。
 続きまして、和歌山県の長期総合計画における各地域の定義づけについてお伺いいたします。
 このたび、和歌山市が中核市の指定に向けて新たな都市づくりへ向かおうとしております。将来の和歌山市の発展を考える上で、これらの決定はその推進に大きく前進するものと思われます。私の認識において、あらゆる可能性を秘めた都市とも言えます。
 その大きな要因は、大阪市を中心とした関西都市圏を構成する一員となったことであります。すなわち、二十一世紀はアジアの時代と言われる中、日本にとって関西新空港は最も重要な国際空港となりつつあります。その波及効果の期待があり、また明石海峡大橋の完成や紀淡連絡道の実現により大阪湾ベイエリア構想が大きく前進するものと思われます。さらに京奈和道路も早期に推し進められ、将来の日本国土形成に大きな変化をもたらすであろう太平洋新国土軸の基幹都市として大きく期待されるところであります。
 このような観点から地域振興を考えますと、単一の事業だけをもって活性化は図れないと思います。すなわち、一事業の波及効果が他事業に結びつき、それぞれが鎖となり、また輪となってこそ大きくその地域に根づくものであり、事業の関連性が活性化の一大要因になると思います。
 そのような意味から、紀北地域の周辺整備が考えられる中、中核市としての和歌山市が動き出した今日、どのような地域を考えておられるのか、お伺いします。また、知事が提唱された百万都市構想についても、あわせてお伺いいたします。
 次に、田辺・御坊地方拠点都市についてお伺いいたします。
 地方拠点都市法とは、人・物・情報等の東京一極集中の是正と地方の活性化を図り、国土の均衡ある発展を目指し、地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律として、平成四年八月に制定されたものでございます。
 当地域は、国土庁、農林水産省、通産省、郵政省、建設省、自治省の支援策をもとに、「にぎわい溢れる自立的発展圏の創出『文化・産業・交流のハーモニー』」を基本理念とし、地域の特性、自主性、及び創意工夫を生かし、構成十八市町村の役割分担を明確にしながら地域の一体的な整備を進め、都市的なにぎわいを初めとする多様な都市機能の集積、魅力ある就業機会の創出、さらには生活の豊かさを実感できるような良質の住宅地や住宅、レクリエーション空間、高い水準の公共サービスの提供など、職・住・遊・学の諸機能及びその前提となる都市基盤が整備された、住民にとってゆとりと潤いのある地域の創出とともに、県下第二の都市圏の形成を図り、県都和歌山市との均衡ある発展を目指すとなっております。
 そこで、その目指すところの目標と基本計画との関連性において統一された施策になっているのかどうか、所見をお伺いします。
 なお、橋本・伊都地域も本年三月二十二日に地域指定されたと聞いておりますが、当地域をどのような地域にしていこうと考えておられるのか、あわせてお願いいたします。
 さて、新宮・東牟婁地域についてでありますが、地方拠点都市は都市法の趣旨から申しますと、すべての地域が当てはまるものとは考えませんが、現在、当地域につきましては、熊野地域活性化対策の実行、熊野学研究センターの設立、紀南地方大規模イベント、さらに三重・奈良・和歌山三県知事によるサミット等、地域活性化に向けての県当局の取り組みがなされており、地域住民の一人として期待と感謝を申し上げるところであります。
 今、まさに二十一世紀を間近に迎えようとしているこの時期、国内外が大きく変動しているところでもあります。特に日本国内におきましては、大震災を初めとする防災問題、国内産業の空洞化による失業の増大、さらに金融システム破綻等の経済問題、オウム事件に代表される凶悪事件やエイズ薬害等、これまでにない社会悪が広がりつつあります。その中、国土の均衡ある発展のため、地方分権や規制緩和、首都機能移転等、さまざまな地域振興策が打ち出されているところであります。
 この際、特色ある地域として新宮・東牟婁に対してどのような位置づけをされようとしているのか、また三県による一点集中の振興策を打ち立て、なおかつ二十一世紀ビジョンを踏まえて新たな地域づくりに進むべきかと思いますが、ご所見をお伺いします。
 近年ますます財政的に弱体化している市町村がそれぞればらばらの事業をしていたのでは、その波及効果なり時代に即応した町づくり、地域づくりができないのではないか、大いに危惧するところであります。一度市町村の枠をぶっ壊して地域を考えるのも新たな発想として受け入れられるものと思いますが、いかがでしょうか。
 先日、老人福祉施設が中学校の階上に設置されているのをテレビで見ましたが、これから既成概念を超えた施策がますます増加するものと思います。県当局の特色ある町づくり、地域づくりのために和歌山県長期総合計画の果たす役割とその実施について所見をお伺いいたします。
 三点目の熊野学研究センターについてお伺いいたします。
 まず、熊野学の定義ということでお伺いいたします。この問題については以前の議会において質問しましたが、抽象論になったため質問と答弁が一致しなかったように思います。今回は具体的提案とし、県民の皆さんが理解できる質問にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 現在、研究センター設立のため努力されているようですが、熊野学の実践の場となるこの研究センターは、新しい発想のもと、中央の碩学の先生方が広い視野に立って地域学としての熊野の歴史文化を幅広く研究する施設であろうと理解いたします。この設立の基本となる定義についてお伺いいたします。
 なぜ私が定義にこだわるかということでありますが、この施設を単なる熊野の歴史文化を研究するだけの箱物にするならば、維持管理が精いっぱいで、地域における新たな可能性を引き出すことなく従来型の施設整備に終わってしまう、そのような気がいたすからであります。当然、地域学としての歴史文化の研究も大切ですが、さらにこの施設があらゆる社会問題にも対応できるものにすることが本来の熊野学の実践につながるものと考えます。
 熊野地域は心をいやす場所であると位置づけされております。つまり、心をいやすということを熊野学の実践としていかに具体的施策に結びつけるかであると思います。この質問を行う前に、あるビデオを担当課に見ていただきました。そのビデオの内容は、フランスの学者、アンドレ・マルローが国宝「那智滝図」を東京の美術館で鑑賞し、その後、現地で那智の滝と対面したときの模様を映したものであります。絵と現物との対比や自然について語っている部分、またフランス大統領ド・ゴールとの人生観のやりとりもあり、さらにアインシュタインが述べた「宇宙の存在には意味がある」との指摘に、彼はこの熊野の地を訪れて何かをつかんだようで、次のような言葉を残しています。「二十一世紀は再び精神的時代になるであろう。そうでなければ二十一世紀は存在しない」。この「精神的時代」とは具体的にどのようなことを指しているのかわかりませんが、熊野地域が二十一世紀における精神的時代に対応できるとしたら、熊野学の定義を明確にし、研究センターの活用を推進すべきと考えます。
 このセンターがこれまでの日本社会におけるゆがみやいじめ問題への対応、高齢化社会におけるもろもろの問題における解消等、歴史・文化・福祉・医療・教育の分野でこの熊野学を取り入れて、マルローの言う二十一世紀の精神的時代に船出すべきと考えます。
 最後に、このセンターの構成員である上田正昭先生が講演の中で次のように言われております。「この熊野学研究センターは、過去の歴史や文化を学ぶだけでは余り意味を持たない。この地域の歴史や文化を踏まえてこれからの時代に役立つ人づくり、地域づくりを目指すべきである」。当局の所見をお伺いします。
 以上で、終わります。
○副議長(木下秀男君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 上野議員にお答えをいたします。
 まず、「熊野川」の名称についてでございます。
 現行の「新宮川」の名称につきましては、大正五年に河川に認定されて以来、「新宮川」として行政上使われてきております。ご質問にもございましたが、一方、この川は昔から「熊野川」という呼び名で人々から親しまれ、使われてきたこともまた事実でございます。地域に親しみのある河川名を用いるということは、地域と密着した河川行政を行う上でも好ましいことではないかと考えてございます。
 しかし、いろいろの経過がございましたけれども、この問題に関しましては、本年六月に新宮市の議会において「新宮川」の行政名称を「熊野川」にしてほしい旨の決議があったことも聞いてございます。
 私といたしましては、関係する流域の住民の皆さん、さらに市町村等が「熊野川」という名称を行政名にしてほしいという意見の統一がなされるならば、関係する県あるいは国等に働きかけてまいりたい、そのように考えてございます。
 次に、和歌山百万都市圏構想と和歌山市に期待される役割等についてでございます。
 和歌山百万都市圏構想と和歌山市に期待される役割について、まず泉南地域と紀北地域は経済的にも文化的にも大変深いかかわりを持っておるということでございます。また、近年の関西国際空港の開港、あるいは近畿自動車道紀勢線、府県間道路の整備、そういうことによって両地域の緊密性はより高まってきていると思っております。さらに今後、関西国際空港の全体構想、あるいは太平洋新国土軸構想の推進などによりまして大いに発展が期待される地域であろうと思っております。
 今後、和歌山県が関西圏の一翼としてその役割を果たしながら発展していくためには、紀北地域と泉南地域が連携をして一体となった関西圏の新たな核となる都市圏を形成していくことが必要であろうと思います。
 私が提言させていただいている百万都市圏構想は、紀泉地域を「みどり」で結ばれた一つの都市圏としてとらえまして、自然と共生のできる国際的な複合機能都市の形成を図っていこうというものでございまして、そのためにはお互いの地域を結びつける交通網の整備を進めるとともに、和泉山脈や紀の川流域を初めとする魅力的な自然や文化資源を活用しながら、居住・文化・交流機能を適正に配置いたしまして、同時に産業の高度化と集積を図っていく必要があろうと思っております。
 和歌山市は、今後、交通ルートの結節点となるわけでございます。さらに、港湾整備や和歌山マリーナシティを核としたウオーターフロントの開発、そして多目的ホール等の複合拠点施設、住宅、下水道、公園、医療施設等の整備を進めることにより、高度な機能を持った国際都市として紀泉地域の中核都市となるものと考えておりますし、またならなければならないと思っております。
 今後、関係市町村並びに大阪府とも一層の連携を図りながらこの構想の推進に当たってまいりたいと存じます。
 他の問題につきましては、関係部長から答弁いたします。
○副議長(木下秀男君) 土木部長長沢小太郎君。
 〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 上野議員にお答えいたします。
 河川名のつけ方について、私の方から申し述べさせていただきます。
 まず、現在の新宮川について行政上どういう表現になっているかを申し上げますと、昭和四十五年、一級河川として官報に掲載された表現は、「新宮川(川迫川、天川、及び十津川を含む)」となっております。
 河川の名称のつけ方についてでございますが、行政上の名称は上流から下流まで統一した名称である方が管理が容易であるため、河川管理者としては一般的な慣行として下流の本川の名称を使用していると理解しております。
 なお、現在の新宮川は一級河川でございますが、一級河川の名称を変更する場合には、建設省が河川審議会の意見を踏まえて決定し、関係自治体の同意を得て告示するという手続を経るものと聞いております。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 上野議員にお答えいたします。
 田辺・御坊地方拠点都市地域は、「にぎわい溢れる自立的発展圏の創出『文化・産業・交流のハーモニー』」を基本理念とし、若者等の定住を促進する魅力ある県下第二の都市圏の形成を目指しているところでございます。この目標に沿って地域の一体的な整備を進めていくために地元市町村が基本計画を策定いたしましたが、この基本計画は地域内の役割分担を明確にした上で各市町村の整備を進めていくものとなってございます。現在、各種事業が着実に推進されておりますが、これらの施策は基本計画の方向性に沿って地域の一体的な整備を計画的に進め、前段申し上げた目標の実現を図っていくものでございます。
 次に橋本・伊都地域でございますが、本県北東部玄関口の役割を担う職・住・遊・学のバランスのとれた都市圏として自立的な発展が促されることを期待して指定を行ったところでございます。
 本地域をどういう地域にしていくかにつきましては、地元の市町村の考え方が最も重要で、現在、地域内の市町村が共同して基本計画の策定に取り組んでいるところでございます。県としては、この基本計画における目標、整備の方向性に沿って事業が推進されるよう、積極的に支援してまいりたいと存じます。
 次に、新宮・東牟婁地域の振興施策についてであります。
 新宮・東牟婁地域を取り巻く環境は確かに厳しいものがございますが、その一方で、当地域は海・山・川に恵まれた美しい自然や熊野三山を核とした信仰文化など、すばらしい個性と地域資源を持った地域でございます。国民的な価値観が文化志向、自然志向へと向かう中で、今後熊野地域の魅力は一層重要な価値を持ってまいるものと考えており、将来は市町村それぞれの特性を生かしながら、地域全体として統一感のある熊野文化保養圏とも言うべき地域を形成してまいりたいと考えてございます。こうした考えのもと、熊野地域活性化計画においては、産品販売や地域交流などの分野で、従来の行政を一歩踏み出した事業展開について検討を進めているところでございます。
 また、五月に行われた奈良県、三重県との三県知事会議におきましては、広域連携プロジェクト検討事業の実施など、今年度から県域を超えてお互いに協力し合いながら各種事業を進めていく旨の確認がされたところであり、そうした新たな取り組みも進めつつ、新宮・東牟婁地域の活性化を推進してまいりたいと考えてございます。
 次に、特色ある町づくり、地域づくりのため和歌山県長期総合計画の果たす役割とその実施についてであります。
 現在、新たな県長期総合計画の策定に向けて作業を進めているところでございます。新計画に盛り込む地帯別計画では、各地域の個性や特色を最大限に生かしつつ、議員ご指摘のように、市町村の枠や従来の行政分野にとらわれない広域的、総合的な発想に立って、地域相互の交流・連携を図ることにより、産業や文化の新たな創造を目指し、圏域が全体として発展していくことを基本理念とし、今後、市町村や地域住民のご意見をお聞きし、圏域のグランドデザインを作成いたしたいと考えてございます。
 計画を推進するに当たりましては、交流・連携を支える交通や情報通信の基盤整備に努めるとともに、地域の自主的、主体的な取り組みを支援し、県、市町村、県民が一体となった魅力ある地域づくりを実施していきたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 生活文化部長中村協二君。
 〔中村協二君、登壇〕
○生活文化部長(中村協二君) 上野議員にお答えをいたします。
 熊野学研究センターにおける熊野学の定義についてでございます。
 熊野には、信仰の聖地として注目を集めてきた歴史文化という時間の流れと、開発の波をかぶることなく保存されてきた自然環境という空間的な広がりがありますが、熊野学とは、このような熊野地域が持つ特性に着目し、学問として体系づけていこうとする新しい試みの地域学でございます。純粋な学術研究だけではなく、住民はもとより、学者、文化人、芸術家、観光客など、広く熊野を愛する者、熊野に関心を抱く者によって支えられ、人文科学や社会科学等、広範な分野を対象とするというのが熊野学の大きな特色と認識してございます。
 熊野地域のすばらしさを称賛するだけではなく、今後の熊野の発展、本県の発展にも寄与させようとするものであり、「再生の地」、「いやしの地」としての熊野のイメージを現代的な意味において活用する方法なども研究していければと考えております。
 いずれにいたしましても、地域学は全く新しい領域の学問でもございますので、学識者や関係者の方々等、多方面からのご意見を承りながら熊野学の形成に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(木下秀男君) 以上で、上野哲弘君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(木下秀男君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後一時四十一分散会

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