平成8年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


県議会の活動

議 事 日 程 第五号 平成八年三月十五日(金曜日)
   午前十時開議
 第一 議案第一号から議案第八十二号まで(質疑)
 第二 一般質問
会議に付した事件
 一 議案第一号から議案第八十二号まで(質疑)
 二 一般質問
出 席 議 員(四十六人)
 1 番 大 沢 広太郎
 2 番 木 下 善 之
 3 番 小 川  武
 4 番 吉 井 和 視
 5 番 下 川 俊 樹
 6 番 井 出 益 弘
 7 番 藁 科 義 清
 8 番 門  三佐博
 9 番 永 井 佑 治
 10 番 新 島  雄
 11 番 向 井 嘉久藏
 12 番 佐 田 頴 一
 13 番 和 田 正 一
 15 番 西 本 長 弘
 16 番 馬 頭 哲 弥
 17 番 谷  洋 一
 18 番 長 坂 隆 司
 19 番 高 瀬 勝 助
 20 番 堀 本 隆 男
 21 番 宇治田 栄 蔵
 22 番 宗  正 彦
 23 番 橋 本  進
 24 番 井 谷  勲
 25 番 玉 置 公 良
 26 番 上 野 哲 弘
 27 番 東 山 昭 久
 28 番 尾 崎 要 二
 29 番 野見山  海
 30 番 木 下 秀 男
 31 番 町 田  亘
 32 番 中 山  豊
 33 番 山 下 直 也
 34 番 鶴 田 至 弘
 35 番 森  正 樹
 36 番 村 岡 キミ子
 37 番 新 田 和 弘
 38 番 平 越 孝 哉
 39 番 森 本 明 雄
 40 番 神 出 政 巳
 41 番 松 本 泰 造
 42 番 冨 安 民 浩
 43 番 飯 田 敬 文
 44 番 中 村 裕 一
 45 番 松 本 貞 次
 46 番 大 江 康 弘
 47 番 和 田 正 人
欠 席 議 員(一人)
 14 番 阪 部 菊 雄
説明のため出席した者
 知 事 西 口  勇
 副知事 梅 田 善 彦
 出納長 中 西 伸 雄
 知事公室長 野 見 典 展
 総務部長 木 村 良 樹
 企画部長 藤 谷 茂 樹
 民生部長 木 村 栄 行
 保健環境部長 鈴 木 英 明
 商工労働部長 中 山 次 郎
 農林水産部長 日 根 紀 男
 土木部長 山 根 一 男
 企業局長 中 村 協 二
 以下各部次長・財政課長 
 教育委員会委員長職務代行者
   安 藤 精 一
 教育長 西 川 時千代
 以下教育次長
 公安委員会委員 中 尾 公 彦
 警察本部長 青 山 幸 恭
 以下各部長
 人事委員会委員長
   若 林 弘 澄
 人事委員会事務局長
 代表監査委員 天 谷 一 郎
 監査委員事務局長
 選挙管理委員会委員長職務代理者
   高 垣 修 三
 選挙管理委員会書記長
 地方労働委員会事務局長
職務のため出席した事務局職員
 事務局長 岩 垣  孝
 次 長 中 西 俊 二
 議事課長 松 田 捷 穂
 議事課副課長 佐 竹 欣 司
 議事班長 松 谷 秋 男
 議事課主査 山 本 保 誠
 議事課主事 長 尾 照 雄
 総務課長 岡 山 哲 夫
 調査課長 柏 木  衛
 (速記担当者)
 議事課主任 吉 川 欽 二
 議事課主査 鎌 田  繁
 議事課速記技師 中 尾 祐 一
 議事課速記技師 保 田 良 春
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 午前十時三分開議
○議長(橋本 進君) これより本日の会議を開きます。
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 【日程第一 議案第一号から議案第八十二号まで】
 【日程第二 一般質問】
○議長(橋本 進君) 日程第一、議案第一号から議案第八十二号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 39番森本明雄君。
 〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 おはようございます。
 地方分権については、一昨日、同僚議員から主として県から市町村に対する分権について質問がございました。でき得る限り重複を避けて、私は主として国から地方への分権について質問を行ってまいりたいと思います。
 我が国は、明治以来、中央集権体制の行政が行われてまいりました。確かに国の発展については能率がよく、有効的に機能してきたことはご承知のところであります。しかし、一応の目的を達成した現在、特に多元的、成熟的社会を迎えるに当たりまして、中央主権から地方へ、すなわち地方の時代という認識が非常に高まってまいりました。そういう時代背景の中で、昨年、地方分権推進法が成立されたということは、まことに意義あることだと認識するものであります。二十一世紀を目前に控え、新しい世紀に生きる次世代のために、ゆとりと豊かさを実感できる社会を実現していくためにも、地方分権の推進は今日の私どもに課せられた政治の最重要課題だと思います。
 地方分権の推進は、今や論議のときを超え、具体的な実現を図るときであり、そのために強力な政治のリーダーシップの発揮が求められていると思います。地方分権の推進に臨む知事の決意についてお伺いいたします。
 私たち公明では、昨年秋、全国の地方自治体を対象に、地方分権、規制緩和に関する重点項目調査を実施いたしました。この調査は、地方分権、規制緩和が進んでいないので特に困っていることを上位から五つ回答してもらうもので、四十七都道府県すべてから回答が得られました。調査結果では、知事が望んでいる権限移譲のトップは都市計画関係、二位は農地転用関係、次いで保安林の指定、解除、また優先順位は、一位が都市計画関係、二位が農地転用関係、次いで土地利用関係であります。
 地方分権推進委員会の中間報告案の要旨が三月十三日付全国紙に掲載されました。都市計画区域の指定は都道府県に、具体的な中身の決定は市町村に、農地の転用許可は都道府県になどの内容であります。先ほど申し上げた調査では、都市計画、農地転用関係以外にもかなり多くの自治体に共通する要望項目が明らかになりましたが、これらについて地方分権推進委員会の議論をまつより、都道府県レベルの共通要望のネットワーク化を図り、国を動かしていく改革が必要だと思いますが、ご所見をお伺いいたします。
 知事は、本議会冒頭説明の中で、地方分権を実現するため、「地方分権の意義、必要性について県民のご理解を得るよう努め、地方分権の推進を県民運動にまで高めたいと考えております」と述べました。県民運動の具体的内容、スケジュール、体制についてお伺いいたします。
 次に、四月一日からスタートする中核市について質問をいたします。
 和歌山市では、第二十三次地方制度調査会が内閣総理大臣に答申した平成五年四月直後から指定について積極的姿勢を示してきました。現市長も本年三月五日の本会議で、今後の移譲スケジュールについて、現在県との調整がほぼ整い、自治省ヒアリングがスタートしたところであり、正式な申請を夏ごろに、平成九年四月移行を目指してまいると述べています。
 中核市は、県という大きな行政単位の中で、和歌山市の個性を大切にしながら独自の市政をつくっていくことであり、市の窓口が市民と直接結ばれることにより、行政としても市民参加の行政を一層進めるとともに、よりきめ細かな住民ニーズや地域のさまざまな要望を市政に取り入れ、自主性あふれる行政システムを構築できればと思うと同時に、それがこれから地方分権を推進する一つの大きな切り札になればと期待するものであります。権限移譲による事務移行のための調整、引き継ぎ等の進行状況についてお伺いいたします。
 ただ、政令市に準じ権限が移譲されると言っても、全部県が持っていたものを和歌山市に移譲するにすぎず、本来は国が県にどれだけ権限を移譲できるのか明確にした上で、国、県、市の事務というように役割分担の見直しが不可欠で、国がそれをしないまま地方に分権推進の責任を押しつけるのは少し無責任だと思うのでありますが、ご所見をお伺いいたします。
 地方分権推進法では、各自治体は行政運営の改善と充実、行政の簡素化、ひいては行政の公正の確保、透明性の向上、並びに住民参加の充実を図ることが求められています。その対応として、本県では昨年、行政改革の基本的な考え方を示しました。その課題を克服するためには、県当局の姿勢と努力に求められることは言うまでもありません。また、地方分権の推進にあわせて、さらなる行政改革の推進がすべての自治体に求められていますが、県内自治体の取り組みの現状についてお伺いいたします。
 私は、地方分権推進に関する議論の中で、重要な概念といいますかキーワードというのは、国と地方公共団体との役割分担にあると思っています。これは、地方分権推進に関する基本理念にも明らかであります。すなわち、社会や経済の実態がどんどん変化しています。それを踏まえて、国と地方公共団体の役割分担を見直し、経済の実態に即した役割分担を明確にしていく、その場合、現行の国と地方公共団体との役割分担の間に乖離が必ず生じます。この乖離を埋めていく、これが地方分権であると思うのであります。こういう立場に立って、キーワードとも言うべき国と地方公共団体の役割分担に焦点を合わせて質問を進めてまいります。
 今述べました国と地方公共団体との役割分担のあり方を考えていく場合、基本理念にもあるように、目的は国民福祉の増進にあります。ただ、これには制約があります。すなわち、限られた資源という制約のもとで国民福祉を最大限に高めていくのに国と地方公共団体がどういう役割分担をすれば目的を達成することができるのか、こういう観点で地方分権を考えなければ、いたずらに議論が混乱するのではないかと思います。
 ここで学者の説を引用させていただきますが、ちなみに経済学では、限られた資源でもって国民福祉を最大限に増大させるためには三つの条件を満たさなければならないと言われています。一つは、限られた資源はこれを最も有効に活用しなければなりません。最適配分の実現であります。二つは、資源を有効に利用しても、それでつくられたものがどう分配されるのかという、適正な所得分配の実現であります。三つは、限られた資源は遊休の資源があってはなりません。失業があってはなりません。雇用の安定と物価の安定の実現であります。以上、三つの条件を整えていかなくてはならないと言われています。国と地方公共団体が行う行政は、実はこの三つの条件に非常にかかわっているわけであります。
 この三つの条件とのかかわり合いを、財政が三つの機能を持っていると表現しています。資源配分の機能、所得配分の機能、経済安定の機能であります。国と地方公共団体との役割分担を考えるとき、この三つの機能についてすべて検討していかなければ、これからの経済、財政を円滑に、かつ有効に運営していくことはできないと言われています。したがって、限られた資源の中で三つの財政機能をどのように生かして国と地方の役割分担を行っていくかというのが分権の基本理念、基本方針でなければならないと思いますが、ご所見をお伺いします。
 次に、三つの機能についてであります。
 最初に所得の分配機能について、国と地方の役割分担についてであります。
 財政が所得分配機能をどういう形で発揮していくかと言いますと、一つは生活保護費とか年金給付等の移転支出、もう一つは累進構造による課税によって進められていくと考えられます。現行の税制を見ると、累進課税の構造をとっているのは、まずは国税の所得税であります。しかし、地方税の個人住民税も緩やかでありますが累進課税の構造をとっており、そうした意味では所得の分配機能の中に地方公共団体も加わっていると考えられます。
 これまでの税制改革を振り返ってみると常に国税中心の税制改革で、地方税の改革は、いわばつけ足しだったと思うのであります。地方税の改革が本格的に行われたのは、昭和二十五年のシャウプ税制改革のときでありました。そのときにつくられた税目と今の地方税を構成している主要税目は、ほとんど変わっていないと思います。今後もこのような状態が続くならば、幾ら地方税財源の充実の確保と言ったって、言われるだけでないかと思います。その充実を図るためには、地方税を中心とした税制改革をやってもらわなくてはなりません。そして、所得の分配機能における国と地方公共団体の役割分担を明確にしてもらわなくてはならないと思います。ご所見をお伺いします。
 次に、経済安定機能についてであります。
 最近の国の総合経済対策を見てまいりますと、その中で公共事業が中心的な対策になっていますが、公共事業のかなりの部分を地方公共団体の単独事業が占めています。また、これまで行われてきた消費需要喚起のための所得税減税も重要な財政政策ですが、その場合でも、住民税の減税が所得税の減税にあわせて実施されます。このように見ると、経済安定機能においてもだんだん地方公共団体の役割が増大してきています。今、国での財政政策が難しくなってきています。今後は、地方公共団体の協力が不可欠だと思います。それをうまく組み合わせていかなければ、実効ある財政政策を実現することはできないと思うのであります。しかし、ここ三、四年の地方財政の構造を見てまいりますと、全国的に公共投資の約七割を地方公共団体が実施しており、その六割が地方単独事業となっています。その結果、地方債が累積しており、それに伴い公債比率がアップし、財政構造が悪化しています。そうした実情から、経済安定機能に関しても、国と地方公共団体の役割分担の明確化を求める必要があると思うのでありますが、ご所見をお伺いいたします。
 今、所得分配機能、経済安定機能の二つの財政機能を取り上げ、国と地方公共団体の役割分担について申し上げましたが、地方分権推進法ではこの二つについては余り触れられていないのではないかと思います。したがって、地方分権を推進していく立場で、その内容に不満を持つものでありますが、見解をお伺いします。
 次に、資源配分機能についてであります。
 我が国は市場経済であります。したがって、大部分の財サービスは市場を通じて供給されています。問題は、市場を通じて供給されない公共財を国と地方公共団体が受け持っています。この役割分担は、普通、国と地方の事務配分と呼ばれ、この事務配分の問題は地方分権の中心的テーマであります。限られた資源を活用して国民福祉の増進を最大限に図っていく、これは大変な問題ではありますが、個々の財サービスをどれだけ生産するかということで、その資源を配分していくわけであります。効率的に資源を配分していくためには、二つの条件が考えられます。
 一つは、需要側の条件であります。いたずらに物をつくっても、売れなければ資源が有効に利用されたとは言えません。まず、財サービスに対する需要者のニーズを正確に把握し、できるだけ合致する供給水準を決める、あるいは供給量を決める、これは国及び地方公共団体の実施する行政でも同じだと思います。国民が生活を続けていく上で行政に対してどういうニーズを持っているのか正確に把握しなければ、せっかく行政を実施しても住民の方が向こうを向いていれば大変な資源のロスになります。これは、国民あるいは地域住民のニーズを正確に把握して行政サービスの適正な水準を決めるため、計画事務と言われています。
 もう一つは、供給側の条件であります。今、我々が利用し得る最高の技術水準を使って低コストで供給することであります。普通、行政の効率と言われるのは、このことを言っていると思うのであります。これは、需要側の条件で決められたサービス水準に基づいて実際にサービスの供給を実施するので、実施事務と言われています。
 このように、行政はある行政サービスを供給する場合、計画事務と実施事務の二段階に分かれています。ところが市場メカニズムは、価格がうまく資源配分の調整的役割を果たして、価格が上がるとそこには需要が集まっています。その生産をふやす、価格は下がる、このように価格がシグナルの役割を果たしています。行政の場合、価格はありません。予算を編成してサービス水準を組み、そのサービス水準のもとでサービスの供給を果たしていきます。その場合、計画事務と実施事務、これをどう国と地方公共団体が役割分担すれば、先ほど述べた二つの条件が満たされ、効率的な資源の利用になるのか、真剣に考えなくてはならないと思うのであります。また、行政改革などもこの問題に全部帰着するわけでありますが、所見をお伺いいたします。
 事務配分については、今までは供給側の条件だけで決められてきたようであります。それには若干理由があったと思います。
 一つには、これまでの行政サービスは私たちの生活に密着しているサービスが多かったわけで、だれもが日常生活を行っていく場合に必要欠くべからざるサービスでありました。それだけに、そのサービスに対する人々、地域住民のえり好みは余りばらつきがありませんでした。
 市町村の事務で、例えば一般廃棄物の場合、一日の日常生活で排出する廃棄物の量は、どの自治体でも大体同じです。これを週二回程度収集し、衛生的に処理してくれればいいわけで、人口に一定量を掛ければ需要が出てきます。したがって、地域住民のえり好みを余り議論する必要がありませんでした。この仕事は、住民や地域社会にとって非常に身近なことから、以前から市町村の典型的な固有事務の一つに挙げられてきました。しかし最近、ごみのリサイクルが大きな社会的関心事になってくると、ごみの分別収集や選別は市町村レベルでできますが、集められた、選別されたごみの中の再生資源を企業が引き取り、原材料として利用するよう義務づけるような政策に関して、すなわち平成九年四月から実施される包装容器リサイクル法の対応などは、市町村レベルでできることは非常に限られ、県レベル、ひいては国レベルの対応に期待せざるを得なくなってきます。つまり、住民の生活あるいは地域社会にとって最も身近に見えるごみ処理事業ですら、リサイクルという新たな社会的要請にこたえていくためには、全県的な規模、全国的な規模、視野に立って行わなければならない施策や事業の実施としての側面を急速に帯び始めているのであります。この例から私たちが理解しなければならないことは、かつてとは異なり、今日ではごみの収集処理は市町村の事務といったような大きな分け方は適切ではなくなってきているのであります。分別収集は市町村の仕事でも、集められた後の再生資源のリサイクル政策は国や県の機能に求めなければならないような役割分担を考えなければならなくなってきていることを認識しなくてはならないと思います。
 もう一つは、日常生活にとって重要なサービスではありますが、一定水準のサービスを確保することが非常に難しい財政力の乏しい団体がかなりあり、そうした自治体にすべてを任せると地域住民が不自由になることから、国が一定のサービス水準を決めて実現するように国が財政的にサポートするということがあったと思います。こうしたことから、多くの場合、計画事務に国がかかわりを持ってきています。当局よりいただいた資料によりますと、平成六年三月三十一日時点での国の関与省庁別事項数は、総件数が三千二百九十三件、多い省は建設省五百九十三件、農水省五百十二件、自治省三百九十九件、厚生省二百九十九件の順となっています。我々の日常生活を考えてみましても、以前と比べて所得も上がりました。出生率は低下しました。地価も下がりました。我々の生活パターンが変化することは明らかであります。また、生活意識も大きく変わってまいりました。そうしたことから、もう一度需要側の条件、言いかえますと、計画事務を国と地方公共団体でどのように役割分担するかということを見直す必要があると思うのであります。ご所見をお伺いいたします。
 事務をタイプ別に分別すると、タイプ一は計画事務も実施事務も地方公共団体が受け持っているもの、タイプ二は計画事務は国と地方が参加し、実施事務はすべて地方が受け持つもの、タイプ三は計画事務は完全に国が決めて実施、事務は全部地方に任せるもの、以上三つのタイプに分けることができました。
 地方自治法第二条で、地方公共団体が行う事務を四分類しています。固有事務、団体委任事務、機関委任事務、行政事務であります。タイプ一が固有事務で、これは既に計画事務、実施事務とも地方公共団体が受け持っています。問題は、タイプ二に含まれる団体委任事務と行政事務、そしてタイプ三の機関委任事務であります。
 私がなぜ計画事務と実施事務にこだわるかということですが、どうしても計画事務を受け持つ機関が実施事務を受け持つ機関より上位に立ちます。管理する立場と管理される立場になります。やむを得ない面もあるかもしれませんが、そういったサービス水準の決定に当たって補助金や負担金がついていれば、ますますそうなります。したがって、見直しに当たって私が求めたいのは、全部一気にタイプ一の固有事務にとは言いませんが、移せるものはタイプ二のものをタイプ一へ、そしてタイプ三はタイプ二へ移していくということであります。私は、団体委任事務、機関委任事務の中で、ある程度の数の事務がタイプ二、タイプ三に残ると思います。その場合、そのままタイプ二、タイプ三でもいいと思います。その方が、需要側の条件、供給側の条件を満たして効率的な財源配分になるのなら。しかし、計画事務、実施事務を受け持つ機関が分かれているときには、どうしても管理するものとされるものとになることは、先ほど述べたとおりであります。そういった関係を少しずつ和らげていく方法がないものかと思うのですが、ご所見をお伺いいたします。
 形の上では、実施主体も計画主体も地方自治体が受け持っている団体委任事務は、法律や政令でもってナショナルミニマムを決めます。それに対して、地方自治体は若干の上乗せをしたりしてシビルミニマムを決定しますが、大半はナショナルミニマムで決まってしまいます。したがって、実質的には団体委任事務は国が計画主体であり、地方が実施主体で、そこには上下の関係が残ってしまいます。
 例えば、小さな問題ですが、保育所の入所についても団体委任事務ですけれども、厚生省の指図に基づかないとうまくいきません。保育所や老人ホームの建設に際しても制約されます。その団体が条例、規則等を制定して自由に事務が処理できることになっているにもかかわらず、実際はそうでないというのがたくさんあります。したがって、福祉の面で、国が機関委任事務から団体委任事務に移したにもかかわらず、ある種のコントロールを依然としてし続けているといったような指摘があったようであります。団体委任事務については、基準のサービス水準の決定を一定の水準で決めるのではなく、少し幅を持たせて一定の範囲で決める。その後どこで決めるか。それは、それぞれの地域の実情に応じて決めていく。もう少し計画事務に地方自治体が参加できる余地をふやしていかなければ、地方分権は進まないと思います。そして、徐々に幅を広げていって最後は撤廃する。私はこれが実際の進め方だと思うのでありますが、所見をお伺いいたします。
 機関委任事務は、地方公共団体の機関が国の委任を受けて実施する事務であります。厳密に言いますと、地方公共団体の事務ではありません。この事務は、例えば所管大臣を上級官庁、知事や市長を下級官庁と位置づけて、国家行政組織法上の位置づけになっているようであります。そして、それで実施されます。したがって、この事務執行に関する限り、知事や市長は大臣の指揮監督を受け、命令に服することになります。命令に服さない場合、例えば今回の沖縄県知事の、住民である土地の所有者の意向を尊重し、署名拒否は当然なことと言えるのでありますが、しかし法律は知事に代理署名を義務づけています。現在、大田沖縄県知事が「署名拒否は県民の意向」と、県民の心情を代弁する形で国と裁判で対立しています。
 また、機関委任事務の実施に必要な経費は、原則としてその地方公共団体が全額を負担することとされています。これは地方財政法に規定があります。ただ、国勢調査とか国政選挙に関する事務については全額国が負担、旅券とか戸籍の謄抄本のような場合、手数料を取ることによって財源を調達しています。生活保護費などの地方負担分については、地方交付税の基準財政需要額に参入されると聞いていますが、国と地方との軽費負担区分が不明確のため、結果的には地方に財政負担を強いてきました。さらに、地方公共団体そのものの事務ではありませんので、地方公共団体の議会の議決権はこれに及ばないものと解されています。そして、機関委任事務はその処理に当たって、地方の固有事務や団体委任事務と職員において区別して、これを意識していることはほとんどないと思います。
 東京都地方分権検討委員会の答申が昨年出されていますが、これによると、東京都で行われている機関委任事務の数は五百五十項目に及んでいます。その報告を要約すると、問題点として、第一に、法令や通達で全国一律に細かく規定された基準や運用の範囲内で行うこととされており、地方自治体に裁量の余地が少ない、第二に、行政事務処理手続の各段階で法令に基づく国の関与が行われるほか、法定外の事前説明や非公式な協議などが求められ、多大な労力と時間が必要となっている、第三に、企画立案の内容や基準を国が全国一律に定めているため、その地域の個性を盛り込んだり、あるいはほかの施設との整合を十分に図れない等の弊害があると指摘をしています。
 このような変則的な事務が都道府県においては七、八割、市町村では三、四割を占めていると言われています。地域住民の公選によって選ばれた知事や市長が一方的に国家行政組織法上に組み込まれ、下級官庁として主管大臣の指揮監督や命令に服さねばならないとか、あるいは住民が選んだ地方議会の統制に全く服さないような事務がその地方公共団体の事務の過半を占めている、こういう実態では、憲法九十二条が定めている「地方自治の本旨」とは到底相入れないものであると思うのであります。この制度が存続する限り、地方自治体の長は、一方では直接公選された住民の代表であり自治のリーダーでありながら、他方では国の機関でもあるという二つの帽子をかぶり続けることになります。
 このような機関委任事務に関する問題点は、これまでにも再三にわたって指摘されてきたと思います。特に、昭和六十一年に第二十次地方制度調査会によって、機関委任事務の整理合理化を一層推進すべき必要があるとの答申がされました。これを受けて、同年、機関委任事務の整理合理化法が制定されましたが、具体的な改善は一向に進んでいないのが実態だと思います。地方分権推進委員会では、本年一月、現行の五百六十一の機関委任事務を原則廃止し、七割以上を地方自治体事務へ移管するよう提言する方針を固めたと聞いています。機関委任事務を原則的に廃止し、その権限を財源とともに速やかに地方に移管すべきであると私も主張します。
 本県では、昨年十一月、行政改革大綱を公表しました。その中で、地方分権推進のための基本的な考え方として、機関委任事務の整理を主張しています。知事にお伺いいたします。
 知事を下級官庁と位置づけて前総理大臣に訴えられた沖縄県知事、同じ位置づけの知事としての感想と機関委任事務に対する所見をお伺いいたします。
 総務部長には、機関委任事務の本県の実態とその弊害、原則的廃止についての所見と整理への具体的取り組みについてお伺いいたします。
 これまで、地方自治の議論の中では、地方自治は二つの側面を持つと言われてまいりました。一つは団体自治、いま一つは住民自治であります。これが相まって、地方自治の前進あるいは確立があると言われてきたわけであります。地方自治は、地方公共団体が自主性と自律性を持ち、国の干渉や関与をできるだけ回避して、独自の行財政を展開していくことであったわけであります。その条件として言われてきたのは、自主財源の確保でありました。推進法では、そのことを「自主性及び自律性を高め」と表現されていますので、法の目的の一つが団体自治の確立にあることは明らかであります。住民自治は、地方公共団体が一組織として民主的に運営され、住民のニーズを酌み取ってそれを行政に反映させていく、それで私は住民自治は成り立つと思います。そして、住民自治がきちっと行われるならば、法に言われているように、個性豊かな活力に満ちた地域社会が実現していくだろうと思います。
 先ほども少し触れましたが、地方自治法が昭和二十二年に制定され、ことしで四十九年になります。この間、個々の自治体は地方自治確立のため努力を積み重ねてきました。昭和二十五年にシャウプ勧告に基づきシャウプ税制が確立され、その勧告の中で地方自治の確立のためには地方が独自の財源を持たなければならないということで、今の地方税制の大体の骨組みができました。ところが、当時から三割自治という言葉が言われてきたようであります。そして、四十九年間、この自主財源比率がどうように推移してきたのかと言うと、現在全国平均は四○%程度で、この間、高度成長、安定成長もあったわけで、一○%というのは高く評価できないと思います。なぜ自主財源比率が高まっていかなかったのか。今、税源配分を見ると、大体、国税六五%、地方税が三五%、この比率はずっと余り変わっていません。こういう状態のもとで自主財源比率を引き上げると言ったって、これはできないと思います。
 地方分権推進委員会が二月、大蔵省と自治省から地方税制や地方財政について意見を聞いたところ、地財法第十六条に基づく国の補助金約四兆円を三年以内に半減させ、削減した約二兆円分を地方交付税など自治体の自主財源に上乗せするという地方六団体の提案について、大蔵省は税源の移譲は難しいと消極的な考え方を示したと報道されていました。推進法では「地方財源の充実確保を図る」とあっても、この文言は非常にそらぞらしく私には映るわけであります。なぜ、国税と地方税の税源の比率が変わらないのかということです。
 大蔵省は、国から地方へ税源を移した場合、今でさえ地方公共団体間に大きな財政力の格差があるのにもっと広がる、その格差是正はできないのではないかと言います。自治省は、地方税の制度を見ると、現行の制度においても国税に比べて地域的な偏在度は少ないと思っているが、地域間に経済力の格差がある現状においては、ある程度の税源の偏在というのは避けられない、今後、地方分権の流れに沿って地方税源の充実を図っていく場合でもこういった問題は前提にせざるを得ないと言っています。
 シャウプ税制以降、何回か抜本的な税制改革が行われてきました。しかし、いつもそこでの中心的な改革の税目は国税で、地方税については国税に合わせるような形で、いわばついでにといいますか、そういう形で税制改革がなされてきたと思います。今の税体系を構成している主要税目は、県税は県民税と事業税であります。市町村税は、市町村民税と固定資産税であります。したがって、地方税制に関してはシャウプ税制のときと何ら変わっていないということであります。今の税制を前提に続く限りは、国から地方へ税源を移せば格差が広がることは当然であります。抜本的な地方税制の改革を求めていく必要があると思いますが、所見をお伺いいたします。
 次に、住民自治についてであります。
 住民自治というのは、形式的には議会制度をとっています。首長も公選ですので、形の上では住民自治は整っていると思います。問題は住民自治が確立しているかどうかということで、地方公共団体が住民のえり好みを正しくとらえて、それを満たしていくために行政にどのように反映させていくかということだと思います。それができて、初めて住民自治が実質的に一応確立したと言えると思います。
 ところが、今までの地方自治の議論の中で団体自治だけが議論されてきました。先ほど述べたように、自主財源の確保や三割自治の議論であります。そういう意味では、推進法の議論の中で住民自治が真っ正面から取り上げられたことは意味があると思います。住民のニーズをできるだけ正確に把握して、それを行政に反映していくためには、個々の地方自治体が相当力を持たなければなりません。企画立案、調整、実施と、総合的に行政を展開していかねばなりません。
 今まで企画立案は、国がいろいろな形で数多く関与してきました。法律、政令とかで。したがって、地方公共団体が本当にやってきたのは、極端な言い方をすると実施だけだったと思います。そして、その実施の段階で、必要な行政能力は技術的な問題が多かったと思います。しかし、総合的に企画立案からやるということになると、多くの情報収集、分析、住民ニーズの確認、それに基づいての企画立案、これは相当な行政能力が要求されます。この行政能力について、今まで余り議論されていません。なかなかとらえどころがないわけで、行政能力にどれくらいの格差があるのかわかりませんが、あると思います。ただ、あったとしても、調整することはできません。ここにこれからの地方自治、特に住民自治を推進していく場合のポイントがあるのではないかと思います。
 今まで、なぜ企画立案のところで国がいろんな形で関与してきたのかと言うと、私は地方公共団体の行政能力に対する国からの過小評価があったのではないかと思います。しかし、四十九年間の地方自治確立のための努力によって、相当な力をつけてきています。しかも、これまでは行政に対するニーズというのは、個々の住民の間でそれほどばらつきがあったわけではありません。このニーズを酌み取って行政に反映するのは、住民に近い地方公共団体であります。ですから地方分権推進が問題になるわけで、今まで国が関与してきた計画立案のところを地方に任せてもらうことが大事であります。ここが問題であって、今後推進計画がつくられていくに当たってどれだけ分権が進むかということです。これまでのように地方自治体の行政能力を過小評価しているような立場を取り続けるならば、推進法があっても進まないと思うのでありますが、所見をお伺いいたします。
 以上で、質問を終わります。
○議長(橋本 進君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 森本議員にお答えをいたします。
 まず、地方分権についてであります。
 県民の立場に立った県政を推進していくためには、必要以上の国の関与をなくすとともに、国から地方への権限移譲と地方自主財源の確保が必要でございます。地方分権が名ばかりの分権とならないように、財政、税制の問題なども含め、言うべきことは言うという姿勢で本音の議論をしてまいりたいと考えております。
 次に、都道府県レベルのネットワーク化を図り、国を動かすというご提案でございます。
 私も、各都道府県、市町村と協力しながら働きかけを進めていく必要があると考えてございます。現在、全国レベルでは、地方六団体が共同で地方分権推進本部を設置して、地方の共通の要望を取りまとめた上で、地方分権推進委員会が作成する分権の指針が地方の意見を取り入れた内容となるよう働きかけを行っているところでございます。また、近畿知事会においても、地方分権推進委員との意見交換や共同の要望の申し入れを行っており、こういった連携をとりながら地方分権の実現に向けて努力してまいりたいと思っております。
 また、地方分権の推進は、行政のみではなくて世論の盛り上がりがあってこそ実現できるものと考えております。そのためには、地方分権は、国と地方との権限争いではなくて、県民一人一人にとっても意味のあることだとの認識を持っていただく必要があるわけであります。平成八年度においては、五月ごろから啓発紙の各戸配布や講演会の開催などを積極的に行って、地方分権の推進を県民運動にまで高めていきたいと考えておるところでございます。
 次に、地方分権と中核市制度との関連についてでございます。
 住民に身近な行政は、住民に身近なところで実施するという基本的な考え方から、一定の要件を備えた市の権限を強化する中核市制度は意味のあるものだと考えております。
 翻って考えますと、地方分権の本質は、国は何をすべきなのか、地方公共団体は何をすべきなのかといった国と地方公共団体との役割分担を明確にすることにあると考えております。この原則に基づいて、県から市へ権限を移譲するという中核市制度にとどまらず、国と地方が適切に権限を分担し合う仕組みをつくっていくことが何よりも重要だと考えております。
 次に、行政改革の推進と地方分権に関してでございます。
 国が地方分権に反対する理由の一つは、地方公共団体の行財政運営に対する不信があると言われておるわけでございます。こういった不信に対して、そうではないんだということを示すために、地方公共団体が自主的に行財政運営のあり方を見直し、地方分権の時代を担うにふさわしい体制をつくることが必要でございます。これが今回の行政改革の大きな目的でございます。
 なお、行政改革の推進に当たりましては、国と県との関係調整が必要な事項が予想されております。結果的には、議員ご指摘のように、行政改革を進める上で地方分権を国に働きかけることが必要になる場合もあると思われます。
 次に、機関委任事務についてでございます。
 機関委任事務に関連して沖縄の問題がございました。知事が地域の実情を考慮した上で決断したことに対し、機関委任事務であるという理由で国から訴えられるなどということは、一般県民サイドからすれば理解しがたいことではないかと思うわけであります。そういった意味で、機関委任事務制度は廃止し、原則として地方公共団体の事務にすべきであると考えております。
 以上であります。
○議長(橋本 進君) 総務部長木村良樹君。
 〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 中核市制度についてのご質問でございます。
 この制度は、地方制度調査会の答申を受けて、平成六年の地方自治法の改正により創設されたものでございます。本制度は、指定都市以外の都市で、規模、能力が比較的大きな都市について、その事務権限を強化して、できる限り住民の身近で行政が行えるようにするための制度でございまして、全国で二十八の市が対象となり、そのうち十二市がことしの四月から中核市として指定されているということでございます。
 和歌山市については、来年の四月一日の指定を目指して、昨年、市役所の中に中核市推進室を設置し、現在、県の関係課と移譲事務の調整、事務の引き継ぎ等について打ち合わせながら、自治省との間でも事前の協議を行っているところでございます。県といたしましては、今後、和歌山市が中核市に移行するに際して、支障なく進むように十分な調整を行っていきたいと考えております。
 次に、行革についての県内の市町村の取り組み状況でございます。
 県内の市町村においては、従来、簡素で効率的な行政の確立を目指し、自主的な行政改革に取り組んでまいったところでございます。しかしながら、最近の地方分権の推進という大きな流れの中で、改めて行政のあり方を見直していく必要があることから、現在、十六市町村が新たな行政改革大綱を策定しているほか、その他の市町村においても推進本部等をつくり、年度内の策定を目指して取り組んでいるところでございます。
 県といたしましては、地方分権の時代にふさわしい自主的な行政改革の推進に積極的に取り組んでいただけるよう適切な助言等を行ってまいりたいと考えております。
 次に、経済学上の政府の三機能と地方分権の関係についてのご質問でございます。
 中央政府、地方政府の役割には、議員ご指摘のとおり、資源の配分、所得の再配分、経済の安定化という三つの機能がございます。これまで、この三つの機能については、どちらかというと中央政府の役割が大きいと言われてきましたけれども、近年では所得の分配や経済対策等において地方の役割もまた非常に大きくなってきております。今後、地方分権の推進に当たって事務配分の見直しを行う際には、このような政府の三つの機能に着目しつつ新しい制度を考えていくことが重要であるという議員のご指摘については、まことに同感でございます。
 一昨年策定された地方分権推進法では、分権推進に関する基本理念や基本方針を中心に定められておりますので、このような観点が細かく定められているわけではございませんけれども、いずれ策定される地方分権推進計画の中で、この三つの機能をどのように国と地方で分担していくかという視点が非常に重要になってくるものと考えているところでございます。
 次に、資源配分や計画事務における国と地方の役割分担ということでございます。
 ご質問にもございましたように、計画を立てるためには、需要者すなわち住民のニーズを正確に把握することが必要でございます。本来、地域住民のニーズを最も的確に把握できるのは地方公共団体であるにもかかわらず、従来、全国的統一性が必要であるとか、全国的規模、視点で実施する必要があるという理由のもとに、住民から遠いところにある国が計画を立てて地方公共団体がこれを実施するという体制がとられてきたことは、お説のとおりでございます。しかしながら、国はナショナルミニマムの基準を示せば足り、ナショナルミニマムを確保した上で、どこまでの行政サービスを提供するかは、むしろ地域の実情、住民の要望に応じて決定されるべきものでございますので、今後は国の役割を限定し、地域のことは地域で計画し実施するという体制をつくることにより、最も効率的な資源配分を目指すことが必要ではないかと考えております。
 次に、団体委任事務、機関委任事務についてのご質問でございます。
 現行の制度には、議員ご指摘のような弊害がございまして、特に機関委任事務制度は、外見上は県が実施しながら決定権が県にないために、県民の皆様から見れば責任の所在がはっきりしないといった問題や、国が定めた画一的な基準が県民の声に優先するといった問題が生じてきているところでございます。このような点を踏まえ、現在、地方分権推進委員会において、これらの事務の抜本的な見直しが検討されているところでございます。
 先日の新聞報道によりますと、この委員会の中間報告の原案では、「機関委任事務制度を廃止し、原則として自治事務とする」、そしてまた「国政事務として残さざるを得ないものについては、国と地方公共団体を対等に位置づけた法定受託事務を設ける」とされており、基本的に地方公共団体の主張に沿ったものであると評価いたしております。
 次に、団体自治、住民自治と自主財源の関係を中心とするご質問でございます。
 現行の地方税制については、議員ご指摘のように、地方の歳出規模に比べて地方税収の割合が小さいことや、都道府県税が法人所得課税に偏った不安定な構造になっているという問題があることが指摘されております。
 地方分権の推進が時代の要請となっている今日、地方公共団体がその責任を適切に果たしていくためには裏づけとなる財源の確保が必要であり、この財源の充実確保を図るため、安定的で伸長性のある税体系の確立について、引き続き国に対し要望してまいりたいと考えております。
 次に、国の地方不信に関するご質問でございます。
 戦後、今日の地方自治制度が誕生して既に五十年が経過し、地方は十分業務に習熟しているにもかかわらず、国が依然として地方に関与していることは、議員ご指摘のとおり、国が地方の能力を過小評価していることのゆえであろうかと考えております。
 国といたしましても、現在の大きな時代の流れの中で、このような地方不信の発想から脱却し、地方公共団体が行う事務の適正さは、国の後見的監督ではなく、議会や住民によってチェック、確保される地方自治本来のあり方を再認識していく必要があるのではないかと考えております。また同時に地方公共団体の側でも、当然のことながら、適正な行政の実施に努力すべきことは必要でございまして、本県においても昨年策定いたしました行政改革大綱にのっとって、地方分権の時代を担うにふさわしい効率的な行財政運営の構築を進めてまいっておるところでございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──所定の時間が過ぎておりますが、再質問されますか。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(橋本 進君) ないようでございますので、以上で森本明雄君の質問が終了いたしました。
○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 31番町田 亘君。
 〔町田 亘君、登壇〕(拍手)
○町田 亘君 イヴァン・イブノビッチの物語の中に、このような話があります。
 シベリアの平原を三人の子供を抱いてそりを走らせていたご婦人がおりました。シベリア名物の吹雪の中で聞こえてくるかすかな餓狼の声、オオカミの群れの声であります。聞こえるたびに、婦人のむちは空を打っておりました。そして、婦人の心の中には生に対する執着、死に対する恐怖が煮え湯のように沸き立っていたのであります。やがて、オオカミの群れはすぐそこまで近づいてきました。婦人は何を思ったのか、一人の幼児をそりの後ろに投げ捨てました。しばらくの間は、肉をはむであろう、骨を砕くであろう、血をすするであろう餓狼の声も遠ざかっておりましたが、一たん血を見た餓狼は、何の容赦もあらばこそ、再び、三たび追いかかってきました。それで、ついに三人の子供を犠牲にして死の恐怖から逃れた婦人は、一軒の杣人の家にたどり着いたのであります。そして、いろりの端に大きなまさかりを置いて座っている杣人に、今の三人の子供を犠牲にして死の恐怖から逃れてきたことを涙ながらに訴えたのであります。これを聞いた杣人は、突然立ち上がるや否や、まさかりを持ってこの婦人の首に、「神の命令だ」と言って打ちおろしたのであります。
 この物語は、私のこれからの質問の趣旨とは少し的が外れているかもしれませんが、人が人を裁く矛盾を考える今、しかし人が人を裁かねばならない現実を思うとき、私はこの「神の命令だ」と言って打ちおろすイヴァンのおのを振るい得る人、知事もまた裁きのおのを持たなければならない第一人者でもあり、その宿命を持つのであります。それは、人事権であります。末端で働く人、すばらしい能力を持ちながらも日の目を見ない人、世渡りの上手な人、おのおの個性の強い人、とかくうわさのある人、県政を明るくするも、士気を奮い立たせるも、人事は知事の重大な任務であると思うのであります。「知事は孤独である」と、仮谷前知事もよく言っておらました。
 先日ある新聞に、地方自治体において初めて鳥取県で逆勤務評定、すなわち上司を部下が査定する制度を今年度より取り入れたと載っておりました。知事も、時には縄のれんをくぐりながらおでんをつつき、また県庁食堂にも行き、職員との雑談の中で人生の機微にも触れながら、すばらしい人材を見つけ、年功序列ではなく、遠慮会釈のないイヴァンのおのを振るいながら西口カラーを出して、大いなる刷新に期待するものであります。知事のお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
 知事とは「知る事」と書きます。あなたは、一昨年、県庁を去り、一県民となって県内をくまなく歩き回られました。県職員時代も、副知事になってからも、一度も行ったことのないところもあったと思います。いろんなことを聞き、見、人情の機微にも触れられ、選挙とはいかに人に迷惑をかけることかと、苦しみも味わわれたことと思います。また反面、人の心の温かさに涙されたこともあったと思います。初登庁の日、職員から受けられた花束を何のてらいもなく、昼夜手伝ってくれた運転手さんに渡されました。あの厳しい戦いがなかったなら、また仮谷前知事から当然のようにバトンタッチされていたなら、あの心遣いはできなかったでありましょう。県民は、あなたのまことの心を知り、和歌山のかじ取りをあなたに託したのであります。
 二十一世紀まであと四年、和歌山新時代に向けてのスタートの年であり、今回初めての西口予算を編成されたわけでありますが、私たち紀南地域の住民にとっては、いかに紀南の発展に配慮していただいたのかが最大の関心事であります。
 そこで、まず知事から総括的に紀南地域の現状をどう認識されているか、そして今回の予算にどのような配慮をしていただいたか、お伺いしたいと思います。
 紀南と言えば、常々、農林漁業など第一次産業の育成や、そのすぐれた自然や歴史を生かした観光リゾートの振興に力を入れていただいております。南紀白浜空港ジェット化の開港、道路を初めとした交通網の整備等々していただいておるところであり、感謝を申し上げながら、さらに努力をお願いするものであります。
 人とその地域が生き生きと活動してこそ国土が形成され、均衡ある国土の発展、県土の発展があると思うのであります。我が和歌山も、徐々にではありますけれども、人口がふえてまいりました。しかし、近畿各府県を見たとき、我が和歌山の人口が百万人になったのは昭和三十年であります。その年、隣の奈良県は七十六万人、現在は百四十二万人で約二倍であります。兵庫県も同様、昭和三十年が三百六十万人、現在は五百五十万人。滋賀県、三重県、しかりであります。和歌山県は、八万人の人口がふえるのに四十年もかかったのであります。そして、近畿各府県の年齢構成を見たとき、一歳から十七歳、すなわち高校卒業までは近畿各府県とも比率は余り変わらないのでありますが、大きく変わるのは青年層であります。大学に、就職にと和歌山を離れていってしまうのであります。大学を出てふるさとに帰ろうにも就職もなく、都会での生活を余儀なくされているのであります。決して、高齢者が多いのではありません。若者が少な過ぎるのであります。
 ここで、私ごとでお許しをいただきたいのですが、先般、今は亡き私の父の書類を整理しておりました。父の若かりしころの新聞のスクラップ等がたくさん出てまいりました。終戦後初めて衆議院議員選挙が昭和二十一年四月に行われております。すなわち、帝国議会の選挙法から新しい選挙法に改正された初めての国政選挙でありました。そのとき、我が和歌山県は全県一区でありました。そして、定員は六名でありました。その六名に対して四十七名が立候補しました。余談でありますけれども、当選されたのは一位山口喜久一郎、二位斉藤てい、三位世耕弘一、四位小野真次、五位早川崇、六位池村平太郎、四千五百票差で七番目の次点が町田義友でありました。四十一人が落選した中で、後に代議士になられた田中織之進、今村長太郎、松本真一、田淵光一氏の名前がありました。父は、衆議院選挙に五回立候補して次点に泣き、すべて落選しました。自分でよく「義友」を「ぎゆう」と読み、「義友(ぎゆう)落選次点居士」という戒名をつけるんだと笑った昔を思い出すのであります。
 本論に戻りますが、翌二十二年四月に戦後二回目の選挙がありました。このときは、全県一区から一区、二区に分かれての選挙になりました。そして、定数は一区三人、二区三人。当時、和歌山の人口は九十六万人でありました。人口を半分に割った結果、海草郡より北を一区とし、一区の人口約四十九万人、有田市より南を二区として人口四十六万四千人、三万人弱の差しかありませんでした。それが、平成七年の国勢調査においては県人口は約百八万人になり、全体では十二万人もふえているのに有田市以南では逆に七万人減少しており、一区、二区の人口格差が約十倍の二十九万人にまで広がったのであります。北高南低と言われて久しいものがありますが、おのおのの人口を比較しても、数字的にも明白な事実であります。
 西口知事は、さきの選挙の公約に、輝き始めた和歌山県・三大重点プロジェクトとして和歌山百万都市圏計画、すなわち紀北に新しい関西都市圏構想ということを一番に挙げられております。これもすばらしいことだと思います。私の友人が選挙前──知事、懐かしいでしょう。あなたの百三十六のプロジェクトを、紀北と紀南に分けた一覧表をつくってくれました。コスモパーク加太、ウオーターフロント、マリーナシティ、和歌山南港等々、紀北ばかりで、紀南にとっては寂しい限りであります。嘆いていても仕方がありません。一つの小さいことかもしれませんけれども、具体的な人口増加策について考えてみたいと思います。
 企業誘致については、このような厳しい社会情勢のもと、特に紀南地方にとっては期待しても非常に厳しい状況にあると思われます。そこで私は、企業の誘致にかえて施設等の誘致をすることも一つの方法ではないだろうかと思うのであります。
 実は昨年、私の選挙区である大塔村木守地区に、知事初め当局のご英断によって精神薄弱者更生施設を誘致することができました。収容人員は五十名の施設であります。たまたま私の先輩が堺市の養護学校の校長を退職され、地元に施設をつくりたいといった幸運にも恵まれ、大塔村長、議会の皆さん、特に木守地区の皆さんの温かいご理解により実現したのであります。総戸数わずか二十七戸、人口五十人しかない小さな山合いの部落にとっては画期的なことでありました。都会に出ていた若者もUターンし、職員として三十五名採用され、波及効果も大きなものがあります。
 こういった施設については、福祉施設以外に東京都世田谷区、群馬県川場村の例のように、単に宿泊施設だけではなくて、屋根つき広場、スキーのゲレンデ、そして農業体験用の田畑まで整備されているようであります。公社は、これらの施設の運営だけではなく、指導員の派遣等、都市と農村の住民のさまざまな交流事業を手がけて成功しているのであります。
 本県においても、守口市と花園村、堺市と日高町、高石市と清水町の例などがあります。単なる施設用地の提供だけではなく、両地域の住民の交流を積み重ねて地域の振興に寄与したいものであります。また、企業、団体等の保養・研修施設等の例もあります。このように都会で生活する人たちは、豊かな自然の中でくつろいだり、体験したり、研修することを望んでいます。
 したがって、紀南地方においては用地等の受け入れ態勢をつくるとともに、そこで働くための専門的な技能を持った人材の育成、さらには都市住民を温かく迎えるための県民運動など、県としてぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、知事のご所見を賜りたいと思います。
 また、西牟婁郡日置川町から田野井地区に老健施設の建設要望も出ておりますがどのようになっているのか、現状、見通しについて、保健環境部長にお伺いいたします。
 知事は、選挙の際、紀南の各地区を回られて、どこへ行っても聞かされたことと思いますが、県立の施設が紀北に比べて余りにも少ないという現実であります。人口の多い紀北に施設が集中するのは、ある意味では当然のことかと思われますが、これではいつまでたっても紀北と紀南の格差は埋まらないどころか、ますます広がっていくと思います。県庁を紀南へとまでは申しませんが、県民全体を対象とした立派な県立の施設をつくっていただきたいと切望するものであります。知事は、紀南発展、特に人口の増加についてどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
 最後に、百三十六の中の十八番目に夢のある項目を見つけました。紀南に一万人規模の太陽の街の建設であります。お話しいただければ幸いです。
 次に、不登校問題についてお尋ねいたします。
 中学校で二年間登校拒否をしたA君の場合。A君は、幼稚園から小学校までは友達も多く、その中でもリーダーでありました。体格もよく、考えることも年齢の割には大人びていて、勉強も常に上位でありました。やんちゃもしたが、性格は温厚で、正義感の強い子でもありました。六年生になって、急に私立中学校を受験したいと言い出しました。それは、友達がたばこを吸っていたので、先生に告げ口したと詰問され、それから毎日にらみ合いが続く日々であったが、小学校は大きなトラブルもなく卒業し、公立の中学校に入学したのであります。
 その中学校は幾つかの小学校からの生徒が集まり、その中で生徒間の新たな序列をつくるためのけんかやにらみ合い、グループの集合や離散等があったようであります。A君は、体格は真ん中ぐらいで、既にリーダーではなかったが、小学校では有名であったので、この序列争いに巻き込まれ、乱暴な生徒の傍若無人な振る舞いを注意できない自分への無力感、黙って耐えている多くの同級生への不信感、指導し切れない先生たちや学校に対する不信感が募っていたやさきに、一年生の終わりごろ、友達に呼び出されて殴られる事件がありました。学校では、単なるけんかとして、十分事情を調べないまま処理をしてしまいました。A君にとっては、けんかの理由がなく、序列づくりの中での一方的な暴力事件でありました。この事件がきっかけで、中学校二年の初めから卒業まで二年間、登校しなくなったのであります。
 登校拒否の間は、学校に行かなくてはならないのに行けないということで余計に自分を責め、昼夜が逆転したり、夢にうなされたり、極めて不安定でありました。無理に学校に行かせようとすると家庭内暴力が起き、同級生や先生に対しての不信から人間不信、他人への嫌悪に陥っているので気軽に外出できない。しかし子供も、学校から逃避しているが、一方では学校から無視されるのも不安であり、先生の週一回の家庭訪問を待っている気持ちも見受けられました。両親は、親の会にも出ていきました。和歌山大生のサークル、プラットホームの皆さんにも助けていただきました。どのようにしてよいのかわからず、親にとっては毎日毎日が子供との闘いでした。そして、夫婦の闘いでもありました。自分たちの育て方がよくなかったんだ、子供に申しわけない、どうしたら他の子供のように早く学校に行けるようになるのか、泣き、苦しみ、悩みながら二年が過ぎました。そして、二年間登校できないまま中学校を卒業させてもらったのであります。登校拒否の子供のお父さん、お母さんも苦しんでいるだろうが、一番苦しんでいるのは子供自身であります。学校に行けない子供を両親と教師が丸ごと包み込み、学校も家庭も本当の心の居場所になることを願うのであります。
 そこで、お尋ねいたします。原因が家庭であれ、学校であれ、生徒同士の問題であれ、このように県内で学校に行けない児童生徒が中学校だけでも六百人以上もいると聞くが、実態はどうか。不登校生徒の卒業について、出席日数や試験等条件はあるのか。卒業さすのにどのように決定しているのか。中学校で留年している生徒はいないのか。不登校で中学校を卒業した生徒の進路はどうなっているのか。平成六年度より、高等学校入試に際し中学校の成績すなわち内申書が重視されるようになり、偏差値による弊害をなくす効果は認めるが、不登校の生徒にとっては不利になっていないのか。不登校の初期は保健室登校に始まると言われるが、不登校生徒の数に対して十分な相談、指導ができているのか。また、どのような指導体制をとっているのか。保護者との連絡はどうしているのか。また、概して教師の子供に不登校児が多いと聞くが、教師の不登校、いじめに対する研修はどのように行われているのか。お教え願いたいと思います。
 教師という職業は、小・中・高校・大学という名の学校を出て、学校以外の経験のないまま、また学校に戻る。つまり、先生と子供の世界から一歩も出ることのない職業でもあります。偏差値教育の申し子の若手教師には、登校拒否やいじめの問題などで子供の本当の心を十分つかめないのではないだろうか。ボランティアや勤労学習など体験学習が重視されているが、子供に体験をと言っても、教師が体験不足ではさまにならないと思うのであります。教える場から学ぶ場、みずから生涯学習に取り組む姿は、子供にとっては生きた教材になるのではないでしょうか。現職の教師について、長期間、大学院や研究機関だけではなく、民間企業での研修を行うべきだと思いますが、教育長のご所見を賜りたいと思います。
 私たち自由民主党県議団で全員参加の福祉議員連盟を結成し、今日まで老人福祉、障害福祉等々、福祉全般にわたって勉強してまいりました。昨年八月、いじめや非行などによる不登校の子供たちを預かって、またその家族もともども入所し、回復させている情緒障害児短期治療施設「希望の杜」を見学する機会を得ました。
 不登校児を入所させ、生活リズムを身につけ、自主的、健康的な日常生活を習慣づけるための指導、家から登校できない子供に対しても施設内の学級で地元学校から派遣された先生から学習したり、施設から地元の学校へ集団で登校したり、学ぶこと、知ることの楽しさを教えていました。家族が育児に自信を失ったり、子供に対する接し方がわからなくなったとき、家族に具体的な助言をするための家族療法棟も併設し、指導、助言を行っていました。施設では、子供たちは生き生きと生活をしておりました。兵庫県立神出学園、但馬やまびこの郷、岡山県にオープンした吉備のびのび小学校等、不登校児の施設、すなわち受け皿ができています。
 不登校児の問題が大きな社会問題となっている現在、教育委員会だけの問題ではなく、各部局と連携をとりながら取り組まなければならない大きな課題であると思うのであります。今日までどのような取り組みをしてきたのか。また、教育長、民生部長の今後の取り組みについてお聞かせ願いたいと思います。
 最後に、福祉のまちづくり条例についてお尋ねいたします。
 障害者や高齢者にとっては、可能な限り住みなれた地域で安心して生活ができ、自由に好きな社会活動に参加し、友達や地域の人と交流し、生きがいを持って毎日を送れることが本当の幸せであろうと思います。
 今の社会環境を見たとき、建物に階段などの段差があり、歩道もゆっくりと安全に歩けるところが少なく、交通機関の利用もエレベーターやエスカレーターがないので大変だといった現状で、容易に社会参加できないのが現状であります。よく聞く言葉に、「町の優しさのバロメーターは、どれくらい車いすを町で見かけるかだ」とありますが、まさに的を射ていると思います。車いすで自由にショッピングセンターなどに行き、公園や町を散歩できる、これが人に優しい町であります。また、超高齢社会を迎え、寝たきりに近い人でも、住宅の改良によって家の中を車いすで動ければ、食堂で家族と一緒に食事をし、居間でくつろぐこともできる。もう少し元気のある人は、買い物や遊びにも行ける。そして、交通機関が簡単に利用できるようになると、さらに行動範囲が広がり、生きがいのある豊かな長寿社会を築き上げることができます。車いすだけではなく、視覚や聴覚に障害のある人、おのおのの障害の種類や程度によって障壁を取り除く配慮ももちろん必要であります。建物の段差解消、エレベーターや障害者トイレの設置や歩道、並びに交通機関などのハード面の整備だけではなくて、人を思いやる心や困っている人をさりげなく援助する、障害者に対する正しい理解など、心の段差を解消していく施策をあわせて推進することによって真の福祉の町づくりが実現すると言えます。
 一九九○年(平成二年)に、障害者に対する差別の包括的な禁止を明確に定めた、障害を持つアメリカ人法すなわちADA法が成立しました。この法律は、すべての公共的施設、住宅、交通機関等を障害者が利用可能なものにしなければならないとする画期的なもので、世界各国に大きな影響を与えています。日本でも兵庫県や大阪府が、先進的に平成四年に福祉のまちづくり条例を制定し、その後、幾つかの府県でも条例が制定されている状況にあります。
 そこで、知事にお伺いいたします。町づくりは、県や市町村の行政はもとより、事業者や県民全体の積極的な協力がなければ進みません。このためにも、条例というしっかりした制度的な枠組みをつくり、和歌山県の特色を出した町づくりを推進していく必要があります。知事のご所見をお伺いします。
 また、こうした町づくりは県が率先して取り組んでいかなければなりませんが、今の県庁舎や一部の県事務所はエレベーターがないので、障害者や高齢者の方などには全く利用できない状況にあります。建築基準法から難しいとも伺っていますが、ぜひ改善すべきだと思います。総務部長の答弁をお願いします。
 これで、一般質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの町田亘君の質問に対する当局の答弁を求めます。 
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 町田議員にお答えをいたします。
 まず、人事についてであります。
 お話のように、私は一昨年、長く勤務をしていた県庁を離れまして、約一年間、県民の一人として外から県庁組織、県職員を見る機会に恵まれました。また、その間に、県民の皆様方から県庁に対するご意見を直接お聞きする中で、県民の期待と信頼にこたえる県政を進めるためには、活力ある県庁組織が不可欠であることを痛切に感じたわけであります。
 今回、知事に就任をいたしまして最初の大幅な人事異動になるわけでありますけれども、県民の行政需要にこたえるために大規模な組織機構の見直しを行い、新しい組織にふさわしい人材の配置に主眼を置きながら、適材適所の人員配置を行うつもりでございます。
 また、お話にございましたように、年功序列にとらわれるばかりでなくて、埋もれた能力ある職員、意欲のある職員の登用にも意を配りたい、そして活力ある県庁組織をつくってまいりたい、そのような人事異動にいたしたいと考えております。
 次に、紀南地域の発展についてであります。
 紀南地域の現状につきましては、今お話がございましたように、人口については、平成七年度国勢調査結果によりますと県全体では増加しておりますが、田辺市、西牟婁郡以南は一・七%減少し、過疎化や高齢化が進み、地域の現状は大変厳しいものがあると認識いたしております。
 私も、各地を回る中で、「紀南はおくれている」という大変悲痛な声もよくお聞きをいたしました。しかしながら、本議会でも堀本議員、玉置議員にもお答えをいたしましたように、高速道路の南伸、内陸部の道路整備、南紀白浜空港のジェット化整備、鉄道の高速化などによりまして、基盤整備は徐々に進んでまいっておると思います。また、余暇の増大や自然志向により、紀南地方の自然や文化に対する期待も今後ますます大きくなってくるものと考えるわけであります。この際、積極的な振興策を展開しなければならないと思っております。
 こうしたことから、平成八年度予算においても、まず交通ネットワークの整備として、国道四十二号那智勝浦道路の用地取得、国道三百十一号の改良、大島架橋などの県道整備、白浜空港のさらに二百メートルの延長調査、産業基盤対策として港湾や漁港の整備、きのくにふるさと林道等の林道整備、紀南の景観に配慮した環境整備を図る道路、河川、海岸の整備事業、観光リゾートの推進として大規模イベントの調査、観光フォーラム、古道ウオークの開催、歴史文化街道構想の推進、和歌山ふるさとリゾート推進事業等、いろいろの事業を行うことにしておるわけでございます。
 ただ、紀南地域の発展については、若者が流出をしているということもございます。ですから、これから若者の流出に歯どめをかけ、地域の活力を維持向上させていくことがこれからの重要な課題だと思うわけであります。そのためには、交通基盤の整備、福祉、医療、教育の充実、生活環境の整備など総合的な定住対策を図っていかなければならない、また就労の場を確保しなければならない、そういうふうな課題があろうと思います。
 こうした定住対策を進めるとともに、紀南地域の特性を生かして多くの人々に訪れていただくという交流の視点が大事だと思うわけであります。申し上げるまでもなく、紀南地域は全国的にもすぐれた観光地でございます。都市住民の自然志向、文化志向が強くなる中で、観光リゾートを柱とした地域づくりが必要でございます。議員からご提言のございました宿泊研修施設の誘致、人材の育成を初め、訪れた人々を温かく迎える県民運動等についても、地元の方々のご協力を得て積極的に取り組んでいくべきものだと考えております。さらに、学術研究機関、体験型学習施設、スポーツ、レクリエーション施設などを整備することも大事であります。そのことによって、恵まれた資源を生かしていかなければならない。定住と交流の促進によって紀南地域の活性化を進めていきたいと思うわけであります。
 先ほどお話のございました太陽の街の構想については、かつてゴールデンタウン構想ということで、全国から高齢者の方々に老後を安んじて過ごせるような町をつくりたいということで少し調査をしたことがありました。残念ながら実現するに至っておりませんけれども、何かそういうふうなことができないかということを常々考えておりまして、提言の一つとして掲げておるわけであります。
 最後に、福祉のまちづくり推進についてであります。
 障害のある人もない人も、ともに地域で当たり前の生活をするノーマライゼーションの理念に基づいて、一人の人間として尊重され、障害者自身が主体的に自立をし、社会活動に参加できる社会を目指していく必要があろうかと思うわけであります。間近に迫った二十一世紀初頭に四人に一人が六十五歳以上の高齢者となる本格的な高齢社会では、活力のある心豊かな長寿社会実現のために高齢者みずからが積極的に社会参加し、地域社会で主体的に活躍できるようにしていくことが極めて重要な課題でございます。
 こういった状況の中で、本県においても、昨年八月に福祉のまちづくり推進検討委員会を設置いたしまして、本県の特色を生かした福祉の町づくり推進のための基本的な考え方、施策の取り組みについてご審議をいただいているところでありますが、今月末にも報告書として提出されることと伺っておるわけであります。
 今後、報告書の趣旨を尊重しながら、私の公約でもございました福祉のまちづくり条例を制定いたしまして、県民だれもが和歌山に住んでよかったと言える、生きがいのある優しさに満ちた社会の実現に向けて取り組んでいきたい。条例制定は、できれば九月議会をめどにいたしたいと思っております。
 以上であります。
○議長(橋本 進君) 保健環境部長鈴木英明君。
 〔鈴木英明君、登壇〕
○保健環境部長(鈴木英明君) 県勢発展についてのご質問のうち、日置川町老健施設についてお答えいたします。
 本県における老人保健施設の整備目標については、平成五年に策定した老人保健福祉計画の中で、平成十一年度までに三千床整備することといたしております。この目標を達成するため、県といたしましても、平成八年度政府予算要望において国庫補助金等の採択枠の拡大を要望しているところでございます。
 議員ご質問の日置川町への老人保健施設の整備については、定員六十人を予定しており、平成八年度中の開設に向けて、現在、厚生省と国庫補助等について協議中でございます。
 以上です。
○議長(橋本 進君) 民生部長木村栄行君。
 〔木村栄行君、登壇〕
○民生部長(木村栄行君) 町田議員にお答えいたします。
 民生部における不登校児童の対策といたしましては、県子ども・障害者相談センター、児童相談所での相談及び子供と家庭のテレフォン一一○番の相談事業に加え、昨年十月、精神科医師の常勤化によりその充実を図ったところでございます。このほか、ひきこもり・不登校児童福祉対策モデル事業として、児童の兄または姉に相当する世代の大学生等をその家庭に派遣するふれあい心の友訪問援助事業や、キャンプ等児童間の交流を通じて社会性の向上や情緒の安定を図り、また保護者間の情報交換の場を提供する不登校児童宿泊等指導事業を実施し、保護者の持つ不安の軽減・安定を図るとともに、児童の健全育成に努めているところでございます。
 また平成七年度、県下八ブロックにおいて、各地域における不登校児童対策の一層の充実を推進するため、教育相談推進委員、主任児童委員、保健所、青少年センター等、児童関係機関の共通認識を深め、さらに相互の連携を強化するひきこもり・不登校児童福祉教育連絡会議等を開催いたしました。
 今後とも、各事業の充実に努めるとともに、連絡会議でいただいた貴重な意見等をもとに、市町村段階における関係機関の連携を構築してまいりたいと考えております。
 なお、国においては、制度五十年を経過した児童福祉法を、いじめ、児童虐待、引きこもり等の現代の諸問題に対処できるよう、また子供や家庭をめぐる社会環境の変化を背景に、養護施設や情緒障害児短期治療施設及び保育所などの各種児童福祉施設、児童扶養手当などの制度を抜本的に見直すとのことでございます。県といたしましては、国の動向を見きわめながら、教育委員会等関係部局との連携のもとに不登校児童対策に積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 以上です。
○議長(橋本 進君) 総務部長木村良樹君。
 〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 県庁舎等へのエレベーターの設置でございます。
 この問題については、従来、建築基準法上問題があるという判断から設置を見送ってきた経緯がございます。しかしながら、平成六年にハートビル法が施行されたことにより一部基準が緩和され、設置できる可能性も出てまいりましたので、現在、関係方面とも打ち合わせながら、設置場所、構造等、前向きに検討しているところでございます。
○議長(橋本 進君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 不登校問題にかかわる七点についてお答えいたします。
 本来、楽しいはずの学校に行くことができずに苦しんでいる児童生徒が本県でも増加する傾向にあることは、教育が直面している深刻な課題であると受けとめてございます。
 本県の実態については、平成六年度、三十日以上の欠席者は、小学校で二百六十一名、中学校で六百四十三名となってございます。こうした生徒の進級及び卒業認定については、出席日数やテスト結果だけで判断することなく、一人一人の実情や指導の経過、保護者の希望等を十分考慮し、教育的配慮のもと、慎重に行うよう各学校を指導しているところであります。
 特に中学生の進路については、各学校において学級担任が保護者と連携を保ちながら、一人一人の将来を考え、適切な進路を選択できるようきめ細かな指導に心がけているところであり、その進路は、生徒の実情等により、高校、専修学校等への進学や就職など多岐にわたってございます。中学卒業後の状況把握については、これまで指導面の取り組みに終始したため追跡し切れていない現状でございます。このことを深く反省し、早急に実態把握して今後の指導に生かすよう努めてまいりたいと存じます。
 なお、進学や就職を契機に新しい環境の中で頑張っている事例も数多く報告されており、特に単位制の高校では、各自のペースに適した学習の中で、それまでの登校拒否を克服して元気に学校生活を過ごしている生徒が多いと報告されておりますし、私も授業参観をして承知してございます。
 高校入試での対応については、一人一人のよさや可能性を生かす観点から、入学者選抜制度の改善を図るとともに、調査書等をもとに中学校と高等学校が十分連携をとり、配慮するよう高等学校長に指導してございます。
 次に、相談、指導体制については、県教育研修センター等に教育相談主事を置き、その指導、助言のもと、各学校の担任や養護教諭、教育相談担当者等が連携して、学校全体できめ細かな家庭訪問や相談活動を展開するスーパーバイズ方式による体制づくりを進めてまいりました。また本年度、地方教育相談推進委員を従来の八名から二十名に増員し、さらに教育相談合宿研修会、学校カウンセリング指導者養成講座など各種研修講座を実施し、教職員がカウンセリングに関する資質を身につけるよう努めているところでございます。さらに、平成八年度予算の中で、専門的な指導者を幅広く学校や地域に派遣して相談に応じるカウンセラー派遣事業について、今議会でご審議をお願いしてございます。
 教員の民間企業等での研修については、教職員が積極的に社会の現実に触れ、幅広い見識と柔軟な人間観、社会観を身につけることが重要であり、平成八年度から実施できるよう検討しているところであります。
 不登校生徒を受け入れる場といたしまして、本県ではこれまで七つの市町において適応指導教室が設置され、子供にカウンセリングや教科指導などを行うとともに、保護者の相談に応じてございます。ご指摘の施設については、昨年四月に設置した登校拒否・いじめ問題に関する検討委員会でもさまざまな立場からご意見をいただいておりますので、今後、その協議の内容を踏まえ、関係部局と連携を図りながら研究を進めてまいりたいと考えます。
 登校拒否をなくしていくためには、学校はすべての児童生徒が目を輝かせ、ともに学ぶ喜びを実感しながら、人間として豊かな成長を遂げる場でなければならないと考えますので、今後とも積極的に教育の改革と充実に努力してまいる所存であります。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(橋本 進君) 再質問がございませんので、以上で町田亘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時五十一分休憩
 ─────────────────────
 午後一時四分再開
○副議長(木下秀男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 36番村岡キミ子君。
 〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 早速、質問に入ってまいりたいと思います。
 初めに、平成七年度院内保育所運営費補助金削減問題についてお尋ねを申し上げます。
 厚生省は、看護婦確保あるいは離職防止対策のため、昭和四十九年度から院内保育所に運営費の補助を実施してまいったところですが、平成七年度の補助額について、年明けの一月十二日、何の前ぶれもなく一方的に一律四・五カ月分を削除するという内示がございました。県はこれを受けて一月三十一日、その旨を対象病院に通知いたしました。その減額補正が本議会に提案をされているところでございます。
 この補助事業は、病院などが設置・運営している保育所の保母の人件費として、厚生省が定めた基準を満たしていること──その基準は、園児数や保育時間、保母の数によって二人から六人分の人件費を、そしてそれに加えて二十四時間保育をしている場合には加算額が補助されるというものです。国、県の負担割合はそれぞれ三分の一でございます。ちなみに、今回の四・五カ月分の削減額は、国・県分総額千百七十八万千円で、県費減額分は五百八十九万一千円です。補助対象病院は、日赤医療センターなど八カ所と聞いております。
 私は、この問題を質問するに当たって、対象病院の院長や事務長、担当者の方に直接訪問したり、あるいはお電話で減額に対するご意見を聞くことにいたしました。率直なご意見を聞かせていただいたところです。
 対象病院の担当の皆さんたちは非常に遠慮がちに、「補助金だから何も言ったらあかんのかなと思っていました。私たちにとっては大幅な減額ですから、経営面から考えても大変困ったなと思っております」。また、「一月三十一日の通知ですから、既に賃金は払っていますし、大変ひどいですよね。保育所運営は、保育料だけではとてもできません。わずかの補助金であったとしても、本当に私たちは助かるんです」。またある病院は、「補助金の目的は看護婦確保なんだから、その趣旨にも逆行しているんじゃありませんか」、「民間病院は公的病院と違い、看護婦一人を確保するのに大変苦労をしています。学生には就学金、そして募集あるいは委託をするのに看護学校や高校回りなど、本当に大変なんです。せめて県の補助分だけでも、どうにかならないのでしょうか」、「夜間保育も始めたばかりですし、臨時保育もやっています。その保育料は取っておりませんし、もちろん子供たちの夕食代も取っていません。お母さんに何としても安心して働いてもらおうということで、必死で頑張っているんです。この苦労を酌み取ってほしいですね」。ある方は、「この四月からは付き添い看護制度も廃止になり、新看護体制でますます看護婦確保が必要になるのに、何でカットするのかね」と、強い怒りを私にぶつけておられました。
 そういう点で見ますと、減額だと内示がされても、はいそうですかと簡単に納得できるものではありません。国立病院や療養所、県立病院などの院内保育所の場合は、国の一般会計予算ということで一〇〇%の支給でありました。民間保育所のみが一律カットされたということは、明らかに差別ではないでしょうか。
 お尋ねをいたします。この一律カットした理由は本当は何だったのでしょうか、教えてください。私自身、日赤、医大、済生会病院共同の保育所であるあすなろ保育園設置運動にかかわってきただけに、今回のカットには殊のほか怒りを強く感じるものです。
 昭和三十年から四十年代にかけて、私たち看護婦は全国で、過酷な労働条件を改善するために「看護婦も人並みな暮らしを」と掲げて、勇気を出して立ち上がりました。ちなみに、病院ストの始まりです。一人夜勤、月十回から十五回の夜勤、看護婦はみんな全寮制で、通勤や結婚、妊娠・出産の自由もままならないときでした。大変暗い時期です。妊娠・出産は輪番制で年に四人という基準を強制し、切迫流産や流産、死産は後を絶ちませんでした。看護婦不足は日常化していたのです。
 そこで、昭和四十年、国立病院の看護婦さんたちを先頭に、一人夜勤を禁止せよ、産前産後の夜勤禁止、夜勤は月八日以内にとの要求で、とうとう人事院判定をかち取ることができました。その後、全国の先陣を切って昭和四十四年、新潟県立病院が組合の自主ダイヤによる実力闘争で八日以内の協定をとり、そのことは全国に燎原の火のごとく広がりを見せました。我が和歌山県立医大でも、当時、月平均八日以内の確認書を交わされて、五年間でその解決を目指しました。同様に日赤病院でも、夜勤協定は実現いたしましたが、当面十二日という膨大な協定でありましたから、引き続き四十八年、四十九年にかけて、夜勤ストを背景に月八日以内の協定化を実現することもできました。切実な願いであればこそ、同時に保育所設置についても約束をすることができました。
 病院側も協定を守り、具体的な増員のための努力をしてまいりました。例えば、看護学生の定員増や保育料の補助金支給、夜勤時のタクシー代支給、そして看護婦募集に九州や四国方面に看護部長みずから奔走するという大変な努力も行われてきたことは歴史の事実であります。
 しかし、皆さん、あすなろ保育園を実現するまでには約二十年間の長きにわたる運動がありました。母親たちは、夜勤明けであっても、夜勤に入る直前であっても、年休をとりながら、あるいは勤務を交代しながら、組合事務所での保育所を開設いたしました。さらには、病院交渉や県、市との交渉にも、大きなおなかを抱えて積極的に保育所要求をいたしました。そして、本県議会に対しても二回の請願を行い、一回は病院内に保育所を設置するのは衛生的に悪いという当局の拒否の態度で不採択に終わりました。しかし、私たちはあきらめることなく、二度目の請願によって全会一致で採択をしていただき、大きな励ましになってきたのです。
 そして、全国的な増員・夜勤制限闘争の中で、厚生省は昭和四十七年度から共同保育所建設補助制度を新設し、続いて四十九年度から病院内保育所補助制度の創設が実現をすることになりました。職場ではその当時、実に長い苦労の成果に、みんな手を取り合い、泣いて喜び合ったものです。
 私の子供二人も、あすなろ保育園にお世話になりました。あすなろ保育園も開設二十年を経過し、今、医大、日赤、済生会病院の看護婦確保と退職防止に、そして何よりも安心して働けることに大きな貢献をしていることを、改めて私はここで確認をするものです。
 同時に、民間病院における院内保育所にあっても、地域住民の医療と健康を守り、地域の医療要求にこたえていく上でも、今後一層よりよい医療と看護を提供することが求められています。また、この四月一日以降は、付き添い看護婦制度の廃止や新看護体制による看護婦確保の重要性と困難性を考えるならば、保育所の運営を確実に保障する援助策であるこの補助金をカットすることは、到底許せません。今後、この補助金削減による保育料値上げ、あるいは保育内容への影響、または保母さん等の賃金ダウンにつながらないか、私は大変心配をしているところです。
 そこで、お尋ねをいたします。県は今回の国の四・五カ月カット分について、国に対して積極的な復活交渉を行われてきたのでありましょうか、お答えください。
 本県の看護婦需給見通しを達成する立場あるいは看護婦確保法を実行する立場から、せめてものこの県費補助分、五百八十九万一千円を復活することの再検討をお願いしたいと思うのですが、いかがなものでしょうか。国は県が独自の判断で補助することについてとやかく言わない、県の自主性に任せることを、二月八日、日本医労連交渉で確認しております。この確認を受けて、全国的にも青森や宮城、山形県は国の分も含めて復活をさせ、補てんいたしました。そして、今まだ検討中という県も含めて、決定されているものが十九県、県費分だけを補助する方向にあります。やる気があるならば必ずできるだけのお金であります。
 皆さん、厚生省は平成八年度の予算に、平成七年度より五千七百万円しか増額の予算を組んでいません。これからは保育所設置も年々ふえるでありましょう。このことを思うと、来年またもやカットされることにならないか、心配をするところです。県は、今回のようなことがないように、責任を持って国に働きかけることを行うべきです。いかがですか。また、県の八年度予算はどうなっているのでしょう。保健環境部長の答弁を求めるものです。
 この質問を終わるに当たって、昭和三十八年、あるいは四十四、五年当時に夜勤闘争が起こりました。看護婦たちがどんな思いで夜勤をやっていたのか、働き続けるためにどんな思いで頑張っていたのかを、山形の鈴木ノリ子さんという方が闘争の時期に詩を書いていらっしゃいます。このことをご紹介申し上げまして、カット分を復活し、そして来年度は必ずや一〇〇%の補助を獲得されるよう願うものです。
 ご紹介申し上げます。全部は読めませんので、部分的に読ませていただきます。
 「『夜のお仕事ね』と手を出せば 砂遊びの手をはらい とまどって握手する二才の娘よ 突然出て行く後姿に 追いすがる瞳 手に残った砂を一つ一つこぼしながら 夕日に向う母 夫が帰るまでの二時間 一才三カ月の娘を 五才の兄ちゃんに頼む。 死ぬほどのけがをしないよう ストーブを消し 机もしまう。 戸じまりの奥に おしこめられた二人 泣きさけぶ娘と、それを抱く兄ちゃんの顔が ガラス戸にべったり並ぶ。 ポタポタ落ちる涙に 負けるもんかと 走った母(中略) 夜勤がつらい と 言わない日がほしい。 子供たちよ 『夜のお仕事だぞーっ」 はりきってでかける 夜勤がほしい。」、このようにその気持ちをうたっていらっしゃいます。ご理解ください。
 次に、老人保健福祉計画と公的介護保険導入について質問を申し上げたいと思います。
 介護保険制度については、現在も審議中という状況もありますが、一月三十日、老人保健福祉審議会第二次報告でその概略が見えてまいりましたので、問題を指摘してみたいと思います。国政レベルの問題とはいえ、事は国民一人一人にかかわる問題でもありますから、あえて質問を申し上げます。
 全国に先駆けて策定された老人保健福祉計画、いわゆるゴールドプランは、県下五十市町村の計画の進捗度合いによって本県の目標達成に大きな影響を及ぼすことになります。
 日本弁護士連合会が昨年六月、各都道府県の主要二都市と高知県の全市町村など百六十六市区町村を対象に計画等の目標達成についてアンケート調査を実施し、その結果を発表しておりますが、目標年度、つまり平成十一年度までに完全に目標が達成できると答えたのは、わずかに三十七自治体でした。他の七割の自治体が、財源や人材確保を理由に完全実施は困難と答えています。特に、市区町村の超過負担を招く補助金制度の改善を求める声が非常に高いと述べております。
 目標年度も四年と迫ってきておりますが、本県各市町村の進捗状況はどうなっているのでしょうか。目標達成は大丈夫なのでしょうか。
 高齢化は、いや応なく確実に進んでまいります。私も、このことを実感しております。私の家の周りも、老人世帯だけとかひとり住まいのお年寄りが多くなって、それだけに地域全体で支え、死ぬ直前まで人間らしく生きる、そんな地域づくりの大切さを痛感いたしております。とりわけゴールドプランと公的介護保険は、サービスを受ける側に大きな関心が高まっていることも事実であります。
 厚生省は、平成九年度を目途に公的介護保険制度を導入するため、今国会に法案を提出する準備を進めているようです。しかし、第二次報告においても保険主体や保険料などをまだ明らかにしないまま、ただ保険方式にすることだけを打ち出していることからも、まだまだ十分な論議が必要だと思うわけです。
 我が日本共産党は、保険方式を採用するに当たっては、公正で民主的なものにするため、少なくとも次の五つの基本的条件を満たすことが必要であろうと考え、提案をしているところです。
 その一つは、日本の立ちおくれた公的介護の水準を在宅介護と施設介護の両面で抜本的に充実させるものであること。それには、家族介護依存から公的介護中心にこれまでの発想を転換し、希望者全員に一定水準の介護が保障されるものであること。それに、在宅介護か施設介護かは本人の選択により、人材確保や施設整備目標も数字のつじつま合わせではなく、二十四時間ホームヘルパー、いつでも利用できるショートステイ、待機なしの特養ホームなど、実現するための必要量を導き出す。「保険あって介護なし」を招くことは許されません。
 二つ目に、低所得者が排除されないように、保険制度と現在の措置制度を組み合わせることが必要だと思います。
 三つ目には、保険料負担は公正でなくてはなりません。定額制ではなく定率制とし、六十五歳以上や低所得者からの徴収は行わない。労働者の場合は、当然企業負担を導入すべきです。
 四つには、高齢者の医療・介護は重なり合う部分が大きいので医療の面でも役立つものであることや、交通事故による障害者の介護も対象にすべきです。
 五つには、いかなる形であれ、消費税とリンクをさせないことです。介護の財源を口実にしてその増税を図るようなことがあってはなりません。このようなことも明らかにして、国民の皆さんと十分な論議を行う必要があると思います。
 ここに、三月十日の朝日新聞の記事がございます。もう既にお読みになっていらっしゃる方もあろうかと思いますが、ここには「『公的介護保険』をどうみる サービスと負担に懸念」というふうに書いて、約十五項目のアンケート世論調査の結果が載せられております。
 この中で特に注目すべきは、厚生省の計画している公的介護保険についてどの程度知っているかの質問に、ある程度知っている、名前程度は知っているという方が五五%、知らないと答えた方が四二%、よく知っていると答えた方はわずかに二%です。まだまだ国民は内容について知らされていないし、知らない現状にあります。
 そして、保険は強制で、保険料を負担しても仕方がないと答えている人が六〇%、高齢者は負担しなくてもよいと答えた人は五一%、保険が導入された場合気がかりなことはという問いに対して、保険料の引き上げ、保険料を払っても希望するサービスが受けられないんじゃないか、こう答えた人が七〇%あります。保険制度の実施は早い方がいいですかとの問いに対しては、慎重にと答えた人が六六%にも上っています。
 この結果から考えられることは、国民が介護保険の内容を知らないまま厚生省が急いで介護保険制度を導入するようなことがあってはならない、このことを示しているのではないでしょうか。これぞ、まさしく「保険あって介護なし」の状況が生まれるというものです。民生部長の所見を伺いたいと思います。
 今、厚生省は、エイズ問題を初め、国民に十分な情報を提供しないで、殊さら国民の命よりも製薬会社の利益を優先したその行政責任が問われています。防げたはずの病気と患者を生み出し、患者の命まで奪った大罪です。絶対に許すことはできません。介護保険導入においても、国民の十分な論議ができる情報提供など、県当局も積極的に国に対して求めるべきだと思います。
 第二次報告では、保険料負担は低所得者については考えなければならないとしながら、年金からも差し引くことを検討しているようです。この間、医療福祉の分野でも高齢者の自己負担額は増大しています。年金受給者の約四割は年金三万円以下だと言われています。低所得者への新たな負担を求めるべきではありません。低所得者ほど負担が重い消費税、「公的財源」を口実に消費税増税を図るべきでないのは当然です。民生部長のご所見を伺いたいと思います。
 次に、住宅金融専門会社の不良債権処理問題で知事の所信をお伺いいたします。
 「住専に国民の税金を使うな」の声は国会を包囲し、政府・与党を窮地に追い詰めています。二月二十八日付朝日新聞が税金投入に反対する人は八七%と報じるなど、政府案は八割とも九割とも言われる国民の圧倒的多数の怒りを呼んでいます。国会には連日、税金投入に反対する署名が積み上げられております。労働組合や市民団体、そして我が党も進めておりますが、日本共産党国会議員団に寄せられた署名は百万を超えました。組合や団体と余り縁のなかった人たちが、腹が立つ、じっとしておれないと、数人のグループで駅頭に立つ光景が見られるのも特徴です。七年前、消費税導入問題で列島騒然と言われたとき以上の怒りとも感じられます。
 住専処理への税金投入に反対し政府予算案からの六千八百五十億円の削除を求めた意見書も、各地で採択をされています。県内で我が党が賛成した意見書は、十四日までに十の市町村議会で採択をされております。さきの京都市長選では、日本共産党が推薦した候補者が自民党など五党連合推薦の候補に肉薄するという結果となりました。これは、政府の住専処理策への怒り、住専が融資をした企業による京都の町壊しへの激しい怒りの反映であったことは衆目の一致するところです。
 住専は、大銀行がつくった会社です。銀行はバブル期に不動産投機に資金をつぎ込ませ、住専はバブル崩壊とともに多額の不良債権を抱えるに至りました。今、国民の怒りとなっているのは、民間会社の不始末について、その会社の経営とは何ら関係のない国民がなぜ責任を負わなければならないのかという点であります。
 バブル崩壊とともに経営が破綻した会社は、住専に限りません。バブルに踊った銀行系ノンバンクの不良債権処理は、親会社である銀行が責任を持つことがルールとなってきました。住専についてはどうして国民に押しつけるのでしょうか。全く道理のない話です。
 国民の厳しい批判の前に、政府・与党は母体行に負担を求めるとして追加措置なるものを提案しています。これは、銀行などが合理化で収益を上げることで増収を図るというものです。しかしこれは、母体行に新たな負担を求めるものとは言えません。収益が上がれば税金をたくさん納めることは当然です。労働者に犠牲を押しつけるリストラを督励するものになっている点からも、追加措置なるものは到底認められるものではありません。住専処理の六千八百五十億円は、国の予算からはきっぱりと削除すべきです。政治の主人公は国民です。国民の圧倒的多数が反対する事案を押し通すことは許されないことです。
 知事、国民の声に従い、六千八百五十億円を削除し、母体行の責任で処理するよう政府へ意見を述べられてはいかがですか。答弁を求めるものです。
 以上で、第一回を終わります。
○副議長(木下秀男君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 村岡キミ子議員にお答えをいたします。
 住宅金融専門会社、いわゆる住専問題の処理策に財政支出を行うことについての所見でございます。
 本件につきましては、既に去る二月二十九日の本会議において県議会の意見書が採択されているところでございます。私としても、現在深刻な事態となっている金融機関の不良債権問題の象徴としての住専問題は、景気の早期回復のためにも緊急に対応する必要がある課題であると考えてございます。
 政府においては、財政資金の支出を含む問題処理策をまとめ、予算と関連法案の成立を目指しているところでありますけれども、十分な実態の解明がないままに、国民の理解なく税金を民間の経済行為の結果に充当することの是非については、大いに議論の分かれるところだと思います。
 こうした事態にかんがみ、情報の開示と問題の経緯並びに原因を明らかにするとともに、責任の明確化、再発防止策の構築、債権の強力な回収といった点についての対応を政府において早急に進めていくことが必要であると考えております。
 いずれにいたしましても、六千八百五十億円の財政支出の取り扱いについては、国会において十分議論がなされ、国民の大多数が納得のできる処理策となるように強く期待をしておるところであります。
 以上であります。
○副議長(木下秀男君) 保健環境部長鈴木英明君。
 〔鈴木英明君、登壇〕
○保健環境部長(鈴木英明君) 病院内保育所補助金削減についてのご質問にお答えいたします。
 まず、一律四・五カ月分の削減の理由及び県費減額分の復活の再検討についてでございます。
 子供を持つ看護職員のために保育施設を運営する病院などに対して、国庫補助制度に基づき助成しているところでございますが、本年度、国において要望施設数が多かったことを理由として、延長保育促進加算部分を除き、三七・五%の一律減額措置が講じられました。
 本県としては、子供を持つ看護職員が離職することなく勤務を継続することは看護サービスの質の向上に資するものと認識しておりますが、本事業は国庫補助金と同額の県費負担額をもって運用をしている助成であることから、県予算につきましても減額を行っているところでございます。
 次に、国に復活要求をしたのか、しなかったのか、及び平成八年度予算は満額補助を国に対して求めよとのご質問でございます。
 国に対しては補助金の復活を申し入れたところでございます。今後とも、安定した補助制度の確立など財政措置の充実について、引き続き国に要望してまいりたいと考えております。
 次に、県の平成八年度予算は満額予算になっているかとのご質問でございます。
 本県におきましては、平成八年度の院内保育施設の運営補助に要する経費として、国庫補助対象施設として要望のあった十二カ所分につき、六千三百五十八万八千円を当初予算で満額計上しております。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 民生部長木村栄行君。
 〔木村栄行君、登壇〕
○民生部長(木村栄行君) 村岡議員にお答えいたします。
 ゴールドプランは県下各市町村で目標達成できるのかについてでありますが、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイといった在宅関係はほぼ計画どおりに進捗しており、平成八年度も計画に沿った整備を進めてまいりたいと考えてございます。
 施設対策については、特別養護老人ホームを初め、ほぼ計画どおりに進捗していますが、ひとり暮らしの高齢者の皆様に安心して暮らし続けられるよう設計された新しい入居施設であるケアハウスは低い整備状況になっており、県民の皆さんへの紹介、広報に努めるなど、整備普及を進めてまいりたいと考えております。
 老人保健福祉計画の目標年度である平成十一年度も迫ってきていることから、今後、事業の実施主体となる市町村や社会福祉法人等の理解も得ながら、県民の皆さんが安心できる福祉社会の実現に向けて努力してまいります。
 次に、介護保険の導入に向けての基盤整備と県民の負担についてでありますが、高齢者の介護を社会的に支えるシステムとして厚生省が今国会へ提出を目指している公的介護保険については、現在老人保健福祉審議会で審議されているところであり、事業主体、負担割合等についてはまだ確定しておりません。
 この公的介護保険制度の導入に向けて、和歌山県老人保健福祉計画等に基づいて介護サービスや基盤の強化に努めるとともに、今後、制度案の内容等についての県民への情報提供に努め、必要に応じ、国に対しても制度の決定、円滑な実施に向けて要望してまいりたいと考えございます。
 県としましては、寝たきり等の要介護者の増加に伴う深刻な問題に対処するため、少しでも早く公的介護保険制度の確立が必要と考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 36番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 今、答弁をいただきました。
 保育所の補助削減ですけれども、数が多かったから相等に配分するために削減する以外になかったんだというのが国の答弁ですね。しかし、看護婦確保法の中には、看護婦不足を補うために、何としても離職防止を行わなければならない、そのためにいろいろな策をしなければならない、保育所の保育内容や長時間保育、夜間保育といったものについて十分条件整備をするために国や地方自治体はしっかりやりなさいよと、こういう条文があるわけです。そういうことから考えても、やっぱりおかしいんじゃないかと。
 とりわけ問題になるのが、国立病院や療養所、あるいは県立病院等の自治体病院については、一般財源の中から一〇〇%の支給ができる──これは、税金の使い方の問題ですからそうだと思います。しかし、この民間病院については、九四年度に看護課から児童手当課の方へ回され、厚生年金保険特別会計ということで、それぞれの事業主が拠出をした財源で院内保育への補助を行うというように、厚生省自体が責任を持って財源をつくるのではなくて厚生年金の方に預けたような形になっていますね。なぜ国が責任を持って、あるいは地方自治体が責任を持って、県民や国民の命を守っていく一つの手だてとして責任を持たないのでしょうか。私はここが理解できないんです。
 先ほどもるる申し上げましたように、院内保育所というものは、看護婦さんたちの勤務状態──本来ならば、地域の保育所で地域の子供たちと一緒に保育されるのが一番望ましいと私たちは思っているんです。でも、それは不可能ですよね。公立の保育所や認可保育所は今やっと長時間保育──これも、どんなにいったとしても朝七時半から夕方の六時半ぐらいまでが精いっぱいでしょう。見ていますと、四時ぐらいにはお母さんたちがみんな迎えに行くという姿があります。
 ところが、看護婦の勤務はそんな状態ではありません。三交代による夜勤、早出、遅出があります。一般の保育所では、とてもじゃないけど対応できないのが現実じゃないですか。それに加えて、今政府は医療費を抑えるためにいろんな策をつくっています。だから、診療報酬はなかなか上がりませんし、上がったとしてもわずかなものです。病院経営やその労働者の人件費に充てられるというような診療報酬体系や点数の上げ方ではないでしょう。今、開業医の皆さんは、そういうところにぶつかっていらっしゃるんです。その一方では、医療法の改悪の中で、高度医療を提供できる病院、そして一般病院、それでなければ慢性型療養群といって、長期に入院する人たち、とりわけ高齢者をそこへ押し込んでいくというような病院のランクづけがされました。
 今、和歌山県下にある九十六の病院、あるいは有床診療所は何百とあるそうですけれども、そういうところの人たちが地域の皆さん方の医療に貢献するためには、どうしても看護婦を確保しなければならないと、そういう法律になってしまっているじゃありませんか。病院の経営者たちは今、せめて保育所をつくって看護婦を確保しようと苦労をしているわけです。夜勤をやってもらうために二十四時間保育もやろうじゃないかと、血のにじむ思いで病院経営を続け、地域の皆さん方の医療要求にこたえようと努力をしていらっしゃるんです。そういうところにこういう削減というのは、とてもじゃないけど納得できないんです。
 そういう点で、減額補正予算を組まれていますが、せめても県費負担分ぐらいは回復してくださいよ。できない額じゃない。看護婦さん一人の人件費ぐらいでしょう。やる気がないんじゃないの。こんなわずかなお金でも削っていく行政というのは、余りにもひどいんじゃありませんか。もう一回、再考を求めるものです。財政課長、けちらないでほしい。今、病院を経営していくのは本当に大変なんです。それだけに、保育所の役割というのは重大です。真剣に考えていただきたいと思います。再考を求めるものです。
 それから、知事さん、この保育所の問題は、あなたの一三六のプロジェクトの中にもあるんです。医療のところではありませんで、「紀州っ子すこやか保育プロジェクトの推進」というところに掲げてあるんですが、「子どもの成長を社会全体で支えていくために、乳児保育、延長保育、障害児保育、一時保育、病児保育などの保育機能を持つ保育所を各所につくります」、そして「院内保育所、企業内保育所や小規模保育所の運営に対する助成を行い、ニーズにあったきめ細かい保育体制を確立します」と、こうなっているんです。そういう点から見れば、「きめ細かい」というのは、やはりここにあるんです。国が削減しようとするならば、せめても、この大事な子供たち、あるいは病院・看護婦のこの問題を解決すること、この五百幾らのものを補助するということが行政の細かさだと私は思うんです。
 そういう点で、この議会中にぜひ再考をお願いしたいと思います。これは、もう答弁は求めません。議会終了までに再考してください。そういう点を篤とお願いしておきたいと思います。
 介護保険問題については、さまざまな問題が未解決のままです。けれども、和歌山県の行政側としても、ゴールドプランの達成と医療・福祉の関係から見ればどういう介護保険がいいのか、和歌山県の実態に即した介護保険は何なのだろうということを研究せないかんと思うんです。この介護保険問題については、そういう姿勢を持って進めていっていただきたいし、国にも物を言っていただきたい。
 とにかく、情報がないというのが現実です。だから、さっきのアンケートのように、知らないという人がこれだけいっぱいいる。今の政治不信と考え合わせると、知らない間にどんどん通されていくことは起こり得ることなんです。そういう点で、今この介護保険がどのようなところへ進んでいるのか、県民に情報を提供してあげる段階だと思うんです。もう来年の制度としてやろうと言っているんですけれども、今のこういう状態でやったら、何だということになりますよね。保険料だけ払わされてサービスを受けられない、そういうことが出てくると思うんです。ぜひ、県民の皆さんに情報を即提供する段取りをしていただきたい。このことについてだけ答えてください。
○副議長(木下秀男君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 民生部長木村栄行君。
 〔木村栄行君、登壇〕
○民生部長(木村栄行君) ただいまの再質問でありますけれども、先ほどもお答えしましたように、現在、公的介護保険については老人保健福祉審議会で議論をされているところでございますし、今の段階で県民にどのような広報をするかということは非常に疑問もあろうと思います。
 今後、私たちも十分研究しながら、県民それぞれに対してPR、啓発、情報提供をしてまいりたいと思っています。
 以上であります。
○副議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 36番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 時間がありませんので。
 「今の段階で」と言うけれども、二例併記でいいんですよ。こういう意見もある、こういう意見もあると。みんなに考えてもらう材料を提供するわけですから。今の段階ではだめだというのじゃなくて、今が大事なんですよ。最終的に決める前に国民の意見をどう聞くのかという姿勢に立つことが大事ですから、工夫をしてください。
 要望しておきます。
○副議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
○副議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 29番野見山 海君。
 〔野見山 海君、登壇〕(拍手)
○野見山 海君 通告に従いまして、一般質問をさせていただきます。しばらくの間、おつき合いを願いたいと思います。
 最初に、平成八年度当初予算について質問いたします。
 昨年は、国の内外を問わず、政治、経済は大変な年でありました。本年も、国民が願っている景気の回復の兆しが実感として一向に見えてきません。その影響で失業者は全国で二百三十万人に達し、失業率は三カ月連続三・四%で史上最高を記録、大卒、高卒の就職率も八七%と、依然として深刻な状況であります。
 今国会で論議されている住専問題については、国民の皆さんはバブルの後始末に税金を使うということに怒りを感じています。私もその一人ですが、この住専問題は歴代の政権が解決の先送りをしてきた結果であり、このまま不良債権を放置しておけば景気回復がますます深刻になり国民の大切な預貯金が不安にさらされるということで、村山内閣のもとで決断されたものであります。それだけに我が党としての責任もあり、住専問題については住専処理法で問題の全容を徹底的に解明することで国民の理解を得るよう最大の努力をしなければなりません。そして、天下りは廃止すべきだと私は思います。
 また、エイズウイルスの感染については、血友病患者とその家族の皆さんの人生を狂わせ、国、企業、医者の癒着による犯罪に等しい不祥事が明らかになっております。人の命にかかわることであり、許すことはできません。昨日、被害者によるエイズウイルス訴訟について、国が和解を受け入れることが表明されました。一歩前進であります。被害者の立場に立っての早期解決を願うものであります。さらに、責任の追及を徹底的にして、二度とこういうことのないようにしていただきたいと思うのであります。
 さて、本県においても、世界リゾート博の大成功と関西国際空港の開港の影響を受けて県民の意識も変わってきたのではないでしょうか。例えば、和歌山県にとって関西空港は扇風機の裏側ではないかと思っていた県民の皆さんが、空港を利用することで和歌山県がいかに近い距離にあるかと感じられたのではないでしょうか。関西国際空港全体構想が動き出した今日、府県間道路や湾岸道路の整備、高速道路の南伸、京奈和自動車道の推進、南紀白浜空港の活用、そして紀淡連絡道路が実現すれば、本県の発展は限りなく続くものと確信するものであります。
 平成八年度は知事として初めての予算編成であり、県勢の一層の発展と飛躍へのスタートとして県民は大いに期待しているところであります。平成八年度当初予算を見たとき、以前のような大型プロジェクトはないが、二十一世紀に向け県民の皆さんが安心して住めるよう社会的弱者の立場に立った各方面に配慮された投資重視型の積極的な予算となっており、私も県内の均衡ある発展を願う一人として高く評価するものであります。
 そこで、次の点についてお聞きします。
 知事はさきの選挙で県内をくまなく歩かれ、地域住民の声を聞かれたのでありますが、その声が当初予算でどのような形で生かされているのでしょうか。
 二つ目。歳入については自主財源の県税収入が対前年度三・四%、三十一億円減となっており、平成五年度より五十九億円下回る収入となっております。自主財源の中心となる県税収入の確保にどう取り組んでいかれるのか。また、平成八年度の県債発行額は七百六十九億二千八百万円で、これを含めますとこれまでの県債発行残高は五千五十六億八千三百万円となります。当初予算ではこの県債発行は交付税措置を伴う起債を最大限に活用したと言われておりますが、国においても既に二百兆円を超える借金財政でもあり、このような措置がいつまでも続くとは私は思いません。本県においても厳しい財政下にあることから、今後何らかの対応策が必要ではないでしょうか。
 三つ目。公債費比率について、平成五年度一〇・六%、平成六年度一一・四%となっております。通常、健全な財政構造は一〇%を超えないことが望ましいと言われておりますが、平成七年度の公債費比率の見込みはどのようになっておりますか。
 四つ目。県は、昨年十一月に三年間をめどに取り組む行政改革大綱をまとめられました。この改革大綱を踏まえ、組織の見直しとして民生部と保健環境部を再編し、生活文化部と福祉保健部を設置することで新たな行政需要に的確にこたえていくことを示されました。私は、何をするにも県民に顔を向けた県行政を進めるべきであると思います。事務処理期間の短縮はぜひとも図っていただきたいと思います。さらには、職員の意識改革を進めるため活発に民間企業への派遣を実施すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
 五つ目。紀南地域の悲願でありました白浜空港のジェット化が三月九日に開港日を迎え、実現いたしました。この日は、周辺住民の皆さんはもとより多くの方々が南紀白浜空港を訪れ、かつてないにぎわいでありました。今後ますます活気にあふれ、一層発展することだろうと感慨新たにしたものであります。私もこの日、満席の十六時十五分発で東京へ出かけた一人であります。一時間で東京着となり、首都圏が大変近くなったと実感した次第であります。関東地域の皆さんは、まだまだ自然に恵まれた南紀和歌山を知りません。今後、いろんなイベントを通じながら観光立県にふさわしい心温まるサービスに、私どもはもちろん、県民こぞって努力していかなければならないと私は思います。この南紀白浜空港ジェット化によって一層の紀南地域の浮上を図ることが和歌山県経済浮上へと結びつくものだと思います。
 そこで、当初予算では一千五百七十八万六千円が計上され、紀南地域で大規模なイベントを展開するために基本計画を策定することになっておりますが、策定に当たっての県としての基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
 続きまして、道路網の整備についてお伺いいたします。
 いよいよ、広川・御坊間十三キロが今月三十日に開通いたします。昭和六十二年度の事業化から平成八年三月三十一日まで九年間に及び、建設事業の提案はやすし、実現はそう安易なものではないと痛感いたしました。この開通によって、紀中地域はもとより紀南地域からも関西国際空港や京阪神都市圏の都市との距離が近く感じられ、経済活動の活性化や紀南地方の観光振興に大いなる期待が持てると確信いたします。
 そして、御坊・南部間は既に着手され、平成八年度は日本道路公団の委託を受け、県及び地元市町村が協力して用地取得の取り組みが進められるわけでありますが、地権者の協力が何よりも課題でありましょう。用地が早く解決すれば六年後に供用開始が実現するわけですから、私どもも全面的に協力しなければなりません。関係者の皆さんには大変でしょうが、頑張っていただきたいと思います。
 本県の海岸線の幹線道路は国道四十二号線でありますが、県内国道や県道及び林道等の整備も着々と進められており、近い将来、県内どこでも二時間構想が実現するでありましょう。そこで、二月十日に起こった北海道のトンネル崩落事故で亡くなられた二十名の方々に心からご冥福を申し上げるとともに、この北海道におけるトンネル事故を他山の石として、本県内の道路も海岸線、山間部を走り多くのトンネルを有していることから、多くの危険箇所も見受けられます。事故が起こってからでは遅いのでありまして、早急に危険箇所を調査し、一日も早い対応が必要であると思いますが、いかがでございましょうか。
 国道四十二号の渋滞はよく見かけ、よく聞きます。例えば、昨年、建設委員会で現地視察をした有田市・下津町間は大変な渋滞でありました。先日、松本議員からも指摘をされました。何らかの対策が必要だと思います。
 ほかの地域では、御坊市内の渋滞は広川・御坊間の開通によって解消されるでしょう。新宮市内の三輪崎寄りに渋滞が発生している状況でありますが、最も渋滞のひどいのが田辺市内の道路であります。交通量の増加によって国道四十二号バイパス新庄田鶴口から稲成間約五・四キロが昨年三月二十四日に全線開通しましたが、田辺市内の交通量を見たとき、早くから西バイパスの道路整備がなされていなければならなかったと思います。一日も早い着工を沿線住民は願っているのであります。特に、ゴールデンウイーク、観光シーズン、お盆及び正月等の時期には大渋滞になりますし、さらには稲成地域にことし十一月にチェーンストア・オークワが開店しますと周辺はますます交通量がふえ、地域住民に迷惑をかけることになり、また交通事故も懸念されるのであります。
 そこで、対策として県道秋津川田辺線の整備促進と一部の区間が道路としての機能を果たしていない県道上富田南部線の整備、市道の県道昇格等を早期に行い、周辺道路網の整備を進めていくことが渋滞の解消になると私は考えます。観光立県にふさわしい交通網の整備を目指し、目的地に所定の時間に着くように、これは観光客に対するサービス面から見ても必要ではないでしょうか、お伺いいたします。
 また、上富田町の南北幹線道路は国道四十二号であり、多くの方々はこの国道四十二号を往来されています。しかし、田辺市と上富田の境界にある田鶴トンネルは狭隘で大型車両が対向できず、今では欠陥トンネルと言えます。このトンネルを自転車通学している生徒も多く、交通事故が起こるおそれもあり、一日も早い改修が必要と思いますが、進捗状況と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、田辺総合運動公園整備構想についてお伺いいたします。
 本県の均衡ある発展は、公共施設を県都に集中することなく分散することによって地域の活性化を促すものだと考えます。スポーツ施設を例にとれば、新宮市に総合運動公園の敷地が確保されました。また、橋本運動公園内に橋本・伊都地方を対象にした広域利用施設として、各種室内スポーツ大会、多彩なコンサートやイベント等が可能な多目的体育館が延べ床面積一万四千六百平方メートル、総事業費七十八億円で、平成十一年の完成に向けて平成八年度から着工されます。さらに、紀三井寺野球場グラウンドの全面改修が当初予算に計上されています。こうして地域の施設が整備されていくことは、地域住民にとりましてもありがたいことであります。
 さて、私は平成六年九月議会において、田辺市の南紀スポーツセンターが日本体育協会から県へ移管される時点で総合運動公園構想と抱き合わせてスポーツ振興の中核施設として位置づけ、その整備拡充について質問をいたしました。そのときの知事の答弁では、田辺総合運動公園については三四六運動公園や移管予定の南紀スポーツセンターも含め、広域的な観点から施設のあり方等について市と十分相談させていただきたいと述べられました。また教育長は、今後、県の施設として施設整備、事業内容を再考し、紀南地方はもとより広く県内外の方々の利用に供する魅力ある施設となるようアピールしていく必要があり、地域住民及び関係者の意向を伺い、施設の増改築を含めた計画的な施設の充実や生涯スポーツ、競技スポーツを行う利用者のニーズに沿った事業内容について検討してまいりたいと、前向きな答弁をいただきました。また、教育長は何度か現地を踏査されていると聞いております。まことにありがとうございます。
 私も南紀スポーツセンターを訪れまして、施設周辺を職員の方々と踏査をいたしましたが、昭和四十二年三月に県開発公社が日体協へ約三万二千坪を無償譲渡されているこの用地については、山林、のり面もありますが、十分に土地利用ができると思います。また、民間の用地についてもご協力をいただけると聞いておりますので、一日も早い構想立案を期待しているのであります。
 例えば、南紀白浜空港がジェット化したのを機会に、県内外から国際人も来てくれる施設を目指し「国際級のスポーツを紀南でも」を合い言葉に有名な国際試合や大会を誘致するなど、当面はJリーグ等の誘致に向けた多目的国際陸上競技場の設置など、紀南地域振興のための広域的な視点に立って検討する必要があると思います。今まで関係部局で議論を積み重ねられたと思いますが、進捗状況と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 以上をもちまして、一回目の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(木下秀男君) ただいまの野見山海君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 野見山議員にお答えをいたします。
 県民の声を予算にどう反映させたかということについてでございます。
 私は、県下各地での県民各層の率直なご意見を踏まえ、県民にわかりやすい、また県民のニーズにかなう予算とすべく、県財政は非常に厳しいものがございましたけれども、八年度の予算編成においては可能な限り私の提言についても盛り込んだと思っております。
 具体的な事業としましては、例えば県民各層との意見交換あるいは県の施策を紹介するグラフ誌の発行を行うなど開かれた県政を推進するとともに、地域住民とともに個性の光る町づくりに取り組む市町村に対して支援を行う輝けわかやま・二十一世紀ふるさとづくり事業の創設、二十四時間対応巡回型ホームヘルプサービスの開始、高齢者住宅改造補助制度の創設等の高齢者対策、また障害者用トイレ設置補助制度の創設などの障害者対策、さらに、漁場探索情報を迅速に提供する人工衛星画像受信解析システムの導入など、県民の皆様の声をできるものから可能な限り予算に反映させたところでございます。
 今後とも、県民の皆様方の声に常に耳を傾けるとともに、県民の皆さんにとって開かれた県政、わかりやすい県政に努めてまいりたいと考えております。
 以上であります。
○副議長(木下秀男君) 総務部長木村良樹君。
 〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 平成八年度当初予算に関して、減収する県税対策と県債発行増の今後の財政運営への影響、それから平成七年度の公債費比率の見込みについてということでございます。
 県税収入の増はまず景気の早期回復からということで、八年度当初予算においては、県単独事業についてこれまで以上に積極的な伸びを図っているところでございます。また、これとあわせ、将来の安定的な税収の確保対策ということで企業誘致の推進や地場産業の育成、観光資源の活用、産業構造の転換等に積極的に取り組むとともに、交通基盤、情報基盤の充実など、均衡のとれた社会資本の整備に努めてまいりたいと考えております。
 次に、県債の増発に伴う財政運営への影響でございます。
 県債の発行に当たっては、従来から公債費の増嵩に十分な注意を払いつつ財政の健全性の確保に努めてきたところでございますけれども、八年度当初予算では七百六十九億円という多額の県債発行を予定しており、前年度と比較すると一五・八%の増ということになっております。今回発行を予定している県債については発行額の五割強が後年度に交付税措置を伴うものにしており、できるだけ財政の硬直化を招くことのないよう配意しているところでございます。
 しかしながら、全国の地方公共団体の借入金残高が平成八年度末で百三十六兆円という多額に上っているという厳しい状況下でございますので、議員ご指摘のように、安定的な自主財源の確保が一層望まれることから、今後とも中長期的な視点に立って税源の涵養に努めるとともに、財政の健全性に十分配慮してまいりたいと思っております。
 また、平成七年度の公債費比率でございますが、近年、県単独のプロジェクトを非常に拡充していること等により公債費比率についてもご指摘のように上昇傾向にございまして、平成七年度の二月補正後の試算では一二・六%となる見込みでございます。公債費比率は財政の健全性を図る上で一つの有力な指標でございますので、今後ともこの動向に十分注意してまいりたいと考えております。
 次に、行政改革による職員の民間企業への派遣ということでございますけれども、県政の基本は職員でございまして、その資質の向上のため、今回の行政改革でも職員の能力開発ということを最重点課題として位置づけているところでございます。
 ご提案の民間企業等への実務派遣研修は、異分野での経験を通じて職員の意識改革を進めるためには非常に重要なことであると考えておりますので、来年度から実施すべく企業等との打ち合わせ、人選等の作業を現在鋭意進めているところでございます。
○副議長(木下秀男君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 野見山議員にお答え申し上げます。
 南紀活性化イベントについては、紀南地域の活性化を図るべく、平成十一年度の開催を目途とし、検討に着手してございます。
 県としては、長期展望に立った紀南地域全体の活性化戦略の中にこのイベントを位置づけてまいりたいと考えてございますので、これまでの博覧会の発想に縛られることなく地域資源を最大限に生かしたものとするとともに、奈良・三重両県との連携、あるいは高野・龍神等との地域文化とのつながりを視野に入れた広域的かつ複合的なイベントの展開と地域主導の企画・推進を目指しており、八年度中の基本計画策定を図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 野見山議員にお答えいたします。
 まず道路網の整備についてのご質問四点のうち、県内の崩落対策についてでございます。
 例えば、国道四十二号の代替ルートとしては、広域的な補完機能を持たせるリダンダンシーの確保の観点から、百六十八号、三百十一号、龍神中辺路線、四百二十四号から成る第二県土軸などの整備を進めるとともに、また、田辺市周辺においては上富田南部線などの整備を進めているところであります。
 道路への落石防止対策については従来より進めてまいりましたが、本年二月十日の北海道豊浜トンネルにおける事故を教訓に、直ちにトンネルの安全点検に着手したところであります。また、トンネル坑口が急斜面である箇所については専門家に委託して調査を行っているところであります。さらに、平成八年度においては落石の危険箇所について総点検を行うこととしており、それらに基づく落石防止対策について鋭意努力してまいります。
 次に、国道四十二号の交通渋滞に関しましては、近畿自動車道紀勢線及び国道四十二号田辺西バイパスの早期整備を強く要望しているところでございます。なお、当面の対策としては、代替路線ともなる県道上富田南部線、市道中芳養稲成線、県道秋津川田辺線を整備することにより交通量の分散を図るよう考えております。このうち県道上富田南部線については、南部から田辺市中芳養の区間は昨年供用したところであります。また、田辺市中芳養から稲成川までの県道は通行不能でありますので、これに並行する市道中芳養稲成線の県道昇格や整備手法等について市と検討中でございます。これに続く県道秋津川田辺線は田辺バイパスからの一部区間が未改良でございますので、これの早期整備に向け努力してまいります。
 四点目の国道四十二号田鶴トンネル付近についてですが、国道四十二号の田鶴交差点から現在の田鶴トンネルを含めた上富田町峠までの区間約一キロメートルの用地の進捗率は、平成八年一月末現在、面積で約八三%となっております。特に田鶴トンネル部は開削工法となりますので、現在その部分の用地買収を集中して行っております。なお、公図の混乱地区もありますので、地元のご協力をいただきながら用地買収を促進するとともに、早期整備について国に対して強く要望してまいります。
 最後に、田辺総合運動公園整備構想についてでございます。
 公園は、健康で潤いのある生活環境を確保するために必要な施設でございます。中でも運動公園は、主に住民の方々の運動の場として整備を行うものであり、市町村で設置しているものも多くございます。特に県下における広域的な総合運動公園については、現在、県下の運動施設の現状などに基づき、配置、規模などの運動施設のあり方を検討することとしております。
 ご質問の構想については、用地の取得の面で適地が確保できるかどうかという問題がございますが、あり方についての検討を踏まえ、地元市町村及び関係機関と相談させていただきたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 南紀スポーツセンターの整備についてお答えいたします。
 自主的、自発的なスポーツ活動、見て楽しむスポーツなどの生涯スポーツ、多様化、高度化してきている競技スポーツなどの現代スポーツは、幅広い視点からとらえることが大切になってきてございます。
 こうしたことから、南紀スポーツセンターについては、地域住民のスポーツに対する欲求を満たすための場やプログラムの提供、大会を開催するための場、指導者の養成及び研修、情報の提供などの機能を有した生涯学習スポーツセンター的な要素を持った施設にしたいとの観点から、現在、教育委員会内において検討しているところでございます。
 現在の敷地は、有効面積が少なく一部に山林を含んでいることや、約四メートルの取りつけ道路が一本であることなどが課題になっており、それぞれの専門家の意見をも聞きながら研究しなければならないかと考えてございます。
 また、周辺体育施設との関連等については、田辺市の整備についての考え方ともかかわることでありますので、関係する部局等と相談しながら検討してまいりたいと考えてございます。
 以上です。
○副議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 29番野見山 海君。
○野見山 海君 知事を初め部長の皆さん、ありがとうございました。三点ほど要望をしておきたいと思います。
 特に稲成地域は、これからますます渋滞をしてまいると思います。ですから、市との協議を早く終え、一日も早い事業化を進めていただくことを強く要望しておきたいと思います。
 それから総合運動公園につきましては、今、土木部長、教育長から答弁いただきましたが、ぜひとも庁内で論議をしていただき、近いうちに構想を発表していただくようにお願いをしたいわけでございます。
 ただ、三四六の総合運動公園の話もございますけれども、高速道路が通過するところもあるということで、非常に難しいという話を聞きます。そうしますと、私は、田辺市だけじゃなしに田辺市を中心とした広域圏の中で総合運動公園を考えていくべきではないだろうかと思いますので、ぜひそこらの考えも参考にしながら取り組んでいただければありがたいと思います。
 もう一つは、紀南の活性化はやっぱり白浜空港をどう生かすかにかかってこようかと思います。イベントの問題についてこれから論議をされると思いますけれども、その論議をする中で、地域住民の皆さんの市民的なレベルに落とした──「落とした」という言葉は悪いですが──中で検討することが大事ではないだろうかと思います。
 先日の新聞記事に、白浜町長初め議員の皆さんが女満別の方に視察をされ、女満別の方では地域住民の意識が違うという談話が載っておりましたけれども、観光地である紀南ですから、やっぱり住民の皆さんが心温まる受け入れ態勢をどうつくり上げていくかが紀南活性化の一つのバロメーターになるのではないだろうかと思いますので、どうかこの基本計画を進める場合は、ぜひとも地元の皆さんのご意見を十分拝聴しながら実施していただきたいことを心から強く要望しておきたいと思います。
 もう一件は、四月に職員の異動がありますが、そのときに前任者と後任者の手続といいますか、そういうことをぴしっとしておいていただきたい。田辺においても、土木の課が全部変わってしまって一からやり直しという状況が去年あったんです。そういうことがあってはならない。やっぱり専門家は一名ぐらい置いておいてほしいという気持ちがあります。この間、田辺の問題も新聞に載っておりましたけれども、やっぱり前任者との事務引き継ぎをぴしっとやってもらいたい。知事が心通う県政ということで、サービス・シャープ・スピードということをうたっておられますから、こういった問題に的確にこたえていただくことを強く要望いたしまして、終わります。
 ありがとうございました。
○副議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で野見山海君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は三月十八日再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(木下秀男君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時二十八分散会

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