平成8年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

平成八年三月十四日(木曜日)

○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番鶴田至弘君。
 〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 議長のお許しをいただきましたので、質疑並びに一般質問をさせていただきます。
 まず、住友金属工業の合理化計画の進行と和歌山県経済への影響についてお尋ねをいたします。
 平成五年二月議会におきまして、私は、同社が行おうとしている人員削減計画に対して、不況下で職をやめざるを得なくなった方々の再就職は極めて難しいこと、あるいは同社が多角的な産業分野に進出することは市内の中小企業に多大の不利益をもたらすこと、またそれがそこで働く人々に労働条件の悪化を招くという理由で、その人員削減計画を中止されるよう県として同社に申し入れ、その実行を求められたいと質問をしたところでございます。当時の商工労働部長は、「人員削減計画が事実とするならば、和歌山製鉄所への影響も十分考えられることでございます。県としても、従来より従業員や下請企業等に十分配慮するよう申し入れてきたところでありますが、さらに強く要望してまいりたい」と答弁をされたところであります。
 県としては、その後、住友金属に対してどのように対応してこられましたか。そして、同社はその申し入れに対してどのようにこたえ、対応されてきたか、明らかにしていただきたいと思います。
 人員削減数、出向数、再就職の状況、この間に行われた地場産業への影響等、どのように県は掌握されておりますか。
 同社は、和歌山県においても飛び抜けて大きな企業でありました。かつて県や市は、この企業の育成に莫大な財政資金を投じて港湾を整備し、道路を建設し、税制においてもさまざまな優遇措置を講じてまいりました。大企業が繁栄すれば、その影響で下請もふえ、仕事もふえ、雇用もふえて県は繁栄する、とりわけ和歌山市は企業城下町として繁栄するという論理でありました。そしてその論理は、一時的に確かに有効に働きました。同社は、みずからを地域経済の重要な担い手として位置づけておりました。
 次に紹介する文言は、同社がその繁栄を誇りながら西防沖埋め立てを発表した際の「埋立計画要約書」という文書の一節でありますが、次のように述べております。
 「当製鉄所の和歌山地域における経済的位置をみると、従業員は市内就業人口の約一五%、製品出荷額は約六四%を占めている(中略)また、当製鉄所が県内企業に支払う物品購入費、運送費、工事費や、従業員が日常生活上支出する金額の合計は、概算年間七百五十億円と推定されるが、この金額を県・市の予算総額(昭和五十二年度当初予算県二千三百七億円、七百二十九億円)と比較すると地域経済に対する貢献度が容易に推定できる。 従ってもし本計画──埋め立てのことであります──が実施できずに当製鉄所の生産規模を大幅に縮少せざるを得ない場合は、地域経済に甚大な影響を与える」、逆に言えば、埋め立てを進めることは地域経済に大きなメリットを与えると言わなければならないと豪語し、埋め立ての承認を迫っていたわけです。ここには、みずからの経済社会における社会的地位を明確に述べているわけであります。さらに、「かねてから地域社会との共存共栄を基本的な経営方針とし、三分の一世紀にわたって和歌山市と共に歩み、共に栄えてきた当製鉄所は──埋め立てができるかどうか──今や重大な岐路に立っている」として、「この選択は、単に一企業の問題ではなく、当製鉄所と共に歩む地域社会にとっても極めて重要な命題である」として、みずからその社会的責任、地域に対する責任を表明しているところであります。
 長くなりますが、もう少し引用いたします。「企業が地域社会のよき隣人として、否、その一員として、行政も住民も企業もひとしく運命共同体の構成員として、自らの社会をよりよきものにしたい願いには何ら変わりのある筈がない」、それは「企業の社会的責任でもある」と、格調高く論じているところであります。ほかにも珠玉のごとき言葉が散見できますが、以上にとどめます。
 大企業の社会的責任は、好況・不況によってその果たし方は変わることがあるでしょうが、果たさなければならないということについては、この文書自体が物語っているところであります。その限りにおいて、この文言では、同社の意思はまさに崇高であります。しかし、世界的な鉄鋼不況と称せられる環境に置かれるや、その言葉は簡単にほごにされてしまいました。
 かつての一万数千人の社員は、昨年の五月段階では、出向者も含めて約八千名と言われ、構内現場で働く人々は五千名を下るときもあると言われています。平成七年度中には、さらに一千名を超える方々が離職を余儀なくされました。この不況下で新たな職を求めなければならなくなっていると言われています。出向者三千数百名の方々が鉄鋼とはまるで関係のない、なれない仕事場の中で、もともとそこで働いていた労働者との間で苦しい競合を強いられていると聞きます。もちろん、うまく転職し、新しい道を見つけ出した方もおられますが、多くの方々はそうではなかったようであります。
 経営面では、下請への外注費の削減が図られ、単価の一方的な切り下げが行われました。それは有無を言わせぬ過酷なものであり、多くの下請零細企業は泣きながら耐えるか、時には廃業のやむなきに至りました。和歌山市の経済状況は深刻な影響を受けたのであります。そこには、地域社会との運命共同体の思想も、共存共栄の思想も見られず、企業の社会的責任の片りんもなく、徹底した資本の論理が貫徹されたのでした。もちろん、このような資本の論理は同社にだけ働いたわけでなく、不況に見舞われた大企業のすべてを貫徹したものでしたが、それはまさに地域社会への責任を放棄したものであったと言えるでしょう。
 本来は、国として、このような大企業の横暴に対して民主的規制をかけ、労働者の雇用と権利、地域経済への貢献を義務づけるべきだと考えますが、国の姿勢は全くその逆で、資本の応援団を積極的に買っている現状であります。このようなとき、地域経済への多大の貢献を期待して、過去に多大の支援を与えた自治体として、また大企業に対しては弱者である労働者や小零細企業を守る立場から、地方公共団体としての県や市は、同社に対して弱者へのしわ寄せをしないよう必要な対応をすべきだと思います。当局は、大企業の地域社会に対する責務をどのように考えておられますか。その責務にこたえるべく指導する任務は当局にあろうかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
 同社は、本年に入ってからも全社で三千四百名の削減を図るリストラ計画を発表し、和歌山でも一千名がその対象になると言われています。首切り、下請への出向、下請企業へのさまざまな負担の転嫁、それによる下請、孫請の経営的困難、そこでの労働者の解雇、そのような連鎖が考えられるところであります。新しいリストラ計画での地域経済への影響をどう考えられますか。地域経済への悪影響を未然に防止し、また最小限にとどめるために、県当局のその大きな努力を住友金属の指導に当てられるよう求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、西防沖の埋め立てについて、原点に関連してお尋ねをいたします。
 埋め立ての目的は、現在もなお公害工場の沖出しということになっています。しかし、埋め立てている当事者も、それを免許した者も、免許条件の工場沖出しなど既に全く念頭になく、新たな利用の準備に大わらわになっています。ここ五年間、法と行政が許したことと全く別のことが現実に進行しています。この矛盾を私は平成五年の六月議会でただしたところ、土木部長は「これは埋立権を所有する者としての──転用という──希望を述べたものであって、県としては、具体的な変更申請がなされない以上、従来の免許は依然有効であろう」と答弁されました。単に希望を述べたものではなかったことぐらいはだれでもわかっておりましたが、土木部長はあえてそう答弁をされました。
 それから以降、免許庁の県当局自身が埋立用地の利用検討委員会をつくり、幾つかの内実を伴った答申を受け、それに沿って利用方の研究調査を開始し、関西電力はLNG発電所やLNG基地建設のためのアセスメントを行うなど、そういう段階に入っています。もはや、住友金属が希望を述べたというような段階でないことは、万人が認めるところであります。しかし、この時点でもなお西防沖は公害工場沖出しのために埋立工事が精力的に行われているし、免許庁はそれを条件に許しているわけであります。免許権者及び免許庁は、公害工場沖出しを目的に埋め立てを許可し、みずから別の目的を持って埋め立ての進行を認知しているわけです。これは、明らかに不法行為ではないでしょうか。
 私は、平成五年の時点──ちょうど第二工区が竣功した時点でしたが──第三工区については、この時点で目的が異なったのだから埋立工事を中止し、新たな判断を新たに下すべきだと申し上げましたが、それは退けられました。廃棄物の処理という大きな課題もあり、困難な事情があっても、明らかに法の許可したものと異なった工事をすることは法に対する背信だと考えたからでありますが、それは退けられました。現時点では、県と和歌山市、住友金属、関西電力が合議の上で法の定めた目的と異なった方向に動いているということは、法治国における行為としては極めて残念であると考えるのですが、いかがでしょうか。
 公害がなくなったので工場沖出しを中止するという住友金属の申し出そのものに対しても十分な検討がなされたのか。さきに紹介いたしましたように、埋め立て前は、地域への責任のためにもと豪語しながら、その埋め立てを県民、市民に求めましたが、不況になれば鮮やかに方向転換をいたしました。将来、同社の好況期に、またまた公害発生という可能性がないとは断言できません。再び鮮やかな転換があるやもわかりません。これらを客観的に判断することなく企業も県も既成事実をつくり上げて、転用、転売へと進んでいるのはいかにも安直ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 ところで、今改めてお聞きいたしますが、公害工場沖出し中止、その埋立地を目的外に転用せざるを得ないとした住友金属は、どのような形でこの責任をとるのでしょうか。県はどのようにその責任をとらそうとしているのですか。
 住金が埋め立てのため莫大な投資をした、それで責任が果たせるとするならば、埋め立てに要した経費がそもそも幾らであったかも明らかにさせるべきで、関電への転売で幾らその投資を補てんしようとしているのかも公開すべきだと思いますが、いかがでしょうか。県の知り得ている情報も含めて明らかにしていただきたいと思います。単に第三工区を公共の用に提供されたからと、それでうやむやにしてよいとは思いません。
 また、上程された予算案の中に、八千万円を投じて紀北、紀中の発電による環境影響調査なるものが計上されていますが、県としては西防沖埋立地へのLNG発電所の建設に積極的に対応しようということですか。関電もアセスメントを行っていると聞きますが、それとの関係、調査項目など、明らかにしていただきたいと思います。
 次に、同和対策についてお尋ねをいたします。
 昨日の同僚議員の質問と重複する部分がございますが、論旨の関係上、あえて承知の上で進めますので、ご了解をお願いしたいと思います。
 地対財特法が最終年度を迎えまして、県の各セクションもその残事業の完遂に向けて大いに頑張っておられることと思いますが、来年度も百三十六億七千万円余が同和問題解決のために計上されています。これに係る諸事業の完了への展望をいかにお持ちになっておられますか。総括して知事にお尋ねをしたいと思います。
 また、去る十二月議会において、知事は議員の質問に答え、「県下全体を見てみますと、なお物的、非物的の面において幾つかの課題のあることも事実でございます。私は、部落差別の存在する限り同和対策を続けていかなければならないことを基本にしながら、差別のない社会を早急に実現するために積極的に取り組んでまいりたい」と答弁をされました。
 私は、かねがね、部落差別の現状認識について、昭和六十一年(一九八六年)の地対協意見具申のいう、「同和地区の実態が大幅に改善され、実態の劣悪性が差別的な偏見を生むという一般的な状況がなくなってきている」という評価を肯定的に受けとめるものでありますが、この意見具申が出てから既に十年近くが経過し、状況はまた一段と前進をいたしました。したがって、来年度をもって本県としても同和事業を完結し、残された課題は、昨年の地域改善対策協議会総括部会が言うように、一般対策に必要な工夫を加えつつ対応するという基本に立つべきだと考えます。
 ところで、過日の知事の答弁の「部落差別がある限り同和対策を続けていく」という意味は、この地対協総括部会の基本姿勢との関係でどう理解したらよいのでしょうか。また、差別意識もまだ部分的にはさまざまな形で残存するでしょうが、あくまでも部分的であって、普遍的なものではなくなってきています。そのような実態の中で、あえて特定地域を同和地区と指定し、同和対策と銘打って行う事業は、今の段階では有効な手だてとは考えられないようになっていると思いますが、いかがでしょうか。一般地区のおくれの克服と共通課題としてこそ有効に働くのではないでしょうか。
 また、同和対策の一般行政への円滑な移行を図ることについては、今までも述べられてきたところでありますが、そのための手だてはどのように講じられてきているのでしょうか。平成五年の質問の際、移行への準備を始めるべきだと申し上げました。余り進捗したという話は聞かないようですが、現況と来年度中になすべき準備など、どのようにお考えになっているのか、お示しいただきたいと思います。
 特に現段階では、県単独事業で個人給付的事業などは基本的に廃止の方向が望ましいのではないでしょうか。これも、検討すると言われていましたが、どこまで進められてきているのでしょうか。
 例えば子供会の事業など、成功している例では、周辺地区住民との共同の子供会として進められていますが、地区内の子供たちだけの子供会では、なぜという新たな疑問を子供たちの中にも生んでいるようなところもあります。今まで果たしてきた役割を評価しつつ、現段階では一般地区の母親・子供クラブとの合流を積極的に図るなどして、制度的に水平化していくべきときではないでしょうか。
 同和教育のあり方にも検討が加えられるべき時期に来ていると思います。和歌山県の同和教育は、文字どおり偉大な成果を上げてまいりました。今、県民の中で部落差別の意識がほとんど解消されているという現実は、まさに同和行政の諸施策と同和教育の成果であろうと思います。今、和歌山県同和教育基本方針を読みますと、それを制定した時点での決意、意気込みが改めて感じられ、感動を呼ぶものでありますが、現状認識等では、二十数年の歴史を経過して、現実との格差を感じます。
 差別をなくす教育を推し進めることは今後ともなお一層求められますが、行政的措置として、教員の加配など漫然と続けるのではなく、現実に即して、一般地区の抱えている問題と共通の困難克服へと発展させていくべき時期ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 教育界には、過去には考えられなかったようないじめ・不登校問題も起こっているときです。効果的な見直しが必要ではないでしょうか。もちろん、一部ではあれ、差別意識の残存が見られる中で、差別をなくす教育は今後とも大いに必要ではありましょう。今時点では、特に同和というジャンルを設けてそれを追求するのではなく、広く憲法の精神、民主主義の精神の涵養の中で、あらゆる差別の克服を追求する一環として進められるのが望ましいと思われますが、いかがでしょうか。
 続いて、同和問題で、市町村事業について触れたいと思います。
 市町村で行われている独自の同和対策について、市町村の行政に介入するという意味ではなく、県としてもよく検討してみる段階にあると思われます。
 例えば、同和対策事業として同和住宅が建設されていますが、その家賃の問題などで周辺住民の理解が得られない状況が生まれています。ある種の新しいマンション風の立派な住宅が、同規模の付近の民営マンションの五分の一ぐらいの低家賃であります。住居を求める若い方たちは、この格差が理解できないと言っています。
 ある市では、国民健康保険料金が、収入の多少にかかわらず、同和地区では一律四七%減免されています。国民健康保険の市民負担が高いという中で、自分より収入の多い方々の保険料がなぜ自分よりはるかに安いのだろうかと疑念を持ち、同和行政のあり方に、このままでいいのだろうかという疑問も出ております。あるいは、固定資産税があるところでは五〇%減額されるのに、自分は収入も少ないのになぜ減免がないのだろうかと、この税制に対して不満を抱いています。
 これらの措置は、過去においてはある程度説得力を持っていました。その措置が果たしてきた役割も決して小さなものではなかったと、私は考えています。しかし、現在の時点では、同和地区だけを特定して行う特別措置としては、非常に大きな問題を抱えているのではないでしょうか。このような措置は、差別をなくすという目的とは逆の作用をしかねません。一般地区の経済的困窮者を含めた援助政策に改めていくべきだと考えます。
 そのほか、ある市では、ことし改めて五十二億円という巨費を投じて共同作業所を計画されようとしていますが、過去の苦い経験が決して少なくないという状況の中で、これらの教訓が余り学ばれないままに行政化されようとしています。
 市町村で行われる独自の同和対策事業はまだまだ多くあり、現時点で検討し直すべきだと思われる施策が随分あるように思います。市町村は独立した団体ですから、県が一方的に市町村の行政にくちばしを入れるべきでないのは当然のことではありますが、一日も早く差別のない世の中をつくろうという共通の努力をしているわけですから、十分意見交換をすべきだと思います。
 南部町に続いて吉備町が、私たちの町にはもう同和地区はなくなったのだと、高らかに宣言をいたしました。本当に感動的なことでした。県としても、これらの町の業績を高く評価し、このような終結宣言を市町村が主体的に発することができるよう、指導性を発揮すべきだと思います。紹介した幾つかの事象も含めてどうお考えになっているか、民生部長の答弁を求めます。
 続いて、教育関係について質問をいたします。
 第一点目は、いじめと不登校の問題であります。
 この問題に関連して過去幾人もの同僚議員が質問をし、かつ教育長がそれに答えられておりますので、あるいは重複する点があるやもわかりませんが、新たにいじめ・不登校対策の予算も上程されておりますので、改めてお尋ねをしたいと思います。
 私は、去る九四年(平成六年)の十二月議会において、主として不登校問題に焦点を当て、これに対する教育委員会の所信をただし、現実は教育委員会の対応以上に進行しており、その対応のスピードを速めるよう対策の抜本的強化を求めたところでありました。しかし、この間、心配していたとおり事態は一層深刻さを増し、県教委の統計によりますと、平成六年度の県下のいじめ発生件数は、小学校八十八件、中学校百四十九件、高校三十六件とあり、平成五年度を五〇%も上回る二百七十三件に達しています。いじめ特有の、隠される、隠ぺいされるという性格からして、現実はさらに上回るものと考えられます。
 また、いじめなども密接に関係すると言われる不登校も、平成六年度で小学校は二百六十一人、中学校六百四十三人、合計九百四人と集約され、年に一二、三%ずつふえている状況であります。まさに、学校の中に何かが起こっているという感じであります。
 教育委員会は、この間、いじめ・不登校に対するさまざまな対応をしてまいりました。学校内での指導の充実やカウンセラーの配置、あるいは各種相談員の配置等が見られます。しかし、現実はその体制を超えて悪化していることは、数字が物語っています。問題を究明し、対策を検討する委員会も設置されて十カ月ほどになりますが、まだ有効な提言はされていないようであります。
 先日、文部大臣のいじめ問題に関する緊急アピールというものを読ませてもらいました。文言は確かに切々としたものであり、一国の文部大臣が発したアピールですから、それなりに有効に働くかもわかりませんが、読み終えて少々物足りなさを感じざるを得ませんでした。それは、いじめなどが起こってくる根本的な原因に、全くと言っていいほど触れられていないからであります。これでは、対症療法的対応はできても──もちろん対症療法も大いに必要だという前提ではありますが──根本的な対応を欠くことになります。
 県教委の発行した「和歌山県の教育」という冊子には、「近年の急激な社会環境の変化や物質的な豊かさの中で、大人も含め、子供たちが他人を思いやる心、物を大切にする心を失いがちになっており、知育偏重の社会的風潮、家庭における過干渉や過保護、さらには進路希望の挫折、学習不適応、疎外感、教職員の指導や学校の規則等への反発など、さまざまな要因が複雑に絡み合っている」と、直接的な原因に迫った記述があり、私もその判断を肯定的に受けとめるわけですが、いま一歩、さらになぜそのような屈折が起こるのかという点で、現在の学習指導要領やそれに基づく学習指導、教師たちが自由な討論や連帯をしにくくしている管理主義的な学校運営があるのではないかと思っています。
 子供たちは、学校が楽しくなくなっている、今の学習指導要領の体系では、子供たちがその能力に応じて学習がしにくく、学ぶという一番根本的なところでフラストレーションを起こしているのではないでしょうか。教師たちも、その過密な学習指導要領をこなし切れず,追われるような、あえぐような状況に追い込まれていると言われています。そんな中で、子供たちの発するSOSをキャッチできず、事が複雑になるまで対応できないということさえ起こっているようであります。したがって、根本的な対策として、県教委としても学習指導要領を直ちに全面的に見直すことを国に求め、それの実現までは教育における地方自治の精神を発揮し、その弾力的運用も大いに検討すべきではないでしょうか。また、子供たちに伸びやかに学ぶ場を保障するため、一日も早く三十五人学級の実現を図るべきだと思います。改めて教師をふやさなくても、今は生徒が減っているのですから、減らさなければその実現は段階的にでも進みます。それを強力に国に求めるべきだと思います。また、県教委独自に加配教員の配置を大胆に行うことが必要ではないでしょうか。
 前の質問のときにも申しましたが、不況の際には莫大な不況対策が財政的に行われるのです。国が今いじめ対策としてやっていることといえば、各県の小・中・高に一名ずつ、わずか県に三名の教員を配置するだけで、余りにもお粗末過ぎると思うのですが、いかがでしょうか。対症療法的手だても含みますが、それ以外のさまざまな対応が、子供に対して、学校に対して、社会に対して必要でしょう。
 県教委は、今年度予算に新たに五百八十万円の対策費を計上されました。ポスター、パンフレット、あるいは研究会に必要な費用に充てるとのことであります。積極的に計上された努力を多とするところですが、私は、この五百八十万円という金額が大変不満であります。全県の世論を盛り上げたいと、県の各部局が時々大きな集会などを行います。その予算を見ればわかるように、一回やれば百万円では済みません。いじめをなくし不登校を生まない世論づくり、環境づくりのために一回集会でもやろうかと思えば、この予算はあっという間に消えてしまいます。もう少し抜本的に諸対策を組んで必要な予算措置をする必要があるのではないでしょうか。
 埼玉県は、いじめの対策費に八億五千万円もの予算を今年度計上しています。人口が六百六十万人の県ですし、いじめ事件そのものも和歌山よりはるかに多く起こっていますから大胆な対応をしているのでしょうが、和歌山県の人口比に換算しても、約一億円になります。その内容を詳細に紹介する余裕はありませんが、五カ年計画ですべての学校に、生徒の悩みを聞いたり、いじめの予防や不登校生徒に対応する指導員を配置するとのことです。すべての学校にというところに、その構えの大きさがうかがえます。そのほか、父兄に対する施策、社会一般に対する施策と、相当壮大なものであります。金を多くかければそれでよしとするものではありませんが、必要な金を使うという姿勢は結構なことと感じた次第です。また、父母や教師OBのボランティア的活動も、大いに励ます必要があろうかと思います。登校拒否の学童を持つ方々やそれを克服しようと頑張っておられる方々がささやかな要望を教育委員会に上げています。直ちに、すべてではなくとも聞き入れてあげて、ともに不登校を克服していこうという姿勢を示されてはいかがでしょうか。この種の問題は、父母や地域社会との共同なくしては進みません。必要だと思われ、やれると思われることはともに何でもやろう、そういう姿勢で教育委員会も対応することが必要ではないでしょうか。お尋ねをいたしまして、私の第一問を終わらせていただきます。
○議長(橋本 進君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員にお答えをいたします。
 まず、西防の埋め立てに関するご質問でございます。
 埋立工事中の三工区につきましては、貴重な廃棄物処分場として極めて重要な役割を果たしているということから、埋め立てを継続しているものでございます。また、平成六年三月に住友金属から、竣功後は県において公共の用に供していただきたいとの申し入れがございましたので、竣功後、県に帰属させた上で公共の用に供することを前提として埋め立ての継続を認めておるところでございます。
 第二点の、住友金属工業株式会社からの一部施設の沖合移転中止の申し出でございます。
 県といたしましては、ただいまの鉄鋼業の取り巻く情勢の変化、並びに当初の環境改善目標が現況において達成されておりまして、同社が将来にわたって、この目標の達成はもとより、さらに良好な環境の創出を目指して努力していくことを確約しておることなどにかんがみて、やむを得ないものと考えてございます。
 埋立地の新たな土地利用計画につきましては、ご承知のように、公共、公益的利用の観点から西防波堤沖埋立地利用計画検討委員会にお諮りをして、目下検討いただいておるところでございます。
 第三点の、埋立地を目的外転用する住金の責任ということであります。
 住友金属の責任につきましては、ただいま申し上げましたように、当初の目的どおりの利用ができないわけでありますが、三工区への廃棄物の受け入れ、竣功後、公共への利用に供することとしていることなどから、やむを得ないことではないかと考えております。
 次に、同和対策に関するご質問であります。
 現行地対財特法が施行されてから四年を経過するわけでありますが、和歌山県同和対策総合推進計画に基づき、県、市町村が一体となって各種施策を積極的に推進をしているところでございます。
 平成八年度は、現行法の最終年度という大変重要な年であるということを認識いたしまして、同和問題の早期解決のために積極的な予算編成を行ったところでございます。
 また、昨年十二月に地対協総括部会長から、特別対策の終了、すなわち一般対策への移行が同和問題の早期解決を目指す取り組みの放棄を意味するものではないという基本姿勢が示されたわけであります。昨年の答弁で私は、部落差別がある限り同和対策を続けていくということを申し上げたわけでありますが、その姿勢については変わりがないと考えております。ただ、同和対策という名称を将来とも使うかどうか、その辺については議論のあるところだと考えております。
 以上であります。
○議長(橋本 進君) 商工労働部長中山次郎君。
 〔中山次郎君、登壇〕
○商工労働部長(中山次郎君) 住友金属の合理化に伴う県経済への影響についての三点にお答えします。
 まず、同社にどう対応したか、地元産業への影響はどうかということでございます。
 県といたしましては、住友金属工業株式会社の経営合理化計画に対し、口頭及び文書で、その実施に当たって従業員の意思を十分尊重し、雇用の確保を図るよう強く要請し、下請関連企業等の経営安定についても責任ある対応を求めてきたところでございます。しかしながら、その後、予想もしなかった激しい円高等もございまして、住友金属工業株式会社においては、在庫の圧縮等、コストの削減に努める一方、鉄鋼事業の基盤強化に向けた努力が続けられているところでございます。
 和歌山製鉄所の平成七年度の粗鋼生産量は約三百二十万トンになる予定であり、ここ数年、ほぼ横ばいとなってございます。従業員数では、平成八年二月末現在、八千五百七名で、うち出向者は三千四百四名となっており、この三カ年で約千二百名の人員減となってございます。
 再就職等については県としても努力を行っており、多角化事業の地元産業への影響につきましては、影響も考えられますが、地元産業にできるだけ影響を与えないよう要請しているところでございます。今後も、引き続き要請してまいりたいと考えてございます。
 次に、地域社会への責務等についてでございます。
 和歌山製鉄所におきましては、さまざまなコストの削減を行う一方、鉄鋼事業の維持発展を図ることが責務であるということから、多額の投資と最新技術が投入されているところでございます。このため、新シームレスミルの建設、高級鋼板生産のための設備改善に続き、先般、新製鋼工場の建設も計画されるなど、和歌山製鉄所は住友金属の西の拠点として、国際的にも高品質、高付加価値製品を製造する製鉄所へとリフレッシュ化が推進されてございます。
 和歌山製鉄所の事業基盤を強化することが生産性及び収益性の向上となり、そのことが今後の雇用の安定と下請企業等との円滑な関係を維持することにつながるものと期待しているところでございます。
 次に、新しいリストラ計画での地域経済への影響等についてでございます。
 新たな合理化計画につきましては、本年一月、国際競争力強化と一層の成長を基本に、平成七年度末をスタートの基準としまして、平成九年度までの新中期経営計画が打ち出されております。今回の計画では、人員の合理化と和歌山製鉄所に新製鋼工場の建設を行い、二十一世紀への積極姿勢を図っているとしているところでございます。
 この新製鋼工場建設に五百億円、その他既存工場の改造、更新等の投資も行われることにより、関連企業、下請企業、地域経済への波及効果は相当期待できるものと思われます。
 人員の合理化につきましては、住友金属工業株式会社全体で三千四百人の計画でございますが、和歌山製鉄所の人員についてはいまだ確定していないとのことでございます。
 県といたしましては、これまでも和歌山製鉄所の雇用に関し、雇用確保を図るよう要請するとともに、下請関連企業の経営安定についても地域経済のリーディング企業として責任ある対応を求めてきているところでございますが、企業としての経営方針もあることから、今後も和歌山県の実情をできるだけ理解してもらえるよう努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 鶴田議員の西防埋立工事に関連して、転売予定、埋め立て経費を公開すべきとのご質問にお答えします。
 この点に関しましては、現在、電源立地の可能性を探るため、関西電力が環境調査を行っているところであります。その結果を踏まえて公有水面埋立法の規定に基づく埋立地の譲渡申請がなされれば、その段階で埋め立てに要した費用等を勘案し、譲渡価格等を法律の規定に基づき審査することとなります。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 保健環境部長鈴木英明君。
 〔鈴木英明君、登壇〕
○保健環境部長(鈴木英明君) 西防の埋立工事についてのご質問のうち、環境影響調査についてお答えをいたします。
 保健環境部の平成八年度事業として、大気環境影響予測調査八千万円を計上してございます。これは、火力発電所の立地計画に伴い、事業者が行う環境影響調査結果の審査に関連し、国の電源立地環境審査補助金の制度を利用して、県において検討、評価するために必要な調査を行うものでございます。
 内容といたしましては、和歌山火力発電所計画と御坊第二火力発電所計画を対象に、半径約三十キロメートルの範囲で、それぞれ硫黄酸化物及び窒素酸化物について大気拡散シミュレーションを実施するものであり、事業者が実施する環境影響調査結果が適正かどうか、また他の発生源も含め、将来の大気環境に支障を及ぼすおそれがないかどうかを検討するための調査でございます。
 以上です。
○議長(橋本 進君) 民生部長木村栄行君。
 〔木村栄行君、登壇〕
○民生部長(木村栄行君) 鶴田議員にお答えいたします。
 残事業と一般行政への移行のための取り組み、及び個人給付的事業につきましては、一括してお答えをさせていただきます。
 法期限後に残された課題でありますが、物的な面につきましては、全体的に見ればおおむね格差は是正されているものの、一部には取り組みのおくれているところもあり、法期限後に持ち越さざるを得ない事業もございます。これらの事業は、行政が責任を持って完遂しなければならないと考えております。
 一方、非物的な面につきましては、国及び県が実施した同和地区実態調査について、現在、分析検討作業を鋭意行っているところでございますが、現時点で見る限り、経済環境の変化に影響を受けやすい小規模零細企業や個人経営が多く見られることや、中高年齢層を中心とした不安定就労の問題、高校や大学への進学率の格差、また差別事件が依然として発生しているなどの課題がございます。これらの課題につきまして、県民の方々のご理解を得ながら行政の責務として解決していくことが同和問題の早期解決につながるものと考えております。
 また、同和対策は永続的に講ぜられるべき性格のものではなく、迅速な事業の実施によってできる限り早期に目的の達成が図られ、一般対策へ移行されるべき性格のものであるという考え方を基本としながら、これまでの事業の成果が損なわれるなどの支障が生ずることのないよう、県単独事業等も含め、現在残されている課題を整理分析し、解決への方策について検討しているところでございます。
 続きまして、市町村に対する指導についてでございます。
 同和対策を今日まで二十七年間にわたって実施してきた結果、相当の成果が得られる中で、すべての同和地区が同じような状況ではなく、地区間格差もあらわれています。
 もとより、今後の同和対策は幅広く県民のコンセンサスを得ながら進めていくことが重要であり、施策の公平な適用という観点からも、著しく均衡を失した低家賃、国民健康保険を含めた税の減免等々についての是正に取り組まなければならない時期であろうと認識しており、今後市町村とも検討を重ねてまいりたいと考えております。
 一方、事業によっては課題が解決される状況を迎えている市町村もございます。しかし、教育・啓発等につきましては、広域的に取り組まなければならない重要な課題であると考えております。
 なお、今後とも、残された課題解決のために同和対策を推進しなければならないと考えております。
 また、同和教育子供会は、四十四年間にわたる活動の中で、同和問題が提起する課題、つまり子供たちがその持てる能力を十分に発揮できる条件を阻害している諸問題の解決に、相当な成果を上げてまいりました。しかしながら、今もなおそれぞれの地域において抱えている課題があることも事実であります。一方、課題が解決されたとする子供会については、設置主体である市町村の意見等も踏まえて、地域子供会への移行も念頭に置きながら、あるべき姿を検討してまいります。
 以上です。
○議長(橋本 進君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) いじめ・不登校問題四点と同和教育のあり方についてお答えいたします。
 まず、いじめ・不登校問題ですが、一昨年末からいじめによる自殺が全国で相次いでおります。また、登校拒否についても年々増加の傾向にございまして、しかも長期化しつつあることに対しまして心を痛めてございます。
 その原因や背景につきましては、学校、家庭、地域社会の状況が複雑に絡み合っていると考えております。そのため、昨年四月に登校拒否・いじめ問題に関する検討委員会を設置いたしまして、核家族化の問題、少子化の問題、また遊びの減少の問題、自然体験の不足、さらには生命への畏敬の念の希薄化の問題等々、諸要因について集中的に論議をいたしてまいりました。
 また、学校における子供理解や教職員の共通理解と協力体制など、具体的な指導のあり方について協議するとともに、緊急に施策を講じるべきものについて、あるいはまたある一定時間をかけて段階的に取り組むべきものについて、それぞれさまざまな立場からご意見をいただきました。その結果、緊急的な措置といたしましては、いち早く本県独自の緊急アピールを発していじめの実態把握や防止に努めるとともに、教育相談電話の活用について周知もいたしました。また同時に、教育相談体制を充実させるために、地方教育相談推進委員を八名から二十名に増員いたしました。
 また、現代教育問題特別講座など、あらゆる機会をとらえていじめ防止に関する研修を行うとともに、市町村教育委員長・教育長会議などを初め、さまざまな会議等において積極的な取り組みの展開を訴えてまいりました。こうした中で、校長会やPTAなどでも独自のアピールを出したり、子供たちの自発的ないじめ根絶の取り組みなども広がってきております。
 さらに、平成八年度予算におきまして、ポスターやリーフレットなどの作成・配布、あるいは県下八地方でのシンポジウム等の開催、専門的な指導者を派遣して相談に応じるカウンセラー派遣事業、県独自の実態調査の実施等について、今議会でご審議をお願いしてございます。
 各学校における教育活動については、一人一人の子供に目を向け、学校の実態や課題に即した、弾力的で魅力ある教育課程の編成を指導しているところであります。
 また、学習指導要領につきましては、これまでも、学校週五日制との関連で、見直しが必要であることを全国教育長協議会等で機会あるごとに要望してきてございます。
 三十五人学級につきましては、法定数とのかかわりから困難でありますが、生徒指導等に関する教員の加配につきましては、それぞれの実情に応じ、できる限りの配慮をしているところでございます。
 今後、こうしたさまざまな取り組みを見きわめ、ご紹介のありました他府県の事例なども参考にしながら、また県民の方々からのご要望も踏まえ、本県の実態に即した効果的な施策や学校での指導のあり方を検討して、できるものから実施してまいりたいと考えてございます。
 次に、同和教育のあり方についてお答えいたします。
 本県におきましては、これまで県同和教育基本方針に示されておりますように、憲法や教育基本法の精神に基づき、部落差別を取り除く人間を育成するため、積極的に同和教育を推進してきたところであります。
 昨年十二月二十日に出された地対協総括部会長の談話におきましては、今後、なお存在している格差への対応とともに、差別意識の解消に向けた教育及び啓発をさらに積極的に推進すべきであると述べております。
 教育委員会といたしましても、平成四年に実施した学習状況調査の結果や高校、大学への進学率に見られる格差、あるいは県民の意識調査の結果等から、教育面で解決しなければならない課題が残されているととらえております。こうしたことから、地域改善対策協議会での協議に注目するとともに、県同和教育推進協議会等において幅広いご意見をいただきながら、今後とも子供の実態や地域の実情に即し、積極的に同和教育の推進に努めてまいりたいと考えてございます。
 同和教育推進教員につきましては、各学校において、同和教育推進の中心となって同和問題解決のために取り組んでいるところであります。そのことが、いじめ問題など、子供の人権にかかわる問題の解決にもつながるものと考えてございますので、今後ともその任務と位置づけを明確にしながら配置してまいる所存であります。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、再質問をさせていただきます。
 まず、知事にお尋ねをいたします。
 埋め立て条件と現実との乖離ということについて答弁をいただきましたが、私は、十分に納得できません。私も、頑固に、公害工場の沖出しをやみくもに求めているものではありません。やむを得ないときにはやむを得ない事情というのが生まれるであろうということも、客観的に、理論としては起こり得ることだと思っております。しかし今、埋め立て条件と全く異なった事態が進行している。
 住友金属の方から括弧つきの希望というのが出されて以来、公害工場の沖出しという目的と、もう一つの廃棄物の処理という問題とが一緒になって、片一方の柱がなくなったにもかかわらず、廃棄物の処理という課題もあるから、それは当然進められていいんだということは、埋立免許との関係で明らかに違うわけですから、ここは明確にすべきだと思うのです。けじめがありません。要するに、「遺憾だがやむを得ない」と。最近、私は非常に便利な言葉だとつくづく感じるようになったのですが、遺憾だがやむを得ないということで何でもそういうことが進められるのか。これは大変不思議な事態です。そういうことですべてが許されてよいものでしょうか。この点、私はどうも県と大企業との間に一種のなれ合いが生まれているのではないかと。
 世界的な鉄鋼不況という問題は確かにありますし、住金には住金なりの事情もあるでしょう。しかしそこは、埋立免許の条件と現実との違いを明確にして、法的にあるいは行政的にきちんと措置をし、次の段階に進めていくべきだというふうに思います。
 「遺憾だがやむを得ない」ということでずるずると既成事実をつくって進めるというのは、現在の法には違法ではないけれども、法律の精神に反する行いだと思います。その点についてどうお考えなのか、改めてお尋ねしたいと思います。
 もう一つ、責任の問題であります。
 私は、当然、住友金属に責任を求めるべきであると思います。どのような責任のとり方をするのかということについては、それは議論のあるところであって、これから大いに論議をしたらいいと思いますが、経済事情が悪くなっているから仕方がない、第三工区を公共に提供しているからそれをもって責任はないと、こういう論理はないと思います。やはり責任は責任として明らかにし、どのような責任をとるのか。それは、第三工区への公共への提供ということでその責任のとらせ方をしているのかどうか。そういうところが明確になっていないように思います。
 第三工区を公共に提供した、経済的に苦しい状況にある、したがって責任を問わないという論理は、逆になっているように思うんです。そういう点で、やはり責任の所在、責任のとり方というのを明確にしていくことが必要ではないかと思いますので、再度答弁を求めたいと思います。
 いじめ・不登校問題につきまして、教育長から答弁をいただきました。
 随分とご苦労をされていることについては、私も十分承知をいたしております。どうか、予算的な措置も大胆に組まれて、必要な措置はどんどんとやっていく、やれることは何でもやっていこうという姿勢にお立ちになって大いに頑張っていただきたいと思います。
 父兄との協力、地域社会との協力、いろんなことがこれから求められてくると思います。そういう中で、一九九六年という年、平成八年という年が、和歌山県の子供たちの社会の中で不登校、いじめなど克服していけるんだという展望の見える年に──この年はそれを克服していける展望の見える年だったんだと、そういうふうに言えるような平成八年度、一九九六年度にしていっていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
 以上で、第二問を終わります。
○議長(橋本 進君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員の再質問にお答えをいたしたいと思います。
 その辺のけじめがはっきりついていないではないかというお話でもありますが、先ほどもご答弁をさせていただきましたけれども、工場の移転によって達成することとされていた環境改善目標は一応達成をされております。
 それから三工区の埋め立て継続につきましては、当初の埋め立て目的の中には、先ほどの公害発生源の移転ということもございますけれども、さらに廃棄物の最終処分場の確保、それから緑化の促進、港湾設備の改善などということもあるわけでございます。そういう意味におきまして、埋め立て目的の一つである廃棄物の処分場として利用されるということなども、事情としてはございます。
 竣功後、県に帰属させて公共の用に供するという前提にしておりまして、埋立法の趣旨に反してはいないということで今後対応してまいりたいと思います。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──以上で、鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時五十六分休憩
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