平成8年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(中山 豊議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

平成八年三月十三日(水曜日)

 午後一時五分再開
○副議長(木下秀男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 32番中山 豊君。
 〔中山 豊君、登壇〕(拍手)
○中山 豊君 議長のお許しを得て、数点にわたって質問をさせていただきます。
 まず最初に、地すべり防止、がけ崩れ対策についてであります。
 林業費目で、治山費、地すべり防止事業費、県土防災対策費、治山事業費等、あるいはまた砂防費目で、地すべり対策事業費、地すべり防止施設修繕事業費、急傾斜地崩壊対策事業費、道路維持費目で、道路維持費、道路災害防除費等、地すべり防止、がけ崩れ対策についてさまざまな観点から対応すべく、かなりの予算をつけられていることを予算書を通じて勉強させてもらいました。
 人家や道路に災害が予想される危険箇所の特定は、大小を問わず、既に県下全域にわたって調査をされて拾い上げ、把握されているものと思いますが、昨年は新宮でがけ崩れ、本年に至っては北海道でトンネル内の岩盤崩落事故、そして三月二日に滋賀県伊吹町の土砂崩れ、三日に高知県安芸郡北川村県道に向けての山崩れ等、引き続き発生しているとの報道がありました。一たん発生すれば人命及び人家に多大の災害が及び、はかり知れない被害となることを知るわけであります。
 農林水産事業費の中で一般治山に約五十億、地すべり防止に約三億、土木費の中でこの種の事業として約四十億円ほか、当初予算で工事箇所づけされたものだけでもおよそ百億円近くのものになってきているのではないかとお見受けするわけであります。
 ただし、次の一点だけお尋ねを申し上げて、この質問項目を締めくくりたいと思います。
 県道海南金屋線改良整備に伴い、地域に入っていろいろな取り組みを進めようとしたら、別所地区内を見るだけで、地すべりあり、計画の具体化は極めて困難視されて、なかなか予算もつけられないし、事業化されることにならない。ここの箇所などは予算表に出ていませんが、こんなところは県下至るところにあると考えられるわけです。
 県下で予算づけされている箇所は特定された箇所の何%ぐらいあるのかな──五%ぐらいにしかならんのじゃないかとお見受けするんですけれども、滋賀県伊吹町にしても、高知県安芸郡北川村にしても、新聞報道によれば、事故が発生してから土木事務所が対応していわく、パトロールしたが、あるいはパトロールしているけれども、今までに崩れはなく、またはっきりした前兆もなかった、異状はなかった。共通して言われる言葉であります。
 いつどこで発生するかもしれない地すべりや崩壊に対する県としての基本的対応についてのお尋ねをしながら、本年予算づけされていない箇所にも厳しく対応されるという構えをお聞きしておきたいと思います。
 先ほども申し上げましたように、事故が発生してから土木事務所が、前兆がなかった、異状はなかったというようなことを言われても、しまいであります。一番危険なところから箇所づけして対応しようという県の取り組みはされるんでしょうけれども、全体の箇所に比して予算化されているのは五%ぐらいだと推測するわけです。他の箇所でいつ発生するかもわからないこのような災害に対して、大変難しいお話かとも思いますけれども、基本的にどのように対応されようとしているのか、お聞きしておきたいわけであります。
 次に、県営住宅建設についてであります。
 これについては、素朴に市民の声を反映して当局の取り組みを促したい。県営住宅建設についての手順はどうなっているのかということを素朴にお聞きしたいわけであります。
 海南市には、十四戸しか県営住宅がありません。これは、他地域と比べて格段の差があります。それのみか、昭和二十年代に建てられて以後四十年間、県政は住宅行政の上で海南市に何ら手をつけられていないと言っても過言ではないと、市民は見ているはずであります。海南市は人口が減ってきているのに何で県の住宅も建ててもらえないのよというのが、海南市民共通の言葉であるわけです。
 これを中山がほうっておくわけにはいかない。壇上を通じて県営住宅建設への県当局の積極的な姿勢をお求め申し上げながら、所信をお伺いしたい。県政があまねく公平に県民に及ぶようにされることを求めたいわけであります。
 そこで、先ほども申し上げたように、どんな手続とどんな手順で県当局にお求めしたらこれが実現されるのですか。これが市民の切なる素朴な要求であります。
 ある人は、県事務所が海南市にないから県民の声が県庁に届かないのかとも言います。県会議員は何もしていなかったのかということは──以前の人たちは知らない。わしがここへお世話になり出してから一年目だから。一年経過するわけですけれども、このことを抜きにして二年目に進んでいくわけにはまいらないから、どんなにしても、一年を経過しようとするこの壇上からお尋ねしたわけです。皆さん、意のあるところをお酌み取りください。
 人口急増地区でなくても、都市計画の人口対策必要上、求められることもあるでしょう。今年度予算を見ると、継続にしろ、新規事業にしろ、特定の地域に傾斜し過ぎているのではないかというふうに僕の目には映ります。ひがみかもわからないけれども、余りひがみを誘発するような予算と県の住宅行政にならないようにお求めしながら、しかとしたお返事をいただきたいと思います。
 三つ目、貴志川環境保全についてであります。
 平成元年、環境庁が全国で百十九カ所にわたって選定した「ふるさといきものの里事業」の取り組みの中で、行政が携わっている自治体が八つあり、その認定を機に八つの町の代表が年に一回、日本一のホタルの里を目指して「ほたるサミット」なるものを毎年開催しているようであります。
 我が和歌山県貴志川町──海南市と隣接しているのよね──が本年六月、サミット会場になっているとのことであります。町は、これのために新規に二千五百万円の予算を計上なさっているようであります。ホタルの発生地を保護することを通じて、自然を見直し、観光・経済の発展と文化交流等を図り、活力ある豊かなふるさとづくりを推進するものと期待されるわけであります。
 貴志川に強い関心を寄せる者の立場から、ほたるサミットに関連して幾つかのご質問を申し上げたいと思います。
 まず一つに、ごく限られた自治体の取り組みであるとはいえ、全国から関係者が和歌山に来られるということでもあるし、県も何らかのかかわり合いを持ち、ご支援申し上げる意向をお持ちではないのか。僕としたら、ご支援申し上げて当たり前ではないだろうか、ご支援を申し上げてほしいという気持ちを込めて、お尋ね申し上げたいところであります。
 次に、ホタル発生・生息の自然環境は、清らかで豊かであることが条件であります。ホタルの発生・保護に努める営みは、自然を守ろうとする人々の心の発露によるところと思います。貴志川のある特定の箇所だけにとどめられてよいものではありません。貴志川上流に住む我々にとって、環境保全の観点に立たざるを得ません。
 それに伴い、次のことが気になるので、お尋ね申し上げます。
 貴志川上流に海南市の別院地区がありますが、その貴志川流域に、和歌山石油精製の前身である富士興産株式会社がいわゆる廃棄物を投棄した箇所があります。今は土で覆い、貴志川護岸に油の浸透してくるのを防ぐ措置を講じているとはいえ、十分とは言えないわけであります。いまだに貴志川の流れに油が浸透してきているとの話を聞き及んでおります。
 ほたるサミットで全国から人々が集まってきて、「ホタルだ、ホタルだ」というふうにして自然環境を保全しよう、よみがえらせようという人々の心を逆なでするようなことが上流に位置していていいのだろうかという疑問であります。
 河川環境保全面から見て、現在、上流隣接地で進められている水辺環境整備事業を下流に延伸し、これの対策とあわせ一連区域の良好な水辺環境を創造してはどうだろうかということをご提起申し上げながら、当局のお考えを聞きたいわけであります。貴志川でほたるサミットを実施しようという試みにそぐわない環境は直ちに改めていっていただけるようお取り組みをお願いしたいわけでありますが、いかがなものでしょうか。
 これにかかわる三つ目の問題であります。かつらぎ町志賀地区に関電の変換所なるものが建設されようとして、大きく山林を開発されるようなお話があります。変電所というのは聞くけれども、変換所というのは何だろうかと、いろいろ教えてもらえば、直流から交流に切りかえる施設だと言います。四国の方で発電したものを紀伊水道の海底ケーブルで送ってきて、かつらぎ町のその地区で変換をし、関西一円からそのあたりに電気を送ろうというものでしょうか。下流域に災害が起こらないよう厳しい対応が求められているところであります。
 ホタル発生・育成保護を通して豊かな自然環境を守ろうとする流域住民の努力とは逆の結果を招くようなことにならないよう望まれてなりません。現状と、それに対する取り組みをお聞かせください。
 次に、三百七十号と土地区画整理事業にかかわってのご質問をさせていただきます。これは十二月議会でも取り上げさせていただいたわけですが、さらに具体的なところでご質問をお願いします。
 三百七十号整備事業に関連させてみても、重根土地区画整理事業は避けて通れない課題であります。都市計画街路改良工事として幡川・重根区間で工事が進められているところですが、さきの議会でその工事が間断なく引き続いて進められるよう求め、龍部池までの具体化を急げと申し上げました。東インターから霊峰高野山まで観光バスで難なく走らせるような環境をつくってほしい、このような願いからであります。それに答えて重根土地区画整理事業との関係を述べられたが、このたびはさらに突っ込んで促進方をお求めいたします。
 重根土地区画整理事業に対し、昨年は六百万円、ことしは八千万円としているけれども、特別に区画整理事業が進展するとの考え方に及んで予算づけされたものかどうかということ。そのことを通じて重根区画整理事業の進みぐあいや展望について把握したかったわけであります。
 組合施行の区画整理事業であるところからか、今日まで必ずしもスムーズに進展したとは見られません。むしろ船山に上げてしまった感があるが、県当局はどのようにしておられたのかということも含めてお尋ね申し上げたい。
 土地区画整理事業法百二十三条の後段に、知事はその「事業の施行の促進を図るため必要な勧告、助言若しくは援助をすることができる」とあります。県当局がこの事業に今までどんな勧告、助言をし、援助をしてきたのか、お聞きしたかったわけであります。中でも、「援助」とは何か、具体的に示されたい。
 何ゆえなら、五年、六年と事業費ゼロで、何ら事業の進捗を見ないままの状態が続いていただけに、ことし八千万円もつけられたとしたら、これは動き出すんだなと素直に受けとめさせていただいていいのだろうと。ただし、野鉄の軌道敷が廃線になったにつけて、それを取り入れて減歩率を下げることから関係者の皆さんが同意してくれて事業が進捗するという状況を踏まえてのことなのか、万が一それが行き詰まって思ったようにいかなかったとしたら、百二十三条の後段にある知事は「援助をすることができる」の「援助」が、お金だけではなくて、体制や手法の問題も含めて何かあるのでしょうかということをお聞きしたかったわけであります。これは、三百七十号の整備促進のためにも猶予ならない問題だと受けとめているからであります。
 次に、阪井地区について。
 三百七十号について、比較的人家の少ないところにバイパスを通し、木津の台地で四百二十四号につなぐと、十二月議会で土木部長答弁をいただきました。それは将来に向けての構想を示されたものとしてよしとするけれども、「百年河清を待つ」というのでしょうか、それを黙って見ている手はないという状況にあります。当面、阪井地区内の交通困難な状況は放置できないからであります。
 それで、電車の軌道敷の使い方について具体的な提起をしながら、当局の考えをさらに進めたところでお聞き申し上げたい。
 阪井地区内全線はもちろんですが、路線バス、大型貨物、ダンプカー等が行き通いできない状態にあります。龍部池東よりの市道との交差点の混雑状況に代表されるように、一刻も早く解決すべきであると思います。これに具体的対応をしないでいると、県政の怠慢との批判を免れないわけであります。軌道敷をいましばし拡幅整備して阪井地区内をそれぞれ一方通行の措置をとって緩和さすか、あるいは県道沖野々森小手穂線を重根に抜いて大型車を阪井地区内現道に入れないようにせよと、地区民の圧倒的多数の望むところであります。積極的対応を求め、建設常任委員長に身近に控えていただいているので強力なバックアップをいだたけるものだということもつけ添えて、当局にご質問をしたいと思います。
 次に、新農政のもとでの農業についてお尋ねを申し上げます。
 食管法が廃止されて米価の下支えが外され、新食糧法のもとで米の販売等が完全に自由化されてからの米作農業のあり方が大きく問われるところとなっているけれども、県下の米作農業にかかわる農家や団体は大変な時代を迎えています。
 県事務所を通じて平成八年の米作転作目標面積を管下の自治体におろし、生産者別に割り当てられようとしていますが、米の最低輸入量──「ミニマムアクセス」とか申すらしいんですが──をどうするのかとの面から見ると、今割り当てられようとしている転作目標はいわゆるミニマムアクセスを減反面積に匹敵させた形でおろしてきていると、素直に見ればそう見えるわけであります。新食糧法下では自由につくれるはずなのにとの批判も多く、輸入しながら減反するとは何ですかというふうな素朴な声もはね返ってきているところであります。
 これらの極めて矛盾に満ちた農政と言わざるを得ないところで、米の生産調整の名のもとで昭和四十年初頭から減反割り当てがなされ、作付のない田を休耕田と言い、赤紙を表示するなどされていたことが、きのうのことのように思えてなりません。一向に改められようとしていないのであります。
 そのころ、中国を訪問する機会を得ました。あたかも中国文化大革命の前夜であり、国交回復のないころであったから、香港から九龍に入り、広東から北京へと飛んだが、ころは四月下旬、北京のメーデーに招かれてのことでありました。
 南中国は既に雨季に入り、田植えを済ませた見渡す限りの広大な水田が冠水していましたが、田植えの済んでいない水田には何十人もの農民が集団で田植えをしている状況を飛行機の窓から見ることができました。そのときに思ったんです。日本では国民の主食となる米をつくらず休耕などしている、しかも米をつくらない農業者に補助金や助成金まで出して減反を迫るなどというようなことをしている、一方、隣国・中国はこれだけ広大な農地を余すところなく植えつけしているではないか、やがて勝負をされてしまうと、ひそかに憂えたものであります。それから約三十年、食糧に事欠くことはない日本の状況ではあるが、大変危険な橋を渡っていると、だれしもが言わず語らずのところであります。
 そもそも日本の国は、農業で国を興し、発展させてきた歴史を持つだけに、文化は農業の中ではぐくまれてきました。いわく、農耕文化と言われることは言をまちません。米作転換、減反政策、生産調整、いかように言おうと、米をつくらないことによって日本の農業は隅々から解体し始めていると見受けられるのであります。証拠に、文化のほころびが至るところに目立ち始め、日本の社会がかつて経験したことのない出来事や犯罪が起こり、あまつさえ国政の場にまで及んできているとお見受けするわけであります。
 いじめ、登校拒否、自殺など、かつて考えも及ばないことであります。愛知、新潟、千葉、福岡で、中学生や高校生の痛ましい自殺事件がありました。これらは米どころで起こっているわけであります。最も農業の破壊が進んでいると思われるところに発生しているのではないかと思われたりするわけであります。
 十二月県議会文教委員会でこのことの討議があり、幸いにして和歌山に痛ましい事件が起こっていないけれども、和歌山の教育をどんなに総括しているのかとの問いに、当局の答弁を待たずにある議員が、勤評闘争でお互いに鍛え合われたからだと、さりげなく言われました。このことは委員長報告にはなかったんですけれども、重要な指摘だ、これに触発されて最も深い探究がなされなくてはならない、このように思うようになりました。
 農業と教育の関係。いじめ、登校拒否、自殺、これはただ単に教育の中だけに起こったものではなくて、日本がはぐくんできた農耕文化、日本の伝統文化が破壊されている状況とのかかわり合いでとらまえるべきではないかと、その委員の発言が一つの契機になっていろいろ考えてみるところでした。いわば農耕文化の侵食作用が子供に及ぶとき、いじめ、登校拒否、自殺へと進展していくものではないか。
 農業、文化、教育とつないで検討する衝動に駆られ、問題意識を持ち続けているときに、「中央公論」三月号に、ジャーナリストとして世界で初めて宇宙を飛んだ秋山豊寛はジャーナリストをやめて農業に転身するのだと、「宇宙飛行士が大地に還った理由」として書いているわけであります。
 すなわち、「飛行中における衝撃は、命のかたまりのような地球を見たことから、こんなものを見てしまった、後はどうすればいいんだろうという思いとなってあらわれた。こうした思いが、おれはこの地球についてほとんど何も知らないという覚醒をもたらした。これらの要因に日ごろから長生き願望が加わり、農業を選択する動機を形成した」、このように書いている箇所がありました。長生きの道は農業だということを示唆しているものと受けとめたわけです。
 少し回り道をしましたが、和歌山の農業は和歌山の農業者によって創造されなくてはならないと思いますけれども、いま一度、生産調整対象水田面積──ガイドラインですね──などという割り当て、すなわち減反割り当て面積を下に示すがごとき、また加えて助成金などでもって農業者の心を崩すような策はやめて、いわゆる和歌山県の二十一世紀農業振興計画の見直しから始めてはどうだろうか。
 けさほど来も同僚議員のお話を聞いていると、日本の経済の行き詰まりを説かれておりました。それが政治の面や経済の面にあらわれたお話はありましたけれども、これが農業の面にあらわれたとしたら、新農政であり、ガイドラインと言われたりするようなところに出てきている。それが教育の面にあらわれたら、いじめや登校拒否、自殺ということとしてあらわれてくる。まさに大変なことであると見受けるんですけれども、これらをやめて──和歌山の文化を語ろうとすれば、ここのところを抜きにして済まされないのではないか。新食糧法下でガイドライン、減反割り当てを万が一認めたとしても、二十一世紀農業振興計画の具体的施策はこことのかかわり合いで論じられなければならないのでないかと考えているんですが、申し上げ、お考えがあったらお答えいただきたい。むしろ、教えてほしいと思います。
 さて、最後の質問になろうかと思うんですが、七番目の登壇ともなると、当初予算議会でもありますので、西口知事の手による初めての予算にあれこれと集中した質問が当然あってしかるべきだと思います。そこで、重なりの部分を避けながら、以下お尋ね申し上げたいと思います。
 知事として初めての予算であったし、和歌山新時代創造に向けたスタートの年としての予算で、論議を重ねて編成したと説明で述べられました。あたかも新知事として登場された昨年十一月二十四日の時点は、既に事務当局は予算要求案を決定されていたと思われます。すなわち、予算編成作業が動き出していたさなかの知事の登壇であったとお見受けするわけであります。
 十二月議会での所信表明は鮮やかなものであっただけに、いまだに心に鮮明に残っています。いわく、県庁を辞して一年、県下を歩いた。県民の声は県庁に届いていない。──いい言葉ですね、これは。県庁の意思が県民の心に届いていないことがわかった。開かれた県政を築かねばならない。歴代知事でこういうことを言った知事は何人おったのだろうか。わしは全然知らんけれども、非常に鮮明に残りました。
 「県民の声が届いていない」とされるところに、県民の声を予算にどう反映させるか、私にとって大きな関心事であったわけです。予算編成の実務が進んでいるさなかの就任であっただけに、しかも「県民の声が届いていない」と断言されつつ事務当局に対して県民の声を反映させようとする知事にとって大変な苦労があったと思うのは当たり前であろう、僕だけではなかろうと思うわけであります。提案された予算に仕上げるための一番の苦労は何だったのか、また、あなたの公約がこの予算の中にどのように反映されているのか、さきに登壇した議員への答弁の中でも述べられておりましたけれども、改めて予算に対する知事の自己評価をお聞かせ願いたいと思います。
 役所の機構、中でも長年培われた体質や気分というものはなかなか改められにくいものだと推測いたします。新しい知事の登場により、知事が掲げる方向に直ちに呼応しようとする側面と、頑固に今までの姿勢を崩さないでいようとする面と、相交わったところに今県庁があるのではないかと、県民からよく耳にするのであります。開かれた県政を目指して予算編成の過程で乗り越えられた幾つかの成果を生かして、予算は為政者の顔だとも言われることから分析的に把握したいので、そのあたりのお話をお聞かせ願いたいと思います。
 交付税措置のある起債の積極的活用と各種基金の取り崩しで財源を確保したとして、投資重点型の積極予算だとみずから表明されているわけであります。県勢活性化と県民福祉の向上につながる施策がうかがえるところは、知事にとって初めての予算であるところからなのか、県民の評価が集まるところであろう、このようにも思われます。開かれた県政、弱者や常に日の当てられにくかった者に向けての県政を今後とも貫かれることを求めながら、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○副議長(木下秀男君) ただいまの中山豊君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 中山議員にお答えをいたします。
 八年度予算編成についてでありますけれども、お話のように、私が就任しました昨年の十一月二十四日は、予算編成作業が事務的に既に始まっておった時期でございます。そうした状況の中で、私は、一年間県下各地を歩いて県民各層の率直なご意見をじかに聞いてまいった経験を踏まえ、就任後直ちに必要と考える施策につきまして、各部で検討の上で改めて予算に反映するように指示をしたところでございます。今思えば、関係課には事務上、余分の仕事をしてもらった、負担をかけたと思っております。
 この結果、今回提案いたしました予算案は、地方財政を取り巻く環境が非常に厳しい中で、行政改革の観点から事務事業の見直しを行いながら、可能な限り私の提言、公約についても盛り込めたものと考えております。満足のいく内容になったと、自負をしておるところであります。
 県政の究極の目的は、どの地域においても、どんな立場にあっても、「和歌山に住んでよかった」と思えるふるさとづくりであるということを常に申し上げておるわけでありますが、その信念のもとに今後一層開かれた県政を推進していきたい。既に、ファクスやパソコン通信による知事直結の提言システムを実施しておりますけれども、八年度予算におきましても、県民各層との意見交換、あるいは県の施策の進捗状況等を紹介するグラフ誌の発行を計画しておるところでございます。
 今後とも、お話にございましたように、弱い立場にある方にも耳を傾けてまいるとともに、県民にとってより開かれた県政、よりわかりやすい県政の推進に努めてまいりたいと考えております。
 以上であります。
○副議長(木下秀男君) 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 中山議員にお答えいたします。
 まず、地すべり防止、がけ崩れ対策についてでございます。
 本県では、平成三年度砂防関係危険箇所調査によりますと、土石流危険渓流、地すべり発生危険箇所及び急傾斜地崩壊危険箇所、四千三百一カ所の危険箇所がございます。さらに、平成八年度には県下全域において危険箇所の再点検を行い、危険度の高いところより防災対策を進めてまいりたいと考えております。また、道路の落石等の危険箇所については平成三年度に総点検を実施し、防災対策を行っているところでございます。
 本年二月十日に発生した北海道豊浜トンネルの岩盤崩落事故を教訓に、本県においても直ちに全土木事務所で職員によるトンネル安全総点検を実施しているところでございます。さらに、トンネル坑口の急斜面については、現在専門家に委託して安全の再点検を行っているところでございます。
 いずれにいたしましても、和歌山県は地形が急峻でありますので、今後ともこれらの災害対策に積極的に取り組んでまいります。
 次に、県営住宅建設についてでございます。
 公営住宅は、所得の低い方に対し、安全で安心して生活のできる低廉な家賃の住宅を供給していくものであり、第六期住宅建設五カ年計画に基づいて推進しているところでございます。基本的には地域の実情に詳しいそれぞれの市町村に事業主体となっていただいておりますが、県営住宅はそれを補完するものと考えております。
 海南市には五百四十三戸の公営住宅があり、市の住宅を補完する意味から十四戸の県営住宅を建設しております。県としては、新設・建てかえ計画に関する住宅マスタープラン、建てかえ十カ年戦略などについて市とも協議をしているところでございます。
 なお、県営住宅の建設については、住宅対策の広域的な観点から、人口急増地域や人口の定着・地域活性化など、需要の実態や市町村の意向も十分踏まえ、検討の上、用地の確保など市町村の協力を得ながら、新規団地の建設も含めて取り組んでいるところでございます。
 次に貴志川環境保全についてでございますが、河川における自然環境の保全は、水の恩恵を受けて生活を営む私たちにとって大切なことであると考えております。
 貴志川におきまして、現在、県では平成五年からふるさと振興水辺環境整備事業を進めてございまして、平成八年度でおおむね現計画の整備ができるものと考えてございます。
 議員ご質問のことにつきましては、企業者の方で廃棄物対策について考えていると聞いております。県としては、このことを念頭に置いて、海南市など関係者と協議しながら、ふるさと振興水辺環境整備事業の延伸について検討しているところでございます。
 最後に、国道三百七十号と重根土地区画整理事業についてでございます。
 重根土地区画整理事業は、海南市が野上電鉄の廃線敷を買収したことに伴い、平成八年度中に事業計画の見直しを行い、地元合意が整い次第、仮換地指定を行う予定にしております。
 ご質問の土地区画整理法第百二十三条の組合に対する援助として、土地区画整理事業区域内の都市計画道路の整備に要する費用相当分を、国の補助金にあわせて県及び市が補助を行っております。県としては従来から事業を促進すべく種々の指導を行ってまいりましたが、今後とも市と協議しながら事業の促進に努めてまいります。
 また、国道三百七十号の阪井地区につきましては、沿線に人家が連檐しているため、将来的には龍部池から国道四百二十四号の間について、比較的人家の少ない箇所をバイパスとして整備していきたいと考えております。
 野鉄廃線敷につきましては、歩行者の安全を確保することが緊急の課題であり、海南市とも相談の上、自転車・歩行者道として整備を進めることとしております。現道部分を一方通行にすることについては、直接道路に面している方々の利便性など、問題であると考えております。また、県道沖野々森小手穂線からのバイパス案については、交通処理対策を効果的なものにしようとすれば物件移転が多くなる問題がございます。
 いずれにしても、交通対策につきましては、海南市の町づくり、道路網などをも含め、今後とも市とともに検討し、進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 商工労働部長中山次郎君。
 〔中山次郎君、登壇〕
○商工労働部長(中山次郎君) 貴志川環境保全についてのほたるサミットについてお答えします。
 昆虫や小動物などの自然復元に積極的な取り組みをしている地域住民の方々の努力により生息環境がある程度良好に保たれている地域を、環境庁が「ふるさといきものの里」として全国で百十九カ所選定いたしまして、見失われている身近な自然の再発見と自然の保全の普及啓発を行っているところでございます。
 このうち、ホタルが八十五件と一番多く、チョウ、トンボ、カエル、サンショウウオやコウモリなどとなってございます。本県では、かつらぎ町の天野の里と貴志川町のゲンジボタルを育てる会が選定されてございます。
 議員お話しのとおり、行政が携わって日本一のホタルの里を目指す全国八町の自治体が持ち回りでほたるサミットを毎年開催されているもので、貴志川町で本年六月九日、十日の両日開催されるものでございます。県としても積極的に支援するとともに、環境庁にも来県していただき、パネルディスカッションの助言をお願いしているところでございます。
 身近な自然を保全することは、そこに生活をする人々にとって快適な環境が維持されることになりますので、積極的な取り組みに期待し、ほたるサミットきしがわ96の成功を願うとともに、さらなる自然保護の普及啓発の推進を図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 農林水産部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○農林水産部長(日根紀男君) 貴志川環境保全について、かつらぎ町志賀地区で進められている関西電力株式会社紀北変換所新設工事に係る林地開発についての対応の問題でございます。
 当該林地開発につきましては、電気事業法に基づくものでございまして、森林法では許可を必要としない開発行為となってございます。しかしながら、許可を必要としない開発行為でございましても、林地開発許可基準に沿って、環境の保全、災害の防止等に十分配慮した適正な開発を行うよう指導しているところでございまして、本件についても既に事業者との間で協議・調整を終えているところでございます。
 次に、新農政のもとでの農業ということで、米の生産調整についてのお尋ねでございます。
 国では昭和四十六年から、米の需給ギャップの解消策として生産調整が実施されてございます。本県におきましては、この生産調整を地域の立地条件に応じた収益性の高い農業を推進していく契機としてとらえまして、農家の自主性を尊重しながら転作作目の定着化に努めてきたところでございます。また、昨年施行された新食糧法のもとでの生産調整は、生産者の主体的な取り組みを基本としながら、目標面積については備蓄にも配慮した需給見通しに基づくガイドラインとして提示し、米作農家の経営安定を図ることを旨としたものでございます。
 今後の推進に当たりましては、これまでの推進方策をベースに、生産者団体とともに二十一世紀農業振興計画の地域別生産方向に基づき、特色ある米づくりや果樹、野菜、花卉との複合経営に一層取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 32番中山 豊君。
○中山 豊君 幾つかご要望申し上げて、終わりたいと思うんですけれども。
 地すべり防止、がけ崩れ対策で、本年度、箇所を再点検しようというふうなお話でありましたから、それらにゆだねるとして、抜かりのない取り組みをして県民の生命・財産の保全のためにお尽くしいただくようお願い申し上げておきたいと思います。
 県営住宅の建設については、建てかえ、新設をもくろみながらいろいろお考えいただいているようなお話でありましたから、これは地元の自治体とも十分協議をしながら進めていかなければならないお話のようですので、そのあたりの抜かりのないようにお進めいただき、また当局にお願いをすると、こういうことにしておきたいと思います。
 特に、海南市は人口減によって海南市全体の活力を失っているという市民の認識から、少なくとも人口対策及び人口定着施策を強く求められているということを重ねてそちらの方へ申し上げて、住宅行政へのバックアップを求めておきたいと思います。
 貴志川の環境保全の問題にかかわるお話のうちの、特に別院地区の産業廃棄物とのかかわり合いについてのお話です。
 要約すれば、今やられている水辺環境整備事業を下流に延伸して良好な環境保全に努めたいということがベースに座っていたように思います。積極的なお話ではないかと思いますが、いずれも業者及び地元自治体と協議を重ねていくことが前提のようですけれども、そういう点を抜かりなく進めながら──せっかくほたるサミットをしても、上流にそういう思わしくないところを残していくということでは、県の環境行政の上からも猶予ならんことではないかと思いますから、そういう観点からの一層の努力をお願いしたいと思います。
 関電の変換所建設については、許可を必要としない事業ということだけれども、県は県民の生命・財産及び環境保全の立場から厳しいチェックをしていくという態度表明がありました。それを信頼しておゆだね申し上げたいと思います。
 土地区画整理事業と三百七十号との関係については、十二月議会に引き続いてのお話でありましたから、さらにそれを具体化していくためにご援助申し上げたいということと同時に──特に、阪井地区内の歩行者の安全を強調されているように思いました。そのこと自身は非常に結構なことかと思うんですが、それと相重なって、野上谷沿線の住民は交通渋滞を余儀なくされて大変困っているわけです。八時半に事業所に出勤しなくちゃならない人は、朝六時以前に出てこなくちゃならんというふうな状況でもあったりするわけであります。
 特に、大型バス、貨物車及びダンプカーが行き違うことになってきたら、前にも進まず、後ろにも下がれずという状態を余儀なくされることは、もう既にご認識していただいていると思います。これはただ単に土木サイドのみならず、交通安全の立場から見たら警察の方のお力も大いにかりなくてはならないのじゃないかと、こういう点のご指摘を申し上げながら、特段のご努力をお願い申し上げたいと思います。
 新農政のもとでの農業の問題、特に和歌山の農業について基本的な構想をお示しいただきましたし、これは引き続いてのお互いの論議の課題であろうと、こういうふうに考えて終わりたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
○副議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で中山豊君の質問が終了いたしました。

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