平成8年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(飯田敬文議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

平成八年三月十三日(水曜日)

 午前十時四分開議
○議長(橋本 進君) これより本日の会議を開きます。
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 【日程第一 議案第一号から議案第八十二号まで】
 【日程第二 一般質問】
○議長(橋本 進君) 日程第一、議案第一号から議案第八十二号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 43番飯田敬文君。
 〔飯田敬文君、登壇〕(拍手)
○飯田敬文君 おはようございます。
 発言のお許しをいただきましたので、通告に従いまして質問をさせていただきます。
 西口知事におかれましては、知事就任後、初めての予算編成をされ、我が和歌山県の発展を念頭に置かれた積極予算を組まれました。県民の代表である議員として、また一県民として深く敬意を表するところであります。私の方からは、我がふるさと和歌山県の将来、発展について、県知事として、また政治家西口氏としての今後の和歌山県のあり方、基本理念についてお聞きをいたしたいと思います。
 我が国は、戦後五十年、政治の混乱、経済循環、社会変動など、それぞれの局面を乗り越え、今日の社会を築いてまいりました。しかし、住専問題に見られるとおり、バブル経済崩壊後の経済停滞と政治の混迷が今なお続き、経済と政治が相互に関連しつつ、新たな展望が開かれていない状況であります。その構造的転換期を迎えているという戦後初めてのケースであり、抜本的、構造的改革が今こそ必要であります。
 そこで、西口知事の転換期における日本経済の認識についてお伺いをいたします。
 ここで、転換期という意味を経済の視点から考えますと、我が国経済は、戦後一貫して国家による基礎産業への集中投資、さらに関税障壁などの保護・育成に始まり、自動車、電話機などの加工組み立て型産業の発達により高度成長を維持させてまいりました。すなわち、技術革新によりコスト削減と大量生産による輸出という拡大、拡張の日本型経済成長が大幅な貿易収支黒字による国際収支の超黒字をもたらし、一九八五年のプラザ合意による円高容認に至ったわけであります。一方、円が上がれば合理化によるコスト切り下げ、輸出拡大、それに起因する黒字幅の拡大と際限なく繰り返され、現在、拡大再生産方式の限界にまで立ち至っている現状であります。
 資本主義の歴史における経済成長とは製造業の発展による経済成長であり、この意味からすると我が国の経済は今後かつてのような成長は期待できないと考えられるわけであります。その原因の一つに、製造業の輸出採算性の限界にまで円が高騰していること、二つ目に、国際社会に我が国の黒字幅が容認されていないこと、三つ目は、拡大生産による輸出拡大が不可能なまでの為替レートに至っていること、さらに、開発途上国の急発展により賃金格差が増大してきていることなど、製造業に大きな危機を迎えているわけであります。
 日本型経済発展方式は、これまで農山漁村から、また地方からの労働人口を吸収し、製造業を基礎として発展してまいりました。製造業なくして第三次産業の発展はあり得ず、製造業の停滞はすべての産業の衰退につながるわけであります。それが限界となって現在に至っていることを認識しなければなりません。言いかえれば、バブル経済をもたらしたのは、貿易収支の過度の黒字による国際収支の黒字、それによる膨大な国内資金がそれ以上の拡大生産投資が許されない状況の中で行き場を失い、その投資先を本来ならばコストに計上され、何の利益ももたらさない土地という泡に投資するという、狂った現象の結果にほかならないと考えられるわけであります。バブル経済は、日本型経済成長、経済運営方式の限界や矛盾を繰り延べし、簡単には修復できない傷を広げたにすぎないのであります。
 こう見てまいりますと、バブル経済が起こったから日本経済の限界、転換期が来たのではなく、日本経済の限界が来ていたからこそバブル経済が生起したわけであります。そして、この限界が私たちに深刻な不況をもたらしております。
 昨今、国会で問題になっている住専問題はこうした構造的矛盾が背景にあり、日本経済構造の抜本的な問題としてとらえるべきであります。今後生起する二次損失、民間銀行、ノンバンクなどの整理とあわせて処理されるべきものであります。こうしたことを抜きにした安易な公的資金による小手先の借金穴埋めは問題の解決にならず、断じて容認できるものではありません。
 いずれにいたしましても、国内外の市場をはるかに超える過剰生産設備の償却に追われ、倒産する会社が後を絶たない現状に加え、新たな雇用を必要としないことによる就職難、失業率の高騰へと、より深刻な状況をつくり上げております。
 こうした国内の閉塞する経済状況の中で、我が和歌山県の現状はなお一層深刻な状況にあるわけであります。この危機的な状況に対する西口知事の認識と冷静な判断の上に立った和歌山県の将来の展望、施策を打ち出す西口知事哲学及び基本理念をお伺いいたしたいと思います。危機であると同時にチャンスでもあるわけであります。このことをひとつ考えていただきたいと思うわけであります。
 次に、冷戦崩壊後の世界は、新たな地殻変動のもたらす分裂の時代であり、民族紛争、新内戦の時代とも言われております。国連の活動は、平和維持活動、人権擁護活動、社会経済活動の三つの柱から成り立っていることは皆様もご存じのとおりでございますが、その基本は個人に対する人権擁護に集約されております。「人権が発展の源泉であるとの認識において、個人、集団の生存と繁栄を保障する」と言われております。このことを考えると、国際化時代の和歌山県は、平和、人権、環境保護という人類の未来を占うテーマに対して確固たる方針を打ち立てるべきであります。本来の人権というのは、まず人ありきというところから始まるものであります。つまり、人権とは人間が人間として自覚と誇りを取り戻すこれまでの先人の闘いの産物であり、これからも我々が不断の努力によって築き上げていくものであります。初めから人権があったという安易な、自然に与えられたものではありません。現在までの同和対策を初め、人権の保障にかかわって一定の取り組みがなされているわけでありますが、社会のシステム、常識、法、制度、国家、自治体といった、ある意味での枠組みの中でどうするかという観念でとらえられてまいりました。
 要するに、現在までの取り組みは格差是正、低位性の解消であり、そのことは過去において極めて重要でありましたが、これは人権を確立するという本来の目的からすれば条件整備の範疇であり、目指すべき目的、目標は、すべての県民がかけがえのない命を持つ人間としての自覚と誇りを持つということであります。つまり、単なる弱者対策ではなく、それ以外の人がみずからの人権意識を高めること、そのことが真の意味での人権の確立、対策であります。国においても、昨年十二月、あらゆる形態の人種差別撤廃条約が批准され、国連人権教育十年のスタートとあわせて、具体的な行動計画が総理大臣を中心に検討されているところであります。
 私がこれまで述べてまいりましたのは、日本経済社会の根本的な転換期に当たって、新しい価値基準として人権問題を基軸に展開されるべきであるということであります。また、我が和歌山県としてもその対応を求められるところでありますが、我が県が既に同和対策先進県として県内外に自負してきたことを考えれば、国に先立ち県として主体的に方向を見定め、この問題の中心的役割を果たすべきであると思うわけであります。
 そこで、我が県として人権先進県の名を掲げてまいりたいと考えますが、西口知事におかれては人権に対する認識と人権先進県づくりに対するお考えをお伺いしたいと思います。
 また、人権先進県を目指す上でさまざまな人権にかかわる課題が存在し、当然、県庁にそれらの課題に対応できる窓口が必要であります。しかし、現実は全く窓口がなかったり、またあるとしても単に事務処理や保護、福祉の観点でしか対応できないシステムになっております。一方、民生部同和室の今後を考え合わせると、部落問題に関する啓発の観点からも、すべての部局で取り組むということは物理的に困難ではないかと危惧するものであります。
 この際、人権先進県を目指す上で機構改革を行い、例えば人権局といった部門を設置することを提案させていただき、また県民啓発の具体的なセンターとして人権啓発センターなり人権歴史資料館をぜひとも建設されることを望むところであります。知事のお考えをお聞きいたします。
 次に、私は過去、県議会において幾度となく関西国際空港を中心とした泉南地域と那賀郡を初めとする紀北地域を一体化した都市計画を推進し、来るべき国際化社会に対応した拠点都市構想である紀泉百万都市づくりを進めるべきであると、強く訴えてまいりました。
 政府の国土審議会の計画部会で検討されているとおり、現在、我が国社会の方向は大きな転換期を迎え、物の豊かさより心の豊かさ、生活の利便性より自然との触れ合いという方向で人々の価値観が変化し、ライフスタイルの面でも、レジャー、余暇生活の重視、居住における地方志向の高まり、組織への帰属より個人、家族の重視などの傾向が強まっております。言いかえれば、画一性、均一性よりも個性、多様性の重視という観点に立って、人の活動と自然との調和を含め、経済社会のさまざまな側面で効率性の向上とあわせて質的向上を目指すべき段階に入っていることを示しております。
 また、世界に目を転ずると、人・物・情報の移動に関する時間や距離の大幅な短縮、冷戦構造の崩壊による国境の垣根の低下などから、今や地球全体がさまざまな意味において一つの圏域と化しておるわけであります。特に今後は、中国やASEAN諸国などの急速な経済発展により東アジアの経済規模は我が国を大きく上回るようになり、アジア発着の人・物の交流が世界の過半を占めるとともに、我が国とアジアとの交流量が飛躍的に拡大するのはだれが見ても明らかであります。では、どのようにしてこの転換期を受けとめ、より有効な手だてを講じるべきでしょうか。それには、国主導の地域開発の時代から、地域がみずからの選択と責任で地域づくりを行うことが肝要であります。しかし、単一の地域、既存の都府県、市町村単位での地域づくりにはおのずから限界があり、過去において申し上げた広域的な連携、補完し合いながら現行の行政区域の枠を超えた計画を図っていくことが必要であります。
 そこで、地域住民やその他の非営利団体をも巻き込んだ、県が主体となる諮問機関の設置を目指すべきと考えるわけであります。西口知事の公約にございます和歌山百万都市構想の内容と、現行の広域行政区の枠を超える都市機能を持った県民に優しい町づくりを目指した諮問機関の設置について、西口知事の見解をお伺いいたします。
 さらに政府は、全国総合開発計画いわゆる四全総の定住圏構想を発展させた交流ネットワーク構想で地域間の相互補完を目指しておりますが、バブル崩壊後の経済情勢や超高齢化社会の到来を含めた人口推移の大幅な変化に対応するため、四全総の計画期間の終了を待たずに、二○一○年までの計画である第五次全国総合開発計画を計画策定しております。
 前段で申し上げたことから考えると、人に優しい町づくりを目指す上で、人権を主眼に計画され、また我が和歌山県が五全総の中にある太平洋新国土軸の中心に位置づけられるよう県の積極的な計画が必要であります。つまり、私の申し上げている紀泉百万都市は、単なる和歌山の都市計画ではなく、太平洋新国土軸の中心都市としての機能を備えるものであり、大阪府等と連携して取り組むべきものであると考えるわけであります。そういう意味では、関西国際空港は太平洋新国土軸の世界に通ずる中心の玄関であり、それに一番近い我が和歌山県の和歌山市東部とそれに隣接する那賀郡を中心とした都市計画を紀泉百万都市の中心地域として開発するべきであると考えるわけであります。これは、現在、民間において進められている商工業施設や大型住居団地の建設が集中しているところから見ると、二十一世紀の和歌山、大きくは関西を展望し、これからの中心地域が和歌山市東部や那賀郡に移る可能性を秘めておるわけであります。そういたしますと、現在の県庁を初めとする公共機関を和歌山市東部、例えば和歌山インターの周辺に移転すべきであると考えるわけであります。全国広しといえども、インターのすぐ下に調整区域があるのは和歌山県だけであります。また、県道泉佐野岩出線の拡幅工事が進んでいる現状を見ても、和歌山市東部と那賀郡の連携を考える上でも、現在、岩出町根来で終わっている大型農道の和歌山市延伸を図り、第二阪和国道との連結は欠くことのできないものであります。県庁を初めとする公的機関の東部移転と大型農道の和歌山市延伸について、県の見解をお聞きしたいと思います。
 次に、明治以来の欧米へのキャッチアップの過程において、科学的、合理的精神のもとに実利や経済効率性が優先され、東京を中心とした人・物・情報の流れが形成されるに伴い、我が国の文化は画一的な方向に向かい、地域において保存伝承されてきた伝統芸能、風俗・慣習などの伝統文化や歴史的建造物などの文化財、二次的自然としての景観などが徐々に失われてまいりました。また、太平洋ベルト地帯を中心とする国土構造の形成は、それぞれの地域の長い歴史的な交流の中で生まれ、はぐくまれてきた文化的なつながりを分断するという側面も有してきております。
 近年、生活水準の向上により創造力豊かな個性や感性が尊重される時代に移行しつつありますが、二十一世紀において世界における我が県の文化的なアイデンティティーを創造していくためにも、各地域においても歴史的に蓄積、形成されてきた特性を利用し、二十一世紀にふさわしい文化を創出していかなければなりません。
 我が和歌山県は、過去にも申し上げたとおり、高野、熊野など多くの文化遺産があり、これを内外にアピールするための国際文化サミットを我が県に開催誘致してはどうかと考えるわけであります。また、我がふるさとを誇れる地域とするための夢、すなわちアメリカンドリームの和歌山版とも言うべき和歌山県ドリームづくりを推進するべきであると考えるわけであります。
 今回の予算策定の目玉となっているふるさとづくり事業の五億円補助支援は、誇れるふるさとづくりとして、西口知事のふるさとに対する熱い思い入れと敬意を表するものでありますが、その内容をお聞きしたいと思います。
 私は、例えば、日本一運動や一村一品運動を推進し、さらに一般財源によるふるさと創生基金を交付することによって地域の活性を図っていくべきであると考えます。みずからのふるさとは全国で唯一のかけがえのないふるさとであり、住民みずからがその誇りと自覚を持って推進するべきものであります。県は、そのことを大事にして、このふるさと創生基金を育ててほしいと強く願うものであります。
 次に、国際化の中にあって、我が和歌山も積極的に対応していかなければならないときに立ち至っております。地球社会の一体化と各国各地域間の相互依存関係の深まりが進行していく中で、これからますます世界、特にアジアの一員として多面的な交流、連携を積極的に推進していかなければなりません。その結果、我が国、我が県とアジアの交流量は飛躍的に拡大していくことが予想され、それに対応できる世界的な水準と運営体制を持った国際交流基盤を配置していかなければなりません。幸いにも、関西国際空港が至近距離にあり、これを利用した国際交流を進め、確固とした和歌山県の姿勢を示し、時期を逸することなく推進をしていくべきであります。
 私は、和歌山県の今後の方向は、前条でも申し上げてまいりましたが、人権を念頭に置いた相互共生を推進していくことが重要であろうと思うわけであります。人権を確立するということは個人を尊重するということであり、とりわけ世界に目を向けると、人種、民族、宗教、言語、文化、習慣、歴史と、実にさまざまな違いがあります。そのことを県民が知ることにより、その人々の置かれている状況を認め合い、理解をし合い、共生できるのであります。
 国連は、世界人権宣言の大きな柱とも言うべき共生の原則を打ち出しているわけでありますが、我が和歌山県においても、定住外国人も含めたさまざまな国の人々が生活し、また訪れておるわけであります。こうしたことからも、文化や人権を通じた理解し合える状況をつくり上げることが最も重要なことであります。
 大阪府では、民間も含めたアジア・太平洋人権センター設立の準備が進められていると聞き及んでいるところでありますが、こうした動きに先駆けて、今日までの同和対策先進県として積極的に取り組まれてきた我が県の経験を十二分に生かし、人権先進県和歌山を構築するため、アジアの拠点となるアジア人権文化センターを設立していただきたいと願うものであります。国際交流基盤の整備とアジア人権文化センターの設立についてお伺いをいたします。
 最後に、今後の同和対策のあり方についてであります。
 まず、啓発、特に同和委員会のあり方についてであります。
 同和委員会がその前進である研究会から数えて約四十五年の歴史を数え、「県民みんなの同和運動」のスローガンのもと、今日まで数々の成果を上げてこられた関係各位の皆さんのご努力と熱意に深く敬意を表するものであります。
 さて、その同和委員会と啓発のあり方について、今日の社会や部落問題を取り巻く情勢、私が先ほどより申し上げてまいった内容や課題を踏まえたとき、今日までの総括を行い、今後の方向を見定める上で大胆な議論と検討を行う必要があると考えます。
 今、今後の同和対策あるいは同和行政の方向について、法期限と相まって、国では総務庁の地域改善対策協議会の検討や与党三党による人権と差別問題に関するプロジェクト等、さまざまな議論が精力的に進められているところであります。
 そこで、知事にお伺いをしたいと思います。
 県内の同和地区の実態の現状認識と今後の方向について、国の動向もさることながら、和歌山県としてどのようなご認識と今後の方針をお持ちなのか、お伺いをしたいと思います。
 以上、我が県を取り巻く経済社会の転換期に当たり、二十一世紀に向けて西口哲学に基づく和歌山県政の新たな展開を期待し、第一回目の質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの飯田敬文君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 飯田議員のご質問にお答えをいたします。
 大変格調の高いご質問をいただきました。まず、日本経済の認識についてであります。
 日本銀行の三月発表の企業短期経済観測調査によりますと、景気は再び緩やかに回復に向かいつつあるとの判断を示してございます。しかし、まだ日本経済の回復の足取りが弱いのは、議員ご指摘のように、戦後五十年を経て、高い経済成長を実現してきた我が国の社会経済システムが、金融、流通などさまざまな面で現実の経済社会の動きに対応し切れなくなってきており、いわゆる従来の循環型経済が行き詰まり、大きな構造転換期を迎えているからだと考えてございます。
 この構造転換期においては、環境や身近な地域への関心の高まり、地域の特色ある産業振興の重視、経済の国際化などの社会経済環境変化を踏まえ、豊かで多様な生活の実現を目指して、二十一世紀に向けた新しい施策を推進していくことが重要であると考えてございます。
 また、和歌山県の将来展望、私の理念、哲学などでございますが、私は常に申し上げているところでございますけれども、和歌山県には豊かな自然や文化、歴史、古くから蓄積された技術など多くのすばらしい資源があるわけでございます。こうした和歌山県の地域特性を生かした産業振興を基本理念として、一つは、技術の向上、情報化の推進による創造的企業の育成、二つ目には、本年をアジア交流元年と位置づけておりますけれども、アジア諸国等との交流、連携を深めるなど、経済の国際化への対応を推進していくことであります。私の県政の最終目標として、若者が定住でき、和歌山に住んでよかった、暮らしてよかったと誇れるようなすばらしいふるさとをつくることであると考えてございます。
 次に、二十一世紀の和歌山県の進路についてでございます。
 人権に関するご質問でございました。議員お話しのように、国際化時代の中で本県が目指す方向を考える上で、人権の問題をテーマの一つとして取り組んでいかなければならないという点については、私も同感でございます。人権の根本は、何と申しましても人間の尊厳を認めることであると思うわけでございます。その考え方に沿って県政を進めてまいりたいと考えております。
 私の政治信条は「真」ということを絶えず申し上げておりますが、同時に「人皆心あり」ということも申し上げております。その意味は、それぞれの人格や意見、主張を尊重しながら、自分一人が正しいと思い上がらず、人の心の痛みがわかったものでなければならないということでございます。そういう意味からいたしましても、私の信条もまた人権の概念と共通する部分があろうかと考えておるわけでございます。
 次に、あらゆる形態の人種差別撤廃条約の批准、あるいは人権教育のための国連十年を踏まえ、県としてどう取り組んでいくかという点についてであります。
 議員ご指摘の組織の問題、あるいは人権啓発のための施設の問題も含め、今後関係部局と十分検討をしていきたいと考えております。
 次に、和歌山百万都市圏構想と私が提言させていただきました構想の内容と諮問機関の設置についてであります。
 私は、これからの時代認識として、地球時代ということが非常に重要な要素になると考えております。経済においては、世界、特にアジアとの相互依存関係が強まっておりまして、今後さまざまな分野で地域や個人が直接世界各地と交流する時代になってくるものと思われます。こうした視点に立って、私は世界に開かれた和歌山として、特にアジア圏域と結びついた地域づくりを進め、広域的な連携と交流のもとに世界都市関西の新しい都市圏をつくってまいりたいと考えておるわけであります。
 和歌山百万都市圏と申しますのは、議員ご指摘のように、紀泉地域も当然含んでおるわけでありますけれども、紀泉地域は、歴史的、経済的にもつながりが深く、関西国際空港の開港、さらに今後の新たな国土軸の形成などによって、世界に最も近い都市圏として大きく発展する可能性を持っておるわけであります。また、大都市圏近郊にありながら豊かな自然に恵まれておるなど、多様な魅力に富んだ地域であると言えると思います。和歌山百万都市圏構想は、こうした紀泉地域を市町村や府県の枠を超えて相互に連携、協力し、機能分担しながら、国際化社会に対応できる、また人々の多様な価値観、ライフスタイルにこたえることができる一体的な都市圏として整備していこうとするものでございます。そのために、産業、居住、文化、教育、研究、スポーツ、レクリエーションなどの諸機能を、各地域の特性を考慮しながら適正配置して充実させていく必要があろうかと思っております。今後、できる限り広く各方面のご意見を承り、府県間を超えて各行政機関や地域の方々と協力して、この構想の推進に取り組んでまいりたいと考えてございます。具体的な推進に当たりましては、諮問機関の設置などについても研究をしてまいりたいと考えております。
 次に、県庁舎などの場合でありますが、県庁舎を建てかえる場合の場所について、現庁舎は大変老朽化が進みまして建てかえの準備が必要であります。平成七年度から和歌山県庁舎及び議会棟等建設基金条例を設置いたしまして積み立てを行っているところでございます。建てかえの場所等については、県民の皆様の利便性の確保が重要でありますので、ただいまご意見のございました紀泉百万都市構想なども参考にさせていただきながら、しかし今後少し時間をかけて検討を進めていきたいと考えております。
 次に、紀北地域における基盤としての道路網の整備であります。
 大変重要な問題でございます。広域農道紀の川地区については、県道泉佐野岩出線に接続をされております。これらを踏まえた上で、円滑な交通処理をする必要があろうかと考えておるわけであります。
 現在、泉佐野岩出線、国道二十四号和歌山バイパスに関して重点的に事業を進めているところでございます。また、紀の川北岸における東西方向の道路として、県道粉河加太線、都市計画道路西脇山口線等の整備を鋭意促進しているところでございます。将来的には、京奈和自動車道紀北西道路を第二阪和国道へ接続することも含めて、円滑な交通処理について今後十分検討を進めたいと考えております。
 最後に、同和対策の推進であります。
 国及び県が実施いたしました同和地区実態調査等について、現在、各般にわたり分析検討中でありますけれども、現時点において幾つかの課題が今後に残されている状況でございます。
 物的な面については、市町村と一体となって積極的に推進してきた結果、全体的に見ればおおむね格差は是正されていると思いますけれども、一部には取り組みのおくれがあるわけでございます。一方、非物的な面については、各種施策の実施によりまして、これまた一定の成果が見られているわけでありますが、なお課題もございます。具体的には、経済環境の変化に影響を受けやすい小規模零細企業や個人経営が多く見られること、中高年齢層を中心とした不安定就労の問題、高校、大学への進学率においてなお格差があること、差別事件が依然として発生していること等でございます。このような現状認識の上に立って、現在残された課題を解決するための方策を鋭意検討しているところでございます。また、世界を挙げて人権問題が強調される中で、我が国においても人種差別撤廃条約が批准され、国連人権教育の十年の行動計画が策定されようとしているところでございます。
 本県といたしましては、これら国内外の動きを視野に入れながら、同和問題は基本的人権にかかわる重要な社会問題であり、二十一世紀に差別を残してはならないという基本的な姿勢に立って、同和問題を人権問題の基軸と位置づけ、あらゆる差別を許さない環境をつくり上げていくための啓発が今後大変重要な問題となってくると考えておりますので、鋭意努力をしてまいりたいと思っております。
 以上であります。
○議長(橋本 進君) 総務部長木村良樹君。
 〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 二十一世紀の和歌山県の進路についてのうち、ふるさとづくり事業に対する五億円補助についてのご質問でございます。
 これは、輝けわかやま・二十一世紀ふるさとづくり事業という名称で行われる来年度予算の目玉の一つでございまして、県下市町村が従来にない独自の発想で魅力ある地域づくりを行う場合に、一団体最高一億円の補助をするというものでございます。特に、地域の個性を生かしたシンボル的な事業等に対しては、異例の十分の九という高率補助を実施することといたしております。本事業の運用に当たりましては、地域の独自の発想が十分生かされるよう各市町村と綿密な協議を行うとともに、他の補助制度とも連係をとりながら特色ある地域づくりを積極的に支援してまいりたいと考えております。
○議長(橋本 進君) 知事公室長野見典展君。
 〔野見典展君、登壇〕
○知事公室長(野見典展君) 飯田議員ご質問のアジア人権文化センターの設置についてお答えをいたします。
 国際交流の基本は、自分たちとは違った相手の文化や慣習などを互いに認め、尊重し合い、尊敬することであります。国際交流活動においても、相手の人権を尊重することは大変重要なことと考えてございます。
 本県では、昭和五十九年に中国山東省と友好提携を締結以来、その後のフランスピレネーオリアンタル県、アメリカ合衆国フロリダ州との友好姉妹提携を含め、互いに相手の立場を尊重し合う共生の考えに立ちながら友好交流活動を推進し、相互の発展に努めてまいりました。
 議員お話しのとおり、至近距離にある関西国際空港は本県の国際交流活動の推進に大きな役割を果たし、友好提携先のほか、今後アジアを中心にさらに交流が進むものと思われます。このような状況の中で、アジアとの交流の拠点となるようなアジア人権文化センターの設置については、平成十年度和歌山操車場跡地に完成予定の健康・福祉棟の中に予定している和歌山県国際交流センター(仮称)に議員ご提言のような機能を持たせることができないか、検討を重ねてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 43番飯田敬文君。
○飯田敬文君 知事の積極的なご答弁を賜りまして、大変心強く、意を強くしたところであります。そういうことを踏まえながら、少し要望をさせていただきたいと思うわけでございます。
 先ほどの知事の話の中にございましたように、日本経済社会の転換期ということが言われておるわけでございます。私も、三十兆も四十兆も景気対策を打ちながら日本経済がなぜ浮上できないかということを強く思い煩っておるわけでございます。このことをよく考えてみますれば、これまでの拡大再生産型の経済成長を至上命題として追求してきた日本経済構造のあり方が破綻をしたんだと私自身は考えております。バブル経済、デフレ経済、これは根は一つだということで、この根本を変えなければ日本経済は立ち直れない構造的な状況にあるのではないかと思っておるわけでございます。
 そういった中でこれから和歌山県の方向を決めていく場合に、例えばよく企業誘致であるとかリゾート開発が言われるわけでありますけれども、そういったことの欠点も冷静に分析して、ある一定の限界があるということもきちんと認識をしておかなければならないのではないかと思うわけでございます。そうしたら、それにかわるものは一体何かということで私なりに考えさせていただいたのは、人間性に立脚した生活環境、福祉、教育、そういったところへの予算をどう強めていくか、こういう観点が必要ではなかろうかと思います。その根本に流れる概念は、私はやはり人権という問題があるのではないかと思っております。
 今、太平洋新国土軸、アジアとの交流が言われているわけでございますけれども、共生といった基本的な観点から追求していっていただきたいと強く思うものでございます。具体的には、多目的ホール、医大の跡地、コスモパーク加太の活用等ありますけれども、それらの活用については、そういった視点を念頭に置いて十分検討を重ねて適切に対応できるような方向づけをしていただきたい、このことをお願いするわけであります。
 それからもう一つ、総務部長からも説明がございましたように、ふるさと創生資金は大変重要な課題であると思います。
 みずからが誇り得るふるさとをつくり上げるということ、これまでの既成の価値概念に煩わされることなく、ふるさとは全国でただ一つの自分の市町村だ、県だという自負、自覚を持つような形でのふるさとづくり、このことが魂を入れる意味で一番大事なことではなかろうかと思うわけでございます。それぞれ、人には価値基準もございます。我々が余り大したことないと思っても、その市町村にとっては命がけの、みずからの歴史の価値観をかけたすばらしい事業であるかもわかりません。そういった視点に立って、画一的に県がやるのではなしに、市町村の取り組みに十分配慮していただき、育て伸ばしていくという観点で、このふるさと創生資金がこれから大きく活用されることを強く望むものでございます。これから、この選択の基準についてよく吟味をしていただきまして、そういう視点で取り組んでいただければと思うわけでございます。
 いずれにいたしましても、西口知事みずからが和歌山県の歴史、文化、伝統に誇りを持っていただきまして、和歌山県の推進に気概を持って進めていくことが今必要ではなかろうかと特に思うわけでございます。二十一世紀の和歌山県の将来の基礎を築いていくということで、特に知事の英断のある積極的な対応を期待いたしまして、要望として質問を終わらせていただきます。
 以上です。
○議長(橋本 進君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で飯田敬文君の質問が終了いたしました。

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