平成8年2月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(森 正樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

平成八年三月十二日(火曜日)

○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 35番森 正樹君。
 〔森 正樹君、登壇〕(拍手)
○森 正樹君 ただいま議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 去る二月十日から十九日までの十日間、梅田善彦副知事を団長とする和歌山県米国フロリダ州友好提携答礼訪問団の一員として参加をさせていただき、まことに慌ただしい日程の中ではございましたけれども、実り多い公式訪問として多大の成果を残しながら、先般、無事帰国いたしました。以下、簡略に今回の訪問の経過をご報告申し上げます。
 この答礼訪問団には、本県議会から橋本進県議会議長を初め、馬頭哲弥、大江康弘、中村裕一の四人の先般諸氏と私の五人が参加をさせていただきました。同行された職員の皆さん六人とともに、梅田団長以下十一人の構成でございます。
 我々は、十日午後五時、関西国際空港発ロサンゼルス行き日本航空六〇便で出発。途中、悪天候に遭遇することもなく、予定よりも早く、現地時間十日午前九時過ぎに到着したのでございます。
 実は、私はアメリカを訪問するのは今回初めてでございまして、これまでに書籍や雑誌、新聞、テレビ、映画等々でアメリカに関する文化というのはあり余るほど身につけておりますけれども、実際にアメリカについて触れるのだという興奮で、機内ではとうとう一睡もすることができませんでした。
 ロサンゼルスでは若干のリゾート施設等の視察を行いましたが、わずか一日の滞在で慌ただしく荷物をまとめ、フロリダ州オーランド行きのデルタ航空の機上の人となったのでございます。
 ところで、フロリダ州はアメリカ合衆国の中でも有数のリゾート地であり、ディズニーワールド、ユニバーサルスタジオ、シーワールドなどの国際的規模のテーマパークが多く、また世界有数の規模を誇るリゾートホテルが集中しております。さらには、ケネディ宇宙センターに代表されるエレクトロニクスなどのハイテクノロジー産業も集積をしているところでございます。州のニックネームが「サンシャインステート」と言われるぐらい温帯並びに亜熱帯気候で、全米一の避寒地として有名でございます。また一方では、かんきつ類、イチゴなどを中心とする農業と長い海岸線を利用した漁業も盛んであると聞いております。なお、人口は一千四百万人で、全米四位と言われております。
 オーランドはそのフロリダ州の中心的都市でありまして、私たちは三日目、二班に分かれてケネディ宇宙センター並びに各テーマパーク等の視察を行った後、昨年十月の本県での姉妹友好提携調印式に来県されたスーザン・アイダンソンフロリダ州政府国際貿易開発局長との夕食会に臨みました。
 翌十三日、市内見学の後、オーランド空港から空路、州都タラハシーへと移動。機内からは一面の沼と平原を眺めながら、アメリカという国の広大さを改めて実感いたしました。
 明けて十四日、午前八時にフロリダ州政府庁舎を訪問。約三十分から一時間間隔で、サンドラ・モルサム内務長官、バディ・マッケイ副知事、ピーター・ルディ・ウォーレンス下院議長、ジム・スコット上院議長、マルサ・ロバーツ農務省副長官、チャールズ・ディソー商務省長官を順次表敬訪問。それぞれ昨年の友好提携調印の際の来県のお礼や二月初旬の冷害のお見舞いを申し上げ、また今後の友好交流の進め方などについて意見交換を行い、さらにこの間、上下両院議場の視察もさせていただきました。午後零時半までの四時間半、一分の休憩もなく、文字どおり寸暇を惜しんでの公式訪問でございました。
 余談でございますが、今アメリカは禁煙が大変厳しゅうございまして、公の建物等、一切禁煙となっております。ヘビースモーカーの私には大変つらい四時間半であったわけでございます。
 バディ・マッケイ副知事を初めとするフロリダ州政府幹部との話し合いの中で、教育、文化、経済交流に関しての意見の一致を幾つか見たのでありますが、特にチャールズ・ディソー商務省長官との間で、関西国際空港・オーランド間の直行便の就航について、互いに今後も努力を続けることで確認し合ったことを特に強調しておきたいと思います。
 遅い昼食の後、午後からは、チャールズ・ランソン国際交流委員会副会長、サリー・バトレソン国際交流委員会次長、西フロリダ大学グレン・グルタルソン博士、フロリダ州立農業機械大学シゲコ・ホンダ講師、同じくジェームス・ノルマン博士ら、国際交流委員会のメンバーと教育交流についての協議に入りました。席上、大学生、高校生の交換留学や西フロリダ大学から和歌山県内企業への留学、交流などが話し合われました。なお、この話し合いの中でフリロダ州側から、今後の交流をさらに深めていくためにそれぞれ委員会を設置してはどうかという提案がなされ、双方で委員会を設置して、本県は国際交流課、フロリダ州政府側は国際交流委員会がそれぞれ窓口になることで一致をいたしました。
 同日夜はフロリダ州政府招待の夕食会が催されまして、テーブルを囲んで今後の交流について話し合い、和やかな雰囲気の中で夜の更けるのも忘れての歓談となり、極めて有意義な一夜となったのであります。
 第六日目の十五日、梅田副知事を初めとする当局側の皆さんは次の訪問地であるメキシコ・シナロア州へと出発され、我々はマイアミへと向かいました。
 十六日、アイアミ市内視察の後、空路約五時間半、ロサンゼルスへと移動いたしました。
 最終日はロサンゼルス市内の見学等を行いましたが、移動の車の中から眺める風景は、四通八達した高速道路、都市部にあっては林立するビル、郊外では緑の間に点在する広々とした個人の住宅群等々、アメリカ合衆国という国の広大さと社会資本の蓄積の豊かさ、奥の深さ、厚みといったものをまざまざと実感いたしました。
 そして九日目、正午発の日本航空六九便にて帰国の途につき、機中泊の後、日本時間十九日午後六時、関西国際空港に無事おり立ったのでございます。なお、梅田副知事と職員の皆さんの一行四人は、友好交流提携の詰めの話し合いのためにさらにメキシコ・シナロア州へと回られ、ベガ・アルバラード知事ら州政府との協議を行い、二十二日、無事帰国されたと聞いております。
 ところで、今回のアメリカ合衆国訪問中、極めて天候に恵まれ、多くの人々との出会いを得、貴重な体験を積ませていただきました。極めて実り多い訪問であり、たくさんの成果を携えて帰ってきましたことをここに謹んでご報告申し上げるものでございます。
 そこで、この際、公式訪問に参加して実感したことどもを踏まえ、国際交流の進展について、以下三点にわたりご質問申し上げます。
 まず第一に、関西国際空港・オーランド間の直行便の就航、そして教育、文化、経済の分野での交流の活発化、友好提携のさらなる進展にどう取り組まれるのか、お示しをいただきたい。
 第二に、今回のメキシコ・シナロア州との交流の話し合いに臨まれ、極めて良好な感触を得られたと聞き及んでおりますが、その結果報告をも踏まえて、このメキシコ・シナロア州との友好提携の進展について、実際今回話し合いの任に当たられた梅田副知事からお答えをいただきたいと思います。
 三点目に、今後、国際交流の最も大事なポイントは人と人との交流であることにかんがみ、フロリダ州への本県職員の常駐派遣について考えてみてはどうか。知事公室長のお考えを聞かせていただきたい。
 次に、景気回復の起爆剤となる公共用地の先行取得についてお尋ねをいたします。
 今、我が国は未曾有の長期不況の中にあります。昨秋、村山内閣が十二兆八千百億円から成る緊急経済対策を発表いたしました。そのとき、専門家の間では当初からその効果のほどについて疑問の声が上がっておりましたが、案の定、一向に景気回復の兆しは見えていないのが現実でございます。
 ところで、この十数年間、我が国経済を引っ張ってきたのは土地と株であることは異論のないところでありましょう。言いかえれば、日本の経済は土地本位制のもとに動いてきたということであります。昭和三十年代に始まった高度経済成長期に土地神話が確立をし、土地こそが一番の資産であるという観念が国じゅうに広まり、最後はバブル経済がその絶頂期であったと言えるのであります。
 バブル経済は、昭和六十二年二月から平成元年七月にかけての超低金利が引き金となって始まったのでありますが、必要以上の超低金利が長く続いたことによって土地などの資産の高騰を呼び、いわゆるバブルが膨らんでしまったのであります。
 確かに、土地取引を活発にすることが景気回復の妙案であることはだれもが認めるところでありますが、現在のような史上最低の超低金利が続けば、またバブル再燃の危険性もはらんでいると言わなければなりません。本来、「土一升金一升」という言葉も生まれるほど国土面積に限りがある我が国にあって、貴重な土地は秩序のある対応の中で取引されなければならないのであります。
 ところで、政府は平成六年秋、公共投資基本計画の見直しを行い、平成七年度を初年度とする十年間に総額六百三十兆円に上る公共投資を行うことを決定いたしました。この公共投資六百三十兆円のうち、用地買収に係る費用が何%占めるのか。本県の場合、一五・五%──これは平成四年から六年度の三年間の平均でございます──東京、大阪など大都市圏で三四・七%であり、仮に平均二五%として百六十兆円規模となるのであります。バブル期に比べて土地価格が極端に値下がりしている現在、この公共投資のかなりの部分を占める用地買収を先行取得すれば、そのインパクトは、景気回復の刺激剤として大きな効果を生むことは間違いなく、他への波及効果もはかり知れないものがあります。今後十年ほどの間に公共事業を実施するための用地をこの二、三年で先行取得するのであります。土地価格が安値を続け、景気が低迷している今こそ、この景気刺激策を大胆に実行すべきときではないでしょうか。
 この時期の公共事業用地先行取得には、幾つものメリットが期待できます。第一に用地取得コストが低く抑制できること、第二に公共事業の大幅な進展が図られること、第三に官民による土地取引の活発化で土地の動産化が促進され、景気の回復の引き金となること等々であります。
 以上、幾つか申し上げましたが、これらの観点に立ってお尋ねをいたします。
 西口知事におかれましては、百三十六項目にわたるプロジェクトを県民に約束され、見事、昨秋の知事選に当選されました。今後何期知事をお務めになられるのか、それは天のみぞ知るところでありますが、県民に約束された百三十六項目のプロジェクトの大部分を仕上げるに当たっては、一部を除き、最低でも十年程度の期間を要すると考えるのが常識であります。
 そこで、今後十年にわたり本県の飛躍発展のために、百三十六項目のプロジェクトをほぼ完成させるために先行取得する必要のある用地として、近畿自動車道、京奈和自動車道、第二阪和国道等の用地、企業誘致のための用地、安価で良質な公営住宅を提供するための住宅建設用地、そしてその他の公共施設等の建設用地などが考えられますが、これらの用地を必要とする事業のうち特に重要なものについてここ二、三年間で用地の先行取得を行い、あわせて景気回復の妙案として実行すべきであると提案申し上げます。知事、いかがでございましょうか。
 第二に、先行取得する窓口としては和歌山県土地開発公社が適当と思われますが、ほかにいい方策があればお示しをいただきたいと思います。
 第三に、これら公共用地の先行取得に当たって発行することになるであろう建設債は、償還途中での金利払いの必要のないゼロクーポン債とする案がいいと考えます。十年分の用地を二、三年で取得するに当たり、少しでも金利負担を抑えるためにもこれが妙案と思いますが、いかがでありましょうか。あとの二つは、それぞれ担当部長にご答弁をいただければ結構でございます。
 第三に、企業の研究開発部門の誘致についてお尋ねをいたします。
 先週三月九日、南紀の人々はもちろん、私たち県民の待望久しい南紀新空港が開港いたしました。これによって東京・南紀白浜間が一時間で結ばれ、搭乗定員も、今までのYS11型機からMD87型ジェット機へと変わったことで倍増したのであります。九日の開港祝賀会の席上で日本エアシステムの船曳社長があいさつでも触れられていたごとく、東京便の増便と福岡線を初めとして国内数都市との間の新路線の開設も極めて近い将来見込まれているところであります。さらに、今月三十日には近畿自動車道広川インターチェンジ・御坊インターチェンジ間が開通する運びとなりました。これまた百八万県民が待ち望んでいたところであり、この区間の開通によって国道四十二号線の水越峠、由良峠という難所と御坊市内の渋滞地というネックを回避することになり、県土の南北幹線が飛躍的に機能を拡大し、その波及効果が今後期待されるところであります。
 このように、南紀への海・陸のアクセス改良が進む中、今後は南紀の発展のための処方せんが求められていると思うのであります。時あたかも今、急速にコンピューターによるインターネットの普及が広まっておりまして、機種によっては五万円台でも対応の機械が手に入る時代となりました。五万円と言えば最近の小中学生でも手の出せる金額であり、一気に今後普及が進むと思われます。企業にありましても、事務処理、情報収集等のコンピューター化が激しい勢いで進んでおりまして、また企業、学校、県や市町村などの公共団体、各種団体、個人などが争ってホームページの開設を始め、今や世界同時にいながらにしてあらゆる情報を手にすることが可能な時代に突入をいたしました。まさにインターネットの普及は都市と農山漁村、東京と地方との格差をなくし、企業のありようも今後大きく変化することは間違いのないところであります。
 ところで、東京や大阪といったごみごみした大都会で、しかも土地代が高く、スペースに大きな制約を受ける中で研究開発に従事する人たちに、いい知恵やアイデアは非常に生まれにくいと私は思います。研究開発に疲れたら大海原に出てヨットを走らせるもよし、釣りに興じるもよし、熊野古道などを散策しながら森林浴をするもよし、また温泉につかったり、ゴルフに興じたり、熊野の歴史文化に浸ったり、英気を養う材料に事欠きません。自然に触れ、リフレッシュした心と体で改めて研究開発に取り組めば、必ず大都市では生まれるはずもない新たな発想やアイデア、知恵がこんこんとわいてくるというものであります。種々の社会的条件が整いつつある今こそ、そして白浜を中心とした南紀の地こそ企業の研究開発部門の立地の最適な場所であると言えると思います。地元市町村との連携の中で、この際県として積極的にその受け皿づくりを進め、企業の研究開発部門の誘致を進めるべきであると思いますが、知事のお考えを聞かせていただきたい。
 最後に第四点目として、町並み整備についてお伺いをいたします。
 三月四日付日本経済新聞に興味のある記事が出ておりました。来年秋に世界都市景観会議を開催する名古屋市を題材にしたものであります。同市は、一九八九年にデザイン都市を宣言、また世界デザイン博覧会を開催いたしました。もともと都市計画の優等生と言われ、市域の六六%を区画整理した名古屋市でございますが、市内五カ所の指定地域の景観整備を進め、一部を除いてほぼ完了したとされております。そのような名古屋市でさえ、歩道の拡幅や電線地中化は大変やりやすいが、沿線の建物や広告物を含めた景観整備は、関係者の同意を必要とする分難しいと聞き及んでおります。
 イタリアの都市フィレンツェのように、屋根は茶褐色、壁は褐色とすべて統一されれば町全体が美術館のようであり、フランスのパリのように、主要な通りに面した建物は高さと壁面色を規制し、統一しているところもあります。またドイツの都市のように、町全体の開発に網をかけ、勝手な開発を一切許さないという例も見られます。
 本来、私権の強い我が国にあっては望むべくもないことでございますが、さりとて無秩序な開発が許されるものではありません。都市にも一定のルールに基づいた秩序と統一性が求められてしかるべきであると私は思います。
 ところで、同じ日経新聞の同一面に、建築家の黒川紀章さんのエッセーも掲載されておりました。「エッフェル塔を建てようとしたとき、芸術家を中心に市民の九八%が反対した。いま壊そうと提案すれば逆に九九%が反対するだろう。パリにふさわしいものとして認められたのだ。 明治期に京都に琵琶湖疎水を作るときも反対があった。しかし、いま、疎水はレンガ建築のローマ式水道橋を含めて京都名所になっているではないか。(中略)あくまで、歴史とはその時代時代の傑作の積み重ねだと思う」と、そのように述べておられます。「私の都市論」というコラム欄の中の一文でございますが、黒川紀章さんの哲学を端的にあらわす言葉と私は受けとめました。
 本県におきましても、数年前にあしべ橋・不老橋の論争がありました。不老橋の景観を壊すという一部の人たちの反対がございましたが、私は、反対論が起こる前に、不老橋の下に朽ち果てた廃船が放置され、ヘドロが堆積しているときに、なぜ景観を守れという運動が起きなかったのかという素朴な疑問を感じます。あしべ橋・不老橋論争を再燃させるのは今回の質問の趣旨ではないのでこの辺で打ち切りますが、黒川紀章さんがおっしゃるように、都市景観というのは、しょせんその時代時代の傑作の積み重ねなのであります。そしてこの考えは、都市景観・町並み整備に関する私の持論でもございます。都市というのは、町というのは、そこに住む人間がいかに快適に、いかに住み心地よく、いかに安全で、いかに充実した生活を送れるかが求められているのだと思います。
 自然と一口に言いますけれども、人間が指一本触れてもならない大自然とは、人間が住まないアマゾン奥地の秘境やガラパゴス諸島、また我が国で言えば東北のブナ林の大原生林と言われる白神山地や屋久杉の原生林のある屋久島など、それこそ人類共通の遺産であり、後世に伝えるものとして開発の手を入れてはならないものなのであります。
 エッフェル塔しかり。琵琶湖疎水しかり。不老橋しかり。あしべ橋、またしかり。それぞれその時代の必要性があってつくられ、後世に歴史的建築物の評価を得、その時代時代の傑作として残っていくのではないでしょうか。繰り返しますが、都市、町というのは人間が住むところであり、人間によって手が加えられ、人間がいかに安全で安心して快適に暮らせるかが求められているのであります。
 こんな逸話を紹介したいと思います。明治維新の三英傑と言われる大久保利通の話であります。
 西郷隆盛、木戸孝允と並んで幕末を演出した男でありますが、この大久保利通が幕末の志士として京洛の町を走り回っていたときの話であります。討幕活動に疲れて一日嵐山に遊ぶ日がありました。そして、あの渡月橋を含む一幅の絵のような光景に心を洗われ、見とれたと言われております。明治維新が成り、新政府の元勲として多忙をきわめる中で、数年後に京都の町を訪れる機会があったそうであります。そのときに思い出の地嵐山に足を運んで、余りにも荒れ果てた風景に愕然として、そのそばにいた土地の古老に、なぜだと聞いたと言われております。その古老は、「あなたは知らないんですか。江戸幕府は、目には見えないけれども、長い間かけて、毎年大きな予算を入れてこの嵐山の景観を守るために手を加えていたんだ。明治維新になって、それがぱったり途絶えたんですよ」という話を聞かされ、大久保利通は、景観というのはほうっておいては決して守れないものなのだ、常に人間の手が加わって初めて都市景観というのは守れるんだということを改めて実感したという逸話でございます。すなわち、人間が心を和ませ美しいと感じる風景も、目に見えないところでの人間による不断の努力が払われ、手が加えられて初めて守られるものであり、少しでも放置すればすぐに景観は荒れ果ててしまうものであるという象徴的な話でございます。
 人間が日常いかに快適な暮らしを送り、生活をエンジョイすることができるか。そのためにいかに都市景観を整えるか。全体の調和を考え、町としての修景に工夫を凝らすか。言いかえれば、人間が眺める町としての景観が、ごちゃごちゃとしたものになるのか、見て心和む風景となるのかであります。
 以上申し上げました観点に立って、以下、数点にわたりお尋ねをいたします。
 第一に、今後どのようなコンセプトで町並み整備、都市景観整備に取り組むおつもりか。また、新年度予算の中で、これら町並み整備、都市景観整備にどれだけの充当をしておられるのか。
 第二に、三年坂通りの町並み整備が着々と進められ、このことを考え続けてきた一人として喜ばしい限りでありますが、今、県民の評価も非常に高いものがあると聞いております。そこで、これをさらに県庁前から築港、岡山丁から大橋間へと延長すべきであると思うが、いかがでございましょうか。
 第三に、都市部における新設道路については、今後すべてキャブシステムあるいは共同溝システム、CCボックスの導入、街路灯のデザイン化、歩道の設置、街路樹の植栽などを義務づけるべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
 第四に、県民の皆さんの協力を得て、主要街路に面しているビル、住宅のベランダや外壁等々に四季とりどりの花を植えてもらうための花いっぱい運動を行い、関係方面に働きかけていってはどうか。それぞれ担当部長からお答えをいただきたい。
 以上で、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの森正樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 森議員にお答えをいたします。
 まず、国際交流についてであります。
 フロリダ州とは、昨年の十月四日、バディ・マッケイ副知事にご来県をいただきまして、本県との間で姉妹提携の調印をしたわけであります。先月、橋本県議会議長初め馬頭、大江、中村各議員、そしてただいまご質問の森議員にもご参加をいただきまして、梅田副知事を団長に公式答礼訪問団を派遣したところでございます。
 フロリダ州では、バディ・マッケイ副知事初め、州議会上院議長、下院議長など多数の州政府幹部の方々の歓迎を受けて、友好を深めるとともに今後の交流についての協議を行ったと聞いております。大学の専門家も交えた協議におきましては、本県にとって初めての英語圏との交流でありますので、語学の研修生の交換、大学生の企業留学といった教育や文化面での交流、またともに農業、水産業が盛んな土地柄から農業、水産業分野での技術交流や協力、さらに世界的な海洋リゾート地であることから観光面での交流など、さまざまな分野において相互に無理をしない形で交流を実施することで意見の一致を見たということでございます。今後は、相互に発展し、実りのある友好関係をつくっていきたいと考えております。
 また、ご質問の関西国際空港からオーランド間の直行便の就航につきましては、本県とフロリダ州との交流推進のため大変重要なことであると考えております。ただ、日米航空協定など、国レベルあるいは民間企業レベルでの解決しなければならない点も多くございますので、機会を見ながら、実現に向けて国等関係機関に働きかけていきたいと考えております。
 次に、今後十年間の公共事業用地の先行取得についてどうかというご質問であります。
 用地ができればその事業はほとんど完成したに等しいとよく言われるわけであります。それほど用地取得というのは難しいわけでありますけれども、そのために、公共事業推進に係る用地先行取得は事業推進のために極めて大事なことであります。同時に今、一方では、景気回復を図る上でも大きな効果があろうかと認識をしておるところでございます。
 通常、計画決定から用地買収に着手するまでに相当の時間を必要としておりますけれども、今後とも地元市町村と連携を図りながら、用地先行取得を効果的に活用して促進を図ってまいらなければならないと考えております。
 平成八年度は、近畿自動車道紀勢線、それから京奈和自動車道、那智勝浦道路等の道路関連の用地先行を積極的に進めたいと考えておりますが、第二阪和国道についても、用地国債等を活用し、積極的に用地買収を進める予定と関係方面から聞いておるところでございます。また、河川、街路、住宅事業等につきましても、今後効果的に進めてまいりたいと思います。
 用地にかかわる他のご質問については、関係部長から答弁いたします。
 次に、南紀地方への企業誘致の問題であります。
 南紀地方への企業の研究開発部門の誘致につきましては、高速道路の南伸、南紀白浜空港のジェット化等、インフラ整備によって企業立地環境は大きく変わりつつございまして、企業の誘致が期待できる状況が近づいてきたと思うわけであります。
 また、急速に普及しつつあるインターネットなどによる情報網の整備によって国内あるいは世界各地とネットワーク化され、都市部との情報格差は解消されてきておると思いますが、南紀地方への企業の研究開発部門の誘致についても、その条件整備を進めながら、そのことを生かしながら進めていきたいと考えております。
 また一方で、南紀地方は自然環境に恵まれておりまして、文化、史跡、温泉等、研究者の心に安らぎを与える最適な場所でもあろうと思いますので、そういう面の利点もあろうかと思います。
 県といたしましては、今後、関係市町村とともに受け皿づくりを行い、企業の研究開発部門の誘致を積極的に進めていきたいと考えております。
 以上であります。
○議長(橋本 進君) 副知事梅田善彦君。
 〔梅田善彦君、登壇〕
○副知事(梅田善彦君) メキシコ・シナロア州との友好提携の進みぐあいについてお答えを申し上げます。
 メキシコ合衆国シナロア州と本県との関係は、ラバスティーダ・オチョア前シナロア州知事が本県を訪問されて以来、七年にわたる交流を続けてまいったところであります。
 先月、フロリダ州からの帰途、同州を公式訪問させていただきました。シナロア州では、ベガ・アルバラード州知事初め、州政府の経済促進省ロペス・バルガス大臣、ロペス・ポルピロ州知事顧問など州政府の幹部の方々や州内在住の日系人の方々など多くの歓迎をいただきまして友好を深めるとともに、今後の交流についてさまざまな角度から協議をさせていただきました。その結果、シナロア州知事との二月十九日の最終会談では、両県州の交流をさらに発展させるために本年四月または五月にベガ・アルバラード知事にご来県をいただき、本県において友好提携に調印することで同意をいたしました。現在、両県州でその日程を調整中でございます。
 シナロア州はメキシコ合衆国北部に位置してございまして、太平洋に面する農業や漁業、そして観光産業が盛んなリゾート地域として北米各地域との交流の深い州でございます。今後、そういった分野での技術交流、あるいはJETプログラムでの若い人材の人的交流、中南米スペイン語圏との初めての友好提携であることを生かして、スペイン語、日本語の語学交流などとともに、経済界、企業相互の交流をも視野に入れ、両県州相互の友好発展を図っていくべきだと考えております。
 なお、今回のシナロア州訪問協議に際して終始ご協力をいただきました駐メキシコ寺田大使初め、私ども公式訪問団を心から歓迎いただき、お力添えを賜りましたメキシコ和歌山県人会、そしてシナロア州に在住の日系人会の皆様にも心から感謝の意を表し、報告と答弁とさせていただきます。
 以上であります。
○議長(橋本 進君) 知事公室長野見典展君。
 〔野見典展君、登壇〕
○知事公室長(野見典展君) 森議員ご質問の二点についてお答えをいたします。
 まず国際交流について、友好交流の進展のために本県職員をフロリダ州に常駐してはどうかとのご質問であります。
 フロリダ州との相互理解を推進し友好を深めるためにも、また本県の国際化を推進できる人材育成のためにも、人の交流は重要なポイントだと考えてございます。
 議員ご提言の県職員のフロリダ州常駐につきましては、フロリダ州とは昨年十月四日に姉妹提携を締結したばかりでありまして、語学や技術の分野を中心とした研修生、留学生の交流などを含め、交流を推進する課題の一つとしてフロリダ州政府と協議を行いながら進めてまいります。
 次に、町並みを花で飾るため、県民に花いっぱい運動を働きかけてはどうかとのご質問でございます。
 県では、これまで全県下を対象に、財団法人日本花いっぱい協会等の支援を受けながら花いっぱいコンクールを実施するとともに、個性のある町づくりを進めるため、県民運動として花いっぱい運動を展開してまいりました。
 平成八年度からは、新しい県民運動のあり方を求めて新県民運動基本大綱を策定することとしてございますので、この中で、議員お話しの町並みの景観づくりや都市景観の整備といった新しい視点を持ちながら関係機関とも十分協議するとともに、県民の皆様方のご協力を得るべく、その内容について検討してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 森議員にお答えいたします。
 まず、公共用地の先行取得についてのご質問についてでございます。
 県といたしましては、従来から重要な国道、府県間道路、街路事業などについては、県の土地開発公社を活用し、用地先行取得を行ってきたところでございます。公共事業に係る用地先行取得につきましては、事業主体の確定していない場合、具体的な対応等、種々の問題も生じますが、事業を促進していくためには、いろいろな手法を駆使しながら用地をできるだけ先行取得していくことが非常に重要なことであると考えております。
 なお、用地取得の促進につきましては、このほか高規格幹線道路等について、関係土木事務所内に担当事務所を設置し、地元市町村と連携をとりながら用地買収を行うなど、事業の促進を図っているところでございます。今後も事業の進捗を図るため、状況などを勘案しながら、土地開発公社の活用や公共用地の先行取得に積極的に取り組んでまいります。
 次に、町並み整備についてのご質問三点についてでございます。
 町並み整備の一点目につきましては、潤いのある生活環境をつくり出すとともに、観光・リゾート立県を目指すためにも景観の向上に積極的に取り組むこととしております。このため、景観づくりの基本的な方法論について検討を行うとともに、地域の特性を勘案し、電線類の地中化、潤いのある道路整備などを進めてまいります。また地方部においても、歴史や文化などを生かすため、景観の向上を図ることとしております。
 平成八年度は、和歌山市の和歌山港線や白浜町の浜通などで電線類の地中化を進めるとともに、田辺市の都市計画道路駅前扇ケ浜線で、商店街の再整備にあわせ、歩道のグレードアップやストリートファーニチャーの設置などにより駅前にふさわしい景観再整備を進めますし、中辺路町の歴史国道や那智勝浦町の観光ふれあい道路の整備などを行います。
 また、ソフト面としては、和歌山県らしい魅力ある県土づくりを推進するため、新たな施策として輝のくに景観づくり調査を行い、景観条例の制定等について検討を進めるとともに、引き続きふるさと建築景観賞などにより県民に関心を寄せていただく施策を進めてまいりたいと考えております。
 二点目の三年坂通りの景観整備につきましては、おかげさまで美術館、博物館にマッチしたものとして完成し、好評をいただいております。引き続き県庁前から築地橋の間について、平成八年度から電線類の地中化にあわせて、同様の街路灯、歩道のグレードアップを行うこととしております。
 なお、岡山丁から大橋間及び築地橋から築港間につきましては、今後検討してまいりたいと考えております。
 三点目につきましては、都市部における幹線道路の整備に当たって、都市景観の向上の観点からも、電線類の地中化、街路灯などのグレードアップ、ゆったりとした広幅員歩道の設置や街路樹等の緑化を進めております。これらの電線類の地中化などには、電力・通信需要密度や土地利用状況などの地域特性との整合を図りながら、今後とも景観の向上に向けて積極的に取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 総務部長木村良樹君。
 〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 公共用地の先行取得に当たり発行する建設債をゼロクーポン債、いわゆる割引債としてはどうかというご質問でございます。
 割引債には、ご指摘のとおり当面の利払いが軽減できるというメリットがございまして、現在、我が国で発行されている割引債は、利息相当分に租税特別措置法により優遇措置が認められている割引国債と割引金融債の二種類のみということになっております。地方公共団体や土地開発公社等が割引債を発行することにつきましては、他団体で検討された経緯もございますけれども、税制上の手当て等さまざまな問題もあり、直ちにということはなかなか難しいというふうに考えているところでございます。
 しかしながら、公共用地の先行取得というのは大変重要なことでございますので、議員ご提言の趣旨も踏まえ、財源のあり方について真剣に検討を進めてまいりたいと考えております。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 35番森 正樹君。
○森 正樹君 時間が限られておりますので、二、三点質問を申し上げます。
 まず国際交流についてでありますが、私は、友好交流のキーワードは人間だと思います。物や情報の交換も大事でありますが、やはり最後は、人と人が行き会い、話をし、互いに相手を理解するところからすべてが始まる、本当の交流が始まると、そのように思います。
 文化も環境も歴史も宗教も、ありとあらゆるものが違う民族同士が交流をするわけですから、いろいろと難しいことがあり、その間の溝というのは深いものがあると思います。しかし、その溝を埋めて近づくためにこそ人間と人間の交流があるんであって、そういう意味で、どうしても役人の皆さんは他との兼ね合いとかという物の言い方、考え方をしますが、フロリダ州への常駐派遣を早い段階で考えていただきたい。その人がキーパーソンとなって交流というのが広まっていくんだというふうに私は思います。
 近いところから例を申し上げますと、今回のメキシコ・シナロア州との交流については、当初、知事がかわったことで大変難しいんではないかという憶測がありました。しかしながら、副知事が団長として乗り込まれて、聞くところによると当初は十分しか会えないと向こうは言っていたそうですが、実際には約一時間いろいろなことを話し合うことができた。やはり当たって砕けろでありまして、人と人がそうやって交流をすることによって話というのは前に進みますし、深まっていくわけであります。したがって、前例がないとかということではなくて、このフロリダ州との交流については人がキーになるんだということで、どうかひとつ常駐派遣を早い段階で考えていただきたい。
 それから、オーランドと関空との間の直行便の問題でありますが、これは、日米航空協定の問題があり、今交渉が途絶しておりますし、以遠権の問題等々、難しい問題がいろいろあるということはよくわかっております。しかしながら、今回訪問させていただいて痛切に感じましたのは、カリフォルニア州には日本人が大変たくさん行っており、至るところで日本人に出会いましたが、マイアミまで参ると非常に少ないんです。余り会うことがない。それがいいのか悪いのかは別といたしまして、少なくとも和歌山県とフロリダ州がこれから友好交流をするわけですから、その一つのパイプとなるものはやはり直行便だと思うんです。そういう意味で、これから県選出国会議員の皆さんのお力もおかりしながら航空交渉の中でこれを議題に上げていただいて、ぜひとも進めていきたい。我々も最大限の努力をしたいと思っております。今、貨物便の話し合いが行われており、その後にいわゆる旅客便の話になるそうでありますが、ぜひともその中で関空・オーランド間の直行便の話が議題として上がるように、我々も努力しますので、知事初め皆さんもぜひご努力を賜りたいと思います。
 それから公共用地の先行取得の件でありますが、割引債の件は一つの提案として申し上げたわけであります。しかしながら、前例がないとかそんなことではなくて──例えばかつて神戸市が、ポートアイランドの建設のために、昭和四十一年からですが、外債の発行を希望したことがあります。その当時、戦後の外債発行というのは東京都に限られておりました。これは長たらしい名前の政令等がございますが、もう申し上げません。その中の定めがあって、東京都しか認められていなかった。その中で、神戸市の強い希望で昭和四十三年五月にこの政令が改められ、第二号として正式に認められてマルク債を発行したという事実がございます。これを一つの契機にして、その後、横浜市や大阪府・市、最近の例では関西国際空港に絡む関連施設の整備のために大阪府・市が発行した例がございます。そのように、壁というのは突き破ったら可能性が広がるわけでありまして、当時は東京都しかだめだと言われていたわけですが、その中で神戸市が強い希望と働きかけによって見事にこれを実現させたわけです。同じように、この和歌山県が今後二十一世紀に向かって飛躍発展するためにも、公共用地の先行取得というのが非常に大事だと思います。片一方で景気回復という効果が期待されますし、ほかにもいろんなメリットがあります。そのためにやるんだという前提の上でゼロクーポン債なり──和歌山で外債を発行したっていいと思うんです。戦後神戸が希望し、その熱意によって実現して発行されたような外債が実に多くあります。まさにユーロダラー債まで含めていろんなものがありますが、私は、和歌山県が外債を発行したっていいと思うんです。そういう、やるんだという前提に立って努力していただくことをぜひともお願いしたい。
 自治省の財政局地方債課の末宗さんという課長補佐──総務部長はよくご存じだと思います──がおっしゃっている文章があります。「用地交渉に時間がかかるケースが多いこと、ミニ開発、乱開発された土地は現状回復が困難であり、計画的なまちづくりに必要な用地を確保する必要があること、地価が沈静化していることは先行取得の好機ともいえることなどから、地価が沈静化している局面においても、地方公共団体としても積極的に公共用地の先行取得に努めることが望まれる」と、自治省の幹部がそのようにはっきりおっしゃっております。しかも、平成三年度には要件の緩和、対象拡大等が行われました。一般用地の先行取得について、事業化までの期間を五年度以内とされておりましたが、十年度というふうに延ばされましたし、さらに平成四年度には対象拡大や利子負担軽減措置が図られました。平成五年度にも利子負担軽減措置が図られております。このように、公共用地の先行取得に当たってはいろんなそういう条件面で整備されてきつつあるわけですから、そうした意味で、今後十年分の公共用地先行取得をこの二、三年でやるんだ、それによって和歌山県の経済の活性化を図るんだ、それが二十一世紀の和歌山の発展につながるんだと、そうした観点でぜひとも取り組んでいただきたい。
 すべて要望でございます。ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で森正樹君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
 午後零時五分休憩
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