平成7年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番鶴田至弘君。
 〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 質問に先立ちまして、知事が今後四年間、県民の信託にこたえ、根底から県民の立場に立って県勢の発展と県民福祉の向上のために精励されることを心から要望いたしたいと思います。過日の県議会冒頭の所信表明において知事は、県民の声を聞き取ることの大切さ、開かれた県庁という方向を示されましたが、その所信は四年間ぜひ堅持していただきたいと思います。
 さて、質問でございますが、まず第一に公約ということについてであります。
 知事は、選挙期間中、県民に対して多くの公約を発表してまいりました。そこには旧来には聞けなかった新しいものもあり、また県民生活向上にとって大いに期待したい公約もありました。しかし、一般的に言って、世に公約ほど軽く扱われているものもありません。選挙中に耳に快い公約を掲げて有権者の歓心を買い、当選の後にはまるでほごのようにそれを捨て去った例は枚挙にいとまがありません。権力の座に座った途端、「状況が変わった」、あるいは「認識が甘かった」とかの言葉を吐いて有権者への約束を破棄する姿は最近にも幾つか見聞し、有権者、主権者への侮辱として心からの怒りを覚えるものでありますが、知事にあっては、公約とはまさに文字どおり公約であることを望むものであります。
 西口知事は、百三十六の提言・公約を掲げて、この知事の座につきました。私は、百三十六の提言・公約のすべてに賛成というわけではありませんが、多くの共感を覚えるもの、県民福祉の立場からぜひとも早期に実現を望むもの、私が推薦した候補の公約と重なるものも多数あります。それらの公約が、「時期尚早」だとか「将来の展望」だとかいう言葉で遠いかなたに追いやられるとすれば、まことに残念なことになります。県民が切望し、かつ県民的合意の得られた公約には、まさに公約として全力を尽くして実現されんことを望むものでありますが、知事の政治姿勢の基本としてお聞きしておきたいと思うのであります。いかがでしょうか。
 また、公約の中には、必ずしも現段階で県民的合意を得ていないものもあります。知事は、当選後のマスコミのインタビューに答えて、「物事には、賛成の人もあれば反対の人もある。反対派の言うことに耳をかさないというのではいかん。そのような意見をよく聞いて判断しなければならない」と発言されています。公約を行政化する上でその姿勢は大変大事なことだと思いますが、その所信を貫かれることを改めて表明されることを望むものであります。
 次に、今次選挙に当たって幾つかの危惧する点がありました。それを指摘し、知事の所信を問うものであります。
 一つは、選挙の前哨戦に当たる時期、九月議会において私どもは、県庁職員とりわけ幹部職員の当時の西口候補への応援が公務員の範囲を逸脱していることをただしてまいりました。それは単に公務員法を犯しているというだけの観点でなく、地方公共団体として県民に公平であるべき行政が、特定候補をその分を越えて支援することによってゆがめられるという危惧を抱いたからでありました。しかし、その後もさまざまな風説が流れ──「風説」というのは、私が直接確認していないという意味においてですけれども──耳に入ってまいりました。それを裏づけるように、十月十日のある新聞にこんな記事が載りました。
 「県北部の町長や町議、自治会の区長らが七人、県道整備を陳情に県土木事務所を訪れた。町長らが所長の前に歩み寄ると、いすに座ったままの所長は一人の区長を名指しして、『あんたはどっちよ』と顔を見上げた。机の上には西口氏と旅田氏の顔写真が並べられ、所長は二枚を交互にたたいて、区長が口ごもると所長は、『それやったら峠までの道はつかん。まあこの際、少々の無理は聞くから、かわりに知事選は頼む』と言った。その場に居合わせた人は『そこまで言うのか』とあきれた」とあります。明らかに、地位を利用した利益誘導です。
 ある新聞は、「西口陣営は県職員だけでなく市町村まで動員していた」と書いていました。和歌山市を除く市町村長のほとんどが当時の西口候補の後援会支部長に就任し、すさまじい選挙戦を演じていました。後援会支部長に就任したそれぞれの市町村長は、西口氏の人格、識見を認めてその職を引き受けたのか、あるいは別の意図があったのか、私の知るところではありませんが、次のような新聞報道に接すると、果たしてこんなことで地方自治と言えるのだろうかと考え直したくなるようなことがあります。
 十月三十日のある新聞の報道でありますが、次のように記しています。「夜の個人演説会は二カ所であった。町の会館では午後八時前から始まり、後援会支部長を務める町長が開会のあいさつをした。『この町が郡内で得票率の成績が一番よくなるよう願う。胸を張って県へ行けるように私を支えてほしい』と訴えた」とあります。ここには、町長が何としても新しい知事の覚えめでたきを願い、一票でも成績を上げたいとする姿が見えますが、これは決して個人的利益を求めるのではなく、町のために少しでも県からの支援なり補助なりをちょうだいしたいという町長の切ない心が読み取れます。他の市町村長の心にも共通するものがあったと思いますが、客観的に見て、ここには県行政から市町村長やそれを補完する住民組織の役員に有形無形の圧力が加わっていたことを物語るものであります。また、その圧力にこたえなければ財政力の弱い市町村が住民の要望にこたえられないという厳しい姿をかいま見ることができます。
 知事自身は候補者であり、選挙戦の末端で何がどう演じられていたかは知らない部分も多々あろうと思いますが、承知か不承知かはともかく、このような事態が展開されていたのは事実であります。県が特定候補のために市町村に圧力をかけるというようなことは、地方自治の侵害であり、あってはならないことであります。また、それにこたえなかったからといって行政差別をするというようなことなどは、絶対にあってはならないことです。新聞等で報道された幾つかの事象についての知事の所見と、公平な行政ということについての見解を問うところであります。
 次に、政治活動、後援会活動、選挙活動における資金、いわゆる金の問題についてお尋ねをいたします。
 今回の知事選挙では、その前哨戦において実に華々しい宣伝合戦が演じられました。至るところにポスターが張られ、日時を経るとまた新しいポスターに張りかえられ、その数も日ごとにふえてまいりました。大小の看板があちらこちらに出現し、巨大な後援会事務所が各地に出現しました。とりわけ、和歌山市に置かれた西口氏の事務所はまさに巨大なもので、宣伝戦は県政選挙史上最大のものと言われております。
 県民の多くは、無数のポスター、看板から西口氏の政策の一端を知らされるというより、共通して感じさせられたことは、「一体幾ら金がかかったのだろうか。物すごい金が使われているが、その金は一体どこから出てきたのだろうか」という大きな疑問でした。率直に言って、私も切にそれを感じましたし、幾人もの方々からその疑問を呈せられました。ある企業の方は、「数百万を超える献金の要望があった」と言っております。ある企業の方は、「今後のこともあるので、数十万円を献金した」と言いました。いずれも、「今後のことがあるので」という言葉が印象的でした。
 十月十四日の朝日新聞で、「知名度アップも金しだい?」という見出しで西口氏の後援会事務局長の取材記事が載せられています。それによりますと、平均一万円の大型看板が千二百七十枚、四千円の小看板が八百枚、十五円ぐらいのステッカーが百九万枚、これだけで六千七百万円になり、後援会事務所は県内十八カ所、その他の実質的事務所を含めると県下四十カ所、そこで働く給料を支払う職員は百人弱、和歌山市手平の事務所だけで一月三百万円のリース料、これらの事務所関係で月千万円単位の金がかかるとあります。そういう状況が数カ月続いているわけであります。体育館の決起集会にも一千万円の費用がかけられたと述べられています。
 これらを合わせますと、億単位の金の動きが推測されてまいります。庶民の常識では考えられないような莫大な金が動いていると想像されるわけです。西口知事の陣営は、西口知事が副知事を辞して以来、政治活動、選挙活動、後援会活動で一体どのくらいの金を消費したのですか、お答えください。
 もちろん、合法的な政治活動、選挙活動、後援会活動を行う上で一定の支出のあることは当然でありますが、今回の選挙戦を見ると、選挙もまさに金次第という思いを禁じ得ません。そういう風潮は、金のかからない選挙が言われている折から、政治をゆがめる大きな要因になると憂うるものであります。
 また、資金の出どころです。西口氏を尊敬し、その政治活動を支援するという個人の献金ももちろんあったでしょうが、後々のことを考えて資金提供した企業もあったでしょう。巷間、県の公共事業を請け負う県内外の企業が直接・間接にその資金の担い手であったと言われています。もしそうであったとすれば、それはまさに県政をゆがめる要因をつくったことになります。そういう事実はありませんか、お尋ねをいたします。
 公職選挙法百九十九条の第一項に、次のような叙述があります。すなわち「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない」。あるいは、当該地方公共団体から利子補給を受けている会社は寄附をしてはならないとあります。この法が制定されたのは、いろいろな機会に各種の名目でなされる寄附が候補者の地盤培養行為と結びつき、同時に、寄附した者に政治上、行政上の見返り、いわゆる特殊な優遇措置が与えられる、すなわち企業と政治家の癒着を防止するためのものであります。したがって、清潔で公正な政治を目指す者にとってこの精神は、公職選挙法でいう極めて限定された選挙資金に限られたものではなく、後援会活動や一般的な政治活動にも当然及ぼされるべきものであります。
 そういう点から見て、今回の選挙に当たっても、単に公職選挙法にいう選挙資金だけでなく、その前哨戦に当たる政治活動・後援会活動資金の調達にもその精神を貫くことが必要であったと言わなければなりません。公職選挙法百九十九条の精神が政治活動、後援会活動にも貫かれたと断言できますか、お答えください。
 この政治家と金という問題は清潔で公平な政治を進める上で極めて重要な問題ですから、気になる点を一つつけ加えてお尋ねをいたします。
 選挙期間中、命と暮らしを守る日高郡市委員会という団体が、関西電力が計画している御坊第二火力発電所に関して各候補者あてに公開質問状を出しました。質問の内容は、御坊第二火力発電所についての賛否、その影響への懸念、燃料の安全性、経済効果への認識などの四点と、五番目に「関西電力及び関連企業から政治献金を受け取ったことはありませんか。また要請したことはありませんか」という質問でした。
 一から四については、回答の内容の評価はともかく、きちんと回答がありましたが、五の政治献金を受け取ったかどうか、要請したかどうかについては回答はなく、全くの白紙でした。これは一体どうしたことでしょうか。火力発電所の建設ともなれば、県の関与はまさに重大です。その重要な許認可をめぐっていささかも不透明な点があってはならないのは当然のことでありますが、この白紙回答はまさに不透明であります。なぜ白紙だったのでしょうか。今、改めてアンケートの質問にお答えください。
 私は、西口知事が「開かれた県政」を標榜されていることに共感するものであります。それゆえにこそ、この所信を貫くためには、知事自身の政治活動、後援会活動にあっても、県民の前に明らかであるべきだと考えるものであります。選挙の論功行賞があったり、選挙資金や政治活動資金、後援会活動資金に不明朗があっては、それはかなえられません。将来の問題もあわせ、知事の所信をあわせお聞かせいただきたいと思います。
 続いて、アメリカ軍の県土における超低空飛行と、それに関連する件についてお尋ねをいたします。
 私はこの件に関して過去二回質問をいたしまして、仮谷前知事も「中止を要望している」との答弁をされたところでありますが、超低空飛行は依然として続けられています。ここ五年間をとってみましても、九一年に十七件だったものが、九十二年には七十六件、九三年には百件、九四年には六十三件、九五年には十月二十六日現在で三十九件、十一月に入ってから田辺市でもあったと言われています。これらの超低空飛行は、時にはパイロットの顔がはっきり見えるとさえ言われ、その轟音は住民に恐怖を与えています。
 その都度、県消防防災課は中止を要請していると聞きますが、米軍によって完全に無視されている状況で、いかんともしがたい状況が続いています。私も幾度か外務省に中止を求めるべく訪ねたところでありますが、外務省は「日米地位協定がある以上、政府としては何ともしがたい」と説明されるだけであります。
 日米地位協定と言えば、沖縄の少女への米兵の暴行でアメリカに対する日本の屈辱的地位を痛いほど思い知らされた協定でありますが、沖縄を初め全国でこの日米地位協定の全般的な見直しを求める運動が起こっているところであります。安保条約とそれに基づく日米地位協定によって、戦後五十年を経た今も日本には米軍基地が百三十五カ所も置かれ、それは首都東京にさえ厳然と設置され、駐留する米軍は四万五千人と、世界に類を見ない、近代史上類を見ない現実が横たわっています。
 「仮想敵国・ソ連の侵略から日本を守る」と称してつくられた安保条約はソ連崩壊後その条約存立の大義を失い、改めてアメリカの世界戦略に沿った再定義を試みようとしておりますが、日本の安全はこのような軍事同盟の拡大によって図るべきではないと考えます。このような安保条約に基づいて結ばれた日米地位協定が、米兵の日本小児に対する暴行に日本の主権を行使させ得ず、また県民の不安を呼び起こす超低空飛行への抗議にもアメリカがまともに受け入れないで完全に無視する姿勢を許しているわけであります。
 今日まで、沖縄県民の怒りの声は高く、米軍基地そのものにかかわる見直しを求めています。和歌山県議会も、去る九月の議会においてこの地位協定の部分見直しを要望し、決議を行いました。知事にあっても、この少女暴行事件に対してさえ主権行使を許さない日米地位協定の見直しを求めると同時に、超低空飛行を公然と行わしめる条項を含めての日米地位協定の見直しを国に対して求めることを要望するところでありますが、いかがでしょうか。
 これに関していま一点要望し、知事の所信を伺うものであります。
 沖縄では今、大田知事が「基地の中に沖縄がある」という現実を改めるべく、県民の強い要望にこたえて、政府を相手に一歩も引かず、懸命に頑張っています。今日まで我慢に我慢を重ねてきた沖縄県民の要望を担って一県の知事がそこまで果敢に奮闘している姿は、日米安保への評価の違いを超えて、多くの人々の共感を呼んでいます。国家権力の言いなりにならず、地方自治体の長としてまず県民の要望の実現に死力を尽くす姿は、まさに地方自治の原点を見る思いであります。
 安保等への評価はいろいろでしょうが、沖縄県民が余りにも大きな基地の存在により他府県にない労苦を強いられているということについては、共通の認識になろうと思います。今後、地方自治を守り県民福祉に重大な責任を持つ西口知事にあっては、そういう立場からでも沖縄の大田知事に強い連帯を表明してはいかがでしょうか。
 次に、今回の公約の一つ、電源立地についてお尋ねをいたします。
 知事の公約のエネルギー政策の推進のところに、「電源立地については、地元の意向を最大限尊重し、地域の振興につながる地域共生型の災害に強い発電所の建設を推進いたします」とあります。文言の一つ一つには同意するところでありますが、原子力発電所の立地について一言質問をいたします。
 原子力発電については、現在のところ、地元の意向を最大限に尊重するという立場から、行政としての積極的な推進の姿勢は見えておりません。しかし、電力企業の方は依然としてその考えを放棄していないようで、再三にわたって地域住民にその安全性をPRしたり、テレビのコマーシャルでその安全性をしきりに宣伝しているようであります。
 県の一九六一年から二〇〇〇年にかけての長期総合計画には、原子力発電所の立地に関し、「安全性の確保を図るとともに、立地に伴う地域振興効果などの調査研究を実施する」、また「企業及び関係自治体への連絡調査を積極的に推進する」、さらに「原子力発電についての住民の正しい理解を得るために、地元自治体や関係団体と連絡をとりながら住民の合意形成に役立つ広報活動を推進する」とあります。
 現在、この原発推進の行政はほとんどストップしているようでありますが、西口知事にあっても「原発は基本的に推進しない」と言明されることを求めるものであります。いかがでしょうか。電源立地について地元の合意を得るというのは当然のことであり、問題は、地元の理解さえ得られれば原子力発電所を立地したいと考えているのか、あるいは南海道大地震という巨大地震の可能性のある中で、そのような危険なものは推進しないという態度なのか、そこを明確にしてほしいと思います。
 さらに、長計にいう「原子力発電についての住民の正しい理解」とはどういう意味なのか、「原子力発電は危険」というのは「正しい理解」の中に入るのか入らないのか、また公約の中の文言「災害に強い発電所」の中に原発は含まれるのかどうか、さらに第三次中期実施計画の中の文言「クリーンなエネルギー」の中に原発は含まれるのかどうか、お尋ねをいたします。原発論議はもう終わったという説もありますが、念のため、しかとお答えいただきたいと思います。
 次に、今議会に提案されました行政手続条例についてお尋ねをしたいと思います。
 本条例案は、条例第一条にあるように、行政運営における公正の確保と透明度の向上を図り、県民の権利利益の保護に資することを目的としているところであります。目的は大変結構ですし、積極的な条項も盛られていますので、その目的を達成する上で幾つかの点を補完したいと思ってお尋ねをいたします。
 行政指導のあり方を示した第三十一条についてです。この条項は、各種の許認可の申請は法や条例等々の形式を満たしておれば速やかに許認可しなければならないことが定められているわけですが、従来は、申請の内容が行政の意図するところと異なっていたり、開発行為等の申請で周辺住民の合意が不十分であったりした場合、行政指導によってその申請者に変更を求めたり、許認可に時間を要したりいたしました。実際、その行政指導で法や条例の空白地にあった住民が救われたという例は、数え上げれば多く出てまいります。
 ところが今回、条例案三十一条の一項によると、「行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない」とあり、申請者の権利の保護をうたい、同時に行政指導の限界を示しています。また二項では、「前項の規定は、申請者が行政指導に従わないことにより公の利益に著しい障害を生じるおそれがある場合に、当該行政指導に携わる者が当該行政指導を継続することを妨げない」とあります。これは、申請等が法や条例の求める形式を満たしていても、その内容が公の利益を著しく損なうようなことがあれば行政指導はできると規定したものだと思われ、一項の不十分さをこの項で補完したと考えられます。この項目は法にもない心配りのある条項で、大変結構なことだと思いますが、いま一歩踏み込んで、ぜひお願いしたいと思うことで質問するところです。
 ここで言う「公の利益」とは、どのようなことを指すのでしょうか。「公」とは多数という意味にも解せられるし、行政という意味にも解せられます。また、個人であっても、少数であっても、憲法や法で定められた権利もあり、そういうものも公の利益と考えておられるのでしょうか。また、公の利益に反するかどうかの判断は、携わる行政官のその政治姿勢、行政姿勢の差によって異なった基準があるかもわかりません。だれの意思が公の利害を判定するのでしょうか。
 また、関係する第三者の理解する公の利益ということも考えられます。例えば、開発行為等の申請の許認可に当たって、行政も申請者も公の利益に反しないと判断しても、その開発行為に隣接する住民が不利益を感じることもあります。法や条例を補完する要綱より条例の方が優先する中で、第三者の利益はどのように守られていくのでしょうか。この際、第三者──ある意味では当事者──は、自己の利益のため、行政指導の内容、申請者の対応等を当然知りたく思うでしょうし、行政の意思決定の過程に参画したく希望するでしょう。条例の目的の一つが行政の意思決定について内容、過程を明らかにすることでありますから、行政上の措置として何らかの対応が必要になると思いますが、いかがでしょうか。
 最後の質問でございます。
 長引く不況の中、税収の落ち込みで厳しい財政状況になっておりますが、余り生産的でない支出として、これまでの高金利時代に発行した地方債の利払いがあります。昨年度も一般会計、特別会計での利払いは百八十億円を超えると聞いており、大きな負担となっています。一方、現在の市場金利は史上最低となっており、高金利時代との差は大きく開いています。政府系資金の借入残高は現在千七百億円を超え、利率は高いもので一九九〇年度の平均が六・六%、縁故債で六・九%となっています。また、九四年の平均は、政府系が四・三%、縁故債が四・一%ですから、二・五%ぐらいの開きがあります。
 これら政府関係、縁故債の五%以上の高利率の分を、例えば利率を一%下げるだけで年十億円を上回って節約できることになります。政府筋ではこういう繰り上げ償還とか低利の地方債への借りかえはなかなか認めないようでありますが、この政府の対応には法的根拠はありません。地方財政法では、その第二条に「地方財政運営の基本」として、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない」と述べ、また「財産の管理及び運用」では、「常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて最も効率的に、これを運用しなければならない」とあります。
 県債管理基金なども繰り上げ償還などを大きな目的の一つとしておりますし、そういう法的根拠でもあるわけです。また、かつては公共企業体の繰り上げ償還も資金運用部資金では認めておったところでもありました。高い利子払いを安くする方法としてぜひ研究し、繰り上げ償還、借りかえ等を実施していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
 以上、第一問を終わります。
○議長(橋本 進君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員にお答えをいたします。
 まず公約・提言についての態度でございますけれども、私の提言あるいは公約は、すぐに実行できるもの、あるいはまた長期にわたるもの、さまざまでございます。必要に応じ、また県民の皆さん方の意見を幅広くお伺いをして反映していきたいと考えております。
 また、政治家として公約を守るということは当然でございまして、みずからの責任と認識をいたしております。
 次に、選挙にかかわる幾つかの問題でありますけれども、まず論功行賞的な行政を排せということでございます。
 先ほどご紹介のございました新聞報道などについては、私はそうした事実を承知しておりませんけれども、一般論として、行政にかかわる公務員は公正な態度を求められており、このようなことがあってはならないと考えております。また、市町村長の記事につきましては、市町村長という一人の政治家の活動と考えておりますので、私の立場から意見を申し上げることは差し控えたいと考えております。
 申すまでもなく、行政は公明正大でなければなりません。市町村に対しても、企業に対しても、すべての人々に公平な行政を進めてまいらなければならないと、私は強く決意をいたしております。
 また、昨年辞職以来の政治活動資金の収支などにつきましては、昨年分については既に選挙管理委員会の方に報告されております。また七年の分については、各団体の会計責任者が来年三月までに報告する予定になっております。
 政治家の政治活動については政治資金規正法によって規定されており、私の後援団体についても、それらに基づき適正に処理しておると考えております。
 また、ご照会のございました企業からの献金につきましては、私は選挙活動中でありましたので存じておりませんでしたけれども、改めて後援会に確認をいたしましたところ、献金はなかったという報告を受けております。
 いずれにいたしましても、公職選挙法の趣旨を十分に踏まえ、今後とも公正で適切な政治活動を進めてまいりたいと考えております。
 次に、日米地位協定の見直しについての問題でございます。
 まず地位協定につきましては、先般、九月定例会において、我が国に対し不利益を強いている日米地位協定の早期改正を求める意見書が議決をされ、議会の方から国に対しての要望がなされたところでございます。私も、議会の皆様方と全く意見を同じくするものでございます。
 また、米軍機の低空飛行の問題につきましては、再三、外務省及び米国大使館に中止の申し入れを行ってきたところでございます。このたびの沖縄県における暴行事件を契機として、日米の話し合いの中に低空飛行の中止も含めるよう強く申し入れておるところでございます。今後も引き続き、低空飛行の中止を外務省に対して申し入れてまいりたいと考えてございます。
 次に、沖縄県大田知事との連帯についてでございます。
 大田知事が沖縄という地域の実情を勘案された上で、自治体の長として代理署名拒否という重大な決断をされたものだと認識しております。ただ、この問題は、日米間の相互協力及び安全保障に係る問題でございまして、最終的には国において判断されるべき問題であろうと考えてございます。ただ、大田知事の心情は、私も同じ知事として十分理解できるところでございます。
 次に、原子力発電についてでございます。
 電源立地については、地元の意向を尊重しながら、適地性、安全性、地元の同意という三原則に基づいて従前から地域振興の立場で対応してまいったところであります。私も、この三原則については今後ともその立場で対応しなければならないと思っておりますが、現在のところ、原子力発電所の具体的な計画は聞いてございません。新たな長期総合計画の策定の中で、各界各層のご意見を十分踏まえながら対応してまいりたいと考えております。
 以上であります。
○議長(橋本 進君) 総務部長木村良樹君。
 〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 行政手続条例の案、三十一条の行政指導を中心とするご質問でございます。
 行政指導の限界を示したとされる昭和六十年の最高裁判決では、行政指導への協力の拒否が社会通念上、正義の観念に反すると言えるような特段の事情がある場合には、行政指導を理由として処分を保留しても違法ではないと解する余地を残しているところでございます。
 この条例案第三十一条第二項はこの趣旨を明らかにするために入れたものでございまして、ご質問の「公の利益」とは、そのまま処分をすると社会的混乱が予想される場合など客観的な状況がある場合を言いまして、主観によって左右されるものではないと考えられます。
 なお、申請者と第三者の間に利害を調整する必要がある場合も、ここでいう「公の利益」に当たると考えておりますので、手続条例施行後も調整のための行政指導は必要に応じ行っていくというふうになろうかと思います。
 また、行政の意思決定過程に住民が参画する一般的な手続規定を設けることはどうかということでございますが、これについては現状の法体系の中ではなかなか難しいということになっておりますけれども、個々の許認可等ごとに、必要に応じて住民が参画する手続をつくっていかざるを得ないと理解しております。
 次に、県債の繰り上げ償還と低利への借りかえについてでございますが、公債費の負担軽減を図ることは、ご意見のように、県財政の健全化のためには非常に重要な事項であると考えております。
 議員ご提案の、高金利分の県債の繰り上げ償還と低利への借りかえが可能であるかどうかでございますが、まず、資金運用部資金等政府資金、公営企業金融公庫資金については、資金コスト等、言ってみれば貸し付け側の事情から、一般的には繰り上げ償還が認められていないということでございます。また民間金融機関等縁故資金についても、現実はなかなか難しい状況にございますけれども、先ほども言いましたように、公債費の累増は本県財政にとって重大な問題でもございますので、これまで民間資金を中心に銀行等と折に触れて交渉してきたところでもございますし、今後とも金利負担の軽減に向け、こういうふうな努力を鋭意続けていきたいと考えているところでございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 再質問をさせていただきます。
 選挙資金、政治資金について、幾ら使ったのか、請負業者からようけ献金があったのではないかという質問をしたわけですが、それについては答弁がございませんでした。ただ選挙管理委員会に届けているということで、それ以上答えにくい内容があるのかなと、いろいろと推測をするわけです。
 その「答えにくい」というところに、うさん臭さ──という言葉は少し失礼な言葉かと思います。「不透明さ」と言いかえておきましょう──を感じるわけですが、そういうことも明確に答えられるようになっていただきたいと思うんです。
 きょうはこの点でとどめますが、一言、再質問をさせていただきたいと思います。
 一問と重なりますけれども、金をめぐる政治家のスキャンダルは後を絶たないわけです。違法な金銭の受け渡しということだけではなくて、政治資金をめぐってさまざまな金が動いてまいります。政治資金規正法というのはその制約が実に甘く、公職選挙法百九十九条が規制しているものでも許容している面がありまして、公共工事を受注する企業からの献金なども公然と行われている現実です。
 「企業から政治家に献金をするのは企業の利益のため。もし利益がないのに献金すれば、企業に対する背任だ」と、財界のさる名士の言葉がありますけれども、選挙で莫大な金が動いたことは事実であり、さまざまな企業が献金をしたことは、西口後援会の事務局長自身もインタビューに答えられております。そういうこともありますので、献金企業への特別の配慮が行われる可能性、危険性は客観的にあるのではないかと感じるわけです。
 西口県政は今スタートしたところですから、そのスタートのところでこの癒着を絶対に起こさないよう決意してもらわなければならないと思っております。献金企業の方からも今後さまざまな働きかけがあろうかと思いますが、公正な対応をしてもらわなければ県政がゆがんでまいります。「今後の政治活動においては公職選挙法の趣旨を踏まえていく」という答えでした。大変結構なことだと思いますが、さきに紹介したように公職選挙法百九十九条は請負関係のある企業からの献金を禁止していることは承知のことだと思いますので、十分心していただきたいと思うところであります。
 献金を受けたところへも特別優遇などは行わず公平な行政を行い、今後、公職選挙法百九十九条の趣旨を踏まえて政治活動に臨まれんことを求めて、知事のその点についての決意をいま一度お聞きしておきたいと思います。
 それから、米軍の超低空飛行の問題について、日米間の協議の中に加えるべく強く要望したということであります。それは大変結構なことでありますが、聞くところによると、これは消防防災課が電話で申し入れたとのことであります。日米間協議にこの問題を加えよというようなことは極めて重要な課題でありまして、消防防災課が電話でやったからそれでよしとされておるのは知事としてはいかがなものかと思うわけです。
 この超低空飛行は日米地位協定の五条二項、二条一項、十六条等、それに基づく関係法によっていることはご承知のとおりです。これらの協定や法が現状のままでは、米軍にとってはごく合法的なことになってまいります。私の質問の趣旨は、それら協定関係法規の見直しを求め、知事みずから要望の先頭に立っていただきたいということでありますので、その点についての再度の答弁を求めたいと思います。
○議長(橋本 進君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員の再質問にお答えを申し上げたいと思います。
 一つは選挙にかかわる問題でありますけれども、先ほどお答えしましたように、私は公職選挙法百九十九条の趣旨を十分に踏まえ、公平な行政、適正な政治活動を行ってまいりたいと思いますので、ご了解をいただきたいと思います。
 それから日米地位協定の問題でありますけれども、先ほどの課長から申し出たというのは実は私の就任以前の問題でございまして、その後、最近の問題としては、日米地位協定の中の問題箇所について早期改正を求める県議会と意見を同じくするということを申し上げたところでありますが、この考えを基本に、引き続き低空飛行の中止を求めて交渉してまいりたいと考えております。
 以上です。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(橋本 進君) 再々質問がないようでございますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時五十九分休憩
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