平成7年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(上野哲弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後二時三十四分再開
○副議長(木下秀男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(木下秀男君) ただいま井出益弘君から、先ほどの同君の要望における発言について、その一部を取り消したい旨の申し出がありました。
 同君の発言の一部取り消しについて、同君の申し出どおりこれを許可することにご異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(木下秀男君) ご異議なしと認めます。よって、井出益弘君からの発言の取り消し申し出を許可することに決定いたしました。
○副議長(木下秀男君) この際、当局から発言を求められておりますので、これを許可いたします。
 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 和歌山北バイパスは、建設省の直轄事業である上、橋梁工事に着手するまでには、用地取得の促進、河川協議など解決すべき課題も多く残っておりますので、ご説明の中でその趣旨を申し上げたものであり、誤解を生じた点については申しわけありません。
 県といたしましては、一日も早い着工に向けて努力してまいります。
○副議長(木下秀男君) 以上で、井出益弘君の質問が終了いたしました。
○副議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 20番上野哲弘君。
 〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 一般質問を行います。
 西口新県政について、そのお考えをお聞きし、今後の県政の指標にしたいと思っております。
 去る十二月六日、県議会初日における西口新知事の所信表明を伺い、和歌山県政の新たなる出発を感じると同時に、大いなる期待をするものであります。
 このたびの知事選を振り返りますと、仮谷県政二十年の評価が問われたものであり、さらに、今後の県政に県民がいかなる期待を込めて新しい執行者を選択されたのか、西口知事におかれましては、県下各地を回られて、その意図するところをよく感じ取られておることと存じます。
 さて、新知事における施政方針は、二十一世紀に向かっての地域活性化、さらに和歌山県の発展を考える上での県政のあり方を提起され、その中で和歌山県はある意味では重要な時期にあるとの指摘は、全く同感であります。県下五十市町村それぞれの特色を打ち出す絶好の機会が到来したと言えるのではないでしょうか。二十一世紀はアジアの時代であり、アジアにおける日本、その中での和歌山県の果たす役割を考えた場合、もっともっと広い視野に立って和歌山のあり方というものを真剣に企画しなければならない、まさしくそのとおりかと思います。
 それでは、順序を地域振興からさせていただきます。ただいま、県下全体について申し上げました。それに関連して、熊野地域の振興についてお伺いいたします。
 この問題につきましては、仮谷前知事に対し、四年間にわたりこの議場で申し上げてまいりました。その間、県当局におかれて熊野地域活性化対策として三年間にわたる計画案が作成され、今、その実施が待たれるところであります。私は、このような状況の中、西口県政のスタートに当たり、地域の現状を客観的に申し上げ、その対策に心から期待するところであります。
 それでは、熊野地域を構成する新宮市の現状を申し上げたいと思います。
 まず人口でありますが、平成七年十月三十一日現在、新宮市の人口は三万四千五百六十四人と、三万五千人を割り込んでしまいました。ちなみに、県下の有田市は、市政施行以来新宮市より人口が少なかったのでありますが、今回の調査で有田市の人口は三万五千二百七十六人となっておりますので、その差が約七百人となってしまいました。その原因の一つは、巴川製紙所新宮工場の閉鎖によるものと考えます。この工場の閉鎖は地域経済にとって大きな痛手となっており、その対策は地域にとって最重要課題となっております。今、地元においては地域振興どころか、減退しているのが現状であります。
 しかし、我々は後向きの論議をしても始まりません。将来を展望し、地域に応じた対策が求められているところであります。その意味から、御坊市を参考にして比較してみたいと思います。
 御坊市の人口は現在二万八千五百二十七人と、三万人を割っておりますが、今年度末には御坊まで高速道路が完成し、御坊・阪和間が大幅に短縮されようとしており、それに付随して県企業局による工業団地が完成し、企業誘致も始まったと聞いております。さらに、御坊地区は拠点都市としての指定を受け、また御坊田園テクノタウンの位置づけがされているところでもあります。聞きますと、平成十三年には人口予想を三万二千人としているようであります。
 一方、十年後の新宮市の人口予想は、今のままで推移すれば二万八千人となり、県下最下位の市になってしまうとも言われております。地方における人口減は時代の流れでいたし方ない面もありますが、やはり行政に携わる者にとっては重要であり、見逃せない問題と思います。
 それでは、新宮・東牟婁の地域振興策をどのようにとらえるか。非常に厳しい現状が待っていると考えますが、当地域の多くは山間部で占められ、その基幹産業である木材産業の低迷が過疎化に拍車をかけ、地域の体力がじわじわと減退しております。当地域は山間部を無視して考えられない中、木材産業が第二の石炭産業になり得るのか、大きな選択を迎えていると思います。すなわち、新たな木材産業を打ち立てるのか、さもなくば別な分野に進出すべきなのか、二十一世紀の青写真が今行政に求められていると思います。
 最後に、質問の要旨といたしまして、その振興対策は将棋で言えば王手飛車の例えで考えるべきかと思います。すなわち、何を選択し、何を切り捨てるのか、決断しなければなりません。
 以上、私の所見を申し上げ、当局の見解をお伺いいたします。
 次に、熊野博についてお伺いいたします。
 今回の知事選において西口知事は、熊野地域の活性化の一環として熊野博の開催を提言されました。本来なら、地元市町村からその声が出て、県当局にその旨を伝え、計画書を作成し、地域住民が行政と一体となって推進すべきものであると思いますが、いかんせん地域にはその元気がないのが現状であります。しかし私は、地域選出の議員の一人として、また住民の一人として、ぜひともこの熊野博を実現すべきであると思っております。
 今、地域にとって何が必要か。これまでのような地域イベントの開催もさることながら、その目的に向かって新たな発想とか当地域の特色が出せる知恵とか、または大きな汗を流すとか、そのような過程が絶対必要不可欠と確信するものであります。以下、私なりの熊野博の意義を申し上げ、その具体案を言上し、県当局のご所見をお伺いするものであります。
 さきに知事が申されました、和歌山県はある意味では重要な時期に突入しているとの指摘は、時宜を得た発言であったと思います。二十一世紀は、世界的にはアジアの時代、国内的には地方の時代と言われております。今まさに和歌山県の持つ特色を全国に打ち出し、また世界にアピールすべき時期とすれば、この際、熊野地域をぜひともその一角に加えていただき、熊野地域の活性化の旗印として熊野博の開催を強く願うものであります。
 それでは、熊野博を通じて地域として何ができるのか、また全国あるいは世界の人々に何を提供できるのか、我々には新たな発想と知恵が要求されるところであります。
 まず熊野博開催のテーマをどのようにするかでありますが、熊野地域にどのような位置づけを行うかにかかっていると言っても過言ではありません。私の考えを申せば、行政的には二十一世紀の社会を想定し、あらゆる施策の先取りを行うための実験場にすべきであると思います。さらに一般的には、二十一世紀は物質から心の時代と言われております。熊野地域は心に関するあらゆる情報を全国あるいは世界に向けて発信すべき役割を担うべきであり、そのような位置づけを行い、具体策に入るべきものと考えます。
 具体策の第一点として、二十一世紀における福祉、教育、医療、文化、健康、観光、産業等、あらゆる分野の情報を組み入れた総合イベントにすべきと思います。
 次に、熊野地域を分割し、その地域地域でどのような具体案が作成できるのか、それぞれの地域の発想と知恵を集約すべきと思います。私は、四地域を考えてみました。第一地区を串本、古座、古座川とします。串本は西牟婁郡でありますが、新宮・東牟婁広域圏に入っていますので含みました。第二地区を太地、那智勝浦とし、第三を新宮地区とします。第四を本宮、熊野川、北山とすれば、それぞれの地区が熊野博の旗印のもと、斬新なアイデアを出し合い、特色のあるいいものができるものと考えます。
 第三点に、県当局と地元の行政、住民が論議し、その体制を早期に結成すべきと思います。
 最後に、熊野地域は三重、奈良の両県と接していますので、できれば両県と協調して共同開催となれば、さらに充実した熊野博ができるものと考えます。
 以上、熊野博に対する私の考えを申し上げました。県当局の所見と地域振興の面での一層の支援、指導をお願いするものであります。西口知事のご答弁をお願い申し上げます。
 続きまして、紀南におけるスポーツ公園についてお伺いします。
 このたび、県土地開発公社において巴川製紙所新宮工場の用地を取得され、県スポーツ公園とする旨の新聞報道がありました。このスポーツ公園につきましては、地元の要望もあり、県がその必要性を十分考えられて事業着手に向かわれていると思いますが、その経緯についてお伺いいたします。
 第一点、巴川製紙所の用地取得と全体計画について、第二点、地元紙における県営施設報道について、土木部長の所見をお伺いいたします。
 以上、終わります。
○副議長(木下秀男君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 上野議員にお答えをいたします。
 熊野博に関するご質問でありますが、いわゆる博覧会なるもののあり方については種々議論のあるところでございます。しかし私は、地域の活性化を図っていく上でのイベントの持つ意義、効果は依然として大きいものがあろうと考えております。
 本議会の冒頭で所信として申し上げましたように、私たちは、豊かな自然や歴史、文化といった地域の持っているすばらしい資源などを、もっと誇りと自信を持ってPRしていかなければならない、そのことがこれからの努力として必要であろうと思っておるわけであります。
 私が熊野博を提案したのも、まさしく県民の方々による地域のエネルギーを導き出し、このことを通じて熊野地域の活力と魅力を外に向かってアピールしていくことを考えていかなきゃならんという思いからであります。
 ただいまの議員のご提言の趣旨も、基本線においては私の考えと軌を一にするものでございまして、地域の発想と知恵、情熱、汗、そういうことを出す過程こそが何よりも肝要なことだと、そういうご意見に意を強くしたところであります。
 熊野博では、世界に誇るべき熊野精神文化の土壌、さらに、豊かな自然・歴史を二十一世紀の心の時代を先導するものとして、日本国内はもとより世界に情報発信をしていく構想としておりますけれども、こうした大規模イベントを開催するためには、まだまだ議論を重ねていかなければならない課題が多いと思います。とりわけ地元の盛り上がり、取り組みがこの場合のキーポイントになることだと考えておりますので、地元の皆さんともども大いに議論をして、地域の将来を見据えた計画として、これからその実現のために努力をしていきたいというふうに考えております。
 よろしくお願いします。以上です。
○副議長(木下秀男君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 上野議員にお答え申し上げます。
 熊野地域は、国土軸から離れている分、産業基盤の整備がおくれ、産業面の振興が課題となっていると認識してございます。このため、高速道路を初め、国道、県道、林道などの道路網の整備、JR紀勢線の高速化、ヘリポートの整備など、総合的な交通ネットワークの整備に取り組んでいるところでございます。
 こうした交通体系の整備をインパクトにして、自然や安らぎを志向する都市住民に熊野の自然資源、歴史・文化資源をPRし、観光・リゾート産業の振興を図ることが重要であると考えてございます。
 現在、第三次の中期実施計画では、熊野学研究センターの整備構想、海辺のふれあいゾーンの整備、歴史街道構想の推進などを主要プロジェクトとして位置づけ、熊野地域の活性化に取り組んでいるところでございます。
 今後とも、ふるさと産品の開発や販路の拡大による農林水産業の振興を図り、グリーンツーリズムの促進やキャンプ場、海洋レジャー施設の整備、安価で良質な宿泊施設の設置など、京阪神との交流を活発化し、市町村や地元の方々との連携を図り、活力のある地域づくりを促進してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 上野議員の、紀南におけるスポーツ公園についてのご質問にお答えいたします。
 新宮定住圏のスポーツ公園については、適地の確保に努めておりましたが、去る十一月に新宮市佐野地内において、土地開発公社により巴川製紙産業所有の土地約二・五ヘクタールの取得をしております。施設計画については、広域圏の位置づけのもとでスポーツ・レクリエーション需要に対応するあり方について、今後とも新宮市を初めとする関係機関と協議し、検討を進めてまいります。
○副議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 20番上野哲弘君。
○上野哲弘君 今回の地域振興について、僕が意図したところには木材産業が入っていたんですが、企画部長の答弁ということで。本来なら農林水産部長に聞くべきなんですが、私は農林水産委員会に所属しておりますので、それについては委員会で発言したいと思います。
 そういう面で、企画部長に認識をお願いしたいんですが、第二の石炭産業になるんではないかというような語句を使ったわけなんですけれども、その理由を申し上げますと、先日、農林水産委員会で九州における国産材を利用したプレカット工場──機械化して建ち上げるということなんですが──の現地説明では、これからの産業はこのような近代設備でやらなければ生きていけないという自信に満ちた言葉が返ってきたわけです。実は、そこへ同席された先輩議員の方から、巴川の跡地利用に関して、そこをプレカット工場にしたらどうかという話を受けまして、早速、地元の木材業者あるいは巴川製紙所にその旨を伝えたところであります。
 なぜ巴川にしたかと言うと、広大な山林を擁しており、その原材料が確保できるということと、もしできれば、その跡地が活用できる、それと、巴川という会社がもしそういう住宅産業に参加できれば、ある程度販路が期待できるのではないかと、そのような勘定をしていました。さらに、目前にある新宮港の整備促進がされれば、これの活用により大都市圏とのいわゆる交流、物流基地としても考えられるのではないかと、そのような意味で巴川製紙所にもその旨を伝えました。
 この提案が今後どのように推移するかわかりませんけれども、なかなか──現在のところは事業化するところには至っていないというような感じを受けたわけです。その中で、プレカットについては、今はコンピューターを使ってやっておりますが、十年になりますので、いわゆるもう飽和状態であるという意見の業者もあります。当局の方に聞きますと、今のところ、この事業でどうかという声も聞きました。また、補助事業としていろんなことをやるにしても地元の負担がなかなかできないということで、なかなかこの事業も進めないのかなと、そういうような感じを抱いたわけです。その中で、これからこの産業がどうなっていくかということを考えますと、これが十年たちますと、ほとんど近代化していない中小の事業所ではなかなか勝負にならない、いわゆる将来の見通しが立たないというような感じを受けたわけです。
 第二の石炭産業になるのではないかということは、そのような思いで提案したわけです。本当にそのようになるのか、また新しい事業展開でこれが利用できるのか、そのようなことも、農林水産部だけやなしに皆さんに知っていただいて、いろんな面で地域にぜひとも情報を与えていただきまして、これからの活性化のためにちょっとご指導をお願いしたいなと、そのような感じで、これは要望としておきます。
 次に、土木部長のスポーツ公園です。
 これは地域の県民にとって非常にいい施設だと思いますし、期待しているわけです。ただ問題は、新聞へ「県営」と出たことなんです。僕が困ったと言うのは、こういう形で出ると、地域の人間は県が全部してくれるというように思うわけです。
 今回の知事選において相手候補が新宮で五分に渡り合ったということは、地域の減退もありますし、何か、県は今までしてくれないというようなことがあるんですが、それは別にして、そういう新しい人に、何かしてくれるんじゃないかという期待があったわけなんです。新宮まで高速道路を十年でつけるという、そんな話にも乗ってしまったわけです。そういう面で、変にこういうものが出ますと、本当に全部やってくれるという期待感がありますので、これはちゃんと説明しないとぐあいが悪いんじゃないかということで、今回質問させてもらいました。
 ちなみに、橋本市が今市営でやっておるわけですが、この面積たるもの、三十五ヘクタール、約十万坪です。今回のは、今土木部長が言われたように二・五ヘクタールですから、八千坪ぐらいですか。これが県営となってきますと、ちょっと問題があるんじゃないかというような感じがするわけです。
 地域の活性化にはいろいろありますが、こういう橋本市の例も十分考えておられると思いますけれども、ぜひとも地域住民にきちっとした対応をしていただきたい、このように思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
 以上で終わります。要望です。
○副議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(木下秀男君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後三時三分散会

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