平成7年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(大沢広太郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時五分再開
○議長(橋本 進君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 1番大沢広太郎君。
 〔大沢広太郎君、登壇〕(拍手)
○大沢広太郎君 仮谷知事さんにおかれましては、五期二十年にわたり和歌山県勢発展のため政治手腕を発揮し、多方面にご尽力をなされましたことは、後世に語り継がれる大きな実績であり、また県民にとりましても誇りかと存じます。今日まで、本当にご苦労さまでございました。
 この九月議会を機に後進に職を託されますが、知事の政治にかける情熱と実行力、そしてどんなときでも毅然とした態度に、政治を志す私にとりまして、尊敬をする一人であります。その崇拝すべき知事の最後の議会で新人議員として初質問をさせていただきますこと、まことにうれしく思う限りでございます。どうか、実のあるご答弁をお願い申し上げます。
 それでは、通告に従いまして質問をさせていただきたいと思います。
 本県における水産業の現状と振興策について、まず水産王国・和歌山についてでございます。
 かつては、進取の気性と漁労技術の優秀さにより各地に漁場を求め、全国でも有数の水産県としての名をほしいままにしてきたものでありました。また本県漁業者は、沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと、希望に燃えて世界の海へと雄飛していったものであります。
 しかし、昨今の本県における漁業の実情を見ますと、漁業を継ぐ若者が少なく、年々就労者が大変高齢化をしており、減少しておるのが現状であります。また、円高による輸入水産物の増加、あるいはバブル崩壊による世相の変化が魚価の低迷に追い打ちをかけているのであります。漁場環境の変化や地域開発により、漁業者を取り巻く環境はますます深刻であります。漁業者の悲鳴が聞こえてまいります。
 しかし、このような状態は、我が国経済の国際化、あるいは国内産業の構造そのものの変化によって引き起こされてきた部分が大きいことは言うまでもありません。仮谷知事には、水産を取り巻くこうした難しい世情にあって、五期二十年にわたり県政推進の最高責任者として水産に強い愛着を持って各般にわたり振興策を講じてこられたことは、三十年職場で直接漁業に携わってきた一人として、まず感謝を申し上げる次第でございます。
 私は、今後の漁業の進むべき方向としては計画的な漁業生産と計画的な販売が重要ではないかと考えます。知事の漁業に対する考え方等について見解などを聞かせていただき、私の漁業に対する肉づけとしたいと存じますが、いかがなものでございましょう。
 次に、養殖漁業についてでございます。
 漁業者みずからが管理・生産可能な養殖漁業の重要性を再評価し、ここに活路を見出すべきではないかと考える次第であります。しかし、養殖漁業においても厳しい状況には変わりはありません。五年前に一キログラム当たり千五百円していたマダイの単価が、現在では千円になってしまいました。また、養殖のブリについても同様、千円が五百円と半値の状態になっております。ヒラメにおいても同様であります。
 このような状態の中で、生産者は必死に生き残りをかけて日夜頑張っているのが実情であります。この養殖業の再生のため県当局におかれては種々の対策を行っていると思いますが、まず最初に知事の本県水産業に対するお考えをお聞かせいただきたいと思います。また、養殖業の振興策については農林水産部長にお尋ねをいたしたいと思います。
 続きまして、紀伊水道におけるまき網漁業に対する現状認識と火力発電の対応策について。
 紀伊水道を漁場として漁業を営んできた中型まき網漁業者は、昭和六十年度で二十五統、六百二十七人おられました。しかし、平成八年以降では十四統になり、三百六十八人に減ってしまう状態です。その大きな原因を推察すると、乗組員の高齢化による就業者の減少、バブルの崩壊による景気の低迷、輸入水産物の増加による魚価の低迷などが挙げられます。田辺地方は、まき網漁業や船びき網漁業などが盛んな漁業の町でございました。しかし、残念ながら本年中に二統が廃業すると伺っております。まことに寂しい限りでございます。
 先日、漁業組合のおじいさんと話し合った中で、「昔はよかったよ。御坊の塩屋口でアオアジがよくとれたが、火力発電所ができてからは、あのあたりでは余りとれないようになった。そこへまた第二火力発電所ができたら、わしらはどうしようもないよ」と嘆いておられました。また、航海日誌などを参考に見せていただきました。昭和五十七年から五十九年ごろには、その塩屋口漁場あたりで年間二十回ぐらいは操業しておったのでございますが、最近では三、四回しか操業をしていないのであります。それだけ、魚がとれなくなったのであります。
 私も、以前、アオアジの回遊について少し調べたことがあります。六月ごろ産卵をして、例年二月ごろ四国の日和佐沖に魚群が発生し、その後、田辺あるいは南部沖に移動し、五、六月ごろにかけて御坊塩屋沖に北上し、そして紀伊水道に残留するものと瀬戸内海へ北上するものがあるようでございました。つまり、塩屋沖はアオアジなど回遊魚の最良の漁場だったようでございます。また、回遊魚は潮流あるいは表面水温、塩分等に大きく左右をされると聞いております。
 そうすると、第二火力発電所が埋立面積百ヘクタール、出力四百万キロワット、今の第一発電所の約三倍の規模でさらに南側、つまり田辺寄りにできるということは、これはまき網漁業だけではなく一本釣りの人々にも、低迷の上にさらに火電による悪影響はないかと、不安感を与えております。
 そこで、四点質問をさせていただきたいと思います。
 まず一点目は、今低迷を続けているまき網漁業者を行政の主導のもとに救済し、生産者と消費者との流通がうまくいけるような流通対策がないかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
 次に、第一火電の温排水の温度と排水量、また今計画されようとしている第二火電の温排水の温度と排水量についてもお尋ねをいたしたいと思います。
 三点目としては、第二火電の建設に対する同意について、共同漁業権者の同意などどの程度必要か、また公有水面埋立法第四十七条の第二項についてはどのようになっているのかもお聞かせ願いたいと思います。
 四点目としては、第二火電建設に伴う漁業への影響の有無等についてどのようにお考えでしょうか、お尋ねいたしたいと思います。
 以上四点については、各部長の答弁をお願いしたいと思います。
 次に、九月六日付の「紀伊民報」紙初め各新聞の和歌山版に大きく取り上げられておりました、扇ケ浜総合整備計画の構想について質問申し上げます。
 私は、田辺市の活性化の手法の一つと位置づけ、この実現に向かって関係者とともに懸命に取り組んでまいりました。それだけに、感慨無量のものがあります。仮谷知事のこのご英断に深く感謝申し上げる次第であります。かつては白砂青松、紀州舞子大浜と呼ばれ、海水浴や臨海学校でにぎわった扇ケ浜、今再び市民の公園として、また緑豊かな憩いの場としてよみがえることを、市民の皆さんは待ち望んでいたのであります。
 この養浜計画は、単に田辺の扇ケ浜に海水浴場ができるということにとどまらず、漁業構造の進展の中で漁業従業者の生活の安定に寄与できるように活用が図れること、また全国的に見ても、特急がとまる駅・紀伊田辺駅から最も近いところが海水浴場となることから、関西方面などからの海水浴客の入り込みが予想されるために、ホテルや市街地の商店街の活性化が非常に期待できるものであります。
 このように考えますと、扇ケ浜総合整備計画は駅前周辺と一体になった町づくりでもあると位置づけられますので、市民の皆さんの期待もいかに大きいかがおわかりいただけると思います。さらに、紀南文化会館の駐車場を確保することによって大きなイベントも行うことができますし、台風や高波の防災対策の一助となります。
 このようなことから、早期着手に向けてさらなるご尽力をお願いする次第であり、また、この事業推進につきましては漁業者の方々から温かいご理解とご支援をいただいておりますことを申し添えさせていただきたいと思います。
 次に、私の提言を二点、お聞き願いたいと思います。
 一点目は、今回の計画では扇ケ浜にある三本の排水管を沖へ出す計画となっておりますが、将来的にはこの排水処理を駐車場地下へ埋設して市街地の快適環境の整備を図ってはどうか。それにより、田辺湾の環境保全につながり、よい漁場が確保できることになるわけでございます。
 二点目に、この扇ケ浜漁港、田辺のシンボルは何かないものかと考えます。私は、マリーナシティを何度か見せていただきました。また、和歌浦からマリーナシティを見たことがありますが、照明をされたあの橋のファッションが何とも言えないほどすばらしいと感じたわけであります。まさにマリーナシティのシンボルとして付加価値を高めているように思うのであります。
 この二点の提言につきまして、つたない私の発想でありますが、今後、関係部局の皆さん方のご指導をお願いする次第であります。
 そこで、農林水産部長にお尋ねをいたします。この扇ケ浜総合整備計画はいつごろから着工する予定か、また事業期間及び事業費について、国、県、市などの負担金の割合等についてお尋ねいたしたいと思います。
 これで、第一回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの大沢広太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 大沢議員にお答え申し上げます。
 本県水産業に対する私の見解についてでございます。
 お話ございましたように、長い海岸線を持つ本県は歴史的にも海との関係が非常に深く、先人たちによるけんけん釣りなどの新しい漁法やかつおぶしの開発など、全国の水産業をリードし、基幹産業の一つとして発展してきたところでございます。また、日本のみならず世界的にも、ヘミングウェーの「老人と海」の中で紀州の漁法が紹介されておりまして、そのように和歌山県の漁法というものが知れ渡っていたわけでございます。
 しかしながら、近年、二百海里時代の到来により、漁場の縮小や漁業経営の悪化、また海外からの魚類の輸入の問題、漁業従事者の減少や高齢化の進行など、水産業を取り巻く環境は非常に厳しいものがあるわけでございます。こうした中で本県の漁業の将来展望をいかに切り開いていくかが大きな課題となっておりまして、私もこれに苦慮しているところでございます。
 水産業の振興にとって計画的な生産と販売が重要であるとおっしゃられましたけれども、私も同感でございまして、こうした観点から、消費動向を注視しながらつくり育てる漁業を中心とした資源管理型漁業を推進するとともに、産地・市場の再編強化など流通体制の整備もなお積極的に推進していかなければならないと考えておるわけでございます。
 また、後継者の育成についても、安定収入とともに環境整備ということが非常に重要な課題でございまして、下水道等の整備をする漁村環境整備事業を取り入れ、漁村の環境整備にも努めてまいりたい。また安定収入の面においては、漁業と観光との関連において、漁業従事者がそうしたものを行っていくような体制も図ってまいらなければならないのではないかと思っておるところでございます。
 先日、水産祭りに出席いたしました。出席者の皆さんの団結と熱意を肌で感じたわけでございますけれども、こうした漁業者の熱意のもとに的確な水産振興施策を進めることにより水産業の展望が開けるのではないかと思い、こうした形において進めてまいりたいと思っております。
○議長(橋本 進君) 農林水産部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○農林水産部長(日根紀男君) 養殖業の振興につきましてお答えいたします。
 本県の養殖業は、マダイ、ブリ、ヒラメを中心として県内漁業生産額の約四分の一を占めており、重要な位置にございます。しかしながら、最近は輸入水産物の増加に加え、全国的に生産過剰傾向にあり、魚価が低迷しております。
 このため、県においては、適正な養殖尾数を厳守するよう漁業者を指導するとともに、試験研究機関においてはクエ類などの新魚種の開発や大豆タンパク餌料等の新餌料の研究等に取り組んでいるところでございます。また、関係者で組織する全国かん水養魚協会において、魚価の安定を図るため生産量の調整を基本とした対策が検討されているところでもございます。
 いずれにしても、養殖業は本県水産業の重要な柱の一つでございまして、今後とも積極的な振興に努めてまいる所存でございます。
 次に、紀伊水道におけるまき網漁業と火力発電所への対応についてでございますが、まず、まき網漁業の救済と流通対策についてであります。
 紀伊水道のまき網漁業の生産量は、近年、年間約一万五千トン前後で大きな変動は見られませんが、魚価の低迷による水揚げ金額の減少や乗組員不足と高齢化により厳しい経営状況にございます。このため、業界では自主的に減船対策に取り組んでおり、これに対して県としても廃船処理対策費を助成する等の救済対策を講じることにより、漁業者の経営安定を図ってまいることとしてございます。
 また流通対策でございますが、まき網漁業は一時的に大量に漁獲されることから需給調整が大変難しいところでございますが、今後とも漁業者の経営安定を図るため、消費者ニーズに合った加工製品の開発、宅配便を利用した直販事業への展開、鮮度保持施設の整備を推進するとともに、漁獲調整などの取り組みも進めてまいりたいと存じます。
 それから、第二火力発電所建設に伴う漁業への影響についてでございますが、現在、事業者において環境影響調査が実施されております。その中で、漁業に関しては潮流、水温、水質、底質などの海況調査やプランクトン、卵稚仔などの生物調査が行われているところでございまして、その結果を見守ってまいりたいと存じます。
 次に、扇ケ浜総合整備計画のお尋ねでございます。
 田辺市扇ケ浜総合整備計画の構想については、市の強い要望もございまして平成三年度から調査を進め、平成五年度に計画認定され、平成八年度から現地において本格的な工事に着手できるよう、ただいま努力をいたしております。事業内容としては、海水浴場の整備、漁港の整備、さらに市単独で行う駐車場の整備などを含め、全体事業費で約百二十億円を見込んでございます。なお、平成十八年の完成を目指しているところでございます。
 次に事業費の負担割合でございますが、この計画の核となる海水浴場整備については国が三分の一、漁港の整備については国が二分の一となってございます。工事の本格着工に当たり、地元負担の割合等を検討しているところでございます。今後とも、早期完成を目指して積極的に予算の確保に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 なお、議員からご提言のあったことにつきましては、今後十分研究してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 大沢議員ご質問の、既設の御坊発電所の温排水量は毎秒七十九・五立方メートル以下で、温度差は摂氏七度以下であります。これは、公害防止協定に定める基準であります。
 また、御坊第二火力発電所については、現在、事業者により環境影響調査が実施されている段階であり、具体的な計画は環境影響調査書が提出される段階で明らかになってまいります。
 次に、御坊第二火力発電所の建設に際しては、地元の御坊市並びにに隣接の美浜町、日高町、川辺町及び印南町の同意、さらに関係する漁業協同組合の同意が必要と考えてございます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 大沢議員の公有水面埋立法についてのご質問にお答えいたします。
 公有水面の埋め立てに当たっては、法第四条第三項に規定する公有水面に関し権利を有する者の同意を必要といたします。具体的に申し上げますと、法令により公有水面占用の許可を受けたる者、漁業権者または入漁権者、法令により公有水面より引水をなしまたは公有水面に排水をなす許可を受けたる者、慣習により公有水面より引水をなしまたは公有水面に排水をなす者と規定されてございます。
 また、法第四十七条第二項は、埋め立ての規模が五十ヘクタールを超えるもの及び環境保全上特別の配慮を要する埋め立てについては、主務大臣が当該埋め立ての許可に際して環境庁長官の意見を求めることを規定したものでございます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 1番大沢広太郎君。
○大沢広太郎君 ただいま、知事並びに各部長から答弁をいただきました。
 先ほども述べさせていただきましたとおり、現在、漁業者は先の見えない苦しい状況のもとに置かれております。どうか、県行政の積極的な指導のもと、活力のある、そして若者が定着し、いつまでも希望の持てる水産振興施策を進めていただくことを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で大沢広太郎君の質問が終了いたしました。

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