平成7年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(堀本隆男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時六分開議
○議長(橋本 進君) これより本日の会議を開きます。
○議長(橋本 進君) この際、報告いたします。
 過日提出のあった議案第八十七号については職員に関する条例改正案でありますので、地方公務員法第五条第二項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、次のとおり回答がありましたので、職員に回答文を朗読させます。
 〔職員朗読〕
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      和人委第91号
      平成7年6月22日
 和歌山県議会議長 橋 本 進 殿
  和歌山県人事委員会委員長 水 谷 舜 介
 職員に関する条例の制定に係る意見について
 平成7年6月19日付け和議会第106号で意見を求められた標記のことについて、地方公務員法第8条第1項第3号の規定により下記のとおり回答します。
     記
 議案第87号 和歌山県退職年金及び退職一時金に関する特別取扱条例等の一部を改正する条例
    意 見
 上記条例案については、適当であると認めます。
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 【日程第一 議案第八十五号から議案第百一号まで】
 【日程第二 一般質問】
○議長(橋本 進君) 次に日程第一、議案第八十五号から議案第百一号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 21番堀本隆男君。
 〔堀本隆男君、登壇〕(拍手)
○堀本隆男君 今議会の最初に質問する光栄を与えていただいた先輩議員、同僚議員に感謝を申し上げ、議長のお許しを得て質問に入らせていただきます。
 私は、かつてこの議場で、戦後の三代知事の政策の特色を独断と偏見で述べさせていただいたことがあります。再度ご紹介いたしますと、昭和二十二年から四十二年までにご就任いただいた故小野真次知事は、「紀北は工業、紀南は観光」というキャッチフレーズで北部臨海工業地帯の整備に力点を置き、繊維、木材、皮革等の地場産業の育成と、住友金属を初め臨海装置型の鉄鋼、石油精製産業等の発展に努められた、そして紀南は、すばらしい自然環境と歴史、文化、温泉という観光資源を生かし、ホテル・旅館の育成に努められた、いわばひたすらにパイを大きくすることに専念された知事と言えます。
 昭和四十二年から五十年までご就任いただいた故大橋知事は、いわゆる三大プロジェクト──紀北那賀郡の南ろくに研究学園都市構想、紀中御坊市周辺に田園工業都市構想、紀南東牟婁郡に福祉エリア構想を掲げ、当時、全国的に高度成長期で、工業開発一色の日本の中で公害防止、環境保全を尊重、地域発展のウエートを高等教育、文化、スポーツの振興、青少年育成と福祉の充実に努められた、いわばパイの中身をよくする政策の展開に努められたわけであります。
 そして、昭和五十年から現在まで十九年七カ月ご就任いただいた仮谷知事は、紀伊半島という辺地性のゆえに高速交通体系から取り残され高度経済成長路線に乗り切れなかった政策の選択が結果として一人当たり県民所得の全国順位を相対的に後位に押し下げられた県勢を引き継ぎ、課題として県経済の発展と県民生活の質をよくするという、いわばパイを大きくし、同時にパイの中身をよくするという二つの命題を背負ってスタートしたわけであります。
 先日、仮谷知事在任中の主な事業一覧表を見せていただきました。大変な事業の数々であります。余りご自慢をなさらない知事であるだけに多くの人々に知られてはございませんが、業績は大変大きいものと思われます。そして目につくのは、社会資本、産業基盤の整備に打ち込んでおられることでありまして、和歌山県がこれから飛躍する基盤の骨格は相当進められたと評価いたしたいのであります。
 仮谷県政総仕上げとも言うべきリゾート博の大成功、関西国際空港の完成とその後の発展ぶり、頭脳立地構想、和歌山大学のシステム工学部の創設、近畿大学生物理工学部の誘致とさらなる学科増設、県立医科大学移転整備の着手など高等教育機関の前進、湾岸道路と阪和間高速道路の完成、そして高速道路の広川ランプウエーの開通と御坊・南部までの工事化、さらに幹線国道、県道の県内各所での改良促進は肌身で感じられるところであり、著名な経済人をして「不景気な日本だが、和歌山の株だけは高くなったようだ」と言わしめております。
 先日、松下興産の関根社長の講演をお聞きしましたが、リゾート博の大成功は、一つは景気が回復基調で財布のひもが多少緩んだこと、二つに好天に恵まれたこと、三つにリゾート博を盛り上げる県民意識と県民の協力がよかったことを挙げ、最も大きな成功理由として、四つ目に湾岸道路、阪和間高速道路の全通を取り上げ、和歌山は近いと実感した京阪神の人々を呼び込んだことが成功につながったと話しておられました。
 私は、別の視点から、このプロジェクトを決断し、松下興産を誘致し、そして成功をもたらした知事の手腕のすごさを挙げたいと思います。
 たしか昭和五十三年だったと思いますが、知事は企業誘致に懸命で、どうしても松下電器に進出していただきたいと、松下幸之助相談役に会いに行かれました。当時、私は県職員として企画部におり、知事に随行しましたが、その際、幸之助相談役は知事に、「和歌山へ行くよう部下に言っているのだが、交通網が悪く土地の値段が高いと、なかなか動いてくれない。まあ何とか考えましょう」と言われました。そして、和歌山県の将来のことについていろいろアドバイスがあり、そのとき強烈に印象づけられた言葉は、「これからは空港ですな。世界でも、日本でも。松下は全国三十七府県に工場があるが、空港のないところへは進出していない」と、暗に関西国際空港を示唆されておりました。そしてもう一言、「独立でんな。和歌山は独立し、独立国にならないと」と言われました。いまだに私にはこの言葉の真意がわかりません。
 近畿の各府県が泉南沖空港に対して騒音公害、環境保全の視点などからなかなか賛意を表せない中、和歌山県の仮谷知事が一番先に賛成を打ち出されたことは、皆さんご承知のとおりであります。関空の決定が阪和間高速道路の全通と湾岸道路の完成という巨大なプロジェクトをも同時に完成させるという知事の先見性と強いリーダーシップがリゾート博の成功をもたらし、和歌山の株を高くしたゆえんであるのであります。仮谷知事の業績は和歌山県政史に永遠に輝くことでありましょう。
 さて、松下興産の関根社長は、「リゾート博の成功で終わりなのではなく、その後が問題ではないか。立派な燦黒潮リゾート構想もあり、観光立県としてそれらをいかに実現していくか、その努力がこれから必要であり、松下興産はあの島を完結すること、リゾート都市をつくり上げることに努力する。将来、関空は必ず日本一の空港になる。大阪ではユニバーサルスタジオの誘致も実現する。東南アジアの核として発展する。そのためにも、今準備しておくことが最も大切なことだ」と強調しておられました。
 次に、これは全日本の問題ではありますが、ことし一月十七日に起こった阪神・淡路大震災は多くの人命の犠牲と阪神経済圏に大きな打撃を与え、政府及び自治体の危機管理システムが改めて問われ、本県経済も大きな打撃を受けております。平成不況は、昨年やや明るさを回復しましたが、ことしは一段と深刻になってきました。産業のグローバル化に伴うNIES諸国や中国、東南アジア各国の高度成長に比べ、日本は「うつむき加減」とか「アジアの病人」と言われ始めるほど国内経済は不振に陥ってまいりました。株価の不気味な下落、地価の歯どめのない値下がり、内外価格差や価格破壊と規制緩和の波、そして企業のリストラのうねりが「日本の町から工場が消える」と言われるほどの国内企業の海外進出となり、産業空洞化と失業を生み、さらにアメリカの壮絶な為替戦略、超円高ドル安戦略は日本の輸出産業に恐怖を与え、加えて国内産業も安い海外製品の輸入の打撃を受け、いずれも倒産または閉鎖が増大しつつあります。さらにメリルリンチ社の試算によれば、日本の対外資産はドル安のために為替差損で国富が四十七兆円消えると報じております。つまり、日本がこれまで営々として稼いだ海外の富が一瞬にして消失するすごさでございます。
 今、日本の一世帯当たりの消費支出と勤労者世帯の実収入も、前年比マイナスとなりました。このことの結果が企業の売り上げを減少させ、さらに商品価格を下落させ、この悪循環を繰り返して雇用や賃金を落ち込ませ、さらなる消費と物価の下落をもたらすという、デフレ経済に陥っていることが明らかになってまいりました。
 「エコノミスト」六月二十日号は、「デフレ経済の真実」を特集してございます。戦後、右肩上がりの経済成長ばかり追い求めた日本政府と日本企業はこの初体験に気づかず、今や政府機関、企業経済システムの抜本的見直しを迫られるに至りました。その上、サリン事件、オウム真理教の社会不安が加わり、この先日本がどうなっていくのか、世論は政治と政府のリーダーシップを改めて厳しく問い直しているところであります。
 ところで、私は、こうしたオールジャパンの厳しい現実も二十一世紀へ持ち越すことは決してないと思っております。日本はこれを乗り越え、切り開いていく英知とエネルギーがあるからであります。しかし、現今のこうした厳しい経済社会環境をある程度踏まえて、これからの和歌山県づくりをどのように進めていけばいいのか。和歌山県の特色と独自性を生かした、つまり新紀の国づくりにどう取り組んでいくべきか。豊かで、安全で、安心のできる、ゆとりと潤いのある県民生活の実現が行政と政治の究極の目標であります。そして、ビジョンが不可欠であります。
 そこで、質問に入らせていただきます。
 文字どおり仮谷知事のライフワークであった県づくりのこれまでの軌跡についてのご感想と、今もなおふつふつと情熱のたぎる思いの未来の和歌山県のビジョン、二十一世紀の和歌山県像をお伺いしたいのであります。知事の夢で結構でございます。
 知事のご家系も、知事ご自身も、長命な相でございます。多分かくしゃくとしておられる二十年後の和歌山県の姿、特に高速交通体系、産業構造、情報通信網、高齢者福祉、教育文化、その他について展望をお教え願いたいのであります。ご自身のうんちくを披瀝賜りたいのであります。
 「松下興産では瀬戸内二〇五〇プランを掲げ、五十年後の社会はどうあるべきかを考えている。その未来から今日を見据え、一歩一歩実行し実現していくことが大きな務めである」と関根社長は語っておられました。多分、知事のビジョンは次の世代の大きな遺産になることと思われます。
 企画部長にお尋ねします。
 まず、関空の効果について。本県でのデータの収集は難しいかと思いますが、現時点での把握し得る効果を多方面にわたってお示しいただきたい。
 次に、大阪府知事は、関空全体構想の推進のうち第二期計画を第七次空港整備計画に組み入れるべく上下分離方式を発表されておりますが、この案に対する本県のスタンスをご教示いただきたい。
 さて、南北格差について質問いたします。
 県は半島振興、過疎対策に大変力を注いでくれており、深く感謝するところであります。それにもかかわらず、紀南の東西牟婁郡では依然として人口減少、若者の流出、高齢化に歯どめがかからない。そうして、南北の所得格差も開く一方であります。
 ご承知のことと存じますが、九四年版「個人所得指標」によりますと、全国平均を一〇〇としたとき、東京都は一五〇、和歌山県は七七、西牟婁郡は六四となっており、私の出身地の日置川町では四七・三と、東京都の三分の一にも満たないのであります。この原因は、主力産業である農林水産業の不振、高速交通体系のおくれにより企業誘致や新産業興しが進まないことに尽きると言われてございます。その上、社会資本の整備や産業基盤の整備の面でも格差が開く一方です。
 近年の和歌山市を中心とする紀北の県の施設整備には目をみはるものがあり、地域のグレードを上げております。それは知事の業績でもありますが、紀南に住む県民にとっては何ともやるせないものがあります。ようやく新南紀空港・白浜空港の整備に伴う滑走路跡地に、また大島架橋に伴う島内開発に新レジャー産業の誘致の動きがありますが、これに対する県の今後の対応並びに支援が必要と思われます。この南北格差についての認識と格差解消についての部長のご所見を承りたい。私は、県議選三期目出馬に当たっての公約のトップにこの南北格差の是正を訴えてございます。
 次に、商工労働部長にお尋ねいたします。
 一昨年、策定後十年以上も経過し、時代に適しなくなっている本県の産業活性化ビジョンについて改定を強く訴えたところであります。現在策定作業中と伺っておりますが、その見通しはいかがでありますか。
 聞くところによりますと、国では五全総に向かって国土審議会がスタートしました。そして大きな枠組みとして、新国土軸構想、従来の圏域を超えた新しい国内の交流圏を目指す広域交流圏構想、国際経済のグローバル化を考えての国際交流圏構想──これは、東南アジア、中国の華南経済圏と西日本太平洋岸各県の経済圏を結びつけて発展をねらう構想でございます──があり、いずれも本県にかかわりの強い構想ばかりであります。
 また、経済企画庁は新経済計画の中間取りまとめを発表し、二十一世紀の経済社会は、一、少子・高齢社会、二、よりグローバル化した社会、三、高度情報通信社会としております。一方、近畿圏の計画では、近畿通産局においても近畿産業構造展望委員会がまとめた二十一世紀を展望した戦略三分野を挙げ、これらの産業のフロンティアベッドが必要とされております。近畿における長期のトレンドがおおむね固まってまいりました。本県産業活性化ビジョンは県民に期待されております。
 さらに、このビジョンにはもう一つの重要な使命もあります。それは、国の五全総が策定されると本県の第五次長期総合計画の策定がされるわけでありますが、このビジョンが第五次長計の産業振興の骨格をなす役割を持っており、そうした意味で新機軸の創出が期待されているわけであります。
 私見として、やはり関西国際空港を生かし切った施策の展開と、県民にやる気になってもらうこと、他府県から和歌山へ進出したいと言わしめるものが求められていると思うのであります。大変難しいこととは思いますが、紀の川流域と高速道路インターの周辺に世界の先端産業を誘致することが大事と考えます。そのための受け皿づくり、企業用地の造成は不可欠であります。
 同時に、紀南は観光産業、リゾート産業をいかに育成・誘致していくかということが最大課題と考えております。関空の服部社長がさる座談会で、「和歌山県は、関空開港で日本で二番目に世界に近い県になる。国内便も多い。県にとって観光開発が仮にメーンであるならば、和歌山を変える最後のチャンス。ただ、じっと待っていてはだめです」と語っております。
 次に、水産試験場の整備についてお尋ねいたします。
 本県の基幹産業である農林水産業も、ウルグアイ・ラウンド合意以降、外圧に対する諸施策を着々と講じられているところでありますが、一方、昨今の円高による輸入農水産物の急増と定着化は、憂慮せざるを得ない事態に至ってございます。また水産関係では、海の憲法と言われる国連海洋法条約が発効し、日本もその批准を迫られており、二百海里経済専管水域における資源管理、漁獲制限のおそれも出てまいりました。さらに漁業従事者の高齢化と後継者不足も深刻であり、十年後には一体どうなるのか、行政にその対応が厳しく迫られてまいりました。
 こうした背景を考えるとき、新しい時代に適応した漁業体制を確立し漁業振興を図っていかねばならないときに、現在の本県の水産試験場の組織、そして全国一小さくて古いと言われる施設・設備で対応できるのかという懸念があります。
 そこで、総括的な問題については知事に、次の二点については農林水産部長のご回答をお願いいたします。
 一点は、水産試験場のリフレッシュ、施設の更新についてであります。
 私は時々水産試験場を訪ねますが、その狭さには驚かされます。県政バスが訪問しても、場内に入って仕事ぶりを見学することもできないとか、また漁業者が黒潮の状況を聞きに行っても座るところがなく廊下で説明を受ける状態で、雨漏りなどその老朽化もひどく、機械器具類の保持にも苦労しており、空調設備も悪く、精密機器の設置場所もない事態に至っているようであります。他府県から視察に来て驚いている様子で、一日も早い施設・設備の更新、リフレッシュが現水試で求められていると考えておりますが、いかがでありましょうか。
 二点目は、水産試験場の多機能化と水産センターについてであります。
 漁業従事者の減少、高齢化、後継者不在、そして漁業生産量と生産額の減少は、漁業そのものの存続にかかわるゆゆしい問題となってまいりました。原因は日本の産業構造的なものではありますが、私は、これらの問題に対する起爆剤の一つとして水産試験場の整備を考えたいのであります。
 一つ目は、試験場を伝統技術の保存・伝承の場とするとともに、先端技術情報発信基地としての機能の充実、つまり次世代の核となる技術をつくり出し、漁業の担い手となる子供に夢と将来への鮮明なビジョンを与える試験研究機関とすること、二つ目は、二百海里専管水域内における海洋資源、つまり海底及び海水の活用に関する研究機能の充実、三つ目は、二十一世紀の余暇時代を迎え、観光産業、リゾート産業ともタイアップしたマリンスポーツ、マリンレジャー分野の研究・導入の機能──海洋レクリエーションの需要の増大は時代の流れであり、漁港がヨットを受け入れたように、水産業もこれを取り込んで発展する導入役を試験場に持ってほしい。この三つの機能を果たすため、名称を「水産センター」として充実するように提案したいのであります。県民に開かれた施設、文化と産業の中核を目指した施設としてほしいのであります。
 次に、土木部長にお尋ねいたします。
 南北格差是正の最大の課題は高速道路の整備に尽きると言われております。仮谷知事が最も力を入れておられる紀南延伸について、現在調査中の南部・すさみ間の整備計画路線への昇格は平成何年ごろに見込まれるのか、次期国幹審がいつ開催されるのか、お尋ねいたします。不況対策の一環として公共投資の増大を求めるよいタイミングであり、そうした要望活動についてもお伺いいたします。
 同時に、高速道路が大阪から、そして神戸から一気に広川まで延びて約一年が経過しましたが、人の動き、貨物の動き、他府県の評判等、この効果について教えていただきたい。
 さて、国道四十二号田辺バイパスは稲成町まで完成し、大変喜ばれております。そこで、この稲成・南部間について、今後の整備の見通しが大きな関心事となっております。高速道路の南部までの完成時期と合わせてうまくドッキングできるか、今後の見通しをお伺いしたいのであります。
 次に、国道四十二号の登坂車線について整備の見通しをお尋ねしたいのでありますが、特に日高町から由良町の間と由良町と広川町の間の登坂車線の整備を訴えられております。一部区間整備されておりますが、それでも他府県に比べおくれていると思うとの指摘があり、価格破壊の動きで高速道路を利用しがたい業種の産業が多いことを理解してほしいとのことであります。
 以上、建設省が所管ではありますが、お答え賜りたいのであります。
 さて、串本町にとって夢とまで言われた大島架橋が去る二月に着工され、平成十一年に向かって着々と工事が進められております。仮谷知事のご英断に町民挙げて喜んでおり、心から感謝申し上げる次第であります。そして、早くも大島島内の開発が期待され、将来宝の島になるとまで言われるようになりました。
 ところで、一点ご質問いたしたいのであります。現在工事が進められている大島地区の橋詰め付近から須江に向かい、現道と結ぶ二千三百四十メートルの区間についてでありますが、もし将来、不測の災害でこの区間が通行不能となった場合、全島の車が全く通れないときの対応が心配されているわけであります。須江、樫野はもちろん、地元の大島地区も全く困るのであります。
 仄聞するところでは、大島地区から橋詰めへのバイパスが検討されているようでありますが、串本町においても技術的な可能性の調査を始めております。その内容についてお伺いいたします。
 最後になりましたが、観光和歌山県にとって「美しい和歌山」は最大の財産であります。しかし、紀南を含め県下各地に不法投棄の車両が目につくのは大変残念なことであります。国道や県道あるいは市町村道の道路わき、河川や海岸敷、公共管理の広場等にこうした放置自動車が見受けられます。必ずしも県の責任ではございませんが、県はこれまでどのように対処されてきたのか、また今後どのように対応されるのか等、お答えいただきたいのであります。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの堀本隆男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 堀本議員にお答えいたします。
 これまでの県政を行ってきた感想並びに二十年後の夢についてということでございます。
 私はまだ任期が残されておりますので、現在は全力を尽くして県政を全うしてまいりたく努力しておるところでございますけれども、ご質問でございますので、少し感想を述べさせていただきたいと思います。
 私が就任したのは昭和五十年の十一月でございました。大橋先生が知事に当選された四月ごろはまだ景気がよかったのでございますけれども、十一月になるとかつてないほどの急激な落差があり、オイルショックの影響等で財政的にも非常に厳しくなってまいりました。そうしたことから、県の定員、また機構改革等、財源を節約する分野に努力を傾注したわけでございまして、限りない行政需要にいかに対処するかということが一番の課題でございました。
 そうした中で、県にとって最大の課題は半島ゆえの不便さの克服でございました。そのためにまず全力を尽くしたのは、交通網の整備でございます。近畿自動車道の南伸と大阪との連結、紀勢本線・和歌山線の電化、そして特急くろしおの新大阪駅乗り入れ、関西空港の開港、南紀白浜空港のジェット化、国道の昇格──県内ほとんどの町村に国道が通ったわけでございます──また県内の道路網の整備を進め、格段の時間短縮を図ったわけでございます。
 また、皆さんとともに半島振興法を立法化いたしました。その感慨もひとしお深いものがございます。
 農業や産業振興につきましては、議会の皆さんとともに果樹王国和歌山の建設、農道・林道等の拡張延長と企業誘致等に努め、また福祉対策も、全国の予算の中では八番目か九番目の位置を占める形になっております。
 同和問題につきましても、地対法以来、同和対策委員として財特法並びに財特法延長等において全力を尽くしたことも思い出深いものがございます。
 教育の分野において、私立高校や近畿大学の誘致、和歌山大学システム工学部の設置、県立医科大学の移転整備、美術館等文化施設や多目的ホールの建設等の施策を推進してまいりました。
 また、昨年マリーナシティにおいて開催されたリゾート博が成功いたしました。県民は、ふるさとに自信と誇りを持つことができました。これからが和歌山の新しい時代ではないかと思っております。
 それから、未来の問題でございますけれども、話ございましたように関空全体構想は実現しておると思います。阪神・大阪湾と並ぶ立派な国際港湾和歌山下津港としての港湾整備、並びに日高・田辺・新宮の港湾整備、近畿自動車道の新宮までの全通、また、紀淡海峡はもちろんでございますけれども、太平洋新国土軸が完成しているのではないか、そしてその国土軸の中に位置する和歌山県は産業的に経済的に大いに発展するのではないかと、かように思っておるわけでございます。
 また、和歌山県は今まで交通が不便でありましたけれども、これからのマルチメディア時代において至近距離という意識が生まれ、そして関空との関連から新しい産業がすばらしい自然環境のもとで発達し、リゾートを生かした国際都市として、また高野・熊野に代表される本県の文化がなお一層新しい和歌山の文化として発展してまいると思います。また、海に空に川にと、我々にはすばらしい自然環境がございますし、人情も豊かでございます。そうした中で、保健、医療を初め、行き届いた福祉社会の建設というものができ上がるなど、夢は限りなく続いていくのではないかと思っております。
 それから、水産試験研究機関の整備についてでございます。
 先ほど話ございましたように、各施設が老朽化し、また狭隘化しております。そのために水産研究機関整備計画検討委員会というものをつくり、そこにおいて検討した報告書をいただいており、現在それを検討しております。しかしながら、用地取得や地元合意の問題等、非常に難しい課題が残っておりまして、今後どのように整備するか十分検討してまいりたいと思っております。
○議長(橋本 進君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 堀本議員にお答え申し上げます。
 関西国際空港についてでございますが、現在、国内線が当初目標の一日七十便に対し七十八便、国際線は九十便に対し六十三便が就航してございます。
 議員ご質問の関空効果についてでございますが、開港後六カ月の動向を見てみますと、大阪国際空港の前年同時期の実績と比べて、入国旅客数が百七十六万人、三二%の増加、貨物取扱量についても、輸出で六一%、輸入で五〇%の増加となっており、関西にもたらす効果としては大きなものと考えてございます。
 また、本県への波及につきましては、国内外の主要都市との時間距離が飛躍的に短縮されたことが最大の効果であり、その利便性が各分野で活用されるものと期待しております。
 ただ、開港後短期間であることから十分なデータがまだまとまっておりませんが、現在把握のできるものについてお答えいたします。
 まず、人口についてでございますが、開港前と開港後の十二月の住民基本台帳を比較いたしますと、隣接地域である二市六町では二千八百五十七人の増加となってございます。
 交通につきましては、阪和自動車道の開港前と開港後の、例えば上之郷インターチェンジと和歌山インターチェンジ間の一日交通量は五六%増加し、上之郷インターチェンジから海南インターチェンジ間については約二倍に増加してございます。
 また、旅券発行数につきましては、昨年八月から十二月の対前年伸び率が四五%と全国平均を大きく上回っておりまして、この五月においても全国一の伸び率を維持してございます。
 また、日本交通公社和歌山支店の九月から十二月の海外旅行ツアー販売実績が前年同期を約四〇%上回り、リムジンバス和歌山線の利用状況がこの四月までに十四万人以上となっていることからも、海外旅行が活発化していると考えられます。
 また、直接的な効果としては、旅客ターミナルビル等への出店を初め、日本航空株式会社の和歌山寮・社宅の立地、空港グランドサービス株式会社独身寮の立地、航空会社支店の進出、県産ジュースの機内食納入等がございます。
 このように、関西国際空港の波及は徐々に各分野に浸透しつつあるものと考えておりまして、今後もこのインパクトを享受するため、官民協力して努力してまいりたいと考えてございます。
 次に関西国際空港全体構想の推進につきましては、平成八年度から始まる第七次空港整備五箇年計画に二期計画の早期着工が盛り込まれるよう、オール関西で組織する関西国際空港全体構想推進協議会において検討を重ねてまいりました。
 去る五月に同協議会の全体構想実現化方策検討委員会の報告がなされ、代表委員会において、法制度面、資金面などの諸課題の解決を条件に、大阪府、大阪市を中心とする関係地方公共団体が用地造成の事業主体となるなど、全体構想を積極的に推進することといたしたところでございます。
 また、六月六日に行われた第七次空港整備五箇年計画の航空審議会ヒアリングにおいて、大阪府、関西経済連合会が地元を代表して条件つき主体分離方式を説明したものでございます。
 今後は、国家的プロジェクトである関西国際空港を第一級のハブ空港とするため、また関西の復権さらには県勢の活性化につなげるためにも第七次空港整備五箇年計画に二期計画の早期着工を盛り込むべく努力をするとともに、空港整備財源の充実など、積極的な負担についても国に強く働きかけてまいりたいと考えてございます。
 次に、南北格差についてと、紀南における新レジャー産業への対応についてでございます。
 紀南地方は過疎化、高齢化が進展し、国土軸から離れている分、産業基盤の整備等が進まず、紀南地域を取り巻く環境には厳しいものがあると認識してございます。しかしながら、紀南地方は我が国でも有数の温暖な気候と豊かな自然・文化資源に恵まれたところであり、国民の価値観が大きく変化し文化志向、自然志向が強まる中で、今後その価値が一層注目されるところであると考えてございます。
 こうした面で、紀南地方の特性を生かした地域開発をより積極的に進めるためには、まず交通網の整備が肝要であるとの考えのもと、近畿自動車道紀勢線の南伸、地域高規格道路五条新宮道路や内陸交通網の整備、大島架橋の建設、南紀白浜空港のジェット化、紀勢本線の高速化、ヘリネットワークの構築など、総合交通体系の整備を進めているところでございます。
 こうした交通体系の整備をインパクトとして、熊野の歴史、文化、自然といった全国に誇れる資源を最大限に生かした良好な観光・リゾート地の形成を進めてまいりたいと存じます。
 第三次中期実施計画においては、熊野学研究センターの整備、海辺のふれあいゾーンの整備、歴史街道構想などを主要プロジェクトとして位置づけ、紀南地方の活性化に取り組んでいるところでございますが、さらにグリーンツーリズムや海洋レジャーの基盤整備、一村一休養施設の整備等について、市町村と連携を図り、地域の自主的な活動を支援しながら促進してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 商工労働部長中山次郎君。
 〔中山次郎君、登壇〕
○商工労働部長(中山次郎君) 和歌山県産業活性化ビジョンの策定についてお答えします。
 和歌山県産業活性化ビジョンの策定につきましては、平成五年度から基礎調査を実施し、平成六年度は有識者等による策定委員会を設置して検討を重ねてまいったところでございます。その最終案がまとまりましたので、近く公表することとしてございます。
 今回のビジョンは、二十一世紀初めすなわち西暦二〇〇五年を目標に、本県産業の望ましい姿を展望し、今後取り組むべき施策の方向性を内容とするものでございます。ビジョン実現のための施策の基本的な方向といたしましては、和歌山の資源と創意を生かした産業社会の形成を図ることとしてございます。
 具体的な施策展開の主なものといたしましては、関西国際空港への近接性を生かした、アジア諸国との経済交流などの国際的な産業活動の展開、地域産業の技術力強化による創造的な企業の育成、心の豊かさが実感できる観光・リゾート産業の振興など、七つの具体的な方向性を掲げているところでございます。このビジョンは、本県の第五次長期総合計画策定の際には、県産業の振興に関する基本的な考えとしての役割を果たすものと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 農林水産部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○農林水産部長(日根紀男君) 水産試験場の整備についてでございますが、多様化する水産業に対応できる水産試験場を初めとする試験研究機関の整備は、まことに重要なことと認識しております。
 第一点目の、水産試験場のリフレッシュ、施設更新についてでございます。現施設は老朽化や狭隘のため施設の更新は必要と考えてございますが、先ほど知事から答弁がございましたように難しい課題もございますので、今後、関係者との連携を図りながらこうした課題の解決に努め、水産試験場ほか研究機関の効率的な整備を進めてまいりたいと考えてございます。
 第二点目の水産試験場の多機能化と名称についてでございますが、将来の水産業のあり方を考えた場合、まことに貴重なご意見、ご提言でございます。今後、整備を進める上で十分参考にしてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 堀本議員の道路基盤の整備促進についてのご質問五点についてお答えいたします。
 まず、高速道路紀南延伸に関することでございますが、近畿自動車道紀勢線の南部・田辺間六キロメートルは平成元年二月に、また田辺・すさみ間二十七キロメートルについては平成三年十二月の国幹審において基本計画に組み入れられたところでございます。
 整備計画への組み入れにつきましては、現在、道路審議会において、ことしの秋を目途に今後の有料道路制度のあり方に関して議論がなされておりますが、これらの結果を受けて整備計画などについて検討が進められることとなっておりまして、次期の国幹審はその後のことと聞いてございます。
 県としましても、議会の皆様方のご協力をいただきながら、南部・すさみ間が整備計画に組み入れられるよう国に強く要望してまいりたいと思っております。
 次にご指摘の点ですが、ご承知のように、平成五年九月に堺から岸和田間の開通による阪和自動車道の全線開通、それから平成六年四月に阪神高速湾岸線の全線開通がなされたところでございます。
 人の動き、貨物の動きなどの変化を直接示すデータはございませんが、海南湯浅道路の最近の交通量のデータを見てみますと、年間を通じた平均の交通量も平成五年、六年と連続して一〇%程度の伸びを示しておりまして、特に大型車の伸びは約二〇%を示してございます。
 また、広川・吉備間六・四キロメートルが開通したことにより、この区間の通過時間は、渋滞時には三十分を要したものが五分に短縮されたとも言われております。
 議員ご指摘のように、昨年の世界リゾート博の成功はこうした高速道路の開通も誘因の一つであり、また神戸から広川まで一時間三十分で来れたという話も聞いているところで、他府県の方々から、和歌山も随分近くなったと言われているところでございます。
 いずれにいたしましても、交流の拡大、生活基盤の充実、自動車輸送の効率性の向上の上で高速道路は必要不可欠であり、今後とも整備促進に努力してまいります。
 次に、国道四十二号田辺バイパスの稲成・南部間の今後の整備見込みについてですが、ご指摘の区間につきましても、近畿自動車の早期整備を国に対し強く要望しているところであります。
 一方、国道四十二号のうちで稲成・芳養間約四キロメートルにつきましては、西田辺バイパスとして、ルート検討を含め、都市計画決定のための作業を急いでいるところでございます。
 なお、西田辺バイパスの事業計画につきましては、近畿自動車道南部・田辺間との関係をよく整理する必要があると考えております。
 また、高速道路の御坊・南部間の完成へ向けて、南部インターチェンジから国道四十二号へのアクセス道路を整備することとしており、さらに国道四十二号の代替的な機能を果たす県道上富田南部線などの整備について検討を進めているところでございます。これらの路線を整備することによって高速道路の御坊・南部間の完成時の交通の処理が円滑に行えるよう、努力してまいります。
 次に、国道四十二号の登坂車線の整備についてでございます。
 一般有料道路湯浅御坊道路につきましては、現在鋭意工事が進められているところでございますが、ご指摘の、国道四十二号の現道である日高町池田から由良町里の間約三・三キロメートル並びに由良町畑から広川町河瀬間約六キロメートルについては、歩道設置を含めた登坂車線に関する計画が建設省で進められてございます。平成五年度には日高町池田地内で七百メートルの登坂車線を完成し、現在、水越トンネルから由良町畑間を含めた概略設計を行っており、今後順次整備を進めていく予定と聞いてございます。
 次に、大橋架橋建設に伴うバイパスの設置見込みについてでございます。
 本年二月に起工式が行われた大島架橋並びに島内道路である樫野串本線につきましては、耐震性も十分考慮しているものでございますが、平成十一年度の完成を目途に現在鋭意工事を進めているところでございます。
 議員ご指摘の橋詰めから大島地内までのバイパスにつきましては、串本町において、本年度から高潮対策の計画にあわせ道路調査を行っております。地形的にも急峻で、橋詰めまでの高低差もかなりあるところですが、これらの調査をもとに工法、事業手法等を検討していく予定と聞いてございます。
 最後に、河川、海岸、道路敷周辺に散在する放置自動車についてでございます。
 道路敷への放置自動車につきましては、道路を良好な状態で維持し一般交通に支障を及ぼさないようにするため、交通安全面は無論のこと、景観の保持の面をも重視して道路パトロールを行い、自動車等が放置されないよう注意しているところでございます。既に放置された車については、道路法によって一定期間の通告手続をとりながら、交通安全、景観を乱さないよう早期撤去に努めているところでございます。
 河川敷等の放置自動車につきましては、平成六年度においてクリーンリバー事業によって放置自動車や粗大ごみ等を撤去し、良好な河川、海岸環境の維持を図ってまいりました。さらに、昨年度から五月二十九日を「紀の国川の日」と定め、シンポジウムや各種イベントを通じて川を大切にする心をはぐくむ運動を展開しております。
 いずれにいたしましても、放置自動車の根本的な解決には、県民一人一人に道路あるいは川や海を大切にする意識を持っていただくことが何よりも大切ではないかと考えております。今後とも、県内市町村と連携を密にしながら放置自動車の撤去及び啓発活動をより積極的に行い、良好な環境保全に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(橋本 進君) 再質問がございませんので、以上で堀本隆男君の質問が終了いたしました。

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