平成7年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(上野哲弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時五分再開
○副議長(富田 豊君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(富田 豊君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 18番上野哲弘君。
 〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 一般質問を行います。
 第一番目に和歌山県の将来について、紀北、紀中、紀南の現状と将来展望ということで知事さんにお伺いしたいと思います。
 平成七年二月和歌山県議会に当たり、知事の所見をお伺いいたします。知事の予算説明において、新たな時代への第一歩と題しまして、仮谷県政五期目の締めくくりの年であり、あすの和歌山を建設する節目の年でもあるとなっております。その点に焦点を合わせ、質問いたします。
 今期でもって、仮谷知事最後の予算となってまいりました。五期二十年の県政を担当されて、その県土づくりに邁進されたと存じますが、今日の和歌山県を紀北、紀中、紀南に分けての現状分析と将来の和歌山県についての見解をお伺いし、今後も魅力ある県政に期待したいと存じます。仮谷県政二十年の思いと和歌山県の将来展望について、県行政の果たす役割を知事にお伺いいたしたいと存じます。
 次の質問は、巴川製紙所に関する一連の質問でございます。
 昨年十二月、前々から話題になっておりました巴川製紙所新宮工場の存続問題が、閉鎖という形で突然会社側から発表されました。一企業の内部問題とはいえ、地域にとっては深刻な社会問題でありますので、地域住民の一人として、また行政に関係する者として何らかの対応を願い、質問いたしたいと思います。
 会社の提案としては、新宮工場を閉鎖して大半の従業員を静岡の工場へ配置するというものであると聞いておりますが、従業員にとりましては、住みなれた当地域から離れるのは一抹の不安と寂しさが心に残ることは当然であります。また当該自治体にとっても、税収問題を初め、これまで地域社会の一員として大いに寄与された住民の減少は、地域経済にとって大きな痛手となることは必至であります。従業員のみならず、地域も強くその存続を願っているところであります。
 今日、社会環境が変化し、中央と地方の格差が広がり、さまざまな弊害が醸し出されております。とりわけ国土軸から離れた当地域の衰退は危険信号となってあらわれてきており、その対応としての施策が行政、民間を問わず求められているところであります。
 私は、これを当地域における一企業の問題としてとらえるのではなく、日本における地方が抱えている重要な問題として提起したいと思います。これらの問題に行政がいかに対応できるか、以下、担当部長に所見をお伺いいたします。
 巴川の歴史につきまして、資料によりますと、巴川製紙所新宮工場は昭和十三年、新宮の木材業者らが廃材を利用してパルプをつくる計画で新宮木材パルプ株式会社を設立したのがその始まりであります。当初、その主たる目的は新宮市内を中心とする製材工場の廃材を利用してクラフトパルプを製造することにあったが、これに誘発されて、従来製品価値を持たなかった木の枝や落ち木、切り株のようなくず材もその利用価値が出てきたので、製材工場の副産物の有効利用だけでなく熊野川一帯の森林資源に新たな販路が生じ、木材生産をさらに刺激する結果となった。そして、これら関連産業発展は木材の町・新宮をさらに特色づけるものとして大いに歓迎されたのであるとなっております。その後、昭和二十年八月、巴川製紙所と合併することになり今日に至ったわけであります。最盛期には七、八百人の雇用を有し、地域産業の一角を担う重要な事業所であったと言っても過言ではありません。時代の流れとはいえ、まことに残念至極であります。
 先ほども申し上げましたとおり、巴川製紙所新宮工場としてその存続が第一義であると考えますが、今のまま存続が可能かどうか、あるいは他の製紙会社が設備等において引き継ぎができるのかどうか、これらのことについて県当局がどのように受けとめておられるか、商工労働部長にお伺いいたします。
 次に、現在、会社からの提案は新宮工場の閉鎖でありますが、存続問題等について労使双方交渉中と聞いております。万一その提案が理解され納得された場合、跡地利用が今後重要課題となってくると思いますが、その点について会社の考えていること、また県及び当該自治体である新宮市がどのような対応を考えておられるのか、商工労働部長にその所見をあわせてお伺いいたします。
 続きまして、巴川製紙所正面の新宮港の第二期工事がようやく六年度の予算で着手されようとしております。新宮港の活用は非常に重要でありますが、この巴川製紙所が新宮から撤退することになれば、新宮港の活用を考える上で当然その対応を考えなければなりません。新宮港の全体構想において、巴川新宮工場の跡地問題、新宮港埋立地問題について、新宮市の考え方及び県の指導について土木部長にお伺いいたします。
 次に、佐野地域の地域づくりとスポーツ公園についてですが、巴川新宮工場が立地している新宮市佐野地区は、蜂伏団地の造成に始まり、老人施設、養護学校、健康増進センター、さらに看護学校と、行政、民間が一体となり地域づくりがなされたところであります。巴川新宮工場が閉鎖となり跡地利用が今後の課題となったとき、地域づくりの面からも、この敷地を健康長寿の町づくりの一環として、でき得れば国の施設として、高齢化社会における研究施設あるいは精神的リハビリが求められる施設等が考えられると思いますが、行政においてもその方面で何らかの対応を考えていただきたいと思います。保健環境部長にお伺いいたします。
 次に、これは新聞等の記事になるんですが、この巴川が撤退するという話の前に一部、巴川製紙所新宮工場の敷地に新宮・東牟婁を対象とした県立スポーツ公園を設置する旨の報道がされました。今回予算化され、この問題が論議されるところですが、巴川の撤退とこの敷地の問題について何ら問題がないのかどうか、その辺について土木部長にお伺いしたいと思います。
 続きまして、林道について。
 新宮市において佐野─高田間の林道を計画しております。この林道は当地域の林業の活性化が本来の目的であると思いますが、それにあわせて佐野地域の地域づくりと高田地区の活性化にどのように結びつくのか、全体構想の中での県当局の受けとめ方を農林水産部長にお伺いしたいと思います。
 以上をもちまして、第一回目の質問を終わります。
○副議長(富田 豊君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 上野議員にお答え申し上げます。
 紀北、紀中、紀南の現状と将来展望でございます。
 さきの県会でもそうした話があったわけでございますが、私としては今日まで、和歌山県の発展のためには高速交通網の整備が第一であって、半島性からの脱却ということが一番の使命でございました。そうした立場において取り組んできたわけでございまして、特急くろしおの新大阪駅への乗り入れも完了いたしましたし、また近畿自動車道紀勢線の国土幹線軸への直結、高速道路の南伸、また昨年の関西国際空港の開港と、国内はもとより世界に開かれた県土が創出されたわけでございます。
 特に、紀伊半島の高速道路網であるアンカールート構想の県内部分が国の計画に位置づけられたということは、私は画期的なことだと思っております。また、南紀白浜空港のジェット化整備も順調に進んでおりますし、さらに内陸道路の整備についても、各国道、重要県道の整備を図るということに努めてございまして、和歌山市─新宮市間が約三時間で結ばれるなど、県内二時間道路網の整備も着実に推進しているところでございます。
 また、企業誘致についても進んでおり、平成元年から人口が増加してまいっておりまして、現在、人口流入県となっておるわけでございます。しかし、山間地域や紀南地域などは過疎・高齢化が進展しておりまして、地方拠点都市づくりや熊野地域活性化計画など、若者が定住できる地域づくりを現在積極的に進めているところでございます。
 本県の将来展望については、二十一世紀に向けて活力と文化あふれるふるさとづくりを基本目標に、快適な生活環境の中に高度技術に支えられた地域産業や大学、研究機関等を集積するテクノ&リゾート計画を推進しているところでございますが、今後とも国際化の進展する中で、「交流から生まれる新たなる創造」をキーワードに、関西圏との連携、海洋の活用、地域文化の活用など、県内各地域がそれぞれの特性、個性を生かした町づくりを進めてまいりたいと考えてございまして、各地域において、県民だれもがゆとりと豊かさを持ったふるさとづくり、これに邁進してまいりたいと考えております。
○副議長(富田 豊君) 商工労働部長中山次郎君。
 〔中山次郎君、登壇〕
○商工労働部長(中山次郎君) 巴川製紙所新宮工場の撤退とその対応について、まずその存続についてお答えを申し上げます。
 株式会社巴川製紙所新宮工場は、昭和二十年の操業以来、地域活性化の中心的な役割を担ってきましたが、最近の長引く不況、特に紙パルプ市況の悪化等厳しい経済情勢の中で、一昨年には人員合理化を含む経営合理化計画を打ち出し、新宮工場の経営効率の向上に取り組んできたにもかかわらず、昨年十二月二十六日に発表された新宮工場の閉鎖は非常に残念でございまして、この閉鎖が従業員、関連企業初め地元経済界に与える影響について憂慮しているところでございます。
 存続については、会社としても引き続き労使交渉を続けているところでございますが、厳しい状況であることには変わりないものと考えてございます。また、同業他社に設備等を引き継ぐ場合においても、現在同社が持つ施設がパルプ及びクラフトパルプ紙の製造施設であることから、新たな投資は避けられないものと考えてございます。今後、地元とともに当地域の活性化についての対策を積極的に協議してまいりたいと存じております。
 次に、跡地利用における行政側の対応についてでございますが、県としても、株式会社巴川製紙所の閉鎖発表後、その実情把握に努めるとともに、問題等について検討を行いつつ、本年一月十九日に巴川製紙所、新宮市長及び県関係部局長で構成する特定企業対策連絡協議会を開催し、同社及び市長から現状等の説明を受けるとともに、当面の課題である存続その他諸問題について協議を行ってまいったところでございます。
 今後、難しい課題もございますが、新宮周辺地域の特色を生かした産業等の振興策を含め、その跡地対策について積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 巴川製紙所新宮工場の撤退とその対応について、二点についてお答えいたします。
 まず新宮港第二期工事との関連についてでございますが、現在、新宮港では年間約百万トンの港湾貨物が取り扱われており、このうち約十万トンが株式会社巴川製紙所新宮工場関連の貨物となっております。また、今後進めようとしている新宮港第二期計画も、同工場の操業継続を前提条件の一つとしていたところでございます。したがって、同工場の撤退は新宮港の今後に影響を及ぼすものと考えておりますが、紀南地方振興のためにはこの計画の必要性はむしろ高まっているのではないかとも考えております。このため、同工場の撤退に伴う影響や内容の見直しの必要性を検討しており、新宮市においてもこれまでの計画をもとに代替機能の導入を検討しているとのことでございます。県としては、これまでの計画を基本として、地元の市町の協力を得ながら引き続き新宮港第二期計画の実現に努めてまいりたいと考えております。
 次に佐野地区におけるスポーツ公園についてでございますが、新宮定住圏のスポーツ施設については、県民の皆様方のスポーツ、レクリエーションの場の提供を通じて豊かで活力ある地域づくりに対応するものでございますので、今後とも検討を進めてまいりたいと思っておるところでございます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 保健環境部長江口弘久君。
 〔江口弘久君、登壇〕
○保健環境部長(江口弘久君) 上野議員ご質問の佐野地区の地域づくりについてお答え申し上げます。
 当地区蜂伏団地においては、県立の施設として平成二年、みくまの養護学校が開校し、本年四月にはなぎ看護学校も開校いたします。また、民間施設として特別養護老人ホーム、老人保健施設、健康増進施設が整備されてきたところでございます。
 議員ご提案の巴川製紙工場の閉鎖に伴う保健福祉医療施設等の設置については、今後、会社側や地元の意向を十分見きわめながら、国の動向等とあわせて対応してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 農林水産部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○農林水産部長(日根紀男君) 佐野─高田間の林道についてお答えいたします。
 ご質問の佐野─高田間の林道については、広域基幹林道高田蜂伏線として計画してございまして、林業振興はもとより地域住民の生活道路として、また災害時における国道四十二号線や百六十八号線の迂回路としても期待できるとともに、観光面や産業等についても効果が出るものと、したがって地域の活性化にも寄与するものと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 18番上野哲弘君。
○上野哲弘君 知事、今回の質問の要旨を申しますと、こういう一連の地域の問題点について、当該自治体に当然その責任の大半があると思うんですが、昨今、神戸の地震等における復興計画には相当の国のメンバーがいろんな形で研究されてやっていくということで、我々としては当然そういう基礎の中で地域づくりを考えるべきじゃないかと、そういう思いがあります。
 今回あえて県の方にこういう形で申し上げましたのは、やはり地方は情報量等の面でまだ低いので、県の力でノウハウとかいろんな面の蓄積をお願いして、地域づくりと口で言ってもなかなか難しいものだと思いますので、そういう面で地域と一体となって県が指導をし、こういう問題についても論議していただきたい。そういう思いがありましたので、ぜひとも県の皆さん、地域のいろんな実情も把握されて、指導かたがたお願いしたい。非常に地方は厳しい状態で、特に紀南は厳しいんで、そういう面もぜひお願い申し上げまして、一般質問を終わります。
○副議長(富田 豊君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問が終了いたしました。

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