平成6年12月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(森 正樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時十九分開議
○議長(平越孝哉君) これより本日の会議を開きます。
○議長(平越孝哉君) この際、報告いたします。
 過日提出のありました議案第百二十三号並びに議案第百四十三号、議案第百四十四号及び議案第百四十六号、議案第百四十七号は、いずれも職員に関する条例改正案でありますので、地方公務員法第五条第二項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、次のとおり回答がありました。
 職員に回答文を朗読させます。
  〔職員朗読〕
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 和人委第294号
 平成6年12月9日
 和歌山県議会議長  平 越 孝 哉 殿
  和歌山県人事委員会委員長  水 谷 舜 介
 職員に関する条例の制定に係る意見について
 平成6年12月1日付け和議会第262号及び平成6年12月8日付け和議会第272号で意見を求められた標記のことについて、地方公務員法第8条第1項第3号の規定により下記のとおり回答します。
 記
 議案第123号  職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
 議案第143号  職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 議案第144号  教育職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 議案第146号  市町村立学校職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 議案第147号  警察職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
 意  見
 上記条例案については、いずれも適当であると認めます。
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○議長(平越孝哉君) 日程第一、議案第百二十一号から議案第百四十八号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 42番森 正樹君。
  〔森 正樹君、登壇〕(拍手)
○森 正樹君 皆さん、おはようございます。
 議長のお許しを賜りましたので、質問に入りたいと存じます。
 我が国初の二十四時間運用の関西国際空港から、関西はもとより全国の多くの人々の夢と期待を乗せて一番機が飛び立った九月四日から本日でちょうど百日が経過いたしました。あの開港日とその前後一週間ほどのマスコミのフィーバーぶり、特にテレビの報道ぶりは、それまでの関西国際空港についての報道といえば、国内便、国際便の便数の確保が当初目標に達しないこと、着陸料、空港使用料等々の高いこと、連絡橋の通行料が高いなどのマイナス面の報道が主で、いかに関西国際空港が在来の国内各空港に比べて安全性、快適性、利便性においてすぐれた空港かといった点は余り伝えられないことに残念な思いを抱き続けてまいりました私にとって、驚嘆すべき変化であり、また歓迎すべきことでもございました。ともあれ、十二年間、関西国際空港の早期開港、全体構想の実現等々を言い続けてまいり、この日を鶴首して待ち望んでまいった者の一人として、未明からテレビにかじりつき、一番機が飛び立つ風景を眺めながら感慨ひとしおのものがあったのであります。
 そこで、今後、関西国際空港が我が国の空の表玄関として、またアジアの真のハブ空港として機能するために今後我々が精力的に取り組まなければならない問題、解決しなければならない点について幾つか取り上げ、申し上げたいと存じます。
 第一に、第二期工事は本来の姿である国の責任のもとに行うべきだという点であります。何ゆえ国の責任のもとに行うべきであるのか、以下、幾つかその理由を私なりに申し上げたいと存じます。
 第一点。国の基幹施設を国の責任と予算で建設することは至極当たり前であり、もっと言えば義務であるということに尽きるのであります。過去において国の基幹施設を、国も出資する特殊法人とはいえ株式会社に任せたことがあったでありましょうか。羽田空港沖合展開事業はいかがであったでしょうか。また、東海道新幹線建設事業は、山陽新幹線は、東北・上越・北陸新幹線等々、枚挙にいとまがないのであります。さらには、大阪空港の騒音対策や被害補償にも莫大な国家予算がつぎ込まれたのであります。我が国のみならず、古今東西、国の基幹的施設の建設を国の責任ではなくて地方に押しつけた例を私は寡聞にして知りません。
 第二点。国が全面的に責任を持って事に当たらなければ本当の意味での国の基幹施設になり得ないのではないかという危惧であります。国が大局観に立ち長期的視野に立って事業を推進してこそ、本来的に基幹施設足り得るものとなりますが、地方中心の株式会社では、大局観、長期的視野の点で無理があると私は思わざるを得ないのであります。
 第三点。長期的視野を持たず大局観に立たないがために、一部の政府幹部の中に「地元の熱意が不足している」等々の本末転倒の議論を持ち出す者まであらわれる始末であります。地方の一部の者のための施設なら、地元の熱意も必要でありましょう。国の基幹施設を建設するのに何が「地元の熱意」かと私は思うのであります。
 我が国が枝葉末節の議論をしている間に、アジアのライバル空港はいずれも国の威信をかけて総力を挙げて事業を推し進めているのであります。いずれは我が国がアジアの盟主の地位を追い落とされるのではないか、そんな危惧がしてならないのでありますが、単なる杞憂に終わることを祈っております。
 第四点。第一期工事で関西国際空港株式会社方式をとり、地元や民間への負担を大きくしたために、言いかえれば、独立採算性の関空会社に経営を任せた上に「採算性」という一見聞こえのいい言葉で国の責任を回避したがために、関空会社としては着陸料等空港利用料金にはね返らさざるを得ないこととなり──これは同じことが成田空港にも言えるわけでありますが──それによって乗り入れ航空会社によっては便数を減らしたり乗り入れを見合わせるところも出てくる等々の結果を生み、まことに皮肉なことに「採算性」の面で近隣諸国の空港との競争の面でおくれをとることになりはしないかという心配を私はいたすのであります。全体構想実現に向けての地元の熱意とか採算性とかいう議論は、まさに「角を矯めて牛を殺す」ということわざにもあるがごとく、瑣末なことにこだわる余り、大事を忘れ、すべてをぶち壊すことになりかねません。
 例えば、十月二十七日付の日本経済新聞には、このような記事が出ておりました。いわゆる開港当日のことでありますけれども、「関西国際空港ターミナルビルに韓国空港公団の某高官の姿があった」として、その人の言葉として「すばらしい海上空港だ。しかし将来の需要増に即応できない中途半端な設計ですね。空港の専門家が計画したとは思えない」、そんな捨てぜりふを残して去ったと書かれております。さらには、同じ空港公団のある幹部の話として「我々は東北アジアのハブ空港を目指している」と胸を張ったとも書かれています。また、大韓航空の幹部の話として、これまで日本人の三〇%が金浦空港で国際線に乗り継いで世界へ飛び立っていたけれども、関西国際空港開港後は一〇%程度に減ったというコメントも載っております。このほか、シンガポールのチャンギ国際空港や香港のチェク・ラップ・コック空港、台湾中正国際空港等々、いずれもアジアのハブ空港の座を虎視たんたんと狙っているのであります。
 そこで私は、大蔵省や運輸省の幹部、担当者の皆さんに次の言葉をささげたいと思います。淮南子の「説林」の中の「冬氷は折るべく夏木は結ぶべし」という一節であります。これは、水は大変やわらかなものでありますけれども、冬になって凍れば、たやすく折ることもできるし割ることもできる、また夏の間の木というのは大変やわらかくてその枝は結ぶこともできると、そういう言葉だそうであります。まさに、物事というのは時を得れば非常に成就しやすいけれども、その時を失してしまえば物事をなすのは大変難しいというたとえの言葉であります。
 そこで、以上るる申し上げましたけれども、その点を踏まえまして、第二期工事は空港整備法を再び改正して国の責任で行う、すなわち運輸省がこれを設置するという本来のあるべき姿に戻して建設すべきだと思いますけれども、いかがでありましょうか。もちろん、私たち地方の者が応分の負担をして全面的に協力を惜しまないことは言うまでもないのであります。
 第二点目以降、具体的なことについてお尋ねをいたします。
 まず、第二期工事は第七次空港整備五箇年計画の中で位置づけられるべきであり、それもできるだけ早い段階で着手すべきであると思いますが、いかがでありましょうか。また、そのためにどういう対応をし、今後取り組んでいかれるのか。
 第三に、第二期工事は国の空港特別会計ではなく一般会計の中で対応すべきであると思いますけれども、今後このことについて関係方面への働きかけ等どうしていかれるおつもりでありましょうか。
 第四に、国際・国内両便の増便の問題についてであります。
 九月四日の開港から最近まで、さまざまな資料で申し上げたいと思いますが、当初の予定を上回って大変な盛況であるということであります。例えば、これは一日平均ベースでありますけれども、国際線旅客便で九月が四十三・九便、十月が四十五・二便、十一月に入りましては四十九・九便、国内線の旅客便で言いますと、九月が六十五・三便、十月が六十六・九便、十一月に入って六十四・七便、さらには見学施設の利用者等を見てまいりますと、九月が八千五百人、十月が九千九百人、十一月が九千二百人、ただし、この十一月の数字は一日から二十日までの数字の平均であります。
 また、一般紙の報道といたしまして、例えば日本経済新聞が関空の利用者にアンケートを行った結果を見てまいりますと、大阪空港あるいは成田空港と比べてどうかというアンケートに対しまして、大阪空港よりすぐれているという人が八〇・七%、劣っているという人は一〇・四%、成田空港と比較してすぐれているが七三・二%、劣っているが八・三%、これはそれぞれ無回答が八・九%、一八・五%ございますので、それをのけますとほとんどの人が関西国際空港は非常に便利である、快適であるという回答をしているのであります。大阪空港も成田空港も、その周辺に住んでいる人は当然、大空なり成田空港の方が便利なわけでありますから、そういう一部の人を除くとほとんどすべての人が関西国際空港が快適であり便利であると答えたということになると私は思います。
 今後の国際・国内便の増便見込みについて、ここで報告をいただきたいと思います。そのような大変な好評から今後増便を考える航空会社等があると聞いておりますので、その点お答えをいただきたいと思います。さらには、本県としてポートセールス等々、どういう取り組みを続けていかれようとするんでしょうか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
 第五に、関西国際空港への交通アクセスについてであります。
 開港から今日まで百日間で、私は十一回、関西国際空港を利用いたしました。今までの大阪空港に比べて、安全性、快適性、利便性において格段にすぐれており、非常に使いやすい空港であるということを申し上げたいと思います。まさに我が国の空の玄関として諸外国の人たちにも胸を張って誇れるものだと思います。
 トム・リードという人は、今までの日本の空の玄関である成田空港については「とても経済大国・日本の表玄関とは思えない」とおっしゃっていましたが、それに比べて関西国際空港は「日本の表玄関として大変立派な見事な空港である」というふうに語ったという報道も耳にしております。
 私はこの十一回の利用に当たりまして、さまざまなアクセスを利用して空港へ、あるいは空港から行き来してみました。リムジンバス、タクシー、自家用車、団体借り上げバス、南海のラピート、はるか、それから在来電車の乗り継ぎ等々、いろんな行き方で空港へ行き、空港から帰ってまいりました。ラピート、はるかについては、一たんわざわざ難波、天王寺まで出向いて乗りかえたわけでありますけれども、在来の電車を乗り継ぐ以外のアクセスはすべて大変快適でありましたし、時間も短時間ですし、スムーズに連絡されており、関西国際空港の利便性を肌身で感じたわけであります。
 そこで、ここで問題にしたいのは在来電車の乗り継ぎに関してであります。いずれも、泉佐野駅あるいは日根野駅で重い荷物を持って階段を上りおりしてホームを移動しなければなりません。さらには連絡時間等々、やはり不便を感じざるを得ないのであります。やはり和歌山から、我々の強い希望である直通便を何としても実現していただきたい。今後この点についてどういう働きかけをされるのか、お聞きしたいと思います。
 次に、ホスピスケアについてお尋ねをいたします。
 ホスピスケアについての質問に入る前に、この「ホスピス」という言葉の意味について若干申し上げますと、中世ヨーロッパの十字軍のころ、聖地へ向かう巡礼者の宿泊所あるいは行路病者の収容所、旅人のための避難所のことを指す言葉でありました。そこから転意して「天国へ向かう人の中継ぎの安息所」という意味に使われてきたそうであります。近代的ホスピスケアの発祥は一九六七年、シシリー・ソンダース女史がロンドン郊外に建設したセント・クリストファー・ホスピスと言われております。その後、一九七〇年代に入って、イギリスでは約三十カ所にふえ、現在では五百施設に上っているとされております。以後、世界に普及していくことになりますけれども、特にアメリカ、カナダ両国で目覚ましく、一九八〇年初めには両国の全土に広まり、現在、全米のホスピスは約二千カ所を数え、バージニア州に設けられた全米ホスピス協会にそのほとんどが加盟しているということであります。一方、ドイツにおいても二十五カ所のホスピスが活動中で、ほかに計画中のものが約三百に上るとされております。
 ところで、ホスピスケアの形態には、次の五つがあるとされております。まず第一に、総合病院から独立した建物においてホスピス活動を行うもの。例として、ロンドンのセント・クリストファー・ホスピス、あるいはニューヨークのカルバリー・ホスピタル。第二に、総合病院の構内の別の独立した建物においてホスピス活動を行うもの。例として、オックスフォード大学のチャーチル病院構内のサー・マイケル・ソーベル・ハウス、浜松の社会福祉法人・聖隷福祉事業団三方原病院ホスピス病棟。第三に、独立した建物はないけれども、病院内で一つの病棟をこれに充ててホスピス活動を行うもの。例として、アメリカ・オハイオ州のホスピス・オブ・シンシナティ、カナダ・モントリオールのマック・ギル大学ロイヤル・ビクトリア・メディカルセンターのパリアティブ・ケア・ユニット、我が国では富山県立中央病院のホスピス病棟がこれに当たります。第四に、独立した建物も病棟も持たず、分散している病院内患者に対してホスピス活動を行うもの。第五に、訪問看護を主としてホスピス活動を行うもの。この典型的な例としては、アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ郊外のホスピス・オブ・マリンがあります。
 我が国には現在、ホスピスケア病医院は、病棟を持つもの、病床を設けているもの、在宅ホスピスケアに力を入れているものを含めて二十七カ所と言われておりますけれども、このうち厚生省の認可を受けているところは現在十二カ所となっております。一九七三年、大阪・淀川キリスト教病院でホスピスケア・プログラムがスタートし、一九八一年には浜松・聖隷三方原病院にホスピス病棟が誕生したのが我が国での始まりであります。
 いずれもキリスト教の歴史の中で発展し世界に広まったものでありますが、現在我が国では新潟県長岡市のビハーラ長岡西病院という仏教系の施設、さらには国立がんセンター東病院、先ほどの富山県立中央病院など、公立の病院もございます。
 ここまで述べてまいりますと賢明な先輩・同僚議員や当局幹部の皆様はおわかりだと思いますけれども、あえてホスピスケアについて解説をいたしますと、現代医学をもってしても治癒できない末期がん患者等に対し、苦痛を緩和し、残された生命をいかに有意義に意味のある日々を送れるようにさせるか、すなわち残された生命、生活の質、クオリティー・オブ・ライフを高めさせるために、患者はもちろん家族、友人、医師、看護婦、ソーシャルワーカー、心理療法士、チャプレンなど宗教者、ボランティアたちがチームを組み、看護主体のケアを行うことを意味しております。言いかえれば、ホスピスケアとは、病棟などの一定の施設というより、終末期の患者に対する対応の方法、システムを指すと申せましょう。したがって、基本的には病名告知がなければ成り立たないのであります。
 アメリカにおいては、自分の状態について真実を知ることは患者の権利であるという考え方が定着し、それによって患者自身や家族、医療者にとってよい結果をもたらすという価値観が社会に確立されております。しかしながら、我が国においては病名を積極的に知りたいと考える人はまだまだ少なく、一方で、医者が患者は病名を知らないと思っていても実は患者本人は知っているという奇妙な状況もあるとされております。
 私は、この質問をするに当たり、医務課や医大事務局の幹部の皆さんと浜松・聖隷三方原病院、富山県立中央病院の二カ所の先進例を見てまいりました。スタートしてまだ間もない我が国にあって、今後ホスピスケアをいかに広げていくのか。二つの先進例を見た感想は、日本でホスピスケアを普及させていくには、まだまだ幾つもの難関をクリアしていかなければならないという厳しい現実でありました。
 しかし一方で、私たちは確実に老い、だれもがやがては死に至るのであります。そして、がんにかからないという保証はありません。私は病名告知について基本的には賛成の考えを持っておりますけれども、現在の我が国の医療・社会体制の中では反対であります。なぜか。それは、人の絶望の中で死より深い絶望はなく、それゆえにこそ残された日々を意味あるものにするための病名告知であるはずでありますけれども、余りにも重い死の宣告、病名告知という精神的苦痛を支え和らげていくスタッフ、システムが用意されているかといえば、現在の日本ではノーであり、それが今の我が国の医療界の現実であるからであります。たった一人の看護婦が一晩だけでも患者のベッドサイドに付き添うことすら不可能な日本の医療の現実の中で、がんを告げられ冷静に受けとめられる日本人が果たして何人いるでありましょうか。
 「医の心」という本にある医師の言葉として載っていたのでありますけれども、「現代は医療の技術が進み、医師は技術者としての側面を持っている。しかし、その技術、知識の根本となるものは、あくまで患者のそばに行き、患者の話を聞いて手を当てること──そのことを「手当て」というのでありますが──である」とございます。
 また、聖路加国際病院院長であり、聖路加看護大学の学長で、また財団法人ライフプランニングセンター理事長でもある日野原重明先生は、次のように言っておられます。「うそをいわずに、病気が難航していることを、医師は患者とともに認め、タイミングをみながら、ストレートに癌だといわなくても、悪性の病気を示唆する説明をしつつ、癌という言葉を患者が受容できる時期を待って、いわば癌を小出しにしつつ、真実を話す方向で患者と会話すべきである。 患者が死ぬかもしれないことを考え、それを言葉にした時『死ぬことなんか考えるな』といって患者の死への準備をおし止めるようなことなく、医師も看護婦も『死をどのように考えておられるのですか』と、患者の言葉を受けて対応すべきである。そのような患者が自分の死を受容しようとするきざしが徴れた時、医師や看護婦はそれを否定しないで、むしろうなずくべきである。癌という言葉を使うことは、その次のステップでなされるべきだと思う」、「またその病気の段階はどの程度かを医師はよく心得たうえで、患者に徐々に対応すべきである。これは時間を要し、患者の心を読む洞察力が必要とされる。末期患者へのターミナルケアとは、──「ターミナルケア」とはホスピスケアの別名でありますけれども──痛み、苦しみを止める巧みな処方を提供することと、ゆたかな感性をもってこまやかなやさしい態度と言葉で対応するわざをいうのである」。また、同じ著作の中で、日野原先生は内科学の泰斗と言われているウィリアム・オスラー教授のことを引用して言われております。彼はアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学医学部創設の中心的存在であり、当時世界に最も普及した「内科書」の著者である方であります。「オスラーは、いまから百年ほど前に四百八十六例の臨死患者の調査をやっています。その結果は、いよいよ死ぬときには、約八割の人は眠るように死ぬ。苦しんだり、非常に気持ちが乱れたり、痛みがあったりして死を迎える人は二割にすぎない、というのです。死は誕生と同様、ただ眠りであり、忘却である、と。 また、プラトンは『ティマイオス』のなかで、『老いとともに、自然に終局に向かうものは、およそ、死の中でも、もっとも苦痛の少ないもの』といっています。ところがいま、病院にいってごらんなさい。八十五歳、九十歳の老人が死ぬ姿は悲惨です。それはなぜか。無理な治療をやっているからです。つまり、致死患者にも延命目的の医療をやっているからなのです。 酸素吸入の管が気管のなかに入っているから、患者に意識はあっても最後の別れも告げられない。言葉が出ない『生物』として死ぬわけです。言葉で伝達ができるということは、人間の人間たる所以です。拷問されている時のようにその言葉が取り上げられ、おまけに麻酔をかけられ、全く自分を失ってしまったようないのちとしてのみ生き延びている姿は悲惨です。 窓もないCCU、ICUに入って、配偶者はもちろん、友達、子ども、孫も面会謝絶です。近代医学のなかで死んでいく人々の最期はこのように悲惨そのものです。私はそれを毎日見ていて、これはどうにかしなくてはならない、現代医学は間違っていると思います」、「不必要な治療は止めることです」、「意識がなくなって何もできないような延命よりも、短くても、豊かな価値のある『生命の質』をサポートするほうが本当は望まれているはずです。いのちは長さよりも深さではないでしょうか」、「死んでいく四百八十六人のケースのうち、八割は苦しまないという調査結果をオスラーが出してから九十年、医学の進歩によって逆に、いまは皆苦しみながらミゼラブルに死んでいきます。点滴、経管栄養、人工呼吸器をつけられて、拷問にかけられながら死ぬのです。そうやって助けられるのならいいけれども、癌の末期で助からないとなれば、どうして酸素をマスクをはずしてあげないのか、声が出るようにしてあげないかということを、現場にいて強く感じます。 有終の美という言葉がありますが、私はいま、『有終の医療』という言葉を広めたいと思っています。人生の最後が意味のあるよう、また感謝のうちに終えることができるよう、医学や看護がお手伝いをするという方向へ百八十度転換しなければなりません。 延命の医学からいのちの質を高めるケアへと移っていかなければならないときなのです」という言葉でございます。
 少し引用が長くなりましたけれども、以上、さまざまな角度からホスピスケアについて論じてまいりました。
 そこで、お尋ねをいたします。
 まず、ドクターでもある保健環境部長にお聞きをいたします。ホスピスケアについてどういう認識を抱いておられるのか、加えて、本県において今後ホスピスケアを展開していく必要性があると私は思いますが、どのような展望を抱いておられるのか、お示しをいただきたい。
 次に、駒井県立医科大学学長にお尋ねをいたしたいと存じます。平成十年に移転オープンが予定されております新県立医科大学におきまして、ホスピスケアをどのような規模とスタッフでどのような考えに基づいて、また将来にはどのような展開をしていくのかも含めて、現時点での構想をお聞かせいただきたい。特に、ホスピスケア・スタッフの養成にはかなりの時間と労力が必要と思われますが、この点も含めてご答弁を賜れば幸いでございます。
 以上で、質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(平越孝哉君) ただいまの森正樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森議員にお答え申し上げます。
 関西国際空港の全体構想は国の責任のもとに行うべきではないかという質問でございます。
 昨年の十二月議会でもお答えさせていただきましたけれども、お話しのように、本来、第一種空港は国が設置し管理することが原則でございます。しかしながら、現在、関西国際空港は空港整備法により関西国際空港株式会社が設置・管理しているわけでございます。こうしたことを勘案しながら、現在、オール関西から成る関西国際空港全体構想推進協議会を設置し、学識経験者も入っていただいて、その場においてご意見をいただきながら、地元案として事業費抑制の問題を初め、事業主体や事業手法など、実現方策の調査検討を行っているところでございます。
 また、全体構想の第七次空港整備五箇年計画への位置づけについてでございますけれども、お話しのように、全体構想の早期実現のためには、平成八年度から始まる第七次空港整備五箇年計画に二期計画の事業着手が位置づけられ、期間内の早期着工が必要であると考えている次第でございます。そのために、関西国際空港全体構想推進協議会において第六次空港整備五箇年計画に示された諸課題について検討を進めつつあるわけでございますけれども、まず当面の課題として、全体構想を第七次空港整備五箇年計画へ位置づけるためにも、来年度の政府予算においてボーリング調査費等を満額確保することに全力を挙げてまいりたいと思っておるところでございます。
 他の問題は、部長から答弁させていただきます。
○議長(平越孝哉君) 企画部長宮市武彦君。
  〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 森議員にお答えいたします。
 第二期工事は国の空港特別会計でなく一般会計の中で対応すべきというご質問でございます。
 現在、我が国の空港整備については空港整備特別会計で実施されてございまして、空港整備特別会計に基づき経理を行うこととされてございます。したがって、本県においては、予算の拡充を図るため、空港特別会計への一般会計からの繰り入れ拡充等、空港整備財源強化の働きかけをしているところでございます。昨年十二月には県議会において「空港整備財源の拡充に関する意見書」を関係各省庁に提出いただきまして、去る七月にも、県議会議長に県関西国際空港全体計画促進協議会の代表理事として運輸省及び県選出国会議員に対して強く要望していただいたところでございます。
 今後も引き続き、県議会のご支援をいただきながら関係機関等へ強く働きかけていく所存でございます。
 次に、国際便、国内便のさらなる増便をというご質問でございます。
 関西国際空港の便数についてでございますが、国内線についてはほぼ満足する成果を得てございます。また国際線については、冬季ダイヤから約五十五便に増便されたところでございます。政府間の航空交渉など大きな課題もございますが、今後も需要に合わせて増便されていくものと期待してございます。
 増便に向けては、従来から国、航空会社に対する要望活動に取り組んでいるところでございまして、去る七月に県として国内航空三社への要望活動を行い、また先般もオール関西の取り組みとして関西国際空港全体構想早期実現期成会で航空三社の社長との懇談会を開催いたしまして、増便を要請したところでございます。また、関空会社を初め関係機関とともに、海外エアラインへのポートセールスや外国人記者を招いてプレスツアーを実施したところでございます。プレスツアーでは本県の代表的な観光地をPRし、さらに利便性を確保するためには引き続き増便に向けた働きかけが必要であると考えてございます。
 今後もオール関西で国、航空会社に対する要望活動を行うとともに、PR活動やポートセールス等、需要喚起に向けた取り組みにも積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 最後に、関西国際空港への交通アクセスの利便性向上と直行便の実現についてでございます。
 これまで、県議会初め和歌山県輸送力強化促進委員会のご協力をいただきながら、JR西日本や南海電鉄に対して直通列車の運行や乗り継ぎの利便性の向上などを強く要望してまいりました。その結果、JR西日本においては、日根野駅におけるすべての快速列車の停車、和歌山方面からの同一ホーム乗りかえ、さらには阪和線では初めてのエレベーターの設置など、また南海電鉄においては泉佐野駅構内に乗りかえ用のエレベーターの設置など、乗り継ぎの利便性の向上に一定の成果がなされたところでございます。さらに、JR西日本では十二月三日のダイヤ改正において朝の通勤時間帯の乗り継ぎについて改善していただいてございます。
 県としては、今後も空港利用者の利便性の向上を図るため、直通列車の運行や南海の直通列車運行に不可欠である泉佐野駅の連続立体交差事業の推進等について、国や事業者等に対する積極的な働きかけを行ってまいる所存でございます。ただ、このためには列車利用者の需要の掘り起こしが重要でございまして、県民の皆様方の一層のご協力をお願いいたしたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 保健環境部長江口弘久君。
  〔江口弘久君、登壇〕
○保健環境部長(江口弘久君) 森議員ご質問の、ホスピスケアについてどう認識し、今後本県においてどう展開していくかということですが、県民の医療に対する要望が多種多様化してきている中、進行したがん等の疾患により従来の治療を目的とした医療の限界に直面したときの選択肢として、ホスピスケアの必要性は今後増大することが予想されます。現状においては苦痛の緩和を主としたケアが一般病院において実施されている程度であり、これに患者の精神面及び生活面のケアを加えたいわゆるホスピスケアについては、まだまだ黎明期であると言わざるを得ません。
 議員ご指摘のように、もともと宗教的背景のもと発展してきたホスピスケアでございますが、国においても緩和ケア病棟(PCU)の基準が定められ、認可を受けた施設が少しずつふえてきている等、医療従事者及び国民の末期医療に対する意識の高まりとともに、医療に占める位置づけ及びその運営方法が確立されていくものと考えます。
 しかし、当該ケアを実施するに当たり、現状においては告知の問題や医療従事者に対する教育の問題等、種々の課題が存在することも事実であります。こうした中で県としても、一人の人間としての終末のあり方という観点から、先進地の事例等を参考にしながら、本県の状況に沿った終末期医療への対応を検討してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 医科大学学長駒井則彦君。
  〔駒井則彦君、登壇〕
○医科大学学長(駒井則彦君) 森議員のホスピスについてのご質問にお答え申し上げます。
 紀三井寺に建設される新附属病院においては、五階にがんに対する治療の専門医が集まって集中的に治療する病棟を設け、これに隣接して、議員お話しの治療効果の期待のできなくなった方々に対するターミナルケアを行う病床十三床を設置することにしております。現在、その運営方法及びスタッフ等について検討を重ねているところでございます。
 私は、ターミナルケアについて四つの大きな要素があると考えております。第一は痛み及び不快症状に対するコントロール、第二は死に対する不安、絶望感、恐れに対する精神的な支え、第三は患者の家族に対するケア、第四は病名告知や延命治療などに関する問題でございます。この中で大学病院で行い得るものとしては、痛みに対する緩和治療と末期患者に対する接し方、病名告知や延命治療の是非などの教育でございます。
 現在も、学生や医療スタッフに対して、大阪大学の柏木教授によるホスピスケアに関する特別講義やがん患者の体験談などをセミナー形式で教育しているところでございます。将来は、ホスピスでの実習等も取り入れてまいりたいと考えております。
 次に、ターミナルケアの専門スタッフの養成についても重要な課題と考え、ことしも卒業生がキリスト教病院のホスピスで研修することになっております。今後とも計画的な養成に努めてまいりたいと考えております。
 いずれにしても、人間に必ず訪れる死への準備教育としてのターミナルケアは、我々医療に携わる者にとっても重要な問題であると認識してございます。
○議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 42番森 正樹君。
○森 正樹君 まず初めに、全体構想について二、三、申し上げたいと存じます。
 私は、これまで何回も「全体構想、第二期工事は国の責任のもとに行うべきだ」と申し上げてまいりました。これも過日の日本経済新聞の報道として伝えられたところでありますが、飯田経夫さんという国際日本文化研究センターの教授が次のように寄稿されて述べておられます。
 「社会資本の整備は、マクロ経済が順調に成長するときには、その成長に引っ張られる形で、いわば自然に進んでしまうところがある。これまでの日本は、そういう形で、いわば『需要追随的』に、社会資本の整備を続けてきた側面が大きい。しかしそれでは、社会資本の整備は、見るべきグランドデザインもなく、いわばつぎはぎ的にしか進まない」、「空港などの大型社会資本の場合には、これまでの『需要追随的』な整備を一変させて、国民経済的・国策的な観点から、壮大でグランドデザインにもとづいた整備を進め、逆にそれをマクロ経済成長の新たな梃子(てこ)とする方法が考えられる。つまりそれは、マクロ経済のさらなる成長・発展のために、ハブ空港がもつ大きなポテンシャリティーをフルに活用しようという発想にほかならない」、このように述べられております。まさに私の言いたいことをずばり言われたわけであります。
 本来、国の責任と予算のもとで行うべき基幹的な施設でありまして、例えば前にも申し上げましたが、韓国政府は新ソウル・メトロポリタン空港をつくるに当たり、航空局法という法律をわざわざ改正強化して、国の責任のもとにすべて行うんだということで取り組んでいるわけであります。先ほどの質問の中でも申し上げましたように、東北アジアのハブ空港を目指すんだという意気込みで、完全に関西国際空港は相手じゃないというふうな認識のもとに進めているように受け取れます。これが杞憂に終わればいいんですけれども、下手をすると、いずれはアジアのハブ空港の座をソウル・メトロポリタン空港やチャンギ、中正国際空港、チェク・ラップ・コック空港、それ以外の中国大陸での構想、あるいはマレーシア、インドネシアの国際空港に取られるおそれは大変大きいわけであります。そのときになって慌てても時既に遅しと言わざるを得ません。
 そういう意味で──これは、ここにおられる知事以下、当局の幹部の皆さんに申し上げることではなくて、大蔵省や運輸省の幹部に言うべきことでありましょうが、いずれ私のこの発言が大蔵省や運輸省の幹部に伝わることを期待して申し上げておきたいと思います。
 それから、これも過日の新聞報道でありますが、亀井さんという運輸大臣が「関西国際空港は国家的プロジェクトとして取り組む」とか「関空と神戸とは──神戸空港のことですね──別問題」と最初は言われておりました。しかしながら、最近に至りまして、「空港は関西国際空港だけではない。神戸やほかの空港もあるのだから、地元の熱意を見て予算要求をしていく」とかさまざまな言い方で、要するに今までと変わらない。最初大臣に就任されたときは非常に、ある意味で期待を持って言動を注視しておったんですけれども、しょせんはただの人だったなと私は思います。
 それから増便の問題ですけれども、日米航空交渉の再開がうわさをされております。今、以遠権の問題をめぐって日米の間で大変もめておるわけでありますけれども、こういう国際的な状況。それから、これはたしか産経新聞のアンケートだったと思いますけれども、航空三十九社に対するアンケートによりますと、関西国際空港の国際線を来春には週四百便にするという拡張計画が明らかになっております。そのような大変明るい希望のある話もあるのでありますが、また一方では、ちょっと開港時の熱が冷めて少し下向きだという報道も聞かれます。今大変難しいところに差しかかっていると思いますが、我々はこの国際・国内便の増便に対してどう取り組んでいくのか。例えば県庁内で利用促進のためにどんな手を打っていくのか。極端なことを言いますと、大阪空港はもう利用するな、航空便を利用するんだったら関西国際空港を利用しなさいと、そういう通達を知事名で出してもいいんじゃないかと、極論ですが思うんですけれども、いかがでありましょうか。
 それから、ILSを国で買い取るとか港湾施設を大阪府が買い取る等の構想も出ておりますけれども、そのことによって空港使用料、着陸料が少し値下げになるという明るい話も聞いております。そのことによって航空会社が乗り入れ便数をふやすことにつながっていく可能性もありますし、増便に向けて我々は一体となって取り組んでいかなければならないと思うわけであります。
 もう一つ、第二期工事の中で連絡道路の南ルートにぜひ取り組んでいただきたい。関空が開港して、いつだったですか、台風で連絡橋が閉鎖になって何便かのお客さんが空港島内に閉じ込められたという騒ぎがございました。図らずも、風に弱いという弱点をさらけ出したわけであります。したがって、南ルートはトンネル方式で、できればそれも沈埋工法でやるべきだと。それによって予算も安く済みますし、工事もある意味で非常に簡単ですし、この方法でぜひ早期に実現を図るべく今後取り組みを進めていただきたい、働きかけをしていただきたいと思います。
 最後にホスピスケアについてでありますが、駒井先生にお願いがございます。
 私が富山県立中央病院等々を見学に行ってまいりまして痛切に感じたのは、看護婦さんにかかる負担が非常に大きいということであります。患者一・五人に一人という割合で厚生省の基準は定めておりますが、この看護婦さんの存在が非常に大きいということを、そういう実例を幾つも見て私はつくづく感じました。
 それから、富山県立中央病院では、このホスピスケアをスタートするに当たりまして、四年間で実に四十六回の視察、調査、研修、講演を繰り返しております。ヨーロッパやアメリカ、あるいは日本国内の淀川キリスト教病院、聖隷三方原病院、国立がんセンター東病院、長岡西病院、さらには神戸アドベンチスト病院とか沖縄の病院とか、いろんな例を勉強して、四年にわたって四十六回繰り返しているわけであります。それほどこのホスピスケアという問題は非常に難しい部分がいっぱいあるわけで、このスタッフの養成が非常に大きな問題になってくるだろうと。
 したがって、県立医大におかれましても、ぜひともこのスタッフの養成のために予算を惜しまずに、海外も含めて研修、視察、調査等をやっていただきたい。それで、知事、副知事、出納長にはその点の予算をきちっとつけていただきますように特別にお願いを申し上げまして、第二質問を終わります。
 以上、すべて河漢の言ということで──「河漢」とは天の川という意味で、要するに取りとめもない発言だというふうに理解をしていただいて結構でございますが、すべて要望でございます。
 以上で終わります。ありがとうございました。
○議長(平越孝哉君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で森正樹君の質問が終了いたしました。

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