平成6年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(山本 一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○副議長(富田 豊君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 23番山本 一君。
  〔山本 一君、登壇〕(拍手)
○山本 一君 質問項目に従いまして、これから順次ご答弁を賜ろうと思います。よろしくお願いいたします。
 第一番に、戦後約五十年の半世紀を迎えようといたしております。この間、敗戦の厳しい現実から経済大国とまで言われる日本に成長いたしてまいりました。本県においても、戦災復興に県民一丸となって努力し、ようやく目途のつきかけていた昭和二十八年、七・一・八水害に見舞われ、今度は災害復旧に追われる年月が続きました。
 幸いに、昭和三十年代からは日本の高度成長期を支えたリーディング産業である鉄鋼、石油などの素材型産業の成長によって本県経済も活況を呈し、県民意識も高揚されたわけでありますが、オイルショックを契機として、経済構造、産業構造ともにその変革を迫られる厳しい時代に突入し、本県もいや応なくその渦に巻き込まれていったのでございます。このような厳しい情勢の中、大橋知事が急逝され、その後を受けて仮谷知事が就任、五期二十年目を迎えられました。胸中いかばかりかと存ずる次第であります。
 経済構造と産業構造の転換を図るための施策を実現しようといたしましても、東京からの時間的な距離が遠く、中央幹線軸から離れた半島に位置するという立地性など、厳しい現実が大きな壁となって立ちはだかっておりました。最大の壁は、先進諸国に追いつくため日本が取り続けてきた効率化政策であり、集中化のメリットを最大限に生かそうとする意識ではなかったかと存じます。豊かで住みよい和歌山県を建設すると大志を表された仮谷知事には、厳しい課題に対処され、今日の和歌山県を創生され、今、感慨も新たにしておられると存じます。
 思えば、関西国際空港が泉南沖に決定し、東京一極集中の弊害がクローズアップされ、第四次全国総合開発計画では多極分散型国土の形成が主要なテーマとされ、さらには本県と同じような立場を有する各県がともに手を携えて、半島振興法、リゾート法の制定を見るに至りました。
 その後の十年を見ると隔世の感があり、本年九月には関西国際空港が開港して国際軸に結ばれ、東京は本県の通勤地域となりました。近畿自動車道の堺─松原間の開通によって中央幹線道路と直結し、広川─御坊市間の供用開始も間近となりました。御坊市─南部間の事業着手が決定され、うれしい限りでございます。また、文化施設として念願久しかった美術館、博物館、図書館の三館構想が実現し、和歌の浦には万葉公園と万葉館が開設されました。産業面では、近畿大学生物理工学部の開設、和歌山大学への理工系学部設置も躍動し、工業技術センターの再編整備も順調に進められ、世界リゾート博には二百九十万余の方々を国内外からお迎えし、地方博として最大の成果をおさめています。仮谷知事のご労苦に深く敬意を表している一人であります。
 しかし、なぜか県政を冷ややかに感じている県民もおられます。時代の風潮だと申される方もありましょう。バブル崩壊後の経済の停滞に起因すると申される方々もおられると思います。また公共事業の遂行に当たって、県民とのかかわり合いが薄くなっているとも聞かされます。災害復旧などは直接その日の生活にかかわる問題であり、当然、県民の注目するところであると存じます。現在の公共施設の建設では、直接の関係者のみがかかわり、地域全体とのかかわりが薄いとも聞かされます。また地域開発においても、開発地のみが整備され、周辺地域との調和が保たれていないとも聞かされます。そうなれば、当然ながら、県民としてはその施設なり開発を冷ややかに眺めているほかないと申す人もあります。
 そこで、例を挙げて質問いたします。
 リゾート博の会場となった和歌山マリーナシティの基盤整備では親水性の護岸が建設され、将来は東洋一のマリーナを有する海上都市が建設されることになっておりますが、その周辺を見るとき、対岸の護岸は旧来のままでみすぼらしく、調和のある状況とはとても申せません。護岸の改修を行い、親水性を持たせるなり、遊歩道を設けるなりして、県市民の心の憩いの場となるよう配慮すべきではないかと考えます。当局の見解を賜りたいと存じます。
 また現在、和歌山マリーナシティ内に建設されている遊び場は小さな子供には不向きであり、母と子がともに芝生の上でお握りでも食べられる箇所があってこそ、マリーナの存在価値と心のぬくもりが感じられると思います。公共用地の活用と今後の方針、対策についてお聞かせをいただきたいと思います。
 さらに、周辺との調和という点で見ると、近接する黒江地区は紀州漆器の町として長い伝統があり、地域住民の活力、近代化に関心を向けてほしいと思います。伝統産業会館に観光バスが来ると、その道に駐車することになり、生活の利便を損なうことも出ております。
 さしあたって、これまでも私は本会議においてしつこく質問をいたしてまいりました船戸海南線の交通ネック箇所の改修、並びに危険下にある城山トンネルの改良計画の進捗状況を含めて、所見を土木部長にお尋ねいたします。前部長は、変更もならないから、中で百メートルほどやろうと申されたこと、しかと受けとめていただいていると存じますので、その点を踏まえてご答弁を願いたいと思います。
 次に、生活弱者に対する施策についてお尋ねします。
 入院患者の食費負担が、健康保険法の一部改正によって、去る十月一日から一日六百円が患者負担となりました。本県では、高齢化が十年先行しております。県民は、日々の生活で何がしかの不安を抱え、特に老後の生活の不安はぬぐい切れないものがあります。今回の改正によって、入院時に食費負担を必要とされる県内の対象者数は二十万人を超えるかとも存じます。
 先般、和歌山市では、重度心身障害児者、母子家庭、乳児、老人の各医療について市単独で助成をすることとされました。このことで、在住する市町村によって入院されている患者さんたちの間に負担額の差が生じてまいっております。同じ食事をいただきながら、その負担額に差があるということに疑問を感じないわけにはいきません。福祉分野においても社会保障的な性格を有するものについては、日本国内どこにいても同じ程度の保障を受けることができるようになっていなければならないと思います。
 そこで、保健環境部長にお尋ねいたします。
 九月議会において県は助成しないとの方針を示されましたが、再度、検討するつもりはないのかどうか、また助成しないとなれば、月一万八千円と一方では助成しない、この不均衡に対し今後どのように対処されていくおつもりなのか、ご所見をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、関西国際空港の開港に伴う本県経済への波及効果についてお尋ねいたします。
 先月、大和銀総合研究所が発表いたしました関西国際空港の開港効果は五千九百六十億円、国内総生産を押し上げることになるとされております。これは、開港前に同研究所が行った試算を見直したものでありますが、この見直しを行うこととなった経過は、さきに予想した国際線の乗り入れ便数が増加し、人、物の動きが予想以上に増加したためと伺っております。特に、これまで成田空港を経由していた国際貨物の一部が関西空港に振り分けられ、前年度に比べ輸出で六五%の増加、輸入で四六%の増加を見たことによるとされております。また国際線利用客数も、一日当たり二万二千四百六十五人から二万三千五百三十一人へと上方修正されております。さらに、旅行客は空港内のほか、近畿各地の観光地で買い物、飲食を行い、これが近畿全域の生産や所得を増加させ、それがさらに消費に向かうため経済波及効果が膨らむとされております。この効果は、平成七年度にはさらに拡大し、その波及効果は一兆六千五百億円と見込まれ、近畿の国内総生産の成長率を二・三七%押し上げると予測されております。これらの予測は、まことにうれしいものであります。
 そこで、企画部長にお尋ねいたします。
 本県経済にも相応の経済効果をもたらすものと考えておりますが、いかがでありましょうか。また今後、関西国際空港の効果を県勢の伸展に生かすため、全体構想の早期実現を初めどのように取り組む考えでおられるのか、率直なご答弁をお願いしたいと思います。
 以上で、私の質問を終わります。
○副議長(富田 豊君) ただいまの山本一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 土木部長山根一男君。
  〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 山本議員のご質問にお答えいたします。
 初めに、世界リゾート博跡地、並びに対岸を含めた調和のある整備をするべきであるとの趣旨のご質問にお答えいたします。
 マリーナシティの対岸の護岸の整備をとのことでございますが、議員ご質問の護岸、すなわち関西電力海南火力発電所の西側護岸については、その大半がもともとは海南港の防波堤として直轄事業により整備されたものであり、その後、県が行った埋立工事に伴い、現在のような姿になったものでございます。
 この護岸については、現在、魚釣りの場などに利用されておりますが、構造面、景観面などでは必ずしも対岸のマリーナシティと調和のとれたものとはなっておりません。このため、議員ご指摘のように、この護岸の親水性を高め、周辺との調和を図っていくことは必要であると考えており、今後、地元の関係者とも協議しながら検討してまいりたいと考えております。
 次に、子供のための遊び場をとのことでございますが、和歌山マリーナシティにおいては、我が国初の親水性防波堤を初め緩やかな傾斜の護岸を設置し、高齢者からお子さんまで広く海に親しんでいただけるよう計画しております。また陸上部においては、サンセットパークや北側緑地を整備し、広く県民に潤いの場を提供することとしております。
 議員ご指摘の、特に小さな子供にも楽しんでいただける施設としては、リゾート博終了後に着手した北側緑地において芝生広場や木製のアスレチック施設、噴水等を整備していく予定にしております。
 次に、県道船戸海南線の改修並びに城山トンネルの改良計画についてでございます。
 ご指摘の箇所については、平成六年の夏に一部側溝の整備を行い、幅員の拡大を図ったところでございます。今後も、現道敷地を有効に利用するため、当面の対策として側溝等の整備を行ってまいります。また、本来は幅員十一メートルの都市計画決定どおり整備すべきであると考えますが、交通安全対策を急ぐ必要上、交差点部について改良を行うため地権者に家屋調査の申し出を行いましたが、いまだ了解を得るに至っておりません。今後とも、粘り強く交渉を続けてまいります。
 城山トンネルの改良計画については、人家が密集しておりまして工法等を十分に検討する必要があり、また市の協力も必要でありますので、市とも十分協議しながら、各種調査を積極的に進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 保健環境部長江口弘久君。
  〔江口弘久君、登壇〕 
○保健環境部長(江口弘久君) 山本議員ご質問の、入院時の給食費負担六百円についてでございます。
 今回の健康保険制度の改正は、来るべき超高齢化社会の中で揺るぎない社会保障制度を確立し、活力ある福祉社会を実現することを目的として、税制改革、年金制度の改正とあわせて実施されたものであります。改正の主な内容は、今日重要な課題となっている付き添い看護の患者負担の解消を図ること、在宅医療の推進を図ることなどでございます。
 また、議員ご指摘の入院時の食費負担についても、入院している方の食費のみ補助を行うことは在宅で療養されている方との間に著しく均衡を欠くことになり、また負担額は家庭でも要している程度の食事の費用を基準にしており、所得に応じ自己負担額の軽減が講じられていることなどの理由から、国会における十分な議論を経て決定されたものであります。これは、今後予想される高齢化社会に向けての対策として在宅福祉を積極的に進めようとするものであり、それゆえ県としても、改正の趣旨等を踏まえ、負担をお願いすることにいたしました。この方針は現在も変わってございません。
 さらに、現在、市町村間で自己負担の差が生じている点につきましては、国から、地方単独事業により入院時の食費の患者負担を軽減、解消することは制度改正の趣旨に反するものであり不適切であるとの指示があった旨を市町村に通知いたしております。
 今後とも県といたしましては、長期的ビジョンに立って、在宅福祉、医療サービスの充実対策として、訪問看護ステーション、在宅介護支援センターの整備、またマンパワーの強化対策として紀南に看護婦養成所、県立医科大学に附属看護短期大学の設置等の施策を講じるなど、老人保健福祉計画等に基づき、各種施策を総合的に、また着実に実施してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 企画部長宮市武彦君。
  〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 山本議員にお答えいたします。
 関西国際空港の開港に伴う本県経済への波及効果と全体構想についてでございます。
 まず、本県への波及効果についてでございます。
 現時点では、波及効果の数値はつかめてございません。十一月の一日平均で、関西国際空港への乗り入れ便数が国際線で五十五便、国内線で六十五便が就航し、国際線、国内線の航空旅客が約四万七千人、見学施設利用者数が約九千二百人、貨物取扱量は輸出が四百三十トン、輸入が六百二十トン、国内発送が百十トン、国内到着が百トンと、膨大な人、物等の交流、流通がなされていると聞いてございます。このことから推定いたしましても、本県への波及は直接波及、間接波及を合わせて相当の効果があるものと考えてございます。また、県勢浮揚をかけて開催いたしました世界リゾート博も、当初計画の約二倍の二百九十八万人もの入場者を集め、盛大のうちに幕を閉じたのも、関西国際空港の建設、阪神高速湾岸線、近畿自動車道紀勢線など、周辺の基盤整備が大きな影響を及ぼしたものと考えてございます。
 また、関西国際空港の全体構想については、現在、第七次空港整備五箇年計画に盛り込むべくオール関西で要望活動、調査研究に取り組んでございまして、先般も東京で行われた東京アピール94に本県全体計画促進協議会として、県議会副議長にもご参加いただき、組織を挙げて活動しているところでございます。
 今後は、県議会のご支援をいただきながら、平成七年度に行われるボーリング調査等の予算獲得に向け全力で取り組むとともに、関西国際空港の持つ波及効果を享受するための調査、関西国際空港関連活性化プログラムを取りまとめ、県勢発展に役立ててまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 23番山本 一君。
○山本 一君 土木部長からいろいろご答弁いただきました。私も建設委員会に所属しておりますので、他にお聞きしたいことはまた委員会で質疑をしたいと存じます。
 それから保健環境部長ですが、この六百円と一万八千円の問題です。
 これは、ただそれだけを並べて法的にどうと言えば、なかなか理屈でいかんこともあろうとは思いますけれども、額で見て一万八千円とゼロということになると、片一方ではそれができて、もう片一方ではなぜできないのかとなる。簡単に言えば、お金の勘定で住民の方々に説得するということがなかなか難しい。現実は、その人の恩恵になり、その人の福祉につながる面もあろうと思います。だから、法で通されるならば、こういうものに対してもっと理解をしていただくよう、市町村に対しても県市民に対しても何らかの方法で納得してもらえるように宣伝の徹底をしてほしいと思います。
 これから、和歌山県でも地方選挙がずっと重なります。やっぱり、選挙というものを戦う私らにとっては、工事にしても何にしても、お金がどう動くかということがまず表に出てくる。比べたらはっきりする。そういう、心理的に難しいところがあります。法では割り切れんところがあります。これは国会で審議すべき問題であるかもわかりませんけれども、保健環境部の方でも地方自治体を一生懸命に説得し、納得してもらえるように啓蒙してほしいと思います。それをお願いしたいと思います。
 それだけ要望して、質問を終わります。
○副議長(富田 豊君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で山本一君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(富田 豊君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時二十六分散会

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