平成6年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(上野哲弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時六分再開
○副議長(富田 豊君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(富田 豊君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 18番上野哲弘君。
  〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 毎度、熊野地域ばかりで申しわけありませんが、質問をいたします。
 平成三年四月の統一地方選において県会議員に当選させていただきました。和歌山県政に参画できたことを、まことに光栄に感じているところであります。間もなく四年間の任期満了が近づくに当たり、これまでの質問を総括して今後の対応に期したいと思います。
 今期中、政治的には非自民の連立政権が誕生し、さらに自社さきがけによる連立と、中央政治が混沌としてまいりました。近く新党が結成されることになっており、この先まだまだ不透明な状況が続きそうであります。
 一方、経済的には、バブルの崩壊等による不況が到来し、さらに内外価格差による製造業の海外進出が増加する中、国内における産業の空洞化が叫ばれているところであります。特に地方においては、人口減による過疎化が進み、加えて高齢化による活力の減退が顕著になり、過疎からの脱却と活性化を求めて、当該自治体は地域づくり、町づくりを真剣になって模索しているところであります。しかし、財政的な面、人的な面において地方の不足は否めません。国及び県において、従来の枠から発想の転換を図り、思い切った地域振興策が必要であると考えます。そのような認識に立って県全体を見てみたいと思います。
 和歌山県を大きく分けて、紀北、紀中、紀南とするならば、それぞれの地域の現状と将来展望についてお伺いいたします。
 和歌山市を中心とした紀北においては、リゾート博の開催が予想を上回る成功により思わぬ活力が沸き上がったところであり、関西新空港の開港により当地域への波及効果が期待されます。第二国土軸──今は太平洋新国土軸になっておるらしいですが──の推進により、京奈和道路の着工、紀淡海峡道路の計画、さらにベイエリア構想と、それに伴うビッグ事業がメジロ押しになっております。
 一方、田辺、白浜を中心とした紀中においては、地方拠点都市の指定により、地理的に見てその整備が期待されるところであり、白浜空港のジェット化により当地域の観光リゾート機能が大幅に向上されますし、それに伴う先端産業等の誘致、輸送手段の高度化に対応して農林水産物の販売促進等、活性化対策の具体化が図られるものと考えます。
 他方、新宮、東牟婁の紀南は、これまで和歌山県が統計的に他県に比べて上位にランクされた時代には紀南地域は相当の実力があったと考えますが、紀北、紀中に比べてその落差が大きいものと思います。県の長期総合計画においても、地理的なハンディがあるとはいえ、当地域の事業数が少ないものとなっておりますが、現状認識と将来展望について、知事の所見をお伺いいたしたいと存じます。
 次に、熊野地域活性化対策についてお伺いいたします。
 第一点、新宮、東牟婁の一体化について。
 これまで、熊野地域活性化対策の具体化のための要旨については提出されており、その実現に向けて県当局が鋭意努力されていることに対し感謝申し上げたいと思います。今回の質問の趣旨は、熊野地域を構成する各自治体が活性化に向けてお互いの調和が図られ一体化されているかどうかであります。
 広域行政において県と各自治体との関係を申し上げるならば、施設等の建設においては、それぞれどこにするかでお互い誘致合戦に陥ってしまいます。また、ソフト面での調和をそれぞれ唱えても、それを具体的な目標に向かって心を一つにするには行政の枠を超えなければなりません。活性化に向けて地域が一体化できるかどうかが、この振興策の重要課題と思います。当局において、何でもって地域全体が一つになれると思っておられるか、地域振興の立場から企画部長にお伺いいたします。
 次に、活性化対策の根幹についてお伺いいたします。
 和歌山県長期総合計画における各種事業を考えると、先ほども申し上げたように、第二国土軸構想(太平洋新国土軸)の中で、京奈和道路、紀淡海峡道路、ベイエリア構想等、紀北地域の振興策につながってきております。また関西新空港に関連しては、コスモパーク加太計画、南麓サイエンスパーク計画等、各種事業の多くは一つの根幹プロジェクトから派生したものとなっております。やはり、事業を行うについてはその地域を大きくとらえて推進すべきものであり、確実なものにするためにはその根幹を確立することにあろうと考えます。この活性化を進める上で、地理的要素すなわち海、山、川に関連したハード面の整備、歴史文化に結びつくソフト面の整備がその根幹になろうかと思いますが、当局において熊野地域のバックボーンをどのようにとらえておられるのか、財政面、人的面を含めて企画部長にお伺いいたします。
 次に、熊野学研究センターについてお伺いします。
 仮谷知事の熊野地域に対する思い入れから、熊野学研究センターの設置が決定されました。熊野の魅力を十分に出し得る発信基地としてこの研究センターが期待されているところであり、同時にこの事業が地域の振興に寄与するものでなければなりません。聞きますと、今年度で基本計画が終わり、来年度から具体的施策に入るようですが、それに関連してその設置場所と建築についてお伺いいたします。
 今の段階で何を研究するかが定まっていないようですが、大きくとらえるならば人間を研究する機関と考えればいいのではないかと思います。研究するについて、当然施設が必要と考えますが、その設置場所について申し上げたいと思います。
 行政が行う事業といえども、単なる資料館とか集会施設に終わってしまえば、維持管理の費用ばかりがかさみ、地域の振興に役立つどころか、お荷物になる可能性が大であります。できれば、熊野地域の活性化の中心的役割を持ち、将来に向かっての歴史をつくり上げる施設にすべきと考えます。そのために、設置場所については、管理運営が十分できるところであり、道路網及び歴史的環境が整備された、全国に通用するロケーションを選定すべきであります。この施設を通じて熊野学研究という形で人間性を高めるあらゆる機能を包含できるとすれば、二十一世紀の日本国民に受け入れられるものと思います。
 場所の選定もさることながら、建築形式について申し上げたいと思います。この施設を全国的に注目を浴びるものにするならば、ぜひ熊野材を活用した木造建築にすべきと思います。それは、当地域の歴史的背景と和歌山県の重要施策の一つである県産材の需要拡大にもつながるということであります。
 先日、建設委員会の視察において宮城県の松島──ここは年間五百万人の観光客が見えるそうでありますが、その中の国宝瑞巌寺は、四百年前、伊達政宗が熊野から木材を取り寄せ建立したとなっております。コンクリート建築はせいぜい八十年ないし百年の寿命とのことですが、木造建築のすばらしさは、長い年月に耐え得ることもさりながら、日本の歴史と文化を感じさせてくれます。今、NHKドラマで「花の乱」が放映されておりますが、応仁の乱により京都は焼け野原になり、現在の京都はその後の建造物によって数千万の観光客が訪れるということであります。その経済効果により地域社会が形成されていると言っても過言ではないと思います。我々も、数百年のスパンで物事を考えてもいいのではないか。例えば、この施設を飛び切りの木造建築にし、五百年後国宝にでもなれば仮谷知事の名前が残ることになります。すなわち「トラは死んで皮を残し、人は死んで名を残す」、そのぐらいの気持ちでもって実現してほしいものです。公室長の所見をお伺いいたします。
 次に、熊野古道を中心とした振興策です。
 熊野古道は、ご存じのとおり、平安時代、天皇家が京都から熊野三山にもうでた歴史街道であります。今日、全国的に歴史街道が注目を浴び、地域の振興に役立つものと考えられております。しかしながら、現在この古道の整備が文化財としての保護だけにとどまり、道としての機能が備わっておりません。近代化とともに古道が滅失してしまったのであります。
 私は、地域の振興策を考える上で、この古道の整備が将来、必ず活性化につながる県下最大の財産になるものと考えております。また、それぞれの地域の一体化を図る上で広域行政の動脈として存在すれば、それに関連した各種事業の誘致も可能となるのではないか、そのような思いを持っております。文化財保護による整備だけでなく、地域の振興策の一環として未整備区間の解消を図り、県下の古道全域を結びつけるべきと考えます。特に、熊野三山の中心となるべき新宮市と那智勝浦町の古道が全然整備されておりません。和歌山県の財産として、また当地域の活性化の柱として早期に整備に向けての事業化を進めるべきと思いますが、古道を中心とした振興策について企画部長にお伺いいたします。
 以上で、第一回目の質問を終わります。
○副議長(富田 豊君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 上野議員にお答え申し上げます。
 県政における現状認識と将来の展望について、特に紀南地方を中心としてということでございます。
 活力あるふるさとの創造と均衡のとれた郷里の発展のために県の中期実施計画を行っており、おのおのの地域の特性や資源を生かした主要プロジェクトの推進を図っているところでございます。
 現状認識と地方振興のための考え方でございますけれども、特に紀南地域の振興を図るためには、何よりも交通基盤の整備を進めることが最も肝要なことではないかと思っておるわけでございます。近畿自動車道紀勢線の南伸を図るのはもちろんでございます。また、南からの那智勝浦高速道路の整備、さらに百六十八号、百六十九号、三百十一号、三百七十一号等の国道の整備や県道の整備、特に紀南地方は山間地帯が非常に多うございます。だから、県道もさることながら、林道の整備が非常に重要な課題でございますので、紀南縦貫林道やきのくにふるさと林道などの広域道路網の整備を図ってまいりたい。さらにまた、JR紀勢線の高速化の推進──昨日もその高速化についての県下の会議が開かれたわけでございますけれども、また新宮で行っているヘリポート、海上交通の整備など、陸・海・空についての交通ネットワークの整備を推進しているところでございます。また、当地方の振興にとって黒潮が近接する海洋の活用、心のふるさとである熊野文化の活用、豊かさと神秘性が備わった森林、河川、温泉の活用等が重要と考えておるわけでございます。
 平成四年度からは熊野地域活性化計画策定事業を実施しておりますが、その調査結果も踏まえて、今後とも市町村とも十分な連携を図りながら、若い人たちが定着できる活力ある町づくりに努めてまいりたいと考えております。
○副議長(富田 豊君) 企画部長宮市武彦君。
  〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 上野議員にお答えいたします。
 熊野地域活性化対策の、新宮、東牟婁地方の一体化についてでございます。
 熊野地域活性化計画は、市町村や各界各層の意見を通して地域の一体的な取り組みの中で策定しているものでございます。本計画は、全総計画にも位置づけられている交流人口の増大をメーンテーマとしてとらえてございます。市町村それぞれの地域特性を生かしながら、地域全体を統一感のある熊野文化保養圏として形成していくことを目標としてございます。
 今後は、関係市町村の主体的な参画を促すとともに、広域的な観点から役割分担や機能連携など一体的な取り組みの必要性について理解を求めてまいる所存でございます。
 次に、活性化対策の根幹についてでございます。
 熊野地域は、吉野熊野国立公園などに代表される良好な自然資源、熊野信仰を核とした全国に誇るべき歴史文化資源を有してございまして、本計画策定に当たっての基本的な姿勢としては、これらの資源の積極的な保全、活用により地域振興に資することを意図したものでございます。
 なお、本計画の策定においては、人材発掘も含めて域内における多数の若手活動家の参画を得ながら取り組んできており、地域の参加意識の高揚に寄与していると考えてございます。今後は、議員ご指摘の人材面や財政面も含めて、実現化に向けた事業手法等について検討してまいりたいと考えてございます。
 最後に、熊野古道を中心とした振興策についてでございます。
 議員のお話にもございましたように、熊野古道は千年のロマンにあふれ、我が国の歴史文化の源流をたどる貴重な歴史遺産でございますので、先ほども申し上げた熊野地域の活性化計画を踏まえ、歴史文化資源を生かした広域的な地域振興を図るべく、関係部局とも十分連携をとりながら積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
○副議長(富田 豊君) 知事公室長中西伸雄君。
  〔中西伸雄君、登壇〕
○知事公室長(中西伸雄君) 上野議員にお答えいたします。
 熊野学研究センター構想については、県と西牟婁、東牟婁郡の市町村で実行委員会を設置いたしまして、現在基本計画を策定しているところでございます。
 熊野地域の自然や文化、歴史、民俗、地理など、さまざまな分野にわたって多くの人々が関心を持ち、調査研究を初め、体験や学習等に取り組んでいるところでございます。そうした熊野地域への関心をさらに高めるために、現在策定中の基本計画では、活動の輪を県内外に広げるネットワークの方策やセンター施設の機能、規模、さらに関連施設等についてどうあるべきか、検討を進めているところでございます。場所や建築形式については今後の問題でございますけれども、いずれにいたしましても、関係の皆さん方のご意見を聞きながら、地域の活性化につながる施設をつくってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 18番上野哲弘君。
○上野哲弘君 今回の質問の趣旨を申し上げますと、活性化と言ってもなかなか難しい問題だし、そう安易にできるものではないと思うんです。
 それで、企画部の地域振興課ですが、予算がないということで、幾らいい絵をかいてもそれを整備する予算がなければなかなかうまくいかんのではないかという感じがするわけです。
 そこで公室長、センターの施設ですが、いろいろ計画の前後があると思うんですが、我々はこれを熊野地域の活性化の一環とする考えを持っているわけですけれども、この設置にしても西牟婁が入っているわけですね。だから、この計画が東牟婁の計画でやっているならば、あくまでも一体化を図ってもらわないと、いろんな面で本当の実力が発揮できないのではないかと思うわけです。
 それと、総務部長に要望いたします。例えば東牟婁、新宮に百億の金が出ていると。その金が使い道次第で二百億になると。そういう連携を持った中でやってもらいたい。縦割り行政の中で、そういう面も踏まえて地域の連携を深めてもらいたいという感じを持っているわけです。だから、この事業については担当課の方も十分連携してもらってお願いしたいと思います。
 農林水産部長、先ほどセンターの建築については木造をという話もしましたが、公共施設は木造を使用すれば県産材の需要拡大にもなるし地域の活力にもなるということで、いろいろな自信も出てくるのではないかという感じもするわけです。
 先ほど鶴田議員から不登校児童の話が出ていましたけれども、こういう問題でも、熊野地域は再生の場、蘇生の場、心をいやす場だということを先生方がおっしゃっているわけですね。それをうまく利用した国の施設ができないかとも思うんです。そういういろんな範囲の中で考えて、これを実行に移してもらうと。そのような波及的な要素を生かしてほしいなという感じを持っているわけです。
 それと、古道です。これは土木部長あたりに聞いた方がいいんですけれども、今、文化財保護ということで、残ったところだけしかしてないですね。道の本当の利用価値、そういう面が出ていないと思うんです。最近、建設省あたりも古道の整備について考えておられるようですが、そういう面もあわせて、県行政のすべての要素を一体化した形で生かしてほしいなという感じを持っておるわけです。各市町村もそれに向けて一体化を持って、お互いにいい地域づくりをするという観点で進めてもらったらいいと思います。
 先ほど、知事さんから紀南地域も考えておると言われましたが、紀北、紀中は高速道路の南伸もありますし、十年ほどである程度できるけれども、熊野は二十年、三十年後に花咲くかもわかりませんので、そういう面もあわせて、ぜひじっくりと腰を据えてお願いしたいと、そのような要望をいたしまして終わります。
○副議長(富田 豊君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(富田 豊君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後一時三十三分散会

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