平成6年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(平越孝哉君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 25番鶴田至弘君。
  〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 それでは、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 まず、行政改革と予算編成方針についてお聞きしたいと思います。
 十月七日付で、国の方から「地方公共団体における行政改革推進のための指針の策定について」という、相当細かい内容を含んだ通達が来ております。本来、行政改革は、地方自治体が住民の立場に立って県民福祉の増進のために独自に主体的に努力すべきものであり、国の方から余りとやかく言われる筋のものではありませんけれども、どうもしばしばとやかく言ってまいります。そしてその場合、国は「地方の主体性の尊重」と言いながら、何かと国の責務を地方自治体に転嫁してまいりました。
 八五年から行われました地方行革のさなかにあって、単に人員削減や人件費の抑制を求めるだけでなく、国の福祉の切り縮めを自治体に負担させたり、標準行政なるものを示してそれをオーバーするところには補助金カットを初めとしたさまざまなペナルティーを加えたり、自治体が主体的に行う行革というより国の定めた標準行政に従わせるという傾向が相当強くありました。「地方の時代」という耳当たりのよいかけ声の中で、地方も国の意向に沿い、もちろん肯定すべき前進面もあったわけですが、七〇年代から八〇年代にかけて前進させた住民福祉をあちこちで削り取り、住民要求の実現を低く抑え込んできた行政改革であったろうと思います。住民の視点に立つというよりは国の意向に沿うという方向が強く表に出た行革だったと、私は考えております。
 それは、当時の県の歳出面でも強くあらわれておりまして、一九八五年(昭和六十年)の県の歳出を一〇〇といたしますと、歳出の伸びが一九九〇年(平成二年)には一三一と伸びておりますが、民生費、衛生費関係を合わせて九六、労働費が一〇七、商工費が一〇九、教育費が一一八と、全体の伸び率一三〇に比べて生活に密着した予算がいかに低く抑え込まれたかがよくわかります。そして、逆に土木費が一五二と断トツの伸びをしておる点も十分に注目に値するところであります。職員定数もこの間に百名余が削減され、削減ムードの中で真に必要とされるところへの増員が抑制されてきたというところにも大きな問題があったかと思います。
 国はその行革期間中に和歌山県に何をしたか。実にその五年間に、五百十一億円にも及ぶ補助金のカットでありました。行革とは、肯定的な面を一部含みながらも、トータルとして住民の視点から振り返ってみれば住民軽視の姿が明瞭に見えてまいります。
 今、新たに国の方から行革推進の指針が示され、一年以内に県としても大綱をつくることが求められております。私は、行政改革については住民からの視点が貫かれるならば当然推し進められなければならないと思っておりますが、過去の行革の実績、先ほど申し上げましたような姿を見るとき、国の求めた行革とその指針に大きな疑問を抱くものであります。
 そのような立場から、以下、質問をいたします。
 まず、行革に対する基本的な態度の問題です。行革に当たっては、あくまでも地方自治の立場で、国の都合に地方自治を従属させるのではなく、みずからの主体性をもって行うということ。地方自治に対する国の介入や侵害には毅然としてそれを排除する姿勢が必要であろうと思います。同時に、住民の視点から、県民福祉の前進をさせる視点から行う必要があろうと思いますが、所信をお示しいただきたいと思います。
 あえてこのようなことを申し上げるのは、過去の実績もさることながら、この国の指針が出る前に、この方針のたたき台というかスタートとなった文書に、自治省のプロジェクトチームが出した「地方行政リストラ素案」というものがあります。そこには、「地方公共団体が行政改革に取り組むに当たっては、地方自治の原点に立ち返り、住民の選択と責任のもとに進められるよう住民参加の視点を重視し、推進体制を確立すべし」とか、「住民の視点に立った行政サービスの改善」とかが曲がりなりにも行革推進の一つの大きな視点として位置づけられておりました。しかし、素案から通達に練り上げられる過程でこの文言自体が削除され、住民の主体性がほとんど欠落させられてしまいました。行革における地方自治体の自主性、住民の視点を大切にするということ、この点が非常に重要な点だと考えますが、いかがお考えでしょうか。
 また、簡素で効率的な行政システムを確立することが求められていますが、住民福祉をどう前進させるかという当然の前提たるものがこの通達ではほとんど触れられておりません。さきの行革の際にも福祉予算、教育予算などの抑制、削減が並行して進みましたが、その傾向がまた一層強まるのではないかと危惧いたします。いかがなものでしょうか。
 またこの通達は、地方の主体性を一方で言いながらも自治体をこれに従わせるという面も強く持っており、地方自治を侵害する面が露骨に出ている面もあります。端的な例として挙げれば、新たな行政需要に対しては雇用するのではなく配置転換でやれとか、退職金は国の支給基準を上回ってはならぬとか、微に入り細にわたって指示をしています。結論的にそうなったとしても、そのようなことは自治体の主体的な論議の中で決めることで、国にとやかく言われる筋はないはずであります。明らかに越権です。このような国の態度をいかがお考えになられますか。
 関連して、平成七年度(一九九五年度)の予算編成についてお尋ねをいたします。
 不況による税収の不振、県債の累積、国の補助金カットなど来年度の予算編成にも苦労の多いところがありましょうが、世が不況であり県民の生活がゆとりをなくしていればいるほど、県政が温かい手だてを講じるというのが本来のあり方であります。
 まず、予算編成基準の設定の項についてお尋ねいたします。事業が基準内と基準外とに区別され、基準内事業は一〇%のカットが指示されています。基準外事業として定められた事業のうちに人件費や公債費等、当然恣意的な枠にはまらないものもありますが、公共事業、土木、農林等の政策的に伸縮できるものもあります。そういう点から見ると、公共事業、土木、農林関係はカットを受けないが、保健、民生、商工、教育という関係は伸びの対象から除くということになり、この部分に関する県民の願いは初めから軽視または抑制されることになります。
 ここ数年、県勢活性化の新規事業としてマリーナシティ造成やリゾート博に驚くべき多額の金がつぎ込まれる一方、民生、教育、生活関連予算は低く抑えられたと思います。県が特別に力を入れたところには猛烈に金をつぎ込み、その中で特定の大企業への肩入れをしたり、明らかに不要不急と思われるところに多額の支出がされたりして、そのしわ寄せとして県民の日常の生活要求を退けるという面が見られましたが、そのようなことがあってはならないと思います。生活環境整備事業は基準外に指定されていますが、これには特別に「過去の実績、事業効果を踏まえ精査せよ」と注文がつけられ、全体として生活部門の削減、抑制が色濃く出ていると思われますが、いかがでしょうか。
 二項の行革推進の項についても、「単に事業費の一律カットだけでなく、根底から徹底した見直しを行う」とありますが、文面どおり読めば、今まで行ってきた事業の廃止なども含まれると予想されます。このような場合、単に当該部局の判断だけでなく、直接関係する住民の意見の聴取や合意も必要だと思われますが、いかが対応されるようになっておりますか。
 職員定数については、過去の行革期間で約百名が削減されました。少数で効率的に仕事をこなすということは大切なことですが、必要な人員は確保せねばなりません。その必要性ということについても、まず行革ありき、定数削減ありきということではなく、住民の視点に立った判断が大切だと思います。私も各課を訪問した際、問わず語りに「せめてあと一人ぐらいは欲しい」との声をしばしば聞くところです。人事当局にも要求は届いているはずです。特に住民サービスに直結するところ、現場と称せられるところにその声を聞きます。そういうところには厚く増員するということも必要で、行革のかけ声ばかりで削るばかりが能ではなかろうと思いますが、来年度の方針はいかがなっておりますか。
 この項目の最後の点ですが、現在設置されている行政改革の検討推進機構の中に幅広く住民の意見を反映させるべく住民代表を加えるようにしてはいかがでしょうか。
 以上、知事並びに総務部長にお尋ねをいたします。
 続いて、教育長に以下質問をいたします。
 来春から、学校の週五日制が月二回となります。私は二年前に、この制度に入るに当たって懸念されることなどを取り上げて質問をいたしました。休みになった土曜日の授業はどこでするのか、月曜日から金曜日の間に入れるとすれば子供にとって労働時間の延長と同じ結果にならないか、週六日を前提とした学習指導要領を五日制にふさわしいものに改編すべきではないか等が趣旨でした。
 この間、学校ではいろいろ創意工夫がされ、子供たちにも負担を抱かせないように努力されたようでありますが、すべてがすべてうまくいったとは言えないような面もあります。学校行事が減ったという点はどことも共通していますが、そのために児童生徒に目に見えない影響もあったようであります。運動会の練習日が少なくなっておもしろくないとか、楽しかった七夕集会が二時間から一時間になったとか、文化祭と体育祭がことしは文化祭だけに、来年は体育祭だけにというようになったとか、あるいは一方の規模が小さくなってしまうとか、とにかく学校行事の縮小は子供たちにはいろいろ波紋を呼んでいるようであります。
 私は、前の質問のときにも申し上げたのですが、私の昔の思い出も学校行事にかかわるものがほとんどで、学校生活に潤いを与えてくれ、集団の規律やルールを学ぶ絶好の学習の場だったようにも思います。「学校行事の精選」と言ってこのように行事を減らすことはどうかと思います。
 また、指導要領にも関係することですが、学校の先生方から、基礎的なものはしっかり身につけさせたいという立場で授業を進めれば学期末には教え残しが随分と出てくる、一通り指導要領の分をやってしまおうと思えばスピードを上げねばならず、わかっていない子供を残してしまう、週休二日制はよいが学習指導要領をぜひ見直してほしい、そんな声が聞かれます。そういう声を発しているのが、少数ではなく大勢おられるわけです。一生懸命授業に取り組んでいる先生方もそんな声を上げられております。
 文部省が全国で月二回の週休二日制を実験研究した結果、研究協力校の四割前後の小中学校が土曜休日分を他の曜日に上乗せしたと報告されており、上乗せした学校の中で小学校の四一%、中学校の四五・三%が子供の学習負担が増加したと答えています。これでは、週休二日制を実施する目的とも合わなくなります。学校行事も今のままでは一層削減されると思います。学校に潤いがなくなってくる懸念もあります。週五日制は子供にも多くのメリットをもたらしましたが、一面、今申し上げたような否定的な面も生んでいます。五日制と直接かかわりもあり、このような事態の中で学習指導要領の見直しの要望が各地方自治体で上げられております。全国で五県議会も含めて三百余の自治体に及び、県下でも過半数二十六の自治体が学習指導要領の見直しの議会決議を行っているところであります。
 ついては、次の点で教育長の所信をお伺いいたします。
 来春から学校週五日制が月二回になるわけですが、現行指導要領は六日制が前提となっております。どうしても無理が生まれ、学校行事の削減や教え切れない授業が出てくる心配があります。学習指導要領を五日制にふさわしく子供たちの発達に即したものに見直すよう教育委員会が文部省に働きかけていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。指導要領を見直してくださいという多くの自治体の要望や教育現場からの強い要望があります。ぜひ要望にこたえてあげてください。
 次に、不登校の問題についてお尋ねいたします。
 この問題は、去る九月の本議会でも論議されました。今回、私もその論議の一端に加わり、私なりの問題を提起させていただき、教育委員会の所信をお伺いするものであります。
 教育委員会の本会議における答弁及び資料によりますと、本県の小中児童生徒の不登校は、一九九三年(平成五年)で七百七十件に及んでいるとされます。全国的に七万五千件に及び、一つの大きな社会問題となってまいりました。文部省は、この問題を専門的に研究する学校不適応対策調査研究協議会を置き、協議会は本年四月に報告書を提出し、相当細かく問題解決のための手法を示しております。
 登校拒否の児童の心の痛みは、本人がなかなか明かさないところから私どもの耳に入りにくいものがありますが、その子を抱えた保護者の苦しみは、人の子の親として我々も推察はできます。一部に既に紹介されたかもわかりませんが、ある母親の手記がありますので、紹介して痛みをともにしたいと思います。
 二年生の十月の後半、朝になるとふとんをかぶって「学校なんて行きたくないよう」「大きらい。学校なんて」と泣き出す始末。いくらなだめても言い聞かせても頑として言うことを聞かない。あげくの果ては、「頭が痛い」「おなかが痛い」と言い出し、起こそうとすると「ゲー」ともどしてしまう。微熱も出て何度医者通いをしたことか。「おかしい。普通でない」という疑問を抱きました。学校へ行くのをいやがる子供をなだめすかし、無理に送っていく日々が続きました。「これからどうしたらいいのか」目の前が暗くなり、揺れ動く心と戦いながら、なんとかしなくてはと思いました。「学校へ行かなくていいよ。無理せんとゆっくり休みな」といってあげなくてはいけないと思いながらも、つい「行くか行かないかは、自分で決めなよ。お母ちゃん、いつでも送って行ってあげるから」と言ってしまうのです。これではいけない、このままだと益々ひどくなる。ある日、「学校休んでもいいよ。今日はお母ちゃんと一緒に遊ぼう」というと、子供の顔に紅がさし、「ほんと!お母ちゃんほんとにいいの」とにこやかな顔で、とても嬉しそうにしました。やっと子供は楽になったのでしょう。そして坂道をころがるように、毎日休み出し、生活もひどく乱れてきました。私は混乱しました。本当にこれでよかったのか?と、手探りの日々が続くのでした。朝遅くまで寝ているせいか、夜は九時を過ぎても目はランラン「遊ぼう。遊ぼう」が始まるのです。お母さんごっこ、ピアノのレッスン、学校ごっこ。子供の夜遊びは三月一杯続きました。店は朝早く、二時間位の睡眠で仕事に出なくてはならないこともありました。先生の訪問にも心を閉ざし、外に一歩も出られない状況が続きました。この間、相談センターの先生には事ある毎に相談にのっていただき、暗く沈んでいた心は先生をお訪ねするたびに満たされたものです。理屈や言葉の上では、分かっているつもりでも、まだまだ弱い母です。
 三年になり、子供が、朝悩みに悩んで「今日は休む」と結果を出した時「うん、いいよ好きにしたら。あなたはいつも自分で決めているんやもんね」その言葉が終わるか終わらない内に、涙があとからあとから溢れ出て、止めることが出来ません。さとられないようにするのがやっとで、トイレにかけこみます。(みんなが出来ることが、どうしてうちの子だけ出来ないのか)悲しくて、悲しくて。(学校へ行こうとしても行けないから辛いんだよね。しっかりしなくては)トイレから出て来た私に、子供は「ごめんよ!お母さん」と、いつも一言言うのです。
──手記は後まだ続きますが、この辺にとどめておきます。
 このような子供たちが今、県下に七百名を超えているわけです。教育委員会はこのような現実にかんがみ、スーパーバイズ方式なる策を取り入れ、苦しむ子供と保護者に対応し、成果を上げてきつつあります。今後のさらなる成果を期待されるところでありますが、しかし、進行している目の前の現実は、現在の教育委員会の努力をはるかに追い越しており、不登校児童生徒の増加グラフは上昇線をたどる一方であります。五十日以上の不登校件数は、一九八四年(昭和五十九年)の二百三十一件が一九九三年(平成五年)には六百十件と、実に二六〇%に増加するに至っています。この現実は、スーパーバイズ方式という基幹的方針とともに多面的に解決の方策を緊急に講じることの必要性を物語っていると言えると思います。
 わらをもすがる思いの保護者は何とか助けてほしいとさまざまな手がかりを求め、相談先を探します。現実を放置できないとして、教職員組合は教員OBをボランティア相談として父母や児童生徒に対応させていますが、今日まであずかった相談件数は面接だけで二千百件、相談回数は一万六千回に及ぶとされています。民間医療機関への相談も相当の数に上るであろうと推察されますが、一回の相談件数が数千円を要したり、不登校の解決を六十万円で請け負うという商売もあらわれたというところもあります。
 さきに紹介した文部省の協議会は実に多岐にわたって対応の仕方を提案しています。スーパーバイズ方式を基幹とされることは私も大いに賛成ですが、目の前の現実にこたえ切れていない以上、対処方法を早急に講じなければならないのではないでしょうか。
 以下、文部省の協議会が示した提案の中から、さしあたりこれだけはという点について、私からも提案させていただきたいと思います。
 現状では対応し切れていない状況にかんがみ、相談業務に乗る教員の養成の規模を今よりも幾倍にも広げ、現在八地区に配置されたカウンセラーをふやし、所定の研修を受けた教員をブロックごと、あるいは大規模校ごとに配置できるようにし、将来的には全校に配置するようにされたい、とりあえずその計画に着手していただきたい、そういうふうに思います。
 二番目、不登校児童生徒を持つ保護者からも要望の強い適応指導教室の設置を考えてはどうでしょうか。大阪では、わずかながら減りを見せました。この施策のせいではないかと推論をされております。
 三番目、日常の担当教員が対応し切れればよいわけですが、なかなかできないところに問題があります。家庭訪問指導も重要だとされておりますが、特に専門的な知識を求められることでもありますから、そのための専門的指導員が必要ではないでしょうか。
 四番目、野外活動などで学校に復帰したという経験は数多く紹介されております。同じく、一日行事とか夜間学級とかも考えられます。父母だけの力でできるところではありません。そのような場を教育委員会の手で設けてはどうでしょうか。
 五番目、不登校をなくすために役に立つことならぜひ実施したいと、教育委員会もいろいろ策をお考えのことだと思います。しかし同時に、予算がないという苦い思いを一方で抱かれているのだと思います。しかし、このような深刻な問題が起きているということを財政当局にもよく理解を求め、しっかりと予算化してほしいと思います。同時に、文部省もいろいろな手だての提案だけでなく積極的に国として予算化を図るよう、県教委としても求めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、和歌山市に建設が予定されておる馬券売り場の問題についてお聞きいたします。過ぐる議会で私はJリーグの賭博化についてただしましたが、今回は競馬です。
 和歌山市で日本中央競馬会の馬券売り場の計画が進んでいるようです。馬券売り場は、競馬場のスポーティーな雰囲気はさらさらなく、文句なしの賭博場です。馬券を発売する自動販売機が何十台と並び、数千の人々が目をぎらつかせて馬券を買うところです。
 私は、過日、大阪は道頓堀の場外馬券場を視察してまいりました。競馬開催日は一日四万人から五万人が来場するというそこは、まさに立錐の余地もないという人の集まりで、その群集の中には未成年かと思われる若い男女も見受けられ、場内放送は三十分ごとに「未成年は入場できません」と繰り返していました。この馬券売り場の数十メートル離れたところにまたボート券売り場が計画されているとかで、道頓堀のあのにぎやかな通りは商店街の名において「ボート券売り場反対」の白いのぼりが何本も風にはためいておりました。商店街の人々は、馬券売り場だけでもうんざりしてしまって、これ以上ややこしいものは来てくれるなというところだとのことでした。京橋にも馬券売り場の計画が持ち上がっておりました。しかし、周辺の町内会、PTA、青少年補導協議会などが反対の意思を表明し、どうやらJRAはほぼ断念したようでした。
 ここに、一通のコピーがございます。大阪府教育委員会が平成三年九月に府下の学校長にあてた通知です。表題は「競馬等ギャンブル及びその他の金銭に絡む問題行動の防止について」とされております。一部を紹介いたします。
 教委指─第六百七十八号とありまして、府立学校の校長あて、教育委員会指導第一課長の名前になっております。「競馬等ギャンブル及びその他の金銭に絡む問題行動の防止について(通知)」として、「今学期に入り、府警本部の公表のとおり場外馬券を購入して補導された高校生が相当数にのぼっていたことは誠に遺憾であります。 このような誤った利殖行為やギャンブルは、最近の社会的風潮から家庭生活、社会生活の中で、生徒がその影響を受けていることは否めないところであります。 しかしながら、健全な市民として将来を担うべく成長段階にある高校生が、正常な金銭感覚や労働意欲を失う危険性のあるこの種の行動に走ることは看過できないことであります。 つきましては、下記事項に留意の上、法律により禁止されている行為についてはもちろんのこと、勤労の意味や消費生活等についても、あらゆる機会に適切な指導を行うよう配慮」されたいということで、通知を出しているわけです。以下、競馬、競輪等は法律で禁止されているという中身をしっかり伝えなさいということが言われております。
 大坂府警本部少年課の資料によりますと、府下三カ所の馬券売り場で平成三年四月から八月三十一日まで、ある種の臨時体制をとって特別補導を行ったところ、少年六百八十五人が補導されましたが、うち四百四十三人が高校生、中学生二十三人、大学生三十四人だったそうです。これらの補導された少年にアンケートをしたところ、馬券購入に当たって未成年を理由に購入を拒否されたかどうかの問いに九〇・六%は何ら注意を受けることがなかったと回答しています。私も視察した馬券売り場の従業員に未成年への対応を尋ねてみましたが、学生服を着ていない限り識別は難しいと言われました。
 補導期間は五カ月間のみで、その期間に補導された少年も氷山の一角だろうと言われています。現在も未成年入場禁止の呼びかけをされている様子から見て、依然として未成年の入場は後を断っていないと推測され、従業員の方々もそれを否定されておりませんでした。経済の活性化にもつながると誘致されたということでしたが、商店街の方々はほとんどが否定的で、活性化するならばボート券売り場には反対しないとのことでした。雇用の問題も、正規の従業員は九名で、新たな雇用は清掃と窓口で三百七十人おられましたが、土曜と日曜の競馬開催日だけのアルバイトでした。人が集まってくるだけで地域活性化とは無縁だと、多くの方々が言っておりました。
 このように見てまいりますと、馬券売り場というのは、中央競馬会とギャンブルファンにとっては都合のよいものかもしれませんが、自治体に金が入るわけでもなく、周辺の風紀が悪くなり、少年の非行の温床ができるだけのものであります。和歌山市では地元自治会で抜き打ち的に突然話が出されて、あっという間に賛成多数にしてしまったようですが、周辺には今申し上げたような不安の声が改めて相当出てまいっております。ついては、青少年の健全な発達を日々指導される立場にある教育長に、ギャンブル一般の評価とこのような施設のできることに反対の意を表明されることを求め、その所信をお伺いするものであります。
 以上で、第一問を終わります。
○議長(平越孝哉君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
 行政改革についてでございますが、国から上意を受けただけではなしに住民の視点でやっていくべきじゃないか、知事の所見をということでございます。
 私は従来から、本県の行政改革には自主的、主体的に取り組んでございまして、国から与えられた行政改革推進の指針は、これからの行政改革を行う総点検のための参考資料だというふうに考えてございます。お話ございましたように、行財政運営をより効率的、効果的に行うことによって県勢の活性化を図り、そしてまた県民の福祉の向上という点を最重点に図ってまいりたいと思っておるところでございます。
 また、行政改革の推進機構に住民代表を入れよとの問題でございますが、本県においては、私は着任以来、行政改革に取り組んでまいり、また見直してまいりました。機構の改革を行うとともに、人員の削減についても協力をいただきながら進めてまいった現状でございます。しかし最近、高齢化、国際化、情報化の進展等により住民ニーズの多様化が進んでまいりまして、こうした面から住民のニーズに合った行政のあり方ということを見直す時期に立ち至っているのではないかと思っておるところでございます。
 今後一年間を目途に、新行政改革の大綱を策定してまいりたいと思っております。策定に当たっては、住民の代表者等から構成される審議会を設置し、住民のご意見を伺いながら、住民の福祉向上に資する、簡素で効率的な行政を推進してまいりたいと考えております。
 以上です。
○議長(平越孝哉君) 総務部長木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 予算要求基準についてのご質問でございますが、人件費や公債費、扶助費といった義務的経費や社会資本整備のための公共事業等については、シーリング対象になじまない経費ということで扱っておりますが、これらを除く経常的な事業については、基準内事業として原則として前年比九〇%以内で要求するよう求めているところでございます。
 ご質問の福祉関係予算でございますが、その大部分を占めている扶助費についてはシーリングの対象外となっており、またその他の福祉、商工、教育関係事業についても県勢活性化のための新規事業や県民生活環境重点整備事業については基準外として要求を認めているところでございます。
 いずれにしても、本格的な高齢化社会が進展する中で、今後とも温かみのある健康福祉社会の実現を目指し、めり張りのきいた予算編成に努めてまいる次第でございます。
 また、各部署への職員の配置でございますけれども、これについては毎年各所属のヒアリングを行っており、適正な配置に努めているところでございます。住民サービスに直結する部署を初め、多様な行政需要に対応するため、今後とも適正配置に努めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題三点についてお答えいたします。
 現行の学習指導要領は、学校週五日制の導入をも視野に入れて、基礎基本の重視、教育内容の精選、幼・小・中・高の一貫性、系統性などを重視し、各学校の実情に応じた教育課程を弾力的に編成することが可能となってございます。
 週五日制の月二回実施については、幼・小・中・高等学校及び特殊教育諸学校において調査研究協力校を指定し、児童生徒の学習負担にも配慮しながら授業においてさまざな創意工夫を行い、一定の成果を上げてきております。学校行事についても、安易な削減を避け、児童生徒の自主的な活動を促す取り組みがなされております。こうしたことから、学校週五日制の月二回実施については現行の学習指導要領で対応できるものと受けとめてございます。今後、三回以上の導入に当たっては、月二回の実施状況や各自治体の決議、県民の意見等を十分考慮しながら、学習指導要領の見直しについて都道府県教育長協議会等を通じ要望してまいります。
 次に登校拒否問題についてでございますが、本県においても全国と同様、増加の傾向にあり、学校教育における重大な課題であると受けとめてございます。このため、本県においては研修センターに二名の教育相談主事を配置し、教員や保護者などに対して専門的な立場から指導助言を行ういわゆるスーパーバイズ方式による教育相談を行ってきております。平成五年度からはさらに県内八地方に教育相談員を一名ずつ配置し、教育相談活動の一層の充実に努めており、この一年間で約四百件を超える相談を受けております。
 また、こうした状況を踏まえ、学校における登校拒否の予防的対応や早期発見、即時対応が重要であるという観点から、教育相談合宿研修会や学校カウンセリング指導者養成講座などを実施し、すべての教職員の資質の向上を図るとともに、専門的にカウンセリングを行うことのできる高い技量を持つ教員の養成に努めております。特に、養護教諭に対してもカウンセリングに係る研修を実施し、保健室登校など教室に入れない子供への対応を進めてきております。
 今後、これまでの事業の一層の充実に努めるとともに、ご提案の趣旨を踏まえ、現在課題となっているいじめ問題をも含めた課題解決に向けて、より効果を高める方策について庁内にプロジェクトチームを組織し検討してまいりたいと考えます。
 次に、場外馬券売り場の件についてでございます。
 競馬そのものはイギリスにおいて古い伝統を持ち、人馬一体となってスピードを競うスポーツでありますが、一般的に申し上げて、ギャンブルは射幸心をあおるものであり、発達段階にある児童生徒の健全育成にとって決して望ましいものとは言えません。場外馬券売り場の設置計画については、競馬法施行規則に基づく設置の基準が定められているところであり、関係機関によって適切に審査されているものと認識しております。教育委員会としては、青少年の健全育成と好ましい教育環境の維持に向けて関係機関の理解などを求めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 25番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、再質問は要望とさせていただきますが。
 行政改革の問題について、知事が自主的、主体的にやっていくということについては、ぜひそういう立場で望んでいただきたいと思いますが、私は必ずしも地方の主体性が貫き切れたとは考えていないわけです。標準行政なるものが提示されて、それを超えればいろいろとペナルティーを科して、その水準に従うようにという強力な指導というか介入が現実に行われてきたわけです。だから、そういうものをいかに乗り越えていくのか、その点をひとつ十分考えていただいて、重ねての要望になりますが、住民の視点というものを本当に根底に置いて、そして地方自治体の主体性をどう生かすかというあたりからこの問題に対応していただきたいということを要望しておきたいと思います。
 予算編成の問題については、関係部局が大変ご苦労されておられるとは思います。厳しい事情というのは私どももよくわかるわけですが、ただ一〇%カットとか、あるいはとにかく抑制、抑制というかけ声ばかりが大きくなって、本当に職員が創意を持って県民の願いをどう生かしていくかといった意欲的な面が引き出されない、生かされないような状態になっては大変だと思います。金がなくてできないということも確かに現実の問題としてはあるわけですけれども、県民の要求をどうして生かしていくのかという、そこのあたりの議論が大いにできるように──もう職員の皆さんが、とにかく予算がないからだめなんだと萎縮してしまって創意を発揮できないというような状態はつくらないでいただきたい。そういう中で、本当に県民の願いを生かすべく、基準内事業と定められたものを大いに幅広く政策の中で展開していただくことを求めたいと思います。
 大体、基準内・外と区別するあたりから、やはり問題があるわけですから、そういう点は十分考え直していただきたいと思います。その点、要望をしておきます。
 不登校問題について、教育長がご苦労されておることにはかねがね敬意を表しているところであります。スーパーバイズ方式というのも、問題解決する力の底上げを図るという点では非常に重要な仕事であろうかと思います。大いに頑張っていただきたいと思いますが、実際、その問題が教育委員会の努力を上回って起こってきつつあるこの現実。そして、これに対応すべく今やられている仕事のテンポと規模。このテンポを速め、規模を広げることが必要ではないか、それがないとなかなか対応できないのではないかと思います。
 また、不登校の子供を持つ保護者の方々から、私が先ほど申し上げた課題のほかにも、こんなことをやっていただきたい、あんなことをやっていただきたいと、たくさんのご要望が出ていると思います。そういうことも確かに一つずつ効果があるということで実証をされていることです。教育委員会の皆さん方は、父母の努力だけではできない事柄については、教育行政としてそういう面にもぜひとも援助の手を差し伸べてやっていただきたい。いじめの問題も深刻な問題です。そういう問題もこの不登校の背景の一部にも確かにあるわけですから、そういう点、ぜひお考えいただきたいと思います。
 プロジェクトチームをつくってこれからの対策を考えていきたいとおっしゃられました。ぜひ実りあるものにしていただきたいとお願いをいたします。不況になりますと、不況対策の特別予算が組まれるんです。不登校の問題も、今まさに教育の問題の中で特別に対策をしなければならない問題として提起されてきたわけですから、それにふさわしい特別予算が組めるように、ひとつご努力を願いたいと思います。
 学習指導要領の見直しの問題については、教育長は再三同じような答弁をされておりますのであえて再質問いたしませんが、現実にはいいことばかりが起こっているわけじゃないんです。確かに、五日制と指導要領の改編がほとんど同時に進行しておりまして、五日制の実施は肯定的な面が主要な面だということについては私もいささかも異論はないわけですが、そこに新たに出てきている問題をどう解決していくかという視点をぜひ持っていただいて、何もかもよかったということで済まされないで、ぜひとも現場の先生方から出されている問題によく耳を傾けていただきたい。教育長の所信がいかんであれ、そういう現場の声がこのように多く出ているということについて、指導要領の改定の問題については文部省に率直に上げていただきたいということを要望いたしまして、終わります。
○議長(平越孝哉君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(平越孝哉君) この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十九分休憩
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