平成6年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(森本明雄議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時四分開議
○議長(平越孝哉君) これより本日の会議を開きます。
○議長(平越孝哉君) この際、報告いたします。
 お手元に配布のとおり、監査委員から監査結果の報告及び現金出納検査結果の報告がありましたので、報告いたします。
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○議長(平越孝哉君) 日程第一、議案第八十九号から議案第百十六号まで、並びに知事専決処分報告報第七号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 46番森本明雄君。
  〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 では、順次、質問を進めてまいります。
 PL法が来年七月から施行されます。現行の民法では、製品からの被害を受けた場合、消費者はメーカー側の過失を証明しないと損害賠償を受けられませんでした。PL法施行後は、製品に欠陥があったことを証明すればメーカーの責任を問えることになります。PL法は国の法律ではありますが、消費者保護の立場では県民、また製造物責任の対象となる製造物とは「製造または加工された動産」とされており、加工の農林畜水産物、企業で製造される消費生活用品、国、日赤、県が一体となってこれまで進めてきている輸血用血液製剤など、さらに消費生活センター、工業技術センター、衛生公害研究センター、農業試験場等の各種試験研究機関や保健所等は原因究明体制、消費生活センターは紛争処理体制で県行政と深いかかわりがあります。
 そして、産業界は当然のことではありますが、より安全な製品の供給、消費者においては製品の正しい選択と使用、行政はそれに対応する的確な役割を果たすことが必要となってまいります。制度内容の周知徹底、あるいは下請対策を含む中小企業対策、消費者教育・啓発、裁判外紛争処理、事故原因究明体制などの整備、情報の提供等々が行政サイドの役割だと思います。こういう認識に立って、生産者、消費者と相まってPL法の趣旨を生かせるような取り組みが行政の責務だと思いますが、以下、質問を進めてまいります。
 まず最初に、世界に冠たる経済大国日本、それはまた大量生産、大量消費の現代社会でもあるわけでありますが、消費者に提供される製品の高度化、複雑化の中でいかに消費者を保護するかということは大変大事なことであります。
 アメリカでは、一九六〇年代から判例の展開によって欠陥を要件とする製造物責任が一般化してきています。そのアメリカにおいて、一時期、訴訟件数が急増し、製造物責任危機と呼ばれる弊害が生じたと聞いています。その原因は、弁護士の数が多い、弁護士の成功報酬制度、懲罰的損害賠償制度、陪審員制度等、我が国とは異なるアメリカ固有の司法制度によるものであるということが指摘されていますが、乱訴社会になるおそれが我が国でもあるのではないかと懸念する声もあります。
 我が国と司法制度が比較的類似しているヨーロッパ諸国においては、製造物責任制度の導入の後に弊害が生じたということは聞いていません。したがって、行政による正しい消費者教育・啓発を徹底すれば、消費者の中で訴訟を起こす風潮が強まって訴訟が多発し乱訴社会に傾斜する可能性はないと思うのでありますが、見解をお伺いいたします。
 二番目に、原因究明機関の具体的なあり方と整備についてであります。
 考えられるのは、一つには通商産業検査所が通産省関係にあります。これら経験とノウハウのある公的機関による原因究明体制の活用。二つには、原因究明に関する専門的な知識、知見、ノウハウを持っている既存の民間検査機関の活用。例えば、日本品質保証機構、日本電気用品試験所、日本文化用品安全試験所等。三つには、原因究明能力を有する民間の検査機関、大学の研究室などの機関に関する情報の提供、これらの機関を紹介しあっせんするネットワーク体制の整備。四つ目には、消費者が身近で安心して利用できる、特に県内での原因究明機関として消費生活センターの役割が期待されているのであります。しかし、人の面の質と量、また商品テスト、分析テスト等の機器等、極めて不十分な体制であると思います。すなわち県の消費生活センターは消費生活、消費者の生活の場に近いところで原因究明を行っており、消費者にとっては利便性の高い機関だと思いますが、体制が十分とは言えない状況にあります。
 今後、第一に商品テストのための設備、機器の整備、第二に原因究明のための商品テスト実施体制の強化、第三に商品テスト情報の収集・提供システムの構築、第四に市町村の消費者相談室などからの相談処理体制の強化、以上のような原因究明体制の整備を図るべきだと思います。今後の取り組みについてお伺いいたします。
 三番目には、紛争処理体制の整備についてであります。特に、相対交渉で解決できなかった問題を処理するといった対処のあり方であります。
 先ほど触れましたように、人の質、量の問題で非常に厳しい状況にある消費生活センターにおいて、消費生活相談員により消費者苦情の処理が行われています。その内容は近年、複雑化、高度化してきており、相談業務に携わる相談員にも高度な知識と能力が求められております。また、消費生活相談員の雇用形態は大半が非常勤の職員等で占められています。この消費生活センターの相談体制の強化という観点から、さらに今後紛争処理能力を向上させるために、相談員の待遇改善、相談能力向上のためのさまざまな研修等の積極的な取り組みが必要だと思います。真に消費者被害を救済していくためには、裁判になじまない比較的少額な被害等に係る紛争について、簡易、迅速に解決していくことも重要であり、裁判外の紛争処理機関の整備充実を図ることが大事だと思います。これはまた製造者等にとっても、製造責任制度の導入による紛争解決コストの増大を緩和するために役立つものだと思います。消費生活センターの相談体制の強化をどのようにされるのか、お伺いいたします。
 裁判外紛争処理体制の整備については、民間型製品分野別紛争処理機関も考えられますが、この場合、技術的、専門的知識を備えた人材の確保を含め、関連業界の有する技術的な知見、ノウハウの蓄積を活用できるという長所がある反面、公平性、中立性の確保に問題があると思います。消費生活センターレベルの紛争処理は、相談、苦情処理というまだ相対交渉を補助する段階でありますが、これで解決できなかった問題を処理できる体制の充実が必要であります。特に、裁判外の紛争処理体制という観点から、安心して公平、中立の立場で身近に利用できる、さらに裁判に準じた能力を持った組織は、条例により設置されている苦情処理委員会の活用が考えられます。
 問題点としては、製品関連技術など専門的事項に対応し得る人材や紛争処理事例等の蓄積が十分でないことであります。しかし、地方における紛争処理機関としての役割は大変期待されているところだと思います。このため、必要に応じて製品関連技術専門家等の派遣を国に要望するなど、苦情処理委員会を強化し、消費者が身近に利用できる紛争処理機関として一層の活用ができるよう充実していくべきだと思いますが、お伺いいたします。
 今、産業界はPL制度への対応に動いています。しかし、先行しているのは大企業や中堅企業で、事業所の大半を占める中小企業は、不安は大きいものの具体的な備えを進めるまでには至っていないようであります。とにかく、これまで日本ではなじみのなかった制度であり、その影響は実施されてみないとわからないというのが実情だと思います。大企業が欧米でPLの洗礼を既に受けているのに対し、多くの中小企業にとっては初めて直面する問題でもあります。中小企業の場合には大企業に比べて、資金的な意味でも、あるいは技術的な意味でも、人的な意味でも、不利性が残念ながらあるわけであります。できるだけこういった中小企業に円滑に対応してもらうというのが、何よりも必要なことだと思います。
 では、中小企業はPL対策にどのように取り組めばよいのだろうか。まず第一には、PL法で定められた制度の内容を十分知ることであります。多くの中小企業は、自分たちが扱っている製品がPLの対象になるのかどうかに関心があるようでありますが、ほとんど対象になると考えてよいと思います。例外は、未加工の農林水産物、不動産、電気であります。しかし、農林水産物の未加工についてもグレーゾーンが多いようであります。流通業者でも「発売元」と表示すれば責任を持たねばならない場合も出てまいります。したがって、これまで製品事故と無縁だった業界でも対策を怠るべきでないと思うのであります。
 次に、PL法の正しい理解を前提に具体的体制でありますが、第一には事故を起こさない未然防止策であります。品質管理や研究開発体制を強化し、設計や製造段階で製品の安全性を高めなくてはなりません。ただ、人員に余裕がなく、技術力に大企業と格差のある企業が多い中小企業がどこまでできるのか、難しい問題があります。
 では、事故が起きたときの対策はどうでしょうか。裁判で損害賠償を求められる場合などに備えて、支払い能力を確保するためPL保険への加入は当然のことと言えます。もちろん、生産者あるいは製造業者が損害賠償責任に備えてどう対応するかは基本的には各事業者の経営判断にゆだねられるべきものでありますが、既存の諸制度が一層活用されるよう制度の周知徹底、適切な運用、情報の提供に行政は努める必要があると思います。また、製品の品質管理強化、安全性向上に資する設備投資、事故が発生した際の損害賠償の確保については融資等の優遇支援策が必要だと思うのであります。制度内容の周知徹底、事故を起こさない未然防止策、金融制度等の中小企業対策をどうされるのか、お伺いいたします。
 次に、行政手続問題についてであります。
 行政手続法が今年十月一日より施行されました。この法律は、国民と行政の関係に新たな時代を画す非常に重大な法律だと思います。公権力が行使される際には適正な手続によらねばなりません。これは歴史が示すところの真実でもあります。近代国家の成立以来、国民の権利保護の歴史は、この適正な手続を定め、法典化し、法律によって保障することにありました。
 我が国におきましても、公権力の行使のうち、刑事手続については憲法に規定される法廷手続の保障及び刑事訴訟法により手続が統一的に定められています。他方、行政手続については一般法はなく、個別の法律にゆだねられてきました。そのため、不備、不統一の状態にありました。手続が定められている分野がある一方で全く規定の置かれていない分野も存在するといったように、行政の対応がばらばらであり、また、それぞれの法律に手続に関する規定が置かれていたとしても、それに従った手続によらず、行政指導という手法を多用し、より一層行政の作用をわかりにくくしているという側面もあります。
 もとより、こうした統一的な行政手続法を制定しようとする動きは古くからありました。ここに長年の懸案であった行政手続法が制定施行されましたことは、意義深いものがあります。
 この法律の対象としては、申請に対する処分、不利益処分、行政指導の三つを三本の柱として取り上げています。前の二つの処分を取り上げることは問題ないと思いますが、行政指導を取り上げたことは従来の法律の常識では考えられないことであります。しかし、あえてそれを承知の上で取り上げたことは、行政手続法として行政指導に触れないのでは意味はないということが審議会における認識であったのだと思います。ただ、これによって行政指導を認知し、かえって行政指導が乱用される危険があるのではないかという考えもあります。しかし、行政指導は、法の上においても、最高裁判例の上においても、また現実の行政運営においても、あるいは学説の上においても、既に認知されていると思うのであります。したがって、放任しておくよりは行政指導について適正なルールを定めて行政指導が正しく行われるような方向に持っていく方がはるかにプラスであると思います。
 さて、地方公共団体の機関の行う行政手続と行政手続法との関係につきましては、部分適用となりました。行政手続の整備の目標である行政の公正と透明性の確保の必要は、国、地方を通じて十分妥当するところだと思います。一方、地方自治の尊重の観点から、地方団体において地域の実情に即し、そして総合的な行政運営を確保することができるようにするということもまた大切なことだと思います。しかし、法律の趣旨に従って地方団体において適切な措置をとることを期待されています。地方自治体がこのような措置を怠っておれば、当然、住民の批判を招くと思います。また、そのような措置をしないままに行われた行政手続については、裁判の事件になれば当然問題になってくると思うのであります。これは、努力義務の規定と同様、単なる訓示規定というふうに安易に考えるべきものではないと思います。しかも、最も住民に密接な行政をやっている地方自治体としては、むしろ国以上に早くやるべきであったと思うのであります。
 では、どういう形になるのかという場合に、この法律が一種のナショナルミニマムなんだからそのまま条例化するのが趣旨であるとか、あるいは下回る条例をつくると違法だとか、こうした議論を聞くこともありますが、そうではないと思います。法律は国のスタンダードをつくったものだと思いますので、地方の実情に応じて、地方の知恵を出し合って公正、透明な手続を考えていけばよいと思います。
 以上、意見を申し上げましたが、以下、質問をいたします。
 まず、行政手続法が施行されたことに対する知事の所見、及び法施行後の県行政の運営のあり方についてお伺いいたします。
 二番目に、この法律と地方自治体との関係については、国の機関委任事務については適用されます。ただし、条例に基づく処分、公共団体独自の立場における行政指導等については地方自治体で取り決めをすることになっています。現在、地方自治体の事務の中で機関委任事務の占める割合は非常に高いと思います。そして、これらの相当な部分は法律等に基づく業務運営が必要だと思います。法律成立後、施行の段階まで約一年間ありました。その間にこの法律の運用の細目については各部局で十分検討され、部内に徹底を図られているものと思いますが、審査基準、標準処理期間、不利益処分の基準などの設定、公表について準備ができているのかどうか、内容とあわせてお伺いをいたします。
 三番目に、県民の理解を求めていくため、広報その他の機会を通じて行政が新しいルールのもとで行われるということを十分理解いただき、認識を深めていただく、新しい時代における行政手続運営がまさに県民の側に公正、透明という姿を明らかにしていくためのプロセスとしてさまざまな広報努力が必要と思いますが、対応についてお伺いをいたします。
 四番目に、条例に基づく処分、行政指導については、この法律は適用しません。他方で、地方自治体にもぜひこの趣旨の公正、透明を図ってもらいたいというのが立法の際の方針でもあったと思います。また、行政運営における公正の確保と透明性の向上の要請は、その権力が国の権力であると地方自治体の権力であるとを問わず、公権力一般に妥当するところであります。
 今、自治体間で行政手続条例の制定を目指す動きが出てまいりました。例えば都道府県では東京都、神奈川県など、政令指定都市では仙台市が来年度の早い時期に条例の施行を目指しています。一方県内では、和歌山市が和歌山市行政手続条例案を九月議会に提案しています。県当局も、ルールを定め、さらに行政運営の公正の確保と透明性の向上を図るため、行政手続条例の制定を目指すべきだと思いますが、条例制定への見解、制定の時期、考えられる条例の骨子についてお伺いをいたします。
 最後に、水利権問題に関連して質問をいたします。
 この質問原稿を書き上げた翌日、議員団控室で当局担当者と打ち合わせの折、きょうの日経新聞に関連記事が出ていますよと言われ新聞を見ますと、既存水利権に対する私の見解とほぼ同趣旨の記事が掲載されており、意を強くした次第でございます。
 今夏の渇水問題につきましては、全国的には生活用水における影響人口は一千万人を超えました。中には十八時間断水、あるいは連続四十三時間断水という事態も起こりました。工業用水では、企業は海外から輸入するといった全く新しい事態も起きました。農業用水につきましても、稲の立ち枯れの問題、水争いでけが人が出る、あるいは水泥棒が横行するという地域も出ました。
 一方、県内でも、紀の川新六箇井堰地点での水位低下による河西工業地域四〇%カット、戦後初めての県渇水対策本部の設置、また河東工業用水の給水不能による影響でほとんどの事業所が操業休止に入った河東工業地域、さらにはこの事態を改善するため農業用水関係も四〇%カット、二十四時間断水した下津町一部地区、その他、農作物の被害総額約七十二億円など、渇水、干ばつによる深刻な事態を経験したのであります。
 こういった渇水問題に対しまして、国ではそれぞれの省庁、また他府県の各自治体でも渇水対策本部を設置いたしましたが、取水カットをどうする、給水をどのぐらい制限するかといった、いわゆる制限をするための伝達機関で、水の広域的な融通、有効利用などの話は余り聞きませんでした。渇水対策というのは、水をもっと有効に利用することに知恵を絞ろう、そういうことだと思うのであります。
 幸い本県では、国の関係機関や奈良県との広域的な利水調整、県内にあっては和歌山市、橋本市、県当局、さらには農業団体などの利水者間の利水調整を図り、渇水による県民への影響を最小限に食いとめました。当局を初め、関係団体のご努力、ご協力に感謝を申し上げます。
 さて、本論に入ってまいります。今、毎秒一トンの水を開発するのにダムをつくります。場所、時期にもよりますが、百億円から三百億円、もっとかかるかもしれません。そして、開発した水につきましては、通常生活用水、工業用水は十年に一回の見直しをいたします。その許可水利権の更新につきましては、単なる更新であっても二カ年程度の期間と多大な費用を要するということであります。そして、河川管理そのものの内容としては締めつけばかりが厳しく、河川管理能力を住民の生活のために十分に生かして河川水の弾力的な有効利用を図るべきなのに、そうしたことは余りないように思うのであります。
 そこで、水の利用、流水の占用でありますが、一定のルールに基づいて厳格に運用されているものと思います。それは、水利権だと思うのであります。その水利権の基本認識でありますが、水利権なしで取水できるのかという問題であります。河川の流水というものは、有限な公共の資源として人々の日常生活や産業活動にとって不可欠なものであります。したがって、その使用につきましては、水利使用の許可、すなわち水利権が必要であります。そして、その許可を通じて公共の福祉が増進されるよう努めなくてはならないと思います。
 例えば農業用水ですと、農水省や関係機関で厳格な審査を行うものと思います。したがって、一たん許可が与えられると水利権として保護されるものであります。そうしたことから、水利権とは継続的、排他的に使用するものと説明する学者もあります。そういったことを考えますと、許可後も水利使用が適正に行われているのかどうか、遊休化しているかどうか、十分審査をして水利行政を実施してもらわなくてはならないと思うのであります。
 国土庁が出している「日本の水資源」によりますと、日本の河川の水は地下水を含めると年間約九百億トン、地下水を除くと約七百八十億トンが利用され、うち百三十億トンが上水、工水が百億トン、農業用水が五百五十億トンで約七〇%を占めています。一方、県内紀の川水系では、水利権量、暫定を含めて総量毎秒四十八・一六六トン、うち上水が二・九七五トンで六・一八%、工水が六・四二一トンで一三・三三%、農水が三十八・七七トンで八〇・四九%となっています。
 水の利用は、全部水利権の行政でカバーされています。その水利権の種類に許可水利権と慣行水利権があります。農業用水では許可水利権が全国の一級河川、二級河川合わせて約一万八千件、最大取水量の合計が毎秒約六千七百トン、昔から慣行的に取水している慣行水利権が一級河川、二級河川合わせて約十二万件の届けがあり、うち最大取水量を記載しているのが約四万一千件、そして最大取水量の合計が毎秒約四千九百トンとなっています。
 一方、県内では、許可水利権が一級河川、二級河川合わせて五十八件、最大取水量の合計が毎秒五十四・一三四〇一トン、慣行水利権が一級河川、二級河川合わせて二千七百十二件の届けがあり、うち最大取水量を記載しているのはゼロ件、したがって最大取水量の合計が不明であります。うち、紀の川水系は許可水利権九件、最大取水量が四十二・一九三トン、慣行水利権は七百二十件で最大取水量は不明であります。
 このように、許可水利権の件数、慣行水利権の件数につきましては明確でありますが、慣行水利権の量が全くわかっていないのが実態であります。
 慣行水利権について少しまとめますと、一つは、内容が不明確であり、取水の限度が量として明示されていない。二つには、見直しの機会がない。三つには、取水の実績の記録が残っていない。このことは、許可水利権による取水でも記録をとり出したのはごく最近で、まだ記録をとっていないところもあるようでございます。これが農水の慣行水利権の取水実態でございます。私は、こういう意味で慣行水利権についてはもう少し透明性が必要だと思うのであります。
 さて、津風呂、大迫、猿谷の三ダムの完成以降、昭和三十五年時点での紀の川流域市町村すなわち和歌山市、橋本市、那賀郡、伊都郡における水田面積は合計して一万一千九百七十ヘクタール、平成四年では六千百六ヘクタール、五一%とほぼ半減しているのであります。農水につきましては、施設農業の増加、農業の機械化等により面積当たりの必要水量の増加は理解できるのでありますが、こうした水利権は一部不要になりましても、また未使用になった場合でもそのままだと思います。それが前提になって河川管理がされ、そしてダムの計画等はその上に積み重ねています。長年の間に水供給の事情の変化、需要の事情の変化があり、そのことを考えるとき、水利行政のあり方に若干矛盾を感じるのであります。この問題、限られた資源を有効に活用するということの重要性が今後もっともっと大きくなってくると思うのであります。
 そうしたことを前提に、国、市町村、水利権者の協力を得て、農水、工水などの許可水利権の利用実態調査、慣行水利権の透明性アップ、また緊急時における容易な利水調整方法の確立、さらには農水、工水等既存用水の合理的転用などの水利用の合理化を図るための施策を進めるなど、新しい時代の河川管理のあり方を踏まえた対応が必要だと思うのでありますが、見解と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 以上で、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(平越孝哉君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森本議員にお答え申し上げます。
 行政手続法についての所見ということでございます。
 お話ございましたように、この法は昨年の十一月に公布され、この十月一日から施行されるものでございます。行政運営の公正の確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に資するものでございまして、行政運営上、住民と直結するために非常に意義の深い法律だと思ってございます。
 本県においても、許認可等の処理の迅速化を図るため、平成元年に許認可事務の標準処理要綱を、また昨年には情報公開条例を制定したわけでございまして、県独自の行政の透明化を図ってまいっているところでございます。
 現在、行政手続法ができたわけでございます。今後この適正な運用を図ってまいるために進めていかなければならないし、またご指摘の行政手続条例を制定して一層の行政運営の透明化を推進してまいりたいと思っておるところでございます。
 他の問題は部長から答弁申し上げます。
○議長(平越孝哉君) 企画部長宮市武彦君。
  〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 森本議員にお答えいたします。
 PL法について、一、乱訴社会に傾斜する可能性についての見解、二、原因究明機関の整備、三、裁判外の紛争処理体制の整備という三点についてお答えをいたします。
 欠陥製品による消費者被害の救済を目的とする製造物責任法が本年六月に成立し、来年七月から施行されることになってございまして、消費者保護に向けての大きな前進であると考えてございます。本法の趣旨を生かし、消費者被害の防止と救済を図るため、また乱訴社会に陥らないためにも、情報提供を通じて啓発・教育を行い、自立した消費者を育成することが最良の手だてでございますので、今後もマスコミを通じての広報活動やリーフレットの作成配布、また教育委員会との連携のもと、消費者教育に一層努めてまいる所存でございます。
 原因究明機関の整備についてでございますが、消費生活センターの検査機能の強化を図るため、従来より検査機器の整備に努めているところでございますが、本法の制定に伴い、今回の補正予算において新たに原因究明機器の設置をお願いしているところでございます。また、今年度は国民生活センターのコンピューターの端末機を増設し、商品テストの情報収集・提供と市町村からの相談に対する処理体制の強化に努めてまいります。
 なお、消費生活センターで対応できない検査については、国民生活センターや通商産業省などの検査機関を活用するとともに、適切な検査機関を紹介する体制が整備されておりますので、今後とも緊密な連携をとってまいる所存でございます。
 裁判外の紛争処理体制の整備についてでございますが、苦情処理の最前線で活躍している消費生活センターの相談員については、各種研修を受け、通商産業大臣認定の消費生活アドバイザーの資格を初め、消費生活専門相談員等の資格も取得しておりますが、今後とも一層積極的に研修に取り組み、相談能力の向上に努めてまいりたいと考えてございます。
 また、消費生活センターで解決できない案件については、消費者保護条例に基づき設置している消費者苦情処理委員会であっせんや調停を行うことになりますが、必要に応じて国の専門家の派遣制度なども有効に活用しつつ、本委員会の充実に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 商工労働部長中山次郎君。
  〔中山次郎君、登壇〕
○商工労働部長(中山次郎君) 製造物責任法いわゆるPL法についての中小企業者への制度の周知徹底、安全性の向上、融資制度の拡充の三点についてお答え申し上げます。
 まず中小企業者に対する制度内容の周知徹底については、既に財団法人和歌山テクノ振興財団主催によりPL法セミナーを本年七月十九日に和歌山市で、八月二十六日に田辺市で開催し、百九十名の中小企業者の参加をいただいております。また、新規に中小企業品質向上対策普及啓発事業に取り組み、商工会議所等が行う講習会に対して助成するとともに、一方では経営指導員に対しても研修会を開催するなどし、中小企業者に対し周知徹底を図っているところでございます。
 PL法の制度内容については、今後も法施行までの期間を利用し、関係機関の協力を得ながら下請関連企業を初め中小企業に対し、あらゆる機会、方法を講じてさらに幅広くきめ細やかに周知徹底を図るとともに、業界におけるPL法への取り組み状況等、情報の提供を行ってまいりたいと存じます。
 次に、安全性の向上については、県工業技術センター等において製品安全対策などの技術指導、巡回指導に取り組んでいるところでございますが、今後、法施行を機に一層指導内容等を充実し、積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 また、融資制度の拡充については、PL法施行に伴い中小企業者の皆さんがより一層の品質管理等に取り組むための設備投資を行うときには、県の制度融資を活用していただき、その融資枠の確保に努力してまいりたいと考えてございます。今後とも、国、他府県の動向についても十分見守ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 総務部長木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 行政手続法についてのご質問でございます。
 行政手続法がこの十月一日から施行されたことに伴い、地方公共団体においては法令を根拠とする処分について、審査基準、標準処理期間、処分基準を設定し公表することとなりました。本県が行っている処分でこの行政手続法の適用がある申請に対する処分は約千五百件、不利益処分は約千三百件ございまして、昨年十一月に法が公布されて以来、関係各課において審査基準の設定等、所要の準備を進めてきたところでございますけれども、法律が施行されたこの十月一日からは、各申請窓口において審査基準の名称、標準処理期間等を記載した統一様式を備えつけ、申請者の閲覧に供しているところでございます。
 それから、行政手続法の周知でございますけれども、国の方では新聞、週刊誌等を使った政府広報が既に行われているところでございまして、本県においても本庁、各県事務所、各市町村に周知用のポスターを掲示するとともに、窓口において申請者に対し制度の周知を図ってきているところでございます。
 次に、この行政手続法の適用が除外されている県の条例、規則に根拠を有する処分及び行政指導については、地方において必要な措置を講ずるよう努めることとされております。本県においても、平成七年度中に条例制定をすることをめどに、現在、鋭意作業を進めているところでございます。
 この条例の内容でございますけれども、行政手続法の三つの柱、つまり申請に対する処分、不利益処分、行政指導についての手続規定を中心とした条例となってくると考えられますけれども、他府県の規定内容等も参考としつつ、行政運営の透明化に資するものにしたいと考えている次第でございます。
○議長(平越孝哉君) 土木部長山根一男君。
  〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 水利権に関してのご質問にお答えいたします。
 近年における水需要の逼迫化に対処するため、ダムなどの積極的な整備を図るとともに、水資源は有限であるという基本的認識のもとに、水利用の合理化、適正化を推進していくことは重要であると考えてございます。
 許可水利権の使用実態調査については、他部局にまたがる問題でもございますので、国並びに関係部局の協力を得ながら進めてまいりたいと考えております。
 慣行水利権の透明性に関しては、議員ご指摘のとおり、その権利内容が必ずしも明確でなく、国からの許可水利権への切りかえの指導もあり、取水施設の改築等、機会あるごとに切りかえを行っておるところでございます。既存用水の合理的転用など、水利用の合理化については使用実態調査などを踏まえながら、関係部局、関係団体等と協議検討してまいりたいと考えてございます。今後とも、水利用の適正化に努めてまいりたいと思っております。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 農林水産部長野見典展君。
  〔野見典展君、登壇〕
○農林水産部長(野見典展君) 森本議員にお答えをいたします。
 慣行水利権での水使用については、歴史的な経過を経て形成されたもので多種多様な形態となっていることから、議員ご指摘のとおり、取水量等について十分把握できていないのが実態でございます。こうしたことから、現在、市町村の協力を得ながら、おおむね受益面積一ヘクタール以上の取水施設について調査中でございまして、近々水需要実態が把握できるものと思ってございます。
 次に農業用水の有効活用についてでございますが、土地利用、営農形態の変化により利用水量は変化しておりますが、農業用水の取水形態の問題から末端までの全面改修を行う必要があり、今後の課題として検討してまいりたいと考えてございます。
 なお、特に社会状況の変化が著しい紀の川水系については、現在、農林水産省において農業用水の有効利用を図る観点から用水の利用と施設の実態についての調査を実施中でございまして、調査の進捗状況を見ながら関係部局、関係団体との協議検討を進めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(平越孝哉君) 以上で、森本明雄君の質問が終了いたしました。

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