平成6年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


県議会の活動

議 事 日 程 第三号 平成六年十月五日(水曜日)
    午前十時開議
  第一 議案第八十九号から議案第百十六号まで、及び報第七号(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
 一 議案第八十九号から議案第百十六号まで、及び報第七号(質疑)
 二 一般質問
出 席 議 員(四十二人)
 1  番  小  川 武
 2  番  吉  井  和  視
 3  番  井  出  益  弘
 4  番  和  田  正  一
 5  番  町  田 亘
 6  番  尾  崎  吉  弘
 7  番  岡  本 保
 8  番  藁  科  義  清
 9  番  向  井 嘉久藏  
 10  番  佐  田  頴  一
 11  番  阪  部  菊  雄
 12  番  堀  本  隆  男
 13  番  平  越  孝  哉
 14  番  富  田 豊
 15  番  門  三佐博  
 17  番  高  瀬  勝  助
 18  番  上  野  哲  弘
 19  番 宇治田  栄  蔵
 20  番  尾  崎  要  二
 21  番  中  村  利  男
 23  番  山  本 一
 24  番  馬  頭  哲  弥
 25  番  鶴  田  至  弘
 26  番  飯  田  敬  文
 27  番  村  岡 キミ子  
 28  番  松  本  貞  次
 29  番  下  川  俊  樹
 31  番  宗 正  彦
 32  番  橋  本 進
 33  番  浜  田  真  輔
 34  番  冨  安  民  浩
 35  番 上野山  親  主
 36  番  中  村  裕  一
 37  番  和  田  正  人
 38  番  大  江  康  弘
 40  番  木  下  秀  男
 42  番  森 正  樹
 43  番 野見山   海
 44  番  新  田  和  弘
 45  番  浜  本 収
 46  番  森  本  明  雄
 47  番  浜  口  矩  一
欠 席 議 員(二人)
 16  番  西  本  長  弘
 39  番  中  西  雄  幸
 〔備 考〕
 22  番  欠  員
 30  番  欠  員
 41  番  欠  員
説明のため出席した者
 知 事 仮  谷  志  良
 副知事 西  口 勇
 出納長 梅  田  善  彦
 知事公室長 中  西  伸  雄
 総務部長  木  村  良  樹
 企画部長  宮  市  武  彦
 民生部長  南  出  紀  男
 保健環境部長  江  口  弘  久
 商工労働部長  中  山  次  郎
 農林水産部長  野  見  典  展
 土木部長  山  根  一  男
 企業局長  高  瀬  芳  彦
  以下各部次長・財政課長 
 教育委員会委員長職務代行者
   上  野 寛
 教育長 西  川 時千代  
  以下教育次長
 公安委員会委員 高  垣 宏
 警察本部長 西  川  徹  矢
  以下各部長
 人事委員会委員長
   水  谷  舜  介
  人事委員会事務局長
 代表監査委員  天  谷  一  郎
  監査委員事務局長
 選挙管理委員会委員長職務代理者
    谷  口  庄  一
  選挙管理委員会書記長
  地方労働委員会事務局長
職務のため出席した事務局職員
 事務局長  岩  垣 孝
 次  長  中  西  俊  二
 議事課長  松  田  捷  穂
 議事課副課長  佐  竹  欣  司
 議事班長  松  谷  秋  男
 議事課主事 長  尾  照  雄
 議事課主事 松  本  浩  典
 総務課長  岡  山  哲  夫
 調査課長  柏  木 衛
 (速記担当者)
 議事課主任 吉  川  欽  二
 議事課主査 鎌  田 繁
 議事課速記技師 保  田  良  春
  ──────────────────
  午前十時四分開議
○議長(平越孝哉君) これより本日の会議を開きます。
○議長(平越孝哉君) この際、報告いたします。
 お手元に配布のとおり、監査委員から監査結果の報告及び現金出納検査結果の報告がありましたので、報告いたします。
  ──────────────────
○議長(平越孝哉君) 日程第一、議案第八十九号から議案第百十六号まで、並びに知事専決処分報告報第七号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 46番森本明雄君。
  〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 では、順次、質問を進めてまいります。
 PL法が来年七月から施行されます。現行の民法では、製品からの被害を受けた場合、消費者はメーカー側の過失を証明しないと損害賠償を受けられませんでした。PL法施行後は、製品に欠陥があったことを証明すればメーカーの責任を問えることになります。PL法は国の法律ではありますが、消費者保護の立場では県民、また製造物責任の対象となる製造物とは「製造または加工された動産」とされており、加工の農林畜水産物、企業で製造される消費生活用品、国、日赤、県が一体となってこれまで進めてきている輸血用血液製剤など、さらに消費生活センター、工業技術センター、衛生公害研究センター、農業試験場等の各種試験研究機関や保健所等は原因究明体制、消費生活センターは紛争処理体制で県行政と深いかかわりがあります。
 そして、産業界は当然のことではありますが、より安全な製品の供給、消費者においては製品の正しい選択と使用、行政はそれに対応する的確な役割を果たすことが必要となってまいります。制度内容の周知徹底、あるいは下請対策を含む中小企業対策、消費者教育・啓発、裁判外紛争処理、事故原因究明体制などの整備、情報の提供等々が行政サイドの役割だと思います。こういう認識に立って、生産者、消費者と相まってPL法の趣旨を生かせるような取り組みが行政の責務だと思いますが、以下、質問を進めてまいります。
 まず最初に、世界に冠たる経済大国日本、それはまた大量生産、大量消費の現代社会でもあるわけでありますが、消費者に提供される製品の高度化、複雑化の中でいかに消費者を保護するかということは大変大事なことであります。
 アメリカでは、一九六〇年代から判例の展開によって欠陥を要件とする製造物責任が一般化してきています。そのアメリカにおいて、一時期、訴訟件数が急増し、製造物責任危機と呼ばれる弊害が生じたと聞いています。その原因は、弁護士の数が多い、弁護士の成功報酬制度、懲罰的損害賠償制度、陪審員制度等、我が国とは異なるアメリカ固有の司法制度によるものであるということが指摘されていますが、乱訴社会になるおそれが我が国でもあるのではないかと懸念する声もあります。
 我が国と司法制度が比較的類似しているヨーロッパ諸国においては、製造物責任制度の導入の後に弊害が生じたということは聞いていません。したがって、行政による正しい消費者教育・啓発を徹底すれば、消費者の中で訴訟を起こす風潮が強まって訴訟が多発し乱訴社会に傾斜する可能性はないと思うのでありますが、見解をお伺いいたします。
 二番目に、原因究明機関の具体的なあり方と整備についてであります。
 考えられるのは、一つには通商産業検査所が通産省関係にあります。これら経験とノウハウのある公的機関による原因究明体制の活用。二つには、原因究明に関する専門的な知識、知見、ノウハウを持っている既存の民間検査機関の活用。例えば、日本品質保証機構、日本電気用品試験所、日本文化用品安全試験所等。三つには、原因究明能力を有する民間の検査機関、大学の研究室などの機関に関する情報の提供、これらの機関を紹介しあっせんするネットワーク体制の整備。四つ目には、消費者が身近で安心して利用できる、特に県内での原因究明機関として消費生活センターの役割が期待されているのであります。しかし、人の面の質と量、また商品テスト、分析テスト等の機器等、極めて不十分な体制であると思います。すなわち県の消費生活センターは消費生活、消費者の生活の場に近いところで原因究明を行っており、消費者にとっては利便性の高い機関だと思いますが、体制が十分とは言えない状況にあります。
 今後、第一に商品テストのための設備、機器の整備、第二に原因究明のための商品テスト実施体制の強化、第三に商品テスト情報の収集・提供システムの構築、第四に市町村の消費者相談室などからの相談処理体制の強化、以上のような原因究明体制の整備を図るべきだと思います。今後の取り組みについてお伺いいたします。
 三番目には、紛争処理体制の整備についてであります。特に、相対交渉で解決できなかった問題を処理するといった対処のあり方であります。
 先ほど触れましたように、人の質、量の問題で非常に厳しい状況にある消費生活センターにおいて、消費生活相談員により消費者苦情の処理が行われています。その内容は近年、複雑化、高度化してきており、相談業務に携わる相談員にも高度な知識と能力が求められております。また、消費生活相談員の雇用形態は大半が非常勤の職員等で占められています。この消費生活センターの相談体制の強化という観点から、さらに今後紛争処理能力を向上させるために、相談員の待遇改善、相談能力向上のためのさまざまな研修等の積極的な取り組みが必要だと思います。真に消費者被害を救済していくためには、裁判になじまない比較的少額な被害等に係る紛争について、簡易、迅速に解決していくことも重要であり、裁判外の紛争処理機関の整備充実を図ることが大事だと思います。これはまた製造者等にとっても、製造責任制度の導入による紛争解決コストの増大を緩和するために役立つものだと思います。消費生活センターの相談体制の強化をどのようにされるのか、お伺いいたします。
 裁判外紛争処理体制の整備については、民間型製品分野別紛争処理機関も考えられますが、この場合、技術的、専門的知識を備えた人材の確保を含め、関連業界の有する技術的な知見、ノウハウの蓄積を活用できるという長所がある反面、公平性、中立性の確保に問題があると思います。消費生活センターレベルの紛争処理は、相談、苦情処理というまだ相対交渉を補助する段階でありますが、これで解決できなかった問題を処理できる体制の充実が必要であります。特に、裁判外の紛争処理体制という観点から、安心して公平、中立の立場で身近に利用できる、さらに裁判に準じた能力を持った組織は、条例により設置されている苦情処理委員会の活用が考えられます。
 問題点としては、製品関連技術など専門的事項に対応し得る人材や紛争処理事例等の蓄積が十分でないことであります。しかし、地方における紛争処理機関としての役割は大変期待されているところだと思います。このため、必要に応じて製品関連技術専門家等の派遣を国に要望するなど、苦情処理委員会を強化し、消費者が身近に利用できる紛争処理機関として一層の活用ができるよう充実していくべきだと思いますが、お伺いいたします。
 今、産業界はPL制度への対応に動いています。しかし、先行しているのは大企業や中堅企業で、事業所の大半を占める中小企業は、不安は大きいものの具体的な備えを進めるまでには至っていないようであります。とにかく、これまで日本ではなじみのなかった制度であり、その影響は実施されてみないとわからないというのが実情だと思います。大企業が欧米でPLの洗礼を既に受けているのに対し、多くの中小企業にとっては初めて直面する問題でもあります。中小企業の場合には大企業に比べて、資金的な意味でも、あるいは技術的な意味でも、人的な意味でも、不利性が残念ながらあるわけであります。できるだけこういった中小企業に円滑に対応してもらうというのが、何よりも必要なことだと思います。
 では、中小企業はPL対策にどのように取り組めばよいのだろうか。まず第一には、PL法で定められた制度の内容を十分知ることであります。多くの中小企業は、自分たちが扱っている製品がPLの対象になるのかどうかに関心があるようでありますが、ほとんど対象になると考えてよいと思います。例外は、未加工の農林水産物、不動産、電気であります。しかし、農林水産物の未加工についてもグレーゾーンが多いようであります。流通業者でも「発売元」と表示すれば責任を持たねばならない場合も出てまいります。したがって、これまで製品事故と無縁だった業界でも対策を怠るべきでないと思うのであります。
 次に、PL法の正しい理解を前提に具体的体制でありますが、第一には事故を起こさない未然防止策であります。品質管理や研究開発体制を強化し、設計や製造段階で製品の安全性を高めなくてはなりません。ただ、人員に余裕がなく、技術力に大企業と格差のある企業が多い中小企業がどこまでできるのか、難しい問題があります。
 では、事故が起きたときの対策はどうでしょうか。裁判で損害賠償を求められる場合などに備えて、支払い能力を確保するためPL保険への加入は当然のことと言えます。もちろん、生産者あるいは製造業者が損害賠償責任に備えてどう対応するかは基本的には各事業者の経営判断にゆだねられるべきものでありますが、既存の諸制度が一層活用されるよう制度の周知徹底、適切な運用、情報の提供に行政は努める必要があると思います。また、製品の品質管理強化、安全性向上に資する設備投資、事故が発生した際の損害賠償の確保については融資等の優遇支援策が必要だと思うのであります。制度内容の周知徹底、事故を起こさない未然防止策、金融制度等の中小企業対策をどうされるのか、お伺いいたします。
 次に、行政手続問題についてであります。
 行政手続法が今年十月一日より施行されました。この法律は、国民と行政の関係に新たな時代を画す非常に重大な法律だと思います。公権力が行使される際には適正な手続によらねばなりません。これは歴史が示すところの真実でもあります。近代国家の成立以来、国民の権利保護の歴史は、この適正な手続を定め、法典化し、法律によって保障することにありました。
 我が国におきましても、公権力の行使のうち、刑事手続については憲法に規定される法廷手続の保障及び刑事訴訟法により手続が統一的に定められています。他方、行政手続については一般法はなく、個別の法律にゆだねられてきました。そのため、不備、不統一の状態にありました。手続が定められている分野がある一方で全く規定の置かれていない分野も存在するといったように、行政の対応がばらばらであり、また、それぞれの法律に手続に関する規定が置かれていたとしても、それに従った手続によらず、行政指導という手法を多用し、より一層行政の作用をわかりにくくしているという側面もあります。
 もとより、こうした統一的な行政手続法を制定しようとする動きは古くからありました。ここに長年の懸案であった行政手続法が制定施行されましたことは、意義深いものがあります。
 この法律の対象としては、申請に対する処分、不利益処分、行政指導の三つを三本の柱として取り上げています。前の二つの処分を取り上げることは問題ないと思いますが、行政指導を取り上げたことは従来の法律の常識では考えられないことであります。しかし、あえてそれを承知の上で取り上げたことは、行政手続法として行政指導に触れないのでは意味はないということが審議会における認識であったのだと思います。ただ、これによって行政指導を認知し、かえって行政指導が乱用される危険があるのではないかという考えもあります。しかし、行政指導は、法の上においても、最高裁判例の上においても、また現実の行政運営においても、あるいは学説の上においても、既に認知されていると思うのであります。したがって、放任しておくよりは行政指導について適正なルールを定めて行政指導が正しく行われるような方向に持っていく方がはるかにプラスであると思います。
 さて、地方公共団体の機関の行う行政手続と行政手続法との関係につきましては、部分適用となりました。行政手続の整備の目標である行政の公正と透明性の確保の必要は、国、地方を通じて十分妥当するところだと思います。一方、地方自治の尊重の観点から、地方団体において地域の実情に即し、そして総合的な行政運営を確保することができるようにするということもまた大切なことだと思います。しかし、法律の趣旨に従って地方団体において適切な措置をとることを期待されています。地方自治体がこのような措置を怠っておれば、当然、住民の批判を招くと思います。また、そのような措置をしないままに行われた行政手続については、裁判の事件になれば当然問題になってくると思うのであります。これは、努力義務の規定と同様、単なる訓示規定というふうに安易に考えるべきものではないと思います。しかも、最も住民に密接な行政をやっている地方自治体としては、むしろ国以上に早くやるべきであったと思うのであります。
 では、どういう形になるのかという場合に、この法律が一種のナショナルミニマムなんだからそのまま条例化するのが趣旨であるとか、あるいは下回る条例をつくると違法だとか、こうした議論を聞くこともありますが、そうではないと思います。法律は国のスタンダードをつくったものだと思いますので、地方の実情に応じて、地方の知恵を出し合って公正、透明な手続を考えていけばよいと思います。
 以上、意見を申し上げましたが、以下、質問をいたします。
 まず、行政手続法が施行されたことに対する知事の所見、及び法施行後の県行政の運営のあり方についてお伺いいたします。
 二番目に、この法律と地方自治体との関係については、国の機関委任事務については適用されます。ただし、条例に基づく処分、公共団体独自の立場における行政指導等については地方自治体で取り決めをすることになっています。現在、地方自治体の事務の中で機関委任事務の占める割合は非常に高いと思います。そして、これらの相当な部分は法律等に基づく業務運営が必要だと思います。法律成立後、施行の段階まで約一年間ありました。その間にこの法律の運用の細目については各部局で十分検討され、部内に徹底を図られているものと思いますが、審査基準、標準処理期間、不利益処分の基準などの設定、公表について準備ができているのかどうか、内容とあわせてお伺いをいたします。
 三番目に、県民の理解を求めていくため、広報その他の機会を通じて行政が新しいルールのもとで行われるということを十分理解いただき、認識を深めていただく、新しい時代における行政手続運営がまさに県民の側に公正、透明という姿を明らかにしていくためのプロセスとしてさまざまな広報努力が必要と思いますが、対応についてお伺いをいたします。
 四番目に、条例に基づく処分、行政指導については、この法律は適用しません。他方で、地方自治体にもぜひこの趣旨の公正、透明を図ってもらいたいというのが立法の際の方針でもあったと思います。また、行政運営における公正の確保と透明性の向上の要請は、その権力が国の権力であると地方自治体の権力であるとを問わず、公権力一般に妥当するところであります。
 今、自治体間で行政手続条例の制定を目指す動きが出てまいりました。例えば都道府県では東京都、神奈川県など、政令指定都市では仙台市が来年度の早い時期に条例の施行を目指しています。一方県内では、和歌山市が和歌山市行政手続条例案を九月議会に提案しています。県当局も、ルールを定め、さらに行政運営の公正の確保と透明性の向上を図るため、行政手続条例の制定を目指すべきだと思いますが、条例制定への見解、制定の時期、考えられる条例の骨子についてお伺いをいたします。
 最後に、水利権問題に関連して質問をいたします。
 この質問原稿を書き上げた翌日、議員団控室で当局担当者と打ち合わせの折、きょうの日経新聞に関連記事が出ていますよと言われ新聞を見ますと、既存水利権に対する私の見解とほぼ同趣旨の記事が掲載されており、意を強くした次第でございます。
 今夏の渇水問題につきましては、全国的には生活用水における影響人口は一千万人を超えました。中には十八時間断水、あるいは連続四十三時間断水という事態も起こりました。工業用水では、企業は海外から輸入するといった全く新しい事態も起きました。農業用水につきましても、稲の立ち枯れの問題、水争いでけが人が出る、あるいは水泥棒が横行するという地域も出ました。
 一方、県内でも、紀の川新六箇井堰地点での水位低下による河西工業地域四〇%カット、戦後初めての県渇水対策本部の設置、また河東工業用水の給水不能による影響でほとんどの事業所が操業休止に入った河東工業地域、さらにはこの事態を改善するため農業用水関係も四〇%カット、二十四時間断水した下津町一部地区、その他、農作物の被害総額約七十二億円など、渇水、干ばつによる深刻な事態を経験したのであります。
 こういった渇水問題に対しまして、国ではそれぞれの省庁、また他府県の各自治体でも渇水対策本部を設置いたしましたが、取水カットをどうする、給水をどのぐらい制限するかといった、いわゆる制限をするための伝達機関で、水の広域的な融通、有効利用などの話は余り聞きませんでした。渇水対策というのは、水をもっと有効に利用することに知恵を絞ろう、そういうことだと思うのであります。
 幸い本県では、国の関係機関や奈良県との広域的な利水調整、県内にあっては和歌山市、橋本市、県当局、さらには農業団体などの利水者間の利水調整を図り、渇水による県民への影響を最小限に食いとめました。当局を初め、関係団体のご努力、ご協力に感謝を申し上げます。
 さて、本論に入ってまいります。今、毎秒一トンの水を開発するのにダムをつくります。場所、時期にもよりますが、百億円から三百億円、もっとかかるかもしれません。そして、開発した水につきましては、通常生活用水、工業用水は十年に一回の見直しをいたします。その許可水利権の更新につきましては、単なる更新であっても二カ年程度の期間と多大な費用を要するということであります。そして、河川管理そのものの内容としては締めつけばかりが厳しく、河川管理能力を住民の生活のために十分に生かして河川水の弾力的な有効利用を図るべきなのに、そうしたことは余りないように思うのであります。
 そこで、水の利用、流水の占用でありますが、一定のルールに基づいて厳格に運用されているものと思います。それは、水利権だと思うのであります。その水利権の基本認識でありますが、水利権なしで取水できるのかという問題であります。河川の流水というものは、有限な公共の資源として人々の日常生活や産業活動にとって不可欠なものであります。したがって、その使用につきましては、水利使用の許可、すなわち水利権が必要であります。そして、その許可を通じて公共の福祉が増進されるよう努めなくてはならないと思います。
 例えば農業用水ですと、農水省や関係機関で厳格な審査を行うものと思います。したがって、一たん許可が与えられると水利権として保護されるものであります。そうしたことから、水利権とは継続的、排他的に使用するものと説明する学者もあります。そういったことを考えますと、許可後も水利使用が適正に行われているのかどうか、遊休化しているかどうか、十分審査をして水利行政を実施してもらわなくてはならないと思うのであります。
 国土庁が出している「日本の水資源」によりますと、日本の河川の水は地下水を含めると年間約九百億トン、地下水を除くと約七百八十億トンが利用され、うち百三十億トンが上水、工水が百億トン、農業用水が五百五十億トンで約七〇%を占めています。一方、県内紀の川水系では、水利権量、暫定を含めて総量毎秒四十八・一六六トン、うち上水が二・九七五トンで六・一八%、工水が六・四二一トンで一三・三三%、農水が三十八・七七トンで八〇・四九%となっています。
 水の利用は、全部水利権の行政でカバーされています。その水利権の種類に許可水利権と慣行水利権があります。農業用水では許可水利権が全国の一級河川、二級河川合わせて約一万八千件、最大取水量の合計が毎秒約六千七百トン、昔から慣行的に取水している慣行水利権が一級河川、二級河川合わせて約十二万件の届けがあり、うち最大取水量を記載しているのが約四万一千件、そして最大取水量の合計が毎秒約四千九百トンとなっています。
 一方、県内では、許可水利権が一級河川、二級河川合わせて五十八件、最大取水量の合計が毎秒五十四・一三四〇一トン、慣行水利権が一級河川、二級河川合わせて二千七百十二件の届けがあり、うち最大取水量を記載しているのはゼロ件、したがって最大取水量の合計が不明であります。うち、紀の川水系は許可水利権九件、最大取水量が四十二・一九三トン、慣行水利権は七百二十件で最大取水量は不明であります。
 このように、許可水利権の件数、慣行水利権の件数につきましては明確でありますが、慣行水利権の量が全くわかっていないのが実態であります。
 慣行水利権について少しまとめますと、一つは、内容が不明確であり、取水の限度が量として明示されていない。二つには、見直しの機会がない。三つには、取水の実績の記録が残っていない。このことは、許可水利権による取水でも記録をとり出したのはごく最近で、まだ記録をとっていないところもあるようでございます。これが農水の慣行水利権の取水実態でございます。私は、こういう意味で慣行水利権についてはもう少し透明性が必要だと思うのであります。
 さて、津風呂、大迫、猿谷の三ダムの完成以降、昭和三十五年時点での紀の川流域市町村すなわち和歌山市、橋本市、那賀郡、伊都郡における水田面積は合計して一万一千九百七十ヘクタール、平成四年では六千百六ヘクタール、五一%とほぼ半減しているのであります。農水につきましては、施設農業の増加、農業の機械化等により面積当たりの必要水量の増加は理解できるのでありますが、こうした水利権は一部不要になりましても、また未使用になった場合でもそのままだと思います。それが前提になって河川管理がされ、そしてダムの計画等はその上に積み重ねています。長年の間に水供給の事情の変化、需要の事情の変化があり、そのことを考えるとき、水利行政のあり方に若干矛盾を感じるのであります。この問題、限られた資源を有効に活用するということの重要性が今後もっともっと大きくなってくると思うのであります。
 そうしたことを前提に、国、市町村、水利権者の協力を得て、農水、工水などの許可水利権の利用実態調査、慣行水利権の透明性アップ、また緊急時における容易な利水調整方法の確立、さらには農水、工水等既存用水の合理的転用などの水利用の合理化を図るための施策を進めるなど、新しい時代の河川管理のあり方を踏まえた対応が必要だと思うのでありますが、見解と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 以上で、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(平越孝哉君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森本議員にお答え申し上げます。
 行政手続法についての所見ということでございます。
 お話ございましたように、この法は昨年の十一月に公布され、この十月一日から施行されるものでございます。行政運営の公正の確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に資するものでございまして、行政運営上、住民と直結するために非常に意義の深い法律だと思ってございます。
 本県においても、許認可等の処理の迅速化を図るため、平成元年に許認可事務の標準処理要綱を、また昨年には情報公開条例を制定したわけでございまして、県独自の行政の透明化を図ってまいっているところでございます。
 現在、行政手続法ができたわけでございます。今後この適正な運用を図ってまいるために進めていかなければならないし、またご指摘の行政手続条例を制定して一層の行政運営の透明化を推進してまいりたいと思っておるところでございます。
 他の問題は部長から答弁申し上げます。
○議長(平越孝哉君) 企画部長宮市武彦君。
  〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 森本議員にお答えいたします。
 PL法について、一、乱訴社会に傾斜する可能性についての見解、二、原因究明機関の整備、三、裁判外の紛争処理体制の整備という三点についてお答えをいたします。
 欠陥製品による消費者被害の救済を目的とする製造物責任法が本年六月に成立し、来年七月から施行されることになってございまして、消費者保護に向けての大きな前進であると考えてございます。本法の趣旨を生かし、消費者被害の防止と救済を図るため、また乱訴社会に陥らないためにも、情報提供を通じて啓発・教育を行い、自立した消費者を育成することが最良の手だてでございますので、今後もマスコミを通じての広報活動やリーフレットの作成配布、また教育委員会との連携のもと、消費者教育に一層努めてまいる所存でございます。
 原因究明機関の整備についてでございますが、消費生活センターの検査機能の強化を図るため、従来より検査機器の整備に努めているところでございますが、本法の制定に伴い、今回の補正予算において新たに原因究明機器の設置をお願いしているところでございます。また、今年度は国民生活センターのコンピューターの端末機を増設し、商品テストの情報収集・提供と市町村からの相談に対する処理体制の強化に努めてまいります。
 なお、消費生活センターで対応できない検査については、国民生活センターや通商産業省などの検査機関を活用するとともに、適切な検査機関を紹介する体制が整備されておりますので、今後とも緊密な連携をとってまいる所存でございます。
 裁判外の紛争処理体制の整備についてでございますが、苦情処理の最前線で活躍している消費生活センターの相談員については、各種研修を受け、通商産業大臣認定の消費生活アドバイザーの資格を初め、消費生活専門相談員等の資格も取得しておりますが、今後とも一層積極的に研修に取り組み、相談能力の向上に努めてまいりたいと考えてございます。
 また、消費生活センターで解決できない案件については、消費者保護条例に基づき設置している消費者苦情処理委員会であっせんや調停を行うことになりますが、必要に応じて国の専門家の派遣制度なども有効に活用しつつ、本委員会の充実に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 商工労働部長中山次郎君。
  〔中山次郎君、登壇〕
○商工労働部長(中山次郎君) 製造物責任法いわゆるPL法についての中小企業者への制度の周知徹底、安全性の向上、融資制度の拡充の三点についてお答え申し上げます。
 まず中小企業者に対する制度内容の周知徹底については、既に財団法人和歌山テクノ振興財団主催によりPL法セミナーを本年七月十九日に和歌山市で、八月二十六日に田辺市で開催し、百九十名の中小企業者の参加をいただいております。また、新規に中小企業品質向上対策普及啓発事業に取り組み、商工会議所等が行う講習会に対して助成するとともに、一方では経営指導員に対しても研修会を開催するなどし、中小企業者に対し周知徹底を図っているところでございます。
 PL法の制度内容については、今後も法施行までの期間を利用し、関係機関の協力を得ながら下請関連企業を初め中小企業に対し、あらゆる機会、方法を講じてさらに幅広くきめ細やかに周知徹底を図るとともに、業界におけるPL法への取り組み状況等、情報の提供を行ってまいりたいと存じます。
 次に、安全性の向上については、県工業技術センター等において製品安全対策などの技術指導、巡回指導に取り組んでいるところでございますが、今後、法施行を機に一層指導内容等を充実し、積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 また、融資制度の拡充については、PL法施行に伴い中小企業者の皆さんがより一層の品質管理等に取り組むための設備投資を行うときには、県の制度融資を活用していただき、その融資枠の確保に努力してまいりたいと考えてございます。今後とも、国、他府県の動向についても十分見守ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 総務部長木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 行政手続法についてのご質問でございます。
 行政手続法がこの十月一日から施行されたことに伴い、地方公共団体においては法令を根拠とする処分について、審査基準、標準処理期間、処分基準を設定し公表することとなりました。本県が行っている処分でこの行政手続法の適用がある申請に対する処分は約千五百件、不利益処分は約千三百件ございまして、昨年十一月に法が公布されて以来、関係各課において審査基準の設定等、所要の準備を進めてきたところでございますけれども、法律が施行されたこの十月一日からは、各申請窓口において審査基準の名称、標準処理期間等を記載した統一様式を備えつけ、申請者の閲覧に供しているところでございます。
 それから、行政手続法の周知でございますけれども、国の方では新聞、週刊誌等を使った政府広報が既に行われているところでございまして、本県においても本庁、各県事務所、各市町村に周知用のポスターを掲示するとともに、窓口において申請者に対し制度の周知を図ってきているところでございます。
 次に、この行政手続法の適用が除外されている県の条例、規則に根拠を有する処分及び行政指導については、地方において必要な措置を講ずるよう努めることとされております。本県においても、平成七年度中に条例制定をすることをめどに、現在、鋭意作業を進めているところでございます。
 この条例の内容でございますけれども、行政手続法の三つの柱、つまり申請に対する処分、不利益処分、行政指導についての手続規定を中心とした条例となってくると考えられますけれども、他府県の規定内容等も参考としつつ、行政運営の透明化に資するものにしたいと考えている次第でございます。
○議長(平越孝哉君) 土木部長山根一男君。
  〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 水利権に関してのご質問にお答えいたします。
 近年における水需要の逼迫化に対処するため、ダムなどの積極的な整備を図るとともに、水資源は有限であるという基本的認識のもとに、水利用の合理化、適正化を推進していくことは重要であると考えてございます。
 許可水利権の使用実態調査については、他部局にまたがる問題でもございますので、国並びに関係部局の協力を得ながら進めてまいりたいと考えております。
 慣行水利権の透明性に関しては、議員ご指摘のとおり、その権利内容が必ずしも明確でなく、国からの許可水利権への切りかえの指導もあり、取水施設の改築等、機会あるごとに切りかえを行っておるところでございます。既存用水の合理的転用など、水利用の合理化については使用実態調査などを踏まえながら、関係部局、関係団体等と協議検討してまいりたいと考えてございます。今後とも、水利用の適正化に努めてまいりたいと思っております。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 農林水産部長野見典展君。
  〔野見典展君、登壇〕
○農林水産部長(野見典展君) 森本議員にお答えをいたします。
 慣行水利権での水使用については、歴史的な経過を経て形成されたもので多種多様な形態となっていることから、議員ご指摘のとおり、取水量等について十分把握できていないのが実態でございます。こうしたことから、現在、市町村の協力を得ながら、おおむね受益面積一ヘクタール以上の取水施設について調査中でございまして、近々水需要実態が把握できるものと思ってございます。
 次に農業用水の有効活用についてでございますが、土地利用、営農形態の変化により利用水量は変化しておりますが、農業用水の取水形態の問題から末端までの全面改修を行う必要があり、今後の課題として検討してまいりたいと考えてございます。
 なお、特に社会状況の変化が著しい紀の川水系については、現在、農林水産省において農業用水の有効利用を図る観点から用水の利用と施設の実態についての調査を実施中でございまして、調査の進捗状況を見ながら関係部局、関係団体との協議検討を進めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(平越孝哉君) 以上で、森本明雄君の質問が終了いたしました。
○議長(平越孝哉君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 43番野見山 海君。
  〔野見山 海君、登壇〕(拍手)
○野見山 海君 通告順に従いまして、一般質問をさせていただきます。
 きょうは傍聴席に、田辺・西牟婁地方より県政バスを利用しておいでいただいております。皆さん方も紀南地方に対する思いをお持ちになっておると思いますが、私の一般質問の中身も皆さん方の心配されている内容であると思いますので、県当局における見解をお聞きしたいと思います。
 最初に、JRの県民の利便性についてお伺いしたいと思います。
 去る七月十六日から九月二十五日までの七十二日間の世界リゾート博は、当初の入場者目標百万人を百五十万人に変更しましたが、その二倍近い二百九十八万人の入場者を迎えることができました。天候にも恵まれ、大きな事故、トラブル等もなく無事終了したことに対し、関係各位に心から敬意を表するものでございます。また、会場跡地の活用によりましてさらに地域が活性化することを願うものでございます。
 県外から訪れていただいた方々にとって、あの海辺の景観、夕日の沈む風景はすばらしかったと思います。心のどこかに熱く焼きついているのではないでしょうか。そして、和歌山県のすばらしさを感じ取られたのではないかと思います。県下で初めての最大イベント・世界リゾート博の成功と関西国際空港の開港によって、本県の観光、産業、経済、文化、情報等のさらなる発展が大きく期待されるものと思います。
 そこで、JR紀勢線、阪和線、和歌山線の利便性について、過去に多くの先輩議員が何回か本会議で質問されてまいりました。県当局におかれてもJRと交渉を積み重ね、一定の成果があったのも事実であります。例えば、古くは新大阪への乗り入れ、さきの世界リゾート博開催期間中の海南駅への臨時停車、関西国際空港開港に伴う快速電車の日根野駅への停車、エレベーター、同一ホームでの乗りかえ等、実現したことを大きく評価するものであります。
 要望や提言等の内容によっては、中長期的に取り組むものと、比較的実現可能なものがあると思います。例えば、座席指定料金はJR六社で統一した指定料金となっております。JR各社の話し合いが必要であります。改定にはかなりの時間が必要と思われます。しかし、JR西日本だけで取り組むことができる、例えば通勤電車の乗り継ぎ時間帯の問題、通勤者が利用する特急電車の自由席車両の増両、トイレつき列車等の要求は可能であると私は思います。県当局の頑張りを期待するものであります。
 私自身も、田辺市に住んで三十三年を迎えます。昭和三十七年ごろの最も身近な交通手段は鉄道でございました。当時は蒸気機関車で客車を牽引して、天王寺─田辺間は急行はまゆう号で三時間二十分ほど要しておりました。その後、ディーゼル化、信号機の自動化、電化、そして複線化などによって大幅な時間短縮ができ、さらには特急振り子電車の導入で京阪神都市圏との距離が非常に短く感じられるようになり、さらには特急くろしお号の新大阪乗り入れによってさらに便利になったのであります。特急くろしお号の京都、新大阪行きの旅客需要は年々高くなってきておりますが、特に和歌山駅での乗車率はかなり高いものと私は思います。
 現在、特急くろしお号は十本が新大阪駅に乗り入れをしております。さきのリゾート博で京阪神地方の方々が利用され、今まで以上に和歌山県を身近に感じ取られたのではないかと思います。観光立県として、また関西国際空港の需要から見ましても、すべての特急くろしお号の新大阪乗り入れが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、紀勢線のスピードアップの問題であります。
 現在の紀勢線の速度は以前と変わらず、天王寺─和歌山間は平均九十二キロメートル、和歌山─田辺間は八十八キロ、田辺─新宮間は五十五キロとなっているそうであります。特に天王寺─和歌山間は、区間快速、各駅停車、関西国際空港への乗り入れによって阪和線は過密の列車ダイヤになっていると聞いております。しかし、今後は関西国際空港の旅客需要も高まることが予想され、複々線化、連続立体交差も必要となってくると思います。その実現がスピードアップにつながってくることでしょう。
 和歌山─田辺間については、振り子電車によってスピードアップが図られました。さらにポイントの改良、線形改良、新型車両の導入によってスピードアップは可能でありますが、難問と言われている田辺─新宮間は、カーブが多く、スピードアップは困難と聞いております。現在の特急電車は、国道四十二号線を並行して走る軽四輪自動車に抜かれることもしばしばあります。
 平成七年度に、南紀白浜空港からジェット機が飛び立ちます。この南紀白浜空港の利用促進を図るためには新宮圏域の住民の協力が必要不可欠であります。そのためにも、田辺─新宮間のスピードアップと利便性にどう取り組むかは、避けて通れない課題だと私は思います。
 このように、JR紀勢線を取り巻く状況はかなり厳しいものがありますが、JR西日本は公共性を要求される企業で、地域のサービス産業でもあります。国鉄からの民営化に伴い、会社としても赤字解消と採算性を第一に考えることは当然のことですが、JR西日本があらゆる事業を展開する上で、京阪神地方を中心にサービス事業を展開しているとしか私には映りません。民営化後は、紀勢線の利用者の意向を余りにも反映されておりません。
 去る七月十三日、県議会半島振興議員連盟の西本会長を先頭にJR西日本へ陳情し、私も参加をさせていただきました。その中で、スピードアップ、新型車両の導入、線形改良等の要望をしたのですが、明るい話はなかったように私は思いました。例えば、「振り子くろしお号は五十三年に導入したので、通常は二十五年から三十年程度使用することができ、あと十五年は使用可能である。線形改良についても、現行の線形の悪さは理解できるが、改良のために数千億円の事業費がかかるので改良は不可能と思われる。一分短縮するのに百億円以上かかる。ポイントや信号機を直しても一秒ぐらいしか速くならない」等のJR西日本の話でありました。そうは言いながらも、検討をしていくとのことでありましたが、先の明るい見通しは何一つなかったように私は思いました。
 私や先輩議員の紀勢線の利便性の提言に対し、県当局から「JR西日本、JR和歌山支社に申し入れを行ってきた」との答弁をいただきましたが、どこに問題があるのか、依然として不透明の状況であると言えます。これらの諸問題を前進させるためにも、県や市町村の協議のもと、補助金を負担して地域住民の利便性を図るといったケースも考えられるのではないでしょうか、お伺いいたします。
 関西国際空港の開港に伴い、これまで先輩議員が直接乗り入れ、あるいはスイッチバック方式、紀南の観光地として関西国際空港とを結ぶ列車の増便についても質問され、また議会としてもことしの三月末にJR西日本に対して申し入れを行ってきましたが、現状では過去に言われた「扇風機の裏側」になりかねない厳しい状況ではないでしょうか。なぜなら、JRを使えば京都から関西国際空港まで七十分で到着できるほか、神戸からは高速船で三十分と、関空メリットが十分反映されておりますが、我が和歌山県は、空港に最も近い和歌山市からスムーズに行っても三十五分かかる状況であります。しかも紀南から関空への交通アクセスについては、県当局がJR西日本に対し直接乗り入れを強く要望されていたので紀南の住民の皆さんは大きく期待をしていましたが、結果的には関空への乗り入れは実現できませんでした。せめて日根野駅へ停車をする特急くろしお号の本数をと期待しておりましたが、これまた上り三本、下り三本のみの停車となりました。関空を利用する場合、紀南の住民の皆さんは大きな荷物を手にして自宅を一足早く出発、乗りかえ乗りかえで関西国際空港到着、そしてフライト時間帯により余分な待ち時間で疲れ、楽しい旅行が初日から半減、こうした状況に追いやられる紀南住民の利便性について県当局はJR西日本にどう対処するのか、お伺いしたいと思います。
 次に、総合運動公園整備についてお伺いします。
 過日、総理府が暮らし方、生きがいなどの国民の意識を探る国民生活に関する世論調査の結果を発表しましたが、その調査によりますと、生活のゆとりについて「ある」が六〇%を占め、七〇%の人が人生に充実感を感じています。そして、仕事に生きがいを感じている人が二三・四%で、前回より六・八ポイントの低下、逆に趣味、スポーツが二四・四%、九・三ポイントの増加であります。国民生活の向上とともに、ゆとり、豊かさ、生涯スポーツということが各方面から、また行政の中でも叫ばれるようになり、市民生活も大きくさま変わりをしてまいりました。
 健康づくり、楽しさ、感動を与えてくれるのがスポーツではないかと私は思います。ことしの八月二十日から第四十六回全国都道府県議会議員野球大会が愛知県で開催され、和歌山県議会チームは茨城県議会チームと一回戦で対戦し、緊迫した好試合となり、応援団を初め審判員や我々選手も一球一球生つばを飲む思いをしたものであります。結果は、最終回、ツーアウト三塁、相手が打った強烈なライナーを二塁手の中村選手が飛びついて捕球、ゲームセット。四対三で勝利しました。今までの試合の中でも名勝負に挙げられる試合であったと思いますし、私自身にとりましても非常に思い出をつくっていただきました。
 さて、田辺地方には野球場、体育館、プール、弓道場、武道館など幾つかのスポーツ施設がありますが、これらの施設の中には昭和四十六年の黒潮国体を契機に整備された施設もあり、老朽化や規模的な問題で極めて限られた大会しかできない状況であります。紀南地方で全国規模、近畿規模の大会を実現できるスポーツ施設の整備拡充に向けての運動が高まっております。
 田辺市体育連盟が中心になって、総合運動公園を建設して地域の経済、文化の振興を図ろうという趣旨のもと、田辺市総合スポーツ公園建設委員会を設けて、自然と調和のとれた総合スポーツ公園づくりに向けて取り組みがなされているところでございます。これまで委員会は、総面積五十三ヘクタールの敷地を持つ京都府立丹波自然運動公園や総面積百ヘクタールの同じ京都府の山城総合運動公園を視察され、国、県、市に対して建設整備の早期実現の要望をしています。さきに紹介しました山城総合運動公園は、競技関係の施設の整備が見事になされているほか、家族連れで一日じゅうのんびりと過ごすことができる生涯スポーツにふさわしい施設であると、視察の結果を報告されております。
 幸い、田辺地方は温暖な気候に恵まれたところであり、スポーツ施設が整備されることによって年間を通じて利用が可能であります。かつては三四六の野球場に南海ホークスがスプリングキャンプを張った経過もあります。Jリーグ、プロ野球、サッカー、ラグビーが合宿や試合などに訪れることによって、リゾート立県を推進する本県にとってもイメージ面でも大きなプラスになると思われます。そして、南紀白浜空港のジェット化によって首都圏が一層近くなり、また近畿自動車道の南伸によって京阪神圏からも利用しやすくなり、昨今の議会でも話題になっておりますが、関空の開港、リゾート博の大成功、南紀白浜空港の開港と、和歌山県に関するビッグイベントが続いている今日、開催が二巡目に入った国民体育大会を和歌山県に誘致する絶好の機会だと私は思います。
 県民がスポーツに親しみ、健康と体力づくりを図る生涯スポーツの推進の上からも、田辺圏域に総合運動公園の整備がぜひ必要と思いますが、知事に前向きのご見解をお伺いしたいと思います。
 十一月一日付で南紀青少年スポーツセンターが日本体育協会から県へ移管されることに伴う管理運営費が九月議会の補正予算で計上されております。この施設の窓口である教育委員会は、施設のあり方について検討されていると聞いております。市民はもとより、紀南の地域の方々に気楽に利用される施設として整備運営を願うものであります。
 昭和四十六年の黒潮国体開催前の昭和四十四年にオープンし、財団法人日本体育協会が管理運営をしてまいりました。この施設には、競技用グラウンド、陸上競技用トラック、体育館、トレーニング場、プール、その他、海洋施設や研修室など幾つかの施設がございます。宿泊も可能でありますが、建物の老朽化も進み、トラックも六コースしかなく、本格的な大会の開催に支障を来している状況であります。また、利用率も低下をしております。
 宿泊利用者数を見てみますと、平成五年度では年間二百六十九団体、一万九千七百十七人の方が利用されているものの、年間の収容能力は七万三千人で利用率は二七%となっております。また、平成四年度では二五・八%であり、ここ数年は四分の一前後の利用率となっております。この施設は交通の便もよく、田辺周辺には複合スポーツ施設もあり、紀南のスポーツ振興の中核施設としての整備拡充と紀南総合運動公園整備と抱き合わせた計画を望むものでありますが、当局のご見解をお伺いいたします。
 次に、天神崎の保全についてお伺いいたします。
 自然環境が話題になる昨今、自然と共存できる調和のとれた社会づくりが叫ばれています。ここ天神崎は、田辺南部県立自然公園に昭和二十九年に指定され、今では全国的に有名になっているところでございます。この天神崎は、森、磯、海が一つの生態系をつくり上げている動植物の宝庫であると言われております。こうしたところは、本県にとっても貴重な存在であります。
 今、各地方から多くの方々が訪れ、地元の子供たちの学習の場として、遠足での観察や自然保護の生きた教材として、多くの学校から子供たちが訪れています。また、天神崎の観察会、天神崎の写生会が開催され、多くの子供たちも参加をしております。そして、人々の憩いの場としても大切にされているところであります。
 この天神崎は、岩礁部分二十一ヘクタール、海岸林二十ヘクタール、総面積四十一ヘクタールとなっております。この地域に昭和四十九年、別荘としての開発計画が持ち上がり、文化人、経済人など幅広い各階層の方々が立ち上がり、天神崎の自然を大切にする会が昭和六十一年に結成され、極めて短期間のうちに一万数千人に及ぶ署名を集め、その輪が県外にまで広がり強力な運動として展開されることによって、天神崎の土地を買い上げるナショナルトラスト運動がスタートしたのであります。
 その後、開発計画用地の買い上げ運動の輪が広がり、全国からの温かい募金や県市の補助金によって一部の買い上げができました。現在までの買い上げ面積は四・九ヘクタールに達し、今議会においても補正予算が計上されております。このことは、天神崎の自然を大切にする会の会員にとっても非常にありがたいことであり、感謝を申し上げるところであります。これによって新しく一・三ヘクタールを買い上げる予定になっております。海岸林の総面積二十ヘクタールのうち約半分の十ヘクタールは住宅地域を含んでおり、平地の買い上げ用地もあるやに聞くのでありますが、今後の買い上げに期待するものであります。見通しはいかがなものでしょうか、お伺いいたします。
 また、一見どこの海岸にもありそうな天神崎ですが、この天神崎の自然を生かした自然保護と整合性のある整備計画を、例えば観察センターのようなものを考えてみてはいかがでしょうか。その実現によって、スポーツ施設を利用していただいた方々に、休日の合間に天神崎や南方熊楠邸、植芝盛平道場を訪れるなど、散策のコースになるのではないかと思いますが、ご見解をお伺いしたいと思います。
 第一回目の質問を終わります。
○議長(平越孝哉君) ただいまの野見山海君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 野見山議員にお答え申し上げます。
 紀南の総合運動公園でございます。
 田辺市はことし承認された田辺御坊地方拠点都市地域の中心都市でございまして、高次都市機能を集積して都市的な文化の活性化を図り、都市としての魅力を高めていくことになっており、そうした面においてご努力をいただいております。現在、その一環として新庄総合公園の整備が進められているところであり、お話ございましたように、これは健康で潤いのある生活のために非常に重要な施設でございますので、県としても積極的支援を行っているところでございます。
 ご提案ございました田辺総合運動公園の問題については、田辺市の三四六運動公園や、ただいま話ございました今回移管予定の南紀スポーツセンターを含め、広域的な観点から施設のあり方等について市と十分相談させていただきたいと思っておるところでございます。
 他の問題は部長から答弁いたします。
○議長(平越孝哉君) 企画部長宮市武彦君。
  〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 野見山議員にお答えいたします。
 JR線と県民の利便性について、新大阪駅へすべてのくろしお号の乗り入れ、スピードアップ、関西国際空港との利便性ということでございます。
 特急くろしお号の新大阪・京都駅への乗り入れについては、平成元年七月の運行開始以来、順調に推移してございます。現在、十六往復中、紀南方面からは十便が新大阪方面に乗り入れ、紀南方面へは九便が新大阪・京都駅発となってございます。
 すべての特急くろしお号の新大阪駅乗り入れについては、県としては今後とも引き続き新大阪・京都駅への乗り入れ列車の充実について、JR西日本に対して要望を続けてまいりたいと考えてございます。
 次に、高速化や快適性の向上を目指した地上設備の改良や新型車両の導入等、紀勢本線の整備については、県としても平成四年度から運輸省とJR西日本の全面的な協力もいただきながら駅周辺の曲線改良やポイント改良などの調査を進め、積極的に取り組みを行っているところでございます。
 紀勢本線の整備についての県の取り組み姿勢でございますが、まず地元の熱意が前提であると考えてございます。沿線の市町村、経済界等を含めた地元の盛り上がりを踏まえ、地元の皆様方とともに、JR西日本と協力して具体的かつ積極的に紀勢本線の整備を推進していきたいと考えてございます。
 また、関西国際空港への鉄道アクセスについては、これまでも県議会を初め和歌山県輸送力強化促進委員会のご協力をいただきながら、JR西日本に対し直通列車の運行を強く要望してまいりました。その結果、日根野駅における快速列車すべての停車、また同一ホームでの乗りかえ、さらには阪和線では初めてのエレベーターの設置など、一定の成果がなされたところでございます。今後、県として、県民特に紀南方面からの空港利用者の利便性の向上を図るため、直通列車の運行や特急列車の日根野駅停車の増便等について、国や事業者等に対する積極的な働きかけを行ってまいる所存でございます。このためには需要の掘り起こしが重要と考えてございますので、皆様方のなお一層のご協力をお願いいたしたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 商工労働部長中山次郎君。
  〔中山次郎君、登壇〕
○商工労働部長(中山次郎君) 天神崎の保全についての買い上げの支援と地域の施設整備についてお答えします。
 すぐれた自然環境を保護し、できる限りそのままの姿で子孫に伝えることは大切なことでございます。天神崎の保全についても、県としてはこのような観点から、財団法人の設立認可、自然環境保全法人の認定等を行うとともに、田辺市が行う保全のための買い取りに対して助成を行ってきたところでございます。今議会にも補正をお願いしているところでございます。
 議員ご質問の今後の買い上げについては、ナショナルトラスト運動の一層の盛り上がりを期待し、県としてもすぐれた自然環境の保全のために努力してまいりたいと存じてございます。
 また、天神崎の自然と調和のとれた利用計画についても、田辺市から整備計画等の協議があれば検討してまいることにしてございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 南紀青少年スポーツセンターについてお答えいたします。
 この南紀青少年スポーツセンターは、財団法人日本体育協会の施設として主に青少年のスポーツ振興に大きな役割を果たしてきた施設であります。今後、県の施設として管理運営していく上では、施設・設備、事業内容等を再考し、紀南地方はもとより、広く県内外の利用に供する魅力ある施設となるようアピールしていくことが必要と考えております。
 このたびの移管に伴う議案について議会でご承認いただいた後には、施設の名称も広く県民を対象とした「和歌山県南紀スポーツセンター」と変更いたすこととしております。今後、地域及び関係者の意向もお伺いし、施設の増改築を含め、計画的に施設・設備の充実や生涯スポーツ並びに競技スポーツに対する利用者のニーズに沿った事業内容等について検討してまいります。また、スポーツを中心としたコミュニティーづくりの場として、地域住民の方々はもとより、広く県内外に親しまれ利用される、特色ある施設にしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 43番野見山 海君。
○野見山 海君 答弁ありがとうございました。
 第一項目の県民の利便性でございますけれども、企画部長から、直接乗り入れを強く要望されて、その結果、同一ホームでの乗りかえ、あるいは快速の停車、エレベーターの設置が実現できたと。このことは喜ばしいことでありますけれども、紀南にとってみれば、関空を利用する場合、くろしお号に乗って利用する人がほとんどであります。三本しかないというのは、紀南県民にとっては許せないという気持ちでいっぱいです。どれだけの努力をされたんだろうかと。新聞でもかなり「声」の欄などで載っておりますけれども、乗り継ぎ乗り継ぎで関空に行くということのないように、ぜひとも紀南の県民の声をJRに強く──要望じゃだめですよ。もう何回も何回も交渉を繰り返しながら、日根野駅への特急くろしおの停車を、ぜひとも次の時刻改正の中で取り組んでいただきたいなと思います。
 それから、自由席車両の問題ですけれども、スーパーくろしお号においては二両しか自由席がございません。田辺発のスーパーくろしお二号は自由席が二両でございます。田辺から和歌山へ向いての通勤者も年々ふえているのであります。田辺でもう満員ということもあります。指定券を買えば、時期的には七百円、五百円、三百円、往復すると千四百円、二十日間利用しますと一万四千円の指定席料金が要るんです。ぜひとも自由席車両の増両を、またこれもJRに声をかけていただきたい、交渉していただきたいと思います。
 くろしおの新大阪乗り入れがされておりますけれども、九月四日に時刻改正がされまして、のぞみ号との接続が非常に悪いと言われております。なぜ和歌山県の利便性をもっと強く要望できないんだろうか、交渉できないんだろうかという大勢の皆さんの声であると思いますので、次回の交渉では県民の利便性をぜひとも向上させていただきますよう心からお願いを申し上げまして、要望にかえさせていただきます。
○議長(平越孝哉君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で野見山海君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(平越孝哉君) この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十二分休憩
  ──────────────────
  午後一時八分再開
○副議長(富田 豊君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(富田 豊君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 25番鶴田至弘君。
  〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 それでは、通告の順に従いまして質問をさせていただきます。
 私は、過去二回、当議場におきまして、和歌山県も地方自治体として非核平和宣言を行い、それにふさわしい施策を積極的に講じる必要のある旨を訴えてまいりました。残念ながら、知事に受け入れられるところとはならず、その思いはいまだに達せられないところでありますが、来年は終戦五十周年と記念すべき年でもあり、いま一度知事の意向を問い、積極的に県民の要望にこたえられることを切望するものであります。
 世間では冷戦の終結という言葉が盛んに語られ、世界が一路平和への道を歩んでいるような論調もあります。しかし、ソ連邦の崩壊によりソ連とアメリカの直接的な対決は消滅したとはいえ、アメリカが世界に張りめぐらした軍事網は依然として各地に軍事的な緊張をつくり出し、核兵器を保有する国は核拡散防止という名目でその保有を永続化しようとし、それらのさまざまな軍事的網の目の中に世界第二位あるいは第三位と言われる軍事力を持った日本も、従前より強くその網の目の中に組み込まれようとしております。
 戦後五十年、日本国民は戦争の惨禍を忘れず、憲法の恒久平和の理念と国際紛争に軍事力を用いてはならないという一致した思いで今日まで平和を維持してまいりました。一方には、軍事力の拡大とアメリカの戦略への迎合という強い推進力もありましたが、その勢力も公然とは憲法の理念を否定することはできず、常に憲法の理念とそれを守りたいとする世論の前に大きなあつれきを生じてきたところであります。しかし、五十年の歳月は戦争体験を次第に風化させ、憲法の平和理念も過去への反省を込めて新鮮な決意で受け取るという面も少なくなってきつつある状況であります。それだけに、今改めて戦時世代も戦後世代も平和の問題をお互いに学び合わなければならない時代になっているのではないでしょうか。
 憲法前文の末尾には、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的──すなわち平和国家の建設と世界平和への献身──を達成することを誓ふ」とうたっております。現下の厳しい情勢と憲法の理想を実らせたいという思いの中から、今、地方自治体の五五%が非核平和の宣言を行い、県下五十市町村のうち三十二市町村が非核自治体宣言を発し、たとえささやかであっても平和の維持のために自治体として独自の施策を実施しているところであります。私は、平和のために戦争の惨禍を語り継ぎ、世界平和を憲法の精神で語り継ぎ、希求する精神を県民の中に涵養することは、地方自治体としての大きな任務の一つではなかろうかと思っております。そして、残念ながら和歌山県行政の中にこのような視点からの施策が見出し得ないと思いますが、知事の所信をお伺いいたします。
 また、終戦五十周年を迎えるに当たり、和歌山県として憲法の精神で恒久の平和を願い、不戦を誓い、核兵器の惨禍を二度と地球上に再現させないために、行政サイドから非核平和宣言を発せられることを三たび求めるものでありますが、いかがでございましょうか。
 知事は、私の最初の質問の中で、国民的な行為こそが今の平和を守ってきた力だ、県民一人一人の力が今の平和を維持していく上で大きな力になっているんだということを答弁されました。その点は、私の思いと全く同感であります。それだからこそ、さきに述べたように、自治体としての任務も生じてまいると思いますし、その具体化、精神の表明としての非核平和の宣言が求められるところだと信ずるものであります。
 また、さらにそれらの具体的な施策として、終戦五十周年を記念して平和のための記念館を県立として建設してはいかがでしょうか。民間団体がつくられた平和記念館もありますが、ごらんになればおわかりのように、いろいろの制約があるように見られます。それをどう評価するか。ここで私が述べることは失礼なことと思いますので差し控えますが、憲法の精神に基づいて太平洋戦争を振り返り、かつ現在の世界に張りめぐらされた核兵器の実態等も明らかにし、その中における日本の政治的、軍事的位置など、見学する人によって評価はさまざまでしょうけれども、客観的な事実のみに基づく資料を、今はやりの映像などを備えて県民の平和を希求する思いにこたえてはいかがでしょうか。
 また、五十周年を記念して幅広く県民が参加できるようなイベント、戦没者を慰霊することをも含め、さまざまな角度から県民的討論ができるシンポジウム的なものを含んだイベントを開催してはいかがでしょうか。若者たちも参加できるような、そしてそこで学べるようなイベントが企画されることを期待したいと思うのですが、いかがでしょうか。世界リゾート博にあれだけの人を集めた力があるわけですから、そのつもりになれば十分できることと思います。いかがでしょうか。
 続いて、リゾート博についてお尋ねをいたします。
 まず初めに、県政始まって以来の一大イベントに神経をすり減らしながらご苦労された関係者の皆さんに、心からのご慰労を申し上げたいと思います。本当にご苦労さまでございました。博覧会は、人を集めるという点においては文字どおり成功いたしました。同慶の至りであります。
 ところで、私は過去二回にわたり、博覧会成功のメルクマールというのか、指標についてただしてまいりました。当局の答弁にもありましたように、まことに当然のことではありますが、多数の参加者を得るという大前提のもとに、この博覧会が掲げたテーマ、理念及び意義がどれだけ満たされたかという面も総括にとって不可欠なことであろうと思います。三百万近い人々が集まったという事実の前に、今申し上げたような側面からの接近がいささか欠如している感が否めません。したがって、その側面からの検証ということでお尋ねをいたします。
 地方自治体が中心となって主催する博覧会は、単に人を寄せ集めて楽しんでもらうというだけのものではありません。れっきとした政治目標を持ったイベントであります。その政治目標とは、博覧会の実施計画に掲げられた理念であり、意義であり、テーマであろうかと思います。
 さて、私もこの世界リゾート博に三度足を運ばせていただきました。そして、できるだけたくさんのものを見せていただきました。博覧会が掲げた目標がどのように果たされているのかを実際見きわめたかったからであります。
 そこで、感想を率直に申し上げます。珍しいものも結構たくさんありましたし、いろいろ注文もありますけれども、おかげで楽しい時間をそれなりに過ごさせていただきました。多くの方々がそう感じられたのだろうと思います。同時に、二十一世紀のリゾート体験という問題意識を持って眺めるとき、どのパビリオンが、あるいはどの展示物が二十一世紀の体験なのか、ほとんどわからずのままでした。従来の地方博と違った側面を持っていたことは確かに事実です。しかし、最大の眼目であった二十一世紀のリゾート体験はどこにあったのか。
 実は、会場内の不特定の方々にその問題を提起してみました。多くの方々はそのような問題意識自体余り持っておられませんでしたが、二十一世紀のリゾートを体験したかどうか、圧倒的多数の人がよくわからないという否定的な意味を込めた意見を出されました。また、この世界リゾート博は「21世紀を生きる人間の『幸せ創造のドラマ』をつくりだします。 その中で『世界リゾート博』は、本当の豊かさをつくりだすための具体的な提言メディアとして大きな役割を果たすことになります」と基本理念の中にうたわれたわけでありますが、果たしてそのような任務を果たせたのかどうか、私は大きな疑問を抱きながら観覧をさせていただいたわけであります。また、この博覧会を通じて和歌山のよさをどれだけ訴えられたのだろうか、設けられた諸施設を回りながらそんな疑問も抱きました。
 今、当局は、とにかく和歌山に空前の三百万人の人々が集まった、行政はそれを見事にさばき切ったという自信と喜びの声がいっぱいであります。それはそれで結構なことだと思いますが、県費百四十億、その他の自治体の費用を入れますと二百億になんなんという資金が投じられたイベントは、もっと基本的な点から総括されるべきであろうかと思います。私の疑問にお答えいただきたいと思います。
 さて、和歌山のリゾート立県の幕あけとして開催されたリゾート博は終わりました。県の燦黒潮リゾート構想は、さまざまな点で多くの困難に見舞われてまいりました。私は、今まで直面してきた困難は、過去幾度かこの場で申し述べてまいりましたように、県民の要求から出発したリゾート政策という面が大きく欠落していたところに起因していると思っております。リゾート博自体も、三年間で十億円をかけた強力な宣伝費と時代にマッチした手軽な行楽ということでたくさんの人を集めるということに成功いたしましたが、県民のリゾート要求にこたえるとか、リゾート開発を県民的規模でともに考えるという側面は、残念ながら薄弱なものであったのではないかと思います。
 マリーナシティは、松下興産がこれから経営に入ります。どうなっていくのか全く未知数ですが、県民がこうむる利益についても全く未知数であります。強力な企業の論理が展開され、県民は置き去りにされ、松下興産の独壇場となる可能性もあります。本来あるべき県民とともに開発するリゾート政策とは縁の薄いものになるのではないかと危惧するところであります。リゾート立県を目指すならば、それは地域住民とともにという基本姿勢があらゆるところで貫かれなければならないと思います。知事も、リゾート博後に一村一保養施設というような思いを披瀝されていましたが、住民とともにという前提があるとすれば、そういう地道な行程こそリゾート立県を創造する基本であろうかと思っています。大きな企業の利潤第一主義に振り回されることのないリゾート開発こそ求められなければなりません。ポストリゾート博の、リゾート政策の基本をお示しいただきたいと思います。
 続いて、西防埋め立てに関する県の基本的態度についてお尋ねをいたします。
 既に審議会は二度開催され、マスコミにコメントした県の態度なども一部報道されたところでありますが、大変抽象的でありますので、正式にここで具体的なお答えをいただきたいと思います。
 コメントによりますと、まず一番に、利用計画の検討に当たって基本となる考え方について協議したとあります。実質的に最初の審議会ですから基本的態度の協議というのは当然のことでしょうが、ここが今後の審議の基本となるところだと思いますので、どのような協議があったのか、また和歌山県がどのような態度で臨んだのか、具体的に説明をしていただきたいと思います。
 また、住友金属、和歌山市、和歌山県から西防埋立地利用についての考え方について審議会に説明をしたとあります。説明した三者は、それぞれこの埋め立てに関係した当事者であります。単に審議委員として説明されたわけではありません。特に県、市は行政の代表、すなわち住民の代表として説明をされているわけですから、その内容を住民が知るというのは当然であります。ところが、内容は今のところ報告されておりません。住友金属もこの埋立地転用の直接の当事者ですから、何を考えているのか、当然県民の前に明らかにすべきだと思います。県行政の代表としてこの問題に当たっておられる西口副知事に、詳細な説明を求めたいと思います。
 続いて、教育にかかわる三点についてお尋ねをいたします。
 教育費を増額し、豊かな教育を子供たちにという願いは全国の父母の共通の願いであり、県教委も現在まで大変努力をされてきたところであろうと思いますが、先生をもっとふやしてほしい、学校の設備を充実してほしい、父母の負担を減らしてほしい等々の教育行政に対する父母の願いは、まだまだ切なるものがあります。しかし、国の教育予算は、建設費や軍事費の伸びに比べ、その伸び率は低く、父母の願いにこたえられていない現状が長く続いているところであり、それがそのまま地方教育行政に反映しているところでもあります。そして、さまざまなゆがみが生じているところも出てまいっております。
 和歌山県下の地方教育委員会も相応の努力を続けているところでありますが、とりわけ市町村段階で全国に比して特殊なゆがみが長期にわたって続いている現実があります。それは、教育費の少なさという点であります。文部省発行の地方教育費調査報告書によりますと、教育にかかわる基準財政需要額と実際に支出された教育費を対比した統計がありますが、それによりますと、県下市町村の教育費の実際の支出額の合計は基準財政需要額を下回っているわけであります。ご承知のように、基準財政需要額というのは国として認める行政を行う上で最低の必要額でもあります。それは、実際に行政を行う上では文字どおり最低であり、それを上回らなければ本来の行政が展開できないと言われるほどの基準であります。その基準財政需要額を下回るという現実が、実に長期に続いているわけであります。
 統計によりますと、八七年から九二年の平均でありますが、この建築費を除く基準を上回った教育費を支出している市町村は、県下五十市町村中、小学校では九市町村で、四十一市町村は下回っているわけであります。中学校では上回っているのは十三市町村で、三十七市町村が基準より下回っています。そして、市町村の教育費の実支出額を合計いたしますと、基準財政需要額を一とすれば、県下全体で、小学校では○・九二六、中学校では○・八二一と非常に低く、基準財政需要額を満たしていない実情があらわれてまいります。
 参考までに、全国的に見てこれがどういう水準にあるかと言いますと、四十七都道府県中、基準財政需要額を満たしていない県は、小中とも青森県と和歌山県の二県だけであります。青森県が四十六番目、和歌山県が四十七番目と、残念ながら最低のランクにあります。もちろん、教育費を基準財政需要額の側面からだけ見て評価するのは一面的であり、他の側面からも当然検討されるべきでありますが、市町村の教育費の合計が政府の言う最低の基準を満たしていないということは事実であり、重要な問題であろうと思います。
 危険校舎学校比率、校舎不足学校比率、プール設置学校比率等、いろんな指標があります。さらに、特別活動修学旅行費、設備備品費、光熱水費、図書購入費、消耗品費等で小中学校のいずれもが全国のワーストテンに入っているという状況は、このような教育費の実支出の少なさが大きく原因していることは否めないのではないかと思われます。
 以上、申し上げた問題は主として県下市町村教育委員会が主体的に考えるべき問題でありますが、県下全体にこのような状況が生まれているということになれば、県教育委員会としても市町村教育委員会ともどもに考えるべき重要な問題であろうと思われます。かかる現状に対する教育長の所感をお伺いしたいと思います。
 続いて、免許外教科担任の先生の問題について、その改善方を求めてお尋ねをいたします。
 過日、国会の参議院決算委員会でこの問題について論議があったように聞いているところでありますが、文部省の方としても積極的にこの問題解決に臨むという方針を示されたようであります。免許外教科担任の先生の問題については計画的に解消に努めなければならないところであることは、論をまつまでもないことだと思います。
 私は、数名の免許外教科を担当されている先生にお話を伺いましたが、とにかく生徒以上に予習、復習しなければならないし、系統的な勉強も新たにしなければならず、大変だと申されておりました。同時に、それ以上に、生徒たちに十分わかってもらえたのかどうかという不安をいつも抱かざるを得ないというお話をされておりました。生徒への影響も決して少ないものではなかろうと思います。
 この免許外教科担任というのは、一時的、経過的な措置だとされています。しかし文部省自身も、その一時的、経過的な措置を積極的に解決しようとはしないで今日に至っているわけであります。最近、非常勤講師の導入などで若干の手だてを行っているようですが、まだまだ不十分で、責任の大半が地方教育委員会にしわ寄せされているのが現実であります。この免許外担任は、今全国で三万六百人いるそうです。昨年度は若干減りましたが、ここ十数年来横ばい状況で、来年度でどれだけ減らせるのか、今のところ未知数とのことであります。
 ところで本県の場合、免許外担任は七百五十人を超すと言われております。和歌山県の人口規模、財政規模から見て、行政の指標は大体全国の百分の一という数字を当てるのが通例であります。全国が三万余人ですから、三百人前後ではと推定していたのですが、その倍を上回る数字になっております。これは、和歌山県が人口過疎地を多く持つ地であるという特殊性のもたらす点があろうかと思いますが、それにしても大き過ぎる数字であります。平成元年度においては八百七十八人おられたのが現在七百六十四人に減ったわけですから、六年間で百人減っている点は評価されるところでありますが、しかし生徒の減少状況や増減の途中経過を見ると、必ずしも計画的な措置とは見られない状況であります。平成五年から六年への間に八十人減少するという大きな変化がありますが、あとは十人前後の減少率です。この調子だと、いつになったらこの経過的措置が完了するのか、全くわからない状況であります。もちろん、教員相互間の持ち時間の均等化という問題もあり、その点は学校内で十分論議をされなければなりませんが、教育委員会の直接の責任で解決せねばならぬ重要な問題であろうかと考えます。教育委員会として免許外担任教員をどのように考えておられるか、また和歌山県が他府県に比して非常に高い比率になっているのはなぜなのか、現状克服の方向をお示しいただきたいと思います。
 最後に、学校図書についてお尋ねをいたします。
 児童生徒の読書量が年ごとに減少してきていることが、読書の秋ともなるとしきりに嘆かれる昨今であります。私は、この問題で過去に二度ほど司書教諭の配置や公共図書館を充実させることについて質問をいたしてまいりました。その後、県当局、教育委員会の努力の中で立派な図書館も開館し、多くの県民の読書にいそしむ姿が目につきます。また、紀の川筋には三町が新たに図書館を持ったというお話もお聞きいたしました。それぞれの努力に敬意を表するものでありますが、今回は学校図書の充実ということで教育長の見解をお伺いする次第であります。
 さて、昨年の文部省の調査によりますと、小中学生の読書量は学年が高くなればなるほど少なくなって、昨年二月では、一冊も読まないという生徒が小学校五年で一○%、中学生では四四%にもなっていると言われています。また、その傾向が漸次高まりつつあるようであります。また、学校図書館に月に一度も行かなかった小学生は二○%、中学生は五一%と、これも非常に高い数値を占めております。県下の児童生徒についても恐らくこの傾向の中にあるのではないかと思われますが、お調べになったことはあるでしょうか、調査等があればお示しいただきたいと思います。それに対して、具体的な方針をどう持たれているかをお示しいただきたいと思います。
 さて、そのような子供たちの読書離れに対する対応策としてでしょうか、文部省は昨年、全国の学校の蔵書を今の基準より一・五倍にふやすべく、その標準目標を設定いたしました。五カ年計画で予算を組む方針を明らかにしているわけです。この蔵書の現在の標準数は一九五九年に設定されたもので、実に三十四年ぶりの改定だそうです。文部省自身が図書館教育にいかに不熱心であったかを物語るものであり、子供の読書離れの責任の一端を文部省自身が負っていたと思うわけですが、おくればせながらでも図書をふやさねばならないと気づき、その方針を打ち出されたことは結構なことであります。
 さて、和歌山県下の小中学校の蔵書も決して豊かなものではないと危惧いたしております。いかがなものでしょうか。また、文部省の方針によって県下各教育委員会は今どのような対応をされているでしょうか。蔵書をふやし、子供の読書意欲を引き出す、行政上の絶好のチャンスです。どのような指導を徹底されておられますか。
 私がこのような問題をあえて提起いたしましたのは、幾つかの理由があります。
 その一つは、さきに申し上げたような教育費の貧弱さです。図書費として計算され交付された地方交付税も、一般財源の中にどんぶり勘定され、またどこか他の分野に紛れ込んでしまいはしないだろうか、実際の図書にならない可能性もあるのではないかと、そんな心配をしているからであります。そんなことのないように、しっかりした方針を持っていただきたいと思うからでもあります。
 二つ目は、従来の県下の図書費も、全国比で見て低位にあるからであります。県下の学校図書購入費は、さきの文部省刊の地方教育費調査報告書によりますと、九一年度(平成三年)全国比で小学校、中学校とも四十三位という低いランクに位置しています。また、一校当たりの教育費の項目別予算──教育費の中のいろんな費用がありますが、その図書費という項目予算が、県下の学校は全国比で下から五番目、四十二位という位置にあります。残念ながら、どの角度から見ても自慢できない状況であります。こういう実情ですから、相当頑張っていただかないと目標は達成されないのではないかと思うわけであります。県教委の一段のご努力を期待しながら教育関係の質問といたしまして、私の第一問を終わります。
○副議長(富田 豊君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
 戦後五十周年を迎えて、平和への意思をはぐくむ自治体の任務ということでございます。
 恒久の平和はすべての人のひとしく望むところであり、日本国憲法の精神は当然ながら尊重しなければならないものでございます。昭和三十四年九月議会において平和宣言がなされており、それに基づき、県行政の執行に当たって、これまでもそれぞれに取り組んでまいったところでございます。
 次に、非核平和意思表明としての宣言でございます。
 平和の問題については、従来から繰り返しお答えしているとおり、国民一人一人が平和のとうとさを十分理解することが大切でございます。また、平和を支える柱として自由と民主主義が必要で、行政の中で積極的に取り組んでいるところでもございます。ご提言の非核平和宣言については、ご意見として承っておきたいと思います。
 他の問題は、部長から答弁いたします。
○副議長(富田 豊君) 副知事西口 勇君。 
  〔西口 勇君、登壇〕
○副知事(西口 勇君) 鶴田議員にお答えいたします。
 住友金属西防埋立地に関する問題であります。
 西防沖埋立地の利用については、議員ご承知のように、さきに知事の諮問機関として検討委員会を設置しております。現在、その委員会において検討をいただいているところでありますけれども、私も委員として参加させていただいております。
 ご質問の、利用計画の検討に当たっての基本的な考え方については、公表の際にも申し上げているところでありますけれども、その内容は公有水面埋立法等に規定されている用途変更許可条件に合致すること、瀬戸内海環境保全特別措置法の趣旨を踏まえ環境保全に留意すること、特定重要港湾和歌山下津港内にあって良好な港湾機能を有しておることからその活用を図ること、及び位置、周辺環境、交通アクセス等の立地条件を前提として、本県の活性化と県民福祉の向上を目指して、実現可能なものについて慎重に検討することを申し合わせたところでございます。
 なお、県といたしましては、運輸省、建設省、環境庁との協議を踏まえて、これらと同じ趣旨で臨んでいるところでございます。
 次に、県、市、住友金属の土地利用の考え方についてでございます。
 この考え方については、三者ともに環境保全を共通の認識といたしております。県は公共及び公益的利用について、和歌山市は地域活性化のための利用について、住友金属工業株式会社は自社所有地の有効利用について、それぞれ担当者から説明があったところでございます。目下、継続して専門的な立場から、またさまざまな角度からご検討をいただいているところであります。次回は十月十七日に開催を予定されておりますので、現段階として以上でご了承を賜りたいと存じます。
 いずれにいたしましても、県といたしましては検討委員会の検討結果をまって判断いたしたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 民生部長南出紀男君。
  〔南出紀男君、登壇〕
○民生部長(南出紀男君) 鶴田議員の、戦後五十周年を記念して記念館の建設とイベントの開催についてお答え申し上げます。
 記念館につきましては、現在、和歌山市西高松に平和会館が建設されており、二度と戦争の惨禍を繰り返すことのないよう、また平和のとうとさを認識していただくため、戦争関係者の資料等を保存展示しております。今後、県民の皆さんに広く利用していただけるよう、県民への啓発、利用の手法等について会館と協議してまいりたいと思います。
 終戦五十周年記念事業については、広く県民の参加を得て、平和を祈念するための行事等を検討してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 知事公室長中西伸雄君。
  〔中西伸雄君、登壇〕
○知事公室長(中西伸雄君) 鶴田議員の世界リゾート博を振り返って、その掲げた目標は達成できたかというご質問でございます。
 この博覧会は、二十一世紀のリゾート体験をメーンテーマに、他博にはない参加体験型、そして環境重視型の博覧会として開催したところでございます。四方を海に囲まれた人工島において、本県の恵まれた自然のもとで、帆船クルージング、カヌー、ヨットなどマリンスポーツの体験、温泉、フィッシングなど和歌山らしいリゾートの体験、オートキャンプ場や大型帆船による宿泊体験など、多くの方々に参加、体験を楽しんでいただきました。また、この博覧会において物と心、肉体と精神のバランスのとれた充実感としてウェルネスの大切さを強調し、その実現のための方法としてリゾートを提案し、本県のリゾート地としてのすぐれた適地性をアピールしたところでございます。
 会場内では、和歌山の豊かな自然、歴史、文化、産物などを、わかやま館、和歌山プラザにおいて、さらに市町村イベントなどにより多彩に紹介するとともに、コンパニオン、ボランティアを初め県民こぞって参加をいただき、和歌山県人の人情とぬくもりを感じ取っていただけたものと思います。また、関西国際空港の開港、高速道路の開通により近くなった和歌山をイメージづけることもでき、和歌山のよさをあらゆる面から印象づけたものと確信をいたしてございます。さらには、県内外及び海外から三百万人に近い多くの方々に会場にお越しいただき、マスコミ等でも博覧会の模様が連日取り上げられるなど、これからの二十一世紀のリゾートのあり方をいろいろな角度で展示、提案している世界リゾート博から内外に大きく情報発信できたものと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 企画部長宮市武彦君。
  〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 鶴田議員にお答えいたします。
 県民本位のリゾート政策をということでございます。
 リゾート整備につきましては、従来より地域づくり、地域活性化という基本理念に基づき、地域との連携を考慮しながら取り組んできたところでございます。また、最近の国民の余暇需要への対応や本県の資源活用を図るため、リゾート博の一環として本年二月にグリーンツーリズムをテーマとするシンポジウムを国土庁と共催で実施したところでございます。七月には世界リゾートシンポジウムを開催し、二十一世紀の日本のリゾートのあり方や和歌山県におけるリゾート等について検討したところでございます。
 今後は、これらシンポジウムの結果や、好評を得たオートキャンプやカヌー、ヨットの体験等、世界リゾート博の成果も踏まえ、農山漁村の特色を生かしたリゾート整備やアウトドアのような参加体験型リゾート、あるいは低廉で長期滞在できる施設の整備についても検討してまいりたいと考えております。
 なお、これらの整備に当たっては、地域の主体的取り組みや創意工夫が不可欠でございますので、地域の皆様にもご参加いただけるような展開を市町村とともに図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題三点についてお答えいたします。
 市町村教育費についてでございますが、基準財政需要額に対する実支出額の割合は、本県の場合、全国的に見て低い状況でございます。しかしながら、平成三年度の地方教育費調査によりますと、本県の市町村立小中学校の予算では、小学校において児童一人当たりの教育費が七十六万九千円で全国第九位、中学校においては八十万九千円で全国第十七位の水準にあるという結果も出てございます。教育委員会といたしましては、従来から教育予算の確保については市町村の独自性を尊重しながら指導助言をしているところでございますが、今後ともさらに充実するよう努めてまいりたいと考えております。
 次に、免許外教科担任についてでありますが、本県の場合、僻地校及び小規模校を合わせると中学校全体の約四○%となり、全国的に見ても高い割合となっております。このため、教員が所有免許以外の教科をやむを得ず指導しなければならない場合が生じてまいります。また、時間割り編成等から免許外の教科を担当している場合もございます。今後は、こうした状況を改善するため、適正な教員配置に努めるとともに、さらに非常勤講師制度を中学校に導入することや、持ち時間数の調整のために免許外教科担任を行わないよう指導を一層強化することにより、免許外教科担任の削減を計画的に推進してまいりたいと考えております。
 続いて、学校図書の充実についてお答えいたします。
 児童生徒の読書傾向につきましては、近年、子供たちの生活が変化し、多様なメディアが浸透するにつれて活字離れの傾向が指摘されております。本県の児童生徒についても、同様の傾向が研究会等で報告されてまいりました。読書指導の重要さについては、平成四年六月の県議会において議員からご指摘いただき、その後、各学校を指導し、図書館利用の促進を図ってまいりました。その結果、平成五年度の県立高校における図書の貸し出し冊数を見ると、半数近くの十七校で増加しており、全体で約一万冊の増加となってございます。好ましい読書の習慣を身につけるには何よりも読書の楽しさを体験させることが重要と考えますので、読書指導を多様な教育活動の中に計画的に位置づけ、学校図書館の活用を図るよう促進してまいりたいと考えます。
 次に蔵書の実態についてでありますが、平成四年の文部省調査では、一人当たりの冊数では小学校、中学校ともに全国平均を上回っておりますが、図書購入予算等の面では全国平均を下回る結果となってございます。こうしたことから、平成五年に文部省が示した図書標準の冊数に近づくよう、市町村に対し指導に努めているところであります。学校における読書指導は、子供の深い思考力と豊かな感性などを育て、生涯学習の基礎を培うという観点から、今後実態把握に努め、一層の指導に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 25番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、再質問をさせていただきたいと思います。
 知事に答弁をいただきました。前回と同じ答弁でございまして、残念ながら私の意を酌み取っていただけなかったように思います。
 私が今回改めて強調させていただいたのは、地方行政というのは、憲法を守り平和を守っていくという県民の自覚というか、そういうものを涵養していく上で積極的な役割を果たさなければならないのではないかということを言わせていただいたわけです。そういう点で、残念ながら知事さんがおっしゃるように、今の県行政がそういうふうになっているとは受け取れないわけです。
 知事には知事のお考えもあろうかと思いますけれども、あらゆる行政分野を通じて、そういう機会をもっともっと大きく持っていくということをお考えいただきたい。平和の問題、憲法の問題というのは、日本国民として最低の、そしてこれからずっと堅持していかなければならない思いであろうかと思いますので、そういう点をすべての行政の中に生かしていただけるように、要望をいたしておきたいと思います。
 それから、平和記念館の問題について民生部長から答弁がありましたけれども、民間団体がつくっておられる現存の記念館の評価についてはいろいろあろうかと思います。私もその評価については差し控えさせていただきましたが、単に遺品を展示するとか、戦争のときの生活状況を展示するとかということだけではなしに、現在の世界なり日本なりが、今地球上で、平和と戦争の関係でどういう状態に置かれているのかということを、だれがどう評価しようと別ですけれども、客観的に現時点の段階で考えられる場として県立の平和記念館というのがあってしかるべきではないかと思うわけです。幾度も申し上げておりますけれども、憲法の問題なんかも今学ぶ機会が非常に少なくなっているんです。だから、学ぶ機会としてそういう場を設けるというのも県行政の中での一つの大きな仕事ではないかと思います。
 今ここで民生部長に、だからどうしろと改めてお尋ねをしても回答がなかろうと思いますので、要望しておきます。また、別の機会に尋ねさせていただきます。ぜひご検討をいただきたいと思います。
 それから、イベントにつきましては、五十周年を記念して何かを行っていきたいという答弁がありました。期待をしたいと思います。もちろん、戦没者を慰霊するということは非常に大切なことだと思います。それと同時に、現在の情勢にマッチした、私たちの平和への意思を涵養するような内容を盛り込んでいただきたい。特に、若者がうんと参加できるようなことを考えていただきたいと思います。
 リゾート博の問題について、お二人の方から答弁をいただきました。若干評価の違いがありますが、その評価は今後の県政が証明していくことであろうかと思いますので、再質問ということにはいたしません。
 いずれにしろ、マリーナシティはこれから直ちに松下興産の経営に入って新たなリゾート地というものも開けていくようになるそうですけれども、松下興産の夢の島ではなくて本当に県益を生ずるものとしてどうしていくのか、特にその地域、周辺がそれによってどう益を受けていくのかという視点をぜひ貫いていただきたいと思うんです。五百数十億をかけた島がこれから動き出すわけです。大きな企業がその中でぬくぬくというようなことのないように、県民の喜びがその中からどう生まれるか、そこのあたりを考えて追求していただかないと、マリーナシティが単に大きな企業だけの夢の産地ということになりかねないと思います。そういう点で留意をしていただきたいと思います。
 埋め立てにつきましては、県は公共的、公益的立場から意見を述べた、市は地域振興の立場から、住友金属は自社の立場からという答弁がありましたけれども、それがどういう内容だということは少しも言ってくれません。私はそれを聞いていたんですよ。
 審議委員の立場からそういうことは言えないという話を従前から聞いておりました。私は、せめてそういうことぐらいはちゃんと県民の前に明らかにしていくことが必要だと思うんです。三者が県民の目の届かないところ、耳の届かないところで何か論議をしているという状態は、民主主義にもとる態度だと思います。
 十七日に審議会があるそうですけれども、その後、今、県行政なり、和歌山市なり、あるいは住友金属なりが何を考え、どのような態度であそこに対応しようとしているのか、県民に明快にわかるような格好で公表されることを要望しておきたいと思います。
 教育長、大変、努力をされているご答弁をいただきました。今後大いに頑張っていただきたいと思うんですが、和歌山県の数字というのは人口が三分の一以上和歌山市に集まっておりますから、平均してしまうといろいろとわかりにくい数字になってまいります。
 先ほど、学校の教育費が一人当たり九位、十七位というようなお話もございました。ところが、これは学級当たりの費用ということで勘定しますと、また四十番台に落ちてしまうんです。だから、そういう一人当たりの教育費という順位に惑わされるされることなく絶対額をどう強めていくかということで、ぜひよろしくお願いを申し上げます。
 図書の問題について積極的なご答弁もいただきました。一言つけ加えさせてください。
 読書教育には司書教諭というのが絶対だと思います。なければできないというわけではありませんが、これが配置されることが読書教育に決定的な役割を果たすであろうということは、私がもうここであえて言わなくても十分ご承知いただいていることと思います。国の施策という問題もあって直ちに全面的にとはいかないということは私も承知しておりますけれども、県行政の独自の努力の中で活路を見出していただきたい。そういうことを訴えまして、すべて要望としておきます。
○副議長(富田 豊君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
○副議長(富田 豊君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番木下秀男君。
  〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 通告に従いまして、順次質問してまいります。
 まず、多目的ホールと福祉会館建設についてであります。平成五年十二月に提示された和歌山県総合健康福祉整備計画と和歌山県多目的ホール整備計画についてお伺いいたします。
 この計画推進に当たって仮谷知事は県民に対し、「今必要なものは、大規模なスポーツや各種イベントを通じてたくさんの人々のダイナミックな交流が可能な場を創出することである」とメッセージを送っておられます。
 まず、旧国鉄和歌山操車場跡地を購入し、ここに建設計画を予定されており、既に和歌山県多目的ホールの基本設計概要も発表されておりますが、用途目的から見ていま少し検討、見直しを要するものがあると思いますので、以下申し上げます。
 一、二の例を挙げますと、陸上競技トラックは百六十メートル四コース、直線コースは六十メートル六コースとなっておりますが、「大は小を兼ねる」と申します。トラックは二百メートル、直線コースは百メートル八コースがなければ国際大会や室内陸上公認大会開催は無理ではないかと思うのであります。将来計画の中に温水プールもありますが、夏はプール、冬はスケート場となる多目的大プール建設も検討されてはいかがでございましょうか。
 また、健康福祉計画の中に宿泊施設もございます。スポーツ競技参加者も泊まれるように今の計画の十倍ぐらいが必要であると思いますが、いかがでございましょうか。
 今は車社会と言われ、何をするにも駐車場の確保と言われています。この計画どおりの施設が完成し、最大の催し物があれば、参加者、観客双方で一万人にもなることが予想されます。しかし、これでは駐車場不足が確実であります。駐車場を広くつくり、催し物のないときはローラースケート場やサイクリング場等、多目的利用できる計画はいかがでございましょうか。
 今日まで和歌山で大きな大会が開かれなかったのは、施設の不備もございますが、宿泊施設の不足が原因と言われてまいりました。県内はもちろん、県外の人々がのんびりと泊まって楽しめるような施設の建設をされてはと提言するものであります。こう申しましても、この建設予定地の地形を見ると、JR紀勢本線と国体道路の間にある三角形で、その中間に日本貨物鉄道と日本通運のコンテナ基地があり、土地の有効利用ができないのが難点とも聞いてございます。この用地交渉も進められているとお聞きしておりますが、現時点ではいかがなっておりますか。また、全体計画が平成七年六月から平成九年十二月となっておりますが、予定どおり進められるのかどうか、この点についてもお伺いいたします。
 次に、リゾート博覧会成功による記念施設の建設についてであります。
 リゾート博覧会は予想をはるかに上回り、二百九十八万人余の入場を見るという大成功に終わりました。知事初め関係者の皆さんに、おめでとうと祝意を送り、ご苦労さんの感謝の意を表するものでございます。
 竹村健一さんも見物にお越しになったそうでございますが、ラジオで次のように話されておりました。「今まで和歌山は遠いところと言ってきたが、今回のリゾート博覧会は近くなった和歌山を感じた。JR等の鉄道が便利になったことと、何といっても関西空港から一番近い町が和歌山となったことだ。博覧会も三百万人ほどの入場者があったそうだが、大成功であった。和歌山県人が『やればできるんだ』という自信を持ったことは大きな収穫であった。この自信を生かし、これからの和歌山の発展を図るべきであろう。関西空港の開港を機に海外に目を向けた和歌山づくりに取り組めば、すばらしい発展をするだろう。大阪は、万国博覧会の成功を機に会場の一部に万博記念公園をつくったが、これが大阪北摂地方の新しい町づくりとして発展している。和歌山も、関西空港に一番近い和歌山を創造することだ。これからの和歌山が楽しみだ」ということを話されていました。
 私は、この千里公園とまでは申しませんけれども、リゾート博成功を記念して国際交流館的な施設をつくってはと提言するものであります。これは、あくまでも日本貨物鉄道、日本通運コンテナ基地の用地取得を前提としてでありますが、知事の答弁を求めます。
 続いて、水産業振興策と試験研究機関についてであります。
 ご承知のように、和歌山県の海岸は延べ約六百キロメートルを有し、この間に九十九の漁港があり、大小合わせて約七千七百隻の漁船で、主として沖合漁業、沿岸漁業を中心に、さらには遠洋漁業、養殖漁業等を営んでおり、漁法は多岐にわたっております。二百海里体制の定着による漁場の規制が一段と厳しくなり、中国、カナダ、ニュージーランドを主に、世界各国からの輸入水産物の増加による価格の低迷、空輸による鮮魚の輸入の打撃は大きいと言われております。さらに、漁業従事者の高齢化と後継者不足は水産業の将来に不安な状況を生み出しております。
 県は、この情勢の中、水産業の振興策として増殖場の造成や魚礁の設置による生産基盤の整備や漁業の近代化と、それに伴う漁村の活性化に取り組んでおられますが、先行きは明るいとは言えず、本県独自の沖合、沿岸海域漁業の総合的な整備開発が要求されていると思います。
 試験研究機関の充実や増殖、養殖の研究、並びに内水面漁業の振興策も樹立することで、今日まで取り組んできた行政の見直しと検討を重ね、水産振興の強力な対策を望むものであります。現在の県営施設としての水産研究機関は、内水面を別にして、田辺市、串本町、那智勝浦町の三カ所に分散しており、試験研究面での連携の不備と老朽化、並びに狭隘化により業務に支障を来している現状であります。県は、平成元年に水産試験研究機関整備計画検討委員会を設置してその整備構想もまとまり、答申済みと聞き及んでおります。既に五カ年の歳月が過ぎております。
 そこで、前段に申し上げたように、水産業振興対策の上からも実施を急ぐべきであります。その内容とこれからの取り組みについて、知事の答弁を求めます。
 続いて、同じく水産関係でありますが、紀中・日高町の阿尾港に総合漁業基地の建設をということについてであります。
 九月上旬、県議会農林水産常任委員会の皆さん方に日高町阿尾漁港を視察していただきました。この漁港は四種漁港で、瀬戸内海と紀伊水道(太平洋)との漁業規制区域の境界線近くにあり、日ノ御埼灯台のすぐ北にあります。沖合、沿岸漁業が中心で、中型まき網船団二統があり、県下では有数の水揚げ高を持っております。漁港整備もほとんど終わり、背後地の造成も完成いたしました。この漁港整備事業は、昭和三十年開始で完成が平成九年でありますから、実に四十年余の歳月と二十六億七千余万円を投じてようやく漁港形態をなしてきました。平成五年に新しく荷さばき所と製氷・貯氷所が完成しておりますが、砕氷施設は旧式で老朽化いたしております。
 私も、釣りを兼ねてこの漁港によく参りますが、今夏の猛暑の中で、出漁から帰港までの一日をつぶさに見ました。まき網二船団が積んでいく砕氷が約六十トン、一本釣り漁船が積んでいくのが約五トン、漁獲量にもよりますが、入港時にも大体同量の砕氷が必要でございます。使用する氷は、ほとんどが和歌山方面からでありますが、ことしは猛暑のために品不足で大阪方面から仕入れたようであります。この仕入れについて、交通法規改正で積載量が大変厳しくなり、ことしの夏だけで約一千万円の氷代が要ったとも言われておりました。また、この漁港へは、近隣の一本釣り漁船や紀伊水道から瀬戸内海を漁場とする引きなわ漁船──愛媛県や香川県の船も参りますが──も氷や水を積み込みに出入りしてございます。漁港整備の取り組みで背後の埋立地もできましたので、ここにまず製氷施設、続いて貯氷、砕氷、貯蔵加工施設、漁具倉庫等を完備した紀中の総合漁業基地整備にぜひ取り組まれることを提言するものであります。農林水産部長のご所見をお伺いいたします。
 続いて、国道四百二十四号線の整備促進についてであります。
 この国道四百二十四号線は、一九八二年(昭和五十七年)の国道昇格と同時に、岩出、和歌山、湯浅、御坊の各土木事務所において、和歌山県を縦断する中山間道路としてその整備促進に取り組んできたところであります。沿線市町村も、促進協議会を組織し、県と一体となってその実現に努力してまいりました。一部完成して供用を開始し、現在その効果が如実にあらわれているところがございます。
 一例を挙げますと、有田郡金屋町と日高郡美山村間の郡境に、ことし五月末に白馬トンネルが開通いたしました。それに伴い、人、物、情報の流れが大きく変わり、村営施設の利用、売上高も記録的に伸び、活況を呈しているのであります。このように整備が完成したところはよいのでありますが、まだ手つかずのところもあります。
 まず、那賀郡桃山町と貴志川町の間にある宮の前樋門の改修と排水対策であります。ここは、建設省と農林水産部耕地課の問題と聞いております。
 次に、打田町竹房橋から桃山町市場までの約二・五キロの完成見込み、海南市─金屋町の整備計画と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 また日高郡に入りまして、龍神村小家─福井間は、日高川と急峻な山際を通る難工事のため甲斐ノ川から福井下の鍋坂間にトンネル計画があるとも伺っておりますが、その着工と完成はいつごろか、お伺いするものであります。
 次に、南部川村内の整備についてであります。
 「国と県、村の願いで道つくる」、四百二十四号線の南部川地内を走ると、必ず目につくのがこの看板であります。これは、高城地区と清川地区の促進協議会の願いを標語に託して立てたものであります。
 ことしの夏、村の要請で先輩の藁科議員と現地をつぶさに見てまいりました。ご承知のとおり、南部川に沿って曲がりくねった細い道であります。ところどころに対向車用の待避所もありますが、これをうまくかわさなかったならば何メートルもバックしなければならないところも何カ所かございます。この地域に住む人々の笑えない本当の話がございます。結婚式の嫁入りや荷入れの折に、先導車に祝儀袋を持たし、対向車に待避所で待ってもらうように先走りして頼むというようなことを今も繰り返しております。また、高城、清川地区は梅の生産量が急激に伸び、梅を出荷する大型トラック──十二トンぐらいあるそうですが──が来ようものなら、はるかかなたで通過するのを何分も待つというのがしばしばであります。
 この村内の整備状況を見ると、総延長が二十・六キロメートルほどある中で、改良済みは約二分の一の十一キロメートル、改良中は約四分の一の五キロメートル、手つかずの未改良が約四分の一の五キロメートル余りとなってございます。未改良区間はトンネルを含め四カ所となっておりますが、いまだに工区も設定されておりません。その中の長滝地区は崩土のため不通となり、村道に仮橋をかけて急場をしのいでおりますが、復旧のめどが立っていないのが現状であります。早く工区を設定し、全線開通に向けて取り組んでいただくよう強く要望するものであります。
 四百二十四号線全線にわたってお伺いいたしましたが、土木部長の答弁を求めるものであります。
 もう一つ道路関係でありますが、集落環境整備事業と道路整備を並行して行うものであります。
 この事業は、農林水産省が取り組んでいる農村集落排水対策事業の対象が漁村にも広められ、集落環境整備事業として和歌山県下では日高町が初めて取り組む事業と伺っております。日高町阿尾地区と産湯地区が対象に指定され、平成八年度から実施すべく計画が具体化しております。この事業を実施するに当たって、前述いたしました埋立地の一部へ中継ポンプ場と終末処理場が建設される計画です。さらに、埋立地の背後を通る県道御坊由良線へ汚水管渠を三千メートルほど埋設する予定でございます。
 この県道は、私がかねてから提唱している紀中シーサイドロードの整備路線の一部でありますが、阿尾漁港に水揚げされた水産物を出荷する産業道路でもあり、子供たちの通学道路でもあり、生活道路でもあります。各工事ごと通行どめにして掘り返しすることはできない道路であります。
 以上、申し上げた点について、その整備計画を土木部長にお伺いするものであります。
 以上で、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(富田 豊君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 木下秀男議員にお答え申し上げます。
 世界リゾート博の記念となる施設をつくってはどうかというご提言でございます。
 議員お話しのように、本県始まって以来の一大イベントである世界リゾート博の記念を何らかの形で残しておくということは、非常に意義のあることだと思っております。そこで、マリーナシティにあるサンセット公園のなお一層の整備を図るとともに、わかやま館を活用して博覧会の思い出の品等を陳列するなど、記念館の性格をも持たしてまいりたいと思います。また、国際交流館的な施設としてご提言があったわけでございますけれども、ただいま平成九年度完成を目途に準備を進めている総合健康・福祉棟の中に県立の国際交流センターを設置する計画を進めつつあるところでございまして、こうしたものも記念としてやってまいりたいと思っております。
 次に、水産試験研究機関の整備についてでございます。
 二十一世紀に向けて新しい水産業の振興施策の展開を図る上で、お話しのように、総合的、効率的な水産試験研究機関の整備は重要なことでございます。そういった点から、水産試験研究機関整備計画検討委員会において、現在の研究施設の老朽化への対応や技術開発、多様化するニーズにこたえる新しい研究体制の整備等について報告をいただき、その推進について検討を重ねてまいっているところでございますが、地元合意の問題を初め用地の取得など、解決すべき課題が非常に多い現状でございます。今後とも、関係者の意見を十分拝聴しながら、また関係者のご努力をいただきながら積極的に進めていかなければならないと考えております。
○副議長(富田 豊君) 企画部長宮市武彦君。
  〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 木下議員にお答えいたします。
 多目的ホール棟と総合健康・福祉棟の建設について、計画の見直しをしてはどうかということでございます。
 多目的ホールは、県民の健康増進を目的とした施設でございまして、集会、展示会、興行等の各種イベントや各種スポーツ競技大会が開催可能な施設として、現在鋭意実施設計を進めているところでございます。特にスポーツについては、文部省の室内陸上競技場の公認に関する細則に基づきまして、国際室内陸上競技大会が開催可能な施設として整備してございます。また温水プールについては、具体的な整備計画を策定してございませんが、多目的ホール完成後、利用状況、財政状況を勘案しながら検討してまいりたいと考えております。
 次に総合健康・福祉棟でございますが、県民の保健、福祉等の県拠点センターとして整備するものでございます。現在、入居機関と各種協議を重ねているところでございます。県内の方々が利用しやすい施設として、人間ドックや遠距離から来られる研修受講者等のために、施設の規模、利用目的等の総合的な判断から適正宿泊施設規模を考えているところでございます。
 また、事業のスケジュールについてでございますが、入居機関との協議に時間を要しておりまして、事業のスケジュールは若干おくれてございます。しかし、平成九年度内竣工を目指して事業を進めてまいりたいと存じます。
 最後に、ご指摘のとおり、本敷地ですべての駐車場スペースを確保することは困難でございますので、大イベント時の対応として、利用主催者にシャトルバスの運行、公共交通機関の利用啓発を行うよう指導してまいりたいと考えてございます。
 それから、土地有効利用の用地交渉の状況でございます。
 現状の旧国鉄和歌山操車場駅跡地は、日本貨物鉄道株式会社の和歌山コンテナセンターと日本通運株式会社東和歌山支店営業所の約一万八千平方メートルの用地によって分断されてございます。両社の考え方として、代替地があれば移転を行ってもよいとの意向でございますので、多目的ホール棟と総合健康・福祉棟の一体整備を図るため候補地を探しているところでございます。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 農林水産部長野見典展君。
  〔野見典展君、登壇〕
○農林水産部長(野見典展君) 木下秀男議員にお答えいたします。 中紀の総合漁業基地についてでございます。
 阿尾漁港では、まき網漁業を中心として、アジ、サバなど七千トン前後を水揚げしており、これら水産物の付加価値向上を図るため、これまで荷さばき施設、活魚施設、製氷・貯氷施設等の整備に努めてきたところでございます。また漁具倉庫についても、平成六年度沿岸漁業活性化構造改善事業の中で整備することにしてございます。しかしながら、流通コストの増大、消費者ニーズの多様化等、新たな課題もありますので、将来を見きわめながら、今後、阿尾漁港を中紀の漁業基地として、製氷・貯氷施設の増強並びに貯蔵加工施設等の総合的整備を図るべく、地元漁協と十分協議しながら取り組んでまいりたいと存じます。
 次に、国道四百二十四号の整備促進に伴う桃山─貴志川間の排水対策でございます。
 貴志川右岸沿いで桃山町調月、貴志川町東貴志地内の地域一帯の湛水被害を防ぐため、平成二年度から県営排水対策特別事業を平成九年度完成に向けて実施してございますが、最下流部の宮の前樋門の改修が必要でございます。
 そこで、現在、所管の建設省と協議を行っているところでございますが、今後とも改修促進に向けて積極的に取り組んでまいります。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 土木部長山根一男君。
  〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) お答えいたします。
 国道四百二十四号の整備促進についての四点でございます。
 まず、打田町、桃山町の整備計画についてでございます。
 一般国道四百二十四号、打田町の竹房橋から桃山町市場までの区間延長二・五キロメートルのうち、市場から東に向かっての一・二キロメートルの区間は平成五年に事業が完了してございます。残る東側の区間一・三キロメートルについては、平成六年度に事業化したところであり、現在、地元の協力を得ながら測量等の調査を進めているところでございます。今後、早期整備に向けて努力してまいります。
 次に、海南市─金屋町間の整備計画についてでございます。
 現在、金屋三工区と上谷二工区について積極的に事業を進めているところでございます。今後、これらの早期整備に向け努力してまいります。
 なお、残る郡界の付近は、将来的には長大トンネルを含む対策が必要と考えられますが、膨大な事業費を要するため、現在、事業中の区間の進捗を見ながら検討してまいります。当面の対策として、交通隘路区間の解消を図るため、順次局部改良を実施し、交通の安全を確保してまいります。
 次に、龍神村小家─福井間の整備計画についてでございます。
 龍神村小家─福井間のうち、甲斐ノ川─福井間については、現在、甲斐ノ川工区として実施中でございます。このうち仮称甲斐ノ川トンネルは本年度中には工事に着工する予定でございまして、前後道路も含めて平成九年度に供用の予定で進めているところでございます。残る区間についても、早期整備に向け努力してまいります。
 次に、南部川村内の整備計画についてでございます。
 南部川村内では、西本庄橋、南部川三工区、島之瀬工区が事業中であり、今後とも事業中の区間の早期整備に努力したいと考えているところでございます。残された未改良区間についても、事業中の箇所の進捗状況を見ながら検討してまいりたいと考えております。
 次に、集落環境整備事業と県道御坊由良線に関してでございます。
 県道御坊由良線については、阿尾漁港埋立地背後の六百メートル区間の調査を行っており、埋立地の土地利用計画等と今後調整を図るため関係機関と協議を進めているところでございます。
 集落排水事業については、現在、町において計画を持っておられまして、平成七年度に調査を行う予定と聞いておりますので、残る産湯までの区間について町とも十分協議の上、検討してまいりたいと思っております。
 以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 40番木下秀男君。
○木下秀男君 ありがとうございました。
 リゾート博に関しての記念施設でございますが、実は私は、九月二十五日の夕方の閉会式に参加いたしまして、わかやま館の二階で皆さん方と式典の始まるのを待っておりました。そのとき、知事に成功のお祝いを申し上げたのですが、知事がわかやま館の二階のベランダから、西にあるポルトヨーロッパを眺めながらしばしたたずんでおられる姿を拝見いたしました。満足されたものか、さらにポストリゾート博について思いをはせておられたのかわかりませんけれども、そのときの知事のお姿が今もはっきりと脳裏に映っております。
 先ほど申し上げた記念館という言葉だけではなしに、仮に和歌山県でギネスのような記録をとっておるとすれば、開県以来まず最高の出来事であったと思います。そういう意味からも、このリゾート博を記念した施設の建設に向けてお取り組みいただくよう、重ねて要望いたします。
 次に土木部長でありますが、質問の中に答弁がございませんので申し上げます。
 この四百二十四号線の南部川村内へ、県議会の建設常任委員会の皆さんが予定を変更してわざわざ現地を見ていただきました。工区の未設定地区の中に一カ所、長滝地区というのがございますが、ここを仮橋を通って上っていただいたわけです。ここに大きな崩土がございまして、これが発生から六カ月余り不通でございます。それで、現在、村道に仮橋をかけて迂回路として利用しておりますけれども、この村道の整備計画もあと架橋だけが残っているのが現状でございます。もしこのままするとすれば、村の村道整備計画も延長せざるを得なくなりますので、この崩土の除去作業を急ぐとともに、四百二十四号線の開通に向かって積極的な早急な取り組みをしていただくよう──これは要望としておきます。村としても、事業変更をしなければならないほどの大計画を持っておりますので、この点を重ねてお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
○副議長(富田 豊君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で木下秀男君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(富田 豊君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時四十四分散会

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