平成6年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 25番鶴田至弘君。
  〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 お許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 まず最初に、住友金属による埋立地の転用問題についてお尋ねをいたします。
 この問題については、きのうも論議がありましたし、私も過去二度にわたりお尋ねしたところでございますが、現在、埋立地の転用をめぐって検討委員会が設置されるに至りましたので、改めてお尋ねするところでございます。
 一九九一年に住友金属が埋立地の転用意向を表明して以来、知事は、転用は遺憾であるとしながらも、関電のLNG発電所計画等については、環境アセスメントや住民合意が必要であろうということを表明するにとどまってまいりました。私は、転用が遺憾であるならば、その転用工作を中止させるべく免許権者としての責務を果たすべきだと求めてまいりましたが、知事初め当局はその方向で何ら対処することなく、事態は旅田市長の例の強引な手法と企業によって一方的に進められて現在に至りました。
 一方、公害は今も残っている、観測地点を変えて新たな観測をする必要があるのではないか、将来の生産規模の拡大によって公害はどうなるかわからない、そのような疑問や不安を残したまま、さらに自治会の合意は住民の総意ではないという不満や不安を残したまま事は運ばれて現在に至っております。結局、この転用意図が表明されてから三年間、何が水面下で話し合われていたか私どもが知る由もありませんが、県は今日のこの事態が来るのをじっと期待して待っていたのか、あるいはこのことを期して工作を進めていたのだろうと推測されるところであります。
 ところで、埋立地は公有水面でした。それは、瀬戸内法という法によって埋め立て等は厳しく規制されたところであり、公害工場の沖出しという大義によって免許されたものであります。それが、状況によって沖出しは不要になったので転用するということになってきた。しかし、果たしてそれが本当にやむを得ないものであったのかどうか。その点がこの三年間、県の主体的な調査やそれによる県民の疑問への回答がないままに検討委員会の設置へと運ばれてきたと、私は大きな疑問を依然として持っているわけでございます。きょうは既に検討委員会が発足している段階でありますから、その時点に即してお尋ねをいたしますが、法的に言えば転用は可能でしょう。公害工場の沖出しという目的で埋められた公有水面が、その目的がなくなったとされたとき、海またはその土地が本来の所有者であった県民や市民のもとに戻してもらえるのかどうかという根本的な問題に答えなければなりません。極めて単純で、いささか乱暴な論理で言えば、原状回復して公有水面に戻せということになるでしょうが、もちろん現実的ではありません。しかし、もともと公有水面、すなわち県民、市民のものであったところが私的な土地になっているという根本的な矛盾にどう答えていくのか。私は、有償であれ無償であれ、基本的にその地はこの際、県に返還されることが最も道義的な態度ではないかと考えているわけでございます。それが、現実的に困難であったとしても、そのような姿勢が県や企業にあるかないか、それが今後この地の利用の上で大きな差異を生んでくると思うわけであります。また、その際重要な意味を持ってくる企業による埋立原価について、あるいはその積算方法について県は承知しているのかどうか、知事並びに関係当局の見解を伺いたいと思います。
 今回、企業の方から利用は県の方で検討されるのが望ましいと、県は検討をゆだねられたわけですが、果たして無条件にゆだねられているのでしょうか。県への申し入れでは、この土地が貴重な土地であるがゆえに、公共、公益的に活用されたいとありますが、ただ三工区だけが公共的に活用されたいとされています。それでは一工区、二工区は県に白紙委任されたのか、それとも私企業による公益的活用が前提とされているのか、前後の経過から見てそういう方向が前提とされているのではないか等々の疑問を抱いているのであります。完全な白紙委任ではなく、三工区は公共、一、二工区は私企業による利用と条件が付されているように読めるところでありますが、県当局の見解をお伺いいたします。
 また、同社の申し入れ文書には、「埋立地の新たな利用計画については、弊社の利用計画も有している」とありますが、同社は一九九一年の転用意向表明の際に、「物流基地や関西電力のLNG火力発電所の可能性を検討していく」とありましたけれども、今回の申し入れの際、同社が有していた計画とはいかなるものであったのか、明らかにしていただきたいと思います。
 あえてそれをお尋ねするのは、検討委員会にゆだねるとされているものの、今までの流れの中で企業の意向が既定の方向として考えられているのではないかと懸念するからであります。いずれしろこの際、一切にとらわれず、一、二、三工区全面にわたって県の主体的な検討が望まれるところでありますが、昨日の質問に重ねて当局の見解を求める次第であります。
 また、それだけに検討委員会の任務は重要であろうし、広く県民の意を体して検討されることを望むところでありますが、この委員会が非公開であるというところに大きな問題を感じます。なぜ、正々堂々と公開されないのか。検討委員会の議論が公開されれば、当然、世論はそれに反応するでしょうし、検討委員会はまたその世論にも反応するでしょう。しかし、それこそが広く県民の意を体するということであり、幾人かの学者と県市各一名の代表者が県民のわからないところで審査するなどというのは、まことに妙な話であります。世論を圧力や雑音と考えているようでは民主的な検討とは言えないでしょう。再考すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 また、検討委員会による検討範囲はどこまでなのか、明らかにしていただきたいと思います。公共的利用、公益的とはいえ、私企業による利用の範囲を定めるのか、あるいはもっと具体的に公共的利用なら何をするとか、私企業による業種まで検討するのか、どの辺まで検討するのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
 なお、三工区は公共に活用をとの企業からの申し出は、その土地の県への無償提供を意味するのかどうかも明らかにしていただきたいと思います。
 同時にこの際、広く県民の意向を聞き取るために、埋立地に関する基本的な考え方も含め、活用方法を討論する公聴を行ってはいかがでしょうか。公聴的な場を持ってはいかがでしょうか。県民の中にはたくさんの疑問が残されたままです。その疑問にも答えるとともに、公有水面を埋め立て、その目的外への転用に当たって、何を基本として考え、いかに活用されるか、県民的議論があってもいいはずであります。企業と和歌山市が早々と転用方向を打ち上げて住民工作に奔走する、知事は遺憾と言いながら何もせずじっと見ている、三年たってある程度世論工作が終わったころ、貴重な土地だから県で利用方法を考えてくださいと申し出られる、しかも三工区は公共に使ってください、ただし、白紙とは言いながらも、一工区、二工区はいろんな含みを持って提案されている、その上、検討委員会は非公開。そんな流れを見てまいりますと、内々に話はもうでき上がっているのではないか、単に県が公正に検討するように装っているだけではないか、そんな疑問が生まれてくるのは当然ではないかと思うのです。もしそれが実情なら何をか言わんやでありますが、そうでないとするならば、検討委員会の公開を含め、公聴会を開いて十分県民の意向が反映されるよう対処すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
 この項の最後に、和歌山市と関電が進めようとしているLNG発電について、またLNGの危険性について、当局がいかなる認識をお持ちなのか、お尋ねをしておきたいと思います。
 和歌山市と関電によって、LNGは安全だ、クリーンだと、早々と和歌山市全戸に宣伝が行われてまいりました。しかし、事はそう簡単なものではありません。過去のLNG事故を見ても、一九四四年、アメリカのオハイオ州で百三十名の死亡、数百名の負傷者の事故を起こしております。一九六六年西ドイツでは、死亡三、負傷八十三という大事故もありました。一九六八年にはオレゴン州で四名の死亡、数十名の負傷者、一九七三年、ニューヨークで四十名以上の死亡、そういう事故が相次いでいるわけであります。
 以上は、死亡災害を伴った工事現場の事故として目立ったものだけでありますが、これだけでも、安全であると手放しで宣伝することの愚かさを十分に物語っていると思います。LNGの安全だけが一方的に宣伝されているとき、県当局としてはこの反面の事実こそ十分研究し、県民への啓発に当たらなければならないと思いますが、LNGの危険についていかほどの認識を持っておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
 続いて、子供の権利条約についてお尋ねをいたします。
 従来、子供を大切に保護育成し、その権利を尊重するという宣言や憲章、法令等は時代の進展とともに充実発展させられ、今日に至っていますが、子供の権利条約は従来のそれらと比して画期的な内容を持っていると言われています。子供の権利を宣言した一九五九年の児童権利宣言等も、大きな意味を持って世界の子供の福祉の向上に資してまいりました。それは、国や行政に努力の義務を求めただけのものでありましたが、さらに権利条約はその努力義務を措置する義務へと発展させ、子供を保護の対象からさらに権利行使の主体へと、その子供観を発展させました。しかし一方で、現実の問題として、この権利条約は発展途上国の問題であるとみなしたり、日本は既に子供の保護育成が法によっても定められているから、あえて考慮の必要がないのではないかとの議論もあります。当局として、この条約の発効の意義、それを行政上どう生かすべきと考えているのか等、所見を明らかにしていただきたいと思います。
 ところで、子供の権利条約は大人がつくった条約であります。子供は、その条約の存在も、みずからに付与された権利も知りません。権利は、まず当事者に自覚されなければなりません。大人には、まずその仕事があります。そのために、大人自身がこの条約の精神を身につけなければなりません。条約の履行のために国や地方行政がまず果たさなければならない仕事の一つは、ここにあると思います。子供の権利と言えば、実にさまざまな誤解や偏見があるのが実情です。子供は保護育成される対象だから権利の制限は当然だという考え方や、判断力の未熟な者に権利を与えてどうするのか等々、実にさまざまであります。そのような思想状況の中にあって、子供の権利条約をすべての県民のものにするために県行政として何をされようとしているのか。さまざまな文書の発行や啓発的講習等、積極的な対応が求められると思いますが、いかがでございましょうか。
 また、条約の立場に立ち、行政や社会生活が子供の権利を侵害していないかどうか、子供の権利を満たしているかどうか広く見直し、現在の行政の隅々まで検討してみる必要はないでしょうか。子供は家庭とともに夕食をとり、夕刻の団らんを家族とともに楽しめているだろうか。退廃文化にさらされてはいないだろうか。図書館には十分に図書があるだろうか。放課後の生活は安全で文化的だろうか等々、すべての分野から見直し、大人として最良のものを与えるという条約の精神を満たすための努めが我々には課せられたと思います。その見直しを図るためには一定の機構が必要だと思いますが、いかがお考えでしょうか。
 すべての行政機関が子供の成長にかかわっていると言って過言ではないでしょうが、教育関係はとりわけ大きな責務を持っているでしょう。そのあらわれでしょうが、文部省はいずれの省庁よりも先駆けて、五月二十日、「児童の権利に関する条約について」と題する通知を各都道府県教委とそれを経由して学校関係におろしました。私は、この文書が新聞等に報道されたり、その文書そのものを見たときに、その内容に大変疑問を抱きました。県教委はこの文書についてどのような所感を持ち、また条約の精神に沿ってどのような教育行政を発展させようとされているか、お尋ねをいたしたいと思います。
 ついては、県教委において、条約と文部省通知について論議をされたことがあるのかどうか、まずお伺いをしたいと思います。
 この通知では、本条約は、日本国憲法や教育基本法と軌を一にするものであるとして、まことに久しぶりに文部省の通達文書に日本国憲法や教育基本法が肯定的に描かれて出てまいりました。まことにご同慶の至りというところでありますが、指示の各項になると、また首をかしげざるを得ない、何のための条約批准かと思われるような節に出会います。この各項目ごとの指示は和歌山県の教育においてもいろいろと影響を受けるところでありましょうから、この通知を県教委がどのように読み取り、県下の教育の中に子供の権利条約をどう生かそうとしておられるのかをお尋ねしたいと思うわけであります。
 その通知の一部に、次のような一説があります。「本条約第十二条から第十六条までの規定において、意見を表明する権利、表現の自由についての権利等の権利について定められているが、もとより学校においては、その教育目的を達成するために必要な合理的範囲内で児童生徒等に対し、指導や指示を行い、また校則を定めることができるものであること。(中略)これは学校の責任と判断において決定されるべきものである」と論じております。
 この十二条から十六条というのは、意見表明権を初め、子供の権利、表現、情報、思想、良心、宗教、結社、集会の自由等々を記した項でありますが、これらの権利がほとんど顧みられることなく、今紹介いたしましたように、例えば校則については、「学校においては、その教育目的を達成するために」と子供の権利に触れることなく、校則を定めることができると断定されているわけであります。
 子供には発達段階があります。子供の権利を認めることは、子供の言うとおりせねばならぬということでは、もちろんないでしょう。学校は学校としての指導の任務があるのは当然であります。しかし、条約の精神を一方で口にしながら、この項には、子供の意見を聴取したり、それを生かしていこうという文言は一言もありません。校則等において、「これは学校の責任と判断において行うもの」と、まことに一刀両断であります。学校の責任と判断については当然ではありますが、校則とは子供が守るべきものであります。子供の納得は当然必要でしょう。十分な判断力があれば、本来、子供自身が定めるべきものでもありましょう。その中でこそ、子供はみずからを律することのできる大人に成長していくのです。子供の意見、権利はどう尊重されるのか、全く触れられていないどころか、無視されている思いであります。
 私は、ここで校則問題で論議をするつもりはありませんが、校則が文部省によって例として取り出され、またここで権利条約がどう生かされているかの否定的な典型を見る思いがいたしましたので、文部省通知に即して私の見解を述べました。子供の権利条約はここでは生かされていない、私はそう思いますが、教育長の所見をお伺いしたいと思います。
 文部省通知の第五項は、子供の意見表明権に対して特別の解釈を加えているところであります。私がこの項目に奇異を感じたのは、この意見表明権は「表明された児童の意見がその年齢や成熟の度合いによって相応に考慮されるべきという理念を一般的に定めたものであり、必ず反映されるということまでをも求めているものではない」というコメントを付していることに対してであります。ここでは、本来なら、学校として意見表明権をどう保障し、かつ指導するかという新しい問題提起があってしかるべきところでありますが、一般的に定めたものだ、必ず反映せよというものではないと、逆に権利制限の方向を強く打ち出している点であります。
 四項、五項に共通するのは、子供を指導に従う対象としてだけとらえ、子供を権利行使の主体者としてとらえているとは言えないものになっています。したがって、条約の批准、発効によって、どのように子供たちに権利を保障するのかではなく、指導上どんな制限ができるのかという、全く条約の理念と原則に反した通知になっていると思います。教育委員会の論議に当たっては、このような点はどう論議されたのでしょうか。
 いじめの問題、登校拒否、希望を生かした進学、その他無数と言っていいほどの子供の権利をめぐる問題が山積しています。条約の立場から、これらの焦眉の問題にどう対応されようとしているのかを含め、教育長の所信をお尋ねする次第であります。
 次に、サッカーくじの法案化について、教育長の見解をお尋ねしたいと思います。
 サッカーくじは、日本オリンピック委員会や日本体育協会等のスポーツ団体が、プロサッカーの創設に際して、イタリアのトトカルチョをまねて、資金確保の苦肉の策として、一九九二年、各党に要請したことから政治の舞台に上ってまいりました。これらのスポーツ関係団体が資金難を克服するために、文字どおり苦肉の策としてサッカーくじに思いを寄せたことについては、永年のスポーツ予算増額の願いがほとんどかなえられていないだけに、その心情は理解できないことではありません。しかし、今、十代、二十代の青少年がサッカーブームの中心部分にいることを考えるとき、プロサッカーJリーグをギャンブルの対象とすることについて、私は大きな危惧を抱くものであります。
 第一に、サッカーくじ導入は、Jリーグの健全なスポーツとしての発展をゆがめ、ギャンブルスポーツに変質させかねない危険をはらんでいます。そして、スポーツ本来の文化的、教育的役割をゆがめ、青少年の人格形成やモラルの発達にも新たな障害を持ち込むことになりかねません。こんなことを言えば、心配し過ぎだと言う方もおられます。しかし、サッカーくじ法案大綱が、くじ販売の制限の対象としては、青少年の発達状況、社会環境、法規制の遵守等を考え十八歳以下とすることとしていること、すなわち十九歳からでないと、このくじは買えないとしていること自体に、サッカーくじが十八歳未満にはいかに教育的悪影響を及ぼすか、法案の作成者自身が認めていることのあらわれだろうと思います。
 また、一方で、くじも安易にしかも安く購入できる方法もとられようとしています。茶の間にまで広がってきたサッカーくじが、スポーツの楽しみをギャンブルの楽しみへと変質させれば、これほど嘆かわしいことはありません。まさか競輪、競馬のように純粋のギャンブルになりはしないとは思いますが、たとえ年齢制限をしたとしても、青少年への悪影響が十分に懸念されます。スポーツもかけなければおもしろくないという風潮、スポーツもかければもっとおもしろいという風潮が、これを機会にだんだんと広がっていく可能性もあります。他のスポーツにもその影響が出てきはしないだろうか。全国地域団体連絡協議会や日本PTA全国協議会も、法案大綱を撤回されたい旨の態度を表明いたしました。このような状況の中で、青少年の健全な育成とスポーツの健全な発展をリードする県教委もサッカーくじに反対する意向を表明し、スポーツと子供の健全な発展のために先頭に立っていただきたいと願う次第であります。
 また、スポーツ予算の少なさがかかる事態を生み出してきている状況を踏まえ、国に対してスポーツ予算増額の実効のある要望、手だてを講じられることを求め、教育長の所見をお伺いする次第であります。
 以上で、第一問を終わります。
○議長(宗 正彦君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
 住金の埋立地に関連いたしまして、転用目的の埋立地は公有の地ということでございます。
 西防埋立地の第一工区、第二工区は、公有水面埋立法第二十二条に基づきまして、もう竣功検査を終わっております。既に住友金属の所有地となっておりますので、埋立工事中の第三工区とは法律上の位置づけが異なるわけであります。したがって、公共へ提供される予定である第三工区と竣功済みの第一工区、第二工区を同列に扱うのは適切でないと考えており、ご指摘のような返還の申し入れをする考えはございません。
 次に、住金の埋立地に関連いたしまして、埋立地全区を検討の対象にという問題、また白紙からの検討という問題でございます。
 昨日もお答えしたわけでございますけれども、西防埋立地の新しい利用については、高い見地と公正な立場から検討が必要という考えから、西防波堤沖埋立地利用計画検討委員会を設置し、検討していただいているところでございまして、この委員会では埋立地すべてを白紙で検討いただくこととし、第一工区及び第二工区については公共、公益的利用、第三工区については公共利用で検討をお願いしているところでございます。
 次に、子供の権利条約でございます。
 話もございましたが、本条約は児童の意見表明権、思想、表現の自由、児童に対する差別の禁止等、児童の権利に関して包括的な協定をされたものでございまして、児童の権利宣言等と比べて児童を主として保護の対象としてとらえるだけでなく、権利の主体としての側面も打ち出しているところでございます。
 現在、少子化の社会でございます。本県においても、子供を健やかに育てる環境づくり等、児童を取り巻く諸問題に対して議会とともに懸命に取り組んでいるわけでございます。また、世界に目を向けると、多くの国々で生命権すら危ぶまれる児童が存在しているわけでございます。そうした中で、ことしは家族の意義について考えようという国際家族年でもございます。このときに当たりまして、児童の最善の利益を主として考慮し、その保護、人権について積極的に対処する契機となる本条約の持つ意義は大きいものがあると思っております。
 次に、条約への行政の対応でございます。
 申し上げましたとおり、この条約はすべての児童の幸せを保障する極めて意義のある内容であると認識しているところでございまして、行政、児童福祉関係者のみならず、広く児童を含めた県民の皆さんにその内容、意義をご理解いただき、一体となって、意識、実態両面で一層、児童の人権尊重の契機となるよう、この条約の趣旨を啓発してまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 土木部長山根一男君。
  〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 鶴田議員にお答えいたします。
 まず、住金の埋立地に関連して、埋立原価についてでございますが、現時点では住友金属から聞いてございません。
 次に、第三工区について有償か無償かどうかというご質問でございますが、住友金属工業から、埋立工事中の第三工区については、竣功後、県において公共の用に供してほしいとの申し出がありましたが、この申し出の第三工区については無償で提供されるものと理解してございます。
 それから、白紙からの検討をのご質問の中で、住友金属の計画を申し入れの際に聞いたかという点でございます。
 今回の申し入れについては、埋立地が公有水面を埋め立てた利用価値の高い土地であること等から見て、埋立地の新たな土地利用について県にその検討を依頼してきたものでありますが、申し入れの際、住友金属工業が有していたという計画については、今のところ聞いてございません。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 企画部長宮市武彦君。
  〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 鶴田議員にお答えいたします。
 住金の埋立地に関連いたしまして、検討委員会の公開と公聴の必要性でございます。
 検討委員会の運営でございますが、第一回の運営委員会において、忌憚のない議論を交わしたいとの委員の総意によりまして、会議等は非公開と取り決めてございます。会議内容の概要等については、委員会の了解を得て、許される範囲内で公表してまいりたいと考えてございます。また、委員会が検討を進める上で必要と認めるときは委員以外の出席を求めるとの取り決めがなされております。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 総務部長木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) LNGの危険性の認識についてのご質問でございます。
 LNG(液化天然ガス)の危険性については、これはメタンを主成分とした液体燃料でございまして、都市ガスとして家庭用にも使用されているものでございます。
 このLNGを使用した発電所を新設する場合には、過去における外国での事故例を教訓に、電気事業法によりタンクに安全対策、耐震対策等を施すことが必要とされており、また発電所の附帯設備としての危険物施設、高圧ガス施設の設置についても、消防法、高圧ガス取締法などにより所要の防災対策を講じなければならないとなっております。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 民生部長南出紀男君。
  〔南出紀男君、登壇〕
○民生部長(南出紀男君) 鶴田議員の、子供の権利条約にかかわってのご質問にお答えいたします。
 まず、広報啓発活動の推進でございますが、ただいま知事からも申し上げましたが、児童福祉を所管する民生部といたしましても、この条約の重要性を踏まえ、本年一月に設置いたしました主任児童委員を初め福祉関係者への積極的広報はもちろんのこと、関係団体の研修、会議等、機会をとらえて、その内容、精神等についての積極的な広報啓発に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、条約の研究推進体制の強化の点でございますが、この条約が発効した今、議員ご指摘のとおり、行政や社会生活においてその精神が貫かれているかどうか、もう一度考えてみることは非常に大切なことだと認識してございます。
 民生部においては、児童福祉審議会や関係の庁内各課、また第一線の児童相談所を初めとする児童福祉関係機関において、要保護児童問題、児童の健全育成等、児童福祉に積極的に対処しているところでございますが、この児童の権利条約が発効したことに伴い、いま一度児童の権利保護について十分配慮がなされているか注意を喚起するとともに、この条約の精神を尊重し、児童を人権の主体、一個の人格を持つ人間として、その正当な権利が守られるよう努力してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 子供の権利条約とサッカーくじについてお答えいたします。
 児童の権利に関する条約については、関係機関と連携を図りながら、教育委員会内部において、児童にとっての最善の利益という観点から、子供を単なる保護の対象としてだけでなく、権利を行使する主体としてとらえる条約の趣旨を学校教育にどのように生かすか、積極的に論議を深めているところであります。
 本県においては、憲法及び教育基本法はもとより、人権尊重の精神を貫く同和教育等を積極的に推進してきているところであり、この条約と私どもの進めている教育の考え方は同じであるとの認識に立って、今後さらに条約の趣旨を学校等に周知徹底してまいりたいと考えます。
 意見を表明する権利などについては、あくまでも児童生徒の年齢、発達段階に応じて相応に考慮し、適切に指導していくべきであり、このことは親や教師の義務であると同時に、責任であるととらえてございます。
 文部省通知についても、このような観点から児童生徒の実態、保護者の考え方や地域の実情等を踏まえ、一層きめ細かな指導をしていくように留意することを求めたものであると理解してございます。
 いじめ、登校拒否等については、現在の教育における病理現象ととらえておりまして、一人の子供の問題としてとらえるのではなく、子供全体の問題であると考えてございます。こうした課題に対しては、心の悩みを受けとめ、解決を図る取り組みが重要であるとともに、一人一人の個性を生かす教育を積極的に推進しなければならないと考えております。このため、教育相談の充実を図るとともに、家庭や地域との連携を一層重視し、保護者や地域社会に開かれた学校づくりとなるよう強く指導しているところであります。
 また、本人の希望を生かし、主体的に学ぶことができる個性を生かす教育を推進するため、中学校にあっては選択履修幅の拡大やチームティーチングの導入、高校にあっては教育の本質、不易の部分を大切にしながら、学校間連携を初め、総合学科の設置、単位制課程の導入など、さまざまな新しい施策を積極的に講じてきているところであります。
 今後、本条約の理念の実現を目指して、さらに児童生徒の人権に十分配慮しつつ、こうした施策や指導の一層の充実を図ってまいりたいと考えてございます。
 次に、スポーツは、心身ともに健康でたくましい青少年の育成や豊かで活力ある地域社会づくりに重要な役割を果たすものであると考えてございます。
 スポーツ振興くじについては、報道等を通じてスポーツ議員連盟において将来を見据えた新たなスポーツ振興方策実現のための財源確保の方策としてその構想が検討されていると伺ってございます。スポーツの振興を図り、青少年の健全育成を進めるためには十分配慮する必要があると考えます。このことについては、今後、国会の場で広く国民の意向を反映した論議がなされ、適切に対応されることを期待しております。
 なお、国のスポーツ予算については、従前から増額されるよう強く要望してきているところであり、スポーツ振興の重要性を踏まえ、今後ともあらゆる機会を通じ、国に要望してまいりたいと考えます。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 25番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、再質問をさせていただきます。
 住友金属の埋立地、一、二工区と三工区が所有者が違うんだから当然考え方も違ってくるというお話でございまして、それは私も当然だと思っております。私が特に知事にお尋ねして考えを求めた点は、一工区にしろ三工区にしろ、もとは公有水面であったという問題、そしてその一工区から三工区までの全工区がすべて転用されることになったという問題、こういう根本的な問題です。もとは公海であったのが私的な土地になっているという矛盾があるときに、本来、企業や県はどういう立場でそれを見ていかなければならないかということを訴えたかったんですよ。
 恐らく、住友金属は多額の金をつぎ込んであの土地をつくっています。全部、公有にしようと言ったって、そう簡単にできることではないんですよ。そういう点はよくわかりますから、有償であれ無償であれ、どうしていくのか将来の問題いろいろあると思うけれども、基本的な考え方として、あれはもともとみんなの海であったんだという観点に立たないと、後々の対応に大きな差が出てくると私は思うんです。そういうような立場に、県の方としても、企業の方としても立っていただきたい。そうならなければ、これからあの土地がどのようになっていくのか、大きな懸念を残すままになるのではないかと思っているわけです。
 それで、そこの点で知事がどう主体性を発揮するのか、あちらはもう住友の土地になっているんだ、こっちはまだなっていないからと、こういうような考え方だけでは本当に県が主体性を持った対応をできないんじゃないかと思います。そういう点で、もっとはっきりと県の主体性を打ち出していく必要があるのではないかと思うわけです。
 そういう中で、一つ気になる点があります。住友金属から申し入れがあったときに、この土地は埋め立てるのに何ぼかかったかということについては聞いてない、住友金属がこの土地を利用するについてどんな計画を持っていたかということも聞いていない、私は、これは全く主体性のない話だと思うんです。これから白紙委任されるわけでしょう。白紙委任されて出される結論というのは、これからはすべて県の責任になるんですよ。そうすれば、そのくらいの初歩的なことは当然聞いてあってしかるべきでしょう。聞いているけれども言わないというんだったら話は別ですよ。そうじゃないかなとも思っているんですけれども。しかし、一応聞いていないとおっしゃられた。それは大変無責任な話だと、私は思います。だから、白紙委任されたら、今後県は一切責任を持たなければならないという立場になっているわけですから、そういう点での主体性がどう発揮されるのか、そこのところをお考えいただき、答弁をもらいたいと思うんです。
 もう一つ、その主体性という問題について検討委員会との関係があります。
 検討委員会が非公開になって、時折、必要に応じて内容を発表するとのお話がありましたけれども、私はもっと世論を聞く機会を持たせなければならないと思うんです。そこで出てきた結論を県が尊重してということになるわけですけれども、その際に検討委員会の中で県の意向はどういう格好で反映されるのか。副知事が出席されておりますが、全く白紙の立場で出ていかれたら、これは話にならんと思うんです。やはり県は県としての問題提起もあろうと思いますし、考え方もあろうと思います。そういう点はどうなっているのか、少なくとも今までの答弁ではわかりません。
 私は、一問でいろいろ申し上げた中に、話はもう大筋のところでできているのと違うかと、そういう疑問をずっと持ち続けているんです。そうなったら、この問題について和歌山県の主体性はどういうふうに貫かれているのか、こういう問題についてどうお考えになっているのか、お答えいただきたいと思います。
 権利条約の問題について、知事初め部長、教育長から積極的な方向を提示されたことについて、今後の行政に期待をつないでいきたいとと思いますが、現在、条約発効してまだ日時がたっておりませんから具体化されていないのはやむを得ないと思いますけれども、どうか積極的な対応をしていただきたいと思います。
 私は、先ほど文部省見解を長時間にわたって紹介をいたしましたが、さっき民生部長が、子供の権利が本当に守られているのか、もう一度この際に見直してみようと思うという表明をされました。あの文部省見解というのは、そういうのが全然ないんですね。少なくとも、私は読み取れないんです。そういう点、教育長から趣旨はこういうことだという答弁がありましたけれども、積極的な子供の権利宣言の意味を──教育長自身は十分とらえられておると思いますが、今後生かしていただきたい点を要望としてつけ加えておきたいと思います。
 サッカーくじのことについてお願いがございます。
 十分配慮する必要があるとおっしゃられましたけれども、これが実施されると一体どういう状態が生まれてくるかということについて、特にスポーツの健全な発展、子供の健全な育成という立場から考えてみてほしいと思うんですね。ほかの部長さんが、サッカーくじについては十分配慮してもらわんならんという答弁ならやむを得ないと思いますが、教育長の場合は率直にもっとはっきりと、サッカーくじでスポーツの健全性を阻害されては困る、子供の健全発達、育成には障害になるんだから困るということをもっと大きな声で言ってほしいと私は思うんです。長の立場もありますから、まだ法案が国会に上程されていないという段階ですから評価もしにくいというお立場もわかりますが、こういうのは事前に世論をどう大きくするかということが、やっぱりかかっているわけです。もちろん、賛成の方もおられるでしょうけれども、しかし、スポーツと子供の未来のために、こういうくじを導入することについては何とかやめるように、教育長もお骨折りを願いたいと思うんです。これ、もう私の願いです。教育長はそういう重責におられますので、強く要望いたしまして、私の第二問を終わらせていただきます。
○議長(宗 正彦君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
 住金の問題について、第一、第二工区の件でございますけれども、先ほど申しましたように、もう竣功検査は終わっておる。所有権も決まっておる。それは鶴田議員も知っておる。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 それで、これからの問題、やっぱり産業政策の問題、雇用条件の問題等もあるわけでございます。そうした観点からも、私はそのような働きかけは行っていかない。第三工区についてはやっていく、公共でやるということでいきたいと思います。
 それから、自主性の問題、主体性の問題です。きのうも馬頭議員にお答えしたんですけれども、埋め立てをするについて、運輸省とも関係がございます。建設省とも関係がございます。環境庁とも関係がございます。そうしたところにおいて、どうしたらいいかという協議をやってきた、そして協議で検討委員会をつくるということで、高い視野から、そしてまた公正な形で検討をするということになっております。
 詳細については、部長から答弁いたします。
○議長(宗 正彦君) 土木部長山根一男君。
  〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 住友金属から計画を聞いていない点について、主体性がないではないかというご趣旨の点についてでございます。
 今、知事の方から答弁がありましたように、検討委員会等で検討が開始されたところでございます。計画については、今後必要があれば検討委員会の中で聞いていくことになると考えております。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 25番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 部長の答弁ですけれども、必要があれば聞きますよという話なんですが、必要を感じなかったんですか。もう、これ答弁要りません。必要を感じるのが普通なんですよ。だから、普通の感覚で、もうちょっと県民の普通の感覚で進めていただきたいと思います。
 知事から、優しいお諭しをいただきました。先ほども言いましたように、そういうことは当然のことなんですよ。ただ、私は言いましたように、もともとは公有水面だった、それが私的に今度は所有されるようになった、ところが、もともとの名目はもうなくなっていると、そういう事態に立ち至ったときに、本来ならばどうすべきなのかということです。現実の問題としてはいろいろありますよ、よくわかりますが、本来ならばどうするのか。本来ならば、県民、市民のものに、国民のものにそれを還元していくのが当然の立場なんだから、そこの点を踏まえていかないと県の主体性を失った対応になってしまう、県民のこと、市民のことを忘れた対応になってしまうのではないかという懸念を強く抱きますので、そういう意味で頑張ってください。
 それから、県民の声を広く聞くということを要望いたしました。それは、もうぜひ何らかの形で持っていただきたいと思います。大きな土地が県民が本来期待したことと違った方向へ行こうとしているわけですから、そういう点も行政の方としては十分考えるべきだと思います。
 以上、要望しておきます。
○議長(宗 正彦君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○議長(宗 正彦君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午前十一時四十分散会

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