平成6年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(山本 一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

平成六年三月十五日(火曜日)

 午前十時四分開議
○議長(宗 正彦君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(宗 正彦君) 日程第一、議案第一号から議案第七十五号まで、並びに知事専決処分報告報第一号を一括して議案とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 23番山本 一君。
 〔山本 一君、登壇〕(拍手)
○山本 一君 通告に従いまして、質問をさせていただきます。
 まず、海南市・和歌山市間の境界について、率直な私の考えを申し述べまして、知事の明快なお答えをいただきたいと存じます。
 海南市の十二月定例市議会での一般質問で「マリーナシティ埋め立て境界確定の裁判の現状はどうか」との質問がありまして、質問に答えて「平成四年二月二十一日に訴状を提出して、平成五年十二月一日から証人尋問が始まり、収入役が立った」と答弁がありました。主な争点としては、「昭和四十六年二月二十六日に海南市、和歌山市の交わした協定書、覚書は法的に無効である。両市議会に示されておらないので無効で争論は存在する」と山本海南市長が断言されておりますが、議決機関である両市議会を云々申されることは、執行機関・海南市長が議決機関・市議会の存在をわきまえず、これを軽視、無視しておられることまことに甚だしいと、私は論じる次第であります。
 議決すべき案件は議決いたしております。協議すべきものは協議をもう済ませております。内閣総理大臣においても、地方自治の本旨にのっとり、普通地方公共団体の自主性、自律性を尊重するという基本的ルールがございます。主務大臣も、法的に限られた以外に不穏当な指揮監督など皆無と察していますし、地方自治の尊厳は侵されるものではありません。和歌山県が自治法違反などと呼ばれて、県民は納得がいかず、憤りを感じている次第であります。
 私は、昭和四十年六月から四十五年十一月まで海南市議会議長職にあり、以降二期、助役の職にありました。現職の海南市議会・久保田議長とは、当時ともに早期解決に当たってまいった次第であります。大橋知事、両市長、両議長ともどもに意見を交わしたことも、両市議長がともに大橋知事と話し合うこともたび重ねました。過ぎし日の思い出が、この議政壇上でまぶたをよぎってまいります。
 いまだ海南市から、山本一に聞きたいの一言もお受けいたしておりません。理解に苦しんでおる次第であります。両市の市長、宇治田さんも、明楽さんも、妙中先生も、吉岡先生も、両市間に足しげく運んでいただきました。また、生駒市長さん、小野知事さん、大橋知事さんも、ご存命の時代のことごと、何と回顧されていられましょうか。
 マリーナシティの境界云々で、過日一月十七日、海南市長が上京し、自治省に対して「自治大臣が和歌山県を指揮監督されたい」との要望を行ったと報じています。私には、その真意を解することができないのであります。願望的なものであっても、公的責めはあると思います。
 昭和四十六年二月初旬に、知事あっせん発表案を両市に示されました。それは、一、知事あっせん発表案として、「ただいま妙中境界審議委員から発表のありましたとおり、妙中委員を初めとする境界審議委員の努力により両市の歩み寄りの兆しが見えましたので、一、この境界争いについての裁定は知事預かりとする、二、従って裁定については勝負なしとする、三、今日、裁定とは別に別紙のとおりあっせん案を提示いたしました。これは、裁定とは別に、理論よりも現実に即しつつ、しかも将来を展望したあっせん案でありますので、両市はこのあっせん案を受け入れられ、円満解決されることを強く要望する次第である」。
 二、海南港埋立地に関する知事あっせん案として、「一、現時点においては第二工区埋立地の一部を和歌山市の所属とすることを留保し、この埋立地の全域を海南市の行政区域とすること。二、第二工区埋立地の地先に将来新たな埋め立てが計画され実施に着手するときはこの留保関係を解くものとすること。三、第二工区埋立地の地先に新たな埋め立てが行われたとき、和歌山市は積極的にこの地域の開発に取り組むこと。四、この地域(現在の第二工区埋立地はもちろん、将来の新たな埋立地を含む)に公害問題が生じた場合には、この境界問題にとらわれることなく、両市は友好的に協議の上、適切な措置を講じること。和歌山県知事大橋正雄」。
 かくして、四十六年二月二十六日に、和歌山市宇治田市長、海南市明楽市長が出席の中で円満に協定書並びに覚書に調印されたのであります。ここに、五年越しの和歌山市・海南市間の境界線紛争は解決いたした次第であります。
 今日、法的に無効だとか、法的に根拠なしと言うがごとき言動は、信義誠実の原則を全く覆したものであると私には思われてならないのであります。協定書及び覚書というものは、二つ以上の当事者の自治体間の合意を証するもので、契約と同様のものであると考えております。上位法である民法第一条の基本原則、すなわち信義誠実の原則により協定は契約説をとるのが妥当との判決を聞かされております。
 付言いたします。法第九条の解釈によりますと、公有水面に係る市町村の境界に関し紛争があるときとは、公有水面のみに係る市町村の境界に関し関係市町村の間で意見が不一致であり、これが原因となって客観的に紛争があると認められる状態を生じている場合を言い、公有水面上の一定の地点をみずからの区域にしたいとする主張及びこれに反対する主張は単なる願望であって、法律上の争点と解することはできない、あくまでも客観的事実の主張に意見の不一致がなければならないものと解されています。
 また、海南市に幾ら身銭があるからと申しまして、二千七百余万円に及ぶ訴訟費用を支出して和歌山市に文句をつけたり、和歌山県に内容証明郵便を送付してきたりすることなど、知事は本気でどう思われますか。一度お聞かせ願いたいと思います。
 なお、知事にお尋ねします。私の協定書、覚書に対する見解は不動なものでありますが、山本市長の誤った考えに「偉大な計画」と祝辞を述べている人もあるので、知事の明言をお聞かせいただきたいと存じます。
 また、自治大臣に和歌山県を指揮監督せよと申されたことに、県民感情として知事はどういうぐあいに感じておられるか、ぜひお答えをいただきたいと存じます。
 次に、県道船戸海南線の交通ネック問題でちょっとお伺いしておきます。
 この問題については、四年に一度は私はこの議場でいろいろと当局に対して質問を繰り返している次第でありますが、本当にこの箇所は、地元の生活道路、産業道路であり、近所の人々の命が危機にさらされているのが現況の姿であります。
 私は、いつもこういう点について力説しておるわけでありますけれども、いまだに昭和二十三年の都市計画決定以来、どうにもこうにも進まない。いろいろなご意見も申し上げてきた。しかしながら、もう現在では、過去にとらわれず、土木部長の率直なこれからの方針をお聞かせ願いたいと存じます。
 以上で、私の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(宗 正彦君) ただいまの山本一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 山本議員にお答え申し上げます。
 海南市と和歌山市間の境界問題についてでございます。
 ただいま山本議員からその当時の経緯について詳細な説明がございましたが、昭和四十六年に海南市と和歌山市との間で交わされました協定書、覚書の考え方については、平成元年十二月の議会でも議員のご質問に答弁させていただいたところでございまして、私としては、過去の経緯というものは今後も十分尊重されつつ対応が図られるものと考えておるわけでございます。
 また、海南市から自治大臣に対して要望書が提出されたということを聞き及んでございますが、県としては地方自治法に基づいて適正に事務を進めてまいったところでございますし、また、国に対してもその経緯について十分説明を行ってきておりまして、今後も引き続き、適正に事務を進めてまいりたいと思っております。
 いずれにしても、この問題については現在裁判中でございます。その動向を見守ってまいりたいと考えておる次第でございます。
○議長(宗 正彦君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 山本議員にお答えいたします。
 県道船戸海南線のご指摘の箇所は、都市計画道路船尾黒江線として幅員十一メートルで都市計画決定がなされております。しかしながら、現地の交通安全対策を非常に急ぐ必要がありますので、海南市と協議の上、当面の対策について現在地権者と交渉を続けているところであります。公図混乱等もあり、いまだ了解を得るに至っておりませんが、今後とも粘り強く交渉を続けてまいりたいと存じます。
○議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 23番山本 一君。
○山本 一君 今、知事の方からご答弁いただきました。私が本会議でかつて訴えましたことについて、それは今も変わりがないと知事はおっしゃいました。それは理解ができて結構でありますけれども、いまだに裁判が続けられておる──私は一遍聞きたいと思うんですが、海南市が和歌山市を相手取ってこういういちゃもん的な訴訟を起こすことは筋が合うているのかいないのか。本当は、海南市は中に入ってくれた和歌山県に対していろいろといちゃもんをつけるのがその道ではないかいなと私は思うんですけれども、これは和歌山市のみであって、和歌山県には関知しないものですか。
 これがまとまるときに県の代々の皆さん方は、小野さんの時代にも、大橋さんの時代にも、いろいろとご苦労をなさってきた。けれども、もうみんな亡くなっておる。僕と現在の海南市会議長しか残っておらない。実情を知っている者がないんです。今いろいろ言っている端っぱの人は何も知らない。山本有造市長さんでも知らない。
 だから、これについて和歌山市を相手に訴訟を起こしていくことは何か問題点はないんですか。これは和歌山市としているのは間違いで、本当を言うと和歌山県とやるべきなんじゃないかと。そして、和歌山県へ来たら和歌山県がはねたらいいんじゃないかなと、こう思うんですけれども、僕のそんな考え方はどんなものでございますか。
○議長(宗 正彦君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 山本議員にお答え申し上げます。
 争いをするのは県に対してじゃないかというご質問であったと思いますけれども、協定書、覚書が無効であるということを海南市が裁判に訴えておるところでございまして、県としては受けておらないわけでございます。
 先ほども言いましたように、県がやった理由は、昔からの経緯を考えたということ、また地方自治の本旨にのっとってやったということ、そして地方自治法に基づいての適正な事務をやったと、かように思って処理しているところでございます。
○議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 23番山本 一君。
○山本 一君 知事がお答えいただいたこともよく理解できるわけですけれども、この協定書、覚書については、最初にいろいろと非常に難儀したんです。和歌山の議会も認めなければならないし、海南の議会も認めなければならない。この調停を県へ文書で出すかどうか、非常に難航したんです。そして、相当な時日がかかって、両市議会も各市長さんも了解されて、そういう文書が出た。
 文書が出て、それで不足があれば九十日以内に本訴訟に入るわけなんですけれども、ところが九十日たってもそうはならずにそのままで来た。そして、その間に大橋知事の方から、調停にかけて県が裁定するとか、そんなことはもうやめようやないか、両市の皆さんが取り下げて了解してくれるなら、私が改めて知事としての考え方を述べるから聞いてくれるかということになって、そして出てきたものについて四十六年二月二十六日に両者が合致し、判こを押したということです。
 だから、後からの人は何も知らずにいろいろなことを争点を求めてやっておられるけれども、もともとはみんな議会に出た──「出ていない」とか言うけど、全部議会で議決されています。海南の議会でも、和歌山の議会でも。議決しなかったら、あの第二工区の登記もできない。地区番地をつけてこそ、初めて登記ができる。それを全部やってある。やってあるから、海南鋼管さんも関電さんもああいうように仕事をやっているわけです。議会をほったらかしているというようなことではなしに、議会の方では議決すべきことはちゃんと議決し、話し合うべきことはちゃんと話し合ってある。そして最後には大橋さんが、もうそんな難しい裁定をするようなことはもうやめようやないか、ひとつ話し合いで片をつけようやないかということで案を出していただいて、それに両市が納得をして調印し、覚書にも調印したと、こういうような経過があると思うんです。
 だから、私らみたいに重点を置いてそれにかかわってきた者には、後から出てきている問題が何か──「境界に争論」と言うけれども、もう先に決まってしまってあると。お互いの市の間で、話し合いの上で決めたんや。九十日以内に裁判にもかけずに、大橋さんのご苦労にこたえて、ひとつみんなが寄って話し合いで調停しようかということになったわけであります。
 知事さんはその後を引き継いで、争論の訴訟問題云々おっしゃるけれども、僕の考えでは争論は立たないと思うんです。決まっているから。調停は確固とした不動のものが確立しているんです。だから、私は訴訟と言ってもこれは通らないのではないかと。その訴訟の理由に、両市の議会が承知していないとか議案を出していないとか言うけれども、そんなもの、僕ら皆やってきてある。議会の議長の席にあって、そんなことは抜かりなく全部やってある。そうでなかったら地番も設けられない。
 だから、言うていることが根本から私は間違っていると思うんです。まあ知事さんは、裁判問題になっているからと非常に気を使ってもらっておるんだけれども、根本は理解していただいていると思いますので、もう種々しどろもどろは申しませんけれども、やっぱりそのいきさつから言うたら、もう片のついたものであるということ。そうでなければ──海南でも、ああいうことを海南市長が言い出したことについて「市長の偉大な事業や」と言う人もあるんです。マリーナシティから二十億か三十億か入る、偉大な事業を起こした、感心だと褒めている人がある。知らん人が皆そんなことを言うているんです。
 これは、県の広報の上からも、もっと市民、県民にはっきりと知らせてほしいなと思うんです。
 ちょっと要望しておきます。以上。
○議長(宗 正彦君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で山本一君の質問が終了いたしました。

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