平成5年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(森本明雄議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

平成五年十二月九日(木曜日)

  午前十時四分開議
○議長(宗 正彦君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(宗 正彦君) 日程第一、議案第百三十六号から議案第百四十六号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 46番森本明雄君。
  〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 おはようございます。順次、質問を進めてまいります。
 最初に、交通安全教育等のあり方についてであります。
 交通事故が多く発生したのは昭和四十五年ごろでした。まさに車が走る凶器で歩く人が被害者と、強者と弱者の関係というのが対比された、典型的な我が国の交通事故の状況でありました。しかし、その時代に比べると車は数倍にふえ、また免許人口も大幅にふえ、さらに自転車も大変ふえています。しかしながら、交通安全施設等のいろいろなハードな部分は相当よくなった関係か、事故の発生している形態がかなり変わってきています。すなわち、事故の中身が二十年ほどの間にさま変わりしていると思うのであります。
 そうした状況の中で、歩行者の教育あるいは交通のルールだけを教えるようなところに重点が行って、現在ふえ続けている事故の形態と交通安全教育を初めとするもろもろの対策が少しずれてきているのではないかと思うのであります。そうした意味もあるのか、第五次交通安全基本計画では車の安全性だとか実践型の安全教育などが含まれているようですが、交通安全運動などの日常やるべき運動等にまだ十分切りかえができていないようであり、その辺をスムーズに移行させる必要があると思います。
 例えば、人を集めて講義や講座を開くだけでなく、実際に車が衝突しているような場所を安全教育のときに見ていただくとか、あるいは試験場や教習所で二輪車、四輪車を含めて実際に車の安全体験を見てもらう、そして自身も体験するなどが大事なことであります。もちろん、指導者の養成、場所、ノウハウなど課題はたくさんありますが、しかし最近の事故は、高齢者の問題、若者の車の運転の問題、車の性能に応じた技術のレベルアップの問題などが多いだけに、これらの問題に一歩でも踏み込めば交通安全教育の目的の実を上げることになります。今後の交通安全教育等のあり方についてお伺いいたします。
 次に、福祉問題であります。
 老人福祉施設の質向上を図る事業が動き出しました。これは、寝たきり老人の介護やリハビリを行う特別養護老人ホームと老人保健施設のサービス状況を第三者が客観的に評価をし、サービス内容の改善の方向や方法について助言して、施設みずからの水準向上努力を支援するものであります。この事業は都道府県が実施主体となるものでありますが、自治体ごとに保健・医療・福祉関係者、有識者、住民等により構成するサービス評価委員会を設置し、施設を訪れ、百項目の評価基準ごとにAからDまで四段階に分けて細かく採点していくことになっています。
 急速に訪れている超高齢社会を乗り切るためには、保健、医療、介護の各サービスを供給できる体制の整備が必要であります。そのために、具体的な対策として、平成二年度からゴールドプランでさまざまな整備が図られているところであります。同プランは在宅サービスの推進と施設供給に大別されますが、特養ホームと老人保健施設は施設供給面の骨格部分になっています。和歌山県老人保健福祉計画によると、両施設とも国のゴールドプランを上回る水準となっています。
 このように量的整備が進んでまいりますと、どうしても施設間でサービスの格差が生まれてきます。計画どおり増床計画を進めてもらいたいのでありますが、今後は、量的整備だけでなく質の向上にも目を向けてもらいたいのであります。
 厚生省が十月下旬にまとめた調査によりますと、老人保健施設は寝たきり老人の家庭復帰を促すのが目的でありますが、退所者の三人に一人は病院に逆戻りしていますし、また入所期間も長期化しています。これでは施設の目的が十分に果たされているとは言えません。
 本年度から施行された改正老人福祉法などで、福祉に関する運営や事務の権限は国から地方自治体にかなり移譲されました。今後は、地域に沿った運営やサービスが求められてくると思います。
 本年度から始まった老人福祉施設のサービス評価事業に対して、北海道、大阪府、高知県など十二道府県が実施することに決まりましたが、「福祉和歌山」を標榜する和歌山県の名のないのが非常に残念であります。本年度の実施に踏み切らなかった理由と実施時期についてお伺いします。また、来年三月がタイムリミットとなっている老人保健福祉計画の策定については県下五十市町村が出そろう予定と伺っていますが、財源、人材等、計画に支障を来さないような支援策を強く望むものであります。
 次に、不況対策について質問を行います。
 この問題につきましては、昨日の本会議において種々質問がありましたので、できる限り重複を避けて質問を進めてまいります。
 景気は、底入れどころか、一気に底割れか二番底に落ち込む懸念が強まってきたようであります。十一月の政府の月例経済報告から「回復」という表現が消えてしまいました。経済企画庁は六月に打ち出した景気底入れ宣言を白紙撤回し、経企庁長官は、本年度下期の回復というシナリオに変わりはないが現実には難しいと、事実上のギブアップ宣言を出しました。また十二月の月例経済報告も、十一月と同じ景気判断を引き継いでいます。雇用情勢については、製造業を中心に厳しさが見られると指摘し、雇用の悪化に強い懸念を示しているところであります。
 政府は、昨年から三回にわたって景気刺激のための総合経済対策を打ち出しました。日銀も公定歩合を史上最低の年一・七五%に引き下げ、公共投資も、低金利を呼び水に、国内総生産の六割を占める個人消費や企業の設備投資が盛り上がることを期待したものであります。しかし、個人消費に回復の兆しはありませんし、百貨店売上高は二十カ月続けて前年実績を下回りました。乗用車の新車効果も息切れ状態であります。物が売れなければ設備投資意欲が盛り上がるわけはありません。
 民間シンクタンクは、相次いで本年度の経済見通しを下方修正しています。六月、七月の時点では実質成長率が一%台後半から二%台という予測が多かったのでありますが、その後は軒並み一%を下回り、今回は第一次石油危機以来十九年ぶりのマイナス成長になるとの予測であります。円高で投資意欲が冷え込んだことに加えて、冷夏で季節商品の売れ行きが低迷し、頼みの公共投資も、全国的にはゼネコン汚職で執行がおくれているためであります。
 このように、先行きに対する悲観ムードは強まる一方であります。その上、景気の先行指標と言われる東京証券市場の平均株価は再び一万六千円台の水準まで値下がりしました。
 さて、本来の中小企業対策でございますが、中小企業は、その企業数においても、またそこに職を求める方々においても、国、県の活力の源泉と呼んでも差し支えのない、大きな部分を占めていると思います。しかも、今日まで経済発展の縁の下の力持ちとして中小企業の果たした役割には、極めて大きなものがあります。一次、二次のオイルショック等、我が国を襲ういろいろな外からの経済的な問題についても、中小企業はとかくショックアブソーバー的な役割を果たさせられてきたということは否定できない事実だと思うのであります。その中小企業が現下の経済危機の中で最も苦しい立場に置かれているのであります。ある意味では、この日本経済の宝を大事に守って次の発展のチャンスにつなげていかなければならないというのが行政の基本的な立場でなくてはならないと思います。
 ちなみに、今年度の中小企業庁の中小企業に対する予算措置は約二千億円、一方、農水省の農業に対する予算措置は約二兆五千億円であります。
 両方の政策の性格を比べてみますと、中小企業対策は、一つの経済政策の一環として、マーケットメカニズムの中で中小企業者が自主的な努力をする、それを後押しする、支援するということで講ぜられています。どちらかと言うと、金融支援が中心であります。一方、農業の方は、農業をめぐる自然的制約というようなことを踏まえて農業従事者の所得の増大を図るといった社会政策的な要素もあり、対策全体のトーンはやはり補助金というような比重になっています。
 そういう点で、例えば予算措置と金融とを両方足し算して全体の規模で言うのは極端かもしれませんが、中小企業の場合には金融措置が二十八兆円、農業の場合には三兆七千億円、一事業所当たりの予算措置を見ますと、中小企業は三万円、農業は六十七万円、金融措置の方は、中小企業は四百三十万円、農業は九十七万円で、それぞれ特色を持っています。
 このように、中小企業対策というのは金融支援対策が中心であります。農業は、構造的変化から社会政策的な支出の対象になります。しかし、構造変化のもとにさらされるのは中小企業も同じであります。今こそ中小企業に対して抜本的に対策を強化すべきだと思いますが、その具体的対策と中小企業をめぐる最近の景気の状況をどう判断されているのか、お伺いいたします。
 十月の企業倒産総額一千万円以上の倒産件数が全国で一千三百十八件、うち売り上げ不振や赤字累積などが理由の不況型は六割を占め、十九カ月連続で五〇%を超えました。一方、十一月の県内企業の倒産状況は六件、負債総額は九億五千万円であります。
 景気低迷の出口が見えない中で厳しい経営を強いられる産業界の窮状を反映して、労働者にとって雇用情勢は深刻化の一途をたどっています。有効求人倍率は、九月が〇・六九倍と六年二カ月ぶりに〇・六倍台に落ち込み、十月はさらに〇・六七倍と落ち込みました。ちなみに、十月の和歌山県は〇・七六倍であります。また、十月の完全失業率も二・七%で、完全失業者数は百七十六万人となっています。このほか、企業内失業者が二百五十万人にも上るという推計もあります。これは、雇用調整助成金を支給することによって労働者の解雇を防いでいます。
 その雇用調整助成金でありますが、十一月一日現在で二百三業種、対象事業所数は十七万五千カ所で、雇用保険の適用事業所に占める割合が九・五%、対象労働者数は四百十二万人で、被保険者に占める割合は一二・二%となっています。いずれの数字、率も、過去の円高不況期あるいはオイルショックのときより多くなっている状況にあります。
 一方、県内における雇用調整助成金の支給状況は、前回の不況期の六十一、二、三年ごろと比べて件数、金額が少ない状況だと聞いています。前回の不況期に人員削減を徹底的に行ったことによるのか、またその後の好況期に雇用確保をしなかったのか、できなかったのか、それとも制度そのものをよく理解できないで利用しないのか等々、いろいろ理由があるとは思いますが、県内における雇用調整助成金の支給状況と今後の見通しについてお伺いします。
 長引く不況の中、中途求職者あるいは大学、短大、高校の新卒の採用が抑制されており、それが殊に女性にしわ寄せされている状況であります。結局は、労働者が最終的に一番しわ寄せを受けているようであります。
 こうした現状を踏まえてか、国では八月に雇用調整の実態を探る緊急調査を実施しましたが、再び現状把握に努める予定と聞いています。そして、雇用調整助成金を中心に支援対策等、またさらに広範囲な雇用対策の必要性から雇用対策プロジェクトチームを結成し、事務次官をキャップに作業を進めているようであります。
 一方、県においても雇用開拓に全力を傾注していると聞いています。求人が非常に少ないわけですから、さらに新規採用、中途採用も含め、さまざまな雇用を開拓して雇用不安が起きないように対策を講じていただきたいのでありますが、具体的対応策についてお伺いいたします。
 最近、小規模企業が減少の一途をたどっていると言われています。七〇年代の開業率は七%程度であったのが、現在は四%程度に落ち込んでいるようであります。アメリカ、ヨーロッパにおいては、今から二十年ぐらい前に企業数が非常に減り、社会の活力に問題が生ずるのではないかという懸念が出て、いろいろな対策を講じたということがありました。我が国の場合には、これまで非常に旺盛な開業が行われており、そういった活力という意味での心配はありませんでした。しかし、最近において開業率が恒常的に低下をしてきており、一方、景気動向等によって変わりますが、廃業率が開業率を上回る、すなわち企業数が減ってくるという事態となり、これは経済全体の活力という点からも極めて懸念されるところではなかろうかと思います。
 少し数字を見てまいりますと、我が国の中小企業は約六百五十万事業所で、全事業所の九九%を占めており、その八割は小規模企業となっています。最近の二年間で、大規模は五万から六万に、中規模は百四十八万から百五十八万にふえ、一方、小規模は五百九万から四百九十万に、約二十万も減少しているのであります。では、我が国の企業家精神とか新たなマーケットニーズというものが減ってしまったのかというと、私はそうではないと思います。今、極めて内外の情勢が急激に変化している中で、新しい産業の課題というものも非常にたくさん出ていると思います。
 例えば、これから進む高齢化社会、それに伴う人手不足、女性の社会進出といった社会構造の変化に伴う新たなマーケット需要、あるいはこれまでの物を買うというところからサービス、余暇、健康といったものに向かう消費者需要に対する対応、また九〇年代において相当華々しく展開されるであろうと見られる技術革新をシーズとした産業の発生、さらに国際化、資源エネルギーの制約などに関連して出てくる産業需要、こういった新たな産業の可能性、ニーズの発生というものはたくさんあると思うのであります。
 なぜ開業ができないのかということでありますが、いろいろな調査を分析いたしますと、先発企業に比べて優秀な人材の確保が難しい、資金力が乏しい、あるいは設備や機械器具の調達が難しい、技術力、販売力等々、先発企業との間でいろいろ格差があって新たな開業がしにくいといった状況にあるかと思います。
 国、県経済の活力をまた取り戻し、特に地域においては中小企業が地域経済の主役を担っているわけでありますので、そういった中で新たな創開業をお手伝いする施策をさまざまな形でとっていく必要があると思いますが、対策についてお伺いをいたします。
 次に地方自治と財政制度のあり方でございますが、国の補助金等の整理及び合理化に関する法律と地方自治の推進、地方分権の推進を関連づけて質問を進めてまいります。
 国の補助金等でありますが、普通、国庫支出金制度と言っていますけれども、これは国と地方の財政調整制度の一つとみなすことができます。そうだとすると、国の補助金等の見直しに当たっては、国の立場からでなく地方の立場から考えてもらわなくてはなりません。また、他の地方交付税制度あるいは国と地方との財源配分に関連して、国と地方の税制のあり方等についても一緒に考えていかなければならないと思うのであります。
 この見直しは昭和六十年以降行われていますが、当初は、財政運営の基本方針であった増税なき財政再建を推進するための一方策として国は歳出の削減合理化を行いました。その後、国の財政は増税なき財政再建が進み、平成二年度で特例国債の発行ゼロということで目標が達成されたと思います。しかし、その後も歳出の削減合理化の考え方は変わっていません。すなわち、平成元年十二月二十九日閣議決定の国と地方の関係等に関する改革推進要綱等において示された具体的な改革方針に基づいて徹底的な見直しを行い、整理合理化を積極的に推進することによって総額を抑制するといった方針のもとで国の補助金等の整理合理化もなされました。そこには、地方財政、地方の機能分担、費用分担のあり方などに対する十分な配慮が足りなかったのではないかと思うのであります。
 国は、公債残高が平成五年度末で百八十兆円台と予測されることから、補助金等の整理合理化には今後も精力的に進めていくと思います。こうした考えは、国の立場が前面に出ているものと思います。その背景には、国が特例公債依存体質からの脱却を一応図ってきたとはいえ、借り入れ依存度が高い状況のもとで地方財政は割合に改善されてきている、ここで国と地方の間の財源配分を少し見直し、少し国の方へ移して国の財政を改善していくという考えが国にあると思うのであります。
 国は、国の財政と地方財政は車の両輪だと言います。国の財政に対して、地方財政を全体として見ていると思います。しかし、数多くの地方公共団体に分かれており、財政状況、財政力指数に大変な格差があります。車の両輪と言っても、地方財政の方により大きな問題を抱えていると思うのであります。全体で言いますと、補助率の合理化、恒久化により、地方公共団体によってはかなりの財政負担になるということだってあり得ると思います。
 こうした問題を地方の立場に立って考えてみると、国庫支出金制度というのは、この財源の性質から言って依存財源であり、特定財源であります。地方債と同じように拘束力の強い財源であると思います。地方自治体が独自の財政あるいは行政を展開していくためには、一般財源、自主財源などで財源を確保していきたいのは当然であります。だとすると、国の補助金の整理合理化というのは、それなりの特定財源が小さくなっていくわけであり、独自の行財政を展開することができます。そのためには、財源が減らされた分、一般財源というような形で手当てを求めていかなくてはならないと思います。その場合に、現在の国と地方の財政調整制度、国庫支出金制度、地方交付税制度、それから国と地方の税源配分等について、あるべき姿というものが考えられるのではないかと思います。
 地方の立場、今のこの制度、国と地方の財政調整制度はこれでよいのだとお考えでしょうか、それともある方向に変えていってもらわなくてはならないとお考えでしょうか、ご所見をお伺いいたします。
 国と地方の財政調整制度というのは、その前提に国と地方の役割分担というものがあります。しかし、今の事務事業の配分を見ても、必ずしも今の状態があるべき姿にあるようには思いません。補助金等の整理合理化、特に公共事業等に係る補助率の統一、恒久化を進めてきていますが、この合理化を進めていくに当たって大事なのは、同時に補助対象事業の範囲を見直してもらわなくてはならないのではないかということであり、そのことが国と地方の役割のあるべき姿というものに近づいていくのではないかと思うのであります。
 補助対象事業の範囲については地方財政法の第十条に列挙されていますが、国の補助金等が担っている役割は大体四つに分けることができます。一つは、十条に、できる限りサービス水準を統一するために財政力の弱い団体への義務教育、生活保護等の援助、二つには、十条の二、個々の自治体が行う事務事業の中で行政区域を超えていく部分がありますが、こうした点を考慮して、最適なサービス水準を維持するために国が補助金等を通じてある程度支えていくという役割、例えば道路、河川、重要な都市計画、その他公共事業的なもの、三つには、十条の三、災害等の場合に自治体に対して国が財政援助を行うという役割、四つには、十六条に奨励補助金があります。
 私は、国が補助対象事業の範囲を検討するときには、この奨励補助金の部分についてまず見直しを求めていくべきだと思います。すなわち、負担金的な性格のものと奨励補助金的なものとは区別をして考えてもらうべきであります。
 私は、この補助対象事業の範囲を見直して狭めていって、むしろ一般財源化を求めていくべきだと思うのであります。これは、地方自治の確立、地方分権の推進を考えた場合、国から地方への補助金等による財源の移譲というのは阻害的な要因になっていると思います。と申しますのは、地方自治の確立の条件というのは、これまで自主財源の確保が言われてまいりましたが、今後は、加えて行政能力の向上が地方自治体側に求められてきます。
 国から地方へ権限を移譲するといっても、それを十分受け入れるだけの受け皿が地方自治体側に用意されているかどうか、与えられた財源を使って地域住民のニーズにこたえていくわけですが、そのためには地域住民がどのようなニーズを持っているか、正確に把握しなければなりません。そのニーズに対してどのようなサービス水準で個々の行政サービスを供給していけばいいのかといった議論をしていくに当たり、相当な行政能力が要求されてくると思います。
 その行政能力ですが、財政力と同じように自治体間で格差が見られます。財政力の方は、地方交付税制度などで国から財源を移譲するとき、ある程度調整ができますが、行政能力の方は自助努力で高めていかなくてはなりません。どういうことで行政能力を高め得るのかと見た場合、個々の行政サービスを執行していくに当たり、二つの段階に分かれて事務が行われていると思います。
 先ほども述べましたが、一つは、その行政サービスの水準の決定であります。どういう水準で、どういう方法で行政サービスを地域住民に供給しているのかといったサービス水準の決定に当たっては、地域住民のニーズを十分に正確に把握をしなくてはなりません。この事務を行うときに自治体の行政能力が向上していくと思います。行政サービスの執行に当たって次の段階は、計画事務で決定された行政サービスをそのまま実行していく実施事務と言われるものですが、これは比較的に技術的な部分で、分析力、計画力、企画力あるいは総合力といった行政能力より、むしろテクニカルな技術が要求される部分だと思います。
 補助金等で行われる補助事業というのは、重要なこの計画事務のところを国がかなり決定してしまいます。自治体がそこに入っていく余地が非常に狭いと思うのであります。こういった補助対象事務の多いところを整理してもらわなくては地方自治体の行政能力が高まっていかないと思います。
 今、国が目指している生活大国づくりの推進を考えてみても、生活者としての地域住民と密着している自治体の役割というのは非常に大きいと思います。その自治体が補助事業を通して国の決められたサービス水準に基づいてただ実践していくだけということになると、真の生活大国は実現しないと思います。むしろ、地域住民のいろんなニーズを一番容易にキャッチできる自治体がその地域の実情を加味しながら計画、企画を行い、それに基づいて事務事業を実施していく、こうならなくてはならないと思います。そうして、今の国の補助金等が担っている役割を果たしながら、同時に地方自治体も計画事務に参画できるような工夫が本当の合理化、見直しになると思うのであります。
 例えば、補助金のメニュー化というのもその一つだと思います。そうすると、ある程度地方自治体に自主的な判断がゆだねられるわけであります。工夫すれば地方自治体の計画事務への参画の余地はつくられますが、ご所見をお伺いいたします。
 地方分権というのは、国が持っている許認可権限、地方が持っている許認可権限の再配分という調整を図っていくものでありますが、そうした中で国と地方が財政的にいろんな形で絡み合っていることも事実であります。現実の問題として、現在、財政収入は国が非常に大きなウエートを占めています。それを実際に使うのはどこかと言えば全国で使うわけでありますから、地方が使うような格好のものをどうしてやっていくかというのが地方分権の一つの大きな問題だと思います。
 この法律は地方分権の確立を目指しての一つのあらわれと言われていますが、地方自治体への大きな権限移譲とそれに必要な財政基盤の強化というところに向かっていくものとお考えかどうか、ご所見をお伺いいたします。
 以上で、一回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(宗 正彦君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 森本議員にお答えをいたします。
 交通安全教育についてでございますが、議員ご指摘のとおり、その対象者、教育方法は時代とともに工夫していく必要があると考えてございます。また、運転者、高齢者などが実際に二輪車や四輪車等に乗車体験する参加実践型交通安全教育につきましても、議員ご指摘のとおり、極めて重要であると考えてございます。
 そのため、本年度から関係機関、団体の指導者を対象にシートベルト着用効果実験を実施したほか、総務庁の委託を受け、高齢者の参加実践型交通安全教育推進事業として、和歌山市では自動車を実際に運転してテストコースを走行する技能講習を、田辺市では夜間の事故防止を図るため反射材等を使用しての実験を実施しているところでございます。
 今後とも、関係機関、団体の協力を得て参加実践型を手法とした交通安全教育の推進に努めるとともに、国に対してその充実を働きかけてまいりたいと考えてございます。
 以上です。
○議長(宗 正彦君) 民生部長南出紀男君。
  〔南出紀男君、登壇〕
○民生部長(南出紀男君) 森本議員の福祉問題についてのご質問にお答え申し上げます。
 まず一点目の、老人福祉施設のサービス評価事業の実施についてでございます。
 特別養護老人ホーム、老人保健施設サービスの評価事業につきましては、平成五年度から三カ年のうちに実施することとなっており、県の指導監査等とは異なった観点からサービス評価やアドバイスが行われることになり、本県としてもぜひ実施したいと考えている事業でございます。
 しかし、実施するとなりますと、医師、看護婦、作業療法士、理学療法士、施設代表者、有識者等から成る評価委員会や現地視察の構成メンバーが必要となります。こうしたことから、委員の人選等、事前に事務的な準備期間も必要でございます。実施に当たっては成果のあるものをと考え、平成六年度を準備期間として、平成七年度に実施したいと考えてございます。
 二点目の、老人保健福祉計画についての支援策でございます。
 市町村老人保健福祉計画の達成のためには、議員ご指摘のとおり、財源あるいは人材の確保は不可欠のものでございます。人材の確保や資質向上については、県の老人保健福祉計画に基づいて推進をしてまいります。また、計画達成に向けての財源確保については、強く国に対して要望してまいります。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 商工労働部長吉井清純君。
  〔吉井清純君、登壇〕
○商工労働部長(吉井清純君) 森本議員にお答えをいたします。
 まず、中小企業対策と景気の状況でございます。
 中小企業全般への対策といたしまして、経営改善普及事業、組織化対策事業、技術開発支援及び金融円滑化のための制度融資等の充実を図っているところでございます。
 小売商業への対策といたしまして、ライフスタイルの変化に伴う消費者ニーズの多様化等に対応し、魅力ある商店街づくりのため、商業基盤等施設整備事業、中小商業活性化事業等を実施してございます。また製造業への対策として、人材の育成、人材の確保対策、技術研究や市場開拓の支援にも力を入れているところでございます。
 国におきましても、本年十一月二十五日に、製造業を中心に中小企業の新分野進出等による経済の構造的変化への適応を円滑に進めるため、特定中小企業者の新分野進出等による経済の構造的変化への適応の円滑化に関する臨時措置法いわゆるリストラ支援法が公布施行されたところであり、金融、税制、予算上の支援措置が講じられることとなってございます。
 今後、法の趣旨を踏まえ、県としても新製品の開発など技術支援についても十分検討し、中小企業者の経営安定に努めてまいりたいと考えてございます。
 また、最近の景気の状況につきましては、議員ご指摘のように、一昨日の十二月月例報告では、日本経済は調整過程にあり、円高などの影響もあって総じて低迷が続いていると、そのように厳しさを強調されているところでございます。
 このような状況の中で、地場産業につきましても、現状維持業種は梅干し、和雑貨、家具の一部程度であり、ニット、縫製、特殊織物等の繊維関係産業を初め、機械、漆器、皮革、ボタン等、県内地場産業のほとんどが大変厳しい状況に置かれてございます。
 県内の商店街の売り上げ状況につきましては、十一月の時点では、一部の商店街で現状維持、全体としては五%ないし一〇%減少しているところでございます。
 このように、県内経済につきましても、生産、消費ともに停滞している状況にあり、県内中小企業者にとって非常に厳しい局面と認識をいたしております。
 次に、雇用調整助成金の支給状況と今後の見通しでございます。
 本県における雇用失業情勢を見ますと、景気低迷の影響を受け、平成四年十一月に有効求人倍率が一倍台を下回り、以降、低下傾向で推移をいたしております。このような状況を踏まえ、雇用調整助成金を活用することによって企業の雇用維持努力を支援し、失業の予防に努めているところでございます。
 雇用調整助成金の支給状況につきましては、平成四年度で申請が延べ三十六件、十一事業所で一億七百万円の支給でありましたが、平成五年度に入って申請が増加しており、四月から十月までの七カ月間で延べ百十三件、二十九事業所、二億六千二百万円の支給となっております。
 ご指摘のとおり、昭和六十一年から六十三年にかけての円高不況時に比べ利用が少ないものの、指定業種の増加に加え、本年六月以降、助成率の引き上げなどが行われたところから、今後、景況によっては利用が増大するものと予測しております。
 次に、雇用対策でございます。
 雇用対策につきましては、求人確保に重点を置き、ハローワークによる求人開拓を強化しているところでありますが、本年九月から十月にかけて七十二の企業、団体に対し、新規学卒者を対象とする求人を含め、求人確保の協力要請を行ったところでございます。しかしながら、景気の先行きには依然不透明な部分も多く、今後の雇用情勢についても厳しい状況の続くことが懸念されることから、さらに本年十二月に入り、従業員規模三十人以上の企業千二百社に対して求人確保のための再度の要請を行っているところでございます。
 次に、中小企業の開廃業の実態と新規創開業の支援策でございます。
 中小企業の創開業対策といたしましては、まず技術情報等経営資源の充実という環境整備を図る必要があると認識してございます。創業間もない企業にあっては独自で研究開発に取り組むことが困難な状況の企業が多く、工業技術センターや財団法人和歌山テクノ振興財団を中心として、研究員による技術相談指導のほか、インキュベーター施設や開放試験室などの研究機能を積極的に利用していただいて起業化支援を図るとともに、異業種交流事業等を通じて新製品の開発、新分野進出、販路開拓等の支援策を講じているところでございます。
 また、地域雇用開発促進法に基づいて設備投資を行い、新たに労働者を雇い入れた創開業事業者を含めた事業者に対して助成金が支給される雇用機会増大促進地域の指定の拡大について、国に対して要望を行っているところでございます。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 総務部長木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 地方自治と財政制度のあり方についての示唆に富むご質問にお答えいたしたいと思います。
 国と地方は公経済の主体として、国民生活の向上、福祉の充実など、共通の目的達成のため相協力してその財政運営に当たるべきものであり、全体としてバランスのとれた公経済の運営を確保することが必要と考えられるところでございます。その中で国と地方の間の税源の配分、地方交付税、国庫補助金等による財源調整等が極めて重要な問題であるということは、議員ご指摘のとおりでございます。
 社会資本の整備、高齢化社会への対応等、地方公共団体へのニーズがますます高まっている今日、まず地方税、地方交付税等の地方一般財源の充実を図られることが必要であると考えているところでございます。
 また、国庫補助金の問題につきましては、このところ、地方制度調査会、臨時行政調査会の答申を踏まえ、整理合理化、一般財源化、統合化、メニュー化等が積極的に進められているところであり、地方分権の視点から、今後ともこのような傾向は続いていくものと考えております。
 このような流れの中で、本県としても従来から、補助金を受け身の形で取り入れていくということではなく、みずから考え、みずから行う、いわゆるふるさと事業の制度を積極的に活用し、本県の実情に応じた道路等の社会資本の充実に努めてきたところでございまして、今後ともこのような制度を十分に活用ししつ、自主的、主体的に県勢活性化に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、先般、国の補助金等の整理及び合理化等に関する法律により、国及び地方の財政関係の安定化を図るため補助率の恒久化等の措置が講じられたことは、お説のとおりでございます。
 いずれにいたしましても、一極集中の是正、地方分権の推進という大きな流れの中で、地方公共団体へのニーズの増大という経済社会情勢を踏まえて、今後とも国と地方の間の適切な役割分担に応じた財政関係の構築が図られていくと考えているところでございます。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 警察本部長西川徹矢君。
  〔西川徹矢君、登壇〕
○警察本部長(西川徹矢君) 森本議員の質問にお答えいたします。
 交通安全教育等の実施に当たりましては、交通事故の発生状況や特徴点等を踏まえ、さらには最新の科学技術等の成果を取り入れるなどして、常に新しい視点に立って、より効果的なものとすべく努力をいたしております。
 最近の交通事故の実態を見ますと、高齢者あるいは四輪乗車中の死亡事故というものがふえております。今後、高齢化社会あるいは二十四時間型社会への移行がどんどん進むと思われます。こういうことから交通事故の増加が懸念されるところでございまして、議員ご指摘のとおり、従来の教育手法では必ずしも十分な成果が上がらないのではないかという懸念も抱いております。
 そのため、これまでも運転者を対象として、シミュレーションを使った安全教育、シルバー教室、それからシートベルトコンビンサーというものを使ったシートベルトの体験実験、あるいは安全運転適性診断車といった車を活用した運転適性診断等、いわゆる参加実践型の安全教育というものを実施してまいりました。
 また、本年四月に発足した交通安全教育班による子供と高齢者を対象とした交通安全教育、さらには本年秋に警察航空隊と一地域の全幼稚園あるいは小中学校の子供たちに参加いただいて実施した、全国で初の交通安全人文字コンテスト等を実施することによって交通安全教育を身近なものとして考えていただくなど、より効果の上がるよう創意と工夫を凝らしてきたところでございます。
 なお、平成三年五月に開所した、本格的な参加実践型の安全教育を行っている自動車安全運転センター中央研修所が茨城県にございますが、ここへも、これらの指導員を初め、できるだけ積極的に多くの方にご参加、あるいはそういう方をいろんな事業所から派遣していただくよう努めておるところでございます。
 いずれにいたしましても、今後、議員のご意見も参考とさせていただきながら、より効果の上がる交通安全教育等の推進に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(宗 正彦君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 46番森本明雄君。
○森本明雄君 中小企業対策について一言申し上げておきたいと思います。
 ただいまの部長の答弁の中で、緊急経済対策による中小企業対策の一環として、いわゆる中小企業の新分野への進出等を円滑化する法律、すなわち中小企業リストラ法について説明がございました。これは、単に新分野に進出するだけではなくして、海外進出あるいは合併政策、協同組合の設立など、そういった工夫を大事に育ててこの難局を新しい発展につなげるような、中小企業の努力を支えていくための法律でございますが、その角度で見れば非常に有効な法律だと思います。ただ、少し突っ込んで考えますと、新分野進出や海外展開のできる、まだ体力のある企業に対しての支援という性格が非常に強いと思うのでございます。要するに、今困っているのは、そこまでいかない、現実に仕事がない、あるいは資金繰りが厳しい、そういう中小零細企業であります。これらの企業に対しては実効性のある支援が大事だと思いますので、そういった支援について強く要望しておきます。
 以上で、質問を終わります。
○議長(宗 正彦君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で森本明雄君の質問が終了いたしました。

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