平成5年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(浜本 収議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

平成五年七月八日(木曜日)

  午前十時三分開議
○議長(馬頭哲弥君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(馬頭哲弥君) 日程第一、議案第七十四号から議案第九十九号まで、並びに知事専決処分報告報第一号から報第六号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 43番浜本 収君。
  〔浜本 収君、登壇〕(拍手)
○浜本 収君 四点、質問をいたします。
 まず最初に、紀勢本線田辺─白浜間の複線化について伺います。
 平成元年七月、本県並びに紀南地域の長年の悲願とも言える紀勢本線の国土軸への直結が実現した。紀伊半島が線路を通じて全国につながった記念すべき瞬間であり、特に観光面からの効果は大きく、高く評価されるものであります。
 田辺・西牟婁地域は、本県最大の観光地白浜を中心に国際観光モデル地区の指定を受け、案内標識板の整備や善意通訳を初めとしたソフトの充実等々、国際的にも通用する観光地への道を進みつつあります。平成六年の夏には本県至近の地に世界に二十四時間開かれた空港が開港しようとしている現在、白浜を核とした南紀の国際的な観光資源の集積地に生活し、観光産業を地域の主要産業とする者にとって、そのインパクトを観光面で最大限取り入れたいと期待するのは私一人ではありますまい。
 過去に多くの議員の皆さんが当議場においても質問されたように、関西国際空港からの本県への鉄道アクセスの利便性の確保は言をまつまでもないことであるが、紀南にある国内の空のアクセスにいかにつながるかということも、あわせて求められなければならない。もしそれが実現すれば、新幹線という幹線鉄道軸への直結がもたらした効果のように、世界の空のアクセス・関西国際空港と日本の空のアクセス・白浜空港を有機的に結びつけることにより広域的な日本的視野での観光のルート化ができ、紀南地域もその資源を生かした波及効果が、と夢が広がってまいります。
 そこで問題となるのが、田辺駅から白浜駅の複線化であります。定時性、高速性、大量性という鉄道の特性を生かすためにも必要なことは申すべくもないが、白浜まであと一息というところで一部単線というアクセス状況は、国際観光地としての白浜・紀南地域にとってはイメージ的にも非常にマイナスであり、その質を問われるもので、ぜひとも複線化が必要と考えるのは当然であります。
 紀勢本線の田辺駅から白浜駅の複線化の見通しは、またその取り組み状況はいかがなものであろうか。過去多くの議員が質問してきたところであるが、関西国際空港の開港、白浜空港のジェット化を控えた今こそという視点から、今般あえて質問した次第であります。答弁を求めます。
 次に、吉野熊野国立公園特別地域内の別荘建設の許可について質問をいたします。
 吉野熊野国立公園特別地域の串本町潮岬西回り県道より海側にかけて道路沿いに五千平方メートル程度の土地を、平成二年十二月二十六日、県は別荘建設の許可を行ったことについてであります。
 本年三月一日から三月五日ごろにかけて、大型トラック三台が終日フル回転して土砂など工事用残土をこの土地に運び、道路より海側にかけてがけっ縁ぎりぎりまで三メートルから五メートル以上積み上げた。このことは去る三月の串本町議会においても取り上げられたが、土地のかさ上げを三メートルから五メートルまで道路より海側の第二種特別地域のがけっ縁まで行ったことは、県の許可条件の中に入っていたのかどうか。
 一般的に言って、特別地域内での個人の住宅や別荘の建設は一定の許可条件のもとで行われることには異議を挟むものではないが、今問題となっている別荘予定地より五十メートル程度灯台寄りに数年前建設された別荘がある。この当時の建築に当たっては、ほかから土砂を搬入することは当然制限され、また海側寄りは自然石を配置して公園化し、また土砂流出どめ、高さ制限、色の制限などの指導のもとに建設されている。また、道路より内側五十メートル以内の特別地域のほとんどの家は、そのままに地ならし程度で建築しているのが実態である。住民は特別地域の法律上の条件を正しく認識しているからであります。
 県は、この建築許可に関し、土砂の搬入を必要工事として許可しているが、実情は土砂搬入による新たなる宅地造成工事ではないか。そのために、かつて県道を車で走り、また歩いた人々には、今、夕方になっても夕日が見えなくなるという状態になっております。このような特別地域については、土砂搬入は原則的に禁止し、現状地ならし程度で対処すべきではないか。さらに串本町の宅地造成指導要綱では、このような造成工事については具体的に必要事項を協定し施行することになっているが、この点についての県の見解をただすものであります。
 次に、教育問題に移りたいと思います。
 けさも読売新聞に載ってございましたが、一人の少年が、十四歳の誕生日を迎えることもなく、この世を去った。山形県新庄市の市立明倫中学で起きたマット事件であります。
 中学一年生のK君が体育館のマット倉庫の中で頭から逆さまにマットに入れられた状態で発見されたのは、この一月十三日の夜のことであった。マスコミはいじめ事件として大きく取り上げ、日常的ないじめがエスカレートして死に至らしめたのだと一斉に報じた。事件後五日目、同中学の二年生三人が逮捕され、四人が補導されたが、七人のうち六人の少年が犯行を否認しており、この事件をいじめ事件と早計に断定するには余りにも不可解な点が多い。「今後事実が明らかになるまではいじめによるものとは言い切れない」と言いながらも、同校の教師や保護者もショックを隠し切れないまま、「本当にいじめがエスカレートして起きた事件かわからないので事件については答えられない。ただ、生徒たちには、警察の調べによると部外者が侵入した形跡がないので校内のだれかがやったのだろう」と説明したところであります。
 また、東京都町田市に住むAさん夫妻は、二年前の一九九一年九月一日、次女のS子さんを失った。それは、夏休み最後の日、S子さんは、「お母さん、どうしてもつくし野中学に行かなくてはならないの」という電話を最後に、自宅最寄りのJRの駅構内の線路に横たわり、みずから命を絶ったという事件であります。S子さんはバドミントン部に所属し、頑張り屋で、忍耐力のある明るい少女だったと言う。そんなS子さんがなぜ自殺をしたのか。Aさん夫妻は学校や友達に死の真相を聞いて回ったところ、数日後、友人であった三人の女生徒が、事件の数日前、S子さんを取り囲んで「土下座じゃ済まねえ。この顔がむかつく」などと言っていじめたと話した。Aさん夫妻は、当然この話を学校に伝えて学校に調査を依頼したが、学校側は「自殺の原因は親にある」としてこの要望を突っぱね、事件報告書には事実と異なる内容が記載され、問題が未解決のまま、今、この事件は東京地裁で公判に付せられているとのことであります。
 いま一つの事件は、兵庫県西宮市の甲東小学校の男子児童九歳が、長期間、同級生から殴る、けるなどのいじめを受けて登校できなくなった事件で、両親から人権救済の申し立てを受けていた神戸市弁護士会の人権擁護委員会が学校校長に、「学校は生徒の安全を守る義務を果たしていないばかりか、被害児童の救済について著しく不誠実であり、重大な人権侵害行為である」として、再発防止の警告書を提出した。いじめ事件で警告書が出されたのは全国的に最初のことであります。この男児は、「A君にたたかれる。助けてください」と書いた手紙を担任に渡したが、事態は何ら改善されなかった。同委員会メンバーの弁護士は、「どうすればいじめがなくなるかを考えることより、いじめがなかったように証明しようとする学校側の取り組みに問題がある」と指摘しているところであります。
 さて、本県教育委員会は、いじめとは「自分より弱い者に対して一方的に身体的、心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実を確認しているものである。なお、起こった場所は学校の内外を問わないものとする」とし、その件数を把握し、またいじめの態様としては、「言葉のおどかし、冷やかし、からかい、持ち物隠し、仲間外れ、集団による無視、暴力、たかり、おせっかい、親切の押しつけなどがある」としているが、本県小・中・高の平成三年度の教育委員会が把握しているいじめの発生件数は、小学校五十九、中学校百十、高等学校九──これについてはちょっと信頼しかねるのでありますが──とにかく計百七十八件、全国のパーセント〇・六に対し本県はその半分の〇・三ということであります。
 教育委員会は、本年度、生徒指導推進と指導力向上のための事業費として百四十四万二千円を計上し、生徒指導の原理、方法等について研究・協議・演習を行い、教員の指導力向上に努めているところであります。
 私は、こういった生徒指導推進と指導力向上のための事業や教育相談推進事業等が今日の複雑な学校教育にとって直ちに特効薬的効果を生むとは思わないが、それぞれの事業がそれぞれ連携を保ちながら教育は前進していくものと思うのであります。
 ただ、前段で述べた事例にあるように、いじめがなかったことを証明しようとしたり、「助けてください」と書いた少年の手紙が教師の手によってほごにされた実態などは、許せないと思うのであります。問題が起こった後で、「このようなことは二度とないように今後努めたいと思います」という反省の前に、いじめ対策をどうするのかという点について、指導面の強化はもとより、予算面からもぼつぼつ検討すべきではないかと私は思うのでありますが、教育長のしかとした答弁を求めます。
 最後に、新南紀白浜空港に関連して二点質問をいたします。
 去る五月十一日、知事は関西経済連合会会長の宇野収氏──浜本収の「収」は同じ字であります──との対談で、関西新空港、世界リゾート博、ベイエリア構想、さらには新南紀白浜空港の開港等に触れ、今後の県政への並み並みならぬ決意を述べられておったが、この中で、新南紀白浜空港の開港は平成六年と言明。また過日、串本町の総合運動公園竣工式典会場においても、白浜空港開港を平成六年と言明されていたが、去る六月十八日、田辺市で開催された新南紀白浜空港建設促進協議会総会の席上、土木部長代理の船戸土木部次長はそのあいさつの中で、「新南紀白浜空港は平成七年度中の一日も早い時期に開港すべく全力を尽くします」と述べていた。以前、私はある新聞で、平成八年に開港がずれ込むという記事を見たことがあり、その当時私は、そうだろうな、多分今の状況ではそういうことになるんではないかなと思ったのでありますが、一体どれが正確なのか。知事の言うていることが正確なのか。ほうっておいたら、いつのどの会へ行っても、平成六年に開港すると言うだろうなと。私は別に内部のけんかをせよと言うんではないんですが、船戸次長は、「平成七年度中の一日も早い時期に開港すべく全力を尽くします」──これが合っているんじゃないかなと。現場でも話をお聞きいたしました。こんなことを言わなくて、ただ聞きますと、平成七年度中というお話を白浜の事務所等では申しておりました。そんなことを質問されると思わずに一生懸命に言うておりましたけれども。どれが正確なのか、この際、ぜひ正確に言明されたいのであります。
 世界リゾート博まであと何日と表示した残日塔は、きょうも県庁正門前や大阪駅に建っている。大変いいことだと思います。しかし今日の状況のもとでは、例えば白浜駅前に、新南紀白浜空港開港あと何日と表示する残日塔は到底建てられないと私は思う。建てる自信があるならば、「建てられます。あと三百何十何日」と。もちろん、工事の関係があるのでそういうことはできないという逃げを打つとは思うが、そうは言わさない。マリーナシティは工事があるんです。到底建てられない。そういうことはできないと私は思うのであります。現状と今後の進捗予定を明示されたいのであります。
 二つ目、私は去る十二月の総務委員会で白浜空港の跡地利用について質問を行ったところ、ほぼ次のような答弁がなされたのであります。「県営南紀白浜空港の跡地利用については、コンベンション機能、スポーツ・レクリエーション機能、業務機能の三点から検討を開始している」とし、「南紀白浜空港の敷地は約五十五ヘクタール。また、ワーキンググループの設置検討に入っている」、たたき台の段階としながらも、「空港に近く、人が集まりやすい利便性を生かした国際会議場建設などのコンベンション機能、観光地の発展に結びつく複合的な体育館施設を中心にしたスポーツ・レクリエーション機能、東京に近い地理条件を生かし、ソフト開発などのオフィスを集合させた業務機能を中心にした三構想が浮上。場合によっては、二つの機能をミックスさせたニュータウンになることも考えられる」とした答弁をしたところであります。しかしながら今、私の知る範囲では──私は白浜の人間ですから白浜の役場にもしょっちゅう参ります。そして、町の意見もかなりそれなりに入ってまいります──このことは余り進んでいないように思われるが、この跡地利用についての進捗状況はどうなっているのか、ぜひお聞かせ願いたいのであります。
 また、この場合、跡地全体五十五ヘクタールのうちに県有地三十九ヘクタール、白浜町有地十六ヘクタールが含まれてございますが、そのことを忘れて「跡地利用、跡地利用」と盛んに言うことはちょっとおかしいのではないか。この際、この町有地の取り扱いをどうするのかということもあわせてお答え願いたいと思います。
 入院中なのでいつもより元気がないことをお許しいただきたいと思います。どうもありがとうございます。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの浜本収君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答え申し上げます。
 新南紀白浜空港の開港についてでございます。
 南紀白浜空港のジェット化整備につきましては、用地取得が大変難航したわけでございます。しかし、おかげをもって本年の六月に民有地の用地買収すべてが完了いたしまして、県議会の皆さん初め多数の皆さんに大変ご協力いただきましたことを心から厚く御礼を申し上げます。
 本体造成工事は順調に進んでおりまして、今議会でお願いしている補正予算により、平成五年度末には全体の約七割の進捗が見込まれるわけでございます。
 開港につきましても、私は平成六年度に何とかしてやりたいと思ってまいったわけでございます。しかしながら、用地交渉等において相当なおくれがございました。それを取り戻すために、現在、相当積極的に工事を進めておりまして、平成七年度の中での少しでも早い時期に完成せよということを土木部に厳命しておるところでございます。
 他の問題は、部長から答弁いたします。
○議長(馬頭哲弥君) 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) まず、JR田辺─白浜間の複線化についてのご質問にお答えいたします。
 紀勢本線につきましては、昭和五十三年に和歌山─紀伊田辺間の複線化が完成し、紀伊田辺─白浜間についても、当時の国鉄が事業認可を受けていたところであり、県としては早期着工を強く国鉄に働きかけたところでございますが、国鉄の財源難等のため着工できなかった経緯がございます。その後も、県といたしましては、紀伊田辺─新宮間の複線化について国に対し文書で要望を重ねるとともに、機会あるごとにJRに働きかけを行ってまいったところでございますが、紀伊田辺─白浜間の複線化については技術的な面から多額の投資が必要とされるなど、いろいろ困難な問題があると聞いてございます。
 議員お話ございましたように、関西国際空港の開港や南紀白浜空港のジェット化整備を控え、空港へのアクセスとしても高速で定時性の高い鉄道の果たす役割の重要性については十分認識しておりまして、本年度、JR西日本の協力もいただき、紀勢本線の高速化等について、田辺以南の高速化に重点を置き、その具体的な調査を進めることといたしてございます。
 次に、南紀白浜空港の跡地利用についてでございます。
 昨年六月に庁内関係十三課室によるワーキンググループを設置いたし、さらに白浜町の企画担当職員の参加もいただいて研究を行っているところでございます。
 現空港全体面積は約五十五ヘクタールあり、うち白浜町有地が約十六ヘクタールございますが、跡地の利用については、コンベンション施設、研究開発施設、スポーツ・レクリエーション施設等の立地について研究を進めてございます。
 現在、社会経済の情勢が急速に変化をしており、大変厳しい経済情勢でございますが、経済の動向を見きわめつつ民間活力の活用方策や先進事例の調査等を行いながら、空港のジェット化による効果を最大限に生かし、紀南地域の活性化や新しい空港の利用促進につながる魅力ある国際文化リゾート基地を形成すべく、本年度も引き続き白浜町の参加を得ながらワーキンググループにおいて研究を進めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 商工労働部長吉井清純君。
  〔吉井清純君、登壇〕
○商工労働部長(吉井清純君) 浜本議員にお答えをいたします。
 吉野熊野国立公園特別地域の別荘の建築につきましては、平成二年十二月二十六日に工作物の新築の許可を行っております。
 議員ご指摘の行為につきましては、工作物の新築に伴う一連の行為であり、許可の範囲内であると考えてございます。また、行為地では修景のための緑化を行うこととなっておりますが、これをより確実にするために法律に基づき条件づけをしており、この実行について引き続き監視してまいることとしております。
 県といたしましては国立公園の重要性は十分認識しており、国立公園など自然公園内の行為については当該行為が自然景観に及ぼす影響を総合的に判断し、その影響をできるだけ少なくするよう、申請者に指導などを行っております。
 また、許可の判断に当たっては、町より意見を付した進達を得ており、慎重に対応してきておりますが、議員お話しのとおり、町議会などでも議論があったということについても聞いておりますので、今後とも公園地域内の許可等に際しては町の意見も十分踏まえて対処してまいります。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) いじめの問題についてお答えいたします。
 いじめという行為は人間として許すことのできないものであり、個人の尊厳にかかわる重要な問題であると受けとめてございます。
 本県におけるいじめの発生件数はここ数年間減少の傾向にあり、一校当たりの件数も全国の約半分となってございますが、決して予断を許さない状況にあります。
 また、議員ご指摘のように、いじめが原因となって傷害事件や自殺など、極めて憂慮すべき事態が生じております。こうしたいじめの発生の背景には、集団的な遊びの不足、温かい人間関係の欠如、知育偏重の傾向、家庭や地域社会の教育力の低下など、さまざまな要因が絡み合っており、子供たち自身が人間として大切にされているという実感を持ちにくい状況にあるのではないかと考えてございます。
 このため、教育委員会といたしましては、学校教育指導の基本方針において一人一人を生かし大切にすることを柱に据え、各学校に対しては、子供の個性を重視し、幅広い生活体験を積ませて豊かな情操や社会性を培うとともに、いじめの問題に対しても、人間尊重の立場に立って早期発見や未然防止のために子供の生活実態をよりきめ細かく把握し、教職員と子供たちが一体となって生き生きと活動できる学校づくりに取り組むよう指導いたしております。
 また、保護者、地域社会及び関係機関との連携を図るとともに、生徒指導推進会議や教育相談合宿研修会、PTA研修会等において実践事例をもとに研究を深め、教員の資質向上や教育相談体制の確立、家庭、地域社会の教育力の向上に努めているところであります。
 いじめは、現代社会が抱える教育の病理現象の一つであり、これを単に子供だけの問題としてとらえるのではなく、社会全体の問題としてとらえる必要があると考えます。こうしたことから教育委員会は、これまで機会あるごとに教育における三つの忍耐ということを強調してきております。
 すなわち、その一つは、学校のあり方、体制は万古不変ではないと考えます。変化の激しい今日の社会の中にあって、旧来の陋習にとらわれることなく、常によりよきあり方を目指して脱皮し、自己を変革していくという意味の「変化に耐える」こと、二つ目は、子供たちが時には教師の期待や信頼を裏切ることがあっても、「子供を信じ切ることに耐える」ことであります。そして三つ目は、学校は地域社会や保護者に対して殻を閉ざし、学校を囲いで守るという姿勢をとっている限り、自助努力の芽は育たないと考えます。学校は閉鎖的にならず、その長所も短所も白日のもとにさらす勇気を持つという「開放に耐える」ことが大切であります。
 いじめの問題は社会の病理現象であるだけに、とりわけ学校は「開放に耐える」ことが重要であり、学校がみずから窓を開き、家庭や地域社会と一体となって問題への適切な対応や未然に防止することが大切であると考えます。
 今後とも、生徒指導関連事業の内容や予算についても検討を加えるとともに、学校と家庭、地域社会との信頼関係を強めて、あすへの展望が開ける学校教育の創造に努めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 43番浜本 収君。
○浜本 収君 串本町潮岬の吉野熊野国立公園特別地域の別荘の許可について再質問をいたします。
 先ほど述べましたように、今から四、五年前に同種の別荘の許可がございました。そのときには、ほかから土砂を搬入して高くしたりすることを制限したり、海側のがけ寄りは自然石を配置してそれを公園化せよとか、また土砂流出どめ、高さ制限などの指導のもとに建設をされております。正しい、法律を守った行為であります。この点から考えてみるならば今回のこの措置は後退しているのではないか。住民がこのことを盛んに指摘してございます。
 また、これらの土地と並んで、二、三軒の個人の所有する土地がその該当地──今問題になっている土地──の左側にあるが、もしその人たちが、前に許可した件と同じように高くするんだと言うてそこへ土砂を入れて高くしていくと、海が見えなくなる。大体、道路の向こう側に土を積んだら海が見えなくなる。先ほども申し上げましたが、夕日がもう見えなくなったというのは本当かと思った。私がこの間行ったときは昼だったので夕日まで見なかったんですが、しかしこの質問でややこしいことがたくさんあったので電話でいろいろ聞いたら、夕日が見えなくなると言う。夕日が見えなくなるということは、景観が壊されているということであります。
 日本で、「夕日が見えなくなるぞ。夕日を返せ」などという裁判や訴えはいまだございませんけれども、しかし、そういうことへの配慮が欠けておったんではないか。これから、二軒、三軒とある人々が、あのようにわしもするんだ、私もそうするんだと言い出したら、それを食いとめることができるのかどうか。そのことを私は危惧いたします。
 串本町議会においては、三人の議員さんたちがこのことを町当局に指摘いたしました。先ほど答弁で串本町の進達を得ていると言いましたが、この進達の内容は──人の町のことを申し上げるのは大変失礼でございますし、またその内容に立ち至ってここで発言することはどうかと思いますが、大変粗雑なものである。そのときに、こういう進達を書いてきているけれども、これは自然公園との関係でいいのか、この点はどうなのかという話し合いもあってしかるべきではないかと私は思います。
 きのう、鶴田議員と知事との間で「遺憾である」ということについての大変すぐれた、しかもユーモアのある答弁と質疑がございましたけれども、串本町議会においても、このことを指摘され、町長は「甚だ遺憾であります」と答えております。知事がやたらに「遺憾」という言葉を使うから、串本まで波及している。えらいもんやなあと私は思います。「甚だ遺憾であります」ということの後で──この「遺憾」は大変正しい「遺憾」で、「おわびをいたします」という「遺憾」であります──「おわびをいたします」ということが議会の議事録に載ってございます。そして、進達したことを認めながら、「その進達はうかっとしておった」と、こういう答弁をなさっている。これも内政干渉になりますけれども、そういうことをなさっておる。だから、「遺憾である」、「おわびをいたします」と。そして、「今後は県と話をしながら改善命令を出してもらえるように」ということで議会を乗り切っておる。議員の諸君もそれで一応おさまっておりますけれども、やがてこれはまた再燃をいたします。
 なぜならば、三年前に私が指摘した、潮岬付近の国立公園内の浪ノ浦というところでもそういう問題があり、そうして、いいことなのか悪いことなのか知らないが、最近、土地売買の業者が大変多くなったと言われている。そういう中でこういう行為が行われてくると大変だ。そういう上での議会の発言であり、そして町長は、「遺憾である」、「謝ります」、そして「県に改善命令をという形でお話をいたします」という答弁をなされております。そういう大変ややこしい状況の中で、こんな許可行為は土砂搬入による新たなる宅地造成工事ではないかという非常に鋭い質問もございましたが、私もそう思います。しかし、県はそういう見解をとってないようでございますが、そういった一連のことについて再質問をしておきたいと思います。
 教育長の大演説、大変ありがとうございました。しかし、私のそばの松本貞次さんが、「いつでも同じことを言いやる」と。私もそう思うんです。同じ答弁をしておる。森本さんも、それを言うてやれと言わんばかりに私に陰の声援を送ってくれました。
 それはそれとして、教育長の指導理念は卓見だと思います。しかし、そういったことを裏づける指導面並びに予算面から、この際特に希望し、そのことを質問いたしたのであります。
 きょう鈴木先生がご出席でございますが、鈴木先生の手前──先生には質問いたしません──そんなことを言ってどうかなと思うんですけども、いじめ問題は、人権問題として事件が起こったら必ず弁護士さんにお願いをして、方々で公判に付せられたり再発防止のそういうものを学校長に出したりということがなされております。この際、県の教育委員会としては、未然にこういったことを防ぐ、子供の命を防ぐということからも、これはいじめに該当するということで親が先生方にご相談あったときに、学校長が、いわば基本的な人権を守るという立場から和歌山県の弁護士会等にもご相談をして、そしてお願いをする、そういった面での予算措置も必要でないか。これは一例ですので答弁は要りませんけれども、そういったことについても考えるべきではないか。
 ただ、再質問するんかせんのかと、けさも、この間からも病院に来ていただいていろいろ話をします。いろいろ責められて熱が上がってくるばかりでございましたけれども。しかし、学問の独立というんですか、教育というのはほかから介入されてはならないんだという──早稲田の校歌ではございませんが「学の独立」、これが学校においては当然だと思います。しかしながら、事件が起こったら必ず弁護士さんが必要になってくる。そして、こういう問題が仮に和歌山県下で不幸にして起こった場合に、そのことを言われると、さっき言ったような前ぶれの話をして教育長は、「おわびをいたします」、「反省をいたします」と言うだろう。「反省は猿でもする」というのがテレビのコマーシャルにございますけれども、そういうことであってはならないと思います。そういった意味でも、予算面での措置をいま一度十分検討すべきではないか。私は教育長に質問をしてございますが、応援をしてございます。総務部長、十分聞いておいてください。指導面での、あるいは具体的な予算面での措置を十分検討すべきではないかと考えるものであります。
 ほかにございましたけれども忘れましたので、これで終わります。
○議長(馬頭哲弥君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 商工労働部長吉井清純君。
  〔吉井清純君、登壇〕
○商工労働部長(吉井清純君) 再質問にお答えをいたしたいと思います。
 まず、今回の許可と以前の許可では県の指導が後退したのではないか、また今後の隣接地等における許可などの考え方についてのご質問でございますが、先ほどもお答えいたしましたとおり、許可の判断に当たっては、市町村の意見を得て、その場所の状況等を十分踏まえて審査し、必要な指導を行ってきております。
 今後につきましても、その位置、形状などの状況を見て、慎重に判断した上で対処してまいる所存でございます。
 次に、町議会における議論についてでございます。
 当該地は、緑化する計画などの内容を総合的に判断し、町の意見進達を踏まえて建築物の新築許可を行ったものであり、新たな宅地造成行為とは考えておりませんが、先ほどもお答えいたしましたように、今後とも町の意見進達を得て慎重に判断してまいりたいと考えております。
 なお、町長の意見あるいは町から提出された公文書等については県として信頼をして判断いたしておりますので、ご理解をいただきたいと思います。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問はありませんか。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○議長(馬頭哲弥君) 浜本議員の再々質問がありませんので、以上で浜本収君の質問が終了いたしました。

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