平成5年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

平成五年七月七日(水曜日)

○議長(馬頭哲弥君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 33番鶴田至弘君。
  〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 それでは、お許しをいただきましたので、一般質問を行わせていただきます。
 住友金属工業株式会社の西防埋め立てとその転用の意向表明、その後の関連する動きに関係して、県当局の行政姿勢について質問をいたします。
 昨日、先輩議員から同趣旨の質問がございましたが、私も、重複することをあえて承知の上で、また論旨の関係上重複することをお許しいただきながら、質問をさせていただきます。
 ご承知のように、同社は公害工場の沖出しということで公有水面埋め立ての認可を受け、埋立工事を今日まで継続しているところであります。ところが、一昨年の五月、同社は埋立用地の利用計画を見直すと発表し、世間の耳目を、とりわけ和歌山市民の大きな驚きとなったところでありました。本問題は二年前の六月議会で一斉に取り上げられ、相当の論議がされたところでありますが、私も深い関心を持って聞いたものでございました。
 以来、二年が経過いたしました。事態も相当進行していることもあろうかと思われます。一昨年六月発行の住友金属の文書を見てみますと、次のようなくだりがあります。
 「西防埋立地の利用計画の見直しについて」という文書でございますが、「環境改善目標数値の遵守と鉄鋼生産の維持を現敷地内で両立させることが可能であるとの確実な見通しが得られましたので、埋立地の高度利用を図ってまいりますために利用計画を見直す方針を固めた次第であります。この間、方針決定に至る過程で、和歌山市に利用計画の見直しを行う方針で検討中である旨のご報告をいたしておりましたところ、先般、弊社に対して、地域の開発と活性化及び産業振興の観点から関西電力のLNG火力発電所誘致を含む公共的利用を図ることに関して協力のご要請がありました。弊社といたしましては、利用計画の見直しに当たり、公共的、公益的な視点に立ち、港湾地区としての立地条件を踏まえた利用を図ることを念頭に置き、例えば関西経済圏の拡大、活性化に対する物流基地や和歌山市から協力要請をいただきましたLNG火力発電所等の可能性につきましても、諸条件を勘案しながら検討をしてまいる方針であります」、このように述べておられます。
 いささか長く引用さしていただきましたけれども、住友金属の方針が確固としたものであるということを物語る文書として、またLNG発電基地についても重要な選択肢の──「重要」と言うよりも、物流基地と並んで現段階では唯一的な転用方針となっていることも読み取ることのできる文書でございましたので、あえて引用さしていただきました。
 すなわち、住友金属は、公害工場の沖出しという条件で取得した埋立免許で、全く異質の目的をもってここ二年間埋立工事を続けてきているわけであります。このことについては後ほど質問するわけでございますけれども、この問題に対する当時の県当局の態度も一度振り返ってみておきたいと思うんです。この問題が新聞等に報道されましたとき、知事は、要旨次のようなコメントを発表いたしました。
 「住友金属が見直しを表明したことは遺憾である」としながら、また一方では、「見直しを進めるに当たっては、これまでの経緯あるいは企業責任を踏まえ、地域の活性化を図るべく最大限の努力をされたい」として、和歌山市に対して、今後の検討に当たっては市の将来を展望し長期計画に位置づけをすること、特に電源立地については環境アセスメントが非常に重要であるため、これをクリアすること、並びに、地元を初め関係者の皆さんの十分なご理解を必要とすることを伝えたとされています。「遺憾である」というふうにコメントされておりますけれども、見直しそのものは否定せず、見直すに当たって注意すべき諸点を指示したようなコメントでありました。
 県議会でも当然この見直し問題は論議を呼ぶことになり、一部議員から「大企業の横暴」という指弾や「知事の談話に違和感を抱く」というような不快感の表明もありましたが、知事は、今後変更申請が出たら審査を行うということと、埋立地は地方公共団体が買い上げることも法的には不可能ではないという見解等をここで表明されました。ここでも「見直しは遺憾」とし、その遺憾の部分は言葉だけで何らの対応のないことも明らかになったところでした。
 以上のような経緯をもとに二年の歳月が経過いたしました。住友、関電、和歌山市、いずれも見直し、LNG基地の進出、LNG誘致にと、その体制を整えつつあるように思われるところであります。
 そこでお尋ねするわけですが、一昨年の住金の見直し発表以来、県当局はこの問題にどのように対応されてまいりましたか。住友金属、関電、和歌山市等と公式、非公式にどのような話を進めてこられましたか。その際の県当局の基本的な態度はどのようなものであったのか、明らかにしていただきたいと思います。とりわけ、当時「見直しは遺憾」と表明した知事の姿勢はどのように貫かれ、現在それについていかなる所信をお持ちなのか、明らかにしていただきたいと思います。
 二番目、住友金属による現下の埋立行為は、明白に転用を前提としているものであります。さきに長々と二年間の経緯を申し上げましたのも、その客観性を示すためのものであったわけですが、明らかに転用を前提に行っている埋立工事であります。しかし、埋め立ての許可条件は、公害工場の沖出しであります。埋め立ての合法的根拠は当事者によって喪失していることが表明されているわけであります。私は、公害がどの程度減少し、どの程度残留しているのか、今この項目で問うところではありませんが、当事者は沖出しの必要はないと天下に公言しています。そして同時に、埋立工事を進行させているわけです。免許権者としての当局はこの矛盾を目の当たりにしているわけですが、この事態に対してどのような所感をお持ちでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
 さらに、第二工区の竣功認定に当たっては鉄工用用地としてその竣功を認定しています。埋め立ての当事者が転用することを公式に表明している埋立地を鉄工用用地として竣功を認定するというのは、素人の私たちから見ると全く何をしているのかわからないところであります。技術上、工法上の問題に限っているのかもしれませんが、そこには行政として免許条件を守らせるという姿勢が全く見当たりません。用途変更の申請が出たら審査をするというのが当局の態度としてさきに表明されていましたけれども、それならば、関係する会社、地方公共団体にも用途変更を前提とした勝手な動きは自粛さすべきが免許庁としての仕事ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
 次に、第三工区着工に当たってはそのような基本的な話し合いがなされたのかどうか。あったとすればどのような内容で行われたのでしょうか。本来的に言うならば、遅くともこの時点で転用の意思を公式に確認し、それが免許条件と異なるならば埋立工事の一たんの中止、その後の問題は法との関係で整合性のあるものにすべきだと私は考えるのですが、いかがでしょうか。そういうことがないと、住金と県とがなれ合っているとか、住金の土地転がしを県が黙認しているとかというようなことを言われても仕方がないのではないでしょうか。所見をお伺いしたいと思います。
 次に、公害問題についてお聞きをいたします。
 公害防止装置の改善や生産量の低下等により従前の公害が相当改善されたのは事実であろうと思います。しかし、地元には依然として公害の被害の訴えがあり、今回の住金の措置に対する不満も大きな声となって聞かれます。ごく最近も、公害の存在と発生源の沖出しを求める要望が住民団体から県や市及び企業に提出されたと聞いております。
 当局として、この住金公害の現状をどう把握しておられるか、沖出し不要という企業の主張をどう考えられるのか、公害被害の根絶のためにどのような方針で指導されておられるのか、地元の住民の訴えも届いておろうかと思われますので、考え方を示していただきたいと思います。
 次の問題に移ります。
 和歌山市布引地区のシーサイドロード、和歌山市が建設中の市道予定地に、現在、一枚の大きな看板が立っています。この地区の一定部分が土地収用法に基づく事業認定を受けたという告知でありますが、六月中旬、この看板が突然立てられ、それを見た人々は大きな不安と青天のへきれきのごとく行われた私権の制限行為に大きな怒りを抱き、現在に至っております。
 平成二年に和歌山市が、この地にマリーナシティにつなぐ道路の建設を決めました。以来、市の方は精力的に買収行為を続けたようであり、そのことは新聞記事等でも承知しておりましたが、同時にそれは必ずしも円滑に進んでいなかったようでもあります。
 この土地は、古老の話によれば、四百年から五百年の長きにわたって死にかわり生きかわりしながら耕され続けてきた土地ということであります。そこには、百数十代の人間の歴史が刻み込まれているでしょう。しかも、まれに見る肥沃の土地であり、市内でも数少ない専業農家の集落でもあります。
 農家が土地を手放したくない、あるいは失いたくないと思う心は、切なるものがあります。三年前にふと思いついたシーサイドロードとは、その土地にかける思いが違います。買収の困難は当然予想されたことだと思いますが、余りにも早い土地収用法の適用であります。あの地にシーサイドロードが必要かどうかをきょう私は論ずるつもりはありません。ただ、公共、公益のためにという名分があれば私権の制限という権力行為を慌ただしく振り回すということに大きな疑問を抱くわけであります。しかも、この事業の認可申請と認定に至る過程が、民意の反映とりわけ当該地区の地権者たちの意見を聞くという全く初歩的な、地方行政としてはイロハのところが欠けている粗雑な申請と認定であったということに大きな疑問を抱くわけであります。
 質問の一つは、和歌山市が土地収用法に基づく事業認定の申請を行ったことも、それを縦覧に供したことも、そしてそれが県によって認定されたということも、当該地区の人々は全く知らなかったということを県当局がどう考えるかということであります。
 和歌山市は当該地区の人々に対し、時折、強制収用もあり得ると口にはしていたようであります。しかし、土地収用法とはどういうものか、いつ申請するのか、その事業の申請がされればどのような順序で執行に至るのか、あるいはこの過程において当該地権者にはどのような権利が保障されているのか、事業認定の申請の前にはそれぐらいの説明があっても当然であります。そうでないと、住民の権利が完全に無視され、行政権力のひとり舞台になるからであります。
 では実際にどうであったのか。土地収用法の説明も、認定申請の日も、これにかかわる住民の権利の説明もありませんでした。一つだけ、義務的にしなければならないことがありました。それは認定申請を縦覧させるということです。縦覧させなければ法的に定められた手続とならないからでありますが、そのためには縦覧に供しているということも告知されなければなりません。本来、そのことは地権者たち、当該の地区の人々は当然知らなければならないわけであります。
 しかし、知りませんでした。なぜ知らなかったのか。和歌山市は、市役所の正門の道路に面した掲示板に西洋紙半紙一枚程度の大きさの印刷物を張りつけたのです。そして、市役所のエレベーター、市役所の土木部管理課に、縦覧に供している旨を掲示しただけであります。それだけであったわけです。
 市役所や役場の前の掲示板に小さな文字の印刷物がぶら下げられているのを、私どももよく見かけることがあります。しかし、まずそれを読むという人はおりません。ポスターなら目を引くこともあるかもわかりませんが、小さな文字のプリントの西洋紙が一枚掲げられているのを一々読んでいる人というのは、いまだ見かけたことがありません。
 当該地区の人々は、農繁期で多忙をきわめておりました。深夜二時、三時の労働は決して珍しくないという時期でした。十キロメートル以上離れた市役所の掲示板やエレベーターの前に何が張られているかに興味を抱き、わざわざそれを見に行くという人は、これもまずおりませんでした。もちろん、土木部の管理課のドアを見に行く人も、これまたおるわけがありません。
 結局、事業認定の申請があったことも、それが縦覧に供されていることも知りませんでした。したがって、公式に意見を出せる機会であったにもかかわらず、全く意見が出せなかったわけであります。語り尽くせないほど言いたいことを持っていた当該の地権者の意見は、公式の場で出す権利をこの際奪われたのです。そして和歌山市は、県に対して「縦覧したけれども、意見はなかった」と報告し、県も意見がなかったということでこの項目は処理したわけであります。
 以上のような状況の中で認定した県当局の行政姿勢を問いたいのであります。土地収用法を適用するというのは、土地の買収がうまくいかないからです。うまくいかないのは、何らかの理由があるからです。反対意見があるからです。だからこういう措置がとられたわけでありますから、市から「意見がない」という報告があれば、その真偽をただしてしかるべきではないでしょうか。それが県の認定行為として最初に行うべきことではないでしょうか。
 土地収用法第二十一条は、都道府県知事が事業認定に関する処分を行おうとする場合において、意見書の添付がなかった場合またはその他必要があると認めるときは、起業地にある土地の管理者──この場合、地権者です──から意見を求めなければならないとあります。場合によっては専門家の意見を聴取するとか、公聴会の開催まで定めております。
 縦覧はもともと公正さを保障するためのものです。それをさせないことは公正を欠いたということであります。それが周知されず「意見なし」ということであれば、意見を求めるべく指導するのが県の仕事ではないのでしょうか。地権者の感情や願いを大切にすること、納得を通じて仕事を進めることが行政の本来的立場であるならば、今回のこの件に関する認定のあり方は極めて粗雑であり、認定の効果に疑問を抱くものであります。
 以上の点について、当局の見解を求めます。
 二番目の質問は、認定に当たる当局の体制的問題であります。私は、認定に当たっては合議機関がなければならないのではないかと思うわけであります。土地収用法に基づく土地の強制買収は、地権者の権利を公益の名において制限するものであり、権力による土地の一方的接収であります。私は、地権者の故意による妨害やごね得をねらっての買収妨害に対しては、ある程度法に基づく毅然とした対応が必要であろうとは考えております。わずか数平方メートルの土地に三千万円を補償するようなある市の度量はごね得への哀れな屈伏だと思いますが、そういう悪意の妨害行為への対処と今回の問題は本質的に異なる対応がなければならないと思います。行政の行為が善でそれに逆らう者は悪いという構図は、民主主義と無縁であります。
 成田空港での土地収用が二十数年を経ても強制収用に至らなかったことなどは、私権がいかに尊重されるべきかを物語っています。したがって、実際に強制収用というのは県下でもなかなか例を見ないものでありますが、認定に当たっても当然慎重を期すことが必要だと考えます。
 しかし、申請書がマニュアルどおりに形式さえ整えていればOKの印がつかれるというのが現実であります。今回の場合もそのように措置され、土木部の一つの課において、この問題は何らの合議、複数の人数において討議・決裁するということではなく、担当の一課の一存によって事は運ばれているわけです。法的にそれは違法ではないでしょう。しかし、その印鑑一つでその地区一帯の地権者はみずからの財産の自主的処分の権限がなくなるということを考えれば、単に一つの課に任せておくという問題ではなかろうと思います。
 また、認定の条件の中には「当該地区の土地の合理的利用」と、相当難しい判断が必要な項目もあります。こういうことを一課一室で判断することは極めて危険なことであり、当該地区が農業振興地域であり、和歌山市の中でも数少ない専業農家の集落であることを考えれば、一層その感を深くするものであります。認定に当たってはしかるべき委員会等による審議が必要だと思われますが、いかがでしょうか。
 以上をもちまして、第一問を終わらせていただきます。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
 西防埋立地の利用計画の見直しについての現在の所見でございます。
 お話ございましたように、二年前、住友金属の土地利用計画を見直したいという希望表明の際に「遺憾である」と述べました私の気持ちは、変わっておりません。住友金属から、移転を中止したいという希望表明の後、埋立地の転用について申し入れを受けておりませんし、和歌山市等との話し合いは行っておりません。
 また昨日、木下議員にも申し上げたように、公有水面埋立法上は埋立地の用途を変更することは許容されておるわけでございます。現在、住友金属において、沖出し中止に関する地元のコンセンサスの形成、環境改善の方策、土地利用の内容など、その実現性について種々検討作業が行われている段階と認識しており、その推移を注意深く見守っていくべきものと考えておる次第でございます。
 なお、埋立法上は、具体的な変更申請がなされた段階で審査し、判断することになっております。
○議長(馬頭哲弥君) 土木部長山田 功君。
  〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) お答えを申し上げます。
 最初に、住友金属西防の埋め立てに関しまして、埋立許可条件と現実とが矛盾しているのではないかというご質問でございますが、これは埋立法上の考え方ということだろうと存じます。
 二年前に住友金属が土地利用計画を見直したいとの希望を表明しておりますが、これは埋立権を所有する者としての希望を述べたものであって、県としては、具体的な変更申請がなされない以上、従来の免許は依然有効であろうと考えております。
 次に、免許庁としての指導をしてはどうか、特に第二工区を竣功させたことに対するご質問でありますが、埋立地の竣功認可は免許内容に応じた土地が物理的にできたかどうかという観点から行うのであります。したがって、第二工区の竣功認可については、埋立免許を持っている住友金属から竣功認可の申請があり、願書どおりの内容で土地が完成していたということから許可をしたものであります。
 次に、法との整合性等の問題でございますが、現在、住友金属において埋立地の利用の変更のための検討作業が行われていると認識をしております。検討作業の結果、埋立地の用途変更申請がなされれば、公有水面埋立法に基づき厳正に審査、判断等をする所存であります。情勢の推移を注意深く見守りつつ適切に対応していくべきものと考えております。
 次にシーサイドロードの関係でございますが、まず一番目に、関係住民の意見聴取等に関してでございます。
 市は、平成二年十月からシーサイドロードの用地交渉を開始して、本年四月二十一日の説明会までの間、再々交渉を重ね、約八〇%の同意を得られましたが、残りの方々の同意が得られず、任意交渉と並行して収用手続の開始を行うことを説明し、五月十三日に事業認定の申請に至ったと聞いております。県においては、市における公告、縦覧手続後、六月十五日に認定告示を行ったところであります。
 この間、地権者の方々が認定に関し意見を述べる機会がなかったのではないかというご指摘でございますが、収用法上、地権者等への周知方法は公告という手続のみであり、それ以外の手続による周知は起業者の判断にゆだねられておるわけでございます。今回、適法に行われたものであると認識をいたしております。
 また、公聴会の開催あるいは専門的知識を持つ者の意見聴取、関係行政庁との合議という話もございましたが、これらは事業の範囲が極めて広範である場合、あるいは特殊な事業の場合、法令上の制限がある場合にそれぞれ行われるものでありますが、本事業は限られた範囲の線的な一般道路事業でございます。その必要はないものと判断をいたしたわけであります。
 次に、認定の仕組みといいますか、しかるべき議論の上で行ってはどうかというご提言でございますが、認定庁としては、申請を受けて土地収用法の規定に基づき、起業者の意思、能力の有無あるいは収用する土地が最小限度であるかなどの土地利用の合理性、収用の必要性等の要件に該当するかどうか、慎重に審査をし、認定をすることとなっております。
 起業地内に道路、河川等の公共施設がある場合や土地利用に関し自然公園法、都市計画法等による制限や許認可等を要する場合には収用法に基づき関係行政機関の意見を聴取することとなっており、いわば合議制に準じたような形になっていると考えられます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 保健環境部長江口弘久君。
  〔江口弘久君、登壇〕
○保健環境部長(江口弘久君) 鶴田議員ご質問の住友金属西防埋め立ての公害根絶の指導強化についてでございますが、住友金属工業和歌山製鉄所周辺の環境については、公害防止施設、緩衝緑地その他により改善され、平成四年版「環境白書」によりますと、硫黄酸化物、窒素酸化物、降下ばいじん等は環境基準、行政目標値を満足しており、埋立計画策定時の昭和五十年当時と比べると相当な改善を示しています。
 しかしながら、公害苦情は全くなくなったとは認識しておりません。今後も引き続き環境監視を行うとともに、事業者に対し、技術進歩に伴う最適な公害防止施設の整備、維持管理に努めるよう指導してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 33番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、再質問をさせていただきます。
 住金の埋立問題につきまして、その利用計画の見直しが発表されて以降、知事は「遺憾」との意を表しまして、現在もその趣旨は変わっていないというふうにおっしゃられました。
 そこで私は、見直しが遺憾であるということであれば、遺憾という所信に基づいて何らかの対応があってしかるべきではないかと思うわけです。公害の問題がある、それを除去するための埋め立てである、そういうことで出発して、そしてそれが見直しされる。それが遺憾だということであれば、住友金属に対して何らかの対応が当然生まれてくると思うわけなんですが、その点はいかがなんでしょうか。実は、そこから先の知事のプレーが全く見られないのが非常に不自然だと思います。
 「遺憾」という言葉はどういうことなのかということについても考えなければならないと思いまして、よくわからないものですから「広辞苑」を引いてみました。そうすると、「思いどおりにいかず心残りである」というのが一つ出てまいりました。知事は「当然、公害を沖出しさすべきだと思っていたけれども、それがうまくいかなくなってきた」と、こういうふうに思っておられるんですか。私はそんなふうにまず「遺憾」というのを読みました。
 次に、「残念」という言葉もあるんです。公害工場の沖出しができずに残念というふうにおっしゃっているのか。そこのところもよくわからないんです。知事の後のプレーがないんですから。
 もう一つ最後に、「気の毒」というのがあるんです。そうすると、住友さんが気の毒だと知事が思っているのか、住民を気の毒と思っているのか、これもよくわからないんです。
 知事は「遺憾」という言葉を再三おっしゃられますけれども、言語明瞭意味不明というのはこういうことではないかと思いまして、まことに遺憾に思うわけであります。そこの中身について、「遺憾」とはどういうことなのかをひとつ明らかにしていただきたいと思うわけです。
 きのう、先輩議員の質問に対しまして、住友が見直し作業を進めていることについて「適当な段階で行政としての立場から指導する」という答弁があったように思います。この「適当な段階」というのはどういう段階を指しているのか、どのような条件が整ったときを適当な段階とするのか、この中身をひとつ明らかにしていただきたいと思うわけであります。
 また、「適切に対応する」という答弁もあったと思いますが、その「適切」というのは、立場によって随分意味が変わってまいります。問題は、沖出し中止、埋立地の利用目的の変更、こういう問題が明確に提起されておるわけですから、現在、行政当局としてそれに対する基本的な姿勢はどうなのか、それに対する基本的な評価はどうなのかということを明らかにしなければ、適切な対応というのはなかなか打てない。これまた「適切」という意味がわからなくなってくるわけです。そういう点もひとつ明らかにしていただきたいと思うわけであります。
 土木部長の答弁の中には、埋立地の利用見直しというのは住友が希望を表明したものであるという評価がありました。これは、単に希望を表明したというもんじゃないんです。社として決定をして、そして今それを遂行すべく着々とさまざまな準備を行っているところなんです。単なる希望じゃないんです。したがって、それに行政としてどう対応するかというのは当然求められるわけです。希望だったら眺めておったらいいんです。静観しておったらいいんです。そういう段階ではないという認識で対応すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
 実際問題は、埋立地の転用──転売ということになるかもしれません。そういう格好で埋め立ては進んでいます。住民のサイドから見ると、許可条件と現在の埋立行為とが完全に矛盾をしているわけです。こういう矛盾がなぜそのまま許されているのかがわからないんですよ。行政としての何らかの対応があってしかるべきではないかというのが住民の一般的な感情だと思います。しかも、発表されてから二年もたっています。市や住金と県の話し合いが持たれていないというのも大変不合理な感じを抱きます。
 結局、知事がもうゴーサインを出しているのではないかと、こういうふうに思われても仕方がないんじゃないか。ノーならば、現在の住友の転用のための準備行為に対してストップをかけるというのが免許庁としての仕事ではないかと私は思うわけですが、いかがでございましょうか。
 公害の問題につきましては、住民団体から沖出しの要望も現段階においても出されております。公害が残っているという答弁がありましたが、この点については担当部のより一層の改善のための指導を要望しておきたいと思います。
 シーサイドロードの問題に移りますと、私は今回の事業認定の申請から認定に至る県の措置というのは、収用法上、法的に何ら問題があるとは思っておりません。しかし、地方行政というのは法にさえ抵触しなければそれでいいのだというものではないと思うんです。多くの地権者が私権を制限される状態が生まれてくるような認定の申請が上げられる、あるいは縦覧があることも知らずに何も意見を出すことができなかったという事態、それが地方行政としては非常に不十分な姿勢だと思うんです。それを承知の上で県がそれを認定するということが、私にはよくわからないんです。住民こそ主人公という立場がここでは貫かれているようにどうしても思わんのです。
 私は、土地収用法そのものを否定するものではありません。先ほども申し上げましたように、必要な場合もあろうと思います。しかし、今回のような事態の場合、もしそれを適用するとしても住民に対する親切な対応が当然あってしかるべきだと。それがなされていないことを県当局が承知の上で認めてしまったということに対して、私は非常に不満を抱くわけです。住民に思いをはせる、そういう温かさというのがあってしかるべきじゃないでしょうか。いま一度お尋ねをするわけでございます。
 ある農家は一割以上の土地を失います。ある家は祖先の墓の上に道が走ります。ある家では、庭のある家をと最近ようやく買い求めたその家の、その庭の八割以上が削り取られます。ある家では、このことによって後継者が後継する意欲を失いかけているという話も出ています。五百年間、先祖伝来の土地、百数十世代にわたって生きかわり死にかわりして耕してきた土地であります。農家が持つ土地への執着、若い後継者がこの土地に抱く夢、それを理解してやってこそ地方行政だと思うわけであります。そういう姿勢の欠落が今回の措置の中に見られます。
 二番目の問題の、そういう申請が上がってきた場合には、個人の判断ではなく合議の機関があってしかるべきという問いの答えに、関係行政機関に該当するところがない、そういうのは今回は不必要であると答えられましたが、今回の場合でも、地権者の意見がないという不自然さには当然気を配るべきじゃないか、あるいは土地利用が合理的であるかどうか慎重に審査をすべき課題ではなかったか、そういう点を考えようとするならば、単なる一課一室に任せるということではなくて、そこに上がってきた申請を集団的に検討する委員会、審議会的なものがあってもいいのではないか、そういうことを考える次第であります。県当局の見解をお伺いしたいと思います。
 以上で再質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
 私が「遺憾」と申し上げたのは、住友金属の土地利用計画の見直しに関する私の気持ちを率直に述べたものでございます。
○議長(馬頭哲弥君) 土木部長山田 功君。
  〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) お答えいたします。
 住友金属西防の埋め立てに関しまして、適当な段階あるいは適切な対応とはどういうことかということでございます。
 いずれにいたしましても、現在、一概にこれを明確に想定することは非常に難しいのではないかと思いますが、例えば時期としては、沖出し中止に関する地元コンセンサスがある程度形成をされたり、あるいは利用計画が具体化をした段階というようなことが想定されますし、また適切な対応ということについては、好条件を備えた貴重なスペースの利用としてふさわしい利用かどうかを含め、まさに多面的な観点からこれを指導をしていくというようなことが想定されます。
 いずれにしても、埋立法上は具体的な変更申請がなされた段階で審査、判断ということになりますが、今申し述べたような段階が至れば所要の対応をしていく必要があるのではないかと考えております。
 それから、シーサイドロードで住民の意見を聞くという立場での親切さや温かさが足りないのではないかというご指摘がございました。
 先ほども申し述べましたが、この認定は単に形式的に要件が整っているということで行うのではなくて、内容的にもいろいろ審査をいたしております。
 また、この私権にかかわる事業認定の申請がなされるまでには、地元交渉を通じ、事業認定の手続を行うことについても徹底周知をされているのが一般的であると理解しておりますが、今、手続の周知について不十分な場合もあるんじゃないかというご指摘でございます。そのような点については今後とも十分注意をしてまいりたいと思っております。
 それから、認定を行うときにしかるべき合議制をしくべきではないか、あるいは合議制機関を設置してはどうかというご提案でございますが、先ほどの答弁でも申し上げましたように、収用法上、合議制に準じた取り扱いが実情なされておると考えております。事業認定に際しては、土木部において慎重に審査をし、認定をしているものであります。なお、案件によっては関係部局との調整を行うというようなことも当然ございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問はありませんか。
 以上で、鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十三分休憩
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