平成5年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(全文)


県議会の活動

議 事 日 程 第七号 平成五年三月十六日(火曜日)
  午前十時開議
 第一 議案第一号から議案第七十三号まで(質疑・委員会付託)
 第二 一般質問
 第三 請願付託
会議に付した事件
 一 議案第一号から議案第七十三号まで(質疑・委員会付託)
 二 一般質問
 三 請願付託
 四 休会決定の件
出 席 議 員(四十五人)
 1 番 尾 崎 要 二
 2 番 中 村 裕 一
 3 番 下 川 俊 樹
 4 番 石 田 真 敏
 6 番 木 下 秀 男
 7 番 岡 本 保
 8 番 藁 科 義 清
 9 番 北 村 翼
 10 番 小 川 武
 11 番 上野山 親 主
 12 番 井 出 益 弘
 13 番 町 田 亘
 14 番 尾 崎 吉 弘
 15 番 門 三佐博 
 16 番 西 本 長 弘
 17 番 高 瀬 勝 助
 18 番 冨 安 民 浩
 19 番 和 田 正 一
 20 番 阪 部 菊 雄
 21 番 平 越 孝 哉
 22 番 大 江 康 弘
 23 番 岸 本 光 造
 24 番 山 本 一
 25 番 吉 井 和 視
 26 番 浜 田 真 輔
 27 番 堀 本 隆 男
 28 番 宇治田  栄 蔵
 29 番 富 田 豊
 30 番 中 村 利 男
 31 番 馬 頭 哲 弥
 32 番 宗 正 彦
 33 番 鶴 田 至 弘
 34 番 上 野 哲 弘
 35 番 村 岡 キミ子  
 36 番 松 本 貞 次
 37 番 木 下 義 夫
 38 番 和 田 正 人
 39 番 中 西 雄 幸
 40 番 橋 本 進
 41 番 野見山  海
 42 番 森 正 樹
 43 番 浜 本 収
 44 番 新 田 和 弘
 45 番 浜 口 矩 一
 46 番 森 本 明 雄
欠 席 議 員(なし)
 〔備 考〕
 5 番 欠 員
 47 番 欠 員
説明のため出席した者
 知 事 仮 谷 志 良
 副知事 西 口 勇
 出納長 梅 田 善 彦
 総務部長 山 中 昭 栄
 企画部長 佐 武 廸 生
 民生部長 吉 井 清 純
 保健環境部長 江 口 弘 久
 商工労働部長 中 西 伸 雄
 農林水産部長 中 村 昇
 土木部長 山 田 功
 企業局長 高 瀬 芳 彦
 以下各部次長・財政課長 
 教育委員会委員長
  岩 崎 正 夫
 教育長 西 川 時千代 
 以下教育次長
 公安委員会委員長
  山 階 清 弘
 警察本部長 中 長 昌 一
 以下各部長
 人事委員会委員長
  水 谷 舜 介
 人事委員会事務局長
 代表監査委員 天 谷 一 郎
 監査委員事務局長
 選挙管理委員会委員長
  稲 住 義 之
 選挙管理委員会書記長
 地方労働委員会事務局長
職務のため出席した事務局職員
 事務局長 塩 崎 省 吉
 次 長 中 村 彰
 議事課長 中 西 俊 二
 議事課副課長 佐 竹 欣 司
 議事班長 松 谷 秋 男
 議事課主事 古 井 美 次
 議事課主事 松 本 浩 典
 総務課長 川 端 孝 治
 調査課長 大 畑 巌
 (速記担当者)
 議事課主査 吉 川 欽 二
 議事課主査 鎌 田 繁
 議事課速記技師 中 尾 祐 一
 議事課速記技師 保 田 良 春
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 午前十時三分開議
○議長(馬頭哲弥君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(馬頭哲弥君) 日程第一、議案第一号から議案第七十三号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 38番和田正人君。
 〔和田正人君、登壇〕(拍手)
○和田正人君 去る二月十六日、日向方斉住友金属相談役名誉会長がご逝去されました。
 平炉メーカーであった住友金属の銑鋼一貫体制への企業基盤確立と、敗戦後の混乱した昭和二十年代から産業復興と国民生活の安定に向けて動き出した昭和三十年代、その間の朝鮮動乱による特需景気が鉄の需要を大きく伸ばした中で、特に昭和三十六年三月十五日、和歌山に第一号高炉が火入れされた感激は、今も私は覚えています。
 当時の鉄鋼産業は旧八幡製鉄、富士製鉄にリードされる産業構造を余儀なくされる体制であり、関東・千葉進出に精魂を傾け日本銀行と争った「西山天皇」と言われた川崎製鉄社長の存在や、昭和四十四年二月、和歌山第五高炉の火入れ稼働に至るまでの故日向方斉氏の活躍は、住金関係者のみならず多くの皆さんに語り継がれているのであります。
 昭和三十六年から四十四年までに、二年に一本、五本の高炉に火入れした和歌山製鉄所、とりわけ昭和四十年、当時の粗鋼減産状況が続いた中で、生産枠や輸出枠について、また第四高炉建設をめぐって新規の設備調整問題として通産省や公正取引委員会と渡り合った経過は、石炭から石油へとエネルギー転換の進む産業界の技術革新とともに、自由競争を前提にした伸び行く産業、企業のあり方を社会に投げかけた大きな出来事であったと思います。世に言う住金事件であります。当時の状況下で、一民間企業が行政官庁の指導にあからさまに逆らったのは異例の出来事と言えた。
 今、和歌山製鉄所に限らず、日本の鉄鋼産業は大きな試練のきを迎えています。和歌山製鉄所に引き続いて、鹿島製鉄所の建設、住友金属の社長、会長を経て関経連の会長を務められ、関西復権にかけられた活動と業績はご案内のところであり、特に泉南沖埋め立てによる関西新空港建設には晩年の情熱を注がれたのであります。
 ここに、昭和六十二年元旦から日本経済新聞に掲載された「私の履歴書」、日向方斉氏の単行本(非売品)がありますが、関西国際空港にかかわる部分を紹介させていただきたいと思います。議長のお許しをいただき議員各位のお手元にお配りをさせていただいておりますので、ご参照いただきたいと思います。
 関西国際空港 念願の関西国際空港が二十七日着工した。関経連会長に就任して以来、一貫して推進してきた大型プロジェクトの門出である。喜びもひとしおであった。
 新空港建設が事実上決定したのは、昭和五十八年度の政府予算案で「着工準備調査費」が認められた時である。五十四年三月三十一日、関西の経済団体を網羅した「関西新国際空港建設促進協議会」が発足、佐伯勇大阪商工会議所会頭と私が代表理事に就任した。大商側は途中で古川進会頭に交代した。それから事業主体が決まるまでの約五年間、二人を中心に陳情を中央に繰り返した。
 陳情は大平正芳首相の時代から始まったが、五十五年六月のダブル選挙のさ中に急逝され、鈴木善幸首相に代わった。八月一日、鈴木首相のところへ表敬訪問に行くと、「善処する」との前向きの発言を得た。その言葉通り、地元大阪出身の塩川正十郎氏が運輸相で入閣。塩川さんは大阪、兵庫、和歌山の関係府県に何度も足を運び、「地元合意の形成」という、われわれ財界人ではなかなか難しい問題に力を尽くされた。さらに、大阪三区の衆議院議員(元運輸相)原田憲氏を会長とする「関西新国際空港建設促進議員連盟」が結成され、大いに士気が上がった。
 しかし、五十六、五十七年度予算とも一般調査費が認められたにとどまった。財政難が大きな壁となり、また工法についての異論や地元の反対もあって、着工を認める「実施設計調査費」はゼロ査定であった。
 五十七年四月、住金の東京本社内に促進協東京連絡事務所を開設。それを足場に、自民党三役や有力政治家、学識経験者、マスコミ関係者などと何度も懇談をし、要望やら根回しに明け暮れた。小坂徳三郎運輸相のお骨折りで、経団連、日商などのほか、日本各地の経済団体が促進協に加盟してもらえることになった。七月二十日、東京のホテルで開いた第五回促進協総会はまことに壮観で、二階堂幹事長に「日本最大の圧力団体の誕生だな」と言われた。
 その年の十一月二十七日に第一次中曽根内閣がスタートした。中曽根首相とは古くからの親しい間柄だった。十二月二十七日、私は首相官邸を訪れた。首相は「難航しているようだが、最後は私がやる」と太鼓判を押してくれた。二十九日の長谷川峻運輸相と竹下登蔵相との折衝で「着工準備調査費」という名のゴーサインが出たわけである。
 五十八年五月、関係閣僚会議が設置され、問題は事業主体に移った。公団方式、地方自治体主導型、第三セクター方式などがあったが、私は一種空港は国が責任を持って建設、運営すべきであると、公団方式を主張した。ところが、五十九年度予算編成の大詰めの段階になって、首相の意向を受けた運輸省から国、自治体、民間の三者が出資する株式会社方式を言ってきた。公共事業に民間資金を導入するのは筋違いで将来に悪例を残すと考え、徹底して反対した。そのうち運輸省が民間出資額五百億円を二百億円に修正してきた。早期着工のため、やむなく妥協した。
 経団連の稲山嘉寛会長、花村仁八郎副会長の参加、協力を頂き、企業から出資金を募ると、何と四百八十五億円も集まった。利権に結びつくことのないよう、広く薄くお願いしたことが功を奏したと思う。新空港に期待する民間の熱気を強く感じた。
 人事については当初、私を会長に、といってきたので、「私より港湾建設の専門家がいい」と首相に言った。その結果、会長はおかず、運輸省出身の竹内良夫氏の社長起用が決まった。五十九年七月三十一日、所期の目的を達して促進協を解散、十月一日関西国際空港株式会社が発足した。思えば長い道のりであった。
 以上でありますが、本来、国の責任において建設されるべき第一種空港が、財政的事情とはいえ第三セクター方式で地元負担を伴う工事となり、心配された地盤沈下も先日の発表によれば懸念なく来年夏開港へと工事が進められていますけれども、最大の課題は二十四時間運航のハブ空港としての役割と機能にするための全体構想実現であり、一本の滑走路での国内線路線決定と便数確保であると思います。これらについては後に触れることにして、一番機に搭乗するんだと常々話され、中央に意見の言える関西財界人として関空に夢を託されていた今は亡き故日向方斉氏に哀悼の念をささげ、壇上から謹んでご冥福をお祈りするものであります。
 さて、関西新空港に関連する問題でありますが、ここに一月十四日、読売新聞夕刊の「全体構想への近道」という記事があります。「大蔵省一階の主計局は昨年暮れ、五年度政府予算の大蔵原案内示状況や復活折衝の経過を取材する各地の記者でごった返した。 大阪にとっての最大の関心事は、関西国際空港の滑走路を三本に増やす『全体構想』の調査費。担当主査の前に陣取って、根掘り葉掘り査定理由や背景を聞いていたところへ、『全体構想って何ですか?』と突然、"初歩的"な質問が飛び出した。 熱くなっていた頭が、さめていった。関西復権をかけたプロジェクトも、全国的には『ローカル空港のひとつ』という評判は聞いていたから、質問を笑う気になれなかった。この空港の知名度の低さを、改めて実感させられた思いだった」、後略でございますが、こういう記事があります。
 私も二年前、第六次空港整備計画への全体構想の位置づけを要望するため、関空特別委員会として衆議院運輸委員会の国会議員に陳情したことがありますが、その際、「関空は海上埋め立てをしているそうですね」と言われた議員の認識から──議員の名誉のために選挙区は申し上げませんけれども──関空とは、東京を中心にした日本でどんな位置づけなのか、情けない思いをした体験があります。また、羽田沖工事の三本の滑走路や規模を見るとき、地方分権や国土の均衡ある発展などとはほど遠い、言葉のバランスにしか思えない腹立たしさを覚えるのであります。最近の関空に関する報道に対し、知事はどのように受けとめておられますか。
 二、三の例を紹介しますと、三月九日、全体構想について、「地元が現在のような──これは消極的なという意味であります──姿勢を続けるならば、第七次空港整備五箇年計画への盛り込みは難しくなる」と、山本雄二郎航空審議会委員が大阪市内での講演会で地元の取り組みを批判する発言をした内容が報道されています。空港整備計画を審議する運輸大臣の諮問機関の現職委員の発言であり、山本教授は、資金負担をめぐって、地元の中に「本来は国が負担すべき」「国と地元がイコールで負担するのはおかしい」などの意見が出ていることに対して不満を述べるとともに、運輸省の政策判断として、大都市圏の国際空港計画は中部もあれば首都圏第三もある、関西の全体構想よりもやりやすければそちらを選ぶのは当然とも語っているのであります。
 前後しますが、二月十九日の報道では、先日の森議員の質問にありました服部関空社長の談話があります。重複を避けますが、全体構想への事業主体になることは困難であると明言し、株式会社としては無理で、公団に改組するなど方法を考え直さなければならないとも話した、このように報道されていることについて、またNHKテレビで紹介された関空の実情や問題から、県民の中にも関空に対する関心や疑念を示されているだけに、今後の方向と実現に向けた促進期成会としての確固たる合意された姿勢を明らかにすべきだと思うわけであります。知事のご所見をお伺いしたいと思います。
 次に、先日の森議員の質問にもありましたが、二月十二日の那覇市内のホテルでの関西国際空港沖縄ポートセールス団関係の記事であります。
 「大阪の都心とつなぐ新空港の交通アクセスの便利さや、国際線との乗り継ぎやすさを訴え、新空港への路線誘致を狙った。 『大阪空港の存続で国内線の便数確保がなかなか苦しい』『でも、JRと私鉄が乗り入れ、都心までたった三十分です』 建設の模様などを伝えるビデオが大写しにされる会場で、今回の団長を務めた仮谷志良和歌山県知事らが次々と訴えた」とあります。
 この報道から、JRも私鉄も和歌山側から直接乗り入れしない今日の状況と、都心部への利便性を訴え、国内線相互乗り入れを空港を持つ各都市の自治体や経済諸団体にセールスする仮谷知事の心中を察するのであります。県益のため国内線確保に政治生命をかけるとまで言われた仮谷知事。運輸省の関空と現大阪空港への国内線路線の配分作業が始まった今、各航空会社の思惑を含め、厳しさを認識せざるを得ないのであります。
 運輸省は、九○年十二月に大阪空港の存続を決めた後、一、一日約三十便の国際線はすべて関西新空港に移す、二、大阪空港の国内線を現在の一日約百五十便を百便以下にするとの方針を固めているはずであります。にもかかわらず、森議員の質問にもありました大阪、兵庫の商工団体が航空会社や運輸省への要望活動を続けていることは、余りにも地域エゴ偏重の身勝手な動きであり、関西国際空港の将来を占うポイントである国内線確保という新空港の求める方向と矛盾するものではないか。欠陥空港、騒音公害として住民訴訟を初め多額の迷惑料、補償を支払ってきた事実は何であったのか。よいところ取りではないか。このような地域エゴの動きに対し良識ある関西の世論を合意できないのか、知事に伺うものであります。
 また、一方の航空会社は、種々伝えられているように最近の業績悪化で経営状況が非常に厳しいだけに、採算重視の路線決定を優先する姿勢であることは間違いありません。加えて、低コストの外国航空会社に客を奪われているため、赤字路線の運休と廃止を求めるなどの国際線不況などから、航空大手三社で計一千億円を超えると言われる新空港関連投資の圧縮を迫られていることから、日本航空と全日本空輸が関空に予定していた格納庫の建設計画を白紙に戻したことで、開港時に格納庫が一つもない世界でも珍しい国際空港になると言われています。和歌山に計画された航空会社の諸施設も、縮小もしくは凍結されているのであります。
 このような背景を持ちつつ、ことしの夏ごろ最終的な路線決定を運輸省が行うと予測されていますが、現在の国内線をめぐる見通しについて、さらに一番機の飛ぶ路線と開港時期について、企画部長の答弁を求めるものであります。
 さらに、「全体構想」というネーミングについて、早期実現期成会で検討はされていないのかどうか。また、開港目前になって「関西国際空港」という呼称で世界に通用するのかどうか。世界から見て日本地図の上から関西という理解は十分だと考えられるのか。二十四時間運航の初の国際空港であり、ハブ空港を目指す意気込みを示すためにもインパクトの強いネーミングを考えてもよいのではないか。
 さらに、空港ターミナルへの出店等について、昨年、説明会が開催されていますが、県内からの参加の状況について、また和歌山県として確保しているスペースについて具体的な活用の検討が進んでいるのか、以上の点について、あわせてお伺いするものであります。
 次に、外国人労働者をめぐる問題について質問いたします。
 国際化という言葉を聞くようになってから久しい。国際化というからには、いままで国境の内側だけで片づいていたことが国境を越えてかかわりあうようになり、物も金も人もお互いにより自由に行き来するようになることであろう。
 三蔵法師の天竺紀行は「西遊記」という空想小説を生んだくらいだから、旅行がいかに障害の多いものであったかがわかる。しかし、マルコポーロが黄金の国ジパングをめざして東方への旅を試みたとき、国境を越えるたびにいちいちパスポートを出して査証を受けたのであろうか。
 というより、どこにどんな国があるかも定かでなかった時代に、そもそも身分証明書のようなものがあったのであろうか。かりに国王から国王への親書があったとしても、その翻訳のできる人がはたしてどこの国にもいたのであろうか。
 答えはおそらくその反対で、昔の人びとは自分の生れたところに釘づけにされたまま、ほとんど旅行をしなかった。しかし、戦乱とか、飢饉があれば、蝗の大群が大移動をするように、あるいは、いまのイラク領内でクルド族が逃げまどうように、水と安全を求めて大移動をした。少数の例外は、利を求めて動く商人たちと、今日、歴史に残っている探検家や旅行家たちであろう。
 これは、ある雑誌に掲載された作家・邱永漢氏の「尊皇攘夷では乗りきれない 『人の国際化』の波はいやおうなく日本に押し寄せる」という題材のごく一部の紹介であります。
 外国人労働者問題について、以前の本会議において、戦後の西ドイツの経験を日本も参考にしなければならないときが来るのではと申し上げたことがあります。今、まさにその状況に直面しつつあるのではないか。西ドイツが復興するプロセスで、不足するダーティーな仕事の分野で、とりわけ炭鉱労働者を主としてトルコから導入した。しかし、二十年、三十年たって移民は市民権を持ち、人口も増加し、それがドイツ人労働者のライバルになっている。賃金の上昇を妨げる要因にもなっている上、失業者が出ると治安を悪くする。同じように東ドイツは、ベトナム人やビルマ人、アフリカ人など共産圏の労働者を歓迎した。それが、東西合併により管理経済が崩壊すると、何十万人という外国人労働者が妨げになりドイツの労働者の就職機会が制約されているとして、今、ドイツでは「ナチス政権下のユダヤ人迫害以来最悪の暴力」と言われる外国人労働者襲撃事件が頻発している事実。選挙でも、排斥運動を支持する党や候補者が得票を伸ばしている状況が報道されています。
 昨年、日本に上陸したものがあります。それは、海外で日本人がしばしば被害に遭っていた「ケチャップ泥」であります。我が県議会にも、海外においてこの経験をされた先輩がおられます。このような犯罪だけでなく、昭和五十七年に一千百件であった外国人刑法犯の検挙は平成三年には六倍増の六千九百件、中でも殺人、強盗などの凶悪事件は十倍増の百二十六件に上っている。最近の特徴は、日本人を犯行対象とした日本での事件がふえていること。警察庁の発表では、平成三年に検挙した殺人事件の二割、強盗事件の五割は被害者が日本人であります。なぜ、外国人の日本での犯罪が増加するのか。自国の経済の貧しさと生活状況から経済大国日本に行けばと不法就労を覚悟でやってきて、許されない法律のもと、まじめに働いている外国人も紹介されています。就労環境が厳しくなり、犯罪に走るにはそれなりの原因があるはずであります。
 ここに、一九七○年、アメリカ国務省のお世話と国際金属労連の計らいで私が見聞してきた当時のアメリカ労働事情調査報告がございます。簡単にまとめた小冊子でございますが、外国人労働者に関して、今回、読み返してみました。
 世界を代表するニューヨークには、当時ですら百五十を超える世界の人種が生活を営んでいて、米ソ冷戦下のもと、黒人を初め人種問題、大国アメリカという誇りと経済、外交等々、世界に対する諸問題と追い上げの厳しい日本製品に対する世論など、国の内外に多くのギャップを抱えているときでしたが、国内では自由の国アメリカに行けば市民権も取りやすく仕事もあるということで、中南米、プエルトリコやメキシコからの流入が多く、英語を話さないアメリカ人が増加していて、製造業の現場では、そのことを利用して通常の就業時間よりも前後一時間多く仕事をさせてその分は給料を支払わない、二時間分搾取する経営者が多いためトラブルが続いているとの紹介がありました。現在の日本でも、ブローカーまがいのピンはねや、仕事を求めている彼らの置かれている環境をよいことに不当な扱いをしている関係者はいないか。原因に対する対策を講じないで、事件や犯罪の検挙だけでは問題の解決にならない。二十三年前のアメリカでの事例であります。
 一方、バブルがはじけた後も外国人労働者の流入が続いている。法務省の統計によると、平成三年の上半期、新規入国者は百五十万八千五百三十三人、バブル崩壊後の昨年の上半期はこれを上回る百五十九万一千八百六十七人を記録した。出入国管理及び難民認定法で単純労働の受け入れを原則として禁止している。そのために不法就労が多く、外国人労働者の大半は観光の名目で入国し、そのまま不法残留するケースが多いのが実態であります。法務省の推計では、昨年五月一日現在の不法残留者は二十七万八千八百九十二人、その後も毎月一万人のペースで増加していると見られています。
 一昨年の「警察白書」によると、外国人労働者の多数居住している八地域の日本人千六百人を対象に行った調査結果では、「外国人とのつき合いがあるか」の問いには一○%、これもあいさつ程度であります。「機会があればこれからつき合うか」の問いには七五%の人が否定しているのであります。近隣に外国人がいることの不安感を五六%の人が訴えていること、不安の内容としてその七○%が犯罪の発生を挙げ、六○%近くが夜間の女性の一人歩きを挙げているとあります。
 最近、和歌山市内でも外国人をよく見かけます。東南アジア系か韓国、台湾といった判別が難しい人たちであります。特に、市内のパチンコ店でよく見かけます。彼らの人権のため偏見や予断は許されませんが、経済的に余裕があってパチンコを楽しんでいるとは見れないのであります。経済的に余裕がなくなり犯罪に走る環境やその懸念を禁じ得ないのであります。
 関西国際空港開港後は、関西圏にも合法、違法を問わず今以上に外国人労働者が増加することが予想されるだけに、現在の和歌山における外国人労働者の滞在状況と就業状態について、また犯罪傾向はどうなのか、さらに、問題を未然に防ぐ具体的な対応を検討すべき時期だと考えるだけに法的面と受け皿整備について、県警本部長並びに関係部長にお伺いするものであります。
 この問題の最後に、冒頭、作家・邱永漢氏の文章を紹介した、一番おくれているのは人の国際化という点、また一九七○年の訪米時に、既にアメリカ労働界の主要な幹部から、日本の経済面における成長度合いはすばらしいものであるが、国の体制が発展すればするほど国際的な責任と関係が生じることを知らねばならないと私たちは指摘をされています。
 アメリカ民主党のクリントン大統領が船出をしたことで、今後あらゆる分野で日本の国際貢献がより強く求められるのではないか。しかし、そのあり方については無定見ではなく日本の正しい選択と世界に通用する国際貢献であるべきであり、同時にこの外国人労働者への具体的な対応も国際貢献の一つであることを付言しておきたいと思います。
 次に、経済環境と円高への対応についてでございますが、少し時間が切迫をしてまいりました。議長のお許しをいただきまして、通告の順を変え、先にリゾート博開催と県民参加について質問と提言をさせていただきたいと思います。
 世界に和歌山をアピールする絶好の機会として、あと四百八十七日に迫ったリゾート博覧会開催に関する質問や補強する建設的意見が本会議でも多く出されてきました。アクセスを初め懸念される問題に対し、県当局を中心に今でき得る限りの努力を続けられているだけに、ぜひ成功させたいものであります。協力をいただく各企業も厳しい経済環境だけに、協会の皆さんもご苦労だと思います。
 そこで、県民により多く参加をいただく目的で、よりリゾート博覧会をイメージしていただくためにもと考え、サンプルを紹介しながら次の提案をいたしますので、ご検討いただきたいと思います。
 これは、缶ビールであります。(現物を示す)議場にもお回しをいただきました。大変きれいに見えたと思います。瀬戸大橋が開通した記念に川崎製鉄水島工場でつくられたものであります。サントリーと提携をし、七百ミリリットル、四百円で販売されています。私はこれを見たときに、何とか和歌山のリゾート博覧会に利用できないかと考えたわけであります。これは、今、倉敷を中心に地域限定品で販売されていますから、余り多くの方に知られていません。この児島側から写した写真、大変きれいに焼きつけをされています。リゾート博覧会はまだ会場もでき上がっておりません。イメージ写真だけでありますが、これを参考にしてイメージ写真の中で強くアピールできるものを選んでいただき、焼きつけをして、朝日ビールなどと提携しながら県内で宣伝用として販売してはどうか、このように提言するものであります。
 なお、これはアルミ缶ではなく、鉄でつくられた入れ物であります。この缶用の薄板製作には、住金和歌山製鉄所の所長にも話を進めておりますので、住友金属としても協力することにやぶさかでない、このように思います。鉄の使用量からすれば微々たるものであります。微々たる量でありますが、県内でつくられるものをまず利用する、こういうことで考えていただきたい。欠席の公室長にかわって積極的な答弁を副知事に求めて、この項は終わりたいと思います。
 あと、経済環境と円高への対応についてでございます。
 いろいろ準備をいたしました。特に、大変厳しい経済環境の中でございますので、現在、日本を代表するいろんな企業のトップの皆さん方が、これからの経済運営、企業運営をどうするのか、こういうふうな考え方をいろいろ問われたことに対して答えられた資料がございました。そのことを紹介したいわけでございますが、一部省略をさせていただきながら、特に皆さんに考えていただきたいような指摘をされている内容についてご紹介をいたします。
 ある会社の会長のお話であります。「経済の原点は、やはり物をつくることです。銀行が盛り場の表通りに店を並べて、土曜、日曜はよろい戸をおろしている。あんなばかな姿はありませんよ。盛り場というのは、土曜、日曜の一番盛りのとき、サービスや物を売って稼ぐ。それが盛り場というものです。銀行は一本裏通りに入って、表通りで店が稼いだ金を扱う。盛り場へ遊びに行って銀行に行くなんてこと考えもしませんよ。銀行がそんなんだから地価が上がるんです」。
 また、「企業は評論家集団ではないから利益を上げなきゃいけない。企業の社会との調和、国際的な調和が大事であるのはもちろんだが、利益を出すことを忘れてはいけない。それを棚上げにするから、税収が少なくなって国が慌てる。利益を上げる、配当もする、従業員に人並みの給料を支払う、これがなくて何が企業かと言いたい。そして、ちゃんと税金を納めるのが企業の責任です」。このように明言されている経営者もいます。
 また別の社長は、「日本が戦後、平和国家になったというとらえ方はおかしい。平和国家というのは、積極的に平和に貢献する、あるいは、した実績を認められている国を言うのであって、戦後の日本は生まれ変わったことは確かだが、貧乏国が金持ち国になった。成金国家になった。それでも、将棋で歩が金に成るというのはすごいことで、行動の自由度が高まった。成金国家でも、七○%は肯定的に評価できます。残り三○%は、非常に不足している分野がある。経済的には、食い物以外はしばらく買わなくても困らないところまで成熟してきたが、スペース問題があります。この問題を片づけないと、日本は単なる成金の浪費型国家になる。まさに『住足りて礼節を知る』で、スペース問題を解決しないとゆとりが生まれない。家だけでなく、オフィスも独創性を発揮できるようなゆとりが重要である。もう一つは、地球環境問題、資源保護、省エネルギーを含むエコロジーの問題を日本は最も先進的に進めなければならない。これら二つの問題に焦点を絞った傾斜対策を進めるべきで、単なる内需拡大の政策だと成金型の乱費消費を促進するだけになる」。
 この社長は、日本の産業は何をすべきかという点でもいろんなことを指摘されています。第一は、成熟社会の到来で、みんなと同じものをつくっていれば同じように売れるという時代ではなくなった、第二は、人口問題、絶対労働者数(若年労働力)の不足にどう対処していくか、第三は、その中で競争力を維持しながら時間短縮を実現すること、第四は、リサイクル法が強化される中でメーカーとして物づくりの仕方を大きく変えていかなければならないという課題、これらについても発言をされております。
 私は、準備をした資料をほとんど略して今申し上げましたが、このことを踏まえて県行政にかかわって質問いたします。
 今、和歌山市内、けやき大通りなどで地下駐車場の建設工事がされております。私は、これは要望でありますが、せっかくあれだけの大事業をするわけであります。なぜ、あの工事に併設して地下街をつくられなかったのか。これから、市駅前だとかまだいろいろ地下駐車場の計画があるようであります。和歌山市内には地下街がありません。類似都市に行けば、少なからず地下街を持って、商店の皆さんや人が集まる場所が提供されています。そして、地上部門を再開発する。このような公共工事のあり方が考えられなかったのかどうか。和歌山市の事業とはいえ、都市計画から見た町づくりという意味で、これから県の指導などもお願いをしておきたい。また、公共工事のあり方について、せっかくの事業でありますから、最大限投資効果を生み出す方策を設計をするまでにいろんな角度から検討を加えてみる、このようなあり方が望ましいのではないか、このように要望するものであります。
 また、紹介はいたしませんでしたが、お客を喜ばすということで事業をしている社長は、原点を忘れているという指摘をしながら、いろんなことを言われております。
 過去この議会でも取り上げられた和歌山市内を中心としたタクシーの運転手に対する悪評について、リゾート博覧会開催までに、マナーを含め他府県から来る皆さんに本当に評価のされる運転手になれるよう、業界の皆さん方ともぜひ話し合っていただきたいことを要望しておきたいと思います。
 具体的には、それぞれの提言の中から県行政についても経営感覚が必要であるという観点から知事にお伺いいたしますが、若い県職員に夢を与えているか、働きがいのある、また県民のために勉強するんだという意欲を持つ環境をつくっているかどうか、また他府県の後追い行政になっていないか、さらにまた二十一世紀へ先取りした施策は何か。
 総務部長には、近畿他府県の新年度予算の特徴的な施策は何かをお伺いいたします。
 また商工労働部長には、平成五年の輸出関連企業の為替レートは対ドル百二十円から百二十五円程度に予測した企業が多いわけでありますが、県内輸出企業の実情と、早い時期に一ドル百円の到来も言われるだけに今後の対応について、また雇用への波及も懸念されていますけれども県内企業の問題提起はされていないのか、こういう点についてお伺いをいたします。
 時間が参りましたので、途中大変失礼をいたしましたが、これで終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの和田正人君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 和田議員にお答え申し上げます。
 お話ございましたように、日向方斉さんが亡くなられたわけでございますけれども、住友金属和歌山工場の建設に、また関西国際空港に大きな功績を残されたわけでございまして、私からもご冥福を祈りたいと思います。
 さて、全体構想の実現でございます。
 先日も、森議員にお答え申し上げたところでございます。現在、直接の地元である大阪府を中心に大阪市、大阪商工会議所、関西経済連合会の首脳が定例懇談会を開催して、その中で関西国際空港問題が取り上げられているわけでございます。私は、何としても大阪が中心で動かなければならない、そしてまた関西財界が大きな力を持たなければならないと思うわけでございます。それらを力強く思いますし、また期待もしているわけでございます。
 しかしながら、私も関西国際空港全体構想早期実現期成会の代表理事でございまして、大阪府知事、兵庫県知事、大阪市長、関西経済連合会会長、大阪商工会議所会頭らとあらゆる角度からこの問題を検討していかなければならない。特に、関西の政治力の結集ということが一番重要な課題ではないかと思っております。
 また、関西国際空港が求めた方向と矛盾するような動き、伊丹空港の動き等についてでございますけれども、私も、これまでの関西国際空港をつくってきた経緯を考えまして、まことに遺憾に思っておるわけでございます。滑走路が一本の形で進むならば、関西復権ということは遠のいてしまうのではないかという危機感も持っております。そうした危機感が一番大事なことであります。
 そして、関西国際空港をつくったときの原点に立ち返ってみると、あの当時と時代は変わりつつあり、お話ございましたように、中部国際空港の問題がある、韓国等の問題がある。そうした問題を克服することにより地域エゴをなくしていかなければならないと思っておるわけでございます。
 先日も、大阪ベイエリアの会議がございました。そのときにも、宇野さんや兵庫県知事に、大阪財界と神戸財界がもう少し連携を密にしなければいけないのではないかと言ったんです。宇野さんも、今までベイエリアが忙しかったから、これからはこれに真剣に取り組むんだということを言われたわけでございます。
 次に、経済環境の問題でございます。
 提言として話された駅前の地下街づくりの問題、これについては検討したわけでございます。あの付近の商店街の皆さんも、他府県を視察して実情も調べてまいりました。しかし、民間としてどこまで協力できるかという問題等々ありまして地下駐車場だけになったという経緯がございます。地下街づくりということ、非常に大事なことでございます。しかしまた、経済的な問題、関係者の問題もあるわけでございますので、慎重に考えていかなければならないと思います。
 それから、県職員の夢の問題でございます。
 「事業は人なり」と言われますが、県等の自治体においても全く同じであると思っておるわけでございます。最近、若い優秀な職員が多いわけでございまして、特に管理者の皆さんには、こうした若い職員を上手に使いなさい、指導しなさいということを申しておるわけでございます。そして、若い職員の新しい感性で県政に息吹を与えていただきたい。県民が今何を考えているか、県政に何を求めているかを知るためには、そうした若い人たちの感性を活用することが大いに大切であると思います。
 私は、若い職員とも時々懇談会を催していろいろな意見を承っておりますが、彼らは和歌山県の発展のために、心豊かなふるさとづくりのために入ってきておりますので、熱気や活気を感じます。また現在、若い人たちが研究会をつくっていろんな問題について研究を行っております。それらに対しては、県としても職員互助会の方から経費を出させていただいておるわけでございます。人材育成について十分配慮してまいりたいし、また行政においても、こうした若いセンスのある職員の力を得ながら先取り行政をしていかなければならないと思っておるわけでございます。
 和歌山県にとって今なさなければならない重要課題は何かを考えることが先取り行政の一番の根本であると思うんです。だから、それに基づいての対策が必要です。
 私も知事に就任以来、和歌山県が紀伊半島に属しているために交通が不便である、これをいかに打破するかということが最大の課題でございます。皆さん方のご協力を得て半島振興法を制定し、また関西国際空港も明年に開港し、この秋には高速道路が大阪と結ばれます。さらにまた、白浜空港のジェット化、高速道路の南伸の問題等々あるわけでございます。
 特に今度の予算においては、目前の対策と中長期的に見た対策の二つの視点から考えております。中長期的な視点からは、第二国土軸における紀淡連絡ルートについては、県も負担金を出して早期にやっていただく。そして、和歌山市を中心とした紀北地域の産業経済発展のための対策をする。また紀南地方については、高速道路の延伸に係る環境アセスメントの経費の支出等ございますが、当面の課題、中長期的課題に分けて行政を進めているところでございます。
○議長(馬頭哲弥君) 副知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○副知事(西口 勇君) 和田議員の世界リゾート博に関連してのご質問でありますが、公室長が病欠でありますので、私からご答弁申し上げます。
 ただいまサンプルをお示しの上で大変貴重なご提言を賜りまして、まことにありがとうございました。いろいろ考えますに、世界リゾート博を成功に導くためにはPRが極めて大事でありますし、同時に県民総参加といいますか、各界各層の多くの方々の積極的なご支援、ご協力がぜひとも必要であると考えておるわけであります。
 本年の初めごろから、キャンペーンレディーあるいはまたマスコットキャラクターによるPRを行ってまいりましたけれども、この七月には郷土出身の歌手などによるイメージソングなども制作をして多方面にPRをしてまいりたいと思っております。
 また、企業の商品によるリゾート博のPRでありますが、いろんなアイデアを凝らす必要があろうと思いますけれども、この三月十日から世界リゾート博のPRテレホンカード──ちょっと小さくて見えないと思いますが、こういうデザインのものを発行していただいておるわけであります。(現物を示す)
 今、ご提案のございました缶ビールについても、大変効果的なものであろうと思いますし、また同時に地場産品を生かすという面からも大変意味があろうかと思いますので、ただいまお話のございました関係企業などとも十分連携をとって、ご理解とご協力を得られるよう努力を重ねてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 企画部長佐武廸生君。
 〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 関西国際空港に関連するご質問にお答えをいたします。
 まず、一番機の飛ぶ路線と開港時期についてでございます。
 関西国際空港における建設工事については、管制塔が昨年十一月に既に完成しており、滑走路については来年一月に完成し、その後、離発着等の慣熟訓練が行われる予定になってございます。また、旅客ターミナルビルについては、来年六月初旬の完成予定となってございますが、建設工事と並行して、従業員教育等ソフト面での訓練が行われる予定と聞いてございます。
 なお、空港の開港については、国及び関西国際空港株式会社の方針として一年ぐらい前に開港月が明らかにされ、法的には三カ月前ぐらいに開港日が公示されると聞いてございます。
 また、一番機の路線については、現在、運輸省、航空会社等において検討されているところでございますが、国際、国内のハブ空港にふさわしい一番機が設定されるよう期待しているところでございます。今後とも、予定どおりの開港に向け、国並びに関西国際空港株式会社に対して、引き続き要請してまいりたいと存じます。
 次に、国内線と便数の見通しについてでございます。
 森議員にもお答えいたしましたとおり、関西国際空港株式会社が設定している七十便の確保については、議員お話しのとおり非常に厳しいものがあると聞いてございます。このことは、大阪空港の存続、着陸料金、飛行ルートの問題、さらには関西国際空港の利便性に対するPR不足等さまざまな要因が考えられますが、極めて深刻な昨今の世界的な航空不況が要因ともなってございます。
 運輸省においては、関西国際空港建設の経緯を踏まえ、開港時には大阪空港のジェット機の離発着枠百回分を関空に移すとともに、国際線の一元化はもとより、国内、国際のハブ空港としてふさわしい国内主要路線の設定に向けて協議、検討が続けられていると聞いてございます。
 県といたしましても、国内便確保の一つの課題である着陸料金については、少なくとも大阪空港と同じレベルにしていただくよう強く要請するとともに、県議会のお力添えもいただきながら、引き続き国初め航空会社に対して、東京便はもとより全国の主要都市と数多くネットワーク化されるよう強く要請してまいりたいと思います。また、国内主要都市へのPR活動にさらに積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
 次に、関西国際空港の「全体構想」というネーミングについてでございます。
 早期実現期成会等、地元関係者間で特に検討したことはございません。議員ご指摘のように、全国的にはなじみが薄いかもしれませんが、私どもといたしましては、その原因はやはり対外的なPR不足にあると受けとめ、議員ご提言の趣旨を踏まえ、より積極的なPR活動に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、関西国際空港の呼称についてでございます。
 議員お話しのように、世界地図上に「関西」という地名は記載されてございませんが、大阪湾ベイエリア開発整備のグランドデザインにおいても世界都市関西の形成を基本理念としてございまして、この理念に基づき関西復権の中核拠点となるのが、まさしくこの関西国際空港であろうと考えてございます。こうした意味からも、議員ご指摘の現状も踏まえ、関西が一丸となってあらゆる機会をとらまえ、国内外に関西国際空港をPRしてまいりたいと考えます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 商工労働部長中西伸雄君。
 〔中西伸雄君、登壇〕
○商工労働部長(中西伸雄君) まず、空港ターミナルへの出店でございます。
 関西国際空港ターミルビルディング構内営業者の募集説明会は、昨年の十一月十三日から十八日までの間に五回開催されました。飲食店二十八区画、物販店三十九区画、計六十七区画の募集案内がございました。本県からは、三十数社の出席を見たところでございます。
 なお、関西国際空港株式会社では、昨年の十二月十四日から十八日まで、それぞれの区画について申し込みを受け付けいたしました。本県からの申し込み状況については二十企業程度と聞いてございます。
 次に、県分としてのテナントでございます。
 関西の新しい表玄関に対応した国際交流拠点である空港で本県及び本県特産品を国内外に向けてPRするために、和歌山県コーナーの設置を予定してございます。展示即売する特産品等については、販売促進を通して本県の産業振興に寄与するよう調査してまいる所存でございます。
 なお、運営主体については第三セクター方式による株式会社を考えており、本議会に所要予算をお願いしているところでございます。
 次に、関西国際空港開港後の増加が予想される外国人労働者への法的整備と受け皿についてでございます。
 議員ご指摘のとおり、関西国際空港の開港に伴い、合法、非合法を問わず外国人労働者の増加が予想されるところでございます。このため、まず外国人の入国に際して入国管理行政において入国審査を厳正に行い、不法就労の未然防止に努めることが重要であると認識してございます。また、職業安定機関等においても外国人の雇用に関する情報を収集し、法務、警察行政との連携のもとに不法就労の是正のための指導に努めてまいる所存でございます。
 なお、法的整備や受け皿の問題に関しては、出入国管理及び難民認定法の厳正な運用及び出入国管理官署の整備が必要であると認識をいたしてございます。
 次に、円高への県内企業の対応でございます。
 本県の地場産業において、製品輸出を行っている業種としては、化学、染料中間物、機械といった業種が代表的なものでございます。現在のところ、関係企業においては、このたびの円高により直接的な影響はほとんどないと聞いておるところでございます。しかしながら、今後の見通しについては、一部の企業で製品は特殊なもので技術的な面から見ても各国の市場において競合する企業がないのではと、やや楽観的な見方をしているところもありますが、大半の企業では今後、数カ月の間に為替差損による実質的な収益ダウンや円建ての契約を行っている企業などは、輸出相手国からの価格調整の要望が出てくることも多分に予想されるところでございます。さらに今後、円高が進む可能性も予測されるため、関係企業にあっては、経営の安定を図るために、より一層のコストダウンを図るべく、原材料の輸入割合を見直し、それに対応できる製品へ主力商品をシフトする方法の検討や、生産工程の合理化、省力化をより一層進めるとともに、高付加価値製品の開発に取り組む必要があると聞いてございます。
 県といたしましても、こうした国内外の社会経済情勢の変化に対応できる高度な技術力を備えた産業の育成が重要であると考えているところでございます。このため、工業技術センターを中心として、企業の生産工程の合理化、省力化のための技術指導並びに研究開発に努めるとともに、新製品の開発についても、いかに価値を感じさせる製品を創造するかを念頭に置いた指導や共同研究に取り組むなど、地域産業のハイテク化、技術の高度化を積極的に支援し、グローバルな見地から地域産業の育成に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、雇用への問題でございます。
 本県における雇用失業情勢を見ると、有効求人倍率の低下が見られるように厳しい状況になってございます。最近の急激な円高により、現在のところ雇用に関して特に問題は聞いておりませんが、このような水準が今後も引き続くようであれば、輸出関連産業を中心に雇用調整等、雇用面への影響も心配しているところでございます。今後は、この動向に細心の注意を払いながら、雇用調整助成金制度の活用等により企業の雇用維持努力を支援し、失業の予防に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 総務部長山中昭栄君。
 〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 経済環境と円高の問題に関連して、近畿他府県の新年度予算における特徴的な施策でございます。
 近畿各府県の平成五年度予算案を概観いたしますと、全体の姿としては、いずれの府県も税収が低調な中で、基金の大幅な取り崩しや地方債の活用によって財源を捻出し、金融対策や単独投資に重点を置くなど、現下の経済情勢に配慮した予算としている点で共通点が見られます。
 お尋ねのございました、広範多岐にわたる具体的施策の中で各府県において特徴的と思われるものを若干拾い出しをしてみますと、大阪府では、関西国際空港の開港を控え、二十一世紀を展望した世界都市大阪の形成のための阪南丘陵開発を初めとする施策、京都府では、地域経済活性化、交通網整備のための京都縦貫自動車道建設等の事業や平安建都千二百年記念事業に伴う京都府警平安騎馬隊創設調査事業、兵庫県では、本年十月に施行される予定の福祉のまちづくり条例に関連した条例の普及啓発、県立施設の改修整備等の事業、滋賀県においては、びわこ空港の建設促進のほか、環境保護の機運の高まりの中で琵琶湖の水質保全のための施策、奈良県においては、その歴史的、文化的資源の活用を図る観点から、シルクロード学研究センターの創設や歴史探訪、自然探勝施設整備構想策定等の事業が挙げられようかと思います。
 いずれにいたしましても、本県を含め各府県において歴史、文化、自然、産業等、さまざまに異なる固有の地域性を踏まえながら、それぞれの政策課題を念頭に置いて平成五年度の予算案が編成されているものと考えられます。
○議長(馬頭哲弥君) 警察本部長中長昌一君。
 〔中長昌一君、登壇〕
○警察本部長(中長昌一君) 外国人労働者をめぐる問題についてお答えいたします。
 議員ご指摘のとおり、法務省の発表している推計に見られるように、観光等の目的で入国し不法滞在している外国人が全国的に急増してきていることは承知しているところでございます。これらの不法滞在者の大部分は不法就労者と考えられますが、本県内にこれらの不法滞在者がどれくらい流入し、どこに就労しているのかといった実態についてはその把握が極めて困難な実情であります。
 しかし、最近、本県警察が不法残留や旅券不携帯等で検挙した事案からうかがわれる実態をご説明いたしますと、これらの不法滞在者の就労先は主として建設作業、風俗・飲食関係営業となっております。また国籍別に見ると、タイ、韓国、中国などとなっております。
 次に、来日外国人の犯罪の傾向についてであります。
 昨年中に検挙した来日外国人は百五十三人で、前年に比べ約二・二倍となっております。内容としては、全体の八八%が密入国や不法残留等の出入国管理及び難民認定法違反でありまして、その他は窃盗や売春防止法違反でございます。
 本県では、現在のところ都市部で見られるような特定場所への蝟集、地域住民とのトラブルや議員ご指摘のいわゆるケチャップ泥のような事案の発生はございません。しかしながら、来日外国人による犯罪が急増している傾向にあるところから、引き続き関係機関との連携のもとに不法就労などの犯罪の取り締まりを強化するとともに、警戒活動等の防犯対策を積極的に講じてまいりたいと考えております。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(馬頭哲弥君) 再質問がありませんので、以上で和田正人君の質問が終了いたしました。
○議長(馬頭哲弥君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 43番浜本 収君。
 〔浜本 収君、登壇〕(拍手)
○浜本 収君 平成五年度主要事業の中で、県は「のびゆく県土づくり」として、一、陸の交通網整備、二、空の交通網整備、三、海の交通網整備のため所要の予算化を図ったところであります。陸・海・空の多岐にわたる交通網の整備促進は、県勢活性化の重要な柱であることは論をまたないところであります。そのためにも、過去幾たびか当議場を通じ、先輩、同僚議員による質問や要求、要望も行われてきたところであります。
 知事は、議案説明の中で、「和歌山下津港と日高港の港湾整備計画の促進を図るとともに、現在開発中の超高速貨物船テクノスーパーライナーの県内での国際複合拠点整備の調査を進め、基地の誘致に取り組んでまいります」として二千四百万円の調査費を計上したところであるが、私は過去の経緯と今後の県政の課題としての海上交通網の整備の再認識に立って、以下、簡潔に質問をいたします。
 平成三年十二月議会において、私は三重県と和歌山県によるサンベルト・燦黒潮ラインと呼称する紀伊半島海上交通体系の整備促進を要望したところだが、その際、県は次の答弁を行ったところであります。「本県における海上交通につきましては、ご紹介のあった佐渡のような離島航路とは異なり、鉄道や高速道路との競合、採算性といった種々の課題もございます。(中略)海上ルートの形成は、本県が有する六百キロメートルに及ぶ海岸線を活用するといった観点からも重要な課題であり、県としても高速船を利用した広域海上ルートについてさらに検討を深めてまいりたいと考えてございます」。立派な答弁であります。
 その後、本県は関係事業者等と海上アクセス研究会を行ってきたと聞いているが、その研究会で提起された課題と今後の方策を伺うものであります。
 また、採算性から見て、ジェットフォイルによる鳥羽、勝浦、白浜──「白浜」と当時名指しをいたしました──等への航路は至難であるやに聞いているが、あわせて今後の方策を問うものであります。
 先日私は、議会運営委員の皆さんと岐阜県庁を訪ねる機会を得ましたが、「私の県は海なし県でして」という言葉から始まる岐阜県庁の方のお話を聞きながら、この「海なし県です」という言葉がいつまでも耳に残ったのであります。「海なし県」は、行政施策の上からも海を活用しての県勢の活性化は到底望むべくもありません。しかしながら、六百キロに及ぶ紀伊半島のこの海の活用を、関西国際空港の開港、マリーナシティ、白浜空港の開港という連動する事業の中で見過ごすわけにはまいらないと思うのであります。県勢の活性化の重要な柱として、海上交通をより強力に推進すべしと思うのであります。答弁を求めます。
 次に私は、南紀新白浜空港開港との関連で、農林水産部長にフライト農業の振興策を要望し、質問をいたします。
 今、県は南紀新白浜空港の早期開港に向け全力を傾注しているところであります。南紀白浜空港は、これまで観光対策が主流であり、今後ともこの面でますます重要な役割を果たさねばなりません。しかし、この空港を取り巻く紀南の振興のためには、貨物便を活用した産業対策の拠点として、この空港をより重視しなければならないと思います。
 現在、白浜空港に運航しているYS11は貨物積載量が二トンであるが、ジェット化された後に運航されると思われるMD87は七トンの貨物積載能力があります。この積載能力の増加は、白浜空港のジェット化を活用した農業、水産業等の地域産業の振興を図るためには大変重要なことであります。県農林水産部は、関西国際空港に向けた生鮮農産物の供給及び空輸出荷等の臨空農業の推進、高品質かつ周年安定生産地の育成整備に要する経費など、フライト農業への予算化を図っているが、白浜空港との関連でのフライト農業に焦点を当てた対策にややおくれをとっているのではないかと私は思うのであります。紀南の農産物、花、水産物をジェット機で出荷することによる一次産業の振興のために、計画的な生産体制、流通対策等を含めての見解を問うものであります。
 次に、育児休業法についての県の対策を質問いたします。
 最近の社会経済情勢はまことに厳しく、労働界にもその影響を及ぼしているところであるが、中長期的に見た場合、構造的な労働力不足の時代が到来するであろうことが一般的に予想されているところであります。二十一世紀に向け活力ある県経済の発展を維持していくためにも、女性の社会参加、女性の活力に期待するところ極めて大きいものがあることは周知のとおりであります。
 こうした状況のもと、近年、女子の職場進出は著しく、女子の雇用者数は着実に増加しております。全国的な状況としては、平成三年の総務庁の労働力調査によれば、女子雇用者数は一千九百十八万人で雇用者総数の三八・三%を占め、五年前と比べて二一%、三百三十四万人の増加となっております。男子の場合は一○%、二百八十九万人の増加であるが、この数字から見ても男子より女子雇用者の増加数が多いことが示されております。また、既婚者の割合が七割近くを占め、さらに、いわゆるサラリーマン世帯の約半数が共働き世帯という状況にあります。勤続年数は、平成二年の賃金構造基本調査によれば女子雇用者の平均勤続年数は七・三年であり、男子の十二・五年に比べれば短いものの、年々伸長しているのが実情であります。一方、本県の状況は、平成二年の国勢調査による女子雇用者数は十二万六千人で、その構成割合は三八・七%、五年前と比べて一一%、一万二千人の増加となっており、男子の場合は二%、四千人の増加であるから、いかに女子労働者の増加が著しいか、この数字から見ても明らかであります。
 職場においては女子労働者の職域拡大が進み、女子と職業とのつながりは結婚、出産までの一時的なものではなく、生涯続くものとなりつつあります。しかし、職業を持つ女子は男子に比べて家事を多く負担しているのが現実の姿であり、女子の就業に大きな影響を及ぼしていると考えられます。女子が長く働き続ける場合の困難な障害として育児が第一であり、次いで老人や病人の世話が挙げられているところでもあります。
 このような状況のもとで、働く女子が家庭生活と職業生活の調和を図り、その能力と経験を生かせるような働きやすい環境を整備するため、昭和六十一年には男女雇用機会均等法が、また昨年四月には育児休業法が施行されたところであります。
 ご承知のように、この育児休業法は、その目的の第一条に、育児休業に関する制度を創設するための規定のほか、育児休業のような全面的な休業以外の方法で子の養育を容易にするため、勤務時間の短縮等の措置を事業主に義務づける規定を設けているが、大きく言えばこの二つの方法により、子を養育する労働者が退職することを防いでその雇用の継続を図り、職業生活と家庭生活が調和できる状態を導くことによって労働者の福祉を増進し、これらの労働者が能力を発揮していくことは、ひいては我が国の経済社会の発展につながるものと定めています。
 そこで一つ目に、この育児休業法の普及促進を積極的に図る立場から、県内におけるこの制度の導入状況と今後の方策を明らかにされたいのであります。
 二つ目に、このたび県は育児休業資金貸付事業費五千万円を計上しているが、この内容について伺うものであります。
 三つ目に、国がこの法律を実施するに当たり、育児休業の期間は現状では無給となっているが、休業中の所得保障については平成三年度中の衆参両院の社会労働委員会等で休業期間中の経済的援助について議論が伯仲してさまざまな意見が出されたけれども、一定の方向が見出し得なかったと議事録に記載されているが、今後、国に対し育児休業期間の何らかの経済的援助の措置を講ずべく県としての努力を要請し、あわせて答弁を求めるものであります。
 次に私は、すさみ町の特別養護老人ホームの件を簡単に取り上げてまいります。
 平成五年二月十九日、和歌山県知事は、社会福祉法人すさみ福祉会理事長に対し、社会福祉事業法第五十四条第二項の規定に基づく改善命令を行った。それは、すさみ町の特別養護老人ホームはまゆう園におけるずさん経営に対し、県が行った監査の結果に基づいたものであります。
 その概要は、園長は常勤し、職員の指導監督、業務の統括をしなければならない最高責任者であるにかかわらず、常勤せずその職責を果たしていない、同園の会計関係書類は、同園の事務所に備えられていないし、前回の監査においてもその改善指示を行ったが、伝票等、経理関係諸証憑書類は今もって同園に備えられていない、また勤務実態のない職員を雇用していた等々を批判し、期日を付し、法人の運営理事構成の刷新と民主的運営体制の確立を指示したところであります。
 なお、地方新聞の記事等によれば、法人名義で購入した自動車一台あるいは二台──どちらかわかりませんが、園長が私用に使っていたとか、パート雇用職員の賃金の水増しがなされその返還や是正が指示されたとかとあるが、その真偽のほどを明らかにするとともに、現状と今後の改善策をこの際明らかにされたいのであります。
 次に私は、ふるさと創生事業とこれに呼応した今後の県の方針について伺います。
 地方制度調査会委員の作家・下重暁子さんは、「ふるさとづくりとかふるさと創生というのは、まさに時代を象徴しているなという気がするんです。なぜかと言うと、ふるさとというのは、別につくらなくても、元々あるものなんですけれども、それをつくらなければならない状態にまでふるさとが荒れてしまったということなのかなという気がします」と述べ、また同委員会の委員で朝日新聞編集委員の川島正英氏は、「一律に一億円ということで、小規模町村に対する大変な優遇策になっているわけですね。これまで国が市町村に助成したり補助したりする場合は、ものすごく細かな基準があったわけです。それをあんなアバウトな形でお金を出したという意味でも、戦後の地方政治史の中で特筆すべき話だろうと思います」と、二人の方がふるさと創生事業についてそれぞれの異なった意見を総理府広報室発行の「時の動き 政府の窓」という小冊子の中で述べておりますが、いずれも一定の意味で肯定し得る意見だと思います。
 平成元年三月以来、全国市町村及び東京二十三区において実施されてきたいわゆるふるさと創生一億円事業は、平成二年末現在で一万六百九十三事業が決定されているが、本県五十の全市町村においてもこれが実施を見ているところであります。
 一月二十四日掲載された朝日新聞のふるさと創生事業の解説記事によれば、「竹下内閣が打ち上げた一億円のふるさと創生金をもとに、『日本一(世界一)の○○づくり』にかかった自治体で、その事業が実現したのは一割強しかなかったことが、二十三日までの朝日新聞社の調べでわかった。日本一の座に一度はついたものの、すぐに他県に追い抜かれたり、詳しくはじいてみたら巨額な費用がかかることが判明して断念したりで、原因は様々。村おこし・町おこしの中核事業に、と意気込んでいただけに、『大枚をはたいてトップに立てないとは』と泣いている自治体もあるようだ。 自治省企画室によると、一九八八、八九両年度に配分された一億円を日本一(世界一)の構築物や町づくりに使うと表明したのは四十七市町村。うち、今年度までに実現したのは『世界一の一年計砂時計』(島根県仁摩町)▽『世界一の手すき和紙』(福井県今立町)▽『自治体日本一クラスの大望遠鏡』(三重県尾鷲市)▽『蜃気楼発生装置』(富山県魚津市)▽『日本一のかがり火まつり』(岐阜県高根村)▽『夢おこし岩木山構想』(青森県岩木町)の六市町村だけだった。 残る四十一市町村では、まだ将来に夢を託すところもあるが、多くは挫折したり、幻に終わった」とあります。
 この事業は、みずから考え、みずから行う地域づくり事業を推進し、それぞれの地域が個性豊かな地域づくりを目指すものとして、ふるさと創生の起爆剤となることが期待されたが、幸か不幸か県下には今挙げた日本一式のこの種の事例は見られないが、過去の実施状況の中で、なるほどこれがふるさと創生事業だなと共感し得る県下での幾つかのユニークな事例をぜひ開陳されたいと思うのであります。
 この原稿をつくっておりますときに、たまたま三月十日、朝日新聞夕刊の一面を見ました。そこに大きく掲載された日高郡印南町の「カエル橋できた!さあ町をカエルぞ」というかえる橋の出現は、注目に値する創生事業であります。
 「印南町の町役場前に、JR紀勢線をまたぐ巨大な『かえる橋』が出現した。 長さ百九十メートル、幅九メートル、最上部の高さ二十五メートル。足を踏んばっている赤い親ガエルの上に黄色の子ガエルが乗っている。総工費六億五千万円をかけて町が建設、三月末に完成する。 印南町は(中略)数年前からカエルを町づくりのイメージキャラクターにしている。小野道風の──こんなことを言うてもわからん人が大分いらっしゃると思いますが、年齢の差であります。お許しを願いたいと思います──『柳に跳びつくカエル』をヒントに努力、忍耐、飛躍を学ぼうというアイデア。『考える』『人を、町を変える』『古里へ帰る』『栄える』の願いを込めている」。
 ふるさと創生事業は一億円というのに、このかえる橋は六億五千万円、あとの経費はどうなっているのかなという疑問が当然出てきますが、ふるさと創生事業と呼応して、県が実施している地域づくりやさきがけ事業等の今後の方針についても、ぜひ伺っておくものであります。
 次に私は、中央の総合保養地域整備研究会のまとめと県のリゾート推進のあり方について論を進めてまいります。
 国土庁の委託に係る中央の総合保養地域整備研究会は、去る二月八日、今後のリゾート整備のあり方について、リゾート整備全般、その理念と施策の方向、制度運用の諸問題等の検討の必要性を公表した。
 その概要は、自然破壊や環境汚染に関する批判、地域振興への寄与が不十分で、高い料金で大衆の利用度が少ない、どこでも同じような施設である等々の批判、また一方で、最近の社会経済情勢の変化等による開発事業者の撤退等を挙げ、これらの批判の中には十分客観的に分析していないものもあるが、指摘されている諸問題はリゾート整備にかかわる重要な論点を含むものとして、これらの問題提起を真剣に受けとめ検討を行うこととしたとし、リゾート整備の見直しの基本的方向、その体制の強化、将来展望と今後の課題を提言したところであります。また、特にリゾート政策理念の再確立のために、リゾート空間は次世代の国民の創造的でゆとりのあるライフスタイルを支える国土の中に蓄積すべき国民の共有財産であるとし、さらにまたその整備は地域づくりの有効な手段として重要であると指摘し、そのために長期的視点に立って着実にその整備を積み重ねる姿勢が不可欠のものとしているが、こういった概要(総括)に立って、以下、三点質問いたします。
 一、県内における幾つかのリゾート整備の事例は、リゾート形成を地域づくりの有効な手段と位置づけながらも、それを達成するための住民への問いかけ、住民の参加、住民との共生等々の発想に欠ける事例も見られるが、そういった視点について、まず県の見解をただすものであります。
 二、燦黒潮リゾート構想は、豊かな黒潮ラインに沿って七地区を重点的に整備するとして、まずマリーナシティを舞台とする海洋都市リゾート形成に全力を傾注し、世界リゾート博は二十一世紀のリゾート体験のあり方を提言する一大メッセージであるとし、日本と世界に和歌山の姿をアピールするものと位置づけ、今議会にも所要の予算計上を図っているところであるが、他の六地区は──ここにいっぱい書いております──いつの間にかこの燦黒潮リゾート構想のパンフレットから消えていくのではないかな、あっちの方ばかりよくなるんかな、そういうことを時々耳にいたしますし、私はそのことを危惧するものでありますがどうなのか、素朴に聞いておきたいのであります。
 また同時に、住民との共生を志向するリゾート形成の立場から、和歌浦湾を挟んで、その地元である和歌浦地区のマリーナシティへの期待というか協力体制というか、その状況について。私らが第三者的に見ていると、どうも皆さんが余りそのことを喜んでいない──まあ、わかりませんけれども、そんな感じがするのであります。和歌浦の人が立ち上がって何かすると、どうもそんな感じがない。これがもし、このマリーナシティのようなものを田辺湾につくる、白浜へつくる、串本へつくる、こういうことを想定したら、既に地元の人たちはこのことに沸き上がっておるだろうと思うんです。しかし、どうも和歌山へ来て和歌浦で受ける印象は、(「喜んでいるよ」と呼ぶ者あり)──喜んでいる方もいらっしゃるそうですが、私はどうもそういう気がしてならないのである。さらには、海南市の提起する境界争いの状況、このことについては既に新田議員から質問を行い、またさきの議会で総務委員長の報告もなされたところでありますが、その状況と今後の見通しを明らかにされたいのであります。
 私は、なぜこのことをしつこく言うかと言いますと、いわば二十一世紀のリゾート体験のあり方を世界にアピールするとしているが、和歌浦湾を挟んで何か鎮静化している。今、喜んでおるということを聞いて安心しましたけれども、片一方は裁判を打ち込まれている。地元で。
 我々選挙する場合、地元で反対される、裁判される、そんなことではどうも。白浜や新宮で女の人をたくさん連れていって、二十一世紀のリゾート体験ということで盛んに世界リゾート博のことを宣伝しても、第一、地元がどうなのかなという気がする。普通、そういうことでは選挙には立てないだろうな。私は、そのことを大変危惧するのであります。その危惧が単なる危惧であれば幸いでありますけれども、開港時に裁判の結果がどうであるとかこうであるとか、こういうことになってくると大変なことだなと、今からそのことを心配いたしますので、あえてしぶとく取り上げます。
 時間があと少しであります。三、総合保養地域整備研究会は、地域のためのリゾート、地域づくりに資するリゾート整備を提言しているが、その中で多様なリゾート整備の中の一つとして、農山漁村等のすぐれた景観や文化等を生かしたグリーンツーリズムの推進を示唆する一方、全く新しいリゾートの開発だけでなく、既存の観光地、温泉地等の再整備によるリゾート整備の必要性を強調しているところであります。
 具体的な問題として二点、その一つは、上富田町のリゾート整備についてであり、二つ目は、白浜町の椿地区への対応についてお聞きいたします。
 既に県は、燦リゾート地区に含まれていない西牟婁郡上富田町リゾート整備を農村型リゾートとして、平成四年度に県百五十万円、上富田町百五十万円、計三百万円を計上し、その調査検討を進めているところであるが、現状と今後の見通し、その指導方針もあわせて明らかにされたいのであります。
 椿に移ります。「湯かげんはいかがでしたか。またのお越しをお待ちしています」。ひっそりとした人影のない寒い冬の夕暮れ、椿駅にこんな看板が立っていた。かつて湯治場として栄えたこの椿駅は、七年前からいうところの無人駅となり、椿観光協会(民間)が資金を出して駅員さんを雇って運営しているところであります。
 平成四年の白浜、椿温泉観光客調査推計によれば、白浜駅におりる人員は年間八十五万余人、椿駅におりる人員は年間二万七千余人、白浜宿泊日帰り客数三百六十二万六千余人、椿宿泊日帰り客数十一万七千余人であります。ここ数年間、椿地区の客数は十二万人を境に低迷を続けているのが現状であります。
 前段述べましたが、ふるさと創生事業の一環として、県内においては六つ、全国では二百五十幾つと聞いておりますが、温泉の掘削に経費を費やすそれぞれの行政努力を散見するにつけても、一日六千キロリットルの量を誇る椿温泉湯治場の現状を見過ごしてはならないし、また総合保養地域整備研究会がリゾート推進の見直しの中で繰り返し繰り返し述べているように、「我が国においては既に湯治場のような伝統的な保養地の歴史を有することから、既存温泉地の再整備等も検討する必要がある」とする指摘に大いに着目する必要があると思いますけれども、観光行政とリゾート推進の立場に立っての県の確かな方針を伺うものであります。
 以上で終わります。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの浜本収君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答え申し上げます。
 総合保養地域整備研究会の中間報告に基づく今後のリゾート整備についてでございますけれども、私から既存の温泉地の再構築の問題、椿温泉の問題について述べさせていただきます。
 古くから、人々が交流しながら長期滞在ができる湯治場は、保養を目的とした日本古来のリゾートの一形態であったと思うわけでございます。最近、またそれが見直されつつあるわけでございます。最近の長期滞在型のリゾートとしてその必要性が十分認識されてきておる、既存の温泉地においても安くて心のこもった温泉場ということが強く要請されておるわけでございます。
 お話ございました、椿の駅前の「湯かげんはいかがでしたか」という看板に心を引きつけられるものがあるわけでございまして、これからの椿温泉の発展にはこれが一番大事なことではないかと思うわけでございます。
 ご承知のように、椿温泉は大正時代から栄えてきた湯治場でございます。しかし、最近は白浜町の方がのしてきておるわけでございます。それに対して椿温泉としていかにあるべきかということについて、地元の皆さん方もいろいろ検討をされておるわけでございます。そうした中で、こうした心でもって温かく迎えることが大事ではないかということも考えつつあるわけでございます。
 昔は、椿温泉へ行って自炊をしながら湯治をやったものでございます。そうした趣をも考えて椿温泉の活用を図っていかなければならないし、我々としても、燦黒潮リゾート構想の中において長期滞在型の温泉地としてどうあるべきかということについて、地域の皆さんや白浜町当局の皆さんと一緒になって具体策を検討してまいりたいと思っておるところでございます。
○議長(馬頭哲弥君) 企画部長佐武廸生君。
 〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) まず、海の交通網整備についてお答えをいたします。
 鳥羽─勝浦を結ぶ広域海上ルートについては、三重県や船舶事業者、その他民間企業で構成する研究会において検討を重ねてまいったところでございますが、ジェットフォイルの新造船が約三十億円という高価な船であり、初期投資のコストやメンテナンスの費用が高いことから現在の入り込み客だけでは採算性の確保が難しく、他の交通機関と競合すること、マイカー利用者への対応、集客施設等、観光リゾート拠点のさらなる整備の必要性など課題が示されてございます。また一方、経済環境についても、非常に厳しい状況となってきてございます。
 しかしながら、海洋資源の活用や地域活性化の観点から、今後この研究会で示された課題の解消に向け、観光客の相互交流による周遊旅行等、船旅の魅力や需要の喚起、地域の特色の掘り起こしなど、さらに粘り強く努力してまいりたいと考えてございます。
 また、議員ご提言の県内観光地を結ぶ広域海上ルートについては、重要な課題と考えてございます。現在、関西国際空港への海上アクセスについて研究会を設置し、検討を重ねているところでございますが、広域海上ルートについても、今後本研究会のテーマの一つとして取り組んでいきたいと考えてございます。
 次に、リゾート整備についてお答えをいたします。
 まず、リゾート整備における住民意見の反映についてでございます。
 燦黒潮リゾート構想については、構想の策定時及びその推進に当たって、市町村はもとより各重点整備地区の協議会や県レベル協議会を通じ、構想の推進を図る上などでの問題点や意見の把握に努めるとともに、それらの意見を踏まえながら、良質なリゾート地形成に向け取り組んでいるところでございます。
 一方、内陸地域におけるリゾート整備については、地元市町村と共同で計画の策定に取り組んでございまして、その計画の策定に際しては、地域の各界の代表の方々との懇談会、検討会などを開催し、意見の反映に努めてございます。国の総合保養地域整備研究会の報告書においても住民のコンセンサスづくりの重要性が提言されてございますので、本県においてもこの提言の趣旨を踏まえ、構想の各段階において周知徹底を図るとともに、地域の方々の意見が十分反映された計画となるよう、さらに市町村を指導してまいりたいと考えてございます。
 次に、燦黒潮リゾート構想の今後の見通しについてでございます。
 リゾート整備は本県の地域振興を図る上で有効な手段であり、計画の具体化に向け長期的視点に立って積極的に取り組んでまいることといたしてございます。
 和歌浦湾地区については、議員ご指摘のとおりの進展を見ているところでございますが、他の重点整備地区についても、昨今の厳しい経済情勢のもとで多少のおくれは見られるものの、田辺、白浜地区での東急南紀田辺リゾートや紀州南部ロイヤルホテルの整備、枯木灘地区での釣り公園計画の具体化に向けての検討、潮岬地区でのスポーツ施設の整備、勝浦、太地地区での那智勝浦海岸コースタル・コミュニティ・ゾーンの整備などに見られるように、着実な進展を見ているところでございます。他のプロジェクトについても、長期的視点に立った民間企業の立地促進や公共の事業の積極的な導入等による民間のリゾート施設の整備誘導などに努め、地元市町村や協議会との連携のもと、各重点整備地区の具体化促進を図ってまいりたいと考えてございます。
 次に、和歌山マリーナシティとの協力体制についてでございます。
 燦黒潮リゾート構想の重点整備地区の一つである和歌浦湾地区については、マリーナシティを中心に周辺地域を含めリゾート施設の集積を図ろうとする計画であり、マリーナシティの整備に伴うビジネスチャンス等、その波及効果を周辺地域がどう積極的に利活用するかといった点が大きなテーマとなってございます。マリーナシティにあっては、フィッシャーマンズワーフやハーバーレストランなど地元の参画が可能な施設内容とするとともに、スポーツ施設等、地元の方々が利用可能な構想といたしてございまして、またこれと並行して片男波公園や漁港の整備なども地元の協力を得て進めているところでございます。今後、計画の具体化に伴い、和歌浦湾を構成する広域の地域とマリーナシティが共存し共栄できるよう、各界の代表者で構成している地元のリゾート構想推進協議会に対し、指導、助言を続けてまいりたいと考えているところでございます。
 次に、農山漁村リゾートについてでございます。
 県では、燦黒潮リゾート構想対象地域以外の内陸地域を対象に、市町村と共同で内陸地域リゾート形成促進事業を実施いたしてございまして、上富田町については平成四年度で計画を策定いたしているところでございます。
 上富田町は、年間三百五十万人の観光客が訪れる白浜町に隣接し、田園風景や清流・富田川など海岸域とは趣を異にする内陸地としての魅力を有してございまして、こうした魅力を生かした体験施設等を整備するなど、ファミリーリゾートに対応した新しいタイプのリゾート地の形成を目指してございます。
 具体的には、現在整備されている総合スポーツ施設に関連したオートキャンプ場や特産の梅、スモモを使った体験農園、あるいは天然記念物オオウナギ等に関する博物館などを計画、検討中でございます。こうした計画を具体化することにより、白浜町への来訪者の誘因も図られることとなり、地域への経済波及効果が拡大し、地元のビジネスチャンスが増大するものと考えられます。
 なお、計画の策定に当たっては、農業協同組合、農業後継者グループ、青年団、体育協会、商工会からの意見を聞くとともに、役場に勤務する女性職員の参画をいただくなど、地元意見の集約、反映に努めているところでございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 農林水産部長中村 昇君。
 〔中村 昇君、登壇〕
○農林水産部長(中村 昇君) 白浜空港とフライト農業についてお答えを申し上げます。
 紀南地方の農業振興については、これまで黒潮フラワーエリア産地化推進事業などを中心に、地域の特性を生かした高品質生産を基本として、野菜、花、果実などの施設園芸団地の育成に努め、カスミソウ、スイートピーなどの高級切り花、野菜ではエンドウ、シシトウ、果実では鮮度が求められるハウススモモなどの生産が伸びているのが現状でございます。
 しかしながら、空輸については、地元の関心も低いことから、今後、臨空に向けた農協、生産者団体等による協議会を設置するなど、関係者の意欲を喚起しながら、フライト産業による産地のイメージアップをあわせて推進してまいりたいと考えてございます。
 また流通対策については、関係団体とも協議しながら、生鮮農産物の予冷・保冷施設、魚介類の蓄養施設等の整備を図り、地域産業の振興になお一層努めてまいる所存でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 商工労働部長中西伸雄君。
 〔中西伸雄君、登壇〕
○商工労働部長(中西伸雄君) 育児休業制度の導入状況、三点についてお答えをいたします。
 まず、本県における育児休業制度の導入状況でございますが、労働省和歌山婦人少年室の調査によりますと、昭和六十三年の普及率は一一・三%でございましたが、昨年十二月時点の調査では雇用者数三十一人以上の企業において六九・一%の企業が同制度を導入しており、今後、同制度の導入を検討する企業を含めると九○・七%となってございまして、法施行の普及啓発の効果があらわれてきたと考えてございます。
 次に、県の今後の取り組みについてでございます。
 まず、今議会にお願いをいたしてございます育児休業資金貸付事業を平成五年四月一日から実施してまいりたいと考えております。この制度の概要を簡単にご説明申し上げますと、県が預託した五千万円に和歌山県労働金庫が同額の資金を加えて資金運用を図ることとし、現時点で把握している各府県の中では最も低利な融資利率三・五%で、かつ最も多額の百二十万円を限度として生活資金の一部を融資し、制度の定着並びに普及を図ってまいろうとするものでございます。
 次に、これも今議会にお願いをしてございますが、これらの制度の普及促進事業を新たに興し、例えば育児休業ハンドブックといったものを県独自で作成し、広く普及啓発を図ってまいりたいと考えているところでございます。なお、指導監督機関である和歌山婦人少年室との連携をさらに深め、その普及啓発に努めてまいる所存でございます。
 次に、育児休業期間中の所得保障問題でございます。
 議員ご承知のとおり、この法案審議の段階で休業保障など種々論議がなされた結果、適当な時期に必要な見直しを行う旨の規定が追加されたところでございまして、今後の国における動向を注視しながら対処してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 民生部長吉井清純君。
 〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) 特別養護老人ホームの運営についてお答えをいたします。
 社会福祉法人すさみ福祉会に対して行った改善命令による現状と今後の改善策でございます。
 このたびの措置は、二度にわたる特別監査の結果などを踏まえ、当該法人の運営が著しく適正を欠くとの判断をし、議員ご指摘のとおり、改善命令を行ったところであります。
 なお、法人名義の自動車の私的使用、及び非常勤職員に係る賃金支払いについては、平成三年一月二十一日に実施した特別監査において不適切であると指摘し、平成三年二月十三日に返還をさせたところであります。
 また、このたびの改善命令については、その命令内容に従って、一、園長は平成五年三月一日に辞任をいたしております、二、用務員を同年一月三十一日に解雇させております、三、経理事務は当園において処理するとともに、四、理事全員が平成五年三月一日に辞任届を提出し、その後任について地元関係者と協議していくとの改善報告を受けたところであります。
 県といたしましては、改善命令を遵守し、速やかに新理事体制を整えるとともに、法人及び施設の健全な運営管理体制を確立し、入所者処遇の充実が図られるよう、引き続き強く指導してまいる所存であります。
 もとより、社会福祉事業はお年寄りや障害を持つ方々などの自立的な生活を支援していくものであり、とりわけ社会福祉施設の運営に当たっては、利用者のニーズに応じた処遇等、適切な運営が確保されなければならないものであります。
 こうした社会福祉事業の重要性にかんがみ、県下の社会福祉法人及び社会福祉施設についても、適正な運営が確保されるよう、監査等を通じより一層指導を強化してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 総務部長山中昭栄君。
 〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) まず、ふるさと創生事業と今後の方針でございます。
 ただいまご紹介のございました印南町のカエルをキーワードにした町づくりの取り組みを初めとして、県内市町村のふるさと創生事業には立派なものが数多くございます。
 事業の手法といたしましては、みずから考え、みずから行う地域づくり事業、いわゆるふるさと創生一億円事業でございますが、そのほかにそれに引き続いて措置されている起債と交付税を組み合わせたふるさとづくり、地域づくり事業、いろいろございますが、それらの中から幾つかの事例をご紹介いたしますと、ハード事業として、南部川村では、梅の栽培から加工までの総合的な試験研究に取り組む施設としてうめ21研究センターを整備いたしております。太地町では、日本の捕鯨発祥の地としての特性を生かした鯨の町づくりをテーマに鯨のアーチの設置等を行っております。清水町においては、周囲の川と森林の美しい景観にマッチしたしみず温泉健康館等を整備して、温泉とふるさと体験の町づくりを推進されております。またソフト事業としては、打田町で、地形的にスカイスポーツにとって好条件の百合山を基地としてパラグライダーの大会が開催され、町民の方々にもスカイスポーツのおもしろさを知っていただくよい機会となっているようでございます。そのほか、広川町の男山焼会館、金屋町の生石高原天文台、龍神村の龍の里づくり、田辺市の南方熊楠翁顕彰事業、貴志川町のマスコットキャラクターであるホタ郎くんなど多数ございますが、これらの事業は、いずれも地元の歴史、文化、産業等その特徴を生かして、地元住民の要望と市町村長さんの強力なリーダーシップがうまくかみ合って実施をされた事業でございます。住民の方々が誇りに思い、地域の活性化に大いに貢献をしているものと考えております。
 県といたしましても、市町村のこうした自主的、主体的な地域づくりをさらに促進させますために、地方債と交付税によるふるさと創生事業を積極的に推進するよう指導、助言をいたすとともに、地域活性化の「さきがけ」となるような事業に対して、県が実施しているさきがけ補助金制度等で引き続き支援をしてまいりたいと考えております。
 次に、マリーナシティの所属問題についてでございます。
 マリーナシティに係る境界に関しては、平成三年十一月二十二日付で海南市長から調停申請書の提出がございましたが、県といたしましては、昭和四十六年二月二十六日作成の協定書及び覚書は尊重し遵守すべきものと考えること等を理由として、調停に付すことはできない旨、平成三年十二月二十一日付で通知をいたしました。その後、海南市は和歌山市を被告として境界確定訴訟を提起し、これまで五回の口頭弁論が開かれております。現在、両市がそれぞれ主張する境界について実質審理が行われているところでございまして、県としてはその推移を見守っているところでございます。しかしながら、裁判は長期化が予想されますので、これと並行して何とか話し合いによる円満解決が図られないものか、両市長が政治家として忌憚なく話し合う場を設定しようという知事からの提案も行ったところでございます。
 いずれにいたしましても、県民一丸となって世界リゾート博成功のためのさまざまな取り組みがなされている中でもございます。紛争の早期解決を期待しているところでございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 43番浜本 収君。
○浜本 収君 私は、先ほど白浜空港との関連でのフライト農業に焦点を当てた対策に、やや県はおくれをとっているのではないかという趣旨の発言をいたしました。しかし、私の気の弱さが「ややおくれをとったのではないか」という表現をしたのであって、決定的にその対策めいたものが欠如していると、こう私は以前から思っております。ということは、時々そういったものを扱う農協とか漁業組合とか、あるいは町内、町外の方々のお話を聞きましても、空港ができるんだ、だから農産物をどうするというような話が余りない。皆さんが余り期待していないのか、それともほっとかれているからあきらめているんか、何かそんな感じがしてならない。
 今度の予算でいろいろ調べてみますと、こういう言い方は大変嫌な言い方であり、県会議員として発言するのは不適当でありますけれども、関西国際空港に当てたフライト農業の施策については一生懸命やっている。予算を図っている。しかし、そっちの方はどうかいなと見てみると、黒潮なんとかとあるが、それは従来と余り変わらない。ここへ焦点を当てた、意識をした意味でのそういう政策がない。私はさように思って、あえてこの問題を取り上げたのであります。
 しかし、ただいまいただいた答弁の趣旨に従って、どうぞ紀南地域の振興のために真剣に取り組んでいただきますことを、ここで要望をいたしておきたいと思います。質問ではございません。安心してください。
 椿地区の振興について。
 あの中間報告については、多分、県の前の総務部長をなさっていた斉藤さんなんかも関係していると思うんですけれども、私はあの八十ページぐらいのものを子細に読んでみました。そして、企画部の皆さんや特に地域振興課長なんかと話をする機会があって、その中間報告について、一遍、私が講師になって県庁の職員を集めて話してあげようかと言ったことがあります。自慢しているのではなく、それほど一生懸命読んでいるんだ。あんたたちも一生懸命読んでよ。送ってくれた人の方が勉強が足らん、そんな感じがしたんです。
 そしてその中に、先ほども申しましたが、繰り返し繰り返し述べられている湯治場、温泉地について、私なりに地方的にそれを解釈すれば、できもせんことを一生懸命するよりも、現実にあるそういう湯治場だとか温泉地について取り組む、再検討すべき──ときが来たとは書いてございませんが、そういうことをすべきだということを中間報告に書いてございました。私はその文字を見て、なるほどそうだなと思いました。
 皆さん、白浜温泉を少し紹介いたします。白浜温泉といっても泉源は、幸か不幸か私の村であります。昔の瀬戸鉛山村、今の湯崎であります。私は少年の日にそこで育ったが、しかしそこは一寒村にすぎなかった。「卒業生、右代表浜本収」と呼んでもらいました。しかし、あと見ますと十三人しかおらない。そういう小さな僻村であったのであります。そして、湯治場であった。それが六十年、七十年の歴史を経て今に至っている。つまり、そのことが今の白浜町の基礎をつくっていると、私は思ったんです。
 そして、ある晩、椿へ車で飛んでいった。そして、椿の観光協会の人なんかといろんな話をさせていただきました。その中で、私なりの勉強をさせてもらいました。立ったついでに、知っていることを言います。
 白浜の湯崎という海岸に、「温泉の永遠に溢れて春尽きず」という、高浜虚子先生が戦後間もなく白浜に来られたときにつくられた句の碑が立てられております。時々波しぶきを受けておりますけれども。そういった天然の恵み、天賦の恵みといいますか、景観という自然がもたらした条件が、ちょっと大げさな言い方をすれば今日の白浜の基礎であります。しかし、この町は特に温泉が湧出する。先ほど申しました寒村であった私の村と椿を見たときに、やっぱり歴史は繰り返すんかなという気がします。そう言ったら椿の人たちに悪いんですけれども、そんな感じがします。
 小学校の生徒何人おるの、いや複式学級でやっているところあるんやというような話も聞きます。そして先ほど申し上げたように、駅は無人化になって寂れている。そういうことを思うにつけて、要らんことをするよりもここを活性化させていくことが大変大事だなあと思います。温泉へ泊まっただけで税金が県へも入りますから、そういうことからも椿の活性化が大変大事だなということを思います。椿は、人情をたたえた昔の湯治場の風情をそのまま持ち続けてございます。そこにはイセエビの宝庫があるし、野生ザルが群れをなして海岸に押し寄せてくるという状況でもあります。
 そういったことについて、先ほど知事から力強いご答弁をいただきました。そういった趣旨に立って企画部においても、白浜町当局はもとより、地元椿地区の観光協会や漁業組合、主婦の方々等、そういうこの椿地区のリゾート計画を支え運営をしていかれる、いわば大多数の方々の意見や考え方が反映し得る、そういうリゾートをともにつくっていくんだという、「新しい」とは言いませんけれども、新しい決意で取り組んでいただきたいということを特に要望いたしておきます。
 終わります。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で浜本収君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) この際、暫時休憩いたします。
 午後零時十四分休憩
 ──────────────────
 午後一時四分再開
○副議長(大江康弘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(大江康弘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 2番中村裕一君。
 〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 質問に先立ちまして。去る九日に行われた木下秀男県会議員の日高港の質問に対して、大変積極的にご答弁をいただきました。日高港の推進に精いっぱい頑張っている者の一人として、この際お礼を申し上げるとともに、あわせて今後の一層のお取り組みをお願いしておきたいと思います。
 それでは、質問に入らせていただきます。
 ことし一月一日、朝日新聞は、京大の安藤雅孝教授の説として、定期的に起きている南海地震が次回は早まって二十一世紀初めに起こるとし、今後、前ぶれ地震が西日本で多発するので、観測体制を強化して予知を成功させたいとの談話を報じました。
 古くは地中のナマズが暴れるという時代もありましたが、ここ二十年で地震計の向上、観測体制の近代化により、地震学は画期的に進歩を遂げました。おかげで、今日では地震のメカニズムも明らかになり、大規模なプレート運動などによって地球内部にひずみが蓄えられ、やがてそのひずみが岩石の強度を超えると急激な断層運動が生じ、そのときの衝撃が地震波を発します。そして、四方へ放たれた地震波が地表に到達して地震を引き起こすと説明できるようになりました。それだけではなく、地震の大きさの決め手となる断層運動の長さ、幅、ずれ、方向、さらには断層の一部分までも解析できるようになりました。一つ一つの地震の顔まで見えるようになったのであります。そして、この地震のエネルギーの源となるプレート運動も、プレートテクトニクスという理論で説明されます。
 それによりますと、地球の表層部はひび割れた卵のように十数枚の殻、つまりプレートに分かれていて、このプレートがひび割れて、どんどん生まれてきて移動し、反対側では別のプレートの下に潜り込み、マントルの中に消えていくという運動をしております。プレートの移動距離は年間数センチにすぎませんが、百年もたつと数メートルにもなり、プレートの潜り込むところではプレート同士が押し合ってひずみを地中に抱え込みます。その間、小さな破壊、つまり微小地震は絶えず起きますが、大きなひずみが一気に解放されると巨大地震になります。このような巨大地震が南海地震であります。これは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートに潜り込むところ、南海トラフと呼ばれる海底の谷で起こります。南海トラフは、沖縄の方から駿河湾まで伸びている巨大な地震の巣になっております。普通、プレートの移動はほぼ一定で、しかもプレートの強さもそう変わらないので、地震は大体定期的に起こります。
 南海地震の場合、古文書や遺跡の液状化跡で確認されているのが六八四年から前回昭和二十一年までの十回で平均百五十年周期になりますが、ここ四百年ほどは百十年周期に縮まっており、おまけに南海地震は東南海地震とセットで起きることが確認されております。ただ、地震は自然現象ですから機械のようにはいきませんので、早くなったり遅くなったりすることもあります。
 安藤教授の説では、前回は反発力が約九十年で蓄えられたが、地震は一八五四年の前々回に比べ規模を示す津波の高さが三分の一、余震の回数が五分の一に減った、これは反発力を使い切らなかったためで、次に地震を起こすのに百十年もかからない、前回の断層のずれがどれだけあったかを津波の高さや余震の回数から推定し、次の地震までの周期は断層のずれの大きさに比例するという予知のモデルに当てはめると、次回は前回から約七十年後になった、そして、南海地震では発生の約二十年前から南海トラフの動きが活発になり、西日本で地震が多発するので、そろそろ注意が必要だとのことです。
 これに対して東大の溝上恵教授は、地震予知は技術的に難しい、この説のとおりになるとは言えないとしながらも、南海トラフはこれから活動期に入ると考えられる、注目していきたいと述べておられます。
 恐らく、南海地震は、遠い過去から今日まで、何万回、何十万回も繰り返されてきたはずであります。この長い地球の歴史に比べれば、我々の一生はほんの一瞬であります。しかし、一瞬であるがゆえに、いつ地震が起きるかを探究するのは人間の本能のようなもので、いつ地震が起きるかを知り、それに備えたいという思いが地震予知を進める原動力になっております。
 今日、我が国においては、世界トップレベルの地震学を基礎に、地震予知に関する情報交換と総合的検討を目的として地震予知連絡会、通称予知連が設置され、地震予知事業に取り組んでおります。そして、重点的に推進すべき地域として、観測強化地域二カ所、特定観測地域八カ所を指定しており、特に東海地域は法に基づいて地震防災対策強化地域判定会を設けて強力に短期的予知を進めております。しかし、これでも万全とは言えません。記憶に新しい、あのサンフランシスコに多くの被害をもたらしたロマプリータ地震は、観測強化地域の隣で起きた地震であります。これと同じことが日本でも起きはしないかと心配いたします。まさに起こると予測され、皆の目が行っている東海地震は、南海地震と同じ南海トラフの東方で起きるとされております。しかも、その理由の一つは、前回の東南海地震の際に駿河湾では断層運動がなかったというものであります。
 本県においては、幸か不幸か紀北地方は特定観測地域に含まれているものの、肝心の紀南地方は入っておらず、観測体制が十分整っているとは言えない状況にあります。この際、観測体制のさらなる強化を強調しておきたいと思います。それでも、残念ながら地震は必ず起こります。
 ここで、東大地震研究所の阿部勝征教授の著書、「地震は必ず来る」の一節をご紹介しておきます。
 地震は、他の天然の現象と同様にしかるべくして起こり、かつ合理的な意味を持った自然現象。ただ、私たちのような有機生物の営みのスケールをはるかに超えた事象であるために、まずは恐怖、不安を覚えざるを得ない。
 しかし、科学の進歩によって、地震はもはやえたいの知れない怪物ではなくイメージできるものになっている。そして、そのロジックもわかり、その様態もわかってきた。このように地震を感じ、理解しようとする努力が今後は一般の人々にも必要で、常識として地震の本当の姿が入ったときに初めて地震の災害をある程度減らせるでしょう。特に、政治家や行政担当者が地震の本当の姿を知ったら、そのために何万人という人々の生命が救われるでしょう。
 地震学は、学者だけのものではなく、地震ごとの個性的な顔を浮かび上がらせることができるようになった、いわば地震に対する透視術を皆に知ってもらい、その上で家族や社会の安全を考えるべきです。残念ながら、日本という国は地震から逃れることはできません。それなら、いっそのこと知り合いにあり、よく理解して、こちらがその犠牲にならないように注意することに心がけたらどうか。
 と提案されております。
 幸い、私たちにはまだ多少時間があります。来るべきその日に備えて、私たち自身がやっておかなければならないことに今から取り組んでいこうではありませんか。「災害は忘れたころにやってくる」という言葉がありますが、私は来ることを忘れずに備えておけば災いは天災になりにくいと考えます。まさに、「備えあれば憂いなし」です。しかし、私たちの持っている防災計画は、残念ながらその十分な備えにはなっていないと思うのであります。まず、地震は必ず起きるという根本的な認識に立ち、起こり得るあらゆる場合を想定した戦略を用意し、それの調査を行い、その結果に基づいた具体的な基本計画を早急に立案すべきであります。そして、物理的に長い期間をかけなければ達成できない建設事業の基礎としなければなりません。また、市町村、県民といった実際の現場にいる人々に知らしめ、役立つようにしなければなりません。さらに、計画がうまくいっているかどうか、常にチェックせねばと考えます。
 ことしは、国際防災の十年の四年目であります。本県では、夏に世界各国よりその権威者を集めて津波のためのシンポジウムも開催されるやに聞いております。
 そこで知事に、地震、特に南海地震についてのご認識、今後のお取り組みをお聞かせいただきたいと思います。
 また、一朝一夕では達成できない建設事業においてどのように備えていくのか、そしてあらゆる場面で最も大切な県民の防災意識の高揚をどのように図っていかれるのか、ご答弁をいただきたいと思います。
○副議長(大江康弘君) ただいまの中村裕一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 中村裕一議員にお答え申し上げます。
 地震の防災対策についてでございます。
 南海道地震の起きる周期についてお話ございましたけれども、いろいろの説があるわけでございまして、先般の能登半島沖地震のように比較的地震の少ない地域においても発生しておるわけでございます。日ごろから地震に対する備え、対策を講じておくことは大切でございます。
 県では、昭和五十七年に県の防災会議に地震部会を設けました。それから、昭和五十八年度から五カ年計画で災害想定や地質、津波調査を行いました。この結果を踏まえて、平成元年度に県地域防災計画地震対策編を策定し、県と市町村、公共機関、公共団体等、関係機関の防災業務の実施責任を明確にし、関係機関が一体となって地震災害に係る災害予防、応急対策及び復旧対策を講じているところでございます。
 また、情報伝達体制の整備については、平成二年七月に県の防災行政無線を整備したところでございまして、市町村の防災行政無線の整備の促進と相まって、情報伝達体制の確立を図っているところでございます。今後とも、南海道地震を初めとする地震に備え、県民への効果的な啓発や自主防災組織の育成強化、また防災施設の整備等、総合的な震災対策を進めてまいりたいと思っております。また、ことしは世界の地震のフォーラムを和歌山県で開催していただいて、世界からのいろいろな知恵を承りたいと思っておるところでございます。
 私の友人で、ある地震の学者が、和歌山も南海地震に気をつけなさいよと言われておるわけでございます。学問的問題は別として、漁業者の皆さん方は天体異変というものに非常に敏感な才能を持っておる、だからそうした漁業者の言動等を聞いて天体の動きを知るということは予測する上において極めて重要ではないかと言われておるわけでございまして、防災対策について十分配慮してまいりたいと思っております。
○副議長(大江康弘君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 建設事業の取り組みについてお答えを申し上げます。
 建設事業を進めるに当たっては、地震を初めとして安全、防災は最も基本的な問題であると考えております。
 まず、地震に強い施設づくりでございますが、ダム、橋、ビル等の構造物は、設計、施工の際に過去の地震の経験に基づいて構造物の規模、重要性、さらに地域ごとに考慮すべき地震力が技術基準によってそれぞれ定められております。これに基づいて事業を実施しているところでございます。また、これらの技術基準は大地震の経験などを契機として順次改定をされてきております。さらに、既設の施設について安全であるかどうかという点の点検補修も大切なことでございます。例えば、一九七一年のロサンゼルス地震の経験を踏まえて、橋梁の一斉点検を行い、落橋防止工を実施する等の対策を行ってきております。さらに、万一、被災した場合の復旧工法の検討、改良なども技術の進歩を適切に反映してまいる必要があると存じます。
 次に、地震に強い地域づくりという観点も特に大切なことであろうと思います。急傾斜地崩壊対策事業、街路の拡幅、避難地としての都市公園の整備、避難路としての道路整備、キャブ事業による無電柱化の促進、広域的代替路確保のためのネットワークとしての道路整備など、まことに広範な事業が防災対策の基本として重要な役割を果たすものと考えます。今後とも、良質な社会資本施設の整備が地震対策として重要であるということを十分認識して、その推進に一層努めてまいりたいと存じます。
○副議長(大江康弘君) 総務部長山中昭栄君。
 〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 県民の防災意識の高揚についてでございます。
 地震対策といたしましては、県、市町村やその他の公共機関、公共的団体等の防災関係機関による防災対策の実施とともに、県民一人一人が日ごろから地震災害についての認識を深めて災害からみずからを守るとともに、お互いに助け合うという意識と行動が必要だと思います。こうした地震防災体制を確立するためには、平生から防災意識の高揚を図るとともに、初期消火への備えや応急救護対策など、必要な防災知識を普及、指導することも大切でございます。
 先般の釧路沖地震においては、住宅被害や道路の陥没、あるいは水道やガスといったいわゆるライフラインへの被害が数多くございましたが、火災は比較的少なく、火のもとに対しては冷静に対応されておりまして、反面、けがをした人が多いのが特徴とされております。
 こうした大地震があった場合に被害を最小限に抑えるためには、各家庭で日ごろから適切な行動をとれるように、落ちついて身の安全を守って火の始末を行う、また平時から家具などの転倒落下物の防止対策を講じておくといった心構え、また津波に対する避難等の対策など、一人一人が身につけておくことが必要だと思います。
 県においては、テレビ、ラジオ等による広報、講演会の開催を初めとして、起震車による地震体験、さらにパンフレット等による啓発活動を行ってきておりますが、これまでの教訓をもとに、さらにいろいろと工夫をして、今後とも効果的な啓発に努めてまいりたいと考えております。
○副議長(大江康弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 2番中村裕一君。
○中村裕一君 前回の南海大地震の被害をまとめた本の中に、直後の新聞報道が載っております。それを、ちょっと読ませていただきます。
 地震学者がかねてこの沈下現象その他からこの地震帯が再び活動期に入つたものとし、大地震の必然性を予言、新宮警察署にはすでに中央気象台から極秘の警告もあり、当局としては新築許可その他についても考慮を払つていたという。地元の人々も日一日とはげしくなる小地震の不安から、万一の場合の心の準備はすでに出来ていたようである。しかし、現実にこの「予知された災害」が襲つたとき、これだけの悲劇が生まれねばならなかつたことは、簡単に「不可能の運命」として片づけられない問題をふくんでいる。専門学者がその危険性を予言しても、行政官庁がその予防に万全の策をつくし得なかつたことは、理由の如何にかかわらず強く反省さるべきで、大阪気象台が一ケ月ほど前、田辺町に独立した地震研究所を設置する建議を政府に行なつたが簡単にはねつけられたことなど、政治における科学性の貧困を雄弁に物語つている。
 また新宮市の今回の大火災の原因は、なんといつても消火のための水道が停止してしまつたことで、大地震があれば当然火災の起ることは一応考えらるべきで、地震地帯の都市の非常対策として、水道以外の消火施設の速かな完成も、今後真剣に取りあげられるだろう。しかし予感を信じていたからこそ、まだ死傷者が割合に少なかつたわけで、新宮市の死傷はほとんど家屋倒壊のためのものであり、勝浦町では津波の来る前に整然と全員避難、犠牲者を皆無にしたことなど学ぶべきである。(中略)とまれ死であがなつた尊い経験を基礎に、科学者はもう一度徹底的なメスを加えるとともに、その結果をすみやかに予防、 復興対策に具体化すること、これこそ国民が惨禍の犠牲者にむくいる唯一の道であろう。
 と述べられております。
 このときの状況からすれば、今日は科学も非常に進歩しておりますし、土木技術も進歩しております。ただ、その土木技術の配置の仕方というソフトの方向ではまだまだ十分ではないのではないかと思います。
 南海大地震は、今まで述べてきたように、残念ながら定期的に必ず起こるわけであります。そして、今まで特に本県には大変被害をもたらしてきた地震であります。この忌まわしきサイクルを何とか断ち切るのが、今、私たちに与えられた課題ではないかと思います。
 県の防災訓練については、実は私は地震の素人ですし、防災学の専門でもありません。しかし、まだまだ課題はたくさんあると思います。どうぞ、今後ますます防災計画の充実と最も大切である県民の意識高揚に積極的に取り組んでいかれることを心から期待いたしまして、要望にさせていただいて質問を終わります。
○副議長(大江康弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で中村裕一君の質問が終了いたしました。
○副議長(大江康弘君) お諮りいたします。質疑及び一般質問は、以上をもって終結することにご異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(大江康弘君) ご異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
○副議長(大江康弘君) 次に、ただいま議題となっております全案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
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○副議長(大江康弘君) 次に日程第三、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
○副議長(大江康弘君) 次に、お諮りいたします。三月十七日から十九日までは各常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(大江康弘君) ご異議なしと認めます。よって、三月十七日から十九日までは休会とすることに決定いたしました。
○副議長(大江康弘君) この際、各常任委員会の会場をお知らせいたします。
 職員からこれを申し上げます。
 〔職員朗読〕
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 総務委員会 第一委員会室 
 厚生委員会 第二委員会室 
 経済警察委員会 第三委員会室 
 農林水産委員会 第四委員会室 
 建設委員会 第五委員会室 
 文教委員会 第六委員会室 
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○副議長(大江康弘君) 次会は、三月二十二日再開いたします。
○副議長(大江康弘君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後一時三十一分散会

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