平成5年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(宇治田栄蔵議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(馬頭哲弥君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 28番宇治田栄蔵君。
 〔宇治田栄蔵君、登壇〕(拍手)
○宇治田栄蔵君 議案第四十一号和歌山県公文書の開示に関する条例について質問をいたします。
 情報公開制度の必要性については先輩・同僚議員が過去何回も質問されたところであり、私も平成二年二月県議会において、情報公開制度の必要性について質問をさせていただきました。県当局におかれても同制度に理解を示され、その制度化に向けて検討されてまいりました。
 その経過をたどると、昭和五十六年十月、情報公開調査研究会の発足、平成元年十一月、情報公開推進委員会を設置、平成三年四月、総務学事課内に情報公開準備班を設置し、具体的な検討作業を始める、平成三年五月、県内各界の有識者で構成する情報公開懇話会を設置、平成四年三月、同懇話会から「和歌山県における情報公開制度のあり方について」の提言を得て、同年十一月、公文書開示制度案を作成という経過を経て、今議会において議案第四十一号和歌山県公文書の開示に関する条例案が上程されました。開かれた県政実現のため情報公開制度の採用を決断された知事に対し、またこのように短期間に法案の作成及び公開体制の整備をなし遂げられた関係各位に対し、心からなる敬意を表するところであります。
 情報公開制度とは、行政機関が自主的、能動的に行政情報を公開するにとどまらず、県民に行政機関に対する情報の開示請求権を認め、そのための手続等を定めることを内容とする制度を言います。
 県当局においては、「県民の友」を初め各種パンフレットやテレビの「県民チャンネル」などの広報活動によって、また行政資料室を設置し、行政資料に関する閲覧制度を設けることによって県政についての情報を県民に提供し、県民の理解を得ているところであります。
 情報公開制度と、今申し上げた広報とは、県民に情報を提供するということでは同じ意味を持つものでありますが、次のような点で異なる意味を持っています。
 一、情報公開制度は住民の個別的、具体的な請求に基づくものであるが、広報は住民の請求の有無にかかわらず行われるものであること、二、情報公開制度は行政機関が開示を義務づけられるものであるが、広報は行政機関が任意に行うものであること、三、情報公開制度の場合の開示情報についてのイニシアチブは住民が持つのに対し、広報の場合の提供情報のイニシアチブは行政側が持つこと、四、情報公開制度は公文書そのものの開示が中心になるのに対し、広報では住民に対しわかりやすく加工されたものが公開されること、五、情報公開制度では請求者にしか開示されず、広報効果を期待できないが、広報では、住民全体のニーズを踏まえ、または利害関係者全員のニーズに応じて不特定多数の住民に対して行うものであり、広報的効果を持つことなどであります。すなわち、情報公開制度は県民の請求に対して情報を公開することを県に義務づけるものであり、知りたい情報の選択権が県民の側にあるという点で広報とは異なる意味があるのです。
 広報にとどまらず、このような情報公開制度が必要とされるようになった背景を考えると、次のように言うことができます。
 県民が自己の権利・利益の保護を図るため、処分の基礎となった文書、資料の公開を求めるようになったこと、社会全体の情報化の進展や行政機能の拡大により行政機関に大量の情報が集積していることから、これらの行政情報をひとり行政機関だけが使用するのでなく、広く県民が使い得るものとして行政情報の自由な流通を図り、有効に活用すべきであるとしてその公開を求めるようになったこと、昭和四十年代になって公害、薬害、環境問題、消費者問題等が顕在化し、日本各地で公害等の被害者団体や消費者団体が中心となって住民運動が活発化し、関係省庁や地方公共団体、企業等に対して情報の公開を求めるようになったこと、また行政機関には安全確保や環境保護に対する責任があると考えて、行政機関に対して紛争に係る企業の保有している情報の公開を求めるとともに、行政機関自身の各種計画や基準策定の基礎データ、あるいは決定に至る審議過程に関する資料等の公開も要求するようになったこと、昭和五十年代に入り、ロッキードあるいはダグラス・グラマンの航空機疑惑事件等を契機として、政治行政の透明性の確保や行政の監視という観点から行政情報の公開を求めるようになったことなどが挙げられます。このような時代の要請にこたえて、情報公開の制度化を検討する地方公共団体が次第に増加してきました。
 このような状況の中で、昭和五十七年三月に山形県金山町において、全国で初めて金山町公文書公開条例が制定されました。小さな町の大きな実験として全国の脚光を浴びたのであります。都道府県においては、同じく昭和五十七年十月、神奈川県が情報公開の制度化に踏み切り、この傾向はその後も拡大し、東京都、大阪府を初めとする多くの自治体が情報公開の制度化を行い、現在では三十九都道府県が制度化を行っております。本県で今回本条例案が可決されると、全国で四十番目の制度化となるものであります。
 現在では、全国の約八割の都道府県が情報公開制度を導入しております。国では情報公開法が制定されていないのに、地方公共団体が情報公開制度を比較的容易に導入した事情背景としては、次のことが考えられます。
 地方公共団体の首長は住民の直接選挙で選ばれており、また各種の直接請求、住民監査請求、住民訴訟など、国には見られない多数の直接民主主義が設けられており、住民の行政への参加についての制度的仕組みと経験があること、地方公共団体が保有する情報には外交、防衛等の国の存立に直接関係する文書がほとんど存在せず、住民に身近な生活情報が多いこと、関連する諸制度との調整についても、例えば司法救済制度のあり方については、この種の事柄を条例で定めることができないため検討の対象外となっていることなど、現行法制度の枠組みの範囲内での制度化であることなどが挙げられます。
 情報公開の目的は、より一層公正で民主的な行政運営を実現し、行政に対する信頼を確保することにあります。この情報公開制度の目的を具体的に整理すると、一、行政への参加、二、行政への監視、三、国民の権利・利益の救済、四、行政情報の有効活用の四つが挙げられます。
 行政への参加とは、行政機関が保有している情報の中には政策形成に役立つものが多いから、これを見ること自体が参加である、あるいは見ることによって参加行動に役立つという意味で参加であるとするものであります。行政への監視とは、行政情報を公開することにより行政運営の透明性を確保し、公正な行政が行われるようにすることであります。国民の権利・利益の救済とは、行政による権利侵害や、現代社会において国民の関心が強まってきた公害、薬害、環境問題、消費者問題等に係る具体的な利益の侵害に対して、その原因の究明や防止策を立てるために関係情報の公開を求めるという機能であります。行政情報の有効活用とは、行政機関が第一次的にはみずからの業務の遂行のために持っているさまざまな情報を広く社会的に有効活用しようとするものであります。
 本条例におきましても、第一条において、「この条例は、県民の公文書の開示を求める権利を明らかにするとともに、公文書の開示に関し、必要な事項を定めることにより、県民の県政に対する理解と信頼を深め、県政への参加を促進し、もって開かれた県政を一層推進することを目的とする」と規定されており、これらの目的の実現を図っているところでありますが、その目的達成のため、その制度趣旨を十分に理解し、運用されることを強く望むものであります。 以下、本条例の解釈・運用についてご質問をいたします。
 本条例がその目的に沿って適切に運用されることが県勢の発展にとって最も重要なことであると考えます。そのためには県民が利用しやすい制度でなければならないし、また制度の趣旨、内容について県民の十分な理解を得ておかなければならないとも思います。この点について県としてどのような対応をお考えなのか、お伺いいたします。
 次に、第九条「開示しないことができる公文書」、すなわち非開示事項の解釈・運用についてお尋ねをいたします。
 行政機関が保有する公文書には極めて多種多様な内容のものが含まれており、その中には、個人の経歴、所得等のプライバシーに関する情報が記録されているものや、企業の財務内容、ノーハウ等の企業秘密に関する情報が記載されているものもあります。また、開示することにより、住民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ円滑な運営を阻害し、住民全体の利益を著しく損なうことになるものもあります。これらの公文書については、当該公文書の内容、性質から言って、原則公開の精神に立つ情報公開制度のもとにおいても、その例外として開示することができないものがあるという点については、恐らく異論のないところであろうと思います。
 このように、情報公開制度の基本理念である原則公開の例外として、開示できない公文書の範囲を定めたもののことを非開示事項と言い、本条例では第九条で規定されております。
 第九条では、「実施機関は、公文書の開示の請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報が記録されているときは、公文書の開示をしないことができる」として、一号で法令秘情報、二号で個人情報、三号で企業情報、四号で犯罪の捜査情報等、五号で国等との関係情報、六号で合議機関等の情報、七号で意思形成過程等の情報、八号で行政運営情報について、公開しないことができる場合の取り扱いを規定しています。
 これら事項の非公開基準を見ると、正当な利益が損なわれると認められるもの(三号)、信頼関係が損なわれると認められるもの(五号)、当該事務事業の目的が損なわれると認められるもの(七号)と規定されています。これらの基準はいずれも抽象的、不明確であり、条例の解釈・運用によって非開示とされる範囲が広くなり、行政の恣意的運用のおそれがあるのではないかとの懸念があります。この懸念については木下議員、鶴田議員の質問でも指摘されたところであり、部長答弁では、条例の解釈・運用に当たって実施機関は県民の公文書の開示を求める権利を十分に尊重するものとしており、拡大解釈や恣意にわたることのないよう適正な運用をしてまいりたい、また開示・非開示については、開示することにより得られる利益と円滑な行政運営等による県民全体の利益との比較考量によって決することになるということでありました。
 公開の対象となる公文書は膨大な量になることから開示・非開示の基準が抽象的となるのは、ある程度やむを得ないところがあります。しかし、部長答弁の比較考量論では、県民からの行政情報開示請求に対して、主管部局の責任者が請求された情報に係るさまざまな情報を勘案し、同条項を適用し、その都度利益の比較考量をして公開の可否を判断しなければならないことになります。これでは円滑な行政運営に支障を来し、開示・非開示に統一性を保てないのではないかと思われます。このような事態を招かないために行政情報公開基準を策定し、各部局が公開の可否について共通の認識を持って合理的な判断を行えるようにすべきであると考えます。
 先日、自由民主党において、情報公開条例案についての勉強会を開催いたしました。その節に私は、私立学校の補助金について担当者の方々に一つの質問をさせていただきました。私立学校また幼稚園の生徒・園児については県から一定額の補助金が支給されている中で、具体的に智辯高校または高野山高校等についてどれだけの補助金が支給されているのか、こういうことが公開されるのかということを質問させていただいたわけであります。このとき私は、私立高校といえども、学校というものは社会的に公的な存在でありますから、県から出される支給額は当然に「公開になります」という答えが返ってくるものと期待をいたしておりました。しかし、当局の答えはそうではなくて、先ほど紹介した部長答弁のような比較考量論が出てまいりまして、公開することによって得られる利益、また非公開にすることによる利益、学校の法人としてのプライバシー等を比較考量して公開・非公開の決定をするという答えでございました。しかし、こういうふうに一つの事柄で一々比較考量論を展開していたのでは行政手続が円滑に進まないと感じたわけでございます。ですから、私は、もっと具体的な公開基準を定めて、県の行政全般について一つの線を明確にすることが必要じゃないかということを提案申し上げたいわけでございます。
 そして、そういうものがないのかということを見ておりますと、国においても若干参考になる資料がございます。国においては、情報公開法は制定されておりません。しかし、各省庁の文書課長等を構成員とする情報公開問題連絡会議で検討を進められて、平成三年十二月十一日に同連絡会議の申し合わせ事項として行政情報公開基準を取りまとめています。それによると、行政事務の管理作用の面で一定の性格を有する文書を二十三項目に分類し、各項目ごとに公開する文書と非公開とすることができる文書の主要例を挙げ、非公開とすることができる文書についてその考え方を記述しています。本県においても、これに類する行政情報公開基準を定めて運用すべきであると考えるが、県当局の見解をお示し願いたいと思います。
 次に、国の機関委任事務の取り扱いについてお尋ねいたします。
 国の情報については、公開についていまだ制度化はされておりません。その理由としては、外交、防衛、治安など国の存立に直接関係する情報や、関連する利害関係が複雑多様で、開示することによる影響の大きい情報が多く、慎重な検討を必要とすること、議院内閣制や三権分立など、我が国の政治制度の実情に適した制度とする必要があること、裁判手続、守秘義務や一定情報の開示等を定めた個別法令との関連等について立法論的に調整する必要があることなどが挙げられます。
 そこで、国の機関委任事務について、国の情報として公開の対象から除くのか、県の情報と同様に取り扱うのか、その取り扱いについて県当局の方針をお示しいただきたいと存じます。
 次に、プライバシーの保護との関係についてお尋ねをいたします。
 情報公開制度とプライバシー保護とは表裏一体の関係にあると言われます。そのため、情報公開条例が制定されると、個人情報が公開されると危惧する者も少なくありません。情報公開制度は個人のプライバシーを暴くものではありませんが、個人情報にかつてないほどの経済的価値が出てきた時代的背景もあり、情報公開とプライバシー保護との調整が難しくなってきています。本条例においてもプライバシー保護の重要性を考慮し、非開示事項として第九条二号で「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」と規定するにとどまらず、第三条で、「実施機関は、この条例の解釈及び運用に当たっては、県民の公文書の開示を求める権利を十分に尊重するものとする。この場合において、実施機関は、個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をしなければならない」と規定し、本条例の解釈・運用に当たって、特別にプライバシーの保護に留意することを求めています。
 ここで、プライバシーの権利とは、一人にしておいてもらう権利、あるいは私生活をみだりに公開されないという法的保護ないし権利と言われるように、他人に知られたくないという感情を保護するものを言います。これに対し、現代のプライバシーの権利概念は、自分に関する情報をコントロールする権利として考えられるようになりました。その背景には、行政機関が保有する個人情報の増大とそれに伴うコンピューター処理の拡大、民間の分野における個人情報の大量蓄積とその広範な利用があります。この個人情報の適切な管理を求める権利行使の主体は、本人にほかなりません。通常、自己情報コントロール権と言われているものであります。この自己情報コントロール権の具体的な内容として、自己情報について開示請求を求める権利や誤った自己情報について訂正を求める権利などがあります。
 埼玉県の条例では、通常、他人に知られたくない個人の情報について非開示とするが、本人から公開の請求があった場合は公開しなければならないとして、自己情報の開示請求権を認めています。その結果、美容師試験など、県が実施している各種試験の成績について公開するものが多くなったという成果を上げているということであります。また大阪府の条例では、第三章で公文書の本人開示及び自己情報に係る記載の訂正と規定して、開示請求権と訂正権を認めています。
 埼玉県、大阪府は自己情報コントロール権を条例で認めた点で評価することができます。しかし、情報公開制度は、行政情報を原則として公開とし、より一層公正で民主的な行政運営を実現しようとするものであるのに対し、プライバシーの保護は個人の権利・利益の保護を図るものであるから、この二つはその目的と仕組みを異にしています。したがって、一個の条例で両制度を規定するのは必ずしも適当ではないと考えるわけであります。
 そこで、神奈川県、東京都、福岡県などでは、別個に個人情報の保護に関する条例を定め、プライバシーの権利を保護しております。プライバシーの権利の重要性を考えるとき、本県においても個人情報の保護に関する条例の制定を考えるべきだと思いますが、県当局の見解をお示しいただきたいと存じます。
 以上で、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの宇治田栄蔵君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 宇治田議員にお答え申し上げます。
 情報公開に関するご提言並びに質問をいただいたわけでございますけれども、私からプライバシーの保護条例の制定について答弁させていただきます。
 個人に関する情報につきましては、お話もございましたように、プライバシーを保護し、個人の自由と尊厳を守るための最大限の努力をしなければならないのは当然のことでございます。
 また、ただいまご指摘ございました、自己情報コントロールとしての個人情報保護の制度化につきましては、請求権のほか、情報の収集・利用等に関する制限、また行政機関で保有する個人情報の実態を十分把握する等、いろいろ研究しなければならない問題があるわけでございます。しかしながら、個人情報の適正な収集・管理を初め、自己に関する情報の開示請求権や訂正申し立て権などを内容とするいわゆる個人情報保護制度につきましては、今後検討していかなければならない課題であると考えております。
○議長(馬頭哲弥君) 総務部長山中昭栄君。
 〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 公文書の開示に関する条例に関しまして、まず制度の適切な運用のための県の対応でございます。
 この制度がその目的に沿って適切に運用され、県民の方々から利用されるものとなることが重要である点につきましては、ご指摘のとおりでございます。県といたしましては、そういうことを十分に念頭に置いて制度の運用に当たってまいりたいと考えております。
 このための具体的な方策といたしまして、まず県民の方々の利便性の確保を図るということから、本制度のすべての実施機関に関する開示請求を一つの窓口で受け付けて事務処理ができるように知事部局の中に総合窓口的なものを設置することにいたしておりますし、各地方機関についても、それぞれの機関が保有をしている公文書についてはその機関で受付、開示できるようにしたいと考えております。
 また、本県の地理的な状況なども考慮いたしまして、特に遠隔地の方からの請求については、その内容が公文書を特定できる場合には郵送による本庁窓口への請求も可能となるように検討をしているところでございます。
 いずれにいたしましても、広く県民への周知を図り、多くの方々に利用をいただくために、「県民の友」、テレビ・ラジオ等の広報媒体を活用するほか、市町村等のご協力もいただきながら進めてまいりたいと考えております。
 次に、九条に規定している非開示事項の解釈・運用の問題でございます。
 ご指摘の九条各号を含め、条例の解釈・運用に当たりましては、その趣旨、内容等について職員一人一人が正しく理解をし、いやしくも拡大解釈や恣意的な判断に陥ることのないように適切かつ円滑な運用を図ることが重要であると考えております。
 このために、本条例案をお認めいただけますれば、速やかに統一的な基準となる公文書開示事務の手引を作成するとともに、説明会や職場研修を実施するなどして制度の内容についての職員の認識をさらに深めてまいりたいと考えております。
 また、各実施機関相互あるいは実施機関内部の統一的な取り扱いや適正な運用を図る観点から、ただいまも申し上げましたが、知事部局内に情報公開に関する総合的な窓口を設置することによって組織、機構の面でも体制の整備を図り、適切な対応に努めてまいりたいと考えております。
 特に、ご指摘の九条各号の規定につきましては、立法技術上、一定の類型化をして規定せざるを得なかった関係もございます。運用の統一性が損なわれないように十分に留意をしてまいります。
 それから、国の機関委任事務の取り扱いについてでございます。
 機関委任事務につきましては、国会における自治大臣の答弁といたしまして、公文書の公開は公文書管理の一つの態様としてとらえるべきものであり、これは地方公共団体の固有の事務であること、したがって、機関委任事務に関して作成された文書であっても、公文書公開事務が地方公共団体の固有事務と解し得ることから公開をすることができる、そういう見解が示されております。
 ただ、機関委任事務の処理に当たりましては、地方自治法第百五十条の規定に基づく国の指揮監督権限が及びますので、九条第一号の規定の中で「主務大臣等から開示してはならない旨の明示の指示があるもの」との非開示規定を設けているわけでございます。この点を除きますと、開示の対象となるかどうかについては、機関委任事務も固有事務と同様の扱いになるものでございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 28番宇治田栄蔵君。
○宇治田栄蔵君 従来の政治行政におきましては、「よらしむべし、知らしむべからず」と言われたこともございます。そしてまた、公務員の守秘義務というものがございまして、守秘義務を余りに重視するために、どうしても秘密主義ということが行政の内部で非常にはびこった時代がございました。しかし今、公文書公開条例が制定されて、こういう過去の秘密主義と決別し、そして新しく、開かれた県政を実現しようと決断された知事に対しまして、私は心からなる敬意を表します。今後、この情報公開制度の趣旨を十分に生かした行政運営がなされることを心から要望するものであります。
 また、プライバシー保護のための個人情報の保護条例につきましては、知事から積極的なご答弁をいただきました。このことについては情報が公開された後の問題となるわけでございますけれども、その中で、個人のプライバシーの保護とこの権利の重要性に思いをいたすときに、できるだけ速やかに条例の制定化を考えるべきだと思います。県当局におかれても十分な配慮をされ、条例の具体化に向けて検討されることを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で宇治田栄蔵君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時十二分休憩
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