平成5年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(和田正一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時五分開議
○議長(馬頭哲弥君) これより本日の会議を開きます。
○議長(馬頭哲弥君) 日程第一、議案第一号から議案第七十三号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 19番和田正一君。
 〔和田正一君、登壇〕(拍手)
○和田正一君 お許しを得て、一般質問をさせていただきます。
 その前に、知事を初め当局に一言お礼を申し上げます。
 県域全般にわたることではありますが、私の選挙区・東牟婁についても、平成五年度当初予算に計上されたふるさと林道緊急整備事業として紀南縦貫林道の整備に着手されるようになったこと、また広域幹線林道谷口皆瀬川線の舗装、のり面改良及び安全施設の整備をされること、木炭生産処理をされること、新山村振興農林漁業対策事業を古座川町、熊野川町に指定いただいたこと、ふるさといきものふれあいの里を本宮町皆地の深田に整備されること、熊野牛ブランドの推進、紀南地方看護婦養成所の建設、森林整備担い手基金等、新たな事業を計上していただきましたし、「平成五年度予算の概要」、「工事箇所表」、「予算説明書」等を拝見して、深刻な景気後退、法人税や地方税が落ち込む中にもかかわらず一般会計が伸びを示し、また県単投資は二けたの伸びを示したことは、知事を初め財政当局並びに関係部局の並み並みならぬご苦労のたまものと心から感謝申し上げ、厚くお礼を申し上げさせていただきます。ありがとうございます。
 私も、かつて町長として十二年、予算編成を行ってまいりましたが、知事にははるかに及ばないとはいえ、その苦労のほどは、まことに失礼とは存じますが、うかがい知ることができます。お礼とともに、次に要望を申し上げさせていただきます。
 「『のぞみ』山陽新幹線にデビュー。『のぞみ』が走って日本が縮む」とコマーシャルで放映されておりますが、国道三百十一号小広トンネルの開設や三百七十一号の改良、百六十八号、百六十九号、四十二号の早期改良──特に百六十九号は、現在、国の直轄工事として進められており、二、三年のうちには直轄部分が完成されると思いますけれども、その十津川村田戸から宮井橋に至る間が狭隘であり、車の対向もできないというふうな箇所でございますので、一日も早い改良をお願い申し上げたいと思うわけでございます。
 また、林道龍神本宮線、水上栃谷トンネル等は今秋までに供用開始とか。道路ができて和歌山県が縮むことを鶴首しておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 さて、これからは質問に移らせていただきます。
 今日まで山村は我が国の文化、経済、社会の基盤を形成するなど重要な役割を果たしてきましたが、過疎問題は我が国の高度経済成長とともに深刻化してまいりました。ある意味では、山村地域は都市の犠牲ともなってきたのではないでしょうか。そのため、国、県、市町村が一体となって過疎問題に取り組み、道路網、生産基盤、生活環境等の整備が進むなど、相当の成果を上げてはきました。しかしながら、「過疎白書」にあるとおり、依然として山村地域をめぐる情勢はまことに厳しいものがございます。若者を中心とした人口の流出と減少、人口の高齢化等──高齢化そのものは、健康でさえあってくれればありがたいことではありますが、高齢化の進行は人口構成のアンバランスにつながり、大正十三年生まれの「十年」とって五十九歳の私が、今なお村に帰れば若い衆ということでございます──によって地域の共同体としての機能も衰え、生産性の低下など、山村地域の活力が失われつつあります。
 平成三年度の「林業白書」においても、過疎化、高齢化で、このままでは林業、山村の維持が難しいと指摘されております。ウサギ追いし、小ブナ釣りし、牛の鳴き声ものどかだった山村──かつては木を切るおのの音が山々に、谷間谷間にこだまして活気のあったそのころの姿を思いますと、うたた感慨無量なものがございます。昔の姿、今いずこと言うべきでしょうか。このまま推移すれば、山村の維持はおろか、早晩崩壊する山村が生まれることは必定と思います。このことは、単に過疎山村、一町村の問題にとどまらず、県土の均衡ある発展にとってもゆゆしき問題であり、早急に解決すべき重要課題であるかと思います。
 さて、今、本県は関西国際空港の開港を間近にし、マリーナシティの建設、南紀白浜空港の整備などが着々と進み、県政の大きなプロジェクトがまさに花開く直前に到来しております。紀南地方においても、道路整備を中心に、活性化に向けて地域が一体となって懸命の取り組みを続けておるところでありますが、若者の流出や高齢化の中で浮上策に悩んでいるのが実情であります。
 冒頭にお礼を申し上げました、那智勝浦町と中辺路町、本宮町を結び紀南の山岳地帯を縦貫する長大林道計画、谷口皆瀬川林道の全線舗装は、国道がたびたび寸断される当地にとって、通学、通勤や日常生活に欠かせない迂回路が確保されることとなります。
 紀南地方の活性化に不可欠なものは、国道四十二号の大きなバイパスとなる紀南内陸道の整備でございます。すさみ町から古座川町、さらには熊野川町、本宮町を結ぶ内陸の道路を国道四十二号、また百六十八号のバイパスとして位置づけ、国道に匹敵するよう拡幅整備をすれば、生活に、観光に、さらには災害時の迂回路としてはかり知れない効果をもたらすものと考える次第でございます。
 このルートの県道部分は整備されつつございますけれども、古座川町松根と熊野川町西の間の町道和田川松根線約三十一キロメートルは、林道として開設した部分も含むことから、幅員が四、五メートルで、約半分は未舗装となっており、急カーブ、急勾配の箇所が相当存在する現状にあって、この区間の整備が遅々として進まない実情でございます。そのため、この区間をぜひ県道として取り上げ、計画的に整備していただきたいと願う次第でありますが、土木部長の見解をお伺いいたします。
 熊野川町は、今、未登記の部分を懸命に処理しつつあることをつけ加えさせていただきます。
 次に、林業労働対策として農林水産部長にお伺いいたします。
 私の住む熊野川町を例にとりますと、昭和五十五年に百九十三名あった林業就業者は平成二年には七十名と、六四%も減少しております。これから先、若者の林業への参入が多く望めない中で、山を守り、活気に満ちた林業を取り戻すためには、道と機械とを組み合わせ、新しい作業システムを取り入れ、山の作業の能率化、省力化を進めなければならない時代を迎えていると考えます。
 林道については鋭意計画的に整備を進めていただいておりますが、一方の機械については、タワーヤーダ、プロセッサー、グラップルソー等、性能の高い林業機械があり、それを本県でも早く関係者に普及する必要があるのではなかろうかと考えます。どのように考えておられるか、お伺い申し上げたいと思います。
 また、生き生きとした山村づくり、地域活性化のため、若者の定住対策、林業従事者の住宅等、住環境の整備もあわせてどのように取り組んでいくべきなのか、お考えをお示し願います。
 次に、ふるさと産品などの産業の振興についてでありますが、山村の基幹産業はやはり林業であり、長期的には林業の振興を図っていくことが当然の姿ではありますが、若者の定住化のためには所得の向上と多様な就業の場づくりが必要であります。
 つきましては、所得の向上、就業の場を確保するとともに、過疎山村地域の産業の振興のため、地域の特性を生かしたふるさと産品が各地に誕生し、その産品の販売所も多数見受けられ、評判もまんざらではないと聞き及んでおります。若者の定住化のための所得の向上と就労の場づくりのためにも産品の販路拡大を目指し、生産、加工、販売に至る一貫した指導を行い、ふるさと産品を地場産業として根づかせていく必要があると思います。今後どのように取り組んでいかれるでしょうか、部長のお考えをお伺いいたします。
 次に、山村過疎地域の問題の解決に当たっては、その地域の自主的、主体的な努力、そしてまた創意と工夫による魅力あふれる地域づくりが当然求められるところでありますが、この問題は、単に一地域のみではなく県全域にわたる問題であり、産業のみならず健康、福祉、教育、文化にも大きなかかわりを持つ問題であります。
 この地域の財政力は極めて低く、本県の過疎地域町村の財政力指数は全国最下位から二番目という状況にあります。当該町村の自助努力はもちろん必要ではございますけれども、そこに限界があり、強力な支援を懇願する次第であります。
 この問題は、ひとり農林水産部のみならず県行政の中で、全体の問題として全庁的な取り組みの体制をしいてくださるようお願いするわけでございますが、農林水産部長の所見をお伺いします。
 以上、過疎山村の現状をご理解いただきまして、最後に、これらの悩みを集約して発想された森林交付税についてお伺いいたします。
 森林は、人類にとってかけがえのない宝であり、生命の源でもあります。こうした高い公益性を持つ森林を国を挙げて守ろうと、去る二月十六日、中山本宮町長が創設を提言されて発足した森林交付税創設促進連盟の主催によるフォーラムが本宮町において開催されました。北海道から九州まで全国百余の町村が集まり、六百余名が、寒い中にもかかわらず、悲壮なまでの熱気に満ちた討議が行われたのでございます。
 都市部で経済を支え、諸産業が生産活動を続けておられるのも、国土の保全、水資源の涵養、空気の浄化など、山村地域が森林を管理経営することにより公益的機能を維持されてきておるからであります。
 私も、子供のころから、牛とともに田を耕し、木苗を植え、下刈り、枝打ちなど、山の管理に努めてまいりましたが、最近、町から都会に流れた人々の山離れ、また山林放棄が激しく、このまま放置すれば山村は崩壊の一途をたどるものと危惧いたしております。
 一昨年、中山町長の提言が中央紙にもたびたび掲載されたこともあってか、国においても、森林、山村を取り巻く状況にかんがみ、森林の有する多様な公益的機能を今後とも維持するため、地方団体が取り組む森林山村対策に対する財源措置を抜本的に拡充するとして、保全すべき森林の公有化の推進、森林の適正な管理の推進、林道整備の促進、森林管理のための担い手対策などの推進等に地方債、交付税一千八百億円程度が措置されたことは喜びとするところでありますが、林業の低迷、人口の流出、高齢化が進む中で、こうした森林の持つ公益性を守り、都市と山村の均衡ある繁栄を図るために森林交付税を地方交付税の枠外に創設して山村に還元することが必要であると強く訴える中山町長の姿は悲壮そのものでもありました。今後、この交付税についていかように取り組んでいかれるおつもりか、知事の見解をお伺いいたします。
 森林の持つ公益的機能、水資源の涵養、空気の浄化、国土の保全といったことについて県民に正しく理解してもらうための山村体験、社会教育や学校教育を通じて山村、木、森を知ってもらうための教育の面での取り組みを要望させていただきます。
 ちなみに、フォーラムでなされた宣言を読み上げさせていただきます。「森林は、私達人類にとってかけがえのない大切な宝であり、生命の源です。 このすばらしい森林を二十一世紀、更に未来永遠に承継していくことは、現代を生きる私達に託された最も大きく重要な課題です。 しかしながらこの森林を祖先から営々と守り育ててきた山村では今、過疎化と高齢化に悩み、存続さえも難しくなっています。こうした状況に対する国民世論の高まりと、国の施策の進展は、私達に大きな希望と勇気を与えてくれました。 今こそ森林の持つ公益的機能とそれを守り育てていく山村社会の役割を広く国民に訴え、大きな運動として森林交付税の創設を強く政府に要望していくことをここに宣言します」、このようにございます。
 いろいろ質問やら要望などを申し上げさせていただきましたけれども、県民の喜びを喜びとする県政、知事を初め当局の皆さん方のさらなるご努力とご精進をここにこいねがいながら質問を終えさせていただきたいと思います。
 山村は、来てよし、見てよし、住んでよし──村づくりに町村長初め議会、町民一体となって懸命に取り組んでおるわけでございますけれども、一人でも住みついていただくための施策が必要だと思います。中辺路町にハンソンさんがお住まいになられて、そして山の中で、「ここはいいですね」とおっしゃったらしいんですけれども、このような人たちに来ていただけるための山村づくりも必要ではなかろうかと思います。しかし山村の現実は、「よい空気だけでは食えぬ過疎の村」、「うまい水だけでは住めぬ過疎の村」──読み人知らずでございます。
 終わります。ありがとうございました。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの和田正一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 和田議員にお答え申し上げます。
 森林交付税についてでございます。
 お話ございましたように、山村また森林を取り巻く環境というものは非常に厳しゅうございます。過日、本宮町においてフォーラムが開催されたわけでございますけれども、全国から多数の町村長さんが集まって盛大に開催されたこと、私も非常に力強く、頼もしく存じておりまして、全国の皆さんに山村の実態というものを十分理解していただいた、そしてまた重要性をPRできたと考えておるわけでございます。
 話ございましたように、最近、国土庁、自治省、農林水産省等、国においても諸施策をとり行っておることは事実でございまして、特に交付税のついた起債等の適用を活用させていただいて紀南縦貫林道の建設にも着手することになったわけでございます。そうした施策を行うとともに、皆さんのご支援を得て、半島振興法や過疎対策法等の諸制度を併用しつつ、今後ともなお一層進めていかなければならないと思っております。
 しかしながら、森林フォーラムにおいて取り上げられたように、これらの施策だけではまだ十分でない点があります。それは何か、それをいかに検討していくか、労働者対策の問題をどうしていくかといった問題が残されておりますし、またそれらの財源をどうするかという問題もあります。これらの問題は、県においても関係市町村とともに真剣に検討していかなければならない重要課題だと認識しておるわけでございます。
 フォーラムを開催する上において最も重要なことは、都会におる住民の皆さんが、自然を保護せよ、山林を守れと言うけれども、水、治山治水、空気、あらゆる国土形成において森林や山というものが非常に大事なものであり、それらを自分らも金を出してやるんだという風潮をつくっていくことでございまして、これらはこれからの重要な課題ではないかと思います。そうした森林フォーラム等と連携しつつ、なおさらに進めてまいりたいと思っております。
○議長(馬頭哲弥君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) お答えを申し上げます。
 古座川町から熊野川町に至る三十一キロの町道の県道昇格でございます。
 県道認定の前提となる道路敷地の権限取得が、古座川町管内では既に完了しておりますけれども、熊野川町管内において現在進んでおりません。議員お話しのとおり、現在、熊野川町において鋭意努力をしていただいているところでございますので、なお一層これを進めていただき、これが整理された暁には県道昇格に取り組んでまいりたいと思っております。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 農林水産部長中村 昇君。
 〔中村 昇君、登壇〕
○農林水産部長(中村 昇君) 林業の労働対策についてお答えを申し上げます。
 まず、林業の機械化につきましては、議員のお話にもありますように、作業の効率化や新規労働者の確保のため、最も重要な課題の一つと考えてございます。そのため、平成三年度よりオペレーターの養成を進めてまいりました。事業体の育成と高性能林業機械の導入普及を図るため、平成五年度から国が新たに創設をした林業担い手確保総合対策事業を早急に活用して、今後、タワーヤーダ、プロセッサー等を県において導入をし、研修の強化や現地での実際の活用を進めてまいりたいと考えてございます。また、諸施策を積極的に推進しながら若者の林業への参入を促進して林業の活性化を図ってまいる考えでございます。
 次に、若者定住対策と林業従事者の住環境の整備についてでございます。
 若者を中心とした定住を図っていくために、若者の好む多様な就業の場と安定した所得の確保、そしてまた都市的機能を備えた質の高い生活環境の整備が重要であると考えてございます。
 県といたしましても、これまで若者定住策については国の諸施策を積極的に取り入れてまいりましたが、県単独事業としても、農林道の基盤整備、また産品づくりの加工販売施設の整備や軽企業誘致等、就業の場づくり、そしてコミュニティー施設やスポーツ広場等、住環境の整備もあわせて進めてまいりました。また、若者が定住できる呼び込みのための施策も実施をしてまいりました。
 また、最近要望の高まっている林業従事者の宿舎の確保についてでございますが、本県から国に対して強く要望して、平成五年度からその建設についてモデル的に実施する方向で検討されていると聞いてございます。今後もこれら施策を一層推進し、若者定住を最重点として、市町村及び関係機関、団体と一体になって過疎山村対策に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、ふるさと産品の振興につきましては、山村地域における多様な就業の場や安定した所得の確保を図る上で大きな課題と考えてございます。このため、生産基盤、加工販売施設の整備やそれらの技術普及によって産地化促進に取り組んでまいりました。その結果、主なふるさと産品として、紀州備長炭を初め木工製品、山菜類、花卉類等、三十種類が生産されてございます。その出荷額は約八十六億円となってございます。
 今後、山村各地域の産品直売所の連携強化、そしてまた販路の拡大やニーズに合った商品開発等を図るとともに、試験研究機関、普及指導機関と一体になって山村の重要な産業として大きく育ててまいりたいと考えてございます。
 最後に、山村振興、過疎対策に対する全庁的な取り組みについてでございます。
 議員お話しのとおり、山村過疎問題は全県域にわたる問題であり、県行政すべてにかかわる問題でございます。県といたしましては、全庁的な取り組みとして、昭和四十一年に全国に例を見ない山村対策課を設置するとともに、昭和四十二年に全庁的に山村対策審議会を設置して総合的に取り組んでまいりました。
 現在の社会経済情勢の変化を踏まえて、今後、山村過疎対策のあり方と具体的施策を検討するために、農林水産部内に若手職員を中心としたプロジェクトチームと山村過疎問題検討委員会を設けて研究を深めているところでございます。
 今後、具体的な地域づくりについてさらに検討を進めるとともに、関係部局とも緊密な連携を持って積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(馬頭哲弥君) 再質問がありませんので、以上で和田正一君の質問が終了いたしました。

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