平成5年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(堀本隆男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時四分再開
○議長(馬頭哲弥君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○議長(馬頭哲弥君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 27番堀本隆男君。
 〔堀本隆男君、登壇〕(拍手)
○堀本隆男君 お許しを得まして、早速、質問に入らせていただきます。
 私ごとで大変恐縮でありますが、県会議員になって間もなくのころであります。私が尊敬する大先輩の政治家に、県会議員として、政治家としての心構えをお伺いしました。「教えるほどの資格もないが」と言われながら、「『足して二で割る政治かな』と、昔、大野伴睦氏が言ったとか言わないとか話題になったことがありました。今の政治はそんな安易なものではありません。やはり政治家は理念と哲学を持たないといけません。金集めと票集めに走る政治家の多いことは嘆かわしいことであります。厳しいようですが、あなたも県庁を出たのですから、県民のサイドに立った立場でもう一度県政を勉強し直し、確固たる信念とビジョンを持ってほしい。そして、当然のことではありますが、県議会の役割は行政機能のチェック機関であります。歯にきぬを着せぬ直言があなたの使命と思ってほしい。二つ目は、県会議員は広く県民の声を集約し、県行政に反映させることが大切であります。そのためには郡内をよく歩くことです」と、そして政治家としての幾つかの行動規範を教えてくれました。
 なぜ冒頭にこんな思い出話をいたしたのかと申しますと、本日の質問内容について若干厳しいものがあれば、こうした考え方が私のベースになっているのだとご理解を賜りたいのであります。
 それにしましても、先日の紀の国大使の発言のうち、和歌山県を「眠れる森の美女」と評したことは、私の住む紀南でも、新聞を読んだ識者の間でちょっとした話題となっております。いつになったら雄々しい獅子になるのかと。そして、若い人たちに私は質問を受けました。今県勢は発展していると言えるのかどうかと。
 紀南に住む若者の一つの実感として、「紀北では関空や高速道路の整備に合わせ、マリーナシティを初め頭脳立地構想や国道・県道の改修、図書館、美術館その他多くのプロジェクトが次々に建設されていく。県都としては当然かもしれない。確かに、そうした面で県は懸命に頑張っていることは認めます。しかし、こうした社会資本の整備が産業の発展とうまくつながっていると言えるのかどうか。社会資本整備政策と同時に、産業政策にももっと力を入れてほしい。若い人たちが県勢が発展していると言うのは、産業政策の結果として県民の懐が暖かくなった、豊かになってきたという実感を指して言っているのであって、自分にはその実感がない。特に農林水産業を主産業とする紀南ではその感じが薄いと言わざるを得ない」、と主張するわけであります。
 さて、本論に入りたいと思います。
 配付のありました「平成五年度予算の概要」を読みますと、商工労働部にマル新・産業活性化ビジョン策定事業七百九十八万四千円が計上され、そして説明に「内外の著しい経済環境の変化の中で今後の本県経済の持続的発展を確保するため、中長期的かつグローバルな視点に立って県経済を展望し、取り組むべき施策の指針となるビジョンの策定に要する経費」とあります。聞いてみますと、十年前、昭和五十七年に策定した和歌山県産業構造長期ビジョンが八〇年代を対象としていたために今回改定しようとするものであるとのこと。経済警察委員会においてこの改定を主張してまいった一人として、県の積極姿勢を評価したいと思います。どこの府県においても、産業構造長期ビジョンは行政や産業界、民間にとって産業政策のバイブルであり、今や二十一世紀へのかじ取りにとって不可欠の指針であります。
 そこで、お尋ねいたします。
 一、知事は改定されるビジョンについてのグランドデザインをどのように描いておられるのか。去年の新春記者発表の「二十一世紀の和歌山県の姿」を考えておられるのかどうか。私はこれはよく描けていると思います。
 二、改定作業は平成五年度中に完成するものか。
 三、今回のビジョンは九〇年代に対応するものか、二〇一〇年までを目標とするものか。
 四、県長期総合計画や地場産業振興ビジョンとの整合性について。
 今、日本の産業界は長引く不況がさらに深刻度を増し、リストラクチャリング(事業の再構築)のあらしが吹き荒れてまいりました。中でも、日産自動車座間工場の閉鎖と五千人の削減計画は衝撃的な発表であり、企業城下町の混乱は察するに余りあります。東洋紡の三千人一時自宅待機、NTTの九六年までに一万五千人削減、昨日の住友金属の三千人の削減発表など、連日のように新聞紙上で大・中・小企業の別なくリストラ計画が出され、企業内失業は百万人に上ると推計されてまいりました。右肩上がりの成長を信じ、バブル経済のピーク時に過剰設備投資と人員増を行った企業ほど、そのツケが厳しいのであります。特に、超高級化商品を目指した企業が、バブルの崩壊後、深刻な販売不振に陥っております。
 著名なエコノミストは、「今、日本の産業界の取り組んでいるリストラは、人員削減、合理化など、後ろ向きである。目指すべきリストラは、日本が世界の先端を走り続けるための創造的な技術開発など前向きであるべきだ。バブルピークの最中にシェア確保のために量産テクノロジーに走ったとがめが出てきた。欧米では十年前にこれを経験して企業体質を改善している。量産に走るやり方は開発途上国にすぐ追いつかれる。高い質を求めよ」と。
 またアメリカのアナリストは、「十年前のアメリカがちょうど今の日本と同じだった。高価でハイグレードな車の生産競争に走り、例えば同一車種で七十、八十ものハンドルをつくる。むだで過剰な設備投資に陥った結果、日本の安くてシンプルで性能のよい車にたちまち追い越され、ビッグスリーなど全米各地の工場が閉鎖の憂き目に遭ってしまった。失業のあらしに見舞われた。今、アメリカの自動車産業はこれらの経験を踏まえ、経営改善に努め、もう日本に負けなくなった」と言い始めております。電気、精密機器、その他も例外ではありません。
 ところで、本県の景気の現況について商工労働部長にお尋ねします。
 先日発表された日銀の短観では景気は一層その深刻度を増したとありましたが、本県のトータルな景況感並びに特に厳しい業種とその深刻度、つまり倒産企業数、一時休業企業・休業工場数、人員削減を打ち出した企業等の実態を教えていただきたいのであります。
 さらにお伺いいたしたいのでありますが、去年行われました事業所統計調査(全国版)を見ますと、事業数の増加は二十五県、減少は二十二府県、本県はマイナス三%で全国四十五位であります。特に製造業と小売商業の減少が著しい。ここ数年来、県当局の大変なご努力で企業立地は著しく伸びているのでありますが、総数で減少するのは立地企業数以上に消滅する企業数が多いということになるのかどうか、お尋ねしたいのであります。もしそうだとすると、今後の対策についてどのように考えられるのか。このままでは、本県の製造業は衰退の一途をたどると言わざるを得ません。
 次に、産業構造長期ビジョンと長期総合計画とは密接な関連性があります。今回の改定に当たっては長計の動向を踏まえ将来推計を求めることとなりますが、国勢調査並びに先日発表された平成二年度の県民経済計算や工業統計がベースとなります。
 そこで、企画部長にお尋ねします。
 第四次長期総合計画における社会経済の将来見通しのうち、まず人口についてでありますが、長計では基準年の一九八〇年に百八万七千人が二〇〇〇年には百十五万二千人を見込んでおり、一方、厚生省人口問題研究所では二〇〇〇年に百三万九千人と推計して、相当な乖離があります。現時点で二〇〇〇年に何万人を推定しておりますか。
 同様に、県内総生産について一九九〇年の目標値と実績値の比較、及び二〇〇〇年に目標値の達成が可能かどうか。同様に、工業出荷額、一人当たり県民所得についても、それぞれ一九九〇年における目標値と実績値の比較、二〇〇〇年における目標達成の可能性についてお教えいただきたいのであります。さらに、土地利用のうち工業用地についても一九九〇年における目標値と実績値との比較、並びに二〇〇〇年に目標の達成が可能かどうか教えてください。特に、二〇〇〇年の見通しについてはシビアに大胆にお示しください。
 さて、以後は要望にとどめたいと思いますが、現行ビジョンを検討して感じますことは、よくまとめてあるのですが、デスクプランであります。他の県に持っていって県名を変えれば使用可能で、県下各地域ごとの将来展望が不足しております。野村総研一社の意見と受けとめられます。そして策定委員会のメンバーも、県内の方ばかりで構成しておりますが、国際社会における産業政策を論じ得る有力エコノミスト、例えば石井威望、堺屋太一、唐津一先生などもぜひ加えてほしいと思います。
 企業誘致に力点を置くと同時に、地域内からの産業おこしの可能性も模索が必要であります。これは、紀南地域に特に目を向けていただきたい。当然に、国際化に対応したグローバルな産業政策の掘り下げも必要と存じます。
 地域開発に当たっては、高速道路の延伸に伴うインターチェンジをきかした工業団地、企業誘致の戦略を積極的に盛り込み、行政投資も、県のみでなく市町村の果たす役割の大きいことを自治省も認めており、その方向や、さらに厚生省が提案している福祉機器、保健医療機器の日本の開発のおくれに対する支援等、近未来産業も多くあります。
 先日、大阪府泉南地方へ参り、三つのコスモポリスの実態を勉強してまいりましたが、バブルの頂上期に目いっぱいで買収した造成土地の売却予定価格が坪約百万円になると聞き、企業誘致の進まない理由もわかりました。本県が紀の川流域で造成する工業団地は、これから景気の回復に伴い臨空産業地帯として大きく伸びるだろうと感じてまいった次第であります。
 時代は大変難しくなりました。単に複合不況のみでなく、国際競争が激しくなる中で、日本企業がこれまでに体験したことのない産業改革のうねりとサバイバルをかけて行うリストラを本県でどのように乗り越えていくか、当局のスタッフの皆さんに力作をお願いしたいのであります。特にお願いしたいことは、決してつくってすぐ戸棚にしまわないで、座右の銘になるよう、庁内の総知を結集していただきたいのであります。
 なお、余計なことでありますが、先日読みました近畿通産局が去年策定した「二十一世紀に向けた近畿地域の望ましい産業構造のあり方に関する調査報告書」は、すぐれて参考になりましたので、ご紹介いたします。
 さて、次に市町村民所得統計の作成についてであります。
 一昨年十月、神戸市におきまして全国過疎問題シンポジウムが国土庁、兵庫県、全国過疎地域活性化連盟の主催で開催されました。私も出席して、心打たれる話が多くありました。
 まず、基調講演に立った東京大学の大森教授は、東京一極集中問題に触れ、「国鉄当時からの上り・下りの考えを脱却し克服しなければならない」とアピールしております。次に格差について、「その発想の転換が要る」として、次のように述べております。「是正という言葉が必ず後について出てくるが、そうではなくて、違いを格差と考えるか個性と考えるかであって、個性と理解して誇りと思うことが大切で、格差という弱点を克服できるのではないか」。さらに意識の問題に触れ、「東大にも留年生が多い。幾ら勉強してもできない人と、怠慢による場合があり、こうした人は除籍処分にすることがある。新過疎法で調査に回った際、地域の人々に本音で伺うと、『本気でやっていない。留年している』と白状した。これは、本気でやれば卒業できるのであります。さらに、従来の国の役人が一番で県がその次、市町村の職員は三番目と思っているのは間違いで、町村にすごいと思う人がおります。この人たちは何を考えているかといいますと、一つは自分たちの働いている町は自治体としてどんな町か、地域をどんなふうに見ているか、つまり、あんなことは役場の連中が勝手にやっていることで、おれたちは知らん、これでは住民の心から遠い役場になっている。地域づくりは遠くなってはできません。住民が町に金を出すという考えに到底ならないのであります」。最後に、「市町村は末端機関ではなく先端機関であり、国の政策をおろしていく最終の窓口ではなく、市町村こそが地域の課題を見つけ出し取り組んで政策化させる先端機関であるという認識の転換が必要で、その意欲と力量が問われている」と。
 さて、パネラーの一人、兵庫県の貝原知事は、「週休二日制が定着し、心の豊かさが問われる中で、生活圏が広がり、都会と過疎地の交流がますます重要になってくる。ふるさと創生一億円のように、過疎地が自由に使える交付金制度の新設を政府に要望していく」と、意向を表明しておりました。
 兵庫県氷上町在住のドイツ出身の高木モニカさんは、「明治維新時には世界の過疎地であった日本は、壮大な村おこしで短期間に脱却した」と歴史について触れ、「ドイツ人の多くは、田舎の自然の中で今バカンスを過ごしております。つまり、けちけちバカンスをします。都会人の自然志向が強まってきた日本でも、過疎地が注目されるようになる」と、過疎地の持つ豊かな自然にポテンシャルを見出し、本物の自然志向ブームの到来を予測しておりました。
 山形県の横山万蔵・西川町長は、豪雪地で町民所得が県内最低だった西川町を県内六位にまで引き上げた経過を説明し、町長就任と同時に掲げた目標を「町民所得の県下最下位からの脱却」とし、役場の職員を頭脳集団としてフルに活用し、豪雪を逆手にとって夏スキーで五十万人の客を集め、月山の自然水を売り出したのであります。それらが当たったわけでありますが、「何々がないからだめだ」の発想ではなく、都会にないもので、ここでなければできないものを考えて実行した。今では町に不相応な立派な病院と体育館もできた。半年間、雪の中にいる住民の健康を第一に考えたからで、今では県内一の長寿村になっております。
 以上が、全国過疎問題シンポジウムでの主な発言であります。過疎問題については改めて論議しますが、私は山形県の西川町長の発言に注目したいのであります。それは、町民所得県内最低からの脱却を合い言葉にしたということであります。
 経済企画庁経済研究所の資料を見ますと、市町村民所得統計の整備を行っている府県のうち、府県が市町村の分を計算しているところは十九県、府県と市町村が共同で計算しているところ、市町村が主体的に計算しているところなどがあり、全く実施していないところは和歌山県ほか三県であります。
 今、和歌山県は「一〇〇の指標からみた和歌山」という立派な資料を出しております。人口、労働者数、県内総生産、一人当たり県民所得など、百の指標についてそれぞれ各都道府県順位をあらわして、本県を客観的に見ることができるよう県民に提供しております。さらに、市町村編を登載し、県内の市町村順位を並べ、自町の置かれた位置が直ちにわかるようになっており、市町村議会議員や活用している県民に大変好評であります。
 そこで、いま一歩踏み込んで、市町村民所得統計を県主導で整備してほしいのであります。民間からは個人所得指標という本が出されており、全国の市町村ごとに全国の平均所得を一〇〇とした自町のウエートと順位が出されておりますが、その算出方法にやや疑問点もあり、ぜひ県の策定をお願いしたいのであります。所得統計のみが生活の豊かさをあらわす唯一の指標ではありませんが、一つの目安になると考えられます。策定準備に約二年間かかるそうでありますが、当局のお考えをお伺いしたいのであります。
 次に、大規模沖合養殖プラントの導入についてであります。
 さて、私は昨年三月の当初県議会の一般質問において、大規模沖合養殖プラント「アクアシステム」を国の補助事業として採用するよう水産庁へ働きかけてほしい旨、お願いをいたしました。その際、同時に、マグロ養殖のモデルプラントをなぜ本県でやらないのかとお尋ねしましたが、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議が京都国際会館で開催された際、マグロについて取引の原則禁止もしくは輸出許可書が必要とする措置をスウェーデンが提案し、結局これを取り下げたのでありますが、水産庁においては将来の需要に備えてクロマグロの養殖をモデル的に行うことを決定し、黒潮の流れる暖かい太平洋岸の六県に打診の上、最終的に鹿児島県でこれを実施したのであります。本県では串本を中心に検討されましたが、組合側では、このような大規模マグロ養殖は初めての試みであり、役員会で検討の結果、種苗の確保、技術者の確保、採算性を考慮し実施を見送った旨、農林水産部長から答弁がありました。記憶に新しいところであります。
 このマグロ養殖プラントにさらに改良を加え、近代的に装備した先端漁業がアクアシステムであります。長崎県野母崎でノルウエーのパテントを生かし、長さ百十二メートル、幅三十二メートル、甲板までの高さ二メートルの堂々たる船型の養殖台船で、生けす十基に目下、高級魚シマアジを飼って努力を重ねております。一基七億円から八億円という高額なものであるだけに、これを産業基盤として位置づけていただき、国の構造改善事業として補助対象に採択をお願いしたわけであります。
 幸い、農林水産部長の答弁は、「県といたしましては、つくり育てる漁業を振興する観点から、養殖漁業の振興を積極的に図ってまいっており、沖合養殖の導入はまことに重要であると認識しております。また、アクアシステム等大規模な養殖システムもその一つの方策として大変有効であると考えてございます。いずれにいたしましても、海洋の活用は漁業振興のみならず地域の活性化にとっても重要であると認識しておりますので、国の補助事業への採択などの財政支援はもとより、技術指導等についてもなお一層努力してまいります」と、力強い回答をいただいたわけであります。
 沈滞する沿岸漁業の振興にと野母崎まで視察に行ってまいった串本漁協組合長ほか私どもは、大喜びをいたしました。そしてその後、水産庁やパテントを有する住友金属、実験操業中の大洋漁業へも再々出かけ、その実現方を伝えてまいりました。県水産課も極めて熱心に応援してくれ、水産庁も串本湾がその適地であることも認め、平成六年から始まる第四次沿岸漁場整備開発計画に向けて検討してみたいというところまでまいったわけであります。いま一歩のところであります。
 そして、他府県に先駆けてこれを本県に認めてもらうためにも受け皿づくりが不可欠とのアドバイスもあって、平成五年の予算で県にこれが調査費の要求をお願いいたしました。県が百万円、町が百万円、組合が百万円の調査事業であります。なぜ、県、町、組合がそれぞれ金を分担するのかと申しますと、県も町も組合も一体となって取り組むという姿勢を国に示すことが大切であるからであります。そして、県から見ましたとき、何もかも県におんぶするのでなく、町と組合が自主的、自立的にこの事業に取り組む覚悟も示したところであります。
 ところが、最終的にこの県の百万円の予算が削られました。一体なぜでありましょうか。組合長は、平均年齢六十四歳という高齢者漁業の限界を憂い、かつ低収入の実態を考えて、若い技術の進んだ漁業者の導入を図るためには沖合養殖は不可欠との信念で、この事業に向き合っております。最初のモデル事業が成功しますと、次々に自力でもふやす覚悟を持っているようであります。せっかく地元で盛り上がっている火を消さないでほしいのであります。町長も、組合幹部の多く出席する会合で積極支援を約束しております。知事も、本県の発展の一つの方向は海の活用にあると常々語られております。今回予算化されなかった理由はもっと大きな視点での配慮と判断があったと思うのでありますが、この沖合養殖事業は沿岸漁業の先端産業、ニューフロンティアであります。この際、大きな決断をお願いしたいのであります。
 次の点について農林水産部長にお尋ねします。このような地元の熱意を酌んでいただき、ぜひ積極的な対応をお願いするところでありますが、国に対し積極的に働きかけていただく等、今後どのように取り組んでいただけるか、県の考え方について意のある答弁をいただきたいと思います。
 次に、トロピカルフルーツガーデンを大島に。
 まず、平成五年度道路予算に大島架橋関係費を多く計上していただきましたこと、串本町民の一人として多くの皆さんとともに大変うれしく、知事初め当局の皆さんに深く感謝する次第であります。ありがとうございます。
 こうした架橋の動向を見て、町内の有志の皆さんが相集い、串本町里造都(リゾート)クラブをつくりました。「里造都」とは、里をつくって都となすの意であります。一昨年暮れにスタートし、約三十人が月一回ないし二回集まりまして、串本町のリゾート基地をいかに進めるか、ボランティアで毎回出席してくれる大阪在住のコンサルタント社長や民間企業の方も参加してくれ、熱のこもった論議が交わされております。
 紀南の地にあって、間近になった関西国際空港時代の到来や、高速道路の紀南延伸、新白浜空港のジェット化が、漠然とではありますが紀南も開けてくる体感となって、未来への期待が高まるのだと思います。行政が進める社会資本の整備の果たす役割は極めて大きいと思います。
 それに加えて、串本町が今リゾート元年と銘打って取り組んでいるふるさと特別対策事業が順調に進展し、総合スポーツ施設、分譲宅地、ホテル建設用地もほぼ完成して、ロイヤルホテルの進出も決定したことや、ふるさと創生一億円事業で掘削した泉源から摂氏四十度、毎分四百リットルの温泉が湧出したこともあって、地域開発への関心が高まってまいりました。
 一方、串本町の人口は今もって減少の歯どめがききません。若者の流出は、例えば串本高校卒業生約三百人のうち町内就職は十数名で、その大半は大学等への進学と都市への就職であります。つまり、町内に就職すべき産業がないのであります。もともとの地場産業である農林水産業は就業者の高齢化もあって衰退の一途をたどっており、わずかに観光産業が頑張っている現況で、ここ十年来、雇用力の高い企業誘致はほとんどないと言えます。山が迫って平地が少なく、地価も意外と高く、京阪神からの交通体系の未整備が新しい産業の立地を阻んでいるわけであります。
 したがって、町民所得も低下をたどっており、町民の購買力の減少で町内の商店街の歯抜け現象が著しくなってまいりました。過疎の進行は農林水産業にとどまらず、今や商店街に目立ってまいり、私は第二段階に入ったと思うのであります。こうしたことから、新たな産業おこしをしない限り、町の未来に夢と希望がなくなると深刻に考え始めております。
 幸いにも、リゾートやバカンスブームの影響で、しかも実質的な労働時間短縮の効果もあって、バブル経済の崩壊、景気低迷の中にあっても昨年の観光客は若干増加しており、串本町内の名勝地、橋杭岩や潮岬灯台、串本海中公園はにぎわっており、海中公園へは昨年四十九万人の来客がありました。
 大島架橋が実現しますと、大島の中に新たな魅力を加えることで紀伊半島周遊の観光バスは相当数入島することが予測されます。その新たな魅力施設は何かを検討しているのが、串本里造都クラブであります。新しい産業としての位置づけと雇用の増大を図り、新たな国際交流の拠点にまでならないかと考えております。
 ご承知のとおり、大島はトルコ軍艦エルトグロール号の遭難碑やトルコ記念館、アメリカ艦船レディー・ワシントン号の日本初渡来を記念した日米修好記念館などがあり、これらを総合したテーマパークのようなものを検討中であります。まだ実現するかしないかは全くわかりませんが、実現の可能性も踏まえて努力をしている最中であります。
 さて、前置きが大変長くなりましたが、里造都クラブの検討会の中で、大島は大変暖かく冬に霜もおりない恵まれた自然条件を活用し、紀北の岩出町にある緑花センターのようなものを紀南の緑花センターとして大島に造成してもらえないだろうかという声が出ました。既に京都大学の植物園があります。ただし、ここは雑草の研究が主であります。これに県の緑花センターや串本農協の花の試験地などをつくることで、さらに島民の方々が沿道に花を多く栽培してもらえば、すばらしい花の島になるということであります。
 こうした検討の最中に、たまたま私の友人であります県果樹園芸試験場の研究員からすごい提案が示され、一同感じ入り、大島架橋と同時にオープンできるよう県にお願いできないかということで、質問させていただくわけであります。
 提案のテーマは、トロピカルフルーツを利用した紀南地方のリゾート開発であります。主張は、「二十一世紀には必ず余暇時代に入り、紀南の持つ地理的、自然環境的優位性が見直されてくる。しかし、現状は受け入れ態勢が整っておらず、みすみすチャンスを逃がしている。トロピカルフルーツの産地化で開発を進めよう。そして紀南地方を日本のカリフォルニア、紀州の海岸をウエストコーストと呼ばそう」と訴え、その構想を述べております。
 特に、大島全島を亜熱帯果樹ガーデンにと提案し、ハワイ・オアフ島やマウイ島のトロピカルフルーツガーデンが大変人気が高く、具体的な紹介を行って、それとそっくり同じものをと提案しており、これら亜熱帯果樹は既に試験場でテストをしており、一部はハウス栽培にして実らせる可能性は十分にあるとしております。
 さらに提案を重ね、この際、京大植物研究所を串本町に返還していただいてトロピカルフルーツの中核とする案や、亜熱帯作物試験場にするとか、さらに京大、近大、県、町から成る亜熱帯果樹研究所を設置し、研究を深め、大島の町民も積極的に支援することでハワイに負けないトロピカルフルーツガーデンができると提案し、もし自分が行ってやれと言われれば行く覚悟があるようであります。
 ご参考までに、岡山県は同じくフラワー・アンド・フルーツ構想を平成五年度から三十ヘクタール、百二十億円をかけて建設することを決定しております。
 大島架橋の実現化が、地元にこのようなインパクトを与えているわけであります。当局におかれましては、夢のプランではなく実現可能な計画として調査を開始してほしいのであります。私ども串本里造都クラブでも期待を大きくしているところであります。ご所見を承りたいのであります。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの堀本隆男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 堀本議員にお答え申し上げます。
 県の産業構造長期ビジョンの改定についてでございます。
 最近の県内外の社会経済情勢の変化、また県内における交通網の整備を中心とした基盤整備の問題、また各種プロジェクトが進捗しつつあるこうした経済環境の中で、予測される社会経済環境の変化を的確に把握し、体系立った産業施策の展開を図るということが私は不可欠なことだと考えておるわけでございまして、新たに中長期的な視点に立って県経済を展望したビジョンを策定したいと存ずるわけでございます。
 そのグランドデザインとしては、国内はもとより世界の各地を視野に入れて産業展開を目指してまいりたい、そして新産業、研究施設の集積とともに、豊かな和歌山の自然と融合した、職・住・学・遊の近接した、県民の豊かさが実感できる「二十一世紀の和歌山の姿」の実現とともに、また持続的に産業基盤の整備を図っていく、そのための産業構築をデザインとして進めてまいりたいと考えておるところでございます。
 他の問題は部長から答弁いたします。
○議長(馬頭哲弥君) 商工労働部長中西伸雄君。
 〔中西伸雄君、登壇〕
○商工労働部長(中西伸雄君) お答えいたします。
 昭和五十七年三月に作成した和歌山県産業構造長期ビジョンは、鉄鋼、石油の二業種に大きく特化している工業構造、またこのことによる景気変動の影響を強く受ける県経済の体質の改善を図ることを課題として、県経済の安定成長の道を探るために策定したものでございます。このビジョンにおきまして、新産業の導入による県経済の活性化、既存工業の発展の芽の発掘、育成の二つの方向が提案されてございます。これを指針として、加工組み立て型産業の誘致促進、地場産業振興センターの建設、工業技術センターの再編整備等の施設展開を図ってきたところであり、成果もあらわれているところでございます。
 ビジョンの改定に当たっては、学識経験者、各界各層の方々のご意見をいただきながら、平成五年度で県経済の実態把握などのための基礎調査を行い、翌平成六年度において県経済の望ましい姿の実現に向けてのビジョン策定を行うという計画を考えてございまして、県の長期総合計画、また他の産業振興計画等の整合をも図りつつ進めたいと考えているところでございます。新たなビジョンの目標としては、おおむね十年間を展望したいと考えているところでございます。
 次に、本県経済の現況並びに製造事業所の減少と対策についてでございます。
 民間の調査機関によりますと、平成四年に一千万以上の負債で倒産した企業は百一件でございまして、その主な業種としては、卸小売業で三十五件、建設業で二十七件、製造業で二十件等となっており、その原因といたしましては、放漫経営、販売不振、業界不振等となってございます。また、地場産業の各事業協同組合からの情報によりますと、昨年一年間で、特殊織物で十五件、皮革で一件が事業を休止中でございまして、いずれも従業員五名以下の小規模事業者であると聞いているところでございます。
 「和歌山県の工業」平成三年版で事業所数の動向を見ますと、従業員四人から二十九人の事業所で減少し、三十人以上の事業所で増加しております。県全体で百四十七の減少となってございます。この中には地場産業である木材、家具、金属、皮革、繊維等の産業がありますけれども、これら事業所減少の主な原因としては、事業主の高齢化や後継者難、従業員不足等が考えられるところであります。このため、中小企業における労働力の確保のための雇用管理の改善の促進に関する法律に基づく事業を積極的に進め、職場環境等の改善に努めているところでございます。
 また、産業の国際化、業際化すなわち多角化、新分野進出等により業種間の境界が薄れる中、社会経済環境の変化に対応できる地域産業を育成するために、制度融資の拡充、販路・需要の開拓に努めるとともに、中小企業の最大の課題と言われる新技術・新製品の開発力不足に対応するため、地域産業技術の中核的な研究開発支援施設として工業技術センターの再編整備を進めているところでございまして、平成四年度の研究交流棟の竣工に引き続き、本館建設のための実施設計等に要する予算を今議会にお願いしているところでございます。
 今後とも、工業技術センター並びにテクノ振興財団を中心として、地域産業のハイテク化、技術の高度化を積極的に支援してまいりたいと考えてございます。さらに、企業用地の確保とともに、企業誘致に積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 企画部長佐武廸生君。
 〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 第四次長期総合計画における社会経済の実績と将来見通しについてのご質問にお答えいたします。
 まず人口につきましては、平成二年の計画人口百九万五千人に対し国勢調査人口は百七万四千人となり、二万人強の乖離がございます。しかし、平成元年から人口増に転じ、昨年は人口流入県となり、大変明るい兆しが見えてまいりましたものの、ご承知のとおり、人口推計に当たり重要な要因でございます合計特殊出生率は、本県を含め全国的に予想を上回る低下となってございます。今後、産業政策、住宅政策等、快適な生活環境を整備し、計画人口の達成に向け、引き続き努力してまいりたいと存じます。
 次に県内総生産については、平成二年の計画額二兆五千億円に対し実数二兆八千七百二十三億円となり、また一人当たり県民所得についても、計画額二百十四万九千円に対し二百二十三万九千円となってございまして、それぞれ計画額を上回っています。また、平成二年度工業用地の計画面積十八平方キロメートルに対し、土地利用現状把握調査では十九平方キロメートルとなり、若干計画面積を上回っています。しかしながら、工業出荷額については、計画額三兆二千七百十億円に対して、従業員四人未満の事業所を含まない実数は二兆五千十四億円と、計画額を下回っております。
 県内総生産等については、現時点においておおむね計画を達成する状況となってございますが、現在、経済環境は大変厳しく、予断を許さない状況にあると考えてございます。関西国際空港の開港、高速交通基盤の整備によるインパクトを最大限に生かした第三次中期実施計画を策定し、各種プロジェクトの推進により引き続き長期総合計画の目標達成に努めてまいりたいと存じます。
 次に市町村民所得統計についてでございますが、この種の統計は、地域の経済構造を把握し行政施策を進める上で重要な統計の一つでございます。こうしたことから、県においては昭和二十六年度から自主的な統計として県民所得統計を作成してまいってございます。
 一方、市町村に対しては、市町村民所得統計の手引書を配付し指導するとともに、毎年開催している市町村統計担当職員の研修会の場で作成方法等の説明を行ってきたところでございますが、今なおいずれの市町村においても作成されていないのが実情でございます。
 この統計は、作成主体として、議員お話しのとおり、市町村あるいは市町村と県との共同作業、また県独自による方法等がございますが、いずれにいたしましても、市町村のご理解を得ることが先決でございます。今後、市町村と協議を重ねながら、その実現に向け努力をしてまいりたいと存じます。
 以上です。
○議長(馬頭哲弥君) 農林水産部長中村 昇君。
 〔中村 昇君、登壇〕
○農林水産部長(中村 昇君) 大規模沖合養殖プラントの導入についてお答えを申し上げます。
 議員お話しのように、大規模沖合養殖の導入については、地元串本町では国への働きかけや実験操業中の現地の視察もされてございます。地元では、平成五年度調査事業として検討委員会を設け、事業規模、採算性、設置場所の選定等の諸問題の調査検討を進め、具体化に向けて取り組みがなされることとなってございます。この検討委員会に県並びに水産試験場も参画をしてまいりたいと考えてございます。
 県としては、平成六年度からスタートする第四次沿整計画の中で補助事業に採択されるよう働きかけているところでございますが、今後とも国に対して要望を続けてまいりたいと思います。また、技術指導はもとより財政支援等についても検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、議員ご提案のトロピカルフルーツガーデン構想については、大島地区の離島振興計画の中で「すぐれた自然環境や観光資源などを活用した観光産業の発展を目指す」とされておりますように、観光農業の一環として大変意義のある提案として受けとめてございます。当地区のトロピカルフルーツの産地化については、風、水等の環境、立地条件など考慮しなければならない問題もありますが、温暖多雨といった気象条件から栽培には支障がないものと考えてございます。
 しかしながら、地元の熱意、用地の問題、受け入れ態勢、事業主体、さらには運営体制、資金問題等、大きな課題もございますので、今後、関係機関や地元、町の意見を十分承りながら検討してまいりたいと存じます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(馬頭哲弥君) 以上で、堀本隆男君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は三月十五日再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
○議長(馬頭哲弥君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後一時五十六分散会

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