平成5年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(森 正樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(馬頭哲弥君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番森 正樹君。
 〔森 正樹君、登壇〕(拍手)
○森 正樹君 議長よりお許しをいただきましたので、一般質問を行いたいと存じます。
 まず初めに、関西国際空港の諸問題についてお尋ねをいたします。
 私たちの待望久しかった開港まで、あと一年有半まで迫りました。最近のマスコミ報道を見ておりますと、関西国際空港にかかわる報道の取り扱われない日がないと言っても過言ではないほど頻繁に取り上げられているのでございます。それだけ、関西国際空港問題が関西にとって最重要課題であり最大関心事であるということのあらわれだと存じます。なかんずく我が和歌山にとってはなおさらであることは、言うまでもございません。私は、さきの十二月議会でも関西国際空港問題について言及いたしました。そして、今二月議会において引き続き触れさせていただくわけでございます。
 ところで、私は関西国際空港問題に関しまして、これまで一貫して和歌山側の立場から考え、発言をしてまいりました。今回は少し切り口を変えて論じてみたいと思います。もちろん、本県の県益を追求するという立場はいささかも変化はございませんが、全体構想実現の問題をめぐる質問に関しましては、関西全体の立場に立って進めてまいりたいと存じます。もっとわかりやすく単刀直入に申し上げれば、中央と地方の対立という構図の中で地方の視点に立って考えていくということでありまして、地方の逆襲という視点で物申し上げたいのでございます。
 歴史作家・司馬遼太郎氏は、「街道を行く」第三十七巻「漱石と田舎」の章で、日本人の都へのあこがれの強さにつきまして次のように述べています。
 明治後の東京が異常な憧憬を地方からうけてしまったことについてである。
 当時の英国の田園に住む紳士階級にとって、首都のロンドンは単に、金融や商工業、あるいは政治をするためのいわばビジネスの機能であるにとどまり、特別な尊敬の対象ではなかったはずであった。むろん、
「私はロンドンっ子です」
 といったところで、自慢のたねにはならなかった。
 アメリカもそうらしい。アメリカのある日本学者がいった。「日本人のふしぎは、田園(いなか)を一段下にみることですね。アメリカ人はニューヨークに住むよりも、田園に住みたがります。日本人の場合、ひょっとすると逆ではないでしょうか」
 ひょっとするとどころではない。こんにちの日本ほど東京への一極集中のはなはだしい時代はない。アメリカの若い人が、ワシントンD・Cにあこがれて上ってくるなどという話はきいたことがないのである。
 都あこがれという日本人の習癖は、はるかなむかしながら、八世紀初頭に出現した平城京(奈良の都)のころにさかのぼるべきなのかもしれない。
 当時は商工業が未発達で、都市の必要などはなく、都市は存在しなかった。でありながら、唐の長安の都の三分の一の規模の大都市が大和盆地に出現したのである。青や丹で塗られた宮殿・官衙あるいは都城の楼門は圧倒的な威容を誇った。
 日本じゅうが、まだ竪穴住居や掘立小屋に住んでいたころだったから、多少の謀反気をもっていた地方地方の土豪も心をくじかれたに相違なく、要するに津々浦々の鄙どもは、文明に慴伏させられたのである。首都尊敬という型は、このときにはじまったかとおもわれる。
 こういうふうに述べられています。
 どうも、日本人といいますのは押しなべて都へのあこがれというのが強いようでございまして、中央志向・地方べっ視の考え方が体臭のように身についているのかもしれません。これは、高校を卒業した若者の多くが一たんは東京へ出たがったり、また働き盛りのサラリーマンも東京本社勤務を望むというような点にもあらわれているのではないかと思います。
 これはまた中央官僚にも言えることでありまして、地方べっ視・中央偏重の考えに凝り固まっている中央省庁の役人たちの頑迷固陋さを示す発言を紹介いたします。これは、第三次行革審「豊かなくらし部会」の中での審議委員に対する各省庁の説明の場での発言であります。
 「『豊かなくらし部会』や地方分権特例制度小委員会の審議の席上でも、──ここからですけれども──『国会議員や中央官庁の官僚にも質の悪い者はいるが、地方の質ははるかに低い。そういう人たちに大きな権限を渡したら、何が起こるかわからない。地域エゴ丸出しの政治が全国で展開することになりかねない』といった発言が、各省庁の代表の口からたびたび飛び出した」、これは同じく審議委員をしていた人の本でございますので、間違いのないことだと思います。私に言わせれば、こんな傲慢な発言を堂々と公の場でしてはばからない官僚こそ、質の悪い、質の低い連中だと言っても過言ではないと思います。
 中央偏重・地方切り捨ての典型的な例がありますので、紹介をしたいと思います。それは、新幹線網の建設と計画についてであります。
 よく言われていることでございますけれども、九州七県の一千三百万人の長い間の念願でありました九州新幹線が、一昨年秋、八代-西鹿児島間の一部で工事に着手をいたしました。昭和四十年代の早い時期に建設を要望する声が地元で上がり、運動を進めてこられたわけでございますが、実に三十有余年の歳月を要したのでございます。地元民の宿願実現に向けて、今やっと第一歩を踏み出したというところであろうかと思います。一方、東北・上越新幹線と東海道新幹線を結ぶ上野-東京間の新幹線建設工事は、昭和五十八年八月、工事抑制の決定が下されたにもかかわりませず、それから八年後の平成三年春、営業運転が開始されました。
 片や、九州七県挙げての長年の夢が緒についたばかりであり、一方ではどれだけの緊急性、必要性があるのか。上野-東京間わずか三・六キロメートル──これは在来の京浜東北線や山手線の乗りかえで行き来が簡単にできるのであります。鉄道だけに限っても、全国にもっと緊急性、必要性を有する計画が山積しておりますし、多くの要望が出されている中で、このわずか三・六キロメートルに一千三百十七億円もの巨費が投じられたわけであります。一説によりますと、この一千三百十七億円は九州新幹線建設費よりも高いということでございますが、そうした巨費を投じる運輸省のバランス感覚のなさ、東京中心主義、地方切り捨ての論理を指摘しなければなりません。
 この霞ケ関の中央官僚たちの東京中心主義、地方切り捨ての論理を証明する資料がもう一つありますので、紹介をしたいと思います。
 議長のご了承を賜りまして、先輩・同僚議員の皆様のお手元には既に配付をさせていただいております。議長のお許しをいただいて、仮谷知事以下、三役の皆様にもお渡しをしたいと思います。(資料を渡す)全部読んでおりますと時間がございませんので、特に二枚目の四行目からでございます。これもやはり、先ほどちょっと申し上げました第三次行政審「豊かなくらし部会」での運輸省の説明の記録でございます。
 「運輸行政は、このように全国ネットワーク(統一性)を背景として広域的(広域性)かつ総合的に行われなければならない性格を持っていることから、一部の権限についてこれを特定の地方公共団体に委譲したり、あるいは交通関係社会資本整備のための財源を地方の一般財源化し、地方が独自の判断でこれを支出できるようにすることは好ましくないと考えられる。 すなわち、交通問題に対し地方ごとに異なる取り扱いを認めた場合、空港、港湾等の交通関係社会資本の整備が全国的視点(統一性)から計画的に行われなくなる可能性があるばかりか、全国的視野(統一性)に立った運輸事業の円滑な運営の確保を妨げるとともに、極端な場合には空港、港湾等交通関係社会資本の整備につき、地域間で極めてアンバランスとなる事態が現出し(公平性)、我が国経済社会の均衡ある発展を阻害する恐れもある」。これは、地方分権特例制度についての意見を求められた中で運輸省の幹部が答えた言葉でございます。
 繰り返しますけれども、この中で特に「交通問題に対し地方ごとに異なる取り扱いを認めた場合、空港、港湾等の交通関係社会資本の整備が全国的視点(統一性)から計画的に行われなくなる可能性があるばかりか、全国的視野(統一性)に立った運輸事業の円滑な運営の確保を妨げるとともに、極端な場合には空港、港湾等交通関係社会資本の整備につき、地域間で極めてアンバランスとなる事態が現出」すると、そのように言っているわけであります。
 まさに、この言葉こそ自語相違も甚だしいと言わざるを得ません。なぜならば、今私が問題にしております関西国際空港は、空港整備法第三条には「第一種空港は、運輸大臣が設置し、及び管理する」というふうに明記されているのであります。これこそまさに、今の運輸官僚の言った言葉に沿って定められた法律で、趣旨は一貫しているわけでありますけれども、残念ながらその後、この空港整備法には「前項の規定にかかわらず」という第二項が加えられるに至りました。
 本来、第一種空港は国の責任において設置すべきものでございます。運輸省幹部自身が豊かなくらし部会の中での説明で、地方ごとに異なる取り扱いを認めるならば、社会資本の整備が計画的に行われないし、また地域間でアンバランスが生じるし、我が国経済社会の均衡ある発展を阻害するおそれがあると言っている一方で、関西国際空港に関しては関西国際空港株式会社という形で地元に押しつけているのであります。
 よく言われていることでございますが、市民の足となっております路線バスのバス停の移動や新設といった地域の日常的なささいな事柄まで、その許認可権を握って放さない。バス停の移動など、運輸省の人たちに事情がわかるわけはないわけです。これこそ、まさに都道府県知事や市町村長の方が事情がよくわかって、その許認可の適任者だと私は思います。
 一方で、国の基幹的施設とも言うべき第一種空港の関西国際空港の建設につきまして、地元に大きく負担を負わせているという事実があるわけでございます。この第一種空港こそ、国がそのすべてを握って、全責任において設置し管理すべきであると私は思います。
 もちろん、誤解のないようにここでつけ加えておきたいと思いますけれども、山中昭栄総務部長初め和歌山県庁に出向して来られている皆さんは、そんなことはない、地方の実情もよくわかっていただいて、極めてバランス感覚にすぐれた優秀な官僚であると私は信じております。またこれから国へ帰られましても、和歌山のためにあるいは地方のために一肌脱いでくれる方であるというふうに信じてございます。
 今ここで私が問題にしておりますのは、従来から言われていることですけれども、地方分権を求める声に対しまして、省庁によって態度がいろいろあるわけですけれども、特に運輸・文部の両省が権限委譲はすべて拒否だという非常にかたくなな姿勢だと言われております。これは、運輸・文部両省が地方への浸透度が非常に薄くて足場の弱さからくる恐怖心によるものだと、これも先ほどの本に審議委員の一人が述べておりました。
 まだまだ言いたいことがございますけれども、本日の議論のテーマは関西国際空港でございますので、本論に戻したいと思います。
 ところで、最近、関西国際空港を取り巻く報道は非常に悲観的なものが多いように思います。例えば、先般来も服部関西国際空港株式会社社長が述べておられましたけれども、「関西の人たちは『全体構想を応援する』とは言うが、自らはだれも(事業主体となる)選手にならない。今のやり方なら、実現可能なプロジェクトとは言えない。当社は決して"選手"ではない」という形で、全体構想の事業の中で関西国際空港株式会社が主体になるのは難しいということを明言したわけでございます。
 また、全体構想調査費の分担について関西の財界・官界、関西国際空港株式会社の意見がまとまらない姿を見た運輸省は、これ幸いと、「地元に熱意がない」との理由でボーリング調査費の計上を二年続きで見送ったということが報じられております。さらには、このような状況に危機感を持った宇野関西経済団体連合会会長の「調査費八十億円は地元で負担するから国は早期着工の決定を」との発言も報じられておりました。
 このように、関西国際空港をめぐる情勢はまことに厳しく、前途多難を思わせるものがございます。そこで、このようなもろもろの状況を踏まえまして、当局に数点にわたりお尋ねをしたいと思います。
 このようなさまざまな状況を踏まえて、全体構想の実現のために国に対してより大きな力で対抗していかなければならない、特に運輸省に対して強く当たっていかなければならないと思います。関西が財界や民間団体すべてを含んで一体となって取り組みをすべきでありますけれども、関西国際空港のスタートの時点からこの問題にかかわり、今も現職におられるのは、仮谷知事、あなたお一人でございます。あなたがこの全体構想実現の音頭をとって全員を引っ張っていくべきだと、その責任と資格があると私は思います。
 知事はかつて、国内便の確保について「政治生命をかける」と言われました。全体構想実現は国内便の確保と同等もしくはそれ以上の重大問題でございます。知事、あなたは全体構想の実現のために、同じく「政治生命をかける」くらいの決意で取り組んでおられるものだと私はかたく信じております。そこで、この問題について今後取り組む知事の決意のほどをお聞かせ賜りたいと存じます。
 第二に、二年続きで全体構想ボーリング調査費計上が見送られましたが、このことについてどのように対応していかれるのか、お聞かせを願いたいと思います。
 第三に、全体構想調査費は八十億から百億と言われておりますけれども、この捻出について今後の見通しを承りたいと思います。また、宇野関経連会長は地元が負担金を出すことを意思表明したわけでございますが、こうした意思表明を既成事実として、今後ますます運輸省は地元である関西に対してさまざまな負担を押しつけてくるのではないかという心配をいたします。その点についてもお願いをしたいと思います。
 次に、国内便の大幅確保に触れたいと思います。
 関西国際空港の国内線を一便でも多く確保し充実させることは、本県民の利便性はもとより、乗り継ぎによる国際線の需要をも増大させる相乗効果も期待でき、結果的に関西国際空港への航空需要を高め、全体構想の実現を加速させるものであると存じます。
 ところが、大阪空港にアジアなど近距離国際線と現在就航中の国内線の便数を残してほしい、また営業時間も一時間か二時間の延長が望ましい──これは伊丹商工会議所等六団体が航空会社や運輸省に陳情したときの発言でございます。近距離国際線も残してほしいというのは若生正池田市長が発言したそうでありますが、そうしたことが新聞に報道されておりました。「今さらよくあんなことが言えたものだ」と、ある応対した運輸省の幹部は言ったそうでありますが、大阪空港周辺の身勝手さ、不誠実さはこの際不問に付しておきたいと思います。彼らの動きは関西国際空港の国内線の大幅確保に確実に脅威を与え、その足並みを乱す動きであると思います。
 一方、関西国際空港の着陸料の問題ですが、例えばジャンボ機の場合、大阪空港で六十万円、成田空港では九十万円だと聞いております。この両空港でも海外の国際空港をはるかに上回る高さでございますが、関西国際空港の場合はそれを上回ることになるかもしれないとも報じられております。また、アクセス交通の利便性の面を理由に、大阪空港より不便だという声が航空会社や一部の人たちの間にあります。
 以上のようなさまざまな点から、関西国際空港における国内便は、目標の七十便に対して今のところ二十数便しか確保されていないというふうに報じられております。大阪空港周辺の動きはともかく、国内便確保に向けての運動は、純粋に関西国際空港の機能充実を願うオール関西の立場で取り組むべきものであると考えます。この点についてどう取り組むおつもりであるのか、企画部長のお考えを聞かせていただきたいと思います。
 ところで、先般、知事は関西の自治体、経済界、関西国際空港株式会社で構成するポートセールス団の団長として沖縄へ出向かれ、関西国際空港と那覇を結ぶ路線の開設に向け、精力的に活動を行ってこられたと聞いております。関西国際空港への国内便の確保は、大阪空港との兼ね合いなどから関係諸団体の足並みのそろいにくい状況の中ではありますけれども、オール関西によるポートセールスが実施されたことは知事のリーダーシップのたまものだと、そのように推察をいたします。このようなポートセールスが、一回限りではなくて、国内の幹線空港といいますか、重立った主要空港に対して継続的、連続的に行われるよう、知事、今後もぜひともリーダーシップをとっていただきたい、そのように期待をいたします。
 そこで、一回目のポートセールス団団長として実際に参加された知事の感触のほどをお聞かせいただきたい。また、今後のポートセールスの計画等についても聞かせていただきたいと思います。
 次に、紀淡海峡大橋構想についてお尋ねをいたします。
 先日、建設省近畿地建と和歌山県、兵庫県の三者が時を同じくして紀淡海峡連絡道路の現地調査に入ることを発表いたしました。第十一次道路整備五箇年計画においても大阪湾環状道路の一部を構成する道路として位置づけられたところであり、将来的には第二国土軸を構成する一部として重要な位置を占める道路であるわけでございます。もしこれが実現いたしますならば世界一の架橋となりまして、本県における二十一世紀のビッグプロジェクトとして県民の大きな期待が寄せられるところであります。百八万県民の夢がこの紀淡海峡十一キロメートルにかかるのであります。
 我が国のみならず世界にも類例を見ない長大橋となること、また極めて潮流の速い海峡でございますし、外洋に面して風速、風力等が大きいこと等々、技術的に非常に難しい問題を抱え、今後クリアしていかなければならない点が多々存在することはよく存じておりますが、この紀淡海峡大橋の実現は、限界に達している一軸一極集中型国土構造を解消し、二軸双眼構造の望ましい国土形成に資するものとなると思います。第二国土軸上に展開される他の多くのプロジェクトが有効に機能することも考えられますし、西日本経済文化圏の創出にもつながると思います。
 そこで、今予算に一億五千万円の調査費を思い切って計上されたことについて、仮谷知事にこの事業にかける意気込みについて率直なご意見を語っていただきたいと思います。あわせて今回の一億五千万円の調査費に関して、どのような調査を行うものであるのか、土木部長の見解を賜りたいと思います。
 次に、町並み整備、都市景観整備についてお尋ねをいたします。
 明年完成する和歌山マリーナシティを主会場として世界リゾート博が開催されますとともに、関西国際空港の開港に伴い、和歌山市を中心として県内主要都市が今後さまざまな意味で国際化の対応を迫られてまいります。すなわち、国際都市と呼ぶにふさわしい町並み景観、都市景観の向上がそれらに対して求められてくると思います。
 そこで、お尋ねをいたします。第一に、品格と潤いのある、またゆとりのある町並みを創出するために総合設計制度、市街地住宅総合設計制度の活用を強力に推進すべきであると思いますけれども、いかがでしょうか。第二に、県下七市を中心に都市景観条例の制定を促進して各都市のメーンストリートの景観の向上を図っていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。以上二点、土木部長のご見解を賜りたいと思います。
 最後に、企業メセナ(フィランソロピー)について触れてみたいと思います。
 国際経済商学学生協会(アイセック)東京大学委員会が行った「企業メセナ活動に対する学生の意識調査」によりますと、調査に応じた学生の六五%がメセナ(フィランソロピー)について知っており、八五%が企業のメセナ活動の必要性を認めていることが報じられておりました。しかしながら、一般にはまだまだ企業メセナ(フィランソロピー)について理解は進んでおりませんし、これからだというのが実情のようでございます。
 そこで、私も勉強不足でございますし、辞典類からの抜粋で申し上げますと、「メセナ」とは、フランス語で文化芸術活動に対する支援を意味し、ローマ帝国の創成期にメセナスという重臣が文化や芸術を保護したことからきた言葉だそうでございます。
 主に企業は二通りの方法で支援活動を行うとされ、一つは直接的方法で、冠コンサート、冠イベントといった、企業名をつけたいろんな催しに寄附を行うもの、もう一つは、基金を設定して財団をつくり、そこを通して支援を行うという二つの形があるそうでございます。
 また「フィランソロピー」は、英語で慈善の意味、語源的にはフィランソロピーの「フィル」が愛、「アンスロピー」が人類で、まあ人類愛ということになりますけれども、欧米では個人や団体が教育、研究、医療、福祉、環境保全、芸術、そうしたさまざまな問題に対して奉仕活動を行ったり寄附金を拠出する伝統がありますし、企業もこれに直接参加したり、財団などを通じて間接的に参加したりしています。アメリカでは、一九一〇年から三〇年にかけて特にその傾向が顕著であったと言われております。
 有名なカーネギー財団、ロックフェラー財団、フォード財団、ブルッキング研究所などはすべてこの時代に設立をされておりますし、現在は全米企業の二〇%が何らかの形でこの企業メセナ(フィランソロピー)に参加、関与をしていると言われております。また、IBM、アメリカン・エキスプレス、ペプシ、チェース・マンハッタン銀行、モービル、ゼロックスなどは、この慈善活動、企業メセナに非常に熱心な企業だということで知られております。一九八八年の数字でありますけれども、アメリカのGNPの二%に相当する九百三十七億ドルが慈善活動に投じられているそうでございます。
 「億万長者の贈り物」という本がございまして、これによると、アメリカ合衆国の美術館や博物館がほとんど私立で運営をされております。有名なナショナル・ギャラリー・オブ・アートは国立でございますけれども、それ以外は、例えばメトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、さらにはイザベラ・ステュワート・ガードナー美術館等々がいずれも私立で運営をされています。これらはすべてアンドリュー・カーネギー、ジョン・D・ロックフェラー、アンドリュー・W・メロン、ジョン・ピエモント・モーガン、イザベラ・ステュワート・ガードナー等々、一九一〇年から一九三〇年あたりで巨万の富を築いた大富豪の肝いりでできたものでございます。
 その代表的人物の一人、カーネギーホールで有名でございますが、アンドリュー・カーネギーのことについてちょっと引用してみたいと思います。
カーネギーは、若いころから「余剰な富は篤志活動のために使いたい」と決意し、折に触れて「自分が満足できて、心の豊かな暮らしさえできれば、物質的に貧しいことは、必ずしも不幸であるとは限らない」と語っていた。彼の言葉の端はしには、マタイやルカによる福音書にみられる、「貧しいあなたたちは幸せである。神の国はあなたたちのものであるから」といったようなキリストの言葉に共通するものが感じられる。
 しかし、カーネギーの著書『富の福音』を見ると、彼がプルタルコスのたとえ話を引き合いに、金をばらまくだけの慈善は、かえって乞食を増やすことになるとして、その場しのぎの寄付を戒めている事実に遭遇する。困っている人に当座の援助を与えるのではなく、彼らが職につけるように教育を施し、建設的な生き方を示唆するのが現代アメリカに見られる弱者救済の基本理念であるとすれば、アンドリュー・カーネギーこそは、まさに、それを具体的に体系化して実行した人物と言えるのではないだろうか。
 アンドリュー・カーネギーという男が、なぜ、その晩年をフィランソロピーに賭けるようになったのかを考える場合、十九世紀、ヴィクトリア王朝時代に英・米を通じて顕著に見られた禁欲主義、キリスト教的倫理観の支配、資本家の良心によって理想社会を実現しようとした空想的社会主義の影響など、様々な時代要因が浮かび上がってくる。
 しかし、おそらく、その最も直接的な動機となったのは、少年のころに見た、失業したためにすさみきってしまった父親の姿と、待遇改善を求めて荒れ狂う労働者たちの必死の形相が重なったことからくる、資本家となった自分への深い自責の念だったのではないかと思われる。
そういうふうに述べられております。
 我が国におきましても、社団法人企業メセナ協議会が結成をされまして、一九八八年には第三回日仏文化サミット──既に三回開かれておりますが──が開催されるなど、最近活発に活動が進んでまいりました。このほかにも、経団連による一%クラブや芸術文化助成財団協議会、その他各企業の独自の活動として各種財団の活動がございます。
 そこで、お尋ねをしたいと思います。
 これら企業メセナ協議会や芸術文化助成財団協議会、あるいは一%クラブなどに参加している企業は一体どの程度に現在なっているのか、また県内企業はあるのかどうか、また企業独自でメセナ活動を行っているものがあれば、あわせてご報告を賜りたいと思います。
 最後に、最近の企業メセナに関する動きについても同時にご報告をいただき、また地方自治体としてこの企業メセナ(フィランソロピー)に今後どうかかわりどう取り組んでいかれるのか、ご所見を賜りまして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの森正樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
○知事(仮谷志良君) 森議員にお答え申し上げます。
 関西国際空港の全体構想の実現についてでございますが、お話ございましたように、今、非常に厳しい状況にあるのが現実の姿だと思いますし、また、第一種空港だから国がやるべきだという議論があるわけでございます。
 私もそう思うけれども、さきの第六次の空港整備五箇年計画で示された課題につきまして、関西国際空港全体構想早期実現期成会がございまして、私たち関係知事、市長、財界が代表理事になってございますけれども、あらゆる角度からこれを真剣に検討していかなければならないと感じておりまして、その上に、関西が政治力をもう少し結集しなきゃならないんじゃないかということを痛感するわけでございます。
 現在、直接の地元でございます大阪府を中心に、大阪市、大阪商工会議所、関西経済連合会の首脳により定例の懇談会が設けられており、その中でも関西国際空港問題を取り上げて意見交換が行われておるということを聞いておりまして、非常に力強く思うし、期待もしておるわけでございます。
 いずれにしても、全体構想の早期実現につきましては、関西の政界、経済界、官界の総力を結集して取り組んでいかなければならないと思っておるわけでございまして、こうした面において私も努力させていただきたいと思っております。
 それから、関西国際空港についてのポートセールスでございます。
 国内線の確保を難しくしている原因の一つに、私は関西国際空港のPR不足ということが問題点ではないかと思っておるわけでございます。これを解消するために、出資しておる地方公共団体十二団体、商工会議所、関西経済連合会、関西国際空港株式会社が一体となってポートセールス団を組織し、第一回として、去る二月十二日に私が団長となって沖縄を訪問してまいったところでございます。
 沖縄におきましては、各界各層の方々とレセプションを開催するとともに、沖縄県知事、経済界代表者、沖縄総合事務局長等を訪問し、関西国際空港の持つさまざまなメリットについて紹介を申したわけでございます。すなわち、今度できる泉南の関西国際空港は日本の空港の中でも一番すぐれた空港なんだ、二十四時間空港なんだ、そしてまた国際便と国内便の乗り継ぎについては、成田のようなものではない、階段を上りおりするだけで国内線、国際線に移れるんだ、また、泉南の関西国際空港というとへんぴな交通不便なところのように思うかもしれないけれども、伊丹のようにリムジンバスや車だけではなしに、JRも南海電車もあるし、高速道路も近畿自動車道紀勢線と湾岸道路の二本あるんですよ、海からは神戸から船で来られるんですよというふうに申し上げたわけでございまして、沖縄におきましても相当な理解が得られたと思います。
 ただ、向こうへ行って感じましたことは、関西国際空港ができる前と現在と大分事情も変わっておるということでございます。その第一点は、日本の各地方空港が国際空港化し、九州地方ではもうほとんど国際空港になっておる。韓国や香港、シンガポールへ飛んで、そこから連携しておる。成田には必ずしも行かない。また日本海の方では、ロシアとの航空路線をつくっておる。そのように大分変わってきつつございます。そしてまた、航空不況というものが非常に厳しく、日航や全日空の支店長等に会いましたけれども、そうした感じがひしひしとしたわけでございます。競争相手がふえてきておるなということも実感した次第でございます。
 そうした点から、今後ともなお一層関西国際空港を積極的にPRしていかなきゃならないんじゃないかと思うわけでございまして、今後、このように四者が組んで行うポートセールスを北海道と福岡でやる計画になっておるわけでございます。
 それから、紀淡海峡連絡道路の実現について県はどう取り組むかということでございます。
 私は、このたびの現地調査は非常に喜ばしいことであり、また頼りにしておったことでもございます。これは、これまでの第二国土軸構想推進協議会のご努力、また県議会の皆さんのご努力、また紀淡海峡交流会議を設立して国等の関係機関に積極的に働きかけてきた大きな成果だと思っておるわけでございます。
 お話のとおり、この道路は本県にとって二十一世紀のビッグプロジェクトであり、本県のさらなる活性化につながるものだと感じておりまして、その実現のために調査費を計上させていただいたわけでございまして、積極的に取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 企画部長佐武廸生君。
 〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 関西国際空港に関連するご質問にお答えをいたします。
 まず、関西国際空港の全体構想に関するボーリング調査及び調査費の問題についてでございます。
 関西国際空港の全体構想に関する調査については、議員ご指摘のとおり、ボーリング調査が運輸省の概算要求に盛り込まれながら見送られるなど非常に厳しい状況でございますが、一方、全体構想を推進する上で非常に重要な資材供給調査等が認められるなど、一定の前進がございます。今後も、ボーリング調査を含め、全体構想の実現に向けて必要な諸調査を国と関西国際空港株式会社において引き続き進めていただけるものと存じますが、所要の調査費の獲得に向け、関西挙げて強力な支援体制で臨んでいかなければならないと考えてございます。
 次に国内便の確保についてでございますが、関西国際空港株式会社が設定している七十便の確保につきましては、議員お話しのとおり、非常に厳しいものがあると聞いてございます。このことは、大阪空港の存続、着陸料金の問題、飛行経路の問題、さらには関西国際空港の利便性に対するPR不足等、さまざまな要因が考えられますが、極めて深刻な昨今の世界的な航空不況が大きな要因ともなってございます。
 また、議員ご質問のように、大阪空港周辺一部関係者の中で種々の議論がなされているようでございますが、運輸省におきましては、関空建設の経緯を踏まえ、開港時には大阪空港のジェット機の離発着枠百回分を関空に移すとともに、国際線の一元化はもとより、国内・国際のハブ空港としてふさわしい国内主要路線の設定に向けて協議検討が続けられると伺ってございます。また、国内便についての課題の一つである着陸料につきましては、少なくとも大阪空港と同じレベルにしていただくよう、国初め関西国際空港株式会社に要請してまいりたいと存じます。
 本県といたしましても、県議会のお力添えをいただきながら、引き続き国初め航空会社に対して、東京便はもとより全国の主要都市と数多くネットワークされるよう強く要請してまいりたいと存じます。
 次に、ポートセールスの今後の計画についてでございます。
 先ほど知事から答弁いたしましたように、関西国際空港への国内便確保の一つの方策として、関係自治体、経済界、関西国際空港株式会社が一体となってポートセールスを実施してございます。
 第一回は、本県知事が団長として沖縄を訪問したところでございますが、第二回としては、来る三月二十五日に大阪商工会議所の安倍川副会頭を団長として札幌に訪問する予定でございます。また第三回としては福岡を予定してございまして、いずれも沖縄同様、よりよい成果が挙げられるよう参加団体と一致協力し、関西国際空港のPRを行ってまいりたいと考えてございます。
 今後とも、関係自治体、経済界とも協力しながら、また本県独自においても県議会のお力添えをいただきながら、関係府県に対してポートセールス活動を行い、関西国際空港への国内便の確保に向けて積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) お答えを申し上げます。
 まず紀淡海峡大橋の調査費の件でございますが、このたびの紀淡連絡道路調査については、紀淡海峡の幅が広く、現在世界最長である明石海峡大橋をさらに上回るということから、技術的に架橋が可能かどうかを判断するための現地調査でございます。国及び兵庫県、和歌山県が連携して数年をかけて調査を進めることとし、県は主として現地におけるデータの収集を行い、国はそれらを受けて技術的、経済的検討を行うということとしております。
 現地での調査項目としては、気象、海象、地形、地質、環境等でございます。具体的には、気象については風向、風速、地震の観測、海象については潮流、潮汐等の調査、環境については環境アセスメントに必要な種々の現況調査となってございます。
 それから、都市景観、町並み景観の整備についてのご提言についてでございますが、まず総合設計制度、市街地住宅総合設計制度の導入でございます。
 市街地の町並み形成に当たり、建築基準法に基づく総合設計制度は、敷地内に広場、公園等に準ずる空地を提供していただくとともに、容積率等を緩和して土地の有効高度利用を促すというものでございまして、効果的な制度と考えております。
 本県でも既に二カ所実施されておりますが、今後、市街地住宅総合設計制度も含めて、中心市街地を重点として積極的な活用を図っていく必要があると考えております。この制度は、市街地環境の整備改善を図る上で民間の建築活動を計画面で誘導していこうとするものであります。したがって、建築を予定する建築主及び設計者の理解と協力が必要でありますので、制度のPRに努めるとともに、和歌山市及び関係機関とも十分協調しつつ制度の活用を推進してまいりたいと存じます。
 次に、都市景観条例の制定でございます。
 都市の幹線街路の整備を進めるに当たり、都市が持つすぐれた自然の景観や都市の軸となる道路の景観、また大規模建築物に対する市街地の景観等に配慮をして町の発展と調和を図ることは、二十一世紀を目指した質の高い町づくりにとって欠くことのできない重要な要素であると考えます。
 県下においても、風致地区内における道路の整備において景観に配慮をしたり、地区計画や建築協定制度の活用により、建築物の形態や色彩に統一的な手法を用いることなどによって一定の効果が見られるところでありますが、さらに推進をするためには都市景観条例等の制定は有効なものと考えます。今後、関係市町や専門家のご意見も十分にお聞きしながら、条例等の可能性について探ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 知事公室長市川龍雄君。
 〔市川龍雄君、登壇〕
○知事公室長(市川龍雄君) 企業メセナ協議会の概要でございます。
 社団法人企業メセナ協議会は、平成二年二月に加入企業六十社により設立され、平成四年十二月現在では正会員百七十九社、準会員三十八社、合計二百十七社が加入していると聞いてございます。当協議会の主な活動でございますが、企業による芸術文化支援についての啓発普及を初め、文化団体からの対企業要請の窓口、海外の同種の団体との交流など、幅広く活動されてございます。
 次に芸術文化助成財団協議会は、昭和六十三年十一月に設立され、現在十九の財団が加入し、加入の各財団はそれぞれ国内外の芸術文化活動を助成し、我が国の文化の向上発展に寄与されてございます。
 また一%クラブは、企業の経常利益の一%を文化支援を含めた社会貢献活動に充てることを目的に、社団法人経済団体連合会が提唱した企業クラブで、国際貢献など幅広い分野で情報の交換、提供が行われてございます。
 なお、本県に所在する企業の加入状況については、県内に工場、支社、営業所等がある企業が五十一社加入していると伺ってございます。
 次に、独自のメセナ活動を行っている事例については、芸術文化助成財団協議会加入の各企業が設立した財団が、それぞれ独自にまたは共同で地域文化活動を支援してございます。本県では、平成三年度に紀伊の国オペラ実行委員会が東洋信託文化財団から、平成四年度には木の本獅子舞保存会外二団体が花王芸術文化財団、東洋信託文化財団及び第百生命財団から助成を受けてございます。
 地方自治体としての企業メセナ、文化芸術支援の取り組みについてでございますが、メセナ活動が継続して繰り広げられることが芸術文化創造の新たな活力を生み出す大きな支えでございますので、今後も企業の積極的な支援活動を期待してございます。また、県単独の支援施策として、国民文化祭を初め県民文化祭参加団体等に対して、従前より助成を行ってございます。
 今後も、県民が文化活動に参加し、また芸術文化に接する機会に恵まれ、心豊かに質の高い生活が送れるよう、国、県、企業、芸術文化団体がそれぞれ連携し、協力し合って芸術文化振興を推進してまいるとともに、現在県で進めてございます熊野学研究センター構想のように地域の活性化体制を文化的な視点からとらえるなど、幅広い視野からの文化行政を進めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 42番森 正樹君。
○森 正樹君 時間もございませんので、簡単に申し上げたいと存じます。
 まず、関西国際空港問題につきまして。
 知事、ぜひ全身全霊をもってこの問題に取り組んでいただきたい。「政治生命をかける」と過去に言われました。我々議員も、ここにいらっしゃる先輩・同僚議員の諸先生ほとんど皆さんが同じ決意で、この和歌山県勢、和歌山県益発展のために取り組んでいただけるものと確信をしております。今ここで賛否を問うわけにはいきませんが、恐らくほとんど全員が賛成をしていただけるのではないかと思います。知事一人に責任を負わせて我々は逃げるようなことはない、ともに政治生命をかけてこの関西国際空港全体構想の実現と国内便の大幅確保に取り組んでいきたい──もちろん微力でございますけれども、そのような気持ちでいっぱいでございます。
 どうか県政百年の大計を過たないように、我々が後世の者から何をしておったんだと言われないように、今一番重要なときでございますし、この問題に全力で取り組んでいかなければならない。そういう意味で、ぜひとも知事のもう一層のご奮闘をお願いしたいと思います。
 それから、ポートセールスにつきまして、福岡、札幌で行われるそうでございますが、ほかにも我が国には主要空港がたくさんございます。例えば、根室、釧路、仙台、新潟、青森、さらには九州の方へ行きますと長崎、熊本、鹿児島とか、たくさんございますし、可能な限り、そのような地域へ行ってポートセールスをしていただきたい。もし協力せよと言われれば自費ででも参加さしていただきますので、どうぞおっしゃっていただきたいと思います。
 最後に、企業メセナについて若干申し上げたいと思います。
 先ほどもちょっと触れましたけれども、一九八八年に行われました第三回日仏文化サミットの席上で、共同議長を務められた永井道雄さんが──朝日新聞の客員論説委員です──このサミットの日本側の議長として、最後のまとめとして次の六つのポイントを言われております。
 一、財源、税制改革の問題。
 二、文化庁の文化に対する報告書を白書といった権威あるものにして、国、自治体、企業の協力関係で文化がどのぐらい伸びたかを明らかにすること。
 三、文化運営者を尊重し、その社会的保障や権利を確立すること。
 四、官僚的な形ではない基本法、原則の整備を検討すること。
 五、これまで経済的視点で見てきたあらゆる行政を文化的視点で見直し、企業を軸とするメセナ育成のための協議会などを設けること。
 六、国際的交流の必要性。
 このように述べられております。
 それで、一部に「自治体が企業メセナ(フィランソロピー)にかかわるのは非常にまずいのではないか」ということを言う人があります。私は決してそうではないと思います。
 例えばこの文化サミットの中でも、ジャック・サントロさんというフランスのポワチエ市の市長さんは、このように言われております。
 「フランスでの地方公共団体の役割について話したい。これまでに言われたようにわが国の文化資金調達では国家の役割が大きいのが特徴だ。それとともに地方自治体の援助も見逃せない。これは、教育、美術や音楽の学校、文化財保護、創作活動への援助など国と同じくあらゆる分野に及んでいる。(中略)文化予算は義務的支出でないから自治体の全く自由な判断でなされることもまれではない。(中略)ポアチエ市では、過去一年間に市予算に占める文化予算は九%から一五%に増えている」と、実に市予算の一五%をこうした点に注いでいるわけでございます。
 我が国の場合はまだ緒についたばかりでございますから、まだまだこれからですけれども、これは決して行政が手をこまねいていていい問題ではない、やはり今後重大な問題として取り組んでいただきたいということを一点申し上げまして、いずれも要望でございますが、質問を終わります。
 ありがとうございました。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で森正樹君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) この際、暫時休憩いたします。
 午後零時一分休憩
 ──────────────────

このページの先頭へ