平成5年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(町田 亘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時三分開議
○議長(馬頭哲弥君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(馬頭哲弥君) 日程第一、議案第一号から議案第七十三号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 13番町田 亘君。
 〔町田 亘君、登壇〕(拍手)
○町田 亘君 どんな障害であれ、障害を持つ子供の親にとって最も大きな気がかりは、もし自分が死んだらこの子は無事に生きていけるのだろうかということであります。
 時々テレビで「裸の大将」を見ながら、本当の山下清さんはどんな人だったのだろう、ドラマで見る限り、少し障害はあるようだけれども、人情味があり、親切で、絵がうまく、旅から旅をして一ところに落ちつかないが、彼が行く先々で大勢の人たちに親しまれ、笑いと涙で感動の放浪生活を送っていた、もしドラマのような人生なら、これほどある意味で幸せな人生はなかったと思うのであります。
 昨年、朝日新聞社主催、教育委員会後援の山下清作品展を見学し、絵や日記、遺品等を見ることができました。そこで私は山下清さんの本当の姿を知りたいと思い、生い立ちや日常生活について書かれた資料はないかと探しました。東京や大阪に出たときに大きな本屋にも入って探しましたが、見つかりませんでした。議会調査課にもお願いしていましたところ、大阪の中之島図書館で昭和十五年に戸川先生の書いた「特異児童」という一冊の本を見つけてくれました。貴重な本だから貸し出しはできないとのことなので、大阪までその本を読みたくて行ってまいりました。
 以下、山下清さんについて少し紹介したいと思います。
 彼は、大正十一年、東京の浅草で生まれ、今生きていれば七十歳ですが、昭和四十六年に四十九歳で亡くなっています。彼の家庭は悲惨なもので、実の父は彼が幼いときに死亡、弟が一人いたが、不良少年で教護院に入れられたそうであります。母は再婚したが、養父は大変な酒乱で浪費癖があり、家は貧しさをきわめたために母は子供を連れて家を出、母子ホームに入りました。彼は母子ホームから小学校に通ったのであるが、学業は劣等、その上、現在でいういじめに遭うので、友達と一緒に遊ばず、遠回りして家に帰ったり、病的な憶病から発作的に見境なくナイフで傷つけるなど、凶暴な子供であったそうです。また、彼がいじめられた原因としては、知的能力の低さのほかに偏屈な性格、そして盗癖があったと書いています。まさに手のつけられない子供であったそうです。
 このような境遇、経歴から、十二歳のときについに千葉県にある精神薄弱児童養護施設八幡学園に入所させたのであります。彼にとって八幡学園の生活は、まさにオアシスであったそうです。それまでのようにいじめもなく、勉強は易しく、第一、張り絵ができる。彼が何よりも好きだった虫がいる。花がある。チョウ、ハチ、セミ、森がある。今まで抑えられていた彼の天分は一気に発揮され、異常なぐらいの進歩で、数年後には画壇の大家をして天才とまで驚かせた作品を生み得たのであります。テレビで見る山下清さんからは想像することができない生い立ちでありました。
 戸川先生いわく、「彼の絵の立派なできばえを見た人たちから『どのように指導したのか』とよく聞かれる。多くの人たちは障害を持つ子供は指導しないと何もできないと頭から思い込んでいるが、彼らは皆一つずつ何かよいものを持っているのであって、それが自然に開発されるような生活の場さえ与えられれば、よい芽はおのずから成長していくもので、初めからない才能は外から与えることはできない。日に当て水をかけてやることは絶対に必要だが、芽がなくては草木は伸びない」と言うのであります。
 私たち自由民主党県議団で福祉議員連盟をつくり、たくさんの施設を見学させていただき、多くの人たちと話し合い、勉強もしてまいりました。今の天皇が皇太子時代ご夫妻で訪れた、奈良県にある心境荘園という園生百五十人余りを抱えた大きな施設も訪問したことがありました。
 施設長より昼食をともにしようとお招きをいただいたので、多分幕の内弁当ぐらいだろうと思って行くと、大食堂に案内され、すき焼きの準備が整い、ビールや酒まで出されてびっくりしました。食器棚にはちょうしやビールコップ等がいっぱい並んでいるではありませんか。九十三歳の施設長も「園生も晩酌をやっていますよ」と笑っておられました。大きなダンスホールあり、カラオケあり、工場でふすまづくり、畳づくりに励んでいる姿、農園で汗をかきながら働いている姿、生き生きと生活している姿をこの目にして、大変感動したものでした。
 重度の障害を持った人たちにも少しは何かができる、それを見出してあげることを忘れてはならないのであります。「この子らに世の光を」という哀れみの政策だけを求めるのではなく、この子らがみずから輝く「この子らを世の光に」をモットーにしたいものです。障害を持った人たちは、その障害と闘い、それを克服していく努力の中に、豊かな温かい人間を育て、生涯かかっても三歳児程度の知的発達がなくても、豊かに充実していく生き方があると思うのであります。県の施設、民間の施設の職員の皆さんも一生懸命に頑張っている姿に、頭の下がる思いがいたします。
 以下、関係部長にお尋ねいたします。
 国連・障害者の十年は昨年で終了、新たに中央心身障害者対策協議会で国内長期行動計画の策定、また国際的にもアジア・太平洋障害者の十年の決議が行われました。そこで、今後の長期的な障害者対策のあり方についてのお考えをお示し願います。
 次に、精神薄弱者を受け入れるための「者の施設」は現在では収容能力に不足があると聞きますが、現状と今後の計画について。また授産施設についてでありますが、先般、高瀬議員の質問にありましたように、十七名が社会に復帰しているとありますが、その後うまくいっているのか。問題はないのか。社会復帰しても、ハンディを背負った障害者が仕事の面、人間関係などがうまくいかず、もし万一失敗したとき、再度の入所を希望しても困難なものとなります。その対策はどうか。厚生省では今年度より社会復帰のための補助金を出すと聞くが、どのようなことか。また、グループホーム的なものについてもお教え願います。
 最近は、プライバシーを考えて施設も個室化の傾向にあり、また障害者の中に高齢化した方も多くなってきていると思いますが、食事等を含めた高齢化対策について、施設のあり方についてお聞かせ願います。
 障害者に対していろいろ優遇措置がなされていますが、障害者に係る運賃等の割引は特急券を除く急行券のみとあるが、もう何年も前から各地で急行は走っていません。現状に合わないものであります。改正方を要望していただきたいと思います。
 最後に福祉事務所の充実についてでありますが、現在、郡部の福祉事務所はすべて県事務所の民生課がやっています。また、県事務所所長、次長が福祉事務所の所長、次長を兼務しています。所長、次長については各分野での行政があり、また多忙であり、福祉に理解があっても専門的ではない行政マンが多いのも事実であります。本年も四月から老人等の措置権限が町村に委譲されることであり、町村の指導も含めて福祉事務所の機能をより充実する必要があります。
 そこで、専任の所長を発令するか、もしくは現在同和行政の推進をするために各事務所に設置している同和主幹のように、多様化する福祉全般の調整、特に増加している福祉施設の指導、町村の指導調整のために、名称は別として福祉主幹等を発令してはいかがですか。
 知事が提唱されている「住んでいてよかったふるさと和歌山」のために、地域に密着した、充実した福祉を進めるために、先ほど申しましたように国際障害者年の以後の推進のためにも、積極的に福祉行政に取り組んでおられる仮谷知事に二十一世紀に向かっての福祉行政のあり方、また取り組みについてご所見をお聞かせ願います。
 次に、農業問題についてお伺いいたします。
 我が国の農業において、昭和の時代は激動の時代でありました。その時代に農業に従事し、いろんな体験をされ、時代の進歩とともに農薬や機械化の開発、農業技術の発展で身を粉にして働いた当時からやっと解放されたのもつかの間、休耕や転作等の作付調整に追い回され、さらに国際農作物の自由化の波等々、時代の変化といいながらも目まぐるしく変わってまいりました。農業の移り変わりをいま一度振り返って昭和の農業の変遷を子孫に伝えようと、上富田町朝来の老人クラブの方たちがすばらしい冊子を発行されました。
 第二次大戦直後の一九四五年から五〇年の時代は「飢えからの解放」で、国民は満腹感を求めた時代でありました。そのために農村から強制的に供出も行われたが解決に至らず、食糧増産政策が必要でありました。戦前の農業は地主・小作関係であったために、農民にやる気を起こさせようとそこにメスを入れ、小作農を自作農にと農地改革を行った時代でもありました。自分でつくったものがすべて自分のものになれば生産意欲は増すだろうし、つくった米の価格についても、食糧管理法の役割は当時としては大きかったと思います。こうして農民のやる気を起こせばそれなりのアイデアも力量も発揮され、まさに農業生産力の増進に成功し、飢餓から解放された時代でもありました。
 六〇年代は、高度経済成長、所得倍増と言われ始めた時代で、ようやく満腹感を感じるようになり、芋やでん粉質ばかりとってはいけない、栄養のバランスを考えなくては、つまり満腹感の次は栄養になり、肉、野菜、牛乳、果物といった洋風化の食事がとられるようになりました。肉を食べれば畜産振興、野菜振興、酪農振興、果樹振興が叫ばれた時代でもありました。自作農主義を借地でもよいと農地法の改正を行い、転換した時代でもありました。それに、食糧不足農政から米の過剰問題が起こり、米の生産調整が登場したのもこの時代でありました。
 七〇年代の前半は、オイルショックもあり、つくっても売れない時代が始まったときでもありました。
 そして八〇年代は、腹はいっぱい、栄養も満足、うまいものも口に入るようになり、カップヌードルのような簡便性が求められ、高級、ファッション等、多様化時代になりました。大分県の一村一品運動のように、全国一律農政から地域農政に変わりつつある時代でもありました。
 そこで現在は、経済成長とともに豊かな食生活は実現したが、今や日本は世界最大の農作物輸入国となっており、自給率はカロリーベースで四七%まで低下し、先進国の中でも非常に低く、食糧供給のあり方についても、ガット・ウルグアイ・ラウンド等、国家的な課題として国民の食糧確保と国際競争力に十分耐え得る農政を考えなければならない時期に来ていると思うのであります。
 平成三年五月、農林水産省は「新しい食料・農業・農村政策の方向」として取りまとめ、本年一月、農政審議会中間取りまとめとして発表されましたが、それによりますと、二十一世紀を見据えた農業を目指し、食料、農業、農村の三つに分かれて論議をされています。
 その政策の一部を拾ってみると、新農政で特に力を入れているのは多様な担い手の育成と土地利用型農作物、新たな生産体制と農業技術の確立等々、難しい表現をしておりますが、要するに、これからの政策の実を上げる方法は、農業を職業として選択し得る魅力とやりがいのあるものにすることであります。自給率向上だとか食糧の安全保障とか言っていますが、それだけで今の若者を引きつけることはできません。都会の青年が楽しく青春を謳歌しているのに、農業青年だけに押しつけられるのは御免だと言うでありましょう。政策の中に、年間労働時間は他産業並みの水準、生涯所得も他産業の従事者と遜色のない水準を実現するとありますが、絵にかいたもちのように思えてならないのであります。もちろん、行政だけに頼るのではなく、地域住民が英知を結集し、農業経営の改善を図らねばなりません。
 そこで中山間地域について対策の方向が示されていますが、我が和歌山県は、都市的地域は岩出町、和歌山市ほか四市一町、平地農業地域は貴志川町、有田市、吉備町ほか七市町、他の三十八町村はすべて中山間地域であります。面積にして八〇%以上を占めています。私たちの住む西牟婁郡内はすべて中山間地域であります。急傾斜地が多く平たんな土地が少ない上、農地も少なく分散し、また基盤整備がおくれています。付加価値の高い農業の展開を目指していくとありますが、山間地域では減反の前に、耕作放棄地が五〇%以上もある町村がふえているのであります。老齢化しているために自分の食べるだけの米を少しつくるだけで、今からハウスをつくり取り組んでいく元気がないのであります。早急に対策を講じなければ、田畑の境界線がわからなくなった耕作放棄地がもう数年後には大変なことになると思います。
 ある町村で、遊休農地の増加に伴い、農地の貸し手ではなくて借り手に一万から二万の奨励金を出して放棄地をなくすための努力をしていると聞きます。企業を誘致して都会に出た若者たちをUターンさせたある工場で、農家の出身の青年たちに工場で働きながら家業である農業を継いでいくかと聞いたところ、農業を手伝うと答えた青年は一人もいなかったと言います。
 そこで、農林水産部長にお尋ねします。
 新政策についての感想はどうか、また新政策について近畿農政局と協議会を持ったことがあるのか、お聞かせ願います。
 中山間地域の今後の農業振興対策について、本県の新規就農者は年々減少しておりますが、我が和歌山県で大きく所得を上げているであろう農家はどのような地域で何を生産しているのか、また、中山間地域でも産業おこし、村おこしを推進する人材の育成確保を図ることが大切と考えますが、どのような対策を講じられるのか。
 我が県は地域に根差した普及所の指導等についてもきめ細かく活動していただいており、感謝しているところであります。新政策の中で普及指導のあり方についても触れられておりますけれども、どのように考えているのか。農地の流動化について奨励金を出している町村の内容についてもお示し願います。
 次に、JR朝来駅前開発についてお尋ねします。
 国鉄が合理化を図り民営化されてから、数年以上たちます。その合理化のおかげで駅舎の無人化が始まり、私たちの住む朝来駅もその対象となり、私たちは国道四十二号線と国道三百十一号線の熊野古道入り口の接点でもあり、また和歌山県で随一の人口の増加発展の町でもあり、学生千三百人余りの熊野高校の生徒の中で三百人余りがこの駅を利用しているため、駅員を残してほしいと署名を集め、決起集会を開いてまでお願いに行きましたが、我々の気持ちは通じず、無人駅になりました。
 その後、町が負担して駅に人を置き、老人会初めいろいろの団体の皆さんや近所の方が季節ごとに美しい花の鉢を置いてくれたり、学生たちの自転車を整理したりして駅を守ってまいりました。しかし一方で、無人駅となって日がたつにつれ、心ない人たちのためにトイレは壊され、長い間そのままになっておりました。三百人余りの学生の乗降する駅にトイレのない不自由さは言うまでもありません。最近になってようやく修理がなされたところであります。
 前置きが長くなりましたが、県の企画部を通じて、国鉄清算事業団が管理している朝来駅前の元貨物取扱用地を地方自治体すなわち上富田町に払い下げを受けないかとの打診があったそうです。我々住む者にとっては、駅前といえば安くても坪五、六十万円は下らないだろうと考えていました。そこで、町として四千百平米、約千二百坪もある土地を何億も出して駐車場等にするゆとりがないというのも、当たり前の話であります。
 そこで、朝来駅前商店街の皆さんが集まり、国道四十二号線の駅前は県下一と言われるほど狭い国道で拡幅の余地がないところなので、道路の拡幅も含めて駅前の再開発に取り組もうではないかと、平成二年に朝来駅前開発発起人会を設立し、同年十二月に町に陳情書を提出、町は協議を重ね、平成三年二月、町議会総務常任委員会が福井県南条町に駅前開発について視察し、平成三年三月十三日、同陳情書を受理したのであります。
 駅前の皆さんが商工会館に集まり、何度も何度も会議を重ねてまいりました。途中から私も参画し、平成三年、県を通じて国鉄清算事業団の考えを聞いていただきましたところ、清算事業団に接触するための留意点をお教えいただきました。
 それは、使用目的、利用計画は明確にしておくこと。細部にわたっても契約書に明記され、事業団は契約書に忠実で、もし一部分であっても、また一時的であっても用途外に使用されると訴訟も辞さないという面があります。仙台市は違約金の支払いを求めて提訴され争っている等、非常に厳しいものがあります。また、契約条件として供用の期限が定められますので、当初の利用目的のままであっても、計画自体の進行がおくれた場合もだめであります。まず土地を購入してから計画を詰めるのではなくて、町内部で固め切ってから交渉すべきである。また地価については時価で売るのが当然と、清算事業団の強い意向に沿って真剣に取り組んでいたところでありました。
 そこで、都市計画の専門家も招いて講演もしていただき、何度も何度も計画を練り直しましたが、一度立てた計画を変えてはいけないと言われても、玄関口である駅前付近のこと、一つも変更なしの万全の計画がそう簡単にできるものではありませんでした。
 昨年末の新聞に、当該地が処分されたことが報じられていました。なぜいとも簡単に一民間企業に売却されたのか、その経過についてご説明願いたいと思います。市町村であれば随意契約、その他民間及び個人であれば公開入札で行われていると思いますが、当該地の契約方法についてお教え願います。
 坪当たり十万円ぐらいで契約されたと仄聞するが、その金額であれば町で十分計画は立てられたのに、また駅前商店街で事業ができたのにという声があります。また、事業団は土地転がし、転売等を一番心配しており、その町の発展につながるような計画を指導していたのであるから、購入した当該地も、その会社の発展はもちろん、地域の発展と駅前の活性化のためにすばらしい計画がなされていると思いますが、その計画をお教え願います。
 私たちの一番の願いは、顔である駅前が、地域が活性化することであります。町がもっと積極的に事業団と取り組むのはもちろんであったかもしれないが、県も駅前の顔づくりに町と協力し合ってもっと積極的に対処すべきであったと思います。県は清算事業団との間にあってどのような取り組みをされたのか、企画部長の答弁を求めます。
 最後に、土木部長にお尋ねします。
 知事初め県当局のご協力をいただき、国道三百十一号線も商業円域が変わるほど進んでまいりました。心から感謝を申し上げるものでありますが、現在進めている中辺路四工区について、中途で地すべり等があり、おくれています。早急に完成させ供用開始させれば、野中の曲がりくねった道が一直線になり、元野中小学校の下まで開通するのであります。残工事と供用開始の時期について。
 次に上富田の工区でありますが、稲葉根トンネルも完成し、深見橋も着工されました。本年度で県道上富田南部線まで完了するものと思います。しかし、県道上富田南部線の新岡トンネルもまだできず、供用を開始しても岡地区で大変な混雑が予想されます。県道上富田南部線の新岡トンネル及び三百十一号の尾崎・立平の計画についてお示し願います。
 同じく上富田すさみ線の生馬地区でありますが、半島振興予算等も活用し着々と進められておりますが、日置川町川原谷に採石工場があり、大型トラックが多く通行しています。現在進めております白浜空港の滑走路等にたくさんの採石が必要になってくると思うのであります。空港に一番近い採石場といえば、この工場からでありましょう。大型車が来ると普通車はとまらないとぎりぎりで通れないのが、富田川にかかっている生馬橋であります。トラック同士であれば橋の向こうで待っているのが現状であります。道路の改良に伴いこの橋の改良をも検討すべきだと思いますが、お考えをお聞かせ願います。
 そして、新しい道路が新設され改良されることは、その地域にとって活性化することであり、喜ばしいことであります。しかし、道路ができると、そのそばはすぐに宅地化されます。つまり、今まで遊水地帯であって水の調整をしていたところがなくなるのであります。道路事業とともに水対策についても十分考えなくてはなりません。
 富田川も毎年河床の整備をやっていただいておりますが、抜本的な解決は富田川本流の河床を下げる以外にないと思うのであります。そこで、大変難しい問題もありますが、下流の井ぜきについて、可動式等、研究検討すべきでないでしょうか、お答えを願います。
 最後に、彦五郎堤防の公園計画についてお尋ねいたします。
 今から三百年余り前、たびたびの大雨で現富田川の堤防が決壊するので、その対策を村の衆が集まって何度も何度も相談するのであるが決まらず、そこで彦蔵と五郎の二人は村人のこの宿命的な悩みを救う悲願のためにみずから進んで堤防建設の人柱となった、そういう伝説に基づいて建てられた碑が国道三百十一号の富田川のほとりにあります。地元初め町当局もその周辺を憩いと潤いのある公園にしてはと計画していますが、桜づつみモデル事業として具体化していきたいと思います。ご見解をお願いして、これで終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの町田亘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 町田議員にお答え申し上げます。
 福祉行政についての今後の取り組みの問題でございます。
 かねてから私も申し上げておりますように、県政の最重点として福祉行政を県議会の皆さんとともに進めておる状況でございます。しかしながら、お話もございましたけれども、最近の福祉を取り巻く環境は非常に厳しい現状でございまして、高年齢化が急スピードで進んでおりますし、また出生率減少という問題、核家族化の問題、また児童の健全育成といった面など、諸問題が山積しておるわけでございます。そうした変化に対応するためには、県民の皆さんの積極的な考え方、また強烈なニーズというものにこたえていかなければならないのではないかと思っておるわけでございます。
 こうした環境の中で調和のとれた活力のあるふるさとづくりを進めていくには、障害者、また老人、児童、母子家庭等、社会的・経済的に弱い立場に置かれておる皆さんに対し、積極的な社会的救済の方法を考えていかなければならないわけでございます。
 このために、私は県政の推進については福祉を原点にして進めていくべきであるという立場に立ち、県や市町村、また地域の各種団体と連携をとりながら進めてまいりたい、特に在宅福祉を中心にした福祉活動を進め、また保健とか医療等、そうした関連するものと十分連携をとった形の総合的体制のもとに福祉を進めていきたいと思ってございまして、先ほど来、福祉に対する町田議員の熱烈なる心情をお聞きしたわけでございますけれども、その心を心といたしまして、なお一層進めてまいりたいと思っております。
○議長(馬頭哲弥君) 民生部長吉井清純君。
 〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) ただいま町田議員から障害者福祉とりわけ精神薄弱者福祉の重要性についての貴重な教訓をいただき、今後の障害者の福祉行政の推進に生かしてまいりたいと考えております。
 私も障害者対策は福祉の原点であるという認識のもとに積極的に施策を推進してまいりましたが、とりわけ法施行を見ましても、精神薄弱者福祉については身体障害者福祉に比べて十年に及ぶおくれがございます。さらなる精神薄弱者福祉の充実の必要性を痛感している次第であります。また、国連・障害者の十年が終了し、アジア・太平洋障害者の十年がスタートする本年が障害者対策の新たなる出発の年であるという決意のもとに、懸命の努力を重ねてまいる所存であります。
 それでは、まず今後の長期的な障害者対策のあり方についてお答えをいたします。
 国連・障害者の十年終了後においても、障害者の増加、重度化、ニーズの多様化など長期的な展望に立った障害者対策が必要であるとの考えのもとに、今議会に第二次障害者にかかる和歌山県長期行動計画を策定するための予算をお願いしておるところでございます。障害者の方々が地域社会において、健常者とともに生きがいを持って力強く生活できる社会の建設を目標にした計画にいたしたいと考えてございます。
 次に、精神薄弱者更生施設の現状と今後の整備計画についてであります。
 現在までに入所施設が八カ所、定員五百三十人、また通所施設が一カ所、定員三十人の整備を行ってございまして、近畿府県においては京都府とともに高い整備率を誇っているところでございます。
 また、精神薄弱者更生相談所の判定に基づく施設入所待機者数は、重度者の増加とともに百八十四名に上っております。現在、和歌山市に定員五十人の入所更生施設を建設中でございますが、今後も引き続き地域バランスを考慮しながら計画的な施設整備を図り、入所待機者の解消に努めてまいりたいと考えております。
 次に、授産施設における社会自立に係るご質問でございますが、授産施設利用者の社会自立を促進する上で企業への雇用は重要な課題であると考えております。平成三年度及び四年度の二年間で、議員お話しのとおり十七人の方が企業に就職されておりますが、出身施設の指導助言などの強力なバックアップと事業者の温かい理解と協力のもとに、精神薄弱者自身の努力も相まって、現在まで企業に定着をしているところでございます。
 しかしながら、議員ご指摘のとおり、もとの施設への再入所が困難な状況の中で、もし失敗したらという心配が企業への就職をちゅうちょさせていることも十分理解できるところでございます。
 そこで、万一就職に失敗した場合の対策については、現在、由良あかつき園、由良みのり園の二施設において自立促進モデル事業を実施しておりますが、再入所できる期間が九十日に制限されるなど、その利用が非常に難しい現状であります。国においても、こうした現状を踏まえ、平成五年度から利用施設を全施設に拡大するとともに、再入所期間を一年に延長することが検討されているところであり、今後、精神薄弱者の社会自立の促進に大きな役割を果たすものと期待するものであります。
 さらに、精神薄弱者の企業定着を支援するためグループホームを設置し、施設の全面的なバックアップを受けながら、世話人による二十四時間体制の指導援助を行っているところであります。現在、このグループホームは十ホーム設置され、三十五人の精神薄弱者が入居しておりますが、平成五年にはさらに二カ所の増設を計画しているところでございます。
 いずれにしても、企業への就職を促進するためには、精神薄弱者自身の就労意欲を高めていくこともまた大切ではないかと考えております。このため、平成五年度に高収益授産科目開発事業を予算化したものでありますし、それぞれの施設においても入所者の個性に合った職域の開発と適切な指導・訓練を真剣に行う一方、八施設において毎年六十人程度の入所者を企業実習に派遣し、企業適応力の養成に努めているところであります。
 次に、精神薄弱者更生施設における高齢者対策でありますが、特に処遇面において、指導・訓練を初め食事等の生活部分に至るまで特別の配慮が必要であると考えているところであり、さらに今後検討を重ねてまいりたいと思います。
 また施設における個室化についてでありますが、精神薄弱者援護施設基準による居室の定員は一室四人が標準と決められており、個室化による建設費の増加等の関係から施設の個室化は非常に難しいところであります。しかしながら、南紀福祉センターや現在建設中の施設では二人部屋としたところもあり、また入所施設が生活の場となっている実態やプライバシーを考えた場合、今後の大きな課題として検討していく必要があると考えております。
 最後に、運賃割引制度改正についてでありますが、近畿府県民生部長会を通じても国に対し要望しているところでございますが、今後とも引き続き強く要望してまいりたいと考えてございます。
 次に、福祉事務所の充実についてお答えをいたします。
 福祉を取り巻く現状は大変厳しい上、県民の福祉行政に対するニーズも多種多様化してございます。これらを的確に把握し、総合的な地域福祉のリーダーとしての役割を担う福祉事務所の重要性はますます高まるものと考えてございます。
 ご提言の福祉事務所専任の所長または福祉主幹の配置については、それぞれの地域における行政全般の中での県事務所のあり方とも関連する問題でございますので、職務内容等を検討する中で関係部局とも十分協議してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 農林水産部長中村 昇君。
 〔中村 昇君、登壇〕
○農林水産部長(中村 昇君) 農業問題につきまして、お答えを申し上げます。
 まず新政策についての感想でございますが、新政策は中長期的な展望に立って食料・農業・農村の総合的な見直しを行ったもので、米を中心とした土地利用型農業の体質の強化、また中山間地域を初めとした農山漁村の振興を柱に二十一世紀に向けた農業、農村の振興方策を示したものとなってございます。
 この中で、農業生産については水稲を中心とした大規模経営を目指したものでございまして、本県のように傾斜地が多く暖地性を生かした果樹等の集約農業を展開している地域においては、今後どう生かしていくかが課題と考えてございます。
 次に、新政策に関する近畿農政局との協議会についてでございますが、新政策の円滑な推進を図るため、近畿管内の農林水産部長会議、そしてまた近畿農政局を中心にして県、市町村、農業団体、食品業界等から成る近畿地域新政策推進連絡協議会が開催をされており、その会議の席上、具体的な推進方法について意見交換を行ったところでございます。
 次に、中山間地域については、従来から農林業を営むことによって県土保全や水資源の涵養等、大きな役割を果たしてきております。この地域の活性化を図ることは非常に重要と考えてございます。
 過日、農政審議会の部会長である元農林水産事務次官と近畿農政局長に和歌山県においでをいただきまして、本県の現状を視察いただくとともに、その対策の具体化について、地域の実情等を十分反映していただけるようお願いしたところでございます。
 今後、本年度実施している新農政推進調査研究事業の結果を生かしながら、新たに中山間地域活性化モデル事業を実施してまいりたい、また、地域の特性を生かした付加価値の高い農林業の推進、意欲のある農林家を中心とした組織づくり、地域資源を生かした地場産業の振興や質の高い生活環境の確保などについて、関係部局との連携を図りながら市町村ともども、若者に魅力のある心豊かな農山村づくりに取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、県内で高所得を上げている農家でございます。
 県の専業農家約九千四百戸のうち、一千万以上の売り上げを上げている農家が約四千戸前後と推定されてございます。地域別に見ますと、紀の川流域では柿、桃などの落葉果樹やショウガ、バラ、スプレー菊の栽培農家がございます。また有田川流域では、ハウスミカンや味一ミカン等、高品質のミカンの生産農家やバラ、オモトなどの花の栽培農家が上げられてございます。日高紀南地域では、冬季の温暖な気象条件を生かし、完熟ミカン、越冬中晩柑や梅栽培農家のほかに、エンドウ、ミニトマトなどの野菜、カスミソウ、スターチス等の施設導入による複合経営農家が高所得を上げているのが実情でございます。
 次に、中山間地域における人材の育成確保についてでございますが、これまで農村青少年センターを拠点として四Hクラブ員を重点に青年大学講座を開設するとともに、先進的な農林業経営者を農業士として八百五十四名、グリーンワーカーとして百二十九名を認定し、地域における農林業のリーダーとしての役割を果たしていただく一方、計画的に研修等を実施しているところでございます。また農業大学校においては、農村の担い手となる学生に実践教育を通じて人材の育成に努めてまいりました。さらに広く人材確保を図る上で、高校生を対象にしてみどりの学園や農業大学校体験入学も実施してございます。
 農家婦人対策としては、婦人大学講座を開設するほか、農業労働の改善、新しい農家経営の確立、地域農産物の利活用、農村環境の改善など四つの分野を重点にし、生活改善友の会などを核として婦人研修等、市町村、関係団体と連携しながら推進をしているところでございます。今後とも、市町村、農業団体、教育委員会と連携をしながら、若者が定着できる人材育成確保について積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
 次に新政策と普及体制でございますが、国が昨年十二月、新普及事業研究会を設置し、現在検討が進められているところでございます。
 本県はこれまでも、地域の特性を生かしながら収益性の高い農業経営や健全な農家生活の確立、すぐれた農業後継者の育成確保に取り組んできたところでございますが、今後はこれに加えて経営感覚にすぐれた効率的かつ安定的な経営体の育成強化、さらには高度先進技術や女性の能力を発揮できる条件整備等、農業者のニーズに即応したきめの細かい普及活動を推進してまいりたいと考えております。また、専門的普及活動と広域的機能の発揮できる総合普及指導体制の充実強化にもあわせ努めてまいります。
 次に、町村が実施をしている農地流動化奨励金についてでございますが、古座川町では農地の借り手に対して十アール当たり一万円の奨励金を毎年交付しております。また川辺町では、契約が十年以上の借り手及び農地を買い入れて経営を拡大した人に対して十アール当たり五万円の助成を行っていると聞いてございます。
 県としては、今後とも県農業公社、市町村、農業委員会等との連携を一層密にしながら、農地流動化対策により耕作放棄の抑制に努めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 企画部長佐武廸生君。
 〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) JR朝来駅前開発についてのご質問にお答えをいたします。
 国鉄清算事業団用地の処分については、日本国有鉄道清算事業団法に基づき、公共の用に供する場合には地方公共団体あるいは公益法人等の購入希望により随意契約による処分をすることができます。また、それ以外の場合については一般競争入札により処分がなされることとなってございます。これに伴って、必要に応じ、各市町村に対し購入意向調査がなされてきたものでございます。
 議員ご質問のJR紀勢本線朝来駅前用地については、意向調査の結果、当初、上富田町から駅前整備事業用地として活用したい旨の意向が寄せられましたので、国鉄清算事業団にその旨を伝達しましたが、その後、実施可能な利用計画の策定がおくれ、また売却価格の不明確な中で数年が経過したものでございます。
 一方、国鉄清算事業団においては、当該用地内に残置されていた給油施設の撤去を求める訴訟を起こしており、結果的には昨年十二月、裁判上の和解により、利害関係人である田辺湾汽船株式会社に売却されたものでございます。
 また利用計画については、集客案内所、道路、給油タンク、資材置き場、倉庫及び駐車場施設を二年以内の着手を条件として設置されるものであり、土地売買契約上の規制条件として十年間の転売及び転貸の禁止等の特約がつけられていると聞いてございます。
 次に県の取り組みについてでございますが、県としては、上富田町に対し、国鉄清算事業団用地の処理方針に沿った実施可能な利用計画の必要性等について助言を行うとともに、国鉄清算事業団に対して上富田町の意向を伝えてまいったところでございますが、先ほどお答えいたしましたような経過で推移したものでございます。
 県としては今後、国鉄清算事業団用地の処分に当たっては、地元市町村及び当事業団とさらに緊密な連携を図りながら対処してまいりたいと存じます。
○議長(馬頭哲弥君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 紀南の道路整備に関してお答えをいたします。
 まず国道三百十一号中辺路四バイパスについては、地すべり対策工を施工して平成五年度完了の予定としております。それから、上富田二バイパスは平成五年度に稲葉根トンネルを含め上富田南部線まで供用の予定でありますが、供用に伴い関連道路の整備を町と協議してまいります。
 また、県道上富田南部線の新岡トンネルについては、現在ボーリング調査等も終わっておりますけれども、地すべり地域でありまして、その工法を検討中でございます。平成五年度は地すべり対策工に着手をして、平成六年度にはトンネル工の着手を目指したいと考えております。
 また、国道三百十一号上富田二バイパスのうち、尾崎地区については、平成五年度は盛り土ののり面工、水路工等の本工事を施工する予定でございます。立平地区については、地元の皆様のご協力を得ながら用地買収を促進してまいりたいと存じます。
 次に、上富田すさみ線の生馬橋は昭和三十一年に架設されたトラス橋でございます。したがって、構造上、待避所等の局部的な改良は不可能でありますが、今後、県全体の橋梁整備の状況も勘案をしながら検討させていただきたいと存じます。
 次に、富田川下流の井ぜきの改築についてでございます。
 富田川の治水対策については、昭和二十五年から中小河川改修事業を実施しておるところであります。改修計画は、河口から十五・四キロメートルの区間について堤防護岸の整備と河床の切り下げ等を行うものであり、これまでに本川の堤防整備と支川の改修を促進してきたところでございます。
 近年、流域内の開発が進みつつあることから、現在取り組んでいる箇所の事業促進を図り、本川の河床掘削に着手するための取水ぜきの改築については、ご指摘のとおりいろいろ難しい問題もございますので、地元調整を含め検討してまいりたいと考えております。
 最後に彦五郎堤の問題でございますが、桜づつみモデル事業は、堤防の強化と良好な水辺空間の形成をあわせて行うことを目的としております。桜等の植栽を行うには、規定の堤防幅に加えて三メーター以上の用地が必要でございまして、事業の申請に当たってはその用地が確保されていること、または市町村等により確実に確保ができることが指定の前提となっております。
 議員ご提言の彦五郎堤については、その歴史的背景等から潤いのある水辺づくりにふさわしいものと考えますので、その整備に向け、地元のご協力が得られるよう、町とともに積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(馬頭哲弥君) 再質問がありませんので、以上で町田亘君の質問が終了いたしました。

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