平成5年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(馬頭哲弥君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 33番鶴田至弘君。
 〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 それでは、お許しをいただきましたので、質問並びに質疑をさせていただきます。
 議案第四十一号「和歌山県公文書の開示に関する条例」についてお尋ねをしたいと思います。
 まず、このように情報公開に一歩踏み出したことを評価したいと思います。一般的にいえば、行政権を握る者にとって都合の悪い情報は民衆に知らせたくないと考えるのは、洋の東西を問わず歴史が示しているところであります。情報公開の制度が今日に至るまでできなかったというのも、その歴史の一端にあると思うわけでありますが、世論の高まりの中で公開へと進んできたことは一歩の前進と歓迎するものであります。
 それだけに、行政側からのお仕着せ的な情報公開でなく、国民の憲法的権利を県民にどう保障していくかという観点が貫かれることが大事であろうかと思うわけであります。行政側に都合の悪いものは公開しないという姿勢がどこかに潜んでいれば、美しい条文も骨を抜かれたり形骸化することになりかねません。一歩の前進を評価しつつも、そういう立場からよりよい条例であってほしいことを願いつつ質問をいたします。
 まず第一条の「目的」についてでありますが、県民が公文書の開示を求める権利の根拠を明らかにすべきだろうと思います。すなわち、憲法に定められた「知る権利」を明文化すべきであろうと考えます。なぜなら、行政がみずからの都合で自分の都合のよい範囲で公文書を開示するという不徹底性を排し、県民の権利を憲法の理念において保障することが本来的なあり方だと思うからであります。
 第一条では県民の県政に対する理解と信頼を深めてもらうことが目的となっておりますが、理解と不信を深める場合なども一般論的にはあり得ることで、理解と信頼のみを求めるという出発点では開示に対する制約が強くなると思われますが、いかがでしょうか。
 第二条の「実施機関」についてですが、公安委員会が抜けています。警察の業務である犯罪の予防や捜査等に一定の機密が必要であることは否定するものではありませんし、昨日の答弁について一定うなずける点がないでもありませんが、それでもなおかつ公開されてしかるべきものはあるはずであります。危険物取り締まり業務あるいは交通安全対策など、開示の対象としては何ら差し支えないものがあり、公安委員会の一切を非開示の対象とするというのは、「知る権利」を保障するという立場から遠ざかるものであろうと思います。
 同条第二項の「公文書」の規定として決裁または供覧の手続が完了しているものとありますが、意思決定の過程に県民の「知る権利」が及ばないのは意思決定に県民の意思の反映を拒むものであり、決裁以前のすべてを非公開とすべきではないと思うのですが、いかがでしょうか。
 第三条は、開示を求める権利と個人に関する情報の関係であります。「開示を求める権利を十分に尊重する」ということと「個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をしなければならない」とありますが、「十分に尊重する」と「最大限の配慮をする」という二つの形容詞の違いの意味はどういうものでしょうか。プライバシーの保護は当然ではありますが、いたずらにプライバシーの保護をかざして「知る権利」を抑制する危険はないでしょうか。形容詞の背後の行政姿勢に危惧を感じますが、いかがなものでしょうか。個人の情報も、非開示部分を定めて開示する権利を保障すべきだと思います。
 第五条、開示請求権者の資格条項でありますが、個人、法人、団体いずれも県内に住所または事務所を有する者となっております。開示事務に多額の費用が要るために納税者に限る、あるいは和歌山県の自治振興に他府県の者からとやかく言われる筋合いはないという立場らしく思われますが、日本国民に和歌山県政を堂々と開示してもよいのではないでしょうか。経費にかかわることで言えば、県外者には料金の上で一定の方策をとることも考えてしかるべきだと思います。
 第七条の5について、開示を求められた文書の中に「県以外のものに関する情報が記録されているときは、あらかじめ当該県以外のものの意見を聴くことができる」とありますが、その意見が開示の当否を決定する要件となるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
 第九条は、開示しないことができる条件であります。法律または政令の規定に基づくものはやむを得ないと思いますが、主務大臣からの明示の指示があった場合という項目があります。ところで、「明示の指示」とはいかなるものをいうのか。主務大臣の恣意的な言動によって非開示となるとすれば、国民の「知る権利」が大きく損なわれることになりかねないと思うのですが、いかがでしょうか。
 同じく第九条の二号に関して、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、または識別され得るものは非開示にすることができるとありますが、開示請求者が本人または保護者の場合はその条項から除く条項として加えるべきではないでしょうか。
 例えば、学校生徒に関する指導要録、内申書は本人または保護者に当然知らされてしかるべき内容であろうと思うのですが、いかがでしょうか。川崎市が今、先進例を示しておるわけでありますが、本県教育委員会も英断のときではないでしょうか、お考えを示していただきたいと思います。
 非開示とすることができるとされる同条の五号、六号、七号に関してお尋ねをいたしますが、五号に「県と国等との協力関係又は信頼関係が損なわれると認められるもの」、六号に「開示することにより当該合議制機関等の公正若しくは円滑な議事運営が損なわれるもの」、七号に「意思形成に支障が生ずるおそれがあると認められるもの」、八号に「関係当事者間の協力関係若しくは信頼関係が損なわれると認められるもの」等々が列記されています。いずれも、是とすべき理由であると同時に、解釈次第では非開示の範囲を拡大するおそれがあります。第一条の目的条項に開示の目的が県政への信頼を深めてもらうことという項があるだけに、気がかりな内容だと言えます。「知る権利」をどのような形で担保されているのか、明らかにしていただきたいと思います。
 第十条に関して言えば、当該情報の記録されている部分と非開示にすべき部分とが容易に分離することができるときは非開示部分を除いて公文書を開示することができるとあります。逆に言えば、分離が容易でない場合には開示しなくてもよいということになります。分離が容易か否かということも主観の入りやすい部分であります。ここにも開示することを主たる方向として担保することが必要であり、あえて「容易」という言葉の挿入は不要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 第十五条の二項に、開示される文書は平成五年三月三十一日以後のものに限られることになっております。過去の膨大な文書のすべてを開示できるよう整備することは至難であろうとは推測されます。しかし、県政を知る上で過去の文書が必要なことは当然であります。直ちに開示はならないまでも、順次開示できるよう整備を進めるべきであろうと思うのですが、いかがでしょうか。
 第十七条について、「積極的な情報提供の推進に努める」とありますが、この条例の目的から見てこの情報提供は格段の努力の求められるところでありますが、あえてこの条項を設けたことによって情報提供の施策をどう発展させようとしておられるのか、お示しいただきたいと思います。
 次に、不況対策と地域産業、地元業者の発展を願って幾つかの質問をいたします。
 去る十二月議会において、不況対策について幾つかの要望を申し上げて質問をしたところでありますが、その後、県民の願いにこたえて不況対策の特別融資の制度を創設するなど一定の対応をされたことについて、その努力を喜びとするものであります。しかし、現今の不況の深刻さは私たちに寄せられる相談の一つ一つに実感され、県当局の一層の不況対策の強化を求めたい次第であります。
 今議会に提出された予算案の中に、不況対策特別融資制度が設けられ、その枠四十五億円とされております。恐らく、PRの仕方次第でたちまちいっぱいになってしまう可能性があるかと思うわけであります。他府県の状況の中には、一週間で枠を超えたところもあるようでございます。その際は直ちに追加補正をして窮迫する零細業者に援助の手を差し伸べるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 また県は、特別小口貸付制度として、四百五十万円、保証料無料、返済期限三年の制度を設けています。保証料無料制度というのは近畿的にも先進例であり、当局の努力について大いに評価したいと思うところでありますが、同時に「三年の返済はきつ過ぎる。何とか五年にしてもらえないか」という声は依然として強く上がっております。私も、昨年その旨のお願いをいたしましたが、残念ながらこたえていただいている状況ではありません。
 今、政府の方で四百五十万円を五百万円にという措置が講じられようとしていますが、当局にあってはこの際、枠を五百万円にし、保証料無料制度を維持して五年返済へと制度を発展させてはいかがかと思いますが、ご所見を賜りたいと思います。
 次に、仕事をふやす問題についてお尋ねをいたします。
 不況の中で深刻な問題は、金融の問題、仕事の確保の問題であります。不況の中で仕事が減少するのは当然のことではありますが、それが零細な企業へのしわ寄せという形で進められてくるところに、大企業に比べられない深刻な苦しみがあります。
 私の知人のある零細な鉄工所の経営者は、県の中小企業振興公社の指導でリースで加工機械を借り入れ、あと一息でリース期限が終わるというやさきにこの不況に出会い、もはやリース料も払えない、何としたものかと悲壮な思いで相談を持ちかけてまいりました。聞けば、同じような状況が同業者にたくさんいる、怠けているのではない、夜を徹しても仕事をする意思はあるが、八時間働ける仕事がない、ときどき仕事にありつけても安くて話にならない、それでも後々の仕事を回してほしいからその仕事をする、ここ半年そんな状態が続いていると話してくれました。
 大手や元請はこの不況の中で内製化、仕事を下請に出さずに自分の工場で製造するようになり下請は一方的にしわ寄せを受ける、そんな状況があちこちに出ています。通産省、中小企業庁あたりも通達等を出して下請保護に一定のポーズを示しておりますが、それっきりになっています。
 県は、中小企業振興公社等を通じて独自の努力をされていると思いますが、この不況に当たりどのような努力をされ、どのような成果を上げていると考えられますか。県下中小零細企業の今後の仕事をふやす手だてをどう考えておられるか、明らかにしていただきたいと思います。
 次に、県が発注する公共事業は、和歌山の業者にとっては何といっても大きな活性化の起爆剤であります。そういう立場から県も、県内業者の育成のためそれなりの配慮をもって発注に当たっているところであろうとは思います。しかし、当局が鳴り物入りで推し進めるビッグプロジェクトなどは県内にどのような起爆剤的役割を果たしてきたのか。残念ながら、思うようには作動していないではないかと思われる点があります。工事が大きくなればなるほど県外の企業の参入が大きくなり、和歌山の関係業者はそれを見ながら指をくわえている状況も見受けられます。
 ついては、以下の事業について、県内業者、県外業者の社数と請負事業費を明らかにしていただきたいと思います。
 一、マリーナシティの造成。港湾関係も含んでお答えください。
 二、コスモパーク加太の土取りと造成。
 三、土木部に関するもの。
 四、農林水産部に関するもの。
 以上について、県内業者、県外業者がどのようにその仕事を受けているかを明らかにしていただきたいと思います。
 県外大手が受注した工事も、一定部分は県下の下請企業へと仕事が回されてきています。それらの仕事が金額にしてどれだけのものなのかわからないというのが実態であろうと思いますが、参画した下請企業数はどの程度あったのか、県外・県内企業として明らかにしていただきたい。可能な範囲でその事業量を金額にして示していただきたいと思います。各部としても県内企業への下請を求めているとは思いますが、果たしてそれが実効のあるものになっているのかどうか、お示しをいただきたいと思います。
 続いて、住友金属の人員削減についてお尋ねをいたします。
 去る二月二十六日の朝日新聞によりますと、住友金属工業は向こう三年間に二千七百人の人員削減を行うと報じておりました。うち一千人が自然退職者となり、千七百人が出向等により現在の職場を追われることになり、和歌山工場においても相当数がその対象となるものと推測されます。現今の不況の中で、現在の職場よりもよい職場への出向ということは考えにくく、対象となる方々やその家族は随分とご苦労されると思われます。
 ついては、住友金属に対して、労働者に不利益をもたらす出向等は行わず、企業努力によって安定した職場とし、対象者が同社の中で労働を継続できるよう会社に対して申し入れ、指導等を行うようにされたいと思いますが、いかがでございましょうか。
 また、従来、このようなのときの出向はさまざまな問題を惹起してまいりました。零細な地元企業と競合したり、それによってそこで従来から働く人々に不利益をもたらしたりということは、しばしば聞かされてきたところであります。昨今の不況時、ただでさえ仕事がないと嘆いているとき、そのような事態を起こされると、出向を命じられた方々も、競合する企業も、そこで従来から働く人々にとっても大変不幸であります。
 これらの零細企業と比べるならば、幾ら鉄鋼不況とはいえ、住友金属は天下の大資本であります。地域の零細な企業や労働者を犠牲にしなくとも雇用力は何とかなるはずであります。県当局もその点を踏まえて、住友金属に対し、懸念される事態が起こらないよう万全の対応をされるよう指導していただきたいと思いますが、いかがお考えでしょうか。
 続いて、米の問題について質問をいたします。
 昨年の十二月議会で知事は、米の輸入自由化反対を表明されました。大変結構なことだと私も賛意を表する次第でありますが、政府の動きは着実に自由化の方向に進んでいるように見えます。
 昨年発表された農業「新政策」は、明らかに自由化に対応するよう日本の農業構造を変革する目的で考案されたと推測されます。ご承知のように新政策は、「土地利用型農業の経営の展望」の中で、稲作を中心とした今後の形態を、十ないし二十ヘクタールの個別経営体十五万戸と二万集団の組織経営体とを創設し、農業生産、農地利用の八割をこれに集中しようとするものであります。
 和歌山県の稲作面積は、相次ぐ減反政策の結果、現在極めてわずかなものになっているわけでありますが、新政策を進めるところで、単純計算をしても大方の農家が消滅し、数百戸の農家あるいは組織経営体が残るだけということになってしまいます。しかし、このような一見非現実的と思えるような施策が、法によって一歩一歩着実に遂行されようとしている現実があります。
 例えば、一月二十九日に農水省が示した構造政策一括法案大綱では、そのことが相当具体的に示されてきています。農地利用増進法は農業基盤経営強化促進法に改められ、その目的には、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担うよう農業構造を確立するための措置を講ずることをうたい、都道府県と市町村がこれに基づいてそれぞれの基本方針と基本構想を定め、農業基盤の強化の促進に関する目標、育成すべき経営体に関する目標、農地保有法人に関する事項等を定めるよう義務づけようとしています。平たく言えば、零細な集約的農家の土地を大農家を核として二十ないし三十ヘクタールの農家に合併させてしまう、あるいは農業株式会社をつくって零細な農家の土地を併合してしまうという方策を県や市町村が基本方針をつくって遂行することを義務づけられるわけであります。
 和歌山県では、米作は農業生産の中でもごくわずかなものでありますが、米作がそれぞれの家庭に及ぼしている影響は決して小さなものではありません。それを、結局土地を手放さざるを得ないような方策を県や市町村が率先して指導しなければならないわけであります。そして、その目的が米の輸入自由化への体制づくりであり、体制の進捗状況いかんに応じて輸入の自由化が促進されるということになれば、口では自由化反対、実際の仕事は自由化促進という、県民に対して極めて不誠実な行政をせざるを得ないということになってまいります。
 県の米作はわずかなものでありますが、日本の米作の一翼を担っていることは事実であり、和歌山の米作を守ることが日本の米を守る、日本の農家を守ることに連なるものであるとすれば、政府が今進めようとしている一連の施策に対し、県としても毅然として対応すべきであると考えるわけでありますが、当局はいかがお考えをお持ち合わせでありましょうか、お答えをいただきたいと思います。
 これをもって、第一問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 総務部長山中昭栄君。
 〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 公文書の開示に関する条例につきまして、特に「知る権利」を尊重されるお立場からの非常に多岐にわたるご質問をいただきました。順次、お答えを申し上げます。
 まず、「知る権利」の明文化と条例第一条の「目的」の表現についてでございます。
 憲法上の国民の「知る権利」の保障という観点からその根拠を明確にすべきではないかという点についてでございますが、いわゆる国民の「知る権利」については、憲法上の重要な理念であるということは一般的になってきていると言えようかと思いますが、そのことによって直ちに訴訟上の権利救済が受けられるような具体的な権利として確立しているものではないと考えられております。
 したがって、この条例における開示請求権については、憲法から導き出されるところの「知る権利」を直接的に具体化したということではなくて、条例案第一条に掲げている「県民参加による開かれた県政の一層の推進」という目的を達成するために、いわゆる実定法上の権利として県民の公文書の開示請求権を条例によって創設しているものでございます。
 また、第一条の条例制定の目的の表現についてでございますが、公文書開示制度は、ただいま申し上げたように県民参加による開かれた県政を一層推進することを目的としております。そのためには、県政に対する県民のご理解と信頼を深めていただくことが重要でございます。そして、この制度の実施により、県民の方々は必要なときに県政に関する情報を直接入手できるようになりますので、これまで以上に県政が身近なものになり、このことがひいては県政のよりよい発展に結びついていくものと考えております。
 なお、開示に対する制約が強くなるというご指摘でございますが、開示・非開示の判断については第九条各号の規定を適正に運用してまいる所存でございます。
 次に、公文書の定義についてでございますが、開示請求の対象公文書を「決裁又は供覧等の手続が終了し」と規定しておりますのは、こうした手続が終了していない公文書は未成熟な情報でございまして、組織的には意思決定がされていないものでありますので、かえって開示することにより無用の誤解と混乱を生ずるおそれもございます。実施機関としての責任を明確にする意味からも限定したものでございます。
 次に、第三条に規定する条例の解釈及び運用についてでございますが、「県民の公文書の開示を求める権利を十分に尊重する」との規定は、本条例の基本理念である原則公開の立場を明らかにしたものでございます。
 しかし、他方で、プライバシーの保護が個人の尊厳にかかわる憲法上確立された基本的人権の一つであることから、「個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をしなければならない」として、公開を原則とする公文書開示制度との関係においても最大限の保護が必要であることを明らかにしたものでございます。
 次に、請求権者についてでございます。
 公文書の開示を請求できる者につきましては、県条例の効力の及ぶ範囲が原則としてその行政区域に限られているという点、県民参加により開かれた県政を一層推進していくという本制度の目的、さらにこの制度の運用は県民の方々の負担によってなされるものであるといった点を考慮し、一定の範囲の方に限定をしたものでございます。
 しかしながら、近年の日常生活圏の広がり等から、県民以外の方々についても県行政とさまざまな形でかかわりを持つことが多くなってきておりますし、関係者からの行政情報に対するニーズも増加をしてきております。そうした点を考慮して、第五条で規定をする請求権者以外の方については、条例案第十六条の規定により、実施機関が定める一定の範囲の中で開示の申し出ができるという任意開示の制度を設け、公文書の開示の申し出に応じるよう努めることとしております。
 次に、県以外の者からの意見聴取についてでございますが、条例案の第七条第五項の「あらかじめ、県以外のものの意見を聴くことができる」との規定については、開示請求された公文書の中に第三者の情報が記録をされている場合に、開示をすることにより当該第三者の権利、利益を不当に侵害することのないように、開示・非開示の決定を慎重かつ的確に行うために、実施機関が必要と判断した場合に意見を聞くことができるよう設けているものでございます。
 当該意見については、実施機関が開示・非開示の決定を行うに際しての一つの判断材料とするものでございまして、同意を求める性格のものではございません。
 次に、第九条第一号に規定をする主務大臣等からの明示の指示についてでございますが、「開示してはならない旨の明示の指示」については、開示してはならない情報について主務大臣等からの通達、訓令、通知等、文書による具体的な指示のあるものと考えております。
 次に、いわゆる本人情報の開示についてでございますが、公文書開示制度は第一条に掲げる目的のために定めるものでございます。県民が自己に関する情報を行政機関から得るための制度を定めるものではございません。したがって、本条例に基づく公文書の開示については、本人あるいはそれ以外の者のいずれからなされた場合であっても、開示するかどうかについては同じ結論になるべきものでございます。言いかえますと、開示を請求する者の違いによって取り扱いが異なるものではないということでございます。
 次に、非開示事項と「知る権利」の関係についてでございます。
 「知る権利」と本条例との関係については、先ほどもお答えを申し上げたとおりでございます。本制度は基本的には公開を原則としているものではございますが、行政情報の中には公開に適さないものも含まれておりますので、公開の原則に対する例外として、開示しないことができる公文書として条例案の第九条各号にそれらを類型化して規定しているものでございます。
 「知る権利」との関係で、特に同条第五号から第八号までに規定する事項を引用されましたが、要は、議員が言われる「知る権利」とプライバシーの保護や円滑な行政運営による県民全体の利益の保護といった要請のどちらを重視するかという比較考量の問題だと考えております。もとより、条例の適用に当たっては拡大解釈や恣意にわたることのないよう適正な運用を期してまいります。
 次に、第十条に規定する部分開示についてでございます。
 この規定は、公文書の開示請求に対しては原則公開の精神から、当該公文書の中に部分的に開示できる情報と開示することのできない情報とが含まれている場合、開示できる部分についてはできるだけ開示をしていくという趣旨から設けているものでございます。
 「容易に」との表現は、開示することのできない部分とできる部分とを分離することにつきまして、公文書そのものを損傷することなく物理的、経済的に分離が容易であることが必要との観点から規定をしているものでございます。この規定の趣旨を踏まえて運用してまいりたいと考えております。
 次に、第十五条第二項の対象公文書についてでございます。
 公文書開示制度の運用に際しては、県民の方々から公文書の開示請求があった場合に、県民の方々が求めている情報が県の保有している膨大な公文書の中に存在するかどうかを速やかに検索をし、該当する公文書を特定しなければなりません。そのためには、適正な文書管理と文書の検索システムが確立されている必要がございます。
 しかしながら、過去の公文書をこの制度の対象とするためには、県が保有するこのような膨大な量の公文書について、逐一検索のための目録等の整備が必要となり、それがために通常の行政運営に支障が生じ、ひいては県民サービスの低下を招く懸念もございます。したがいまして、制度の円滑な実施を確保するために、請求権の対象となる公文書を制度実施年度以降のものに限定したわけでございます。
 なお、過去の公文書についても、条例案第十六条の規定により実施機関が定めるものについては任意開示の対象とし、開示に努めることとしております。
 最後に、第十七条の積極的な情報提供の推進についてでございます。
 県政に関する県民の理解と信頼をこれまで以上に深めていただくためには、公文書の開示制度を利用していただくだけではなく、事実上の情報提供についても一層充実をさせていくということが重要であると考えております。
 県においては、これまでも「県民の友」の発行を初め、報道機関への資料提供、行政資料室での閲覧制度、テレビ・ラジオの活用等、さまざまなメディアを活用して情報提供に努めてきたところでございますが、条例案の第十七条の規定は、公文書開示制度の実施を一つの契機としてより積極的な情報提供に努めていく基本姿勢を明らかにしたものでございまして、その趣旨に沿った運用を図っていかなければならないものと考えております。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 商工労働部長中西伸雄君。
 〔中西伸雄君、登壇〕
○商工労働部長(中西伸雄君) 金融対策の改善と下請振興についてでございます。
 県といたしましては、中小企業の金融円滑化対策として従前より融資制度を設け、取り組んできているところでございます。長引く景気の低迷を踏まえ、平成五年度においても、融資制度のより充実を図るために融資枠を拡大し、また売り上げの減少している中小企業者への資金需要にこたえるために緊急経営資金特別融資制度を創設するなど、対策を講じることとしてございます。
 議員ご指摘の特別小口融資資金の融資限度額については、昨日、新田議員にもお答えいたしましたが、中小企業信用保険法の特別小口保険の保険限度額を適用しているものであり、現在、国においてもこの信用保険法の改正が審議されております。
 信用保険法の改正がなされますと、特別小口保険の限度額が四百五十万円から五百万円に引き上げられますので、県としても特別小口融資資金の融資限度額を引き上げてまいりたいと考えてございます。
 また、融資期間の五年への延長については、関係機関との協議が必要でございますので、ご質問の趣旨を踏まえ努力してまいりたいと考えてございます。
 次に、新制度の緊急経営資金特別融資制度の融資枠は四十五億円を予定してございますが、その融資枠の拡大については、中小企業の皆さんの利用状況等を見ながら対応してまいりたいと考えてございます。
 次に下請企業の育成についてでございますが、重要な課題として受けとめてございまして、その振興に取り組んでいるところでございます。
 受注企業の仕事確保については、京阪神の発注企業や関西国際空港株式会社等の大型プロジェクトに対応するため、同業種の受注企業グループを結成させ、大量の仕事でも受注できる体制で発注企業の訪問を行っているところでございます。
 また、受注登録企業名簿を作成し、イベント等、発注企業の集まる機会をとらえて配付するとともに、県内の発注企業に対しては、特に移動あっせん相談を行っているところでございます。
 また本年度は、下請企業の創造的なすぐれた製品、高度な加工技術等を広く紹介したガイドブックを作成し、発注企業、商社等に配付することにより販路開拓や下請取引の促進を図っているところでございます。
 その結果、平成四年度分として平成五年二月末で二百二十八件の下請取引紹介あっせんを実施するとともに、受注企業グループでも、建築金物、鉄骨建築等、関西国際空港株式会社並びにマリーナシティ関連の受注を確保したところでございます。
 なお、発注企業が受注企業の一方的な取引の改正を強要しないよう、近畿通産局等と共催して下請取引適正化のための講習会を開催するとともに、中小企業振興公社の発行する「公社だより」でもその点について発注企業の注意を喚起したところでございます。また、本年一月、公社登録の発注企業に対して同趣旨の文書を送付し、発注企業に対する指導を徹底しているところでございます。
 厳しい経済環境の続く中、下請企業の仕事確保のため元請企業の訪問を行うなど、きめ細かな指導を進め、これら下請企業の振興に努力してまいりたいと考えてございます。
 次に住友金属についてでございますが、住友金属では現在、平成五年度から三カ年の事業計画を策定中であると聞いてございます。
 人員削減計画が事実とするならば、和歌山製鉄所への影響も十分考えられることでございます。県としても、従来より従業員や下請企業等に十分配慮するよう申し入れてきたところでありますが、さらに強く要望してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 不況対策と下請振興に関して、土木部所管の工事についてご回答を申し上げます。
 県内業者の育成については最重点に考えておりますが、トンネル工事、ダム工事、大型港湾工事、大型橋梁工事、大型建築工事等、高度な技術力、豊富な経験、資金力が必要な工事等に限って県外大手業者に発注をしております。
 平成二年度、三年度に発注した県内・県外業者への発注件数等でございますが、平成二年度実績で県内四千七百十件、金額で四百四十五億円、県外百七件、金額で百四十三億円となってございます。また三年度実績では、県内四千五十九件、金額で四百九十億円、県外九十九件、金額で二百五十二億円となってございます。
 平成三年度の県外発注額が二年度と比較して若干高いのは、県立新図書館、県立美術館、博物館等の大型建築工事の発注があったという特殊事情によるところが大きいものでございます。
 次に、下請の状況でございます。
 平成三年度で県外業者が中心となって契約をした大型建設工事の件数は十八件でございます。この中には、県内と県外と組んだジョイントベンチャーの発注もございますが、下請業者数としては県内で百五十七社、県外で九十八社となっております。率で申しますと、県内が六二%、県外が三八%でございます。
 土木部としては、元請業者に対して契約時等あらゆる機会を通じて下請業者の選定には県内業者を優先するよう指導しているところでございますが、今後とも土木事務所等にもこの趣旨を徹底し、さらにきめ細かく進めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 企画部長佐武廸生君。
 〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 土地開発公社の土砂採取事業に係る工事発注状況についてお答えをいたします。
 平成二年度から平成三年度末まで県土地開発公社で行った土砂採取事業については、請負額三百十六億二千百万円で、県内企業一社を含む十社による共同企業体に発注し、下請企業は全体で百十社でございます。
 下請企業については、県内企業が六十五社、県外企業は四十五社となってございまして、比率で申しますと県内五九%、県外で四一%となってございます。
 開発公社では、県内の中小企業育成のため極力県内企業を下請に参加させるよう、共同企業体に対して指導が行われたところでございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 農林水産部長中村 昇君。
 〔中村 昇君、登壇〕
○農林水産部長(中村 昇君) 農林水産部の公共事業の発注状況についてでございますが、工事内容は、道路、トンネル、橋梁、治山、漁港、魚礁の設置となってございます。
 平成二年度、三年度に発注した県内・県外業者への発注の件数等でございますが、平成二年度は県内六百一件で請負額百三十八億八千二百万円、県外二十一件で請負額三十八億四千六百万円、平成三年度では県内六百七件で請負額百三十五億二千四百万円、県外十五件で請負額四十二億一千二百万円でございます。
 なお、下請状況でございますが、平成三年度に県外業者へ発注した十五件の下請業者数は二十七社で、すべて県内業者となってございます。今後も下請業者の育成に努めてまいりたいと考えてございます。
 続きまして、米の輸入自由化と新政策についてでございます。
 米は国民の基本食糧であり、農業の根幹をなすもので、米の輸入自由化阻止については、これまで機会あるごとに全国知事会や県議会を通じて関係機関に強く要望してまいったところでございます。
 ご承知のとおり、本県は米の消費県でございまして、かつ零細規模でありますが、その米づくりは果樹、野菜、花卉との複合経営の一環として、また裏作野菜の生産安定や稲作依存度の高い兼業農家にとって、欠くことのできない品目でございます。
 昨年六月に示された新政策における稲作経営の望ましい規模は、議員お話しのとおりでございます。しかし、本県では一戸当たりの稲作面積が〇・三ヘクタールと小さいことや平地が少ないなど、国の基準にそぐわない面もございます。したがって、県では、従来から進めてまいりました高収益、複合経営の推進を基本としながら、主要な作業の共同化など、地域の実態に応じた効率的な米生産を目指してまいる所存でございます。
 また、ご指摘の農業経営基盤強化促進法案については、主として経営規模の拡大を目指しておるものでございますが、経営の効率的、安定的な農業育成などの関連施策を活用しながら、これらに対応してまいりたいと考えております。
○議長(馬頭哲弥君) 企業局長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○企業局長(高瀬芳彦君) ご質問のマリーナシティ関連の工事発注状況についてお答えいたします。
 平成二年度実績は、県内企業への発注が六件、金額で三億三千四百万円、県外企業へは三件、六十三億九千万円となってございます。また平成三年度実績では、県内企業三件、金額で三億三千二百万円、県外企業五件、十八億六千九百万円の発注となってございます。
 次に、平成三年度の県外企業受注の五件に係る下請業者数でございますが、県内業者十社、県外業者四社となってございます。率では、県内で七一%、県外で二九%となってございます。
 なお、企業局としても、今後も引き続いて県内企業の育成に努めてまいりたいと思います。機会あるごとにそのように要請をしてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 公文書の開示、調査書と指導要録についてお答えいたします。
 調査書、指導要録の開示についてございますが、高等学校の入学者選抜に際して中学校から高校へ提出される調査書は生徒の平素の学習の記録や生活態度などを記載しており、これは入学者選抜に当たり総合的に判定を行う上で、学力検査と並んで重要な資料となるものであります。また指導要録は調査書等の原本となるもので、児童生徒の氏名や入学年月日などの学籍と学習や健康の状況を記録しており、調査書とともに個人に関する情報であります。
 これらを公開することは、教育現場に混乱を持ち込むことにつながるおそれがあり、仮に保護者から請求が出されたといたしましても、応じることは適切でないと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 警察本部長中長昌一君。
 〔中長昌一君、登壇〕
○警察本部長(中長昌一君) 公文書開示条例について、公安委員会を実施機関に含めていないのはどうかというご質問でございます。
 県警察としては、警察行政を進める上において県民の皆様方の理解と協力を得ることが最も重要であると考えており、情報公開制度の意義や理念について十分に認識をしているところでございます。
 しかしながら、警察が保有をしておる情報のほとんどは、犯罪捜査に関するもの、個人のプライバシーに関するもの、個人の生命身体あるいは財産の保護に関するもの等々でありまして、これらは本来公開にはなじまない性質のものと考えております。
 また、これらの情報のほか、県民の理解と協力のもとに提供された一般的情報などがありますが、そのほとんどは情報源及びその内容を他に漏らさないという保証のもとに提供されたものであります。したがって、仮に公安委員会が実施機関となった場合、警察に提供した情報が将来公開される可能性を有するということになることから県民が情報提供をちゅうちょすることが予想され、その協力を確保することが困難となり、警察業務を遂行する上で重大な影響を及ぼすことが懸念されるのであります。
 さらに、警察業務は本来、地方的性格と国家的性格とをあわせ有する事務であり、全国的な統一性、一体性を保つ必要があります。このため、既に情報公開制度を実施している先行府県においても、いずれも公安委員会は実施機関から除かれております。
 以上のことから、本県においても全国同様、公安委員会は実施機関から除かれているものと考えております。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 33番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、再質問をいたします。
 情報公開の問題でございますが、先ほどいささか細目にわたってお尋ねをして、同僚の議員の皆さん方にも若干お聞き苦しい点があったのではないかと思いますが、私は総務委員会に所属しておらず、この場でしか聞けませんので、ご理解をいただきたいと思います。そのまま続けさせていただきます。
 条例と「知る権利」に関係する問題でございますけれども、「知る権利」の具体化ではないという答弁でございました。条文を読む限り、そうであろうということは承知しているわけです。県政を知ってもらう、理解してもらうためのそういう行政側からの開示ということについて、私は否定するものではありません。それはそれで大変結構なことだと思います。
 同時に、それを逆の方面から裏づける──憲法的な意味での「知る権利」というのはもう既に明らかにされてきているわけですから、そういう立場からこの目的に接近をさせるということが、この条例そのものにより力強い生命を与えるものではないかと思うわけです。そういう点で、「知る権利」からの出発というのも必要ではないかという私の考えであります。ただ、この点については論争になるだろうと思いますので、そういう点、含みおいて考えていただきたいと思います。
 次に、個人情報についてであります。
 本人の請求だからといって例外的に開示すべきではないというお話がございました。条例の精神からだけでいきますと、そういうことになろうと思います。
 ただ、私が先ほどからしきりに申し上げている、情報公開というのは前提として「知る権利」というものが憲法的に保障された上に成り立っているという立場で進めるならば、この個人の情報ということについても、本人の情報であれば提供してしかるべきではないかと思うわけです。正確な情報が記録されているのか、誤った情報を訂正してもらえるのか、そういう権利は当然あると思うんです。そういうことが、この条例の目的である「県政を理解し信頼をさせる」というところに合致していくのではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。その点を再度お尋ねをしておきたいと思います。
 それから、開示しなくてもよい場合を定めた九条についてお尋ねを申し上げたいと思います。
 九条を適正に運用していく、恣意にわたることのないようにしたいという部長答弁がございました。そのこと自体は大変結構なことだと思うわけですが、そういう内容を条文の文言の中に明確にすべきではないかと私は思うわけです。
 それで、幾つかの項目についてお尋ねをいたします。
 本条例を定めるに当たって、当局は情報懇話会より「和歌山県における情報公開制度のあり方について」という提言を受けておられると思います。その提言を十分に尊重されて条例案の作成に当たったと思うわけですが、この提言との関係で二、三、お尋ねをいたします。
 九条の六項です。これは「当該合議制機関等の公正若しくは円滑な議事運営が損なわれると認められるもの」は開示しなくてもよいという項目を定めたところであります。
 この内容についても、妥当な点がある点については私は否定をいたしません。ただ、この点について提言はこのように述べているんです。「当該合議制機関等の公正又は円滑な議事運営が著しく損なわれると認められるものについては非開示とすることができる」と。この提言の中には「著しく」という言葉が入っています。これを本条例ではあえて抜いたわけですね。それは一体どういうことなのか。
 提言の中では、「著しく」という言葉を入れる上でこのような理由をつけています。「この非開示事項は、濫用されるおそれが多分にある。上記のような議事運営規程又は議決さえあれば、すべて非開示とされるというのでは、公文書公開制度の趣旨が没却される」と。だから、「一定期間の実施状況によっては、この非開示事項を見直す必要があると考える」というところまで述べておりまして、そして「著しく」という形容詞をあえて入れたわけです。それをこの条例案では抜かれたというのはどういうことなのか、明らかにしていただきたいと思います。私は、これを抜くことによって恣意の入る余地があえて広げられたのではないかと懸念をするわけであります。
 次に第七項の、意思形成過程の情報で開示がその過程に支障を来すおそれがあれば開示しなくてもよいという内容についてであります。
 これにつきましても、さきの提言はその支障が明白な場合に限定せよとうたっています。条文上、それは担保されておらないわけで、逆に意思形成に支障が生じるおそれのあるものは開示しないというふうに、提言とは逆方向の、「おそれ」という極めて恣意的な文言が入れられているわけです。この「おそれ」という言葉は、提言の例文の中にはございません。なぜ、そういう主観が入る余地のある「おそれ」という言葉を入れられたのか、お聞きしたいと思います。私は、削除すべきだと思います。
 次の八項の行政運営情報についても、同様であろうかと思います。
 ここでも提言は、開示・非開示の判断は実施機関の恣意的な判断に流れやすいとの注意をし、その運用に当たっては客観的に明白な条件のある場合に限って非開示とすべしと言っているわけです。ところが、条文上はそれが保障されていません。したがって、提言の条件について明記をすべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
 そのほか、このような問題はたくさんございます。一応この程度にとどめおきたいと思いますが、なぜこの問題について私がくどくどと申し上げるかと言いますと、条文の読み方というのは時代によって変わってくるからであります。こういうふうに、開示を前提にするんだ、原則公開だという前提でこの条例文がつくられたということではありますけれども、その条件が明文化されていないと、時代によってその精神がどんどん変えられていく。そういうことは歴史上たくさんあるわけです。したがって、こういう条文については明確にしておく必要があるのではないかと思いまして、先ほどからの意見を申し上げさせていただいているわけでございます。
 それから、公安委員会の開示の問題でございます。
 本部長が答えられた犯罪等の関係についての開示ということは、もうおっしゃるとおりだと思います。私もそれで結構だとは思いますけれども、皆さんがなされている仕事というのはそれだけではないと思うんです。だから、開示してはならない部分と開示してもいい部分というのが分離できると思うんです。そういう点を一切ひっくるめてしまって公安委員会関係は別だと、こういうようなやり方では、県民の信頼を得るために公開をしていくんだという条例の本来的な趣旨に公安委員会みずからが後退姿勢をとることになるのではないかと思うわけであります。これは別に答弁は要りませんが、お聞きおきいただきたいと思います。
 それから、議会について申しますと、これも当然公開されるべきだと思いますが、昨日の質問と答弁の中にもございましたように、それは議会の良識が決めることであろうかと思います。私もそういうふうに思っておりますが、開示の方向で議長さんはイニシアチブを発揮されるよう期待を申し上げたいと思うわけでございます。
 情報公開に関連する質問は以上でございます。
 次に、下請振興についてお尋ねをいたします。
 当局の皆さん方が一定の努力をしておられることについては、私、評価することにやぶさかではございません。本当にご苦労さんだと思っております。ただ、その仕事自身、靴の上から足をかくような感じが否めないわけです。通達を出す、紹介事業を行う、これは大変結構なことだと思いますけれども、それがどのような実効を上げておられるのか、そして元請企業がそれをどのように受けとめておるのか、こういうあたりがなかなか掌握されないままになっているわけです。内製化の問題がどれだけ進んでいるのか、あるいは単価の切り下げがどうなっているのか、こういうあたりがほとんど掌握されていないというのが実態です。
 紹介事業も随分とやられましたけれども、実際にそれが仕事として実ったのは、先ほど紹介された数字の約六分の一にとどまっているわけです。そういう皆さん方の努力にもかかわらずなかなかうまくいっていないという問題に対して、あと一歩踏み込んだ指導が必要ではないかと思うわけです。不況という特殊な状況の中でございますから成果が上げにくいという事情もよくわかりますが、そういうときだけにご奮闘を願いたいと思います。
 金融対策は、さきに求めたほかに、従来の振興資金の返済猶予や返済期限の延長ということもぜひお考えをいただきたいと思います。この点は要望にとどめておきたいと思います。
 県工事の発注状況の答弁につきまして、二つのことを感じました。一つは、ビッグプロジェクト、大規模工事における県内企業の位置の低さということです。これが余りにも低いわけです。例えば、コスモパーク加太の土取り造成事業については三百十六億円が投下されておりますが、これがJVに発注された。その中に県内業者というのは一業者だけです。あとはもうそうそうたる県外の業者が並んでいるという状態であります。だから、三百十六億の受け手としては大半が県外業者であったと。下請の問題についてはまた別に論じたいと思いますが、そういう状況であった。マリーナシティの造成についても、金額にして平成二年と三年では実に九一%が県外業者に落ちているわけです。教育三館のあの美術館、博物館、図書館についても、ほとんどが県外業者にいく。
 こういうような非常に大きな事業になると八〇%、九〇%、一〇〇%近くが県外業者の方に流れてしまうという問題については、県下の業者の資本力、技術力の問題があろうかとは思いますが、やはり一考を要するのではないかと思います。こういう点をぜひ考えていただきたい。
 それから、その県外業者に発注された仕事がどれだけ県内の業者に下請されてきたかという問題です。
 これは、実は私が質問を通告するまで、何社あるかを十分掌握されていない部局もございました。そして、仕事を受けた会社数はわかりましたけれども、仕事の量についてはわからないわけです。
 例えば、コスモパーク加太で県外業者の受けた仕事の六十数%が県内の下請が受けたんだと答弁されます。そうすると、事業量としても何だか相当数が県内業者に落ちてきたように錯覚をしますけれども、それは会社の数であって、例え話によくするわけですけれども、コスモパーク加太でほこりが立たないように水をまいている会社だって、非常に小さな仕事の量ですが、一社に勘定されるわけです。電線一本引いても一社に勘定されるわけです。そうすると、会社の数だけではその下請事業がどれだけ和歌山県の業者に落ちてきたかということがわからないんです。そして実際、これが全体のトータルとしてもわかっていないというのが実情なんです。
 これは、民間の会社と会社との関係ですから金額的に掌握するということは非常に難しい問題もあります。それは十分承知の上でありますけれども、県内業者を育成する、そして中小業者を育てていこうという立場に立つならば、そこにもう一工夫あっていいんじゃないかと思うわけです。そういう点での一段の努力を求めたいと思うわけです。
 そうでないと、鳴り物入りで経済波及効果がこれだけあるんだとおっしゃられても、実際、その風が大阪や東京を向いて吹いていってしまったというようなことになりかねないわけであります。そういう点を関係者の皆さん方は十分考えて今後の努力をしていただきたいと思いますが、どういうふうなご所見をお持ちでしょうか。この問題に限りましては、土木部長の方から一括してお答えいただければと思います。
 以上で、第二問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 総務部長山中昭栄君。
 〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 公文書の開示に関する条例についての再度のお尋ねでございますが、まず第一点の本人の開示請求の取り扱いの問題でございます。
 自己に関する情報の開示請求に関する制度と今回ご提案申し上げている本制度とは、本来、趣旨、目的を異にするものでございまして、公文書開示制度とは別の制度として別途検討する必要があるものと考えまして、提案を申し上げている条例案の内容になっているということでございます。
 それから非開示事項についての考え方でございますが、この制度においては、第三条で解釈及び運用について規定している原則公開の精神に基づいて運用されるものでございまして、各非開示事項はその例外として規定しているものでございます。
 個別に第九条の第六号から八号までの規定を引用されてご指摘をいただきましたが、個別にその趣旨を申し上げますと、第六号の合議制機関については、行政が独善に陥ることを防止して行政を民主化し公正さを担保するために設置されているものでございまして、こういった機関の性格からすると、その独立性や第三者性を高度に尊重することが重要であると考えたわけでございます。
 したがって、そうした合議制機関における自由な討議や発言が差し控えられるという事態になりますと、機関そのものの設置の趣旨も損なわれていくことにもなりますので、公正、円滑な議事運営を担保するということに主眼を置いたものでございます。
 また、七号の意思形成過程の情報については、未成熟あるいは不正確な情報を開示することによって県民の方々に誤解や混乱を生ずるおそれがあるということから、意思形成に際して逆にそのことが支障になるということを避けるための規定でございます。
 八号の行政運営情報については客観的に判断をしていくことにしており、懇話会提言も踏まえて運用をしてまいる所存でございます。
 総じて、行政の恣意的な運用になるのではないかというご懸念からのご質問だと受けとめておりますが、制度的にも、実施機関の拡大解釈や恣意的な判断を排除するために非開示とした理由を請求権者に提示することを義務づけておりますし、不服申し立てがあった場合には第三者的な機関である公文書開示審査会への諮問を義務づけております。こういった条例全体の組み立てから見ますと、実際問題としては、非開示事項の適用の有無にそういった文言のあるなしが直接影響することはない、それほどの違いを生ずることはないと考えております。
 いずれにしても、九条の六号から八号までに規定をする非開示事項に該当するかどうかの判断に当たっては客観的な該当事由が必要であると考えておりますし、制度の運用に当たっては、繰り返しになりますが、その趣旨に沿って適正になされるように心がけてまいりたいと考えております。
○議長(馬頭哲弥君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 大型事業に関する下請の問題についてお答え申し上げます。
 大型の土木工事あるいは建築工事になりますと、どうしてもその下請も重層的でありますし、民間業者間の発注、受注の仕方もいろいろな形態がございます。したがって、非常に複雑になっておりますので、おっしゃるとおり、その金額をぴしっと全体をつかむということは実は自信はございませんが、ただ、県内業者育成という一つの大きな観点もございます。実際どのような方法が可能かということを十分研究させていただきたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問はありませんか。
 以上で、鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時五十七分休憩
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