平成4年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(吉井和視議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時四分再開
○副議長(大江康弘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(大江康弘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 25番吉井和視君。
 〔吉井和視君、登壇〕(拍手)
○吉井和視君 それでは、通告順に従いまして質問をさせていただきます。
 まず初めに、農業関係について質問させていただきます。
 今、日本の稲作がガットでの関税自由化により崩壊するのではないかと大変懸念されております。日本人の主食の米は、自給するという基本のもとに、食管法により外国米を国内に入れることなく守られてきたのであります。アメリカによる市場開放の要求が、ガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉の場で、例外なき関税化という自由貿易の原則論により強く出されております。最近のアメリカ、EC間の農業交渉の合意という新しい局面により、ますます日本の米市場開放が迫られてきているのであります。一粒の米も入れないという方針であった農水省はどのような対応をするのか、最終的に受け入れざるを得ないと判断するのか、また政府はあくまでも日本の農業の基幹である稲作を日本農業の聖域として最後まで守り通すのか、日本農政史上最大の分岐点になってきております。この問題は、国政において論議され、最終決断される問題でありますが、むしろ地方が主体となって考えなければならないと思うわけであります。
 アメリカの米は日本の価格の五分の一であるとか、タイ米は十分の一であるとかという意見がございます。そしてまた、この米を日本が輸入すれば、今、米をつくっている農家にその所得分を補償しても、まだおつりが来るというような意見を述べる方もいらっしゃいます。果たして、米が自由化され、日本がアメリカ及び国際市場の米を買いに出たとき、米の価格は今のままで安定するのか、また生産地域がごく一部に限られており、生産量が少ない、日本人が好むとされるジャポニカ系の米を安定して供給してくれるのかどうかが問題であります。二十年前、アメリカが大豆の禁輸措置をとったときのようなことが再び起こらないとも限らないわけであります。
 アメリカには輸出管理法というものがあって、大統領権限で農産物の輸出制限ができることになっているのであります。ニクソン大統領による大豆禁輸措置がとられたころから、いわゆる食糧の安全保障の必要性が盛んに論じられたわけであります。世界のどこの国においても食糧自給を優先政策としていることは事実でございます。スイス、スウェーデンといった中立国は、農業用資材においてさえも備蓄して、あらゆることを想定して国民が飢えることのない、生き延びるための政策をとっているのであります。それは、みずからの苦い歴史的体験から実施しているわけであります。
 十二年前の農政審議会の答申にも、食糧自給について、「今後の世界の食糧需給の不安定性や国際的要因による不測の事態の発生に備え、平素から輸入の安定確保や備蓄とあわせて農業生産の担い手の育成を中心にして、優良農地、水資源確保、農業技術の向上を含め総合的な食糧自給力の維持強化を図っておくことが必要である」と述べております。また、「食糧の安全保障」という言葉も初めてこの答申の中でうたわれたわけであります。米が一たん自由化されれば日本の稲作は大きな波で衰退し、農家は米を捨て、十年もしないうちにすべての水田が消滅するのではないでしょうか。
 和歌山県の稲作状況でありますが、稲作農家は三万一千三百世帯あり、その作付面積は約一万ヘクタールで全国第四十二位、全国の○・五%の生産量であることから米の自由化の影響は少ないわけでありますが、農家の農業収入の八・六%を占めていることでもあり、本県農家にとっても大きな問題であろうと考えるところであります。
 そこで、知事にお尋ねいたします。
 米の自由化で日本の稲作が消滅することにより、日本の農村の環境、生活、文化のすべてが変化し、農村社会が崩壊するのではないかという意見もございます。地方の時代を担うためにも、日本の農業の振興は避けて通れないものであります。知事は、全国知事会のリーダーとして、また地方の旗頭として、国に対し、米の自由化、日本のあるべき農業及び農村社会について提言する立場にあると思うわけでありますが、知事のご意見をお伺いいたしたいと思います。
 次に、稲作がなくなれば水田の果たしてきた治水機能、水資源保全機能はどのようになるでしょうか。
 この機能をダムに代替してダムを建設するとすれば、ダム建設費が九兆円かかると言われております。これは、三菱総合研究所が農水省の委託を受けて行った調査結果であります。そしてまた島根大学の永田教授は、このダムの維持管理、償却費が毎年一兆円程度かかると指摘しております。それだけ水田は重要な役割を果たしてきたわけであります。
 また、農業用水、治水、防火用水、自然環境の保全という役割を果たしてきたため池はどうなるのか。
 ため池のほとんどは江戸時代につくられたと言われております。昔の人が、多くの労力と時間をかけてつくったのであります。しかし、それらは老朽化のため大変危険な池が相当数あると聞いております。県内には大体五千六百カ所のため池がございます。そのうち九○%以上が農業用水として利用されているわけであります。米の自由化等で、今後農業用水としてのため池が不必要となり放置されるということになりますと、維持管理のないため池はますます危険となるのが必然であります。また、今の時点でさえ不要とされるため池がたくさんありますが、いざというときの食糧供給能力を確保するためにも、先人が苦労してつくり残してくれた財産であるため池をできるだけつぶさず、貯水したまま保全し、私たちの生活に利用できる方法を考える必要があるのではないかと考えます。
 そこで、農林水産部長にお尋ねいたします。
 県下のため池の現状と今後の方針、利活用についてお尋ねいたします。
 そしてまた、吉備町は今すばらしい計画をいたしております。吉備町に手水池という池がございますが、この池のほとりに町の庁舎を建設し、このため池を町民の憩いの場の公園として、貯水したまま利活用を図るという計画をいたしております。しかし、この池は古く、しかも現在では農業用水として利用している農家が少なくてその維持管理が行き届かないため、堤防が危険な状態となってきております。
 そこで、農村の自然環境保護を兼ね備えた手水池の整備と利活用整備を推進していただくよう、よろしくお願いを申し上げます。
 続いて、高齢社会について質問をさせていただきます。
 昨今、高齢者問題について各方面で論議されております。さまざまな分野での諸問題について考えるとき、高齢者問題と関係なしには語れないというほどの状況になってきております。推計では、平成三十七年には国民四人に一人が高齢者であるという社会が到来するわけであります。諸外国が経験したことのない物すごく速いスピードでこの高齢化社会がやってくるわけであります。
 現在、欧米諸国の老齢人口比率は、スウェーデン一八・一%、ドイツ一四・九%、イギリス一五・四%、アメリカ一二・六%となっており、現時点では日本より高齢化が進んでいるわけでありますが、あと三十年ほどすれば日本は世界一の高齢社会になるわけであります。
 高齢化社会と言われる高齢比率七%から、高齢社会と言われる高齢比率一四%までの到達スピードでありますが、アメリカでは六十五年、スウェーデンでは八十五年、フランスでは実に百十五年という長い時間をかけて緩やかに高齢化社会に突入したわけであります。しかし、日本は二十五年という短い年数でこの社会に入るわけであります。高齢化率が高くても、欧米のようにゆっくりとしたスピードで進行すれば、その社会到来に対してさまざまな準備もできるわけでありますが、急速に高齢化するというところに日本における高齢化社会の問題点と課題があるわけでございます。二十一世紀の超高齢化社会が暗黒社会となるのか、それとも成熟社会としてお互いにみんなが長寿を喜び合える社会になるかは今からの対策いかんにかかっているわけであります。
 特に和歌山県は、全国より十年早いスピードで高齢社会がやってくるわけでありますから、全国に先駆けた高齢対策を推進していかなければ将来に対応することができないわけであります。国においては、本格的な高齢社会に対応するため、従来より進めてきた地域福祉の充実とその体制づくりに重点を置くという方向を明確にしております。これは、今までの施設中心の高齢対策から、地域の中で今まで自分たちが関係してきた社会関係を維持しながら、在宅中心に施策を体系化していこうということであります。しかし、あくまでも地域福祉を支えるのは福祉制度や福祉施設であり、それが充実しなければ理想とする地域福祉の存在がないわけであります。
 そういう観点から、まず福祉施設の問題について質問をさせていただきます。
 福祉の水準はその国の人権保障の水準をあらわしていると言われますが、現在の老人ホーム入所者の生活、処遇は文化的な生活水準を維持されているかどうかについて、知事のご所見をお伺いいたします。
 次に、老人ホームの新設についてであります。
 老人ホーム建設のほとんどは民間の社会福祉法人が設置主体となっているのでありますが、老人ホーム新設に当たり、設置主体となっている者がその用地を無償で提供することはもちろん、建物についても現行の国庫補助単価では建設することが非常に困難であり、かなりの差額を法人が負担しているのが現状であります。これは、ひいては入所者の適正な処遇及び福祉従事者の待遇改善を阻害する要因になりかねないと考えるわけでありますが、老人ホーム建設時の実態及び今後の方針についてお尋ねいたします。
 次に、本格的な高齢社会に対応するため平成二年に老人福祉法を改正し、地域福祉の中で在宅福祉サービスと施設サービスを市町村単位で一元的にカバーできる体制づくりを進めているところであります。この改正については大変評価するものであり、市町村の積極的な取り組みが期待されるということで今後の高齢対策の方向づけがなされたわけでありますが、今回の改正点の実施について、例えば、施設の確保、人材の確保等の具体的な取り組み方針についてお尋ねいたします。
 次に、二十一世紀の地域福祉を確立するためには、どうしても地域社会の支え、ボランティア活動なしには高齢社会を乗り切ることは困難であると確信いたします。特に高齢社会に対応するボランティアについては、介助、介護等の専門的な知識、技術が必要とされております。
 そこで、県ではさまざまなボランティア施策を実施しておりますが、専門的な知識、技術を習得できるボランティアスクールを開校してはどうかと思うわけでありますが、いかがでございますか。
 また最近、介護福祉士という認定制度がありますが、その受験資格とリンクする方向で国と協議し、ボランティア専門スクールの開校について検討していただきたいと思いますが、いかがなものかお伺いいたします。
 さらに最近、ボランティアの有償サービスをメニューとした福祉事業を和歌山市が実施していると聞きますが、ボランティアによる有償サービスが、ボランティアの無償性ということから考え、今後ボランティア育成の障害になるのではないかと心配するのでありますけれども、この方向に疑問がないかどうかお聞かせください。
 次に、教育長にお尋ねいたします。
 来年の高校生募集で吉備高校の家政科が廃止されたわけであります。これは時代の流れで仕方がないという意見もございますけれども、今後いろんな専門的な学科を考えるときに、二十一世紀に向けて真にボランティアの育成が必要とされるなら、県立高校に福祉科あるいは福祉のカリキュラムを持った学科を設置すべきと思うわけでありますが、このような考えがあるかどうかについてお伺いいたします。
 続いて、個性ある川づくりということについてご質問申し上げます。
 川は、人間にとって身近な自然の恵みであり、かけがえのない共通の財産であります。人間は、川から受ける害を少なくするよう、そしてまた川から受ける利益を多くするように古来より働きかけてまいりました。人々は川のほとりで生活し、川の恩恵の上にそれぞれの文化と歴史を築いてきたのであります。また、生活領域の拡大、生産活動の発展のために、河川の治水、利水機能の整備に最大限努力を払ってまいりました。そして、治水と利水の条件がある程度満足されると、次に求める方向はゆとりや潤いといった高度な精神的な充実感というものになってまいりました。この流れに沿って、水辺の環境に対する関心がますます高まってきたのであります。その結果、川辺に対する再評価が広く行われ、河川を中心とした町づくりや町の活性化、あるいは各種イベントが各地方で催されたり計画されたりするようになってきたのであります。
 各地域のそれぞれの河川は、その河川独自の歴史、風土といったさまざまな個性があります。私は、河川の整備や環境保全、リゾート、活性化対策等を含めた川づくりには、それぞれ川の個性を重視したものでなければ本物の自然というものはあらわれないと思います。また、個性を配慮した地域の川づくりをするために、各河川を再評価し、目的達成に向けた長期計画を作成しなければその川づくりに対応できないと考えますが、土木部長のご見解をお尋ねいたします。
 私は有田川のほとりに住んでおりますが、昭和二十八年の七・一八大水害は有田川流域一帯に大きな被害と悲惨なつめ跡を残したのであります。流域住民はそのことを片時も忘れず、常に堤防の強化を訴え、不安のない生活をするため河川整備に神経を注いできたのであります。その結果として、有田川は一定の治水機能が確保できつつあり、地域住民は安堵と感謝をしているところであります。
 しかしながら、特に有田川下流においては、近年、流域における生産活動の拡大や生活様式の変化から、河川へ排出される汚濁の増大により川の環境が著しく侵されております。私たちが子供のころの清流は、もはや存在いたしません。その清流の回復を、地域住民はもとより漁業関係者を初め、釣り客や有田川に親しみを覚える人たちから強く望まれているところであります。この問題を解決するためには、まず公共下水道の整備や農業集落排水事業の早期実施が必要なわけでありますが、現在、有田川流域における総合的な川づくりについてどのように取り組まれておるのか、また将来どのような計画が個性ある有田川にふさわしいのかをお尋ねいたします。
 以上お尋ねいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
○副議長(大江康弘君) ただいまの吉井和視君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 吉井議員にお答え申し上げます。
 米の自由化及び農業、農村社会についての問題でございます。
 米の自由化については、かねてから知事会を通じて政府に対し自由化阻止を強く要望してまいってきておるところでございます。
 お話ございましたように、ウルグアイ・ラウンドの決着を目指してECと米国との間で農業政策で基本的合意を得たということが伝えられておるわけでございまして、日本の農業にとっても非常に厳しい段階に立ち至っていることは事実でございます。政府としては、米を一律関税化の例外として取り扱っていくという基本方針で努力すると言明しておるわけでございます。私としても、こうした国の動向を注視しながら、従来の自由化阻止、反対の基本方針を堅持してまいる所存でございます。
 お話ございましたように、米は我が国農業の中心でもあるし、国の主要産業でもあり、食糧安保の面においても重要でございます。また、稲作農家だけの問題でもなく、農村社会、環境保全の面においても水田の果たす役割は非常に大きいものがございます。日本の生活、文化、伝統等を農村が支えておる現況でございます。そうした点を重視しつつ努力してまいりたいと思っております。
 次に、高齢者社会についての問題でございます。施設入所者の処遇及び生活水準についてでございます。
 お話ございましたように、全国的に高齢化が進みつつある中で和歌山県は特に高齢化が進んでおりまして、そうした中でいかに福祉政策があるべきかということが非常に重要な課題であることは論をまたないところでございます。
 現在の老人ホームは旧来の形と異なり、明るくて、地域に開放された施設になっておるわけでございます。特に最近、一人当たりの居室面積や昼間の活動スペースの拡大、プライバシー保護の面からも個室が重視されておるわけでございます。本県では、全国で初めての全室個室の特別養護老人ホームのモデルを設置したところでもあります。また、介護普及センターを全国に先駆けて県内に設置し、職員の介護技術の向上を通じて入所者が安心して処遇を受けられるように努力しているところでございます。今後とも、入所者が自立して文化的な生活が送れるように努めてまいりたいと考えておるところでございます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 農林水産部長中村 昇君。
 〔中村 昇君、登壇〕
○農林水産部長(中村 昇君) ため池の保全と整備についてお答えを申し上げます。
 和歌山県におけるため池は、総数五千六百カ所余りございます。その利用の現状は、農業専用が五千二百カ所、農業と防火用水等の併用が百五十カ所、全く利用されていないため池が二百五十カ所となってございます。
 議員お話しのとおり、ため池の築造は古く、改修を要するものが多いため、過去十年間に約百五十カ所の改修整備を実施してきたところでございます。また、ため池の維持管理については、受益面積の減少、後継者不足、管理費の高騰等により維持管理に種々課題も生じておるのが現状でございます。従来、農業用水のみならず治水機能も兼ねたため池も多く、出水期における災害を防止するためにも、市町村及び管理団体に対して万全の措置を講じられるよう指導を徹底し、維持管理の円滑化を図っていくとともに、今後もその整備に積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 また、ため池の多目的利用についてでございますが、議員ご指摘のように、今後ため池の保全にあわせて農村の自然環境に配慮した地域の触れ合いの場として利用するなど、ため池の有効な活用を図っていく必要があると考えてございます。
 最後に、お尋ねの吉備町の手水池の事業推進についてでございますが、農業用水の確保とともに県下で初めて町民が水に親しめる憩いの場としてのため池整備でございまして、平成五年度採択に向けて国に対して強く要望しているところでございます。今後とも、引き続き事業実現のため努力をしてまいりたいと考えてございます。
 以上です。
○副議長(大江康弘君) 民生部長吉井清純君。
 〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) 高齢社会について、まず施設の新設についてお答えをいたします。
 老人ホームに関する会計では、施設建設時の法人の負担と施設の運営に要する経費は法令上明確に区分されており、議員ご心配のように老人ホーム建設時の負担が入所者の処遇や従事者の待遇改善に影響を与えることはないと考えております。
 ただ、老人ホームの建設に際しては、国及び県では基準額の四分の三を補助することとなっておりますが、議員ご指摘のとおり、設置者には超過負担など相当な負担が伴うことも事実でございます。この設置者の負担を軽減するため、毎年、補助単価の引き上げが図れているほか、社会福祉医療事業団による低利融資の制度も用意されております。今後とも、老人ホームの建設及び運営が円滑に行われるように、引き続き補助基準額の増額等について国に要望してまいりたいと考えてございます。
 次に、老人福祉法の改正における取り組みについてでございます。
 先般の老人福祉法の改正により、高齢者福祉サービスについては、在宅福祉はもとより施設福祉についても市町村が主体となって総合的に推進するという位置づけがなされたところでございます。このような状況を踏まえ、県では「わかやま二○○一喜の国長寿保健福祉プラン」において在宅福祉サービス、施設福祉サービスの目標量を設定したところでございます。
 現在、各市町村では、ホームヘルプ事業、デイサービス事業等の在宅福祉サービスが順調に進められていますが、県としてもこれを支援すべく、市町村の福祉サービスの拠点となる施設の整備を推進するとともに、本年、県に設置した福祉人材情報センターを活用して、さらに質の高い福祉マンパワーの確保に努めてまいりたいと考えております。さらに、各市町村では現在、老人保健福祉計画を策定中でありますが、この中で各市町村における具体的な高齢者福祉サービスのビジョンが明らかにされるように指導してまいりたいと考えております。
 次に、ボランティアスクールの設置についてでございます。
 高齢社会が急速に進行する中、現在、福祉の充実が大きな課題でございます。行政施策とともに、互いに助け合い支え合う、ぬくもりのある地域づくりが叫ばれているところでございます。そうした情勢において、とりわけホームヘルパー等、福祉従事者の確保を初め、住民参加とともにボランティアの育成などの観点から福祉マンパワーの確保は極めて重要なことと認識いたしております。
 このため、県においては、従来より福祉マインドの醸成と身近なボランティア経験を積んでいただく機会としてサマーボランティアスクールを開設してきたところでありますが、本年度から介護福祉士の資格取得を目指す方々を支援するための介護福祉士の受験に向けた講習会を開催しているところでございます。また、先ほど知事の答弁にもありましたとおり、介護普及センターにおいても、職員の資質向上はもとより、住民を対象とした介護教室の開催も行うこととしてございます。さらに、ボランティアなどの福祉入門日曜教室の開催を通じ、広く福祉の人材確保に努めているところでございます。
 介護福祉士の資格とリンクした形でのボランティアスクールの開設については、新しい課題解決のための貴重なご提言と受けとめさせていただきますが、ただ、議員ご指摘のように介護福祉士は国の資格制度でございますので、今後の研究課題とさせていただきたいと思います。
 最後に、ボランティア有償サービスについてでございます。
 和歌山市社会福祉協議会において、昨年からふれあいサービスという名称で有償サービスが実施されてございます。このサービスは住民による会員制の相互援助活動で、福祉ニーズへのサービスに対し利用料などの実費を支払う仕組みで、住民参加型在宅福祉サービスと呼ばれ、現在、全国で約三百六十団体が実施していると聞いてございます。元来、ボランティアは自発性、無償性といった性格でございまして、この有償サービスとボランティア活動とは、その性格、内容がおのずと異なるものと認識しているところでございますが、議員ご指摘の点については十分配慮しながら、今後ともボランティアの育成に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 河川づくりについてお答えをいたします。
 個性ある川づくりについてでございますが、河川はその流域の歴史や文化と深くかかわり、治水、利水事業の進展は社会経済の発展に大きく寄与してきたところであります。近年、豊かさや潤いを求めて水辺への関心が高まっており、親水性や景観、生態に配慮した川づくりが強く認識されているところであります。
 本年度からスタートした第八次治水事業五箇年計画においても、治水対策に加え、環境対策が柱の一つとなっております。今後、河川の整備に当たっては、河川の特性や流域の歴史、文化を踏まえ、治水計画と整合した個性豊かな川づくりを目指して、河川環境管理基本計画など長期的な視点に立った計画の策定に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、有田川の現状と将来計画についてでございます。
 有田川は、昭和二十八年の大水害を契機として、災害復旧助成事業による復旧、昭和四十一年度には治水、利水を目的とする二川ダムが完成、昭和五十七年度からは河口から金屋橋までの区間十五キロメートルにおいて中小河川改修事業により治水対策を進めているところであります。平成元年度から二川ダムで周辺環境整備事業、平成二年度からは下流区間でふるさとの川モデル河川としての事業を進めており、また今年度には有田市、吉備町、清水町で地方特定河川環境整備事業に着手するなど、水辺環境整備に取り組んでいるところでございます。
 今後、河川の特性や背後地域と調和のとれた有田地方の自然や文化的な特色を踏まえ、親水性、景観、生態系並びに水質の保全等に配慮した川づくりを目指して有田川環境管理基本計画を策定し、事業を促進してまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 高校における福祉学科の設置についてお答えいたします。
 高齢化社会に対応する青少年のボランティア活動は大変重要であると考えてございます。教育委員会といたしましては、本年度の学校教育指導の方針と重点において新たに福祉教育を重点指導項目の一つとして設け、この中で、児童生徒一人一人に備わっている福祉の心を積極的に引き出すとともに、ボランティア活動等を通して福祉へのかかわりを自分自身の問題として認識させ、生涯にわたって実践的に社会にかかわっていく態度を育成する必要があると明記しております。
 具体的には、学校の教育活動全体を通して福祉問題の学習や福祉体験学習等を計画的に実施すること、高齢者等が社会生活の中で援助を必要としている場面に出会ったときには積極的に適切な行動がとれるよう指導すること、さらにはボランティア活動への参加や家庭における看護によって新たな自分を発見することが大切であると指導しております。各高等学校にあっては、家庭科のホームプロジェクトや学校家庭クラブ、及び生徒会活動の中で老人ホームへの訪問や養護学校との交流活動等に取り組んでいるところであります。
 今後、各学校での福祉に関する学習をより充実させていくとともに、議員お尋ねの福祉関連学科の設置については、時代や社会のニーズ、地域や学校の実態等を踏まえ、福祉や介護等を学習する福祉系のコースを含めた高等学校における新たな総合学科設置構想との関連の中で多面的に研究してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 25番吉井和視君。
○吉井和視君 それでは、何点か、要望という形でやらせていただきます。
 まず最初に、知事の米の自由化の問題に対する答弁でありますが、私、大変満足いたしております。
 それから、福祉施設入所者の水準についての知事のお考え方でありますが、私は、現在の福祉施設、特に老人ホームの入所者の処遇については生活水準が低いという考えのもとにこの質問をさせていただきました。
 私も、かつて高校生のボランティアと一緒に特別養護老人ホームに三日間ほど泊まった経験がございます。この場で細かいことを申し上げて非常に申しわけないと思いますが、ふろは二日に一回とか、夕食は五時からというように、我々通常の一般家庭の生活からすればまだまだ低い状態にあるわけでございます。そういうことを考えてみると、この生活者の水準というものは、先ほど質問の中で言わせていただいた人権保障の水準から見ると、まだまだという感がございます。そういうことも考え合わせていただいて、今後、老人ホーム入所者の生活の向上に取り組んでいただきたい。ただ、措置費の基準といったようなものがございますが、そういうことも含めて検討していただきたいと思います。
 また部長から、老人ホームの新設について影響がないというご答弁があったわけですが、これはそのとおりだと思います。しかし、世の中には「不正」という言葉が頭につくととんでもないことが起こるということを考え合わせていただいて、特に福祉の職場で働いている人たちの身分の安定、待遇改善というものを考えていただきたいと思います。
 それから、ボランティアの有償サービスについてですけれども、民生部長は、高瀬局長とともに長い間、和歌山県の同和問題を支えてこられた方でございます。そこで特に要望するわけですけれども、同和問題の県内の実態調査、県民意識調査を見てみますと、まだまだの感がございます。そこで私は、ボランティア活動に若い人たちが参加し、人の痛み、人の大切さ、人が人を救う、そういうことを認識することが同和問題の解決にもつながる一番の道ではないかと思いますので、そういうこともご要望申し上げておきます。
 最後になりましたけれども、教育長の答弁もありがたいもので、非常に喜んでおります。
 そこで、教育長の答弁の中に総合学科設置構想というのがございましたが、これは初めて聞く名前です。ちょっと聞いてみたところによると、生徒の意欲等を主体的に取り入れた専門的な学科だということです。その中には福祉看護コースというものがあって非常にいいものだと思います。これは、私の質問申し上げたことと同じような意味を含むものですので、積極的に推進していただくことをお願い申し上げます。
 要望は、以上でございます。
○副議長(大江康弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で吉井和視君の質問が終了いたしました。

このページの先頭へ