平成4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(上野哲弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時三分再開
○副議長(大江康弘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(大江康弘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番上野哲弘君。
  〔上野哲弘君、登壇〕
○上野哲弘君 通告に基づきまして、一般質問を行います。
 表題のとおり、紀南地域の活性化ということでございますが、地域の過疎化が進む中で、県当局もその対応に苦慮していることと存じます。いまだその特効薬がないようでありますが、一つの発想をして県当局の所見をお伺いしたいと思います。
 この過疎問題につきましては、東京への一極集中に代表され、また県都への集中も問題となっております。我が国における重要な内政問題でもあり、国土の均衡ある発展という命題のもとにそれぞれの地域において努力されてきておりますが、その中身を考えますと、単なる優遇措置だけで、抜本的対策にはほど遠い内容であります。
 十数年前に国におけるモデル定住圏として新宮地方が指定されましたが、余りその効果がなく、一過性のものとなってしまいました。この際、発想を転換して過疎化問題を論議する時期に来ているのではないかと思いまして、私見を交えて質問いたします。
 この問題は我が国においても相当大きな課題でありますので、一市町村あるいは県のみの力だけでは解決できる問題でないことは当然であり、国が大局的にこの問題をとらえ、その対策を講じなければならないはずであります。
 今回、国において地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律の施行に当たり、全国知事会において申し合わせがあったようでありますが、その点について、また地方拠点都市地域の選定について和歌山県の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、紀南地域の過疎化対策と活性化についてを取り上げてみたいと思います。
 私は、この地方を、単に和歌山県における新宮・東牟婁だけの問題でなく、三重県における南牟婁、奈良県における十津川、上北山、下北山地域も包含した提案をしたいと思います。
 当地域の現況を申し上げますと、和歌山県においては七万八千人と、県下の七・二%の人口を占めております。三重県においては四万五千人で二・五%、奈良県に至っては八千人と、県全体の〇・六%の人口となっております。特に三重県、奈良県の方がその比重は大であります。なお、この地域は歴史的には新宮藩の領域であり、それぞれ関連した地域となっております。
 そこで提案でありますが、三重、奈良、和歌山県の三県が合同でこの地域の過疎化対策あるいは活性化について、その総合力でもって国を動かすことはできないかと考えたわけであります。地域全体が九〇%という山林地帯で、人口の定住範囲が極端に狭い地域であり、また山林資源の活用の低迷といった状態で、地域経済が縮小しているところであります。当然、地域振興として山林を従来どおりの建築材として考えることはその基本でありますが、我が国の環境問題として国や県及び地方自治体、民間がどのようにこれをとらえていくか、検討すべき問題であろうかと考えます。
 さて、三県が合同でできる活性化対策地区でありますが、私見としまして、熊野川町宮井周辺ということになろうかと考えております。この地域は三重、奈良、和歌山県の接点であり、また国道百六十八号線、百六十九号線、三百十一号線と、三本の国道が交差する地域であります。三本の国道とそれに付随する県道、町道と道路交通網が整備できれば、紀南地域の中心として、将来その効果が大きいということであります。
 第一の施策としまして、当地区に政府機関、教育機関あるいは研究所等、中央施設の移転は考えられないかということであります。また、三県の共同の施設ができないかということであります。この件に関し、三県で検討していただけるかどうか、ご答弁をお願いするところであります。
 第二の提案としまして、企業誘致あるいは政府機関の移転が非常に難しいのであれば、地域の定住の基本に返って地域の産業興しを図るべきではないかと思います。行政において、単なる優遇措置だけではなく、もっと積極的に地域定住を推進すべきと考えます。まず、国と三県及び周辺自治体が基金を出し合い、その資金を運用あるいは投資を行って産業を興すぐらいの発想が必要ではないかと考えます。
 当面は、その運用益でもって産業開発のための雇用を行い、将来、企業化する。例えば五十億円の基金があれば、五%の利息として運用益二億五千万、一人当たり三百万円の賃金としまして、約八十人の雇用ができるわけであります。家族を入れて三百二十人がその地域で定住できるはずであります。
 産業開発のための人材を地方に魅力を感じている都市から募集し、地域活性化のため人材育成も含めた機関を設置し、せめて千人程度の産業を興し、家族を含めて四千人がこの地域で定住できるとすれば、その効果は大きいと考えます。国と三県及び周辺自治体が現行の国の制度と新しい過疎対策の中で相当の基金が捻出できれば、この案もまんざら不可能な提案ではないと思います。これを機会に三県の話を深めていただき、県当局の考え方をお聞きしたいと思います。
 第一回目の質問を終わります。
○副議長(大江康弘君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 紀南地域の活性化について、まず地方拠点都市地域の整備に関する地域の選定についてのご質問にお答えいたします。
 地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律の施行に当たりまして、全国知事会で、一、指定に当たっては、まず一カ所を協議対象とする、二、複数の地域指定の場合は、原則として県庁所在地を含む地域は最初の協議対象とはしない、三、三カ年以内にすべての地域の指定の協議を行うなどを申し合わせたところでございまして、本県での地域の選定においては、法律の趣旨並びに申し合わせの趣旨を十分尊重しつつ、近く告示される指定等の基準を盛り込んだ基本方針の内容を十分検討し、県土の均衡ある発展や支援事業の実現性等を総合的に勘案して進めていきたいと考えてございます。
 次に、熊野川町宮井を拠点とした三県共同の活性化策についてのご質問でございます。
 熊野川町を含む紀南地域の活性化につきましては、半島振興対策や過疎対策などを通じた道路等交通基盤の整備や農林水産業、地場産業の振興及び企業誘致等による雇用の機会の拡大、並びに熊野文化や温泉などの地域資源を生かしたリゾート整備などに積極的に取り組んでまいってきたところでございます。
 また、一昨日、下川議員に知事からお答えいたしましたように、熊野地域の持つすばらしい資源を十分生かした将来ビジョンの策定に向け、検討を進めているところでございます。
 さらに、奈良県、三重県と共同で三県による紀伊半島開発連絡協議会を設置し、三県知事会議などを開催して紀伊半島全体にまたがる広域的な課題の解決に努めるとともに、その支援策を国等に強く働きかけてきたところでございます。
 しかしながら現状は、議員ご指摘のごとく、特に若者の定住環境等になお大きな課題を残していると認識してございまして、三県にまたがる紀伊半島地域の活性化については、今後とも同協議会の中で検討してまいりたいと存じます。
 また、基金を活用した地域活性化策についてでございますが、交通条件や生活基盤の整備が進展していない半島地域や過疎地域においては、企業の立地や若者の定住環境に非常に厳しいものがございます。こうした地域振興策の一つとして基金活用という方策も考えられるところでございます。
 地域活性化を図る基金制度といたしましては、広域の観点から、ふるさと市町村圏基金という制度を活用しているところもございますので、こうした活性化方策も含め、研究をしてまいりたいと考えてございます。
 以上です。
○副議長(大江康弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番上野哲弘君。
  〔上野哲弘君、登壇〕
○上野哲弘君 ただいま、企画部長から答弁をいただきました。
 この問題は非常に簡単なものではないということは十分承知しているのですが、先日の石田議員さんが提言されたように、この過疎化問題は大局的にしないとなかなか効果的な対応ができないのじゃないかというようなこともありまして、そういう意味も入れて再質問をいたしたいと思います。
 先ほどの拠点法に関連してでありますが、一極集中問題と三県主導における基金ということで質問いたします。
 東京一極集中については我が国の大局的見地から論議されるものであり、日本国民をどのように導いていくのか、中央機関にその期待をしたいところであります。国土の均衡ある発展の趣旨を踏まえ、和歌山県内の問題についてお伺いしたいと思います。
 まず、地方拠点法についてでありますが、その目的から申し上げますと、地域における創意工夫を生かしつつ、広域の見地から地方拠点都市地域について都市機能の増進及び居住環境の向上を推進するための措置等を講ずることによる、その一体的な整備の促進を図るとなっており、また定義として、人口及び行政、経済、文化等に関する機能の過度集中地域及びその周辺以外の地域──和歌山県では和歌山市以外ということになろうかと思いますが──地域社会の推進となる地方都市及びその周辺の地域の市町村から成る地域、自然的、経済的、社会的条件から見て一体として整備を図ることが相当と認められる地域となっております。
 そこで質問でありますが、企画部長の答弁によると、全国知事会の申し合わせでは県庁所在地を最初の協議対象から省くとなっておりますが、この拠点法の目的は、この法により地方都市に東京にあるような都市機能を実現させたり、東京からのオフィス分散などで地方の自主的成長を促進するという意味合いが主なようであります。その趣旨からすると、和歌山県では和歌山市周辺ということが考えられるわけであります。そうしますと、人口及び行政、経済、文化等に関する機能の過度集中地域及びその周辺以外の地域という定義と相矛盾するわけでありますが、その点について県当局の見解をお伺いいたします。
 次に、和歌山県における一極集中についてお伺いいたします。
 現在、和歌山県の人口は百七万人、和歌山市は四十万人、その集中率は三七%であります。奈良県の人口は百三十八万人、奈良市は三十五万人でその集中率は二五%、三重県に至っては百八十万人の人口で、県庁所在地である津市は十五万人であり、その集中率は八・六%ということになります。その数値を見ますと、和歌山県においては高いと思われますが、全国都道府県県庁所在地の集中率の平均はいかほどになっているか、和歌山市とともにお答え願いたいと思います。
 さらに、将来に向かって和歌山市の集中度がなお上昇するならば県政において何らかの対策が必要であろうかと思いますが、その見解をお伺いしたいと思います。
 次に、三県と周辺自治体による基金の創設でありますが、我が国の地方自治体において設立した第三セクターの研究機関は、全国で百二十一、財団法人が九十九、株式会社が二十二を数え、基金や資本金の累積額は約二億円に達すると報道されております。その中には、国の機関より柔軟で積極的な活動が見受けられ、その評価の大なるものがあるようであります。
 第三セクターについては当県においても新しい設立を見ておりますが、先ほど申し上げた地域活性対策として大幅な基金の積み立てを紀南地域にも実現していただきたく、人材育成等、雇用の拡大を図るべく和歌山県主導の活性化対策を周辺自治体に提案されるよう強く要望するとともに、その見解を伺いたいと思います。
○副議長(大江康弘君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 三点の再質問にお答えをさせていただきます。
 まず最初は、過度集中地域の定義と和歌山市周辺地域の指定についてのご質問でございます。
 この法律で言う対象外の地域とは、議員お話しのように、人口及び行政、経済、文化等に関する機能が過度に集中している地域でございまして、政令において、東京二十三区はもちろんのこと、近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域、例えば大阪市、京都市、神戸市などの大都市が定められてございます。
 和歌山市は、この法律で言う過度集中地域には含まれておりません。法律の趣旨は、国土の均衡ある発展を図るため地方の発展の拠点となる地域を一体的に整備し、圏域の自立的成長を促進するということでございまして、県内全域が指定要件を満たすものと考えてございます。
 いずれにいたしましても、近く告示される予定の基本方針を十分検討し、知事会の申し合わせや県土の均衡ある発展等を総合的に勘案して進めてまいりたいと考えてございます。
 二点目は、県庁所在地への人口集中率は高いと考えるかというご質問でございます。
 平成二年の国勢調査によりますと、東京都を除く全国の県庁所在都市の人口集中率は、平均で二五・六%でございます。また、各都道府県別に見ますと、京都府の五六・一%を最高に、四〇%台が二県、三〇%台が十二府県、二〇%台が十五道県、二〇%未満が十六県でございまして、本県の人口集中率は三六・九%で七番目でございます。
 県内の均衡ある発展は最も重要な課題でございまして、県の第四次長計で定めている六つの定住圏を単位に、それぞれの地域特性を生かした振興に努めてまいりたいと考えてございます。
 最後は、基金の設立についてでございます。
 先ほどもお答え申し上げましたように、既存の基金制度として、広域の観点からふるさと市町村圏基金という制度を活用して人材の育成やふるさとおこしを行っているところもございますので、こうした事例も参考にしながら研究をしてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 34番上野哲弘君。
○上野哲弘君 今、集中の問題と基金の問題をお伺いしたわけですが、集中問題につきましては、その集中が悪いというよりか、周りが悪くなったという観点で受け取ってもらったら結構じゃないかと思うんです。
 そういう面で、要望になりますが、和歌山県の場合、県下紀北地区を考えてみますと、岩出町あるいは橋本市に見られるように、人口の増加が出ております。また、関西新空港による経済波及効果、あるいはコスモパークの開発、リゾート博に始まるマリーナシティの活用、さらに県立医大病院の新築に五百五十億円、博物館・美術館・図書館に三百億円、健康ふれ愛和歌山に三百八十億円といった、和歌山市を中心とした県の事業が現在メジロ押しになっておるわけなんです。
 それはそれとしまして、紀南を初め紀中や山間部の過疎化あるいは活性化対策に対して、今後ぜひ論議をされて積極的な提案をお願いしたい。
 それと、先ほどの基金なんですが、和歌山県ただ一県だと力もそんなにない。先ほど言いましたように、まだ三重県、奈良県の方があの地域については過疎化を真剣に考えておるはずなんです。そういう面で、和歌山県がぜひ音頭をとって、奈良県、三重県とともに将来のために対策を練っていただきたいと要望しまして、終わります。
○副議長(大江康弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問は終了いたしました。

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