平成4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(村岡キミ子議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(馬頭哲弥君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 35番村岡キミ子君。
  〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 お許しをいただきましたので、早速質問に入ってまいります。
 まず初めに在宅老人保健福祉計画についてでございますが、この問題については先日の森本議員も質問されました。幾つかの点で重複するところもございますので、その点はご容赦願いたいと思います。
 ある月刊雑誌を読んでおりましたら、こんな一行がございました。「近くて遠きは医療、福祉」──まさに今日の高齢者に対する実感だなと痛感をする私でございました。体が不自由になっても住みなれた家、住みなれた土地で老後を送りたい、これがお年寄りの願いでありまして、家族もまたそのことを願っているのではないでしょうか。そして、お年寄りの問題はお年寄りだけの問題ではなくて、みんなの問題としてとらえて考えていかなければならないと思うのです。
 今、人生八十年時代でございますけれども、経済大国と言われながら、一向にその恩恵が私たちには与えられないような環境であると思うのです。この間、老人医療費の再々の改悪と診療報酬によるお年寄りへの差別医療、老後の唯一の保障である年金支給額の引き下げや掛金の大幅アップ、そして支給年齢の六十歳が今まさに六十五歳へと引き延ばしがなされようとしています。消費税の導入による負担や住宅問題等々、老後をお年寄りが小さくなって暮らしていかなければならない現状になっているだけでなく、長寿を喜べない大変な時代になったものだと深く思います。本県におけるお年寄りの自殺率の高いことからも、何とも言えない胸の痛みを感じるのであります。
 さて、前置きが長くなりましたが、今、全国の市町村では老人保健福祉計画の策定作業に入っております。平成五年度までにつくらなければならないという義務づけが法律によって行われましたから、市町村の大変さがうかがえます。
 ところで、市町村老人保健福祉計画策定指針について、県は二次医療圏範囲の計画づくりをし、市町村は、それぞれの市町村が自主性と独自性を持ち、十分な住民のニーズやこれらの実態調査を行った上で計画をつくりなさいと通知をしているのであります。そして、市町村は県と十分な調整をし、市町村はその原案がまとまったら直ちに県の意見を聞いてこれを十分踏まえること、サービスの目標量の原案やその他主要部分の原案についても県の意見を聞くことを求めていますし、方針策定から計画決定に至るまでの間、県と十分調整することと、市町村に一つのくぎを刺して結局は義務づけ、そのため市町村みずからの力を十分発揮し得ないばかりか、自主性を否定し地方自治を軽視した、相変わらずの上意下達の姿勢がうかがえてなりません。さらに、市町村では日常の業務でも限られたわずかな職員数ですから十分こなせない中で、じっくりと計画の力量をつけながらこの作業に取り組むことが容易でないことは十分に推測できますし、こうした困難さは小さな規模の市町村ほどはっきりしているのではないでしょうか。期限も定められているわけですから、これに縛られ、地域の実情を十分踏まえられないまま厚生省が示したマニュアル依存の官僚主義的対応になるのではと、大変危惧するところであります。そして、計画づくりに職員の持つ力と意欲がそがれ、消極的な姿勢が生まれるのではないかとも心配をいたします。
 私は、せっかく国が法律でつくることになったのですから、今なら自分たちが考える福祉サービスを施策化したり、住民総参加で、本当にいつでも、どこでも、だれもが使いやすい保健福祉サービスに変わっていけるなと願っている職員もたくさんいると思うのです。その上、公的責任を明らかにした計画をつくることも可能なわけですから、その力を発揮できるよう、県、国は財政的な保障も含めてすばらしい計画に仕上げる援助が求められていると思うのです。
 そこで、お尋ねをいたします。
 まず第一点は、県、市町村の計画の違いがもうひとつすっきりしませんので、その違いを明らかにしていただきたいと思います。
 第二点目に、実態把握調査の基本とその方法、そして結果が出ているならば、その結果を答えてください。
 第三点、市町村の自主性、独自性と住民や医療、保健、福祉関係者の参加のもとで計画づくりが進められているか、お答えいただきたいと思います。
 もう一点、在宅福祉サービスは公的責任を明らかにすることも大事だと思うのですが、いかがでしょうか。特に、財政力の弱い市町村への財政的保障の裏づけをきちんとすることが大変重要と考えます。
 次に要介護老人の範囲の問題でありますが、今回の計画は、保健福祉計画でありながら、人生のうちの一段階である老人のみを対象とし、子供や障害者、一般が対象とされていません。しかも、老人のうち、虚弱老人、寝たきり老人、痴呆老人のみ主たる対象として限定されており、ひとり暮らし老人や、痴呆老人であっても現在要介護状態にはない人の状況把握が除外されているのであります。つまり、子供や成人期からの予防策や、現在要介護の状態になくともその可能性を対象とした援助は主要課題として認識されなければなりません。要介護という状態の把握も介護援助の必要度という一側面だけが中心になっており、保健や医療という側からの身体・精神面の把握が弱く、予防やリハビリテーションへの視点の弱さを指摘しなければなりません。これでは、家庭に帰された老人を在宅福祉サービスと在宅介護のみで受けとめるという当面の場当たり的な性格が映し出されているばかりではないでしょうか。さらにつけ加えるなら、自立生活の基本となる住宅や町づくり面での対応が軽視される可能性も含んでいると言えます。
 次に、在宅介護者すなわち家族による介護者に対し、社会的介護労働力とみなして介護手当をぜひとも支給してもらいたいという意見を述べたいと思います。
 私は、昨年の九月議会でもこの問題について具体的実態を申し述べてまいりました。在宅介護の多くは家族、それもお嫁さん、娘さん、そして配偶者であり、その介護者が実際に介護していて日常的に困った問題は、睡眠や休養の時間がとれない、外出ができない、他の家族の面倒が十分見られない、便利な介護用品が少ないなど、県が実施した高齢者の生活と意識に関する調査結果にもあらわれています。しかし、この調査はごく限られた質問項目に絞られているため、深刻の度を強めている現実態にはそぐわないものになっていますし、実態そのものはなお一層厳しい深刻さがうかがえます。
 きょうはこの場で、現在の制度では家族の介護の評価は皆無である、在宅介護を社会サービスとして考えた場合、もしこの介護に報酬が出されるとすればどれくらいの金額になるだろうかということで、在宅介護の現場を見詰め直す意味からも、京都南病院在宅療養部が現在実施している、家族介護費として算出したものを紹介したいと思います。これは、昨年の六月、京都南病院在宅療養部の職員の皆さんたちが、自分たちの病院を退院された後、なお在宅介護を続けなければならないし、訪問看護をしているという実態の中から選出して行われた調査内容でございます。
 ここで、その目的について在宅療養部の皆さんたちが述べられていることを若干お話し申し上げたいと思いますが、これはNHKのテレビでも何回かにわたって放送され、私もその一部を見ることができました。私は、直接この担当部の方にお電話をして、学会に発表する前だということでその資料を手に入れることができました。
 この京都南病院は、「八一年から在宅療養部を創設し、地域にねざした医療を推進してきた。こうした中で、現在約八十名あまりの在宅患者を管理し、平均世帯人数三・一人という厳しい家庭条件の中で、家族の献身的な介護によって成りたっている。要介護老人を自宅でみるということは、それ相応の気力と体力と忍耐を要し、介護が長期化すれば介護者自身の健康すら損ない兼ねない現状がある。在宅ケアは、厚生省のいう『ゴールドプラン』による在宅支援三本柱という掛け声とは裏腹に社会的保障制度が確立されておらず、経済的にも家族の負担が非常に大きいという問題点がある。入院や入所では保障されている治療食はもちろん、治療に必要なガーゼ、包帯などの医療材料ですら自己負担という現状なのである。こうした中で、注目すべき点は、家族の介護そのものの費用である。事実、介護という名のもとに、極めて、過酷な労働を強いられているにもかかわらず、現在の制度では、介護への評価は皆無である。在宅介護を社会サービスと考えた場合、もしこの介護に報酬が出るとすれば、どれくらいの金額になるのであろうか」と、こういうことで介護費について検討をされました。
 実際に介護はだれが担っているかという問題であります。ここの在宅患者八十二名の介護者の内訳を申し上げますと、男性十一名、女性七十一名で、全体の八七%を女性が占めています。そして介護する方は、妻二十五名、嫁さん二十五名、娘さん十五名、そして夫が八名、息子さん三名、その他六名──これは親戚の方々らしいです。平均年齢は六十二歳、最高では八十六歳の妻を九十四歳の夫が見ているケースもあったそうです。「我が国の現状においては、在宅ケアを確立するには、介護者は、直接家庭の収入に影響しない女性や、もしくは高齢者にゆだねられている事がうかがえる」と書いてあります。ですから、ここでも、こういう人がなければ家政婦を雇うか、仕事をやめて介護に専念するしか在宅ケアを続けることは非常に困難であるということです。実際、この八十二名の皆さんたちを介護している中でも、五名の介護者が退職をされているし、三名の方が自分の家で介護ができるような条件の職場へ仕事を変えられたという実態もあるそうです。
 介護の実態そのものを見てみますと、こういうふうに述べておられます。「高齢化が進む中で在宅ケアのシステムばかりが注目され、本来、主人公であるはずの介護者は常に陰に隠れた存在となっている。在宅ケアを確立する上でもっとも大きな力となる介護者にスポットを当ててみた」ということでございます。
 その中で、症例と申しましょうか、その患者の状況によって三つに分けております。自立歩行可能な、軽い程度の介護が必要な方を「軽度」といたしました。そして、一日をほぼベッドで過ごして、はったり、その周りをちょっと伝い歩きできる人を「中度」といたしました。そして、もう二十四時間じゅう全面的な介護が必要な寝たきりの方を「重度」として位置づけて、この三つについてそれぞれ一日の生活の中でどのような介護を行われているかということを日課に沿って述べています。
 まず、最も軽い介護の症例ですけれども、慢性関節リューマチで、伝い歩きが可能な七十五歳の夫を七十三歳の妻が介護する日課であります。奥さんの主な介護は、夫の三度の食事の支度と朝夕二回の尿器更新、入浴時の介助です。この方は十分外出もできますし、時間的にもかなり余裕があるという事例です。ほとんど自分でするので介護自体はそれほど苦にならない、ただリューマチですので、ひざなどの関節の痛みを必ず夜中に訴えられて起こされるのが非常に苦労ですと言っていらっしゃるそうです。この奥さんの実労働時間を、食事の支度も含めて約三時間というふうに見ております。
 中度の介護の実態を見てみますと、事例としては、四年前に右大腿骨折後、歩行は不可能で、食事や座位は自力でできるけれども、一日をほとんどベッドで過ごす八十歳の母を五十九歳の娘が介護している様子です。前の事例との大きな違いは、直接トイレに行けないのでポータブルによる排せつ介助か、あるいはおむつ交換があるかどうかであります。この行為によって約三時間置きに患者に接しなければなりません。ですから、外出したとしても長時間はとても無理だということです。こうしたことからも精神的な面でのストレスが蓄積する。この介護者も、ゆっくり外出してみたいと、ため息まじりに訴えていらっしゃったそうです。この中程度の介護者の労働時間は五時間、おむつ交換が六回ございますので、随分と忙しくなってきているということになります。
 それから重度の介護、いわゆる寝たきりの方の介護者でございます。この方は六年前に交通事故に遭い、頸髄損傷で全介助を要する寝たきり状態となった七十歳の夫を六十七歳の奥さんが介護をする様子です。これは、軽度の方や中度の方たちと比べてみても大変忙しいのは、もうだれが頭で考えても想像できるのではないかと思います。実際に訪問に行って調査している皆さん方がこの奥さんの動く姿を見て、その忙しさに圧倒されてしまったとおっしゃっています。奥さんは、食事と入浴とわずかな休憩以外はほとんどつきっきりで介護し、夜中も体位交換のため最低二回は起きると言っています。そして、何よりも注目すべきことは睡眠前の導尿と一日一度のかん腸です。寝たきりの状態ですから、運動不足と体力の低下から、かん腸をしてもなかなか思うように出ません。ですから、大変汚い話ですけれども、ほとんどの寝たきり状態の人は排せつが困難ですから、かん腸をしたその後でも出ない場合には指で摘便をするそうです。私も、これは病院等で経験をいたしております。この重度の方は、かん腸や導尿、蓐瘡交換に至って、看護行為がかなりの割合で介護者の手によって行われているのが特徴なんです。ですから、この奥さんの実労働時間は、前のお二人に比べてはるかに多くて十・五時間、そしてこれに加わって、床ずれができないように体位交換というのがあります。そしてまた清拭をしなければなりませんから、大変な状態が続くと言わざるを得ません。
 こうやってこの問題を見てみますと、皆さん方にも非常にリアルにご理解いただけただろうと思います。
 それからまた、今の専門職と言われている付添家政婦さん、あるいはヘルパーさん、国家資格を持った介護福祉士さんたちと、その介護の種類ごとに看護行為を比較検討してみました。炊事、洗濯、買い物、掃除、食事介助、おむつ交換、清拭、入浴介助、かん腸、摘便、そして休日、交代要員というものに点数をつけて調査しておられます。この点数の見方でございますけれども、常に行う行為については十点、ある一定の割合で行う行為については五点、ほとんど行わない行為については零点としてつけてみたということです。
 これで見てみますと、細かくは申しませんけれども、付添家政婦の皆さんたちは、炊事や洗濯、買い物等の点数を合計してみると六十点、ヘルパーさんが七十点、介護福祉士さんが四十点、そして在宅介護の寝たきりの場合は百五点と、大きく点数が上がります。そして、中程度の介護は八十五点、軽度の方が六十点とつけられました。
 この評価を賃金としてどういうふうに見るかということもここに書かれていますが、それは細かくは申しません。評価の仕方もありますけれども、ほとんど介護を要しないような軽い場合、看護行為として点数で見て時間給八百九十円──今の時間給とは十円か二十円違うかもわかりません──実労働時間が三時間として三十日で計算して、八万百円と出しました。中程度の介護の場合は、時間給を千六十三円として、実労働時間四・五時間に三十日を掛けると十四万三千五百五円。そして寝たきりの方の場合は、時間給を千百二十六円と見て、実労働時間が十・五時間ですので、三十日を掛けて三十五万四千六百九十円というふうになります。
 こういうふうに社会的な介護労働という面から見た場合、実に寝たきりの場合は三十五万四千六百九十円ということですので、社会的サービスとして評価すれば、県は九月議会のときに、金品ではしないけれどもヘルパーさんやショートステイ、デイケアサービスで行くんだと答弁をされましたが、実際の介護の状態から見ればやはり家庭介護に頼らなければならない状態がずっと続くわけですから、そういった人たちの苦労のためにもぜひ介護手当の支給を再考していただきたいと思います。
 同時に、この二年から三年の間にヘルパーの飛躍的な増員に努力をされてまいったことには大きな評価をしたいと思います。しかし、今後ますますふえるであろう在宅介護、そして専門職員、とりわけ作業療法士や理学療法士、そしてヘルパー等の確保とその養成の具体化が急がれます。本定例会議の補正予算に介護実習・普及センターの設置の具体的措置が提案されているところでありますが、理学療法士や作業療法士について、現在行われている修学資金制度のみで充足が可能となるのかどうか、計画も含めて民生部長及び関係部長の見解をお聞かせください。
 次に、こうした保健福祉計画を充実したものにするには、あらゆる関係する部門との連携が必須条件となるかと思うのでありますが、少なくとも保健、医療、福祉関係等による地域ネットワークづくりが伴わなければなりませんし、せっかくつくられた計画が正しく実現されているのかどうかを住民の側から行政を監視する、チェックする福祉オンブズマン制度を取り入れることを求めたいと思うのであります。民生部長の所見をお聞かせください。
 次に、和歌山海南線、通称・国体道路建設にかかわる用地買収と代替地及び代替地あっせん等の約束についてであります。
 問題は二十年以上の経過を持つ事象でありますから、何を今さらとお思いになられるかもわかりません。私は、本県の公共事業を進める上で決して軽視できない問題であると考えて、あえてお尋ねをするものです。
 行政は、主権者である住民の安全、健康と生活を守ることが何よりも第一の責務であろうかと私は思っておりますから、とりわけ公共事業を行う上での用地取得においては県民の理解と協力、そして行政に対する深い信頼によって公共事業がスムーズに進むものと確信をするものです。しかし、本事象は二十数年前の国体道路建設事業当時のことであります。
 国体を三年後に控えた昭和四十三年ごろから用地買収の話が具体的に始まりました。A建設業者は、和歌山市中島一三三番地に、自己所有地三百八十坪と隣接地の千五百坪を資材置き場として借りながら事業を行っていました。そして、国体道路建設計画地として自己所有地百十坪の買収に協力をし、移転地として県の宅地あっせん地・紀三井寺七三六の一六に七十坪を購入いたしました。しかし資材置き場については、昭和四十五年、千五百坪の代替地は無理だが、半分の七百五十坪については国体道路沿いに何とか確保するからと口約束をいたしました。その後、立ち退きを急がれて、とりあえず宅地七十坪のところに資材を移してくれ、もし足らなければ中津川を使ってもよいから資材をとにかくどけてくれと県に言われ、中津川に四メートル突き出し棚をつくって資材を移しました。そして家族は、自分所有の借家に昭和四十六年二月に引っ越しをしています。
 この中津川利用については、代替地確保までという条件で許されたのだそうです。それから担当者も異動で次々とかわり、かわるたびに一から説明しなければならず、実にまずい行政の対応の連続だったとA建設業者は語っていらっしゃいます。しかし、どの責任者も、それは大変気の毒なことやな、調べて返事しますとか、何とかしましょうと、積極的に用地を探す努力はしていただいたが、今日まで未解決のままであります。この間、具体的候補地が示されたので、何カ所かは責任者と一緒に現地にも行きました。とにかく早く解決したい思いで、今度こそはと期待も大変大きかったのですが、具体的候補地として示されたのは河川敷で、どこか使えるところがあれば提供しましょうとか、中津川が道路になる計画があるのでそのとき払い下げるようにするからとか、また湊神前線の用地買収のときに代替地はつくる、木材港の土地か加太の土取り跡地に何とか、あるいは企業局の土地を、木ノ本岬線の市所有地にとか、こうした努力はしていただきました。しかし、いずれも話は立ち消えに終わってしまいました。
 そこで、土木部長にお尋ねをいたしますが、当時、この事業推進のため直接担当された都市計画事務所、あるいは都市計画事務所廃止後引き継ぎになった和歌山土木事務所の対応とその事実経過についてお答えいただきたいと思います。
 こうした長い経過の中で、現在、A建設業者は和歌山市延時の土入川と打手川の合流地点約二千五百平方メートルの河川敷地内に、建設用資材を初め機器類ほか、土、砂を許可なく占用していますし、また紀三井寺の中津川河川敷地内にも建設資材倉庫を占用している事実がありますが、今、これらはいずれも河川法違反の警告通知を受けています。A建設業者にしてみれば、口約束といえども県行政をかたく信頼し続けたのになぜという思いが日々強まったようであります。
 さきにも申し上げましたが、中津川利用については、かつて県は資材置き場の代替地確保までの使用許可をみずから指導してきました。土入川河川敷についても、昭和五十八年当時の和歌山土木事務所長の、河川敷で利用できるところがあれば提供するという返事を信頼して、資材搬入する事前に約束の代替地として使用さしてもらうことを平成元年六月ごろ申し入れ、その後、利用しているわけです。もっとも、このA建設業者は、資材搬入直前まで、昭和六十一年から六十三年度にかけてこの地の護岸工事を施工していることから、約束の河川敷確保ができたと思うのも当然だと思うのです。
 私は、昨年三月五日、建設常任委員会でこの問題を取り上げて、延時周辺住民からの河川敷不法占拠の指摘やさまざまな苦情に対する改善を求めてきたところでありますが、不法占拠による資材撤去や土、砂の撤去の履行も一時的には改善を見たものの、現場を見るたびにますます悪化の方向にあることに不審を抱いていたのも事実です。県の不透明な態度と言い、責任の所在等についても明らかにされないままであったことも厳しく問われなければなりません。こうした不法占拠を解決することは当然ですが、同時に代替地確保が求められると思うのであります。今後どう対応されようと考えておられるのか、土木部長にお答えいただきたいと思います。
 なお、土入川河川敷二千五百平方メートルの利用計画について伺います。
 以前、延時団地周辺自治会に対し、護岸整備終了後、地域住民の憩いの場として公園計画の話が広く伝えられ、住民の期待が強まっているのでありますが、どのような具体的計画で取り組まれているのでありましょうか。計画がないとするならば、ぜひとも公園として整備を願うものですが、所見をお聞かせ願います。
 もう一点、お伺いをいたします。
 A建設業者は、昭和五十七年二月ごろ、県があっせんした宅地に自宅を建設するため和歌山市に建築確認申請を行ったが、公道として進入路がないという理由で許可されませんでした。そして、宅地を担保に国民金融公庫の借り入れを申し込んだが、同じく公道として進入路がないため借り入れを受けられませんでした。この地には、A建設業者と同じように買収に協力し、県の宅地あっせんに応じて今もなお居住している四世帯があるのはご承知でありましょう。県は、この地に公道としての進入路がないことを知りながらあっせんしたのか。今後、これらの人々が売却や建てかえ時に発生するであろう宅地の評価、建築不許可、売却困難などの問題にどのような責任をとられるのか。また、進入路がないため建てかえや売却のとき問題が生じないよう中津川のこの河川管理道路が市道にならないのか、お答えをいただきたいと思います。
 最後に、一言苦言を申し上げておきたいと思います。
 県民は、公共事業に大小の差はあっても、先祖伝来の山林や田畑、宅地を買収という形で協力を行ってきました。今後も行うでありましょう。この事象のように、行政のすることに間違いやうそはないだろうと信じて協力したことによって、住民の生活や暮らしが、そして営業が脅かされることがあってはなりません。これこそ地方自治の精神から大きく逸脱した行為であるばかりでなく、県の信頼と期待を裏切るものです。したがって、言うまでもなく、県政の主人公は住民であることを認識し、再びこのような事象を繰り返さないよう厳しく指摘をしておきたいと思います。
 以上で終わります。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 民生部長吉井清純君。
  〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) 老人保健福祉計画に関する七項目の質問にお答えをいたします。
 まず、県と市町村の計画の違いについてでございます。
 老人保健福祉計画のうち、県の段階での計画については、市町村計画を積み上げて県全体の目標総量を設定するとともに、保健福祉圏域を設定し、広域市町村圏における施設整備等の調整機能、サービスの提供体制に係る人材確保や研修等の広域的施策等を包含した計画であります。一方、市町村段階での計画は、住民に最も身近な市町村が地域の高齢者の実態や住民ニーズを踏まえ、どのようにして保健サービス及び福祉サービスの総合的な提供体制を築いていくか、整備目標を設定して具体的、計画的に実施していくための計画であります。
 次に、市町村の実態把握調査の基本と方法、その結果についてであります。
 きのうの森本議員のご質問にもお答えいたしましたが、老人保健福祉計画を策定していくためには、要援護老人等の高齢者の現状把握が必要不可欠であるため、できるだけ詳細なこれらの情報を得ることとしてございます。そのため、県下市町村において、地域の実情に詳しい民生委員などの戸別訪問による聞き取り調査などにより、寝たきり老人、ひとり暮らし老人については全員、その他の高齢者については約二〇%の方々を対象に百余りの質問項目を設定して調査を行い、現在その集計及び分析中でございます。
 三点目、計画は市町村の自主性、独自性と住民、医療、保健、福祉関係者の共同作品でということでございます。
 住民の保健福祉ニーズにきめ細かく柔軟に対応していくためには、計画策定に当たっても、当該市町村においてそれぞれの持てる社会資源、地域の特殊性や状況を総合的に勘案して、まさにその町その町の手づくりの計画を策定していくことが大切であると考えており、この趣旨を徹底するよう市町村に対して指導しているところでございます。したがいまして、この趣旨を踏まえ、市町村計画の策定に際しては、保健福祉行政担当者、ホームヘルパー、老人福祉施設職員、地域の医師、保健婦などを構成メンバーとする市町村高齢者サービス調整チームの活用を含め、これら各層の意見を反映できる計画策定体制を設けるよう市町村を指導しているところでございます。
 四点目、要介護老人の範囲と家族介護者に介護手当の支給をということでございます。
 老人保健福祉計画における要介護老人の範囲でございますが、国が示している障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準によるところの寝たきり、準寝たきり及び痴呆性老人を要介護老人としてございます。
 また、介護手当の支給についてでございますが、在宅で介護に当たられる家族の精神的、肉体的負担は非常に大きいものと考えていますが、この負担軽減のためには、金銭給付よりも、むしろホームヘルパーの派遣、ショートステイ事業、デイ・サービス事業、紙おむつその他の日常生活用品の支給等、種々の福祉サービスの推進に努めることが先決と考えております。この考え方に基づいて、特に在宅サービス三事業の本年度予算においては対前年で八四%増と大幅な予算を確保して、家庭でお世話している方々を強力に支援しているところでございます。
 五点目、在宅介護及び施設専門職員の確保と養成の具体化でございます。
 長寿社会を迎えて、いつでも、どこでも、だれでも必要とする福祉サービスを受けられるようにするためには、ホームヘルパーを初めとする福祉人材の確保とその養成は緊急の課題であります。このため県としても、一つには、議員のご意見にもございましたが、今月から県の福祉人材情報センターを新規に設置し、福祉人材の確保のための情報のネットワーク化を図ることといたしております。
 次に、全国に先駆けて介護実習・普及センターを設置し、さらに専門的な介護技術を身につけた福祉人材の養成に取り組むことといたしてございます。
 六番目、在宅福祉サービスは公的責任、市町村の財政保障をという問題であります。
 先般の老人福祉法の改正により、市町村は在宅福祉サービス、施設福祉サービスの総合的実施に努めるべきことが法的にも明確になったところでございます。市町村がこれら事業を円滑に実施できるように県でも対前年度比二三%増の老人福祉事業予算を計上してきているところでございますが、今後とも国に対して事業経費の増額を要求していくとともに、市町村福祉基金の活用等を通じて市町村の福祉サービスの円滑な推進が図られるよう努力してまいりたいと考えてございます。
 最後に、地域のネットワークづくりと福祉オンブズマン制度でございます。
 地域のネットワークづくりにつきましては、先ほども述べましたように、市町村に福祉、保健、医療関係者で構成されている高齢者サービス調整チームがあり、個々の高齢者ニーズに見合う最も適切なサービスを提供するため、各種サービスを総合的に調整・推進しているところでございます。今後とも、在宅介護支援センターやデイ・サービスセンター等との連携を密接にしていく中で地域福祉ネットワークづくりをしてまいりたいと考えてございます。
 また、福祉オンブズマン制度ということでございますけれども、都道府県レベルではまだなじんでいない制度でもあることから、国及び他府県の動向を見守ってまいりたいと考えてございます。
 なお、地域における高齢者の生活上のあらゆる相談や要望等に応ずるとともに、適切な助言、指導をいただき、老人福祉の増進を図るために和歌山県においては県下に八十名の老人福祉相談員を設置し、行政とのかけ橋として活躍をしていただいているところでございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 保健環境部長遠藤 明君。
  〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 老人保健福祉計画について、理学療法士、作業療法士の確保の問題でございます。
 医療の高度化及び高齢者保健福祉推進十か年戦略の実施など、新たな需要が見込まれるところであり、国においても需給計画の見直しを実施し、養成校の入学定員は平成四年度に大幅に増加しており、今後もさらに増加するものと予測いたしております。
 県といたしましては、これらの状況を前提に、昨年九月、医療機関、施設、市町村等関係先に調査したところ、平成十一年までに理学療法士百九十四名、作業療法士六十六名の需要が見込まれるところでございます。このため、これら従事者を確保するため、修学資金の制度充実に努めてまいりたいと考えております。
○議長(馬頭哲弥君) 土木部長山田 功君。
  〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 国体道路建設における用地買収と代替地あっせんについてお答えをいたします。
 県の公共事業用地の取得については金銭による売買が原則でありますが、国体道路建設時に金銭によりがたい特殊な事案について代替地をあっせんした事例はございます。
 ただ、二十数年経過した現在、交渉過程において代替地の条件等についてどのような約束があったかということを確認することが難しい面もございます。当時の交渉経過を調べ、今後、地権者と話し合いをしたいと考えております。
 また、土入川につきましては、築堤護岸などの改修工事を進めているところであり、お話の河川敷は、平成元年度に支川打手川との合流部の護岸整備に伴ってできたものであります。今後、市街地の貴重な河川空間として周辺住民の人々が利用できるよう、緑地広場の整備に取り組んでまいります。
 次に建築確認の問題でありますが、現在、建築は既にされておりますけれども、代替地あっせん時、建築確認がとれなかったかどうかということの確認は難しいところであります。
 また、市道にならないかとのお話でございますが、河川管理用通路は河川管理、水防活動等のための施設であります。これを道路として使用する場合には占用許可が必要であり、和歌山市から申請があれば協議に応じてまいります。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 35番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 今、答弁をいただきました。老人保健福祉計画については、時間もありませんので委員会で細かくさせていただきたいと思います。
 それから、土木部長に。金銭売買ということが原則だということでございますけれども、いろいろな話を聞いてみますと、その当時は国体道路をつくらなければならないという中で、表現は悪いのですが、非常に荒くたいことをやったと言う方もかなりあるようです。それで、そういう中で起こった問題、そして金銭にできなくて交渉が成り立たなかったような特殊な例もあったということはお認めになっているわけです。
 今後話し合いをしていくということになっていますので、そこらは一方的な物の言い方をなさらないで──その方も県のおっしゃっていたことを信頼し、ずっと今まで来られたわけですから、そういうことが本当に信頼に値するような今後の対応を求めて終わりたいと思います。
○議長(馬頭哲弥君) 以上で、村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十六分休憩
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