平成4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(浜口矩一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時四分開議
○議長(馬頭哲弥君) これより本日の会議を開きます。
○議長(馬頭哲弥君) この際、十月九日、監査委員に選任されました玉井一郎君をご紹介申し上げます。
 監査委員玉井一郎君。
  〔玉井一郎君、登壇〕(拍手)
○監査委員(玉井一郎君) ただいまご指名いただきました玉井一郎でございます。
 このたび、引き続いて先生方から監査委員のご選任を賜りまして、厚く感謝申し上げますとともに責任の重大さを痛感いたしておる次第でございます。
 本日まで任務を遂行できましたのも、先生方のご教示、ご指導のたまものであったと、改めてここでお礼を申し上げますとともに、これからの任期を心新たにして誠心誠意相努める所存でございますので、旧に倍してご指導、ご叱正を賜りますことをお願い申し上げまして、甚だ簡単でございますが、ごあいさつといたします。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。
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○議長(馬頭哲弥君) 次に日程第一、議案第百十号から議案第百三十三号まで、及び議案第百三十五号から議案第百三十七号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 45番浜口矩一君。
  〔浜口矩一君、登壇〕(拍手)
○浜口矩一君 お許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 今、環境問題が一地域、一国だけの問題ではなく、地球規模の環境保全という新たな視点で提起されていることは、皆様方、既によくご承知のとおり。それゆえ、本年六月三日から十四日にかけて、リオネジャネイロで開催の環境と開発に関する国連会議には百八十三カ国が参加し、リオ宣言を初めアジェンダ21、森林保全の原則声明を採択、また生物多様性条約、気候変動枠組み条約についても、我が国を含む百五十六カ国が調印と聞き及んでおりますが、これらの宣言や行動計画は、いずれもそれぞれの国、地域における経済社会生活、私たちの暮らしの隅々におけるたゆまぬ改善を前提としたもの。それゆえにこそ、ブラジル環境サミットにおいては政府とは別個の世界のNGO諸組織の言動が注目され、地球憲章はもとよりとして、各種の国際NGO条約が脚光を浴びたのだと存じます。
 同時に、アジェンダ21は地方アジェンダ21の採択を世界の地方自治体に要請しておりますが、持続可能な開発というサミット全体のコンセンサスのもとでの人間居住、大気汚染、森林保全、農業問題、廃棄物対策を初めとする地球規模の環境保全のそれぞれのテーマは、地方自治体が腰を据えて取り組まなければ前進し得ない問題であり、また我が国の地域問題にとっても今日的な緊急の政策課題だと思います。
 そのような観点から、私たちの地方で現在問題化している産業廃棄物受け入れに関する具体的な事例について、地元関係者対応等の状況の概要を述べ、県当局としてのご見解をお伺いいたします。
 その前に、若干時間をいただき、廃棄物処理についての一私見として次の事実を申し上げ、ご検討の一助にとお願いいたしたいと存じます。
 現在、廃棄物の処理は、我が国だけでなく地球規模で大きな問題になっている。特に我が国の場合は、経済成長を最優先的に進めてきた結果として環境汚染とともに大変な状況になってきており、現行の廃棄物の処理及び清掃に関する法律──以下、「廃棄物処理法」と申させていただきます──では、十分な対応不可能として、第百二十一回国会で、本法と一対の法案として提出の廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部改正を含めて二十年ぶりに改正。その後、政省令施行。
 主な改正点については、一、処理法の目的については、廃棄物を適正に処理することから、廃棄物の排出抑制、適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理と具体的に明記され、二、関係者の責務については新たに国民の責務が設けられ、排出抑制やリサイクルなど自治体の施策に協力すること、事業者には、適正処理が困難にならないよう措置と事前の自己評価、情報提供、自治体の施策に協力すること、また自治体では住民の自主的な活動の促進などを明示、三、廃棄物の計画的処理として、一般廃棄物処理計画では発生量から処理施設の整備までの計画策定や関係市町村との調和、多量に排出する事業者に対する減量計画の作成指示、四、廃棄物減量化、再生のための市町村の指導、その他九項目にわたる改正がなされた由。
 前段、若干時間が長くなりましたが、今後の展望いかんによっては、ひとり一地方の問題にとどまらず県下全域に影響しかねない重要性を秘めた問題と考えますので、あえて国政の場に触れ、自治体としての取り組みの必要性、ご検討をお願い申し上げ、これらの現状分析と関連して、冒頭申し上げた次の具体的な事実についての県当局としての明確なご見解、対応についてお尋ねいたします。
 去る九月十二日付の「和歌山新報」報道の一記事は、その内容注目するに値するに加えて、次第によっては重大問題を包蔵と考えますので、報道の全文をご提示申し上げ、ご見解をお伺いいたしたいと思います。
 ごみ問題が大きな社会問題となっているが、新宮市でも、海上ルートを使い、同市佐野にある民間の産業廃棄物処理場が、関東地方のごみを受け入れる契約を結んだことが八日明らかになり、付近住民は反対の意志を示しているが十日、同市三輪崎会館で同処理場と協定を結んでいる高地区産業廃棄物処理場対策連絡協議会(浜口宇之次郎会長)の団体代表者らに対して説明会を開いた。県は、「産業廃棄物の受け入れは法的には可能」としているものの「住民理解が必要」との立場をとっており、参加した住民には、公害問題や処理場の寿命が短くなり新宮市のごみの処理場がなくなることへの懸念が強く、住民同意にはほど遠い感じだ。
 説明会には市の栗須久夫助役や新宮保健所の上田信一郎衛生課長が出席。傍聴には市議や地元民らが詰め掛けた。同協議会は三輪崎、佐野、高、木ノ川農業実行組合や三輪崎漁業協同組合など地元九団体で組織している。
 計画によると、関東方面の八十九社で作る「イージェック」が建設廃材を中間処理場である横浜市の産業廃棄物処理業者に持ち込みそこで安定五品目といわれる鉄、木くず、プラスチックなどを砂利程度の二、三センチの大きさにして一立方メートル入る袋(フレコンバック)に詰める。
 それを別の運搬業者が横浜の鶴見川桟橋まで陸送。そこから那智勝浦町の宇久井港まで船を使い八百立方メートルを月に五回(月四千立方メートル)、海上輸送し、同港から最終処理場である同市佐野の処理場へ四トントラック八台を使い一日、十往復する。一日に四百立方メートルを搬入し残りは、港内に積み残しされる。二日がかりで運搬するというもの。
 現在、東京では廃材を東北方面に陸上ルートで搬送しているが量、回数、公害などの問題点がある。その問題点をクリアできる海上輸送のルートを確立するため今回、試験的にやってみたいと計画された。
 県はその海上ルートの可能性について、那智勝浦町に意見を求める事前調査を行った。これに対して同町は宇久井区、港区と漁協からも意見を聞き「この計画に同意することはできない」との意見書を県に提出した。
 しかし、それ以前に、最終処理場に搬入することや陸上輸送についてはすでに許可が下りている。
 説明を受けた地元団体の代表者らは「現在の処分場を設ける時、周辺に処理場がないことからあえて涙を飲んだが、県外からの持ち込みはもっての他」「海が汚染されている現在、このうえ県外から持ってくるとは何事か。漁民を殺す気か」「安定五品目となっているが、悪い物が持ち込まれるに決まっている。良い物なら自分のところで処理できるはず」などの強い反発が続出した。
 これに加え栗須助役は「現処理場を設けた時は県外からの持ち込みについては予想もしていなかった。この問題はありがたくない。市としては意見として知事に申請せざるをえない。自然を汚さないように時間をかけて検討したい」と話した。
 また上田衛生課長は「処分場はすでに許可が下りており、受け入れは可能。法的には問題ない。保健所では業者に対して『地元の理解を十分に得て、それからでないと難しい』と指導している。県は庁内で検討し、問題点があれば申請者に対して『この点をクリアしなさい』と指導する。それをクリアしなければ本申請はできない」と説明した。
 安定五品目以外の有害物質などの混入のチェック体制について県環境調整課では「二十四時間態勢とはいかないが、岸壁や処理場で厳重にチェックし、安定五品目以外の廃棄物混入など違反があれば即、許可を取り消す」と話している。
 またこの話し合いの中で、処分場の更新時期や経営者変更について、地元九団体に対してなんらの報告もなされぬままに変更していることなども取りざたされ、地元民に大きな不安を抱かせており、今後まだまだ予断をゆるさない状態となっている。
 以上のとおりの記事の内容。その後も一、二、新聞報道もございましたが、重複ゆえ省き、また新宮市議会、那智勝浦町議会における議員質問もなされた由伺うものの、内容を承知していませんし、趣旨等については同じ立場と存じますので、触れることは慎むとして、以下数点質問し、県当局の明確なるご答弁をお願い申し上げます。
 まず、申し述べた廃棄物海上輸送、受け入れに関する事実認識についてどのように把握しておられるか。私が先ほど述べたとおりなのかどうか。県関係の場のやりとりを中心としてお答え願いたい。
 第二点、報道内容どおりとすれば、たとえ事前対応とは申せ、県許可がおり、業者間の受け入れ契約も結ばれているとのことですが、その内容、また許可理由について、情勢分析も含めて具体的にお答え願いたい。
 第三点として、地元意見に対する県のご見解、対応について。申し述べた新聞報道内容でもおわかりのとおり、地元意見は反対に終始の上、地元反対住民の方々は新宮市議会に反対の陳情書を提出、市長も、でき得れば搬入を阻止したい旨意思表示、また那智勝浦町も、県からの意見を求められ、不同意の意見書提出とか漏れ承りますが、これらの地元意思の具体的な内容、またそれに対する県当局としてのご見解、対応について。
 廃棄物処理法の改正内容に国民の責務が加えられ、自治体の施策に協力すること、また自治体側として住民の自主的な活動を促進することが求められている法の精神のかかわり等も踏まえ、今後の取り組みをも含めてお答え願いたいと思います。
 最後に、前項に関連して、私が今まで申し述べた論旨とは全く別の観点ですが、厳しさにあえぐと申しても過言でない私たちの地方の現状認識に基づく一視点として、陸上輸送業者に対する対応についてお伺いいたします。
 取り組みの経過の中でも見られる同意云々の業者の中に地元輸送業者があるいは入っているのではないかと考えられますが、当地方の運送業を取り巻く厳しい環境、将来展望を考えるとき、新しく仕事がふえることは何事にもまさる喜びと歓迎すると存じます。そのほのかながら渇望に似た火を、たとえ環境保全の当然の措置とはいえ、消すことになった場合、気落ちの業者をつくらない配慮と紀南の経済浮上対策を切に希望する次第ですが、この点についての当局のご見解、要望をあわせてお願いし、以上で私の第一回の質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの浜口矩一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 保健環境部長遠藤 明君。
  〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 産業廃棄物の受け入れに対する対応についてでございますが、まず事実認識でございます。
 新宮市佐野の産業廃棄物最終処分場へ首都圏の建設廃材を受け入れたいとする計画が進められていることは承知いたしております。
 同処分場の容量は約十三万立方メートルでございまして、現在、約十万立方メートルの残余量となっております。ここへ、全体で五万立方メートルを搬入したいという考えであると聞いております。
 県には収集運搬業者が行う一時保管に関する事前調査書が提出をされ、現在、関係機関に対し、法的な制約等について照会を行っているところでございます。この事前調査の中で、那智勝浦町長から同意できない旨の意見をいただいているところでございます。
 次に、事前許可の内容あるいはその根拠等についてでございます。
 新宮市の最終処分業者に対しましては、昭和六十三年十二月に建設廃材等五種類の産業廃棄物最終処分場設置の許可を与えております。その後、新宮市長、地元協議会の会長、最終処分業者代表取締役の三者の間で平成二年三月六日に公害防止協定が締結され、現在、営業中でございます。
 収集運搬業者についても既に許可済みでございますが、今回の計画では海上輸送されてきた建設廃材を陸揚げ後一時保管することとなっており、保管を行うためには収集運搬業の変更許可が必要となり、先ほど申し上げた事前調査を実施中でございます。
 次に、地元の意見に対する県の見解と今後の取り組みでございます。
 まず、処分場の短命化の問題につきましては、新宮市の最終処分業者に対し、地元の廃棄物の受け入れ優先と県外廃棄物搬入計画の提出を申し入れてございます。また、許可物質以外の廃棄物混入の問題につきましては、廃棄物処理法改正の趣旨を踏まえ、適切な監視が必要であると考えております。
 以上の考えに基づきまして、処理業者、運搬業者双方に対し、地元と十分協議して理解を得る努力をするよう指導中でございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 商工労働部長中西伸雄君。
  〔中西伸雄君、登壇〕
○商工労働部長(中西伸雄君) 浜口矩一議員にお答えいたします。
 廃棄物問題とは観点がやや違った形といいますか、全般的な紀南の雇用等の問題についてお答えをさせていただきたいと思います。
 現在、県内の中小企業、地場産業は非常に苦しい経営状態にございます。紀南地方の運送関係業者も含めて中小企業にあっては、過疎問題等を含め、特に厳しい環境下にあるものと認識をいたしてございます。
 県といたしましても、今九月補正予算に公共事業の推進、また金融対策等の総合経済対策をお願いし、県の経済活性化を図ってまいる所存でございますが、特に紀南地域の振興については、将来的な展望も含め、観光振興、また中小企業対策、企業立地の促進を柱にして、地域並びに中小企業の活性化に積極的に努力してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 45番浜口矩一君。
○浜口矩一君 それでは、再質問をさせていただきます。
 まず、新宮市の高地区産業廃棄物処理場への廃棄物受け入れについての事実認識でございますが、保健環境部長さんのご答弁は、廃棄物処理場への首都圏からの建設廃材受け入れの計画が進められておる、県には収集運搬業者が行う一時保管に関する事前調査書が提出され、現在関係機関に対して法的な制約等についての照会中、またこれらの事前調査の中で那智勝浦町より不同意の意見が出されたと、こういうようなことのご答弁でございました。許可・不許可、その他指導要綱については現在も何らの結論も出ておらないで関係機関に照会中と答えられておると思うんです。しかし、私が申し上げたのは、今、新聞の報道を読み上げたわけでございますが、どういうような経過になっているかということです。
 このことについては、第二点の質問に対する答弁の中で触れられたので申し上げませんが、今回の法律改正の中でも、廃棄物の適正な処理の確保のためとして、施設設置者の心得、対応について、周辺地域の生活環境の保全増進に配慮しなければならないというように規定されておると思います。また関係者の責務についても、新たに国民の責務の一項が設けられて、先ほど申し上げたような排出の抑制やリサイクルなど実際の施策に協力するということが求められておる。さらに、実際に住民の自主的な活動の促進が明記されているかどうか、三番目のいわゆる地元意見の問題については、県当局としても十分に尊重すべき、心すべき事柄だと考えますが、部長さんのご答弁の中では、前提条件は若干異なるものの、処分業者、運搬業者双方に対し、地元と十分協議して理解を得る努力をするよう指導中ということです。そういう中で、先ほど申し上げたようないわゆる地元意見の尊重が、最大限とは言わなくても、十分に生かされるような対応と私は受け取りますが、そういうようなことで今後の事態を注意深く見守ってまいりたいと思います。
 最後の輸送業者対策につきましても、これは全然別の観点なんですが、輸送業者を含めて、紀南では非常に厳しい環境に置かれております。そういう中で、何とかして紀南浮上を図りたい。ただ一社の経営改善とか経営向上というだけでなしに、全般的な立場での願いというものが非常に強いと思います。そういうことを考えると、せっかくほのかに見えてきたものが消えてしまうということもありますので、そういう点でよろしくお願い申し上げたいと思います。
 以上、今後の対応については十分に注目し、地域の人たちが一挙手一投足を注目して見ておるという事実だけ申し上げまして、要望にとどめておきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で浜口矩一君の質問が終了いたしました。

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