平成4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


県議会の活動

議 事 日 程 第四号 平成四年十月九日(金曜日)
  午前十時開議
  第一 議案第百十号から議案第百三十三号まで、及び議案第百三十五号から議案第百三十七号まで(質疑・委員会付託)
  第二 一般質問
  第三 請願付託
会議に付した事件
 一 議案第百十号から議案第百三十三号まで、及び議案第百三十五号から議案第百三十七号まで(質疑・委員会付託)
 二 一般質問
 三 請願付託
 四 休会決定の件
出 席 議 員(四十四人)
 1  番  尾  崎  要  二
 2  番  中  村  裕  一
 3  番  下  川  俊  樹
 4  番  石  田  真  敏
 6  番  木  下  秀  男
 7  番  岡  本 保
 8  番  藁  科  義  清
 9  番  北  村 翼
 10  番  小  川 武
 11  番 上野山  親  主
 12  番  井  出  益  弘
 13  番  町  田 亘
 14  番  尾  崎  吉  弘
 15  番  門  三佐博  
 16  番  西  本  長  弘
 17  番  高  瀬  勝  助
 18  番  冨  安  民  浩
 19  番  和  田  正  一
 21  番  平  越  孝  哉
 22  番  大  江  康  弘
 23  番  岸  本  光  造
 24  番  山  本 一
 25  番  吉  井  和  視
 26  番  浜  田  真  輔
 27  番  堀  本  隆  男
 28  番 宇治田  栄  蔵
 29  番  富  田 豊
 30  番  中  村  利  男
 31  番  馬  頭  哲  弥
 32  番  宗 正  彦
 33  番  鶴  田  至  弘
 34  番  上  野  哲  弘
 35  番  村  岡 キミ子  
 36  番  松  本  貞  次
 37  番  木  下  義  夫
 38  番  和  田  正  人
 39  番  中  西  雄  幸
 40  番  橋  本 進
 41  番 野見山   海
 42  番  森 正  樹
 43  番  浜  本 収
 44  番  新  田  和  弘
 45  番  浜  口  矩  一
 46  番  森  本  明  雄
欠 席 議 員(一人)
 20  番  阪  部  菊  雄
 〔備 考〕
 5  番  欠  員
 47  番  欠  員
説明のため出席した者
 知 事 仮  谷  志  良
 副知事 西  口 勇
 出納長 梅  田  善  彦
 知事公室長 市  川  龍  雄
 総務部長  山  中  昭  栄
 企画部長  佐  武  廸  生
 民生部長  吉  井  清  純
 保健環境部長  遠  藤 明
 商工労働部長  中  西  伸  雄
 農林水産部長  中  村 昇
 土木部長  山  田 功
 企業局長  高  瀬  芳  彦
  以下各部次長・財政課長 
 教育委員会委員長職務代行者
 山  本 昭
 教育長 西  川 時千代  
  以下教育次長
 公安委員会委員長
 玉  置  英  夫
 警察本部長 中  長  昌  一
  以下各部長
 人事委員会委員長
 水  谷  舜  介
  人事委員会事務局長
 代表監査委員  天  谷  一  郎
 選挙管理委員会委員長
 稲  住  義  之
  選挙管理委員会書記長
  地方労働委員会事務局長
職務のため出席した事務局職員
 事務局長  塩  崎  省  吉
 次  長  中  村 彰
 議事課長  中  西  俊  二
 議事課副課長  佐  竹  欣  司
 議事班長  松  谷  秋  男
 議事課主事 古  井  美  次
 議事課主事 松  本  浩  典
 総務課長  川  端  孝  治
 調査課長  大  畑 巌
 (速記担当者)
 議事課主査 吉  川  欽  二
 議事課主査 鎌  田 繁
 議事課速記技師 中  尾  祐  一
 議事課速記技師 保  田  良  春
  ──────────────────
  午前十時四分開議
○議長(馬頭哲弥君) これより本日の会議を開きます。
○議長(馬頭哲弥君) この際、十月九日、監査委員に選任されました玉井一郎君をご紹介申し上げます。
 監査委員玉井一郎君。
  〔玉井一郎君、登壇〕(拍手)
○監査委員(玉井一郎君) ただいまご指名いただきました玉井一郎でございます。
 このたび、引き続いて先生方から監査委員のご選任を賜りまして、厚く感謝申し上げますとともに責任の重大さを痛感いたしておる次第でございます。
 本日まで任務を遂行できましたのも、先生方のご教示、ご指導のたまものであったと、改めてここでお礼を申し上げますとともに、これからの任期を心新たにして誠心誠意相努める所存でございますので、旧に倍してご指導、ご叱正を賜りますことをお願い申し上げまして、甚だ簡単でございますが、ごあいさつといたします。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。
  ──────────────────
○議長(馬頭哲弥君) 次に日程第一、議案第百十号から議案第百三十三号まで、及び議案第百三十五号から議案第百三十七号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 45番浜口矩一君。
  〔浜口矩一君、登壇〕(拍手)
○浜口矩一君 お許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 今、環境問題が一地域、一国だけの問題ではなく、地球規模の環境保全という新たな視点で提起されていることは、皆様方、既によくご承知のとおり。それゆえ、本年六月三日から十四日にかけて、リオネジャネイロで開催の環境と開発に関する国連会議には百八十三カ国が参加し、リオ宣言を初めアジェンダ21、森林保全の原則声明を採択、また生物多様性条約、気候変動枠組み条約についても、我が国を含む百五十六カ国が調印と聞き及んでおりますが、これらの宣言や行動計画は、いずれもそれぞれの国、地域における経済社会生活、私たちの暮らしの隅々におけるたゆまぬ改善を前提としたもの。それゆえにこそ、ブラジル環境サミットにおいては政府とは別個の世界のNGO諸組織の言動が注目され、地球憲章はもとよりとして、各種の国際NGO条約が脚光を浴びたのだと存じます。
 同時に、アジェンダ21は地方アジェンダ21の採択を世界の地方自治体に要請しておりますが、持続可能な開発というサミット全体のコンセンサスのもとでの人間居住、大気汚染、森林保全、農業問題、廃棄物対策を初めとする地球規模の環境保全のそれぞれのテーマは、地方自治体が腰を据えて取り組まなければ前進し得ない問題であり、また我が国の地域問題にとっても今日的な緊急の政策課題だと思います。
 そのような観点から、私たちの地方で現在問題化している産業廃棄物受け入れに関する具体的な事例について、地元関係者対応等の状況の概要を述べ、県当局としてのご見解をお伺いいたします。
 その前に、若干時間をいただき、廃棄物処理についての一私見として次の事実を申し上げ、ご検討の一助にとお願いいたしたいと存じます。
 現在、廃棄物の処理は、我が国だけでなく地球規模で大きな問題になっている。特に我が国の場合は、経済成長を最優先的に進めてきた結果として環境汚染とともに大変な状況になってきており、現行の廃棄物の処理及び清掃に関する法律──以下、「廃棄物処理法」と申させていただきます──では、十分な対応不可能として、第百二十一回国会で、本法と一対の法案として提出の廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部改正を含めて二十年ぶりに改正。その後、政省令施行。
 主な改正点については、一、処理法の目的については、廃棄物を適正に処理することから、廃棄物の排出抑制、適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理と具体的に明記され、二、関係者の責務については新たに国民の責務が設けられ、排出抑制やリサイクルなど自治体の施策に協力すること、事業者には、適正処理が困難にならないよう措置と事前の自己評価、情報提供、自治体の施策に協力すること、また自治体では住民の自主的な活動の促進などを明示、三、廃棄物の計画的処理として、一般廃棄物処理計画では発生量から処理施設の整備までの計画策定や関係市町村との調和、多量に排出する事業者に対する減量計画の作成指示、四、廃棄物減量化、再生のための市町村の指導、その他九項目にわたる改正がなされた由。
 前段、若干時間が長くなりましたが、今後の展望いかんによっては、ひとり一地方の問題にとどまらず県下全域に影響しかねない重要性を秘めた問題と考えますので、あえて国政の場に触れ、自治体としての取り組みの必要性、ご検討をお願い申し上げ、これらの現状分析と関連して、冒頭申し上げた次の具体的な事実についての県当局としての明確なご見解、対応についてお尋ねいたします。
 去る九月十二日付の「和歌山新報」報道の一記事は、その内容注目するに値するに加えて、次第によっては重大問題を包蔵と考えますので、報道の全文をご提示申し上げ、ご見解をお伺いいたしたいと思います。
 ごみ問題が大きな社会問題となっているが、新宮市でも、海上ルートを使い、同市佐野にある民間の産業廃棄物処理場が、関東地方のごみを受け入れる契約を結んだことが八日明らかになり、付近住民は反対の意志を示しているが十日、同市三輪崎会館で同処理場と協定を結んでいる高地区産業廃棄物処理場対策連絡協議会(浜口宇之次郎会長)の団体代表者らに対して説明会を開いた。県は、「産業廃棄物の受け入れは法的には可能」としているものの「住民理解が必要」との立場をとっており、参加した住民には、公害問題や処理場の寿命が短くなり新宮市のごみの処理場がなくなることへの懸念が強く、住民同意にはほど遠い感じだ。
 説明会には市の栗須久夫助役や新宮保健所の上田信一郎衛生課長が出席。傍聴には市議や地元民らが詰め掛けた。同協議会は三輪崎、佐野、高、木ノ川農業実行組合や三輪崎漁業協同組合など地元九団体で組織している。
 計画によると、関東方面の八十九社で作る「イージェック」が建設廃材を中間処理場である横浜市の産業廃棄物処理業者に持ち込みそこで安定五品目といわれる鉄、木くず、プラスチックなどを砂利程度の二、三センチの大きさにして一立方メートル入る袋(フレコンバック)に詰める。
 それを別の運搬業者が横浜の鶴見川桟橋まで陸送。そこから那智勝浦町の宇久井港まで船を使い八百立方メートルを月に五回(月四千立方メートル)、海上輸送し、同港から最終処理場である同市佐野の処理場へ四トントラック八台を使い一日、十往復する。一日に四百立方メートルを搬入し残りは、港内に積み残しされる。二日がかりで運搬するというもの。
 現在、東京では廃材を東北方面に陸上ルートで搬送しているが量、回数、公害などの問題点がある。その問題点をクリアできる海上輸送のルートを確立するため今回、試験的にやってみたいと計画された。
 県はその海上ルートの可能性について、那智勝浦町に意見を求める事前調査を行った。これに対して同町は宇久井区、港区と漁協からも意見を聞き「この計画に同意することはできない」との意見書を県に提出した。
 しかし、それ以前に、最終処理場に搬入することや陸上輸送についてはすでに許可が下りている。
 説明を受けた地元団体の代表者らは「現在の処分場を設ける時、周辺に処理場がないことからあえて涙を飲んだが、県外からの持ち込みはもっての他」「海が汚染されている現在、このうえ県外から持ってくるとは何事か。漁民を殺す気か」「安定五品目となっているが、悪い物が持ち込まれるに決まっている。良い物なら自分のところで処理できるはず」などの強い反発が続出した。
 これに加え栗須助役は「現処理場を設けた時は県外からの持ち込みについては予想もしていなかった。この問題はありがたくない。市としては意見として知事に申請せざるをえない。自然を汚さないように時間をかけて検討したい」と話した。
 また上田衛生課長は「処分場はすでに許可が下りており、受け入れは可能。法的には問題ない。保健所では業者に対して『地元の理解を十分に得て、それからでないと難しい』と指導している。県は庁内で検討し、問題点があれば申請者に対して『この点をクリアしなさい』と指導する。それをクリアしなければ本申請はできない」と説明した。
 安定五品目以外の有害物質などの混入のチェック体制について県環境調整課では「二十四時間態勢とはいかないが、岸壁や処理場で厳重にチェックし、安定五品目以外の廃棄物混入など違反があれば即、許可を取り消す」と話している。
 またこの話し合いの中で、処分場の更新時期や経営者変更について、地元九団体に対してなんらの報告もなされぬままに変更していることなども取りざたされ、地元民に大きな不安を抱かせており、今後まだまだ予断をゆるさない状態となっている。
 以上のとおりの記事の内容。その後も一、二、新聞報道もございましたが、重複ゆえ省き、また新宮市議会、那智勝浦町議会における議員質問もなされた由伺うものの、内容を承知していませんし、趣旨等については同じ立場と存じますので、触れることは慎むとして、以下数点質問し、県当局の明確なるご答弁をお願い申し上げます。
 まず、申し述べた廃棄物海上輸送、受け入れに関する事実認識についてどのように把握しておられるか。私が先ほど述べたとおりなのかどうか。県関係の場のやりとりを中心としてお答え願いたい。
 第二点、報道内容どおりとすれば、たとえ事前対応とは申せ、県許可がおり、業者間の受け入れ契約も結ばれているとのことですが、その内容、また許可理由について、情勢分析も含めて具体的にお答え願いたい。
 第三点として、地元意見に対する県のご見解、対応について。申し述べた新聞報道内容でもおわかりのとおり、地元意見は反対に終始の上、地元反対住民の方々は新宮市議会に反対の陳情書を提出、市長も、でき得れば搬入を阻止したい旨意思表示、また那智勝浦町も、県からの意見を求められ、不同意の意見書提出とか漏れ承りますが、これらの地元意思の具体的な内容、またそれに対する県当局としてのご見解、対応について。
 廃棄物処理法の改正内容に国民の責務が加えられ、自治体の施策に協力すること、また自治体側として住民の自主的な活動を促進することが求められている法の精神のかかわり等も踏まえ、今後の取り組みをも含めてお答え願いたいと思います。
 最後に、前項に関連して、私が今まで申し述べた論旨とは全く別の観点ですが、厳しさにあえぐと申しても過言でない私たちの地方の現状認識に基づく一視点として、陸上輸送業者に対する対応についてお伺いいたします。
 取り組みの経過の中でも見られる同意云々の業者の中に地元輸送業者があるいは入っているのではないかと考えられますが、当地方の運送業を取り巻く厳しい環境、将来展望を考えるとき、新しく仕事がふえることは何事にもまさる喜びと歓迎すると存じます。そのほのかながら渇望に似た火を、たとえ環境保全の当然の措置とはいえ、消すことになった場合、気落ちの業者をつくらない配慮と紀南の経済浮上対策を切に希望する次第ですが、この点についての当局のご見解、要望をあわせてお願いし、以上で私の第一回の質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの浜口矩一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 保健環境部長遠藤 明君。
  〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 産業廃棄物の受け入れに対する対応についてでございますが、まず事実認識でございます。
 新宮市佐野の産業廃棄物最終処分場へ首都圏の建設廃材を受け入れたいとする計画が進められていることは承知いたしております。
 同処分場の容量は約十三万立方メートルでございまして、現在、約十万立方メートルの残余量となっております。ここへ、全体で五万立方メートルを搬入したいという考えであると聞いております。
 県には収集運搬業者が行う一時保管に関する事前調査書が提出をされ、現在、関係機関に対し、法的な制約等について照会を行っているところでございます。この事前調査の中で、那智勝浦町長から同意できない旨の意見をいただいているところでございます。
 次に、事前許可の内容あるいはその根拠等についてでございます。
 新宮市の最終処分業者に対しましては、昭和六十三年十二月に建設廃材等五種類の産業廃棄物最終処分場設置の許可を与えております。その後、新宮市長、地元協議会の会長、最終処分業者代表取締役の三者の間で平成二年三月六日に公害防止協定が締結され、現在、営業中でございます。
 収集運搬業者についても既に許可済みでございますが、今回の計画では海上輸送されてきた建設廃材を陸揚げ後一時保管することとなっており、保管を行うためには収集運搬業の変更許可が必要となり、先ほど申し上げた事前調査を実施中でございます。
 次に、地元の意見に対する県の見解と今後の取り組みでございます。
 まず、処分場の短命化の問題につきましては、新宮市の最終処分業者に対し、地元の廃棄物の受け入れ優先と県外廃棄物搬入計画の提出を申し入れてございます。また、許可物質以外の廃棄物混入の問題につきましては、廃棄物処理法改正の趣旨を踏まえ、適切な監視が必要であると考えております。
 以上の考えに基づきまして、処理業者、運搬業者双方に対し、地元と十分協議して理解を得る努力をするよう指導中でございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 商工労働部長中西伸雄君。
  〔中西伸雄君、登壇〕
○商工労働部長(中西伸雄君) 浜口矩一議員にお答えいたします。
 廃棄物問題とは観点がやや違った形といいますか、全般的な紀南の雇用等の問題についてお答えをさせていただきたいと思います。
 現在、県内の中小企業、地場産業は非常に苦しい経営状態にございます。紀南地方の運送関係業者も含めて中小企業にあっては、過疎問題等を含め、特に厳しい環境下にあるものと認識をいたしてございます。
 県といたしましても、今九月補正予算に公共事業の推進、また金融対策等の総合経済対策をお願いし、県の経済活性化を図ってまいる所存でございますが、特に紀南地域の振興については、将来的な展望も含め、観光振興、また中小企業対策、企業立地の促進を柱にして、地域並びに中小企業の活性化に積極的に努力してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 45番浜口矩一君。
○浜口矩一君 それでは、再質問をさせていただきます。
 まず、新宮市の高地区産業廃棄物処理場への廃棄物受け入れについての事実認識でございますが、保健環境部長さんのご答弁は、廃棄物処理場への首都圏からの建設廃材受け入れの計画が進められておる、県には収集運搬業者が行う一時保管に関する事前調査書が提出され、現在関係機関に対して法的な制約等についての照会中、またこれらの事前調査の中で那智勝浦町より不同意の意見が出されたと、こういうようなことのご答弁でございました。許可・不許可、その他指導要綱については現在も何らの結論も出ておらないで関係機関に照会中と答えられておると思うんです。しかし、私が申し上げたのは、今、新聞の報道を読み上げたわけでございますが、どういうような経過になっているかということです。
 このことについては、第二点の質問に対する答弁の中で触れられたので申し上げませんが、今回の法律改正の中でも、廃棄物の適正な処理の確保のためとして、施設設置者の心得、対応について、周辺地域の生活環境の保全増進に配慮しなければならないというように規定されておると思います。また関係者の責務についても、新たに国民の責務の一項が設けられて、先ほど申し上げたような排出の抑制やリサイクルなど実際の施策に協力するということが求められておる。さらに、実際に住民の自主的な活動の促進が明記されているかどうか、三番目のいわゆる地元意見の問題については、県当局としても十分に尊重すべき、心すべき事柄だと考えますが、部長さんのご答弁の中では、前提条件は若干異なるものの、処分業者、運搬業者双方に対し、地元と十分協議して理解を得る努力をするよう指導中ということです。そういう中で、先ほど申し上げたようないわゆる地元意見の尊重が、最大限とは言わなくても、十分に生かされるような対応と私は受け取りますが、そういうようなことで今後の事態を注意深く見守ってまいりたいと思います。
 最後の輸送業者対策につきましても、これは全然別の観点なんですが、輸送業者を含めて、紀南では非常に厳しい環境に置かれております。そういう中で、何とかして紀南浮上を図りたい。ただ一社の経営改善とか経営向上というだけでなしに、全般的な立場での願いというものが非常に強いと思います。そういうことを考えると、せっかくほのかに見えてきたものが消えてしまうということもありますので、そういう点でよろしくお願い申し上げたいと思います。
 以上、今後の対応については十分に注目し、地域の人たちが一挙手一投足を注目して見ておるという事実だけ申し上げまして、要望にとどめておきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で浜口矩一君の質問が終了いたしました。
○議長(馬頭哲弥君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 35番村岡キミ子君。
  〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 お許しをいただきましたので、早速質問に入ってまいります。
 まず初めに在宅老人保健福祉計画についてでございますが、この問題については先日の森本議員も質問されました。幾つかの点で重複するところもございますので、その点はご容赦願いたいと思います。
 ある月刊雑誌を読んでおりましたら、こんな一行がございました。「近くて遠きは医療、福祉」──まさに今日の高齢者に対する実感だなと痛感をする私でございました。体が不自由になっても住みなれた家、住みなれた土地で老後を送りたい、これがお年寄りの願いでありまして、家族もまたそのことを願っているのではないでしょうか。そして、お年寄りの問題はお年寄りだけの問題ではなくて、みんなの問題としてとらえて考えていかなければならないと思うのです。
 今、人生八十年時代でございますけれども、経済大国と言われながら、一向にその恩恵が私たちには与えられないような環境であると思うのです。この間、老人医療費の再々の改悪と診療報酬によるお年寄りへの差別医療、老後の唯一の保障である年金支給額の引き下げや掛金の大幅アップ、そして支給年齢の六十歳が今まさに六十五歳へと引き延ばしがなされようとしています。消費税の導入による負担や住宅問題等々、老後をお年寄りが小さくなって暮らしていかなければならない現状になっているだけでなく、長寿を喜べない大変な時代になったものだと深く思います。本県におけるお年寄りの自殺率の高いことからも、何とも言えない胸の痛みを感じるのであります。
 さて、前置きが長くなりましたが、今、全国の市町村では老人保健福祉計画の策定作業に入っております。平成五年度までにつくらなければならないという義務づけが法律によって行われましたから、市町村の大変さがうかがえます。
 ところで、市町村老人保健福祉計画策定指針について、県は二次医療圏範囲の計画づくりをし、市町村は、それぞれの市町村が自主性と独自性を持ち、十分な住民のニーズやこれらの実態調査を行った上で計画をつくりなさいと通知をしているのであります。そして、市町村は県と十分な調整をし、市町村はその原案がまとまったら直ちに県の意見を聞いてこれを十分踏まえること、サービスの目標量の原案やその他主要部分の原案についても県の意見を聞くことを求めていますし、方針策定から計画決定に至るまでの間、県と十分調整することと、市町村に一つのくぎを刺して結局は義務づけ、そのため市町村みずからの力を十分発揮し得ないばかりか、自主性を否定し地方自治を軽視した、相変わらずの上意下達の姿勢がうかがえてなりません。さらに、市町村では日常の業務でも限られたわずかな職員数ですから十分こなせない中で、じっくりと計画の力量をつけながらこの作業に取り組むことが容易でないことは十分に推測できますし、こうした困難さは小さな規模の市町村ほどはっきりしているのではないでしょうか。期限も定められているわけですから、これに縛られ、地域の実情を十分踏まえられないまま厚生省が示したマニュアル依存の官僚主義的対応になるのではと、大変危惧するところであります。そして、計画づくりに職員の持つ力と意欲がそがれ、消極的な姿勢が生まれるのではないかとも心配をいたします。
 私は、せっかく国が法律でつくることになったのですから、今なら自分たちが考える福祉サービスを施策化したり、住民総参加で、本当にいつでも、どこでも、だれもが使いやすい保健福祉サービスに変わっていけるなと願っている職員もたくさんいると思うのです。その上、公的責任を明らかにした計画をつくることも可能なわけですから、その力を発揮できるよう、県、国は財政的な保障も含めてすばらしい計画に仕上げる援助が求められていると思うのです。
 そこで、お尋ねをいたします。
 まず第一点は、県、市町村の計画の違いがもうひとつすっきりしませんので、その違いを明らかにしていただきたいと思います。
 第二点目に、実態把握調査の基本とその方法、そして結果が出ているならば、その結果を答えてください。
 第三点、市町村の自主性、独自性と住民や医療、保健、福祉関係者の参加のもとで計画づくりが進められているか、お答えいただきたいと思います。
 もう一点、在宅福祉サービスは公的責任を明らかにすることも大事だと思うのですが、いかがでしょうか。特に、財政力の弱い市町村への財政的保障の裏づけをきちんとすることが大変重要と考えます。
 次に要介護老人の範囲の問題でありますが、今回の計画は、保健福祉計画でありながら、人生のうちの一段階である老人のみを対象とし、子供や障害者、一般が対象とされていません。しかも、老人のうち、虚弱老人、寝たきり老人、痴呆老人のみ主たる対象として限定されており、ひとり暮らし老人や、痴呆老人であっても現在要介護状態にはない人の状況把握が除外されているのであります。つまり、子供や成人期からの予防策や、現在要介護の状態になくともその可能性を対象とした援助は主要課題として認識されなければなりません。要介護という状態の把握も介護援助の必要度という一側面だけが中心になっており、保健や医療という側からの身体・精神面の把握が弱く、予防やリハビリテーションへの視点の弱さを指摘しなければなりません。これでは、家庭に帰された老人を在宅福祉サービスと在宅介護のみで受けとめるという当面の場当たり的な性格が映し出されているばかりではないでしょうか。さらにつけ加えるなら、自立生活の基本となる住宅や町づくり面での対応が軽視される可能性も含んでいると言えます。
 次に、在宅介護者すなわち家族による介護者に対し、社会的介護労働力とみなして介護手当をぜひとも支給してもらいたいという意見を述べたいと思います。
 私は、昨年の九月議会でもこの問題について具体的実態を申し述べてまいりました。在宅介護の多くは家族、それもお嫁さん、娘さん、そして配偶者であり、その介護者が実際に介護していて日常的に困った問題は、睡眠や休養の時間がとれない、外出ができない、他の家族の面倒が十分見られない、便利な介護用品が少ないなど、県が実施した高齢者の生活と意識に関する調査結果にもあらわれています。しかし、この調査はごく限られた質問項目に絞られているため、深刻の度を強めている現実態にはそぐわないものになっていますし、実態そのものはなお一層厳しい深刻さがうかがえます。
 きょうはこの場で、現在の制度では家族の介護の評価は皆無である、在宅介護を社会サービスとして考えた場合、もしこの介護に報酬が出されるとすればどれくらいの金額になるだろうかということで、在宅介護の現場を見詰め直す意味からも、京都南病院在宅療養部が現在実施している、家族介護費として算出したものを紹介したいと思います。これは、昨年の六月、京都南病院在宅療養部の職員の皆さんたちが、自分たちの病院を退院された後、なお在宅介護を続けなければならないし、訪問看護をしているという実態の中から選出して行われた調査内容でございます。
 ここで、その目的について在宅療養部の皆さんたちが述べられていることを若干お話し申し上げたいと思いますが、これはNHKのテレビでも何回かにわたって放送され、私もその一部を見ることができました。私は、直接この担当部の方にお電話をして、学会に発表する前だということでその資料を手に入れることができました。
 この京都南病院は、「八一年から在宅療養部を創設し、地域にねざした医療を推進してきた。こうした中で、現在約八十名あまりの在宅患者を管理し、平均世帯人数三・一人という厳しい家庭条件の中で、家族の献身的な介護によって成りたっている。要介護老人を自宅でみるということは、それ相応の気力と体力と忍耐を要し、介護が長期化すれば介護者自身の健康すら損ない兼ねない現状がある。在宅ケアは、厚生省のいう『ゴールドプラン』による在宅支援三本柱という掛け声とは裏腹に社会的保障制度が確立されておらず、経済的にも家族の負担が非常に大きいという問題点がある。入院や入所では保障されている治療食はもちろん、治療に必要なガーゼ、包帯などの医療材料ですら自己負担という現状なのである。こうした中で、注目すべき点は、家族の介護そのものの費用である。事実、介護という名のもとに、極めて、過酷な労働を強いられているにもかかわらず、現在の制度では、介護への評価は皆無である。在宅介護を社会サービスと考えた場合、もしこの介護に報酬が出るとすれば、どれくらいの金額になるのであろうか」と、こういうことで介護費について検討をされました。
 実際に介護はだれが担っているかという問題であります。ここの在宅患者八十二名の介護者の内訳を申し上げますと、男性十一名、女性七十一名で、全体の八七%を女性が占めています。そして介護する方は、妻二十五名、嫁さん二十五名、娘さん十五名、そして夫が八名、息子さん三名、その他六名──これは親戚の方々らしいです。平均年齢は六十二歳、最高では八十六歳の妻を九十四歳の夫が見ているケースもあったそうです。「我が国の現状においては、在宅ケアを確立するには、介護者は、直接家庭の収入に影響しない女性や、もしくは高齢者にゆだねられている事がうかがえる」と書いてあります。ですから、ここでも、こういう人がなければ家政婦を雇うか、仕事をやめて介護に専念するしか在宅ケアを続けることは非常に困難であるということです。実際、この八十二名の皆さんたちを介護している中でも、五名の介護者が退職をされているし、三名の方が自分の家で介護ができるような条件の職場へ仕事を変えられたという実態もあるそうです。
 介護の実態そのものを見てみますと、こういうふうに述べておられます。「高齢化が進む中で在宅ケアのシステムばかりが注目され、本来、主人公であるはずの介護者は常に陰に隠れた存在となっている。在宅ケアを確立する上でもっとも大きな力となる介護者にスポットを当ててみた」ということでございます。
 その中で、症例と申しましょうか、その患者の状況によって三つに分けております。自立歩行可能な、軽い程度の介護が必要な方を「軽度」といたしました。そして、一日をほぼベッドで過ごして、はったり、その周りをちょっと伝い歩きできる人を「中度」といたしました。そして、もう二十四時間じゅう全面的な介護が必要な寝たきりの方を「重度」として位置づけて、この三つについてそれぞれ一日の生活の中でどのような介護を行われているかということを日課に沿って述べています。
 まず、最も軽い介護の症例ですけれども、慢性関節リューマチで、伝い歩きが可能な七十五歳の夫を七十三歳の妻が介護する日課であります。奥さんの主な介護は、夫の三度の食事の支度と朝夕二回の尿器更新、入浴時の介助です。この方は十分外出もできますし、時間的にもかなり余裕があるという事例です。ほとんど自分でするので介護自体はそれほど苦にならない、ただリューマチですので、ひざなどの関節の痛みを必ず夜中に訴えられて起こされるのが非常に苦労ですと言っていらっしゃるそうです。この奥さんの実労働時間を、食事の支度も含めて約三時間というふうに見ております。
 中度の介護の実態を見てみますと、事例としては、四年前に右大腿骨折後、歩行は不可能で、食事や座位は自力でできるけれども、一日をほとんどベッドで過ごす八十歳の母を五十九歳の娘が介護している様子です。前の事例との大きな違いは、直接トイレに行けないのでポータブルによる排せつ介助か、あるいはおむつ交換があるかどうかであります。この行為によって約三時間置きに患者に接しなければなりません。ですから、外出したとしても長時間はとても無理だということです。こうしたことからも精神的な面でのストレスが蓄積する。この介護者も、ゆっくり外出してみたいと、ため息まじりに訴えていらっしゃったそうです。この中程度の介護者の労働時間は五時間、おむつ交換が六回ございますので、随分と忙しくなってきているということになります。
 それから重度の介護、いわゆる寝たきりの方の介護者でございます。この方は六年前に交通事故に遭い、頸髄損傷で全介助を要する寝たきり状態となった七十歳の夫を六十七歳の奥さんが介護をする様子です。これは、軽度の方や中度の方たちと比べてみても大変忙しいのは、もうだれが頭で考えても想像できるのではないかと思います。実際に訪問に行って調査している皆さん方がこの奥さんの動く姿を見て、その忙しさに圧倒されてしまったとおっしゃっています。奥さんは、食事と入浴とわずかな休憩以外はほとんどつきっきりで介護し、夜中も体位交換のため最低二回は起きると言っています。そして、何よりも注目すべきことは睡眠前の導尿と一日一度のかん腸です。寝たきりの状態ですから、運動不足と体力の低下から、かん腸をしてもなかなか思うように出ません。ですから、大変汚い話ですけれども、ほとんどの寝たきり状態の人は排せつが困難ですから、かん腸をしたその後でも出ない場合には指で摘便をするそうです。私も、これは病院等で経験をいたしております。この重度の方は、かん腸や導尿、蓐瘡交換に至って、看護行為がかなりの割合で介護者の手によって行われているのが特徴なんです。ですから、この奥さんの実労働時間は、前のお二人に比べてはるかに多くて十・五時間、そしてこれに加わって、床ずれができないように体位交換というのがあります。そしてまた清拭をしなければなりませんから、大変な状態が続くと言わざるを得ません。
 こうやってこの問題を見てみますと、皆さん方にも非常にリアルにご理解いただけただろうと思います。
 それからまた、今の専門職と言われている付添家政婦さん、あるいはヘルパーさん、国家資格を持った介護福祉士さんたちと、その介護の種類ごとに看護行為を比較検討してみました。炊事、洗濯、買い物、掃除、食事介助、おむつ交換、清拭、入浴介助、かん腸、摘便、そして休日、交代要員というものに点数をつけて調査しておられます。この点数の見方でございますけれども、常に行う行為については十点、ある一定の割合で行う行為については五点、ほとんど行わない行為については零点としてつけてみたということです。
 これで見てみますと、細かくは申しませんけれども、付添家政婦の皆さんたちは、炊事や洗濯、買い物等の点数を合計してみると六十点、ヘルパーさんが七十点、介護福祉士さんが四十点、そして在宅介護の寝たきりの場合は百五点と、大きく点数が上がります。そして、中程度の介護は八十五点、軽度の方が六十点とつけられました。
 この評価を賃金としてどういうふうに見るかということもここに書かれていますが、それは細かくは申しません。評価の仕方もありますけれども、ほとんど介護を要しないような軽い場合、看護行為として点数で見て時間給八百九十円──今の時間給とは十円か二十円違うかもわかりません──実労働時間が三時間として三十日で計算して、八万百円と出しました。中程度の介護の場合は、時間給を千六十三円として、実労働時間四・五時間に三十日を掛けると十四万三千五百五円。そして寝たきりの方の場合は、時間給を千百二十六円と見て、実労働時間が十・五時間ですので、三十日を掛けて三十五万四千六百九十円というふうになります。
 こういうふうに社会的な介護労働という面から見た場合、実に寝たきりの場合は三十五万四千六百九十円ということですので、社会的サービスとして評価すれば、県は九月議会のときに、金品ではしないけれどもヘルパーさんやショートステイ、デイケアサービスで行くんだと答弁をされましたが、実際の介護の状態から見ればやはり家庭介護に頼らなければならない状態がずっと続くわけですから、そういった人たちの苦労のためにもぜひ介護手当の支給を再考していただきたいと思います。
 同時に、この二年から三年の間にヘルパーの飛躍的な増員に努力をされてまいったことには大きな評価をしたいと思います。しかし、今後ますますふえるであろう在宅介護、そして専門職員、とりわけ作業療法士や理学療法士、そしてヘルパー等の確保とその養成の具体化が急がれます。本定例会議の補正予算に介護実習・普及センターの設置の具体的措置が提案されているところでありますが、理学療法士や作業療法士について、現在行われている修学資金制度のみで充足が可能となるのかどうか、計画も含めて民生部長及び関係部長の見解をお聞かせください。
 次に、こうした保健福祉計画を充実したものにするには、あらゆる関係する部門との連携が必須条件となるかと思うのでありますが、少なくとも保健、医療、福祉関係等による地域ネットワークづくりが伴わなければなりませんし、せっかくつくられた計画が正しく実現されているのかどうかを住民の側から行政を監視する、チェックする福祉オンブズマン制度を取り入れることを求めたいと思うのであります。民生部長の所見をお聞かせください。
 次に、和歌山海南線、通称・国体道路建設にかかわる用地買収と代替地及び代替地あっせん等の約束についてであります。
 問題は二十年以上の経過を持つ事象でありますから、何を今さらとお思いになられるかもわかりません。私は、本県の公共事業を進める上で決して軽視できない問題であると考えて、あえてお尋ねをするものです。
 行政は、主権者である住民の安全、健康と生活を守ることが何よりも第一の責務であろうかと私は思っておりますから、とりわけ公共事業を行う上での用地取得においては県民の理解と協力、そして行政に対する深い信頼によって公共事業がスムーズに進むものと確信をするものです。しかし、本事象は二十数年前の国体道路建設事業当時のことであります。
 国体を三年後に控えた昭和四十三年ごろから用地買収の話が具体的に始まりました。A建設業者は、和歌山市中島一三三番地に、自己所有地三百八十坪と隣接地の千五百坪を資材置き場として借りながら事業を行っていました。そして、国体道路建設計画地として自己所有地百十坪の買収に協力をし、移転地として県の宅地あっせん地・紀三井寺七三六の一六に七十坪を購入いたしました。しかし資材置き場については、昭和四十五年、千五百坪の代替地は無理だが、半分の七百五十坪については国体道路沿いに何とか確保するからと口約束をいたしました。その後、立ち退きを急がれて、とりあえず宅地七十坪のところに資材を移してくれ、もし足らなければ中津川を使ってもよいから資材をとにかくどけてくれと県に言われ、中津川に四メートル突き出し棚をつくって資材を移しました。そして家族は、自分所有の借家に昭和四十六年二月に引っ越しをしています。
 この中津川利用については、代替地確保までという条件で許されたのだそうです。それから担当者も異動で次々とかわり、かわるたびに一から説明しなければならず、実にまずい行政の対応の連続だったとA建設業者は語っていらっしゃいます。しかし、どの責任者も、それは大変気の毒なことやな、調べて返事しますとか、何とかしましょうと、積極的に用地を探す努力はしていただいたが、今日まで未解決のままであります。この間、具体的候補地が示されたので、何カ所かは責任者と一緒に現地にも行きました。とにかく早く解決したい思いで、今度こそはと期待も大変大きかったのですが、具体的候補地として示されたのは河川敷で、どこか使えるところがあれば提供しましょうとか、中津川が道路になる計画があるのでそのとき払い下げるようにするからとか、また湊神前線の用地買収のときに代替地はつくる、木材港の土地か加太の土取り跡地に何とか、あるいは企業局の土地を、木ノ本岬線の市所有地にとか、こうした努力はしていただきました。しかし、いずれも話は立ち消えに終わってしまいました。
 そこで、土木部長にお尋ねをいたしますが、当時、この事業推進のため直接担当された都市計画事務所、あるいは都市計画事務所廃止後引き継ぎになった和歌山土木事務所の対応とその事実経過についてお答えいただきたいと思います。
 こうした長い経過の中で、現在、A建設業者は和歌山市延時の土入川と打手川の合流地点約二千五百平方メートルの河川敷地内に、建設用資材を初め機器類ほか、土、砂を許可なく占用していますし、また紀三井寺の中津川河川敷地内にも建設資材倉庫を占用している事実がありますが、今、これらはいずれも河川法違反の警告通知を受けています。A建設業者にしてみれば、口約束といえども県行政をかたく信頼し続けたのになぜという思いが日々強まったようであります。
 さきにも申し上げましたが、中津川利用については、かつて県は資材置き場の代替地確保までの使用許可をみずから指導してきました。土入川河川敷についても、昭和五十八年当時の和歌山土木事務所長の、河川敷で利用できるところがあれば提供するという返事を信頼して、資材搬入する事前に約束の代替地として使用さしてもらうことを平成元年六月ごろ申し入れ、その後、利用しているわけです。もっとも、このA建設業者は、資材搬入直前まで、昭和六十一年から六十三年度にかけてこの地の護岸工事を施工していることから、約束の河川敷確保ができたと思うのも当然だと思うのです。
 私は、昨年三月五日、建設常任委員会でこの問題を取り上げて、延時周辺住民からの河川敷不法占拠の指摘やさまざまな苦情に対する改善を求めてきたところでありますが、不法占拠による資材撤去や土、砂の撤去の履行も一時的には改善を見たものの、現場を見るたびにますます悪化の方向にあることに不審を抱いていたのも事実です。県の不透明な態度と言い、責任の所在等についても明らかにされないままであったことも厳しく問われなければなりません。こうした不法占拠を解決することは当然ですが、同時に代替地確保が求められると思うのであります。今後どう対応されようと考えておられるのか、土木部長にお答えいただきたいと思います。
 なお、土入川河川敷二千五百平方メートルの利用計画について伺います。
 以前、延時団地周辺自治会に対し、護岸整備終了後、地域住民の憩いの場として公園計画の話が広く伝えられ、住民の期待が強まっているのでありますが、どのような具体的計画で取り組まれているのでありましょうか。計画がないとするならば、ぜひとも公園として整備を願うものですが、所見をお聞かせ願います。
 もう一点、お伺いをいたします。
 A建設業者は、昭和五十七年二月ごろ、県があっせんした宅地に自宅を建設するため和歌山市に建築確認申請を行ったが、公道として進入路がないという理由で許可されませんでした。そして、宅地を担保に国民金融公庫の借り入れを申し込んだが、同じく公道として進入路がないため借り入れを受けられませんでした。この地には、A建設業者と同じように買収に協力し、県の宅地あっせんに応じて今もなお居住している四世帯があるのはご承知でありましょう。県は、この地に公道としての進入路がないことを知りながらあっせんしたのか。今後、これらの人々が売却や建てかえ時に発生するであろう宅地の評価、建築不許可、売却困難などの問題にどのような責任をとられるのか。また、進入路がないため建てかえや売却のとき問題が生じないよう中津川のこの河川管理道路が市道にならないのか、お答えをいただきたいと思います。
 最後に、一言苦言を申し上げておきたいと思います。
 県民は、公共事業に大小の差はあっても、先祖伝来の山林や田畑、宅地を買収という形で協力を行ってきました。今後も行うでありましょう。この事象のように、行政のすることに間違いやうそはないだろうと信じて協力したことによって、住民の生活や暮らしが、そして営業が脅かされることがあってはなりません。これこそ地方自治の精神から大きく逸脱した行為であるばかりでなく、県の信頼と期待を裏切るものです。したがって、言うまでもなく、県政の主人公は住民であることを認識し、再びこのような事象を繰り返さないよう厳しく指摘をしておきたいと思います。
 以上で終わります。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 民生部長吉井清純君。
  〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) 老人保健福祉計画に関する七項目の質問にお答えをいたします。
 まず、県と市町村の計画の違いについてでございます。
 老人保健福祉計画のうち、県の段階での計画については、市町村計画を積み上げて県全体の目標総量を設定するとともに、保健福祉圏域を設定し、広域市町村圏における施設整備等の調整機能、サービスの提供体制に係る人材確保や研修等の広域的施策等を包含した計画であります。一方、市町村段階での計画は、住民に最も身近な市町村が地域の高齢者の実態や住民ニーズを踏まえ、どのようにして保健サービス及び福祉サービスの総合的な提供体制を築いていくか、整備目標を設定して具体的、計画的に実施していくための計画であります。
 次に、市町村の実態把握調査の基本と方法、その結果についてであります。
 きのうの森本議員のご質問にもお答えいたしましたが、老人保健福祉計画を策定していくためには、要援護老人等の高齢者の現状把握が必要不可欠であるため、できるだけ詳細なこれらの情報を得ることとしてございます。そのため、県下市町村において、地域の実情に詳しい民生委員などの戸別訪問による聞き取り調査などにより、寝たきり老人、ひとり暮らし老人については全員、その他の高齢者については約二〇%の方々を対象に百余りの質問項目を設定して調査を行い、現在その集計及び分析中でございます。
 三点目、計画は市町村の自主性、独自性と住民、医療、保健、福祉関係者の共同作品でということでございます。
 住民の保健福祉ニーズにきめ細かく柔軟に対応していくためには、計画策定に当たっても、当該市町村においてそれぞれの持てる社会資源、地域の特殊性や状況を総合的に勘案して、まさにその町その町の手づくりの計画を策定していくことが大切であると考えており、この趣旨を徹底するよう市町村に対して指導しているところでございます。したがいまして、この趣旨を踏まえ、市町村計画の策定に際しては、保健福祉行政担当者、ホームヘルパー、老人福祉施設職員、地域の医師、保健婦などを構成メンバーとする市町村高齢者サービス調整チームの活用を含め、これら各層の意見を反映できる計画策定体制を設けるよう市町村を指導しているところでございます。
 四点目、要介護老人の範囲と家族介護者に介護手当の支給をということでございます。
 老人保健福祉計画における要介護老人の範囲でございますが、国が示している障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準によるところの寝たきり、準寝たきり及び痴呆性老人を要介護老人としてございます。
 また、介護手当の支給についてでございますが、在宅で介護に当たられる家族の精神的、肉体的負担は非常に大きいものと考えていますが、この負担軽減のためには、金銭給付よりも、むしろホームヘルパーの派遣、ショートステイ事業、デイ・サービス事業、紙おむつその他の日常生活用品の支給等、種々の福祉サービスの推進に努めることが先決と考えております。この考え方に基づいて、特に在宅サービス三事業の本年度予算においては対前年で八四%増と大幅な予算を確保して、家庭でお世話している方々を強力に支援しているところでございます。
 五点目、在宅介護及び施設専門職員の確保と養成の具体化でございます。
 長寿社会を迎えて、いつでも、どこでも、だれでも必要とする福祉サービスを受けられるようにするためには、ホームヘルパーを初めとする福祉人材の確保とその養成は緊急の課題であります。このため県としても、一つには、議員のご意見にもございましたが、今月から県の福祉人材情報センターを新規に設置し、福祉人材の確保のための情報のネットワーク化を図ることといたしております。
 次に、全国に先駆けて介護実習・普及センターを設置し、さらに専門的な介護技術を身につけた福祉人材の養成に取り組むことといたしてございます。
 六番目、在宅福祉サービスは公的責任、市町村の財政保障をという問題であります。
 先般の老人福祉法の改正により、市町村は在宅福祉サービス、施設福祉サービスの総合的実施に努めるべきことが法的にも明確になったところでございます。市町村がこれら事業を円滑に実施できるように県でも対前年度比二三%増の老人福祉事業予算を計上してきているところでございますが、今後とも国に対して事業経費の増額を要求していくとともに、市町村福祉基金の活用等を通じて市町村の福祉サービスの円滑な推進が図られるよう努力してまいりたいと考えてございます。
 最後に、地域のネットワークづくりと福祉オンブズマン制度でございます。
 地域のネットワークづくりにつきましては、先ほども述べましたように、市町村に福祉、保健、医療関係者で構成されている高齢者サービス調整チームがあり、個々の高齢者ニーズに見合う最も適切なサービスを提供するため、各種サービスを総合的に調整・推進しているところでございます。今後とも、在宅介護支援センターやデイ・サービスセンター等との連携を密接にしていく中で地域福祉ネットワークづくりをしてまいりたいと考えてございます。
 また、福祉オンブズマン制度ということでございますけれども、都道府県レベルではまだなじんでいない制度でもあることから、国及び他府県の動向を見守ってまいりたいと考えてございます。
 なお、地域における高齢者の生活上のあらゆる相談や要望等に応ずるとともに、適切な助言、指導をいただき、老人福祉の増進を図るために和歌山県においては県下に八十名の老人福祉相談員を設置し、行政とのかけ橋として活躍をしていただいているところでございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 保健環境部長遠藤 明君。
  〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 老人保健福祉計画について、理学療法士、作業療法士の確保の問題でございます。
 医療の高度化及び高齢者保健福祉推進十か年戦略の実施など、新たな需要が見込まれるところであり、国においても需給計画の見直しを実施し、養成校の入学定員は平成四年度に大幅に増加しており、今後もさらに増加するものと予測いたしております。
 県といたしましては、これらの状況を前提に、昨年九月、医療機関、施設、市町村等関係先に調査したところ、平成十一年までに理学療法士百九十四名、作業療法士六十六名の需要が見込まれるところでございます。このため、これら従事者を確保するため、修学資金の制度充実に努めてまいりたいと考えております。
○議長(馬頭哲弥君) 土木部長山田 功君。
  〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 国体道路建設における用地買収と代替地あっせんについてお答えをいたします。
 県の公共事業用地の取得については金銭による売買が原則でありますが、国体道路建設時に金銭によりがたい特殊な事案について代替地をあっせんした事例はございます。
 ただ、二十数年経過した現在、交渉過程において代替地の条件等についてどのような約束があったかということを確認することが難しい面もございます。当時の交渉経過を調べ、今後、地権者と話し合いをしたいと考えております。
 また、土入川につきましては、築堤護岸などの改修工事を進めているところであり、お話の河川敷は、平成元年度に支川打手川との合流部の護岸整備に伴ってできたものであります。今後、市街地の貴重な河川空間として周辺住民の人々が利用できるよう、緑地広場の整備に取り組んでまいります。
 次に建築確認の問題でありますが、現在、建築は既にされておりますけれども、代替地あっせん時、建築確認がとれなかったかどうかということの確認は難しいところであります。
 また、市道にならないかとのお話でございますが、河川管理用通路は河川管理、水防活動等のための施設であります。これを道路として使用する場合には占用許可が必要であり、和歌山市から申請があれば協議に応じてまいります。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 35番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 今、答弁をいただきました。老人保健福祉計画については、時間もありませんので委員会で細かくさせていただきたいと思います。
 それから、土木部長に。金銭売買ということが原則だということでございますけれども、いろいろな話を聞いてみますと、その当時は国体道路をつくらなければならないという中で、表現は悪いのですが、非常に荒くたいことをやったと言う方もかなりあるようです。それで、そういう中で起こった問題、そして金銭にできなくて交渉が成り立たなかったような特殊な例もあったということはお認めになっているわけです。
 今後話し合いをしていくということになっていますので、そこらは一方的な物の言い方をなさらないで──その方も県のおっしゃっていたことを信頼し、ずっと今まで来られたわけですから、そういうことが本当に信頼に値するような今後の対応を求めて終わりたいと思います。
○議長(馬頭哲弥君) 以上で、村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十六分休憩
  ──────────────────
  午後一時三分再開
○副議長(大江康弘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(大江康弘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番上野哲弘君。
  〔上野哲弘君、登壇〕
○上野哲弘君 通告に基づきまして、一般質問を行います。
 表題のとおり、紀南地域の活性化ということでございますが、地域の過疎化が進む中で、県当局もその対応に苦慮していることと存じます。いまだその特効薬がないようでありますが、一つの発想をして県当局の所見をお伺いしたいと思います。
 この過疎問題につきましては、東京への一極集中に代表され、また県都への集中も問題となっております。我が国における重要な内政問題でもあり、国土の均衡ある発展という命題のもとにそれぞれの地域において努力されてきておりますが、その中身を考えますと、単なる優遇措置だけで、抜本的対策にはほど遠い内容であります。
 十数年前に国におけるモデル定住圏として新宮地方が指定されましたが、余りその効果がなく、一過性のものとなってしまいました。この際、発想を転換して過疎化問題を論議する時期に来ているのではないかと思いまして、私見を交えて質問いたします。
 この問題は我が国においても相当大きな課題でありますので、一市町村あるいは県のみの力だけでは解決できる問題でないことは当然であり、国が大局的にこの問題をとらえ、その対策を講じなければならないはずであります。
 今回、国において地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律の施行に当たり、全国知事会において申し合わせがあったようでありますが、その点について、また地方拠点都市地域の選定について和歌山県の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、紀南地域の過疎化対策と活性化についてを取り上げてみたいと思います。
 私は、この地方を、単に和歌山県における新宮・東牟婁だけの問題でなく、三重県における南牟婁、奈良県における十津川、上北山、下北山地域も包含した提案をしたいと思います。
 当地域の現況を申し上げますと、和歌山県においては七万八千人と、県下の七・二%の人口を占めております。三重県においては四万五千人で二・五%、奈良県に至っては八千人と、県全体の〇・六%の人口となっております。特に三重県、奈良県の方がその比重は大であります。なお、この地域は歴史的には新宮藩の領域であり、それぞれ関連した地域となっております。
 そこで提案でありますが、三重、奈良、和歌山県の三県が合同でこの地域の過疎化対策あるいは活性化について、その総合力でもって国を動かすことはできないかと考えたわけであります。地域全体が九〇%という山林地帯で、人口の定住範囲が極端に狭い地域であり、また山林資源の活用の低迷といった状態で、地域経済が縮小しているところであります。当然、地域振興として山林を従来どおりの建築材として考えることはその基本でありますが、我が国の環境問題として国や県及び地方自治体、民間がどのようにこれをとらえていくか、検討すべき問題であろうかと考えます。
 さて、三県が合同でできる活性化対策地区でありますが、私見としまして、熊野川町宮井周辺ということになろうかと考えております。この地域は三重、奈良、和歌山県の接点であり、また国道百六十八号線、百六十九号線、三百十一号線と、三本の国道が交差する地域であります。三本の国道とそれに付随する県道、町道と道路交通網が整備できれば、紀南地域の中心として、将来その効果が大きいということであります。
 第一の施策としまして、当地区に政府機関、教育機関あるいは研究所等、中央施設の移転は考えられないかということであります。また、三県の共同の施設ができないかということであります。この件に関し、三県で検討していただけるかどうか、ご答弁をお願いするところであります。
 第二の提案としまして、企業誘致あるいは政府機関の移転が非常に難しいのであれば、地域の定住の基本に返って地域の産業興しを図るべきではないかと思います。行政において、単なる優遇措置だけではなく、もっと積極的に地域定住を推進すべきと考えます。まず、国と三県及び周辺自治体が基金を出し合い、その資金を運用あるいは投資を行って産業を興すぐらいの発想が必要ではないかと考えます。
 当面は、その運用益でもって産業開発のための雇用を行い、将来、企業化する。例えば五十億円の基金があれば、五%の利息として運用益二億五千万、一人当たり三百万円の賃金としまして、約八十人の雇用ができるわけであります。家族を入れて三百二十人がその地域で定住できるはずであります。
 産業開発のための人材を地方に魅力を感じている都市から募集し、地域活性化のため人材育成も含めた機関を設置し、せめて千人程度の産業を興し、家族を含めて四千人がこの地域で定住できるとすれば、その効果は大きいと考えます。国と三県及び周辺自治体が現行の国の制度と新しい過疎対策の中で相当の基金が捻出できれば、この案もまんざら不可能な提案ではないと思います。これを機会に三県の話を深めていただき、県当局の考え方をお聞きしたいと思います。
 第一回目の質問を終わります。
○副議長(大江康弘君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 紀南地域の活性化について、まず地方拠点都市地域の整備に関する地域の選定についてのご質問にお答えいたします。
 地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律の施行に当たりまして、全国知事会で、一、指定に当たっては、まず一カ所を協議対象とする、二、複数の地域指定の場合は、原則として県庁所在地を含む地域は最初の協議対象とはしない、三、三カ年以内にすべての地域の指定の協議を行うなどを申し合わせたところでございまして、本県での地域の選定においては、法律の趣旨並びに申し合わせの趣旨を十分尊重しつつ、近く告示される指定等の基準を盛り込んだ基本方針の内容を十分検討し、県土の均衡ある発展や支援事業の実現性等を総合的に勘案して進めていきたいと考えてございます。
 次に、熊野川町宮井を拠点とした三県共同の活性化策についてのご質問でございます。
 熊野川町を含む紀南地域の活性化につきましては、半島振興対策や過疎対策などを通じた道路等交通基盤の整備や農林水産業、地場産業の振興及び企業誘致等による雇用の機会の拡大、並びに熊野文化や温泉などの地域資源を生かしたリゾート整備などに積極的に取り組んでまいってきたところでございます。
 また、一昨日、下川議員に知事からお答えいたしましたように、熊野地域の持つすばらしい資源を十分生かした将来ビジョンの策定に向け、検討を進めているところでございます。
 さらに、奈良県、三重県と共同で三県による紀伊半島開発連絡協議会を設置し、三県知事会議などを開催して紀伊半島全体にまたがる広域的な課題の解決に努めるとともに、その支援策を国等に強く働きかけてきたところでございます。
 しかしながら現状は、議員ご指摘のごとく、特に若者の定住環境等になお大きな課題を残していると認識してございまして、三県にまたがる紀伊半島地域の活性化については、今後とも同協議会の中で検討してまいりたいと存じます。
 また、基金を活用した地域活性化策についてでございますが、交通条件や生活基盤の整備が進展していない半島地域や過疎地域においては、企業の立地や若者の定住環境に非常に厳しいものがございます。こうした地域振興策の一つとして基金活用という方策も考えられるところでございます。
 地域活性化を図る基金制度といたしましては、広域の観点から、ふるさと市町村圏基金という制度を活用しているところもございますので、こうした活性化方策も含め、研究をしてまいりたいと考えてございます。
 以上です。
○副議長(大江康弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 34番上野哲弘君。
  〔上野哲弘君、登壇〕
○上野哲弘君 ただいま、企画部長から答弁をいただきました。
 この問題は非常に簡単なものではないということは十分承知しているのですが、先日の石田議員さんが提言されたように、この過疎化問題は大局的にしないとなかなか効果的な対応ができないのじゃないかというようなこともありまして、そういう意味も入れて再質問をいたしたいと思います。
 先ほどの拠点法に関連してでありますが、一極集中問題と三県主導における基金ということで質問いたします。
 東京一極集中については我が国の大局的見地から論議されるものであり、日本国民をどのように導いていくのか、中央機関にその期待をしたいところであります。国土の均衡ある発展の趣旨を踏まえ、和歌山県内の問題についてお伺いしたいと思います。
 まず、地方拠点法についてでありますが、その目的から申し上げますと、地域における創意工夫を生かしつつ、広域の見地から地方拠点都市地域について都市機能の増進及び居住環境の向上を推進するための措置等を講ずることによる、その一体的な整備の促進を図るとなっており、また定義として、人口及び行政、経済、文化等に関する機能の過度集中地域及びその周辺以外の地域──和歌山県では和歌山市以外ということになろうかと思いますが──地域社会の推進となる地方都市及びその周辺の地域の市町村から成る地域、自然的、経済的、社会的条件から見て一体として整備を図ることが相当と認められる地域となっております。
 そこで質問でありますが、企画部長の答弁によると、全国知事会の申し合わせでは県庁所在地を最初の協議対象から省くとなっておりますが、この拠点法の目的は、この法により地方都市に東京にあるような都市機能を実現させたり、東京からのオフィス分散などで地方の自主的成長を促進するという意味合いが主なようであります。その趣旨からすると、和歌山県では和歌山市周辺ということが考えられるわけであります。そうしますと、人口及び行政、経済、文化等に関する機能の過度集中地域及びその周辺以外の地域という定義と相矛盾するわけでありますが、その点について県当局の見解をお伺いいたします。
 次に、和歌山県における一極集中についてお伺いいたします。
 現在、和歌山県の人口は百七万人、和歌山市は四十万人、その集中率は三七%であります。奈良県の人口は百三十八万人、奈良市は三十五万人でその集中率は二五%、三重県に至っては百八十万人の人口で、県庁所在地である津市は十五万人であり、その集中率は八・六%ということになります。その数値を見ますと、和歌山県においては高いと思われますが、全国都道府県県庁所在地の集中率の平均はいかほどになっているか、和歌山市とともにお答え願いたいと思います。
 さらに、将来に向かって和歌山市の集中度がなお上昇するならば県政において何らかの対策が必要であろうかと思いますが、その見解をお伺いしたいと思います。
 次に、三県と周辺自治体による基金の創設でありますが、我が国の地方自治体において設立した第三セクターの研究機関は、全国で百二十一、財団法人が九十九、株式会社が二十二を数え、基金や資本金の累積額は約二億円に達すると報道されております。その中には、国の機関より柔軟で積極的な活動が見受けられ、その評価の大なるものがあるようであります。
 第三セクターについては当県においても新しい設立を見ておりますが、先ほど申し上げた地域活性対策として大幅な基金の積み立てを紀南地域にも実現していただきたく、人材育成等、雇用の拡大を図るべく和歌山県主導の活性化対策を周辺自治体に提案されるよう強く要望するとともに、その見解を伺いたいと思います。
○副議長(大江康弘君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 三点の再質問にお答えをさせていただきます。
 まず最初は、過度集中地域の定義と和歌山市周辺地域の指定についてのご質問でございます。
 この法律で言う対象外の地域とは、議員お話しのように、人口及び行政、経済、文化等に関する機能が過度に集中している地域でございまして、政令において、東京二十三区はもちろんのこと、近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域、例えば大阪市、京都市、神戸市などの大都市が定められてございます。
 和歌山市は、この法律で言う過度集中地域には含まれておりません。法律の趣旨は、国土の均衡ある発展を図るため地方の発展の拠点となる地域を一体的に整備し、圏域の自立的成長を促進するということでございまして、県内全域が指定要件を満たすものと考えてございます。
 いずれにいたしましても、近く告示される予定の基本方針を十分検討し、知事会の申し合わせや県土の均衡ある発展等を総合的に勘案して進めてまいりたいと考えてございます。
 二点目は、県庁所在地への人口集中率は高いと考えるかというご質問でございます。
 平成二年の国勢調査によりますと、東京都を除く全国の県庁所在都市の人口集中率は、平均で二五・六%でございます。また、各都道府県別に見ますと、京都府の五六・一%を最高に、四〇%台が二県、三〇%台が十二府県、二〇%台が十五道県、二〇%未満が十六県でございまして、本県の人口集中率は三六・九%で七番目でございます。
 県内の均衡ある発展は最も重要な課題でございまして、県の第四次長計で定めている六つの定住圏を単位に、それぞれの地域特性を生かした振興に努めてまいりたいと考えてございます。
 最後は、基金の設立についてでございます。
 先ほどもお答え申し上げましたように、既存の基金制度として、広域の観点からふるさと市町村圏基金という制度を活用して人材の育成やふるさとおこしを行っているところもございますので、こうした事例も参考にしながら研究をしてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 34番上野哲弘君。
○上野哲弘君 今、集中の問題と基金の問題をお伺いしたわけですが、集中問題につきましては、その集中が悪いというよりか、周りが悪くなったという観点で受け取ってもらったら結構じゃないかと思うんです。
 そういう面で、要望になりますが、和歌山県の場合、県下紀北地区を考えてみますと、岩出町あるいは橋本市に見られるように、人口の増加が出ております。また、関西新空港による経済波及効果、あるいはコスモパークの開発、リゾート博に始まるマリーナシティの活用、さらに県立医大病院の新築に五百五十億円、博物館・美術館・図書館に三百億円、健康ふれ愛和歌山に三百八十億円といった、和歌山市を中心とした県の事業が現在メジロ押しになっておるわけなんです。
 それはそれとしまして、紀南を初め紀中や山間部の過疎化あるいは活性化対策に対して、今後ぜひ論議をされて積極的な提案をお願いしたい。
 それと、先ほどの基金なんですが、和歌山県ただ一県だと力もそんなにない。先ほど言いましたように、まだ三重県、奈良県の方があの地域については過疎化を真剣に考えておるはずなんです。そういう面で、和歌山県がぜひ音頭をとって、奈良県、三重県とともに将来のために対策を練っていただきたいと要望しまして、終わります。
○副議長(大江康弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問は終了いたしました。
○副議長(大江康弘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 16番西本長弘君。
  〔西本長弘君、登壇〕(拍手)
○西本長弘君 みずからの健康の回復もさることながら、人口減、若者流出著しい、地方圏及び農山漁村の重き病を黙って見ているわけにもまいらず、「千の蔵より子は宝」──若者を引きつけ、若者が定着できる和歌山の創造に向けた、「処方せんはこれだ」の信念のもとに、一点に絞って質問をいたします。題して、私の「憂郷の叫び」であります。
 我が国は、敗戦の混乱と廃墟の中から、国民の汗と涙、血のにじむ努力の集積によって、我が国史上まれに見る最高水準の豊かな社会を築くとともに、民主主義はもとより、人間にとって最も大切な自由と平和を享受し、加えて国民の平均寿命も世界のトップをきわめて、名実ともに世界一民生の安定した国となりましたことは周知の事実であります。
 疾風怒濤の時代と言われた昭和三十年から四十年代にかけて我が国は高度経済成長を遂げましたが、それに伴って民族大移動とも言うべく人口の社会的移動が激しく進行し、その間、東京を中心に三大都市圏の定住人口が三千五百万人から五千五百万人に激増し、それに反して地方圏の人口は、それ以来、長きにわたって減少の一途をたどっております。
 ここで、少し煩わしいのですが、数字を並べてみますと、平成二年の国勢調査の結果では全国十八道県が人口減少し、全国六百五十六市のうち四一・六%の二百七十三市が減少、また全国二千五百九十町村のうち六九・二%の一千七百九十三町村が減少、これらを合わせると実に二千六十六市町村が減少に転じ、地方圏、特に東北日本や西南日本に人口減少地域が急増しているのであります。まさに、大都市圏は過密、地方圏は著しい高齢化、出生減、過疎化、若者流出が生じ、我が国全体に大きな格差が生じております。
 国土庁が発表した平成三年度版「過疎白書」の中の過疎地域の現状を見てみますと、市町村数の割合では、全国三千二百四十市町村のうち過疎市町村は一千百六十五市町村、人口の割合では、全国一億二千三百六十一万一千人に対し過疎市町村はわずか七百六十二万九千人で、約八百万人の神奈川県よりも少ない人口であります。高齢化比率では、全国一二%に対し過疎地域は二〇・八%、舗装率では、全国六五・六%に対し過疎地域は五五・六%、水道普及率では、全国九五・二%に対し過疎地域は八一・四%、一市町村当たりの老人福祉センター数では、全国〇・六二カ所に対し過疎地域は〇・三一カ所、人口一万人当たりの医師数──これは平成二年の統計であります──全国十七・一人に対し過疎地域は八・五人、小学校の減少率では、昭和五十六年から平成三年まで、全国〇・九%に対し過疎地域は実に二八・四%であります。ちなみに、本県の昭和五十年から今日までの十七年間で、小学校、中学校を合わせて実に九十校が廃校となっております。また、ひとり暮らしの高齢者についても、市町村の決算額についても、全国平均と過疎地域は雲泥の差がついております。
 ここで、農林水産業の若者の就業状況を──十五歳から二十九歳までであります──昭和三十年と現在とを比べてみることにいたします。まず農業の場合、全国の四百九十三万七千人に対し二十二万二千人、本県の場合は四万一千七百十七人に対し千八百七十一人、林業の場合、全国二十万四千人に対し七千六百人、本県の場合は五千百三十人に対し九十七人、漁業の場合、全国で三十一万人に対し五万三千人、本県の場合は四千三百二十二人に対し四百六十九人と著しく減少の一途をたどっておりますし、現在、本県の人口百七万四千三百二十五人に対し青年人口は十九万九千八百四十二人で一八・六%、青年人口において三十七位となっていることを申し添えておきます。
 また、中小企業庁の一九九〇年の調査によりますと、農山漁村だけでなく中小企業の後継者についても五七・三%の後継者不足となり、若い担い手、後継者問題は極めて深刻と言わざるを得ません。
 ある人の申すに、「日本列島にレントゲンをかけてみると、心臓部が異常に肥大し、いつ破裂するかわからない状態であり、血管は動脈硬化を起こし、手足は麻痺状態、重病と判定せざるを得ない」と。このような実態を見て強く感じることは、世界に貢献し、世界を動かす力を有する日本国は、国土の均衡ある発展を目指しながら、過度集中の東京圏と著しい人口減、若い後継者不足に悩む地方圏を生じさせたことは我が国の大きな欠落でありましょうし、まさに国難とも言えるのではないでしょうか。
 また、戦後の復興期より今日まで、第一次全国総合整備計画、新全総、三全総、四全総と国土の均衡ある発展への振興策や、昭和三十年に鳩山内閣が策定した「経済の自立五カ年計画」から昭和六十三年に竹下内閣が策定した「経済運営五カ年計画」までの十一度に及ぶ我が国の経済計画の歴史と結果を見ても、大都市圏が肥大化し、地方圏が過疎化し、その格差がますます拡大して、地方のための政治とは一体何かを強く考えさせられる昨今であります。
 このほど発表した農林中金総合研の「二十一世紀の農村人口と労働力」と題する報告書によりますと、三十年後には人口減となる県が実に三十二県となり、現人口の半分に落ち込む県が発生、また本県でも、二十一世紀になるや、六十五歳以上の高齢者が四〇%を超える町村が発生するという予想がされてございます。また農林水産省農業総合研究所では、農山村の人口は半分になり、農業人口は六〇%が減少し、農業の基幹的従事者は七〇%が減少、しかも六十五歳以上の高齢者は五三%になると予測されております。
 全国の過疎地域の中には、窮余の一策として、農地、住宅、家畜などを供与したり、結婚や子供の誕生に奨励金を出したり、あれやこれやのアイデアで頑張っておられる様子でありますが、若者を中心に「職・住・学・遊」のそろった大都市への人口流出が依然として続いております。
 ここで、まず知事にお伺いいたしたいのは、全国及び本県の過疎地域の著しい人口減、出生減、若者流出の実態とその将来についてどう思われるのか、お答え願いたい。
 先般、宮沢内閣の生活大国五カ年計画が策定され発表されておりますが、この経済企画庁のパンフレットを見てみましても、どこを読んでも、地方圏の大きな悩みである人口減や若者流出の解決策、強力な若者定住構想が一切見当たりません。むしろ、都市住民の生活にウエートを置いたものに感じてなりません。
 宮沢総理や霞ケ関では、極端かもしれないが、地方圏の貧困や苦しみ、地方の心をわかっていないのではないか。なぜ、こういう機会に地方圏の実態を真剣に受けとめ、地方や農山漁村の再生と明るい未来のために抜本解決策を講じようとしないのか、私にはどうもわかりません。このことについて知事のご所見を承りたい。
 ましてや、我が国の出生数は、少産化と言われるように異常に低下し始めており、我が国の経済を根底から崩壊させるに違いありません。実に強烈な影響力を持っております。
 我が国の一九七三年の出生数は二百九万人、一九九〇年のそれは、政府の発表ですが百二十三万人、約半分に近い水準にまで落ち込んでおり、史上最低の記録を四年連続して更新しているのであります。子供が半分に減るということは、地方にとっては現在の若者不足に追い打ちをかけることとなり、大変な事態と言わざるを得ません。
 今後、若者を引きつけるためには、何と申しましても、若者が住みたいと感じる魅力のあるふるさと和歌山県をつくっていかなければなりません。
 大阪産業大学の今野修平教授は、「東京圏一極過度集中化の要因の一つに、地方圏自体の弱体化がある。平成二年の国勢調査で人口減少をもたらした十八道県に共通するのは第一次産業人口比率が高いということである。日本の第一次産業は、近代化の当初より一貫して二次、三次産業従事者を供給し続けてきた。この比率が高率であればあるほど、地方圏の減少要因を内在していることを意味している。地方圏が人口を維持するには、地域内で産業再編を進める第一次産業人口の定住化政策が進められなければならない。工場進出が顕著な山形県や新潟県まで最近人口減少となっている事実は、工業自体、かつてのような人口吸引力がなくなったことを意味し、第三次産業の場合、産業分類の中にない新第三次産業とも言うべき、サービス、ファッション、イベント、イラスト、デザイン等々の産業が人口を吸収・膨張している可能性が出ている。金融や情報と異なる体質を持つ人間的産業であるこうした新第三次産業としての魅力は、東京で急増している感じが大変強い」と記述されております。
 このような事実を考えると、最近、工場誘致だけでは人口、若者の吸収は難しく、新第三次産業など、人口を吸収し、若者を引きつける産業再編を軸にした地域経済再構築政策こそ極めて重要ではないでしょうか。
 また、農山漁村は、国民の食糧や木材の供給、国土の保全、自然の維持培養などの機能を有する、国民にとってかけがえのない貴重な存在であるにもかかわらず、所得の面に加えて、最近では「三K」と言われる厳しい現状を考えるとき、人に優しい農林漁業、女性に優しい農林漁業、高齢者に優しい農林漁業に、物心両面にわたり改革しなければなりません。すなわち、時代の要請や若い世代に歓迎される新しい農林漁業の確立が急務であります。つまり、新しい地方文化、新しい農村文化、新しい漁村文化──売り出し中の堺屋太一氏の言葉をかりれば、「地方の新代」、「山村の新代」、「漁村の新代」ということになろうと思いますが、若い人々を引きつける新しい文化、新しい産業、新しい生活環境、つまり大都市に匹敵した地方圏、都市的サービスの行き届いた地方圏をつくるべきであります。
 そこで知事にお伺いいたしますが、若者を引きつけるふるさとづくりについて今後どのような県政を推進しようとしておられるのか、ご所見をお聞かせ願いたい。
 そういう意味から古きをたずねてみますと、新産業都市建設、工業整備特別地域整備、低開発地域工学開発の三つの促進法などは制定以来三十年も経過し、農村地域工業導入促進法及び工業再配置促進法は二十年前に制定されたもので、また農業政策、運輸政策についても地域の実情に適合しなくなってきております。
 陳腐化した地域振興策を今日まで全然見直しもせず、ただ漠然と継続しているのは不可解きわまりないのであります。このようなことでは地方圏に若者が定着する魅力をつくり出せないし、二十一世紀に必要とする活力や創造力を生み出せないのではないでしょうか。これらを整理して、しかも地方主導で、地域の特色を生かし、また地方における生活者側からの発想を重んじる新しい地域振興制度をぜひ検討すべきであります。
 産経新聞の「主張」によりますと、「首都圏の一極集中や三大都市圏の過密化など問題点解決策の観点から地方分散などが叫ばれているが、こうした後ろ向きではなく、日本全体を生き生きさせるための決め手として官民が地方の活力底上げに力を注ぐ時である。(中略)政府は公共投資中心の経済対策を打ち出したが、総花的に資金をつぎ込むのでなく、投資事業にメリハリをつけ、地方に重点をおいたらどうか」と、強く訴えております。
 以上、いろいろと申し上げてまいりました。議論はさまざまでありますが、結論的には次のことに落ちつくのではないでしょうか。
 孔子は、政治の要諦は「近き者説び遠き者来る」と諭しています。それは、本当に地域のことを考えるのであれば、外向きの活動ではなく地域資源と呼べるようなものを地域内にとどめるようにすべきである、地域社会というものは、自分たちの地域の中が活性化し、豊かさを実感できるところであれば外部から人も来る、地域内に住む人々が喜ばないところにどうして人々が集まってくるだろうかということであります。
 私は、昨年の六月定例会農林水産委員会で、若者定住促進策として、仮称「地方圏・農山漁村を対象にした若者定住促進法」の制定を訴えましたが、知事は、当時の若林農林水産部長との連係プレーよろしく、私の提唱の趣旨を十分ご理解いただいて、早速、本年度当初予算に、農山村の若者定住に視点を置いた新しい地域政策のあり方を検討する意味から、県単独新規に新農政推進調査研究事業として八百万円を予算化され、私は、打てば響く知事の農山村のあすを思う真摯な政治姿勢に深く敬意を表しているのであります。
 そこで、私が強く思いますのは、若者が定住する地方圏をつくるためには、我々の自助努力の上に、どうしても思い切った発想や大きな財源が必要であります。自治省も、豪雪地帯や離島など特定地域を抱える市町村に若者定住促進緊急プロジェクト計画を実施することとしておりますし、国土庁も過疎地域の若者定住策は緊急課題と申しております。
 青年は一国の未来を示す指標であります。私はここで改めて提唱したいのは、地方圏の再生と明るい未来、真の地方の時代の到来のために、ぜひ国は、仮称「地方圏・農山漁村を対象にした若者定住促進法」を制定すべきであると考えます。法制化の上は、若者定住促進地方交付金制度の設立や若者定住事業への地域整備事業の大枠起債を許可させるなど、異例の特別措置を強く望むものであります。あの田中元総理が、若いころより数々の法律をつくって、地元を初めとして全国各地に大きな光を当ててきたことは記憶に新しいものがあります。
 中国の書「孟子」の中に、「たとえどんなに知恵があっても、時の勢いに乗るものにはかなわない」とあります。仮谷知事は、山のごとく不動の地位を築き、しかも全国知事会の中でも運が強く、勢いのある知事であります。この際、知事は全国知事会や国に対してぜひ口火を切っていただいて、地方が真に願う、国家的、国民的重要課題である国土の均衡ある発展への運動を盛り上げていただきたいと心からお願いいたし、知事の積極的なご決意をぜひお聞かせ願いたいと思います。
 次に、半島振興法の延長について質問をいたします。
 昭和六十年六月十日──この日は、私にとって忘れようとしても忘れられない日であります。それは、待望久しかった半島振興法制定という、記念すべき、大変うれしい日であるからでございます。「半島振興」という文字さえなかったあの時代、我が紀伊半島の振興にいささかでもお役に立ちたいと思った不肖私の常識外れの提唱が、仮谷知事初め県選出国会議員、先輩・同僚議員の皆様方の炎と燃えた大変なご尽力のおかげでやっと成立を見たわけでありまして、小さな自分一人では何もできぬわけでありますだけに、この機会に、この場をおかりして深く深く感謝を申し上げる次第であります。
 加えて、中央では二階堂進先生初め半島振興議員対策協議会──これは仮谷知事が会長でございます──半島地域振興対策議会議長連絡協議会、全国半島振興市町村協議会の関係各位にも大変なご尽力を賜りましたが、特に絶対忘れられないのは、あの強い政治力をもって、まさに命をかけてこの法制定を見事なし遂げていただいた故玉置和郎先生のお姿でございます。
 折しも、中曽根内閣の行革の真っただ中であっただけに、「この法案を通せば法律がひとり歩きして国の金がどんどん要る。私も半島県出身だが、国家財政をつぶすわけにはいかん。絶対だめだ」と、当時の浜田幸一衆議院建設常任委員長に土俵際でたたきつけられ、まさに断腸の思いでございました。しかし、玉置先生は静かにそれを耐えられ、黙々と目的達成の日まで最大限のご尽力をくださいました。重い病を人に漏らさず、その最後のエネルギーを半島振興法にかけてくださった玉置先生には、何と感謝を申し上げてよいやらわかりませんでした。
 あの成立の日に、玉置先生より、全国から集まった私どもに温かいねぎらいの言葉をかけていただいたときに、先生の豪快な中に言いあらわすことのできない大変温かいお人柄を感じたのであります。気は優しくて力持ち、人の気持ちがよくわかるすばらしい人間・玉置和郎先生でありました。敬けんな気持ちで、ありし日のご遺徳をしのび、霊安かれと祈らずにはいられません。
 全国のみんなの力によって成立を見たこの時限立法「半島振興法」は、紀伊半島初め全国の半島に多大の実績を上げ、法律の効果をまざまざと見せつけられております。それだけに、あと二年半に迫った期限を考えれば、法延長は何としても実現させなければなりません。
 この際、延長にかける知事のご決意をぜひお聞かせいただきたいと思います。そして、全国の半島道県のいよいよのご発展を心から祈りつつ、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。
○副議長(大江康弘君) ただいまの西本長弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 西本議員にお答え申し上げます。
 まず第一点の地方圏・農山漁村を対象にした人口及び若者の定住策について、若者を引きつけるふるさとづくりということでございます。
 私も、県勢の活力を維持するためには農山漁村において若者の定住をいかに促進するかということが県政の最重要課題であると常々考え、推進してまいったところでございます。
 現在、東京への一極集中の対極として、全国の地方では過疎化、高齢化が依然として進んでおりまして、地域社会の活力が低下するなど、今後も厳しい状況が予想されておるところでございます。
 また、お話ございました生活大国五カ年計画につきましても、中長期的な経済計画でございますけれども、この中で、特色ある生活圏域の形成を図る観点から、農山漁村の定住条件の整備について一部だけ記載されてございます。
 農山漁村の活性化には、地域の資源を生かした農林水産業、観光などの地域の産業振興が重要でございますし、特に次代を担う後継者や若者の定住のために、農村文化を生かした生活の場づくり、また若者に魅力を感じさせる地域づくりが何よりも大切なことであると考えております。そのためには、交通や産業基盤の整備、また集落排水等の生活環境整備、農村観光レクリエーション施設等、若者が定住できる町づくりを積極的に推進してまいってございます。
 特に、条件の厳しい山村地域への対策は国民的課題だと思っておりまして、石田議員にもお答え申し上げたのでございますけれども、さきの全国知事会議で農林水産大臣に、山や森林を守る山村過疎問題について、国民運動として積極的に推進されるように強くお願いしたところでもございます。現在、国においても、自治省、国土庁、林野庁の三省庁から成る森林・山村検討会を設置して山村のあり方について検討されております。このことは一歩前進であり、高く評価ができますし、期待しているところでございます。また、この会に対して強く意見も申し述べていかなければならないと思っておるわけでございます。
 県においても農林水産部におきまして、山村過疎問題について、新農政推進調査研究事業等により調査研究を進めているところでございます。
 先日、石田議員からも、現在のような新しい過疎時代に向かって、これが対策として行政組織の面からも十分検討していかなければならないのではないかというご意見もいただいたわけでございます。ふるさとみずからの自助努力、またふるさとを愛する教育の問題等々、この問題は極めて大きい課題でございますから、大局的観点に立って考えていかなければならないし、その推進を求めていかなければならない問題かと存じます。今後とも提言の趣旨を体し、関係府県等と連携を図りながら国等関係機関に対して強く働きかけてまいるとともに、地域の創意と工夫を生かし、心豊かな農山漁村づくりに取り組んでまいる所存でございます。
 次に、半島振興法でございます。
 お話のように、昭和六十年の六月に十年間の時限立法として制定されたわけでございまして、七年を経過いたしました。この制度によって、国の財政上、税制上の優遇措置を活用し、半島振興計画に基づく事業や半島振興道路等の整備、企業誘致等に相当な成果を上げてまいったところでございます。しかしながら、半島地域は今なお交通基盤の整備や若者の定住促進等、課題が残されております。法期限の延長並びに拡充について、議員から話ございましたように、なお一層積極的に取り組む必要があろうと考えておるところでございます。
 このために、現在、関係二十四道府県で構成される半島地域振興対策協議会に半島振興法の延長並びに施策の拡充を目指した検討会を設置し、現行制度の見直し、また半島の特性を生かした振興方策の検討を行っておるわけでございます。
 また、国においても半島問題研究会が設置され、法期限後における一層充実した半島振興施策について鋭意調査研究を進めていただいており、本県も代表としてこの研究会に参加させていただいておるわけでございます。
 この法延長の問題について、道府県の半島地域の議会議長連絡協議会、また半島地域市町村協議会と相連携を保ちつつ推進してまいりたいと考えておるところでございます。
○副議長(大江康弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(大江康弘君) 以上で、西本長弘君の質問が終了いたしました。
○副議長(大江康弘君) お諮りいたします。質疑及び一般質問は、以上をもって終結することにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(大江康弘君) ご異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
○副議長(大江康弘君) 次に、議題となった全案件のうち、議案第百三十三号平成三年度和歌山県公営企業決算の認定についてを除くその他の案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
  ──────────────────
○副議長(大江康弘君) 次に日程第三、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
○副議長(大江康弘君) 次に、お諮りいたします。十月十二日及び十三日は、各常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(大江康弘君) ご異議なしと認めます。よって、十月十二日及び十三日は休会とすることに決定いたしました。
○副議長(大江康弘君) この際、各常任委員会の会場をお知らせいたします。
 職員からこれを申し上げます。
  〔職員朗読〕
  ───────────────────
 総務委員会 第 一 委 員 会 室
 厚生委員会 第 二 委 員 会 室
 経済警察委員会  第 三 委 員 会 室
 農林水産委員会  第 四 委 員 会 室
 建設委員会 第 五 委 員 会 室
 文教委員会 第 六 委 員 会 室
  ───────────────────
○副議長(大江康弘君) 次会は、十月十四日再開いたします。
○副議長(大江康弘君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時十分散会

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