平成4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(堀本隆男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時三分再開
○副議長(大江康弘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(大江康弘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 27番堀本隆男君。
  〔堀本隆男君、登壇〕(拍手)
○堀本隆男君 お許しを得まして、順次、質問に入らせていただきます。
 まず、リゾート問題について質問をお願いします。
 先日、県から資料の送付がありました。タイトルは「今後のリゾート整備のあり方について」とあります。国土庁が委嘱した総合保養地域整備研究会が中間的に取りまとめたものであります。既に皆さんもお読みになられていると存じますが、一般論としてリゾート整備の現状と問題点を次のように述べております。
 「現在整備が進められているリゾートの一部については、自然破壊や環境汚染に関する批判が生じている。これに関しては、各地方公共団体において開発規制や自然環境保全のための条例等を制定して規制を行ったり、総合保養地域整備については、国の基本方針に基づいて基本構想の中に自然環境の保全との調和のために必要な事項を盛り込み、相応の配慮が行われているところであるが、自然環境や景観の破壊、環境汚染の問題を指摘されているものもある。また、地域振興への寄与が不十分、高い料金で大衆が利用できない、どこも同じような施設である等の批判もある。一方で、最近の経済社会情勢の変化により開発事業者が撤退してしまい、当初の計画どおり整備が進んでいない事例が見られる。これらの批判の中には事実を十分客観的に分析していないものもあるが、指摘されている問題はリゾート整備にかかわる重要な論点を含むものであり、当研究会としてもこれらの問題提起を真剣に受けとめ、検討を行うこととした」とあります。
 そして、「このような批判や問題が出てきた背景には、好景気とリゾート開発ブームの到来の中で、時流に乗りおくれまいとする意識が先行し、関係者のリゾート整備の理念と配慮すべき事項についての理解が不十分なまま開発事業者に過度の期待を持った結果、自然環境の保全や地域振興の観点よりも短期的な事業の成果が重視されたこと、また、これらの観点からの真のリゾート整備についてのノーハウ、技術、人材が著しく不足していたことが大きく作用していたと考える」と反省を行っているところであります。
 そして、今後のリゾート整備の見直しの基本的方向について、国のリゾートについての政策理念の再確立を掲げ、一、長期的な視点に立った整備、二、国民のためのリゾート、三、地域のためのリゾート、四、新たな国土形成におけるリゾートの四点について提言を行っております。
 ところで、県内のリゾート整備の現状はどうか。一般の受けとめ方は、県が人と金をつぎ込んで頑張っているマリーナシティだけが今のところ順調で、その他はうまくいっていない。コスモパーク加太構想は全く展開がないし、田辺市の丸紅、鹿島も撤退を決めた。そして、盛んになったのは住民運動で、リゾート整備法の廃止やゴルフ場を初めとするリゾート事業の中止が各地で求められており、新聞各紙もリゾート開発に厳しい論調であることは、皆さんご承知のとおりであります。
 こうした動きに対し、新聞情報では、知事は燦黒潮リゾート構想は変更しないと語ったとあります。前後の説明がないので若干正確さが欠けた表現に思われます。私なりに解釈いたしましたが、本県の長期計画では県土の基本進路をテクノ&リゾートとうたっており、リゾート立県の方向は変わることはない、それを実現するためにリゾート整備法に基づき策定した燦黒潮リゾート構想はつくって三年目、先般来のバブルの崩壊で各般の影響があるが、朝令暮改的変更は十年、二十年単位のリゾート事業になじまない、もう少し時間の経過の上に立って考えていきたいというふうに受けとめております。
 そこで、お尋ねいたします。
 一、燦黒潮リゾート構想の重点整備地区七カ所ごとの進捗率と全体としての進捗率は何%か。ちなみに、全国三十五県の重点整備地区の事業の進捗状況はいかがか。概括で結構です。大手企業の撤退状況もあわせてお伺いします。
 二、燦黒潮リゾート構想の区域外におけるリゾート整備事業の進捗状況はどうか。また、最近、新たにリゾート整備事業に着手する地区があるのかどうか。
 三、田辺・白浜地区から丸紅、鹿島が撤退したが、今後のリゾート構想はどうなるのか。
 四、紀南の市町村の中には、重点整備地区の重点事業の変更や、新たに重点整備地区の指定を望んでいる市町村がございます。こうした変更要望に対する県の基本的な考え方をお聞かせ願いたいのであります。
 現在のバブル経済の崩壊に伴うリゾート開発の教訓は何か。私なりに考えますことは、初体験のリゾート基地づくりでありながら、バブルの絶頂期に壮大な夢を追い過ぎた。健全な経営に根差すべきを採算を無視した不動産の騰貴を当てにした開発に走り、大手資本による開発を当てにし過ぎ、大手は不動産の売り逃げを当初からもくろんでおり、問題があり過ぎた。住民の自然保護のうねりも予想外に強烈であったことであります。
 景気の動向に余り左右されることなく、フランスのラングドック・ルシヨンのリゾート開発は着実に伸びていると聞きます。一度、本県のリゾート整備もレビュー、つまり国の中間報告的なものをする考えがないか、お伺いいたします。
 私は、二十一世紀に向かうリゾート産業の将来の発展に、いささかの揺らぎも持っておりません。国際社会に対して約束した千八百時間の労働時間、ライフスタイルの変化に伴う余暇需要──ちなみに、余暇開発センターの「レジャー白書」によりますと、平成元年の余暇市場六十三兆円が二〇〇〇年には百五十兆円に成長すると予測し、特に観光リゾート産業の成長が高いとしております。バカンス法等の制定などがあれば、ゆとりを求めてバカンスを楽しむ国民が一気に拡大すると思います。そのことは、先進諸国を見れば我が国の将来もおおむね予想がつくわけであります。
 中間報告においても、そのことを認めております。将来、多様な余暇活動が増加し、その一つとして滞在型のリゾートライフも増加し、今後の施策を検討する際、家族が一週間程度滞在するようなリゾートライフを実施できるようにすることを想定に整備を進め、適正な料金水準も示唆しているのであります。このほか、将来のリゾート整備の方法について、地域の主体性や一つの方向として農山漁村の景観や文化を生かすグリーンツーリズム──これは西独の農村活性化の原動力になったものであります──の検討、現存の温泉地の再整備も提言しております。
 私は、本県のリゾート整備を進める上で最も大きな問題点は、自然環境の保全だと考えております。つまり、自然や人間に優しい、シンプルなリゾートの整備が求められるわけであります。同時に、高速道路の紀南延長やJRくろしお特急のスピードアップと快適性というアクセスの飛躍的な改善が特に急がれます。
 参考までに、「日経リゾート」九月二十一日号には、「リゾート最前線」として十一ページにわたって白浜・田辺地区を特集してございます。「アクセス改善で開発熱衰えず」との見出しで、「全国のリゾートプロジェクトが停滞する中で、この地区の中小規模のプロジェクトに活気がある」とし、ホテル、マンション、会員制リゾート、ゴルフ場等を例に挙げて、「白浜は今や通年リゾートの条件を満たしつつあり、開発の動きは、アクセスの充実を見込み南部町から串本町まで伸びそうである。和歌山県南部は二十一世紀には全国有数の広域リゾートに発展する可能性を秘めている」と書いております。
 大阪に住む私の友人も、「和歌山県はすばらしい。定年後に住みたいので土地を紹介してほしい」と言ってきており、私はふるさとでは、「紀南の生きていく方向はリゾート産業をおいてほかにない」と断言してございます。リゾートの整備はようやくスタート台に着いたばかりであります。二十年、五十年かけて全国に誇れるリゾート基地をつくるスタンスで当局は頑張っていただきたいのであります。
 次に、国道四十二号。
 先般、九月二十一日に、国道四十二号(田辺~新宮間)改良促進協議会では現道視察会を行いました。参加した皆さんの一致した感想は、改めてカーブの多い危険な道の連続に驚いたということであります。田辺市、西牟婁郡、新宮市、東牟婁郡選出の県議会議員、市町村長、市町村議会議長のメンバーのほかに、行政から県事務所、土木事務所、そして建設省は紀南工事事務所長と工務課長、道路管理課長の約六十名がバス一台に乗り、各市町村から要望の出ている箇所ごとに現況と改修計画を聞かせてもらい、また各般の質疑を行って、大変意義ある視察で、こうしたケースは国では初めてということでありました。
 改修しなければならない箇所は山ほどあります。それは、国側も認めており、昭和三十三年から四十二年に行った第一次改修が急いで実施された結果、十分な規格を満たした道となっておらず、さらにその後の車両の激増と大型化のうねりの中で、四十二号の悪さが目立ってきたのであります。
 ところで、時間短縮効果の最も大きい椿防災道路の区間については、現在調査が進められているとのことでありますが、巨額の資金が必要なことと、高速道路の延長ルートとの絡みで、事業化に向けての見通しは今のところお話しできないということでありました。
 紀南工事事務所では、国道四十二号の改良によく取り組んでくれております。しかし、何分にも国からの事業の予算配分が少ない。ちなみに、紀南工事事務所では、用地先行取得事業は一〇〇%消化してまだ足りない現状であります。紀南浮揚の最大のインフラである国道四十二号の改良すら遅々として進まない。生活大国とは一体何か、言うべくしてむなしいのであります。
 第十一次道路整備五箇年計画に向けて、県ではこの国道四十二号田辺─新宮間の改良促進に力強いご支援を賜りたいのであります。あわせて、椿防災道路の今後の見通しについて、土木部長のご答弁をお願いいたします。
 次に、大島架橋について質問をいたします。
 本年四月十六日に知事は串本町に来られましたが、その際、架橋地点を視察され、さらに県土木部の幹部職員と串本土木の幹部職員に対し、建設を軌道に乗せるよう強く督励されたとのことで、地元では大変喜んでいる次第であります。
 そして、先般、串本町大島架橋促進協議会では、町長を先頭として知事に一日も早い建設促進の要望にお伺いいたしましたが、知事の確かな建設促進へのご回答をいただき、一同、納得して帰ってございます。ありがとうございます。その席上、知事が言われましたこと、すなわち用地買収には地元住民が全面的に協力すること、巡航船問題及びフェリー問題については町が責任を持って解決に当たることも、改めてみんなで強く認識して帰った次第であります。
 そこで、お聞かせ願いたいのは、来年度の事業内容とその後の大まかな計画についてであります。そして、これに関連して、串本土木事務所の事業量の増大が当面の課題となっており、組織、人の面での当局のご配慮をいただかなければならないと考えますが、土木部長の答弁をお願いします。
 さて、先日、ある大阪のコンサルの社長からこんなエピソードを聞きました。熊本県の天草地方で島にかける大きな橋の設計を検討されたとき、当時の熊本県の知事は首脳会議の席上、「百年たっても残るのは文化だ。この橋を熊本県を代表する橋、風格のある文化遺産として残すよう努力しよう」と提唱され、そのためには世界の一流の建築家に設計をお願いしようということになった。建設省で認められる基準設計費は五千万円程度であります。いろいろと設計家を検討した結果、関西国際空港のターミナルビルの設計者、フランスで活躍中のレンゾ・ピアノ氏に白羽の矢を立てました。
 ところが、担当者がレンゾ・ピアノ氏と交渉したところ、基準設計費、施工監督費を含めて二億五千万円ということであります。担当者はびっくりして帰って、「とてもだめだ。高過ぎて経費の捻出の方法がない」と、上司に反対の復命を行ったのであります。これを聞いた知事は、「百年後に残す文化遺産をつくることを目標に決めたのだから、資金を集めることに努力しよう」というふうに言われて、県単独事業費の支出と、一つは熊本県アートポリス財団からの支出と県内の有志の寄附を仰いで二億五千万円を調達したとのことであります。現在、設計も終わり、その模型も完成して展示され、近く工事に着手するということであります。
 串本の大島架橋も、その設計に仮谷知事は心を砕いていると聞いてございます。二億五千万円は別として、広く全国から設計を募り、後世、文化遺産として評価されるものを本県の名橋としてお願いしたいのであります。知事のお考えをお聞かせ願いたいのでございます。第一回万国博覧会の目玉として建設されたエッフェル塔は、百三年たった今もパリの名所の一つであります。
 次に、がんの問題に入ります。
 大変恥ずかしい話でありますが、人間というものは、いや私は、自分自身が成人病に冒されているのではないかと疑いを持ち、四月下旬、県立医大に検査入院をしましてから、悪性新生物つまりがんについての関心が高くなり、新聞、テレビ、日刊紙等のがん特集には多少忙しくても目を通すようになった次第であります。
 さて、私が検査入院後に読んだのが「文藝春秋」九月号に登載されて反響の高い「がん検診・百害あって一利なし」という近藤誠・慶応義塾大学医学部講師の論文であります。かなり長文なので、可能な限り要約いたしますと、がんの検診についてでありますが、今やがんの検診は国民的行事になり、胃、子宮、乳房、大腸の検診が市町村によって行われ、九〇年度は胃は四百万人、肺は五百三十万人、その他の職場検診、人間ドックを入れると膨大な人数に上るが、こうした検査の盛んなのは日本だけで、欧米では皆無に等しい。
 近藤先生の言わんとすることは、医療行為の通則に「有効とは限らぬが不利益(副作用)は必ず生じる」と言われているが、当然がん検診に伴う負担や不利益、副作用があるわけで、例を挙げればバリウムによる便秘、放射線による発がん作用もあり、胃透視だけでも年間二百人以上が白血病やがんにかかると言われ、心理面への影響も乳がん、子宮検診ではなお大きい。また、検診で異常が見つかり精密検査となると、さらに負担が増大します。
 胃、大腸、肺の内視鏡による疼痛、出血、食道・胃・大腸壁が突き破られることもあります。また、そうした苦闘の上、見逃しや誤診も出ております。見逃し率というのは、胃で一〇%、大腸で二〇%、肺で三〇%とされております。元検事総長の故・伊藤栄樹さんのように、毎年人間ドックに入りながら大腸がんを見逃された例もございます。顕微鏡でみる病理診断で良性なのにがんと間違える誤診もあります。他病院からがんと言われて近藤先生のところに来た乳がん患者三十名のうち一〇%が良性で、誤診率を一〇%といたしますと、一昨年の乳がん患者発生数は二万三千人なので年間約二千人以上の切除せずに済む乳房が切り落とされたことになる。病理の誤診はどの臓器でもあり、どんな名医にも生じますが、名医は誤診率が低いだけであります。
 要精密検査となる率は臓器によって異なりますが、精密検査でがんが実際に発見されるのは千分の一いるかいないかであります。つまり、千人に一人のがんを見つけるために九百九十九人の検診と百四十九人の要精密検査がむだになるわけであります。
 割り付け検査法でテストを重ねてきた欧米では、大腸検診は行われず、国際対癌連合も「現時点では大腸がんの検診を行うことは公衆衛生の施策として正当化できない」と述べておられ、近藤先生は「検診は、ある国では無効でも、他の国では有効になるものだろうか」と、疑問を投げかけております。
 肺がん検診の有効性も、欧米では既に否定されております。それは、検診を受けた群と受けない群の最終的死亡数が変わらないからであります。いわゆる進行型がんに対し、のんびりがんがあります。人を死に至らせない無害がんや潜伏がんが、さらに、いずれ消える消失がんもある。検診はこれらを掘り起こすからであるとのことであります。
 現在、症状が出てから発見の場合、つまり病気になってからのがんでございますが、胃がんでは五年生存率は五〇%、大腸や子宮、乳房はもっと高い生存率であります。さらに、人間のもろさと申しますか、がんをせっかく見つけても、臓器を摘出され、抵抗が弱まり、死ぬ時期は何もしない場合と同じになるかむしろ早まるかもしれない。検診にはさまざまな不利益があり、社会的システムとするには有効性がもっと確実でなければならない。にもかかわらず、国は目下、検診受診率を現行の一〇%から三〇%へと三倍増をもくろんでいるが、現在でもパンク状況の病院に増加する要精密患者は収容できなくなってしまう。さらに、多くの医師と看護婦を検診にくぎづけにしてしまうのではないか。それよりも、こうした優秀なスタッフを老人福祉に活用すれば福祉の質をうんと高めることができるのである。
 がんとは何か。年齢が倍になると、がんの発生率は十六倍になるという。それならば、老化の一種ではなかろうか。我々は、がんと共存する生き方を考えよう。放置観察した胃がん患者の全国集計では、一番成績がよかったのは何も治療を受けなかった患者で、五年生存率四〇%、抗がん剤や免疫療法剤を使った患者は五年生存率一〇%と、成績不良であります。手術の場合の生存率五〇%と比べ、考えさせられることが多いのであります。
 そして、今後、国や市町村はどうすべきか。少なくとも検診の宣伝をしてはならないし、職場検診も強制すべきではないと近藤講師は提言しているのであります。
 私がなぜこのがん検診についての論文を取り上げたかと申しますと、このような日本の検診行政の根幹を揺るがすような論文に対する県当局の見解をお聞きしたいのであります。
 まず第一点は、この論文の主張に妥当性があるのかどうか。
 第二点は、県下の市町村におけるがん検診受診率の高低とがん死亡率に因果関係があるのかどうか。つまり、がん検診の受診率の高い市町村ほどがん死亡が少ないかどうか。
 第三点は、本県の医療圏域ごとにがん死亡率が異なる特色があるのかどうか。
 第四点は、がん死亡率の高い本県にはがん発生を誘因する食生活内容が多いとか、生活環境の低位性、下水道の未整備等が原因で遺伝子を傷つける物質がはんらんするがためにがん患者が多いのか、その他の原因があるのかどうか、お伺いしたいのであります。
 つまり、質問のポイントには、がん検診の受診率が低いためにがん死者が多いのか、がん死の原因はもっとほかにあるのか、原因がわかれば具体策が立てられるのではないかということであります。保健環境部長に答弁をお願いします。
 次に、県立医大統合移転に関連して質問いたします。
 がん制圧の願いを込めて、日本癌学会総会が去る九月二十九日から十月一日まで大阪市で開催されました。全国からがんの研究者、医師など六千人以上が参加し、二千五百余の研究発表が行われました。一九八一年以来、日本人の死因のトップを占めるがん。去年のがん死者は二十二万人を超え、全死者の四分の一以上ががんで亡くなっております。
 本県の場合、総務庁統計局から出されている「時系列で見る県のすがた」一九九一年版によりますと、人口十万人当たりのがん死者は二百十七・三人で、全国五位であります。その前年は全国四位、前々年は全国二位でありますので、毎年着実に順位が下がり、喜ばしいことでありますが、絶対数はまだまだ高く、がん撲滅への努力が求められます。
 厚生、文部、科学技術の三省庁は、九四年度から新しいがん十か年総合戦略の検討に入りました。そして今や、がん研究は九〇年代以降、遺伝子の時代に入ったと言われ、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、移転遺伝子などの遺伝子が深く関与していることがわかり、がんにかかっているか、かかりやすいかを調べる遺伝子診断も可能になり始め、がんの遺伝子治療の試みもスタートしております。
 そして、がん研究の成果を治療に結びつけるという意味で、国立がんセンターなどトップレベルの病院では、がん患者の手術後の五年生存率が五五%に達しております。がん治療の上で、今後、地方の病院の底上げを図り、どの病院でも最先端の治療を受けられるようにすることが国の大きな課題となっております。
 そこで、お尋ねいたします。たしか統合移転の構想の段階でありましたが、この機会にがんセンターをつくろうという話が出ておったと思います。それが基本計画の中に入っていないように思います。仄聞するところでは、独立したがんセンターをつくると二重投資になる、講座制の問題とか組織、人材、経費の面で膨大な資金を要するので本県の今の財政事情では無理だとのことで、計画から外したとのことであります。
 今や、全国の自治体病院ではがん制圧に最も力を入れており、例えばNHKテレビで埼玉県立がんセンターの模様を見ましたが、非常に進んでおります。そして、患者も安心して入っております。本県では、検討段階で「がんセンター」という名前をつけると患者が来なくなるのではないかとの心配論も出たそうですが、先端医療機関ではがんの告知が問題なのではなく、今や、患者が医師と相談して自分のがんに対してどういう治療法を選択するか、副作用の多い抗がん剤をとるか、放射線治療をとるか、温熱療法をとるか、それとも治療を行わずモルヒネ注射によって最終を迎えたいとするか、患者自身が選択する時代に入ったということであります。
 新しくできる県立医大は、県内の高度医療、先端医療の頂点に立つ中枢医療機関であることを考えますとき、がんセンターはぜひ必要と思うのでありますが、ご見解を賜りたい。二重投資になるというのであれば、附属病院のもとにがんセンターの名称の機関を設置し、統合移転後の一つの特色を出されてはと考えるものであります。
 次に診療機器でありますが、私が県立医大附属病院に入院して感じましたことは、さすが大病院だということであります。とりわけ、医師、看護婦の対応ぶりは非常によく、精神的にも満足して入院させていただきました。ありがとうございました。
 ただ、医療機器の整備について、若干気になりましたことをお聞きいたします。
 私は第二内科でお世話になりましたが、入院中の幾つかの診察の中で、エコー診療つまり超音波診断装置を受けました。病人の心理は、自分が病気になってわかるものであります。健康であれば何の関心もないエコー性能も、その機器で自分の体の悪いところを診てもらうとなると、少しでも新しいよい性能の機器で診てもらいたいものであります。
 診察室で順番待ちをしているときに複数の医師が相談しながら内臓の処置の場所を探しており、その際、「この機械も古くなってなかなか見づらくなった。大体、患部はこの辺と思うが」と見当をつけておりました。私はそれを聞きまして、後刻「見づらい古い機械ということは、今は新しいよい機械ができているのか」と聞きますと、「カラードプラー超音波診断装置が最新の機器で、体内の血流がカラー表示され非常に診断しやすく、侵襲なし、リアルタイムでわかります。臓器診断には新しい機械が欠かせない。腫瘍の血流も見えます」とのことでした。そこで、「なぜ購入しないのか」と問いますと、予算がないのでなかなか買ってもらえないそうであります。今や、全国の大学病院では十分配備されているが県立医大は一台しかなく、各診療科で困っている、一台約二千万円ぐらいで買えると思うとのことであります。
 医大当局もよい機器の購入に心を砕いておられ、努力していることは評価いたしますが、私ども素人にもわかるこうした必需品的な機器の購入にも努力を賜りたいのですが、答弁を県立医科大学長にお願いいたします。
 次に、JR紀勢本線についての質問に入りますが、この問題については、既に下川議員が平成元年十二月議会において、紀南における総合交通体系の整備として陸海空にわたって的確な質問をされており、くろしお特急のスピードアップについても幾つかの提言をなされております。そして昨日も、新型車両とスピードアップの問題を再び訴えておられました。私も、串本に住んで遅い特急のやりきれなさを痛感している一人として、大方の皆さんのご支援を賜りたく質問をいたしますが、質問のダブる点についてはご了承をいただきたいと思います。
 紀南地方のすべての問題は交通問題の解決に尽きると、識者の意見は一致しております。そして、紀南に住む県民のすべてが一日も早い実現を心から待ちわびていることは、ご承知のとおりであります。
 新聞情報でありますが、去る九月二十八日に白浜町で開かれた第二回目の「紀伊半島における高速交通体系整備構想に関する調査」検討委員会の意見が出ておりました。問題点は、県内主要都市間、特に県南部の都市への交通アクセス整備がおくれている、高速道路の整備が低レベルと指摘し、基本的考え方では鉄道の整備が最重要課題とした上で、在来線鉄道の高速化、ミニ新幹線の運転、快適性のある車両の導入などを挙げております。特に、紀南における鉄道のサービス水準が低いという指摘はもっともだと思うと同時に、産業の発展、観光リゾートの発展を売り物にしていく紀南に住む私どもの責任でもあると痛感いたします。
 そこで、お尋ねいたします。
 平成元年の下川議員の質問に対し、その後、当局におかれてはJR西日本に対しどのような申し出を行われたのか、あわせてJR西日本の回答の内容を教えていただきたいのであります。
 新型車両によるグレードアップと時間短縮の努力の成果がどのようなものであるか。JR東海が本年四月十四日からダイヤ改正を行って、名古屋─勝浦間に登場した新型特急「ワイドビュー南紀」は極めて好評で、四十分の時間短縮とリゾート地へ行く感覚をくすぐるグレードの高い車両とによって、乗客人員が飛躍的に伸びております。本年七月二十日から八月二十日の一カ月間で、名古屋市内からの乗客数は一年前の同期に比べ、何と一九五・四%と約二倍の伸びであります。
 私の記憶では、紀勢本線にいまだかつてこうした新型の専用車両が導入されたためしはありません。すべてよその路線で走らせたセコハンばかり回していると思います。白浜、勝浦という全国有数の観光リゾート地を抱えながら、紀勢本線の位置づけがJR西日本では低い。JR東海で走らせられてJR西日本では走らせられないと私は考えられません。紀勢本線にヨーロッパのようなリゾート特急を走らせていただきたいのでありますが、当局のお考えをお伺いいたします。
 ある人が私に、「紀勢本線の白浜─勝浦間は、明治の規格でつくられた鉄路の上を明治のスピードで走っている。線形改良と踏切改良を行わない限り、ミニ新幹線を走らせても今のスピードは上げられない」と断言しております。私も、スーパーくろしおの先頭車両に乗り見ているのでありますが、時速四十五キロできしみを上げながらのカーブとトンネルの連続に、これではスピードアップは無理だと思います。
 しかし、財政的に無理だという理由でJR西日本にいつまでも放置されますと、紀南に住む私どもは明治のスピードの世界に置かれ、二十一世紀の生活大国と縁のない地域となってしまうのであります。国道でも県道でも、今、改良工事が積極的に進められているのに比べ、余りにもJR西日本は時代おくれと言わざるを得ません。線形改良とスピードアップについての見通しをお伺いしたいのであります。
 特に検討していただきたいのは、特急料金の割引制度についてであります。くろしお特急の平均時速を調べますと、天王寺─和歌山間は時速百八キロ、和歌山─田辺間は九十二キロ、田辺─串本間は何と五十八キロであります。ちなみに、常磐線の特急は平均時速百十二キロであり、田辺─串本間の二倍のスピードで走っております。にもかかわらず、特急料金は同一というのは納得できません。経済の論理で言いますと、同一区間同一スピード、同一料金であるべきであります。新幹線の特急料金が高いのも、一時間延着すると料金払い戻しがあるのも、経済の論理が働くからであります。日本一遅い特急の料金をもっと引き下げられないか、質問いたしてほしいのであります。
 JRも今やスピード化の時代に入った。そうしないと飛行機や高速バスに客が奪われるからであります。私鉄などの競争相手のない紀南地方では、JR西日本は鉄路の改良に全く背を向けているとしか思えず、紀南におけるリゾート産業の発展のおくれは、結果的にはJRの客が伸びないということに思いをいたしてほしいのであります。
 以上、企画部長に答弁をお願いいたします。
 ご清聴ありがとうございました。
○副議長(大江康弘君) ただいまの堀本隆男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 堀本議員にお答え申し上げます。
 リゾート整備に関する見直しについてでございますけれども、お話ございましたように、リゾート整備を取り巻く社会経済環境というものが大きく変動してきていることは事実でございます。しかしながら、本県の県土づくりの基本方針としてのテクノ&リゾートは長期的な視点に立った考え方でございまして、着実に推進してまいりたいと考えておるわけでございます。現在、余暇社会への移行が進みつつありますし、また良質なリゾートへの志向も社会動向として定着しつつあるような現状だと存ずるわけでございまして、現時点では構想自体を抜本的に見直す考えはございません。
 しかしながら、現在、総合保養地域整備研究会の最終報告により、国の動向や社会経済動向などを総合的に勘案しながら、適切に対応してまいりたいと思っております。
 それから、大島架橋についての問題でございます。
 橋の景観等については、私も大きな関心がございまして、例えば和歌山市においても、あしべ橋、また毛見のマリーナシティへの橋、海南からの橋、雑賀崎の斜張橋、紀の川河口大橋等々、景観等について十分配慮しておるわけでございます。
 大島にかかる橋につきましては、本州の最南端の海を渡る架橋でございまして、また橋そのものも串本地方のシンボルとなると思いますし、観光資源でもございます。したがいまして、景観や周囲との調和などを配慮して、形式とかデザイン、色彩などを十分に検討してまいりたい。特に、和歌山県ではコンピューターグラフィックが進んでおりますから、そうした自然景観とのマッチの中で十分検討してまいりたいと思います。
 他の問題は、関係部長から答弁いたします。
○副議長(大江康弘君) 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) まず、燦黒潮リゾート構想に関連するご質問にお答えをいたします。
 燦黒潮リゾート構想の進捗状況でございますが、当構想に位置づけられている民間、公共を合わせた全プロジェクト七十五件のうち、全部または一部が完成したものが十一件で全体の一五%、現在整備中のものが十二件で全体の一六%、さらに事前協議済み、事前協議中のものが十一件で全体の一五%でございます。全体の四五%に当たる三十四件のプロジェクトが何らかの形で進捗しつつございます。
 これを重点整備地区について見ますと、加太・紀泉、和歌浦湾及び西有田・白崎の北部三地区では、完成したプロジェクトが四件、整備中のものが六件、協議済みのものが一件、事前協議中のものが六件でございます。合計十七件のプロジェクトが進捗しつつございます。
 中核地域である田辺・白浜地区では、完成したプロジェクトが二件、整備中のものが三件、事前協議中のものが四件で、合計九件のプロジェクトが進捗しつつあります。
 枯木灘、潮岬、勝浦・太地の南部三地区では、完成したプロジェクトが五件、整備中のものが三件でございます。南部三地区では八件のプロジェクトが進捗しつつございます。
 なお、リゾート整備に関する全国の動向については、本年三月時点で国土庁が実施した進捗状況調査によると、統計数値的な分析はございませんが、総評として「全体としてはまだ緒についたところであるが、中には既に供用しているものや整備に取りかかっているものもある」と報告されているところでございます。
 また、大手企業の撤退の状況でございますが、新聞報道によれば、香川県、兵庫県、愛媛県等で撤退の事例が見受けられます。
 次に、燦黒潮リゾート構想の区域外におけるリゾート整備事業についてでございます。
 全県にわたる詳細な把握はしてございませんが、宿泊を伴うリゾート施設の整備状況を見ますと、例えば本宮町での温泉保養施設を中心とした温泉リゾート基地の整備、龍神村での龍の里づくり、大塔村でのフィッシングパークの整備など、それぞれの地域で取り組まれているところでございます。
 次に、新たなリゾート整備事業に着手する地域についてでございますが、県内陸部を対象として、地元市町村と共同でその地域の特色ある資源を活用したリゾート整備計画を策定し、それに基づき順次事業化を進めるべく、地元市町村等と協議を行っているところでございます。また本年度、新たに二カ所を対象にリゾート整備計画を策定することといたしてございます。
 次に、田辺湾リゾート開発計画等については、地元主導により今後とも引き続き、長期的視点に立って新たな民間活力の導入も図りながら推進されていくものとなってございます。県としても、地元市町村と連携しながら、地域に根差した良質なリゾート地の整備促進に努めてまいる所存でございます。
 次に、変更要望に対する県の基本的な考え方についてでございますが、施設規模等の軽微な変更については、計画熟度が高まり実施段階になった時点で変更を行っていくこととしてございます。また、既存の重点整備地区内への新たな施設の追加については、当該地区の整備方針に沿い、地元の意向をも尊重しつつ、積極的に対応してまいりたいと考えてございます。
 次に、重点整備地区の新たな設定など、重要な変更については、計画の内容や地元住民の意向等、総合的に勘案しながら慎重に対応してまいる所存でございます。
 次に、JRくろしお特急に関連するご質問にお答えいたします。
 まず高速交通体系整備検討委員会についてでございますが、去る九月二十八日、現地調査も兼ね、第二回目の調査検討委員会が白浜町で開催されたところでございます。第二回目の委員会においては、現在の高速交通体系の問題点、望ましい高速交通体系に関する基本的な考え方について意見交換が行われ、本県における高速交通機関としては鉄道の整備が最重要課題と考えられ、快適性、利便性にすぐれた高速交通体系を整備する必要があるなどの考えが示されたところでございます。基本的な高速交通体系整備構想については、次回以降の委員会において具体的な検討が行われ、本年度末には調査結果が取りまとめられる予定となってございます。
 次に、平成元年十二月議会における下川議員からのご質問のその後の取り組みの状況についてでございますが、下川議員からは、JR紀勢本線特急くろしお号のスピードアップ、輸送力増強等につきましてご質問をいただいたところでございます。
 県としても、県民の利便性の向上や観光、産業の振興を図るため、JR西日本と随時、意見交換の場を設けてスーパーくろしお号の増両、増便等、一定の成果をおさめてまいったところでございますが、なお多くの解決すべき課題もございまして、今後ともJR西日本を初め関係機関に協議、要請してまいりたいと存じます。
 次に、議員ご提言の新型車両の導入についてでございますが、特急くろしお号については、昭和五十三年十月の紀勢本線の電化に伴い、スピードアップ等を図るため、振り子式の新型車両が投入されたところでございます。その後、平成元年七月の新大阪、京都駅乗り入れを契機としてパノラマグリーン車の導入、さらには座席の改良等も随時行われ、車両のグレードアップや乗り心地の向上が図られてまいったところでございます。
 さらに、さきにお答えさせていただきました調査検討委員会に車両関係の専門家の方にも参加をいただき、一層の高速化や快適性の向上を図るという観点から検討が行われてございます。今後、この調査結果を踏まえ、JR西日本を初め関係機関とも協議しながら対応してまいりたいと存じます。
 次に、議員ご提言の紀勢本線の線形改良についてでございますが、トンネルや橋梁の数が多く、とりわけ田辺以南では急なカーブが数多くございまして、線形改良には多額の投資を必要とする状況にございます。こうした意味から、さきにお答えさせていただきました調査検討委員会においても、高速化を図るという観点から白浜─新宮間の線形改良も含めて検討を行っているところでございます。今後、この調査結果を踏まえ、JR西日本を初め関係機関とも協議しながら対応してまいりたいと存じます。
 次に、特急料金の設定についてのご質問でございます。
 現在のくろしお号については、紀勢本線の和歌山─新宮間を最も早く走る列車として位置づけられ、運輸大臣の認可を受け、特急料金が決定されてございます。しかしながら、議員ご指摘のとおり、他の線区の特急と比較しても白浜─新宮間の表定速度は相当低くなってございまして、今後、特急にふさわしい高速化が図られるよう、JR西日本を初め関係機関とも協議しながら対応してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 土木部長山田 功君。
  〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) お答えを申し上げます。
 まず国道四十二号の改良促進でございますが、田辺市から新宮市間の道路現況については、四十二号開設当時と現在とでは道路交通事情等も変化をしており、議員ご指摘のとおり改修を必要とする箇所がございます。
 椿防災道路については、早期事業化は厳しい状況ではございますけれども、今後とも引き続き、強く国に要望してまいります。また、現在国においては平成五年度を初年度とする第十一次道路整備五箇年計画の策定中であります。総投資額の大幅な拡大が最重要課題となっております。
 このため、県においても最大限の努力をしているところでございますが、県議会におかれましてもこのことに対して絶大なご支援を賜りますよう、お願いを申し上げる次第でございます。議員ご提案の国道四十二号田辺市から新宮市間の交通隘路区間の解消についても、当該五箇年計画にぜひとも位置づけられるよう、強く国へ要望してまいりたいと存じます。
 次に大島架橋の問題でございますが、現在、島内の用地補償を行っております。橋について、串本町当局初め地元皆様のご協力を得ながら、来年度事業化に努力をしてまいります。
 今後、測量、防波堤の改修の予備設計、取りつけ道路のループ橋予備設計等を行い、事業化後は詳細設計及び本工事に着手をする予定であります。また、架橋に伴う組織や人員については、串本土木事務所の事業量等を見きわめながら検討してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 保健環境部長遠藤 明君。
  〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) がん検診についてお答えを申し上げます。
 近藤講師の論文の妥当性についてでございますが、当論文は、がん検診において見逃しや精密検査に伴う不利益が生じることを強調する一方、がんが早期発見されることによる利益を過小に評価しているもので、県としては、がん検診によりがんが早期発見され、早期に治療されることによりとうとい命が救われるという大きな利益があることから、がん検診を推進してきているところでございます。
 また、成人病検診管理指導協議会を設けて検診の制度管理を行い、検診の効果を高めるよう努力しているところでございます。
 次に、県下市町村におけるがん検診の受診率とがん死亡率との因果関係についてでございます。
 受診率が高い市町村でがん死亡率が低くなることが期待されるわけでございますが、現在までのところ両者の間に明確な相関関係は見られておりません。これは、検診の受診率がまだ低いこと、またがんの死亡率には高齢化の状況や食生活を初めとする環境因子、さらに医療など多くの要因が関係しているためと考えられます。
 第三点の、県下の医療圏域ごとにがん死亡率が異なるかということでございますが、一般的に和歌山市及びその周辺で死亡率が低く、紀南地方の死亡率が高いという状況にはございますが、これは各地域の高齢化の状況を反映しているものと考えます。
 最後に、がん誘発物質あるいは低位な生活環境に起因するがん死亡率についてでございます。
 食品その他の環境物質とがん発生との関係については、たばこや食塩、かびなどの影響が指摘をされているわけですが、現在もなお研究が続けられているところでございます。今後、研究機関における研究成果を踏まえ、本県のがん対策を推進してまいりたいと考えております。
 なお、本県の県民栄養調査の結果によりますと、がん予防に有効と考えられている緑黄色野菜や乳製品の摂取が本県ではやや少ないことから、グリーン&ホワイト運動によりこれらの積極的な摂取を県民に呼びかけているところでございます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 総務部長山中昭栄君。
  〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) がんセンターの設置の問題でございます。
 基本構想の段階において、悪性新生物に対する集学的治療や末期がん患者に対応する附属治療施設の設置について検討する、病床数は病院全体の八百床程度の範囲内とするということで、二百床を擁する組織を考えていたわけでございますが、基本計画の策定作業の中で、既設の各県立がんセンターや大学附属がんセンターなどの規模、組織、運営状況、成果といったことを種々検討した結果、運営面、特に教員、看護スタッフの確保に極めて困難な面が多いことから、今回の移転整備に際しては、放射線部門や検査、手術部門を拡充してがんに対する診断、治療の充実を図るとともに、がん治療における病床を別途確保し、集学的治療を必要とする患者への対応やがん患者に対するターミナルケア部門、主として疼痛緩和医療を行う施設の充実など、がん対策に特色ある機能を発揮し得る附属病院として整備することにいたしております。
 また、先端的教育研究やがん治療施設における集学的治療を支援することなどを目的とした教育研究施設を新設することといたしておりますので、ご理解を賜りたいと存じます。
○副議長(大江康弘君) 医科大学学長田端敏秀君。
  〔田端敏秀君、登壇〕
○医科大学学長(田端敏秀君) それでは、堀本隆男議員のご質問であります医科大学の医療機器の整備、殊にカラードプラー超音波診断装置の整備についてお答えを申し上げたいと思います。
 ご承知のように、最近の医療機器の進歩には目をみはるものがございまして、各診療科からの購入希望が非常に多くございます。したがって本学としては、病院内に備品委員会を設け、優先順位を検討し、購入することにいたしております。
 なお、本年度の高額機器としては、尿路結石症等の治療機器として体外衝撃波結石破砕装置、それに乳がん検査診断のための乳腺超音波診断装置、並びに各種外科手術に使用する手術用顕微鏡システム等の最新鋭の診療機器を購入いたしました。
 議員のご指摘をいただいている超音波診断装置でございますが、現在、学内には二十九台ございますし、そのうちカラードプラー超音波診断装置は二台設置いたしております。
 今後とも、診療機器の整備につきましては、共同利用等、効率的な整備を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(大江康弘君) 以上で、堀本隆男君の質問が終了いたしました。

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