平成4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


県議会の活動

議 事 日 程 第三号 平成四年十月八日(木曜日)
  午前十時開議
  第一 議案第百三十四号から議案第百三十七号まで(知事説明・質疑・一部表決)
  第二 議案第百十号から議案第百三十三号まで(質疑)
  第三 一般質問
会議に付した事件
 一 議案第百三十四号から議案第百三十七号まで(知事説明・質疑・一部表決)
 二 議案第百十号から議案第百三十三号まで(質疑)
 三 一般質問
出 席 議 員(四十四人)
 1  番  尾  崎  要  二
 2  番  中  村  裕  一
 3  番  下  川  俊  樹
 4  番  石  田  真  敏
 6  番  木  下  秀  男
 7  番  岡  本 保
 8  番  藁  科  義  清
 9  番  北  村 翼
 10  番  小  川 武
 11  番 上野山  親  主
 12  番  井  出  益  弘
 13  番  町  田 亘
 14  番  尾  崎  吉  弘
 15  番  門  三佐博  
 17  番  高  瀬  勝  助
 18  番  冨  安  民  浩
 19  番  和  田  正  一
 20  番  阪  部  菊  雄
 21  番  平  越  孝  哉
 22  番  大  江  康  弘
 23  番  岸  本  光  造
 24  番  山  本 一
 25  番  吉  井  和  視
 26  番  浜  田  真  輔
 27  番  堀  本  隆  男
 28  番 宇治田  栄  蔵
 29  番  富  田 豊
 30  番  中  村  利  男
 31  番  馬  頭  哲  弥
 32  番  宗 正  彦
 33  番  鶴  田  至  弘
 34  番  上  野  哲  弘
 35  番  村  岡 キミ子  
 36  番  松  本  貞  次
 37  番  木  下  義  夫
 38  番  和  田  正  人
 39  番  中  西  雄  幸
 40  番  橋  本 進
 41  番 野見山   海
 42  番  森 正  樹
 43  番  浜  本 収
 44  番  新  田  和  弘
 45  番  浜  口  矩  一
 46  番  森  本  明  雄
欠 席 議 員(一人)
 16  番  西  本  長  弘
 〔備 考〕
 5  番  欠  員
 47  番  欠  員
説明のため出席した者
 知 事 仮  谷  志  良
 副知事 西  口 勇
 出納長 梅  田  善  彦
 知事公室長 市  川  龍  雄
 総務部長  山  中  昭  栄
 企画部長  佐  武  廸  生
 民生部長  吉  井  清  純
 保健環境部長  遠  藤 明
 商工労働部長  中  西  伸  雄
 農林水産部長  中  村 昇
 土木部長  山  田 功
 企業局長  高  瀬  芳  彦
 医科大学学長  田  端  敏  秀
  医科大学事務局長
  以下各部次長・財政課長 
 教育委員会委員長
 岩  崎  正  夫
 教育長 西  川 時千代  
  以下教育次長
 公安委員会委員長
 玉  置  英  夫
 警察本部長 中  長  昌  一
  以下各部長
 人事委員会委員長
 水  谷  舜  介
  人事委員会事務局長
 代表監査委員  天  谷  一  郎
 選挙管理委員会委員長
 稲  住  義  之
  地方労働委員会事務局長
職務のため出席した事務局職員
 事務局長  塩  崎  省  吉
 次  長  中  村 彰
 議事課長  中  西  俊  二
 議事課副課長  佐  竹  欣  司
 議事班長  松  谷  秋  男
 議事課主事 古  井  美  次
 議事課主事 松  本  浩  典
 総務課長  川  端  孝  治
 総務課主事 永  井  伸  和
 総務課主事 星  加  正  積
 調査課長  大  畑 巌
 調査課主幹 竹  内 潔
 調査課調査員  島 光  正
 (速記担当者)
 議事課主査 吉  川  欽  二
 議事課主査 鎌  田 繁
 議事課速記技師 中  尾  祐  一
 議事課速記技師 保  田  良  春
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  午前十時五分開議
○議長(馬頭哲弥君) これより本日の会議を開きます。
○議長(馬頭哲弥君) この際、報告いたします。
 知事から、議案の追加提出がありました。
 職員に公文を朗読させます。
  〔職員朗読〕
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  財第222号 
 平成4年10月8日
 和歌山県議会議長  馬 頭 哲 弥 殿
  和歌山県知事  仮 谷 志 良
 和歌山県議会平成4年9月定例会追加議案の提出について
 地方自治法第96条の規定に基づく議決事件について、次のとおり議案を提出します。
 記
 議案第 134号  和歌山県監査委員の選任につき同意を求めるについて
 議案第 135号 平成4年度和歌山県一般会計補正予算
 議案第 136号  平成4年度和歌山県用地取得事業特別会計補正予算
 議案第 137号  平成4年度建設事業施行に伴う市町村負担金について
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○議長(馬頭哲弥君) 日程第一、ただいま報告いたしました議案第百三十四号から議案第百三十七号までを一括して議題といたします。
 議案はお手元に配付しておりますので、まず知事の説明を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) ただいま上程されました議案について、ご説明申し上げます。
 まず議案第百三十四号は、県監査委員玉井一郎君が本年十月八日をもって任期満了となりますので、引き続き同君をこれが委員に選任いたしたいと存じ、同意をお願いするものであります。
 次に、議案第百三十五号及び第百三十六号は、国の総合経済対策に伴う県の公共事業について、一般会計と用地取得事業特別会計を合わせ二百二十六億五千七百余万円の追加計上をお願いするものであります。この結果、一般会計では、九月補正総額は三百六億四千余万円で、過去最大の増額補正となります。
 また、今回の補正を含めた総額は五千七十一億七千七百余万円となり、初めて一般会計予算が五千億円台を超える規模となる次第であります。
 なお議案第百三十七号は、建設事業施行に伴う市町村負担金について議決をお願いするものであります。
 何とぞ、ご審議の上、ご賛同賜りますようお願い申し上げます。
○議長(馬頭哲弥君) 以上で、知事の説明が終わりました。
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○議長(馬頭哲弥君) 次に日程第二、議案第百十号から議案第百三十三号までをあわせ一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第三、一般質問を行います。
 46番森本明雄君。
  〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 おはようございます。
 順次、質問を進めてまいります。
 私が教育改革におきましてかねてから主張してきたのは、子供たち一人一人に焦点を当てた教育の重要性でありました。そのうち、高校教育については、単位制を基本にした履修形態にし、教科、科目については個人の自由選択を進めること、高校間の単位互換、単位累積加算制の導入、近隣の高校間で単位修得の相補制を持つ複合制高校など、特色ある学校の設置などを提言してまいりました。
 文部省の高校教育改革推進会議が、第十四中教審の答申を受け、思い切った改革のメニューを示しました。その中身は、第一に高校に普通科、職業科に次ぐ第三の学科として総合学科を設けること、第二に学年の枠をなくした無学年制の全日制への導入、第三に他校や専門学校での取得単位を認める単位認定制であります。本県では本年四月より定時制高校の三高校に単位制を導入、好評であると聞いています。それが本格的に行われることになるものであります。
 文部省は、第二と第三については希望する全日制高校が来年度から、第一については平成六年度から実施に移す方針であります。新制高校発足以来の画期的な制度改革と言うことができるこの提言の実施に、教育長の英断を期待するものであります。提言の評価と実施へのスケジュールについてお伺いいたします。
 次に、ゴールドプランの問題です。
 平成元年十月にゴールドプランがスタートし、二年六月の老人福祉法の改正で老人保健福祉計画が五年度から市町村に義務化されることになりました。福祉を実施する主体が市町村に移り、在宅福祉が拡大し、従来国の責任とされてきた福祉サービスが基本的には自治体の責任となります。
 自治体の老人保健福祉計画の策定に当たって、厚生省は「老人保健福祉計画策定指針について」を公表しています。それは、寝たきり、痴呆の要介護老人や虚弱老人の現状把握とそのニーズの把握、サービスの目標量の設定の三点などを中心に求めています。
 いよいよ、昭和生まれも高齢者の仲間入りをする時代となった今日、高齢者福祉施策の拡充は一層緊急の克服課題であります。五年に予定されている自治体の老人保健福祉計画の策定については、住民に最も身近な市町村が寝たきり老人等の実情を細かく把握し、老人に対する保健福祉サービスの実施主体として計画を策定し、県は広域的な見地から施設の整備等の供給体制について計画を策定することになっています。県内では、その策定に先立って三年には県及び全市町村で基礎調査を終え、本年度中に計画の策定が完成する予定と聞いています。
 最も基本となる高齢者や障害者の実態調査でありますが、要介護老人の実態把握が十分に行われたのでしょうか。市町村は独自調査で実態をつかんでいるのでしょうか。国の推定出現率を基礎データとして逆算していないでしょうか。民生委員や家族の申し入れ数を当てはめていないでしょうか。要介護世帯の正確な実態がわからなければ、きめ細かなニーズの把握ができません。また、福祉計画の策定、その後の推進、評価、調査の全段階において、高齢者、障害者及びサービスの担い手を初めとする県民参加は不可欠だと思います。サービスを利用する側がその内容をともに考え、一緒につくり上げていく、この原則を貫くことが真に利用者のための福祉になると思いますが、実情についてお伺いいたします。
 厚生省の骨子の目標水準は、一応の目安にしかすぎません。市町村計画をメーンとしながらも、市町村格差の平準化の視点に乏しく、市町村の独自判断と自由裁量の余地が大きく、市町村任せのレベルにとどまっているのではないでしょうか。
 「わかやま二〇〇一喜の国長寿保健福祉プラン」によりますと、ゴールドプランが掲げる整備目標を超える水準となっていますが、ゴールドプランは目標の数値そのものが低いので、着実に高齢化が進展している和歌山県では、県及び全市町村の老人保健福祉計画はゴールドプランが掲げる整備目標を大幅に超える水準を目指さなければならないと思います。ご所見をお伺いいたします。
 なお、長寿保健福祉プランの目標達成を明確にするための年次的実施計画の作成についてお伺いいたします。
 次に、健康・福祉カードであります。
 一枚のカードに自分の身分を証明する情報や過去に受けた医療の内容、現在の健康情報が入っており、いつ、どの病院に行っても、そのカードを出せばパソコンの画面に患者の情報が出るから、医師は的確な診断と投薬をできます。患者も、どんな治療を受けるのかわかって安心であります。いわばカルテ、健康保険証、検診記録が一枚のカードになったようなものであります。まして、救急患者がこれを持っていれば即座に処置を受けることができ、多くの命が救われることになります。
 厚生省では、昭和六十二年度から平成元年度まで、兵庫県津名郡五色町で保健医療カードシステムについての実験と開発を行ってきており、小さな町での実施は既に終えています。三年度からは、このようなカードシステムの全国的な普及の可能性を深めるために、保健医療新カードシステムの研究開発を進めています。本年度は、人口十万以上の都市においてこの健康カードが実用上どのような問題があるのかということを検討のため、開発したシステムのフィールド実験を姫路市において行っています。
 通産省では、神奈川県伊勢原市、兵庫県加古川地域等において、ICカードあるいは光カードを利用して地域住民の健康管理、緊急時の基礎的な健康データの管理、さらに慢性疾患の指導、管理等に資する地域医療情報システムのモデル構築を進めています。また、情報処理システムの活用により、高齢者の積極的な社会参加を支援するため、その一環として四年度より個人健康情報ファイリングシステムの開発に着手しています。いわゆる医療用に規格された光磁気ディスクを活用して、X線写真、CT画像等の医療画像を含めた個人の健康に関するデータを一元的に管理することのできるシステムの開発、構築を行うものであります。
 自治省では、平成三年度から自治体における先導的な地域情報通信システムの開発の検討に入っており、ICカードを用いた地域カードシステムを取り上げています。昨年度は山形県米沢市、岡山県岡山市など五自治体をモデル事業実施団体として指定し、システム開発を支援しています。さらに、全国的に共通する部分についての標準的なシステムの開発に取り組んでいます。
 県レベルにおきましても、山梨県では健康カードの開発・普及に研究グループの設置、兵庫県では福祉、医療を合わせた総合的な個人情報カードを導入する方針を明らかにしています。このように、国や自治体において健康カードシステムに対する試行が行われていると同時に、積極的に政策展開されているところであります。
 知事にお伺いします。
 政治の究極は、安心して暮らせる環境をつくることであります。例えば、高齢化長寿社会を本当の意味で長寿を喜べる社会にするためには、医療の面では、県民が行政や医療機関との連係プレーにより、みずから病気を予防し、積極的に健康管理をすることが大切になります。県はその体制づくりを急がなくてはならないと思います。私は、そのために健康カードを中核とした生涯健康管理システムの確立を提案するものでありますが、所見をお伺いいたします。
 この健康カードは、薬漬けとの批判を浴びている現在の医療、薬の重複投与、重複検査もなく、極めて安全、確実、効果的な医療もできることになり、その上、生涯健康管理上にも活用でき、予防医学重視の医療に転換させる切り札ともなり得るもので、医療常識から見ても数々の革命的な利点を具備しているシステムと思います。健康カードシステムの評価について、また、調査、研究、検討を重ねてぜひ導入すべきだと思いますが、お伺いいたします。
 なお、在宅介護支援システムの一環として、援護を要する人々の福祉に関する情報を入力した福祉カードシステムの導入についても、あわせてお伺いいたします。
 救急救命士の問題です。
 ふえ続ける交通事故や、高齢化社会が進むにつれて心臓病などの急病が増加し、仮死状態で病院に運ばれる救急患者がふえています。事故や発病の現場から病院に着くまでの搬送途上、日本では救急隊員は人工呼吸など簡単な行為に限られており、医師の関与もほとんどないという空白状態にあるために、患者の救命率が欧米などに比べて極めて低い実情でありました。こうした患者の救命率をアップさせようと、ドクターカーの導入や救急隊員に何らかの教育と資格を付与して医療行為を認める、いわゆる救急隊員による救急処置の拡充を提言してまいりましたが、今までの救急隊員より高度な応急処置を許された救急II課程修了の救急隊員、そして、心肺機能停止状態の患者に対して医師の指示のもと高度、専門的な処置を行える救急救命士制度が昨年夏に創設されました。
 この制度の誕生を受けて、消防職員としては本県で和歌山市から一人、中央研修所で研修を受け、本年四月に行われた救急救命士国家試験に合格しています。ちなみに、合格した救急隊員は全国で三百五十一人であります。こうして実現した救急救命士が、東京、大阪、横浜など全国十五都市で配属され、本格的な救急活動がスタートしています。
 東京消防庁のまとめによりますと、スタートした七月の一カ月で、都内で高度救急処置隊が扱った心肺機能停止状態の傷病者数は百四十六人、このうち六十三人が死亡、七十三人が意識や呼吸、脈拍がない重篤状態で医療機関に運び込まれたが、十人が救急救命士の適切な処置で医療機関に到着したときには呼吸や脈拍を回復し、一命を取りとめたとの報告がされています。
 ドリンカー博士の生存曲線という説に従えば、呼吸が停止して四分後には心臓が停止し、その一分後には不可逆的脳障害に陥ると言います。しかし、呼吸停止から一分以内に救急蘇生法を行えば九七%が蘇生し、二分以内だと九〇%、三分以内では七五%、五分後だと二五%、十分後ではほとんど蘇生のチャンスは失われてしまうと言われています。したがって、一刻も早く適切な治療を行えば行うほど救命率は高くなります。
 一一九番通報を受けてから救急車が現場に到着するまでに要する時間は全国平均で約六分、現場から医療機関に到着するまでが約十六分、計二十二分で、県内の場合、平均所要時間はそれぞれ五分四十秒、十六分二十秒、計二十二分であります。こうした課題を少しでも克服しようというのが救急救命士であります。特に、高齢化の進展や医療過疎地域の多い本県にとっては、救急救命士の養成の充実は急務であります。
 その養成につきまして、自治省は全国的視野に立って広い地域でこの養成をする方針であります。県におきましても、県消防学校、県立医大附属病院を一つの教育機関の拠点にし、活用すべきであります。その場合、指導者の不足が体制確立のネックになるとは思いますが、そうした課題を克服して設置し、養成計画の拡充をすべきだと思います。知事のご所見をお伺いいたします。
 また、中央研修所に対し、派遣養成予定を上回る受け入れを要請すると同時に、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸など、さらに来年春開校の京都に養成の受け入れを要請してはと思いますが、あわせてお伺いいたします。
 現在、救急隊員は全国で約四万七千人。自治省では、完全配置するために三分の一の約一万五千人程度の救急救命士の養成計画をしています。県内での救急隊員は六百六十人。完全配置には最低二百人、余裕ある完全配置には二百五十人程度必要となります。県の中央研修所への派遣養成予定では、平成三年度から十二年度までの十年間で八十五人であります。完全配置を行うための必要人員とその予定時期についてお伺いいたします。
 現在、和歌山市では、救急救命士が一人誕生、四年度は前期に一人、後期に一人、五年度は一人の派遣中及び派遣予定で、県内では平成六年度に和歌山市にようやく一隊が誕生する予定でありますが、県内二十一消防本部のすべてに最低一隊を配置できるのはいつの予定なのか、お伺いいたします。
 救命士は、除細動、輸液、気道確保の三点セットという高度な処置を医師の指示のもとに行うことになります。救急車で運ばれる重症患者に対し的確な処置の方法を指示するには、内科、外科など専門的な科目だけでなく、幅広い知識がなくては迅速な判断ができません。救命士が誕生しても、体制が整わなければうまく機能しないおそれがあります。救命士の誕生で救急医療体制は第二段階に入りました。大きく前進した体制をさらに飛躍させるためには、救急救命士を生かせる環境づくりが不可欠であります。県はあらゆる角度から対策を進めなくてはならないと思いますが、お伺いいたします。
 次に、エイズの問題です。
 エイズ患者、感染者の数は、新聞報道や厚生省の資料によりますと、平成三年末で全国で五百五十三人、四年二月末では六百十一人、同八月末で八百七十九人と激増しています。血液製剤による患者、感染者を含めますと、四年二月末現在で患者四百五十八人、感染者二千八人、計二千四百六十六人となっています。こうした状況について厚生省では、一つは平成三年が前年に比べ約二・五倍に急増、二つには異性間性行為というものが主たる感染経路になった、三つには在日外国人の感染者が急増していると、三つの特徴を挙げています。
 本年三月、厚生省の疫学班の報告によりますと、患者数はほぼ正確にとらえているが、感染者数は仮定を設けて計算すると大体四・三倍ぐらいになるということで、それが七月に発表した推計では十倍へと大幅修正されています。また、筑波大学の保健社会学の宗像助教授が昨年末、成人男女一万人を対象に調査したところ三人の陽性者が出たと報告し、全国で三万人いると助教授は予測しています。厚生省の推計とは随分と差はありますが、過小評価すればよいというものではありません。むしろ過大評価してストップをかけていくのが本当ではないかと思います。いずれにいたしましても、こうしたエイズ患者、感染者急増が社会問題になっている事態に対する知事のご所見をお伺いいたします。
 今年、エイズ問題総合対策大綱の改正がされました。一つは匿名検査体制の整備、二つには患者、感染者になった場合、安心して医療が受けられる体制づくり、三つには国際研究協力の推進という内容でありました。こうした国の方針に基づき、県ではプライバシー保護の観点から匿名検査を行っています。プライバシー保護に配慮した検査体制は必要であります。したがって、匿名検査を否定するものではありませんが、匿名検査体制というのは、伝染病感染症の予防の原則からいくと、匿名では完全な感染調査ができないのではないかと懸念するのであります。匿名調査で予防が可能なのか、お伺いいたします。
 なお、来年度から国では無料で血液検査を実施予定であります。県は、予防対策の強化のため、国の施策に関係なく、無料検査の実施を来年度、あるいはその時期を早め、世界エイズデーにあわせて十二月に無料検査を実施するなど、エイズ対策元年の一環として行ってはと思いますが、お伺いいたします。
 エイズに感染した人の三割は感染の事実をだれにも知らせておらず、性的接触でエイズをうつしたかもしれない人は四割弱にも上ったことが、厚生省研究班の調査で明らかになりました。また同調査で、エイズ感染者で昨年末までに献血した者は九十九人に上り、このうち感染の可能性を自己申告したものは二人だったことも明らかになりました。
 血液センターでは、昭和六十二年からすべての献血血液についてエイズウイルスの抗体検査を実施していますが、感染行為から六ないし八週間を経過しないと抗体反応が出ないと言われています。その前の陰性期の血液では感染を確認できないと聞いています。そうだとしますと、輸血に伴う二次感染の可能性が考えられるのであります。また、生血を必要とする緊急手術などの場合、二、三時間の実時間でテストはできると思いますが、感染後の陰性期では感染の確認はできないことになります。エイズウイルスの抗原抗体反応を確認する検査方法は有効ですが、検査費用等の面で普及はしていません。二次感染の防止対策についてお伺いいたします。
 米国フロリダ州のキンパリー・バーガリスさんという女性が、三年前に受けた歯科医の治療によってエイズに感染し、昨年十二月に死亡した事件があり、当該歯科医から五人が感染したと疑われています。このときの感染のメカニズムについてはまだ不明だと言われていますが、CDC(アメリカの疾病管理センター)発表による昨年一月現在でのアメリカの医療関係者のエイズ患者が、トータルで六千四百三十六人であります。これは、職場感染ともう一つはプライベートなルートだと思いますが、職場感染というのは、特に血液関係を扱う医療関係者がうつされる側であって、うつすということは私には考えられないわけであります。ただ、歯科医師はエイズ感染に対する防御が弱いということが、名古屋大学医学部・金田教授のグループが実施したエイズに対する感染防御と意識調査の結果わかったと発表しています。
 歯科診療については、抜糸、切開等の外科的処置など、血液に接触する頻度が高いので、適切な感染予防対策を行う必要があります。ほかにも血液を取り扱う医療機関は、外科、産婦人科等、手術が全部入ってまいります。また、事故等で出血をしたときの救急看護、さらに病理解剖、行政解剖、司法解剖等の死体を取り扱う仕事などがあります。これらは、いずれも突発的に起こってくる取り扱いであります。血液を取り扱う仕事をしている人たちの肝炎感染率が他の人たちより高いということは、エイズにも感染する確率が高いということが言えます。職場感染予防対策についてお伺いいたします。
 次に、検査や告知などについて厚生省が全国調査をしたところ、本人に同意なしで検査を行ったのが約四割、陽性者に告知したのが約五割ということであります。
 その告知でありますが、例えば検査を保健所で行って結果は陽性であった場合、医療機関を紹介してそこで指導も含めて医師が告知することになります。この場合、カウンセリングは非常に難しいと思います。
 例えば、がんの場合、以前は告知されればもうだめだと思いました。現在では治るんじゃないかという期待の方が大きいのであります。しかし、エイズは現時点では治療法がありません。したがって、カウンセリングはプロフェッショナルでなくてはなりません。医師は医学部の教育において十分なトレーニングは受けていないようであります。その対応として、保健所あるいは医療機関のカウンセリングの体制をつくると同時にカウンセラーの養成が急務でありますが、お伺いいたします。
 エイズに感染いたしますと、何年かしたら発症します。すると治療が必要となります。既に感染してしまった人に対する十分な医療を提供できる温かい受け入れ先の確保が必要であります。エイズ患者の診療を拒否する病院が多いと新聞等では報道されていますが、本県の受け入れ態勢についてお伺いいたします。
 また、エイズというのは一部の人の病気ではなく、だれでも感染する可能性がある病気であるということであります。だからこそ、正しい知識を持つ必要があり、感染していない人に対する徹底した感染拡大予防教育が必要と思いますが、お伺いいたします。
 厚生省は、保健所をエイズ汚染の防波堤にすることを目指しています。日常の生活指導や二次感染の防止などの指導を行うカウンセリング業務が保健婦の仕事になり、言語の通じない外国人に対するカウンセリングも含まれることになります。さらに、青少年のエイズ教育のために、保健所のエイズ担当者が学校などに出かけ、講習会を開く計画も加わってきます。こうした保健所業務の拡大に対する予算、人的側面、設備面などでの対応についてお伺いいたします。
 以上で、一回目の質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森本議員にお答え申し上げます。
 お話ございました健康カードによる生涯健康管理システムにつきましては、健康管理上、非常に役立つすばらしいシステムであると考えられているところでございます。
 ただ、実施については多くの問題点があると聞いてございまして、現在、国において検討・試行を進めておりますけれども、県におきましても積極的に検討・調査を進めてまいりたいと思っております。
 それから救急救命士について、県独自の養成機関の問題でございます。
 現在、消防学校において救急隊員の教育訓練を行っているところでございますけれども、救急救命士となりますと教育訓練の内容が非常に高度かつ専門的でございます。個々の県だけでは救急医療関係の講師の確保は非常に難しい等の関係から、全都道府県で共同出資により救急振興財団を設立いたしまして、救急救命中央研修所が三年度に開設されたところでございます。県としては、これを活用して救急救命士の養成に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、今後の救急救命士の養成については、中央研修所の第一期計画で見れば、お話ございましたように、この十年間で約八十五名の派遣養成が予定されておりますが、ご指摘のように、中央研修所への養成人員の増加要請、また大阪市等が行っている教育センターへの本県からの受け入れ等、今後、積極的に進めながら、各消防本部への救急救命士の適正配置等、高度化への体制整備について指導を行ってまいりたいと思っております。
 次に、エイズの問題でございます。
 ご指摘ございましたように、我が国においても、エイズ患者、感染者が急増する事態になっております。県議会において、各議員からもご意見を承っておりますが、私としても憂慮すべき事態だと考えておるわけでございます。県内における患者、感染者の報告はまだ少数にとどまっておりますけれども、現段階で有効な対策を講じなければ、今後、感染者数の増加は避けられない状況にあると認識してございます。
 今後も、エイズ蔓延を防止するため、正しい普及啓発、保健所の検査体制の充実を初め、エイズ対策に積極的に取り組んでまいりたいし、この際、県としても検査費の無料化の方向で取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
○議長(馬頭哲弥君) 民生部長吉井清純君。
  〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) ゴールドプランについてお答えをいたしたいと思います。
 まず一点目の、克明な調査に基づくきめ細かなニーズの把握でございますが、老人保健福祉計画の策定については、県下市町村において、寝たきり老人、ひとり暮らし老人については全員、その他の高齢者については約二〇%の方々を対象に、百余りの質問項目を設定して調査を行い、現在、集計・分析中でございます。
 調査につきましては、議員ご指摘のとおり、地域の実情に詳しい民生委員等の戸別訪問で聞き取り調査をしていただき、できる限りたくさんの高齢者の方々からきめ細かい実態把握のための情報を得るように努めているところでございます。
 二点目の、老人保健福祉サービスの整備水準でございますが、県の高齢化が全国より十年程度早く進んでいる状況から、国のゴールドプランの水準を、例えばホームヘルプサービスでは約二〇%増しに、特別養護老人ホームについては約二五%上回る水準を設定した「わかやま二〇〇一喜の国長寿保健福祉プラン」を策定したところでございます。
 いずれにいたしましても、このプランの水準を目安にしながらも、現在集計・分析中の実態調査結果を踏まえながら、それぞれの地域特性や地域の状況に応じた実施可能な計画にしてまいりたいと考えております。
 次に、年次的実施計画の作成でございます。
 老人保健福祉計画の計画期間については、平成五年度から平成十一年度までの七年間の計画で、この間のサービスの目標総量を設定することとなりますが、この最終目標が達成できるよう、議員ご意見のとおり、具体的整備計画についても老人保健福祉計画の中に盛り込んでまいりたいと考えております。
 次に、福祉カードシステムの導入でございます。
 福祉カードシステムにつきましては、健康カードのあり方と密接に関連する問題でございますので、保健環境部とも連携を図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 保健環境部長遠藤 明君。
  〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 健康管理カードについてでございます。
 二十一世紀の本格的な高齢化社会を控え、保健医療分野における情報化は、医療資源の効率的活用、医療の質の向上を初めとして、住民の健康管理を一層進めていく上で大切なものと考えておりますが、一方、費用負担や情報の入力の問題等、解決すべき課題もございます。保健環境部としては、既に試行している他府県の状況調査を手始めとして調査研究に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、救急救命士を生かせる環境づくりについてでございます。
 関係機関との連携のもとに進めていく必要があるわけでございますが、保健環境部としては、救急医療機関と救急車を結ぶホットラインの整備を初めといたしまして、重篤な救急患者を受け入れる救急医療機関の整備をより推進してまいりたいと考えております。
 次に、エイズ問題について幾つかのご質問がございました。
 まず匿名検査で予防が可能かということでございますが、保健所での検査については、被検者のプライバシーを保護し、安心して検査を受けられるよう、匿名で実施をし、結果については医師が直接本人に通知をすることとしております。検査結果が陽性の者には、その病態を説明するとともに、二次感染防止について十分指導を行い、さらに発病防止、治療の必要から専門医療機関を紹介することとしております。
 輸血による二次感染防止対策についてでございます。
 血液センターにおける献血血液については、エイズ抗体検査によるチェックに加え、献血採血時において二次感染予防のための問診を実施し、エイズ感染が疑われる方には献血をご遠慮いただくとともに、献血後に感染のおそれがあるとの自己申告をしていただいた方の血液はすべて廃棄処分をして感染予防に努めております。
 また、院内血輸血については、採血時の問診やHIV抗体検査を含めた検査体制を定めた輸血療法の適正化に関するガイドラインの内容の医療機関への周知徹底を図っております。
 次に、医療機関における感染予防対策については、厚生省よりHIV医療機関内感染予防対策指針が出されているところであり、県医師会、病院協会、歯科医師会を通じ、会員への周知徹底を図っているところでございます。
 次にカウンセリングの問題ですが、感染者あるいは感染に不安を持つ人に対してはカウンセリングが必要であることは十分認識しているところであり、既にカウンセリングに関する教材等を保健所に配付しておりますが、今後、保健所職員等に対してエイズカウンセラー養成研修への参加を検討してまいります。
 次に、受け入れ態勢の整備でございます。
 エイズ患者が発生した場合に備え、適正に医療が行えるよう、本年度から医師、看護婦及び臨床検査技師から成るチームをエイズ治療の実績のある病院に派遣し、実地研修を受けさせ、受け入れ態勢の整備を図っていくこととしております。
 感染拡大の予防教育についてでございますが、世界保健機関(WHO)が十二月一日を世界エイズデーと提唱したことにかんがみ、平成元年度から同時期に教育関係者、市町村関係者を初め、看護学校学生等を対象に講習会を実施してまいりました。本年も、パンフレット、リーフレットの配布を行うとともに、教育関係機関と連携しながら、高校生を中心にエイズの正しい知識と理解を得るため、十二月下旬にセミナーを計画しているところでございます。
 最後に、保健所業務の拡大に対する対応についてでございます。
 保健衛生を担当する第一線の保健所において、エイズに関する業務が増加しているのが現状でございます。このため、相談・検査業務や保健指導などを担当する職員の専門的知識の研修を実施するなど、保健所の体制強化を図ってまいります。
 なお、エイズの検査方法上、集約的な検査の必要から、県衛生公害研究センターに一次検査及び確認検査の設備を整備し、検査を行っているところであります。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 総務部長山中昭栄君。
  〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 救急救命士の配置の問題でございます。
 救急隊員が行う応急処置等の範囲の拡大に伴って実施基準が改正され、救急隊は、救急救命士の資格を有する救急隊員と、拡大された九項目の応急処置等の実施に必要な講習課程の修了者をもって編成し、あわせて高規格の救急自動車、高次処置に必要な救急資器材を配備するように努めるものとされたところでございます。
 中央研修所の第一期計画では、この十年間で約五千六百四十名の救急救命士を養成する予定でございまして、本県では八十五名の派遣養成が予定されておりますが、県内五十隊すべての救急隊に常時一名以上配置するためには、一隊四人体制として二百名を必要といたします。二十一消防本部に最低一隊を配置するためには、八十四名を要するわけでございます。
 特に、小規模な消防機関においては、教育訓練のための人員派遣の面で困難が伴うと思いますが、県としては、当面、この十年間に二十一消防本部に最低一隊の配置を目標といたしております。今後、中央研修所の第二期計画の動向を見きわめながら、さらに、大阪市などの教育センターへの受け入れ要請を積極的に進め、具体的な時期をお示しすることはできませんが、できる限り近い将来にすべての救急隊に救急救命士の配置がなされますよう努力をしてまいりたいと考えております。
 また、救急救命士を生かせる環境づくりでございますが、救急救命士が高度な応急処置を行うに際しては医師の具体的な指示を受けて実施するということになっており、そうした体制の確立や卒後研修の円滑な実施など、今まで以上に医療機関との連携の緊密化を進めなければならないと考えております。
 県としては、これらの課題について、医療機関、消防機関、行政とで構成をする救急業務検討委員会を設けて検討を進めているところでございます。
 ご指摘のように、救急医療体制における救急救命士の活用のための環境づくりに努力をしてまいりたいと考えております。
○議長(馬頭哲弥君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育関連事項二点についてお答えいたします。
 単位制高校については、定時制・通信制教育の活性化を図るとともに、一人一人の生徒の特性を生かし、また生涯学習を推進するという観点から、地理的条件をも勘案して、本年度三校に設置したところであります。これら三校の募集定員に対する志願者の割合は、紀の川高校では昨年度の五八%から本年度は七二%に、青陵高校では三九%から八六%に、南紀高校では四一%から一二〇%にと、大幅に上昇いたしてございます。
 各学校では、通信制課程との併修、大学入学資格検定合格科目の単位の認定、パソコン、ワープロ、英会話、郷土史などの特別講座の開設等、生徒にとって魅力ある教育を行っております。入学者の年齢幅も四十歳代まで広がっていることや、特別講座には一般社会人も多く学んでいることから、生涯学習の推進という趣旨が生かされていると考えてございます。
 また、中学校時代に登校拒否的傾向のあった生徒や全日制高校における中途退学者等、多様な学習歴の生徒も入学しておりますが、一人一人の生活のリズムに合わせた教育が行われる中で、ほとんどの生徒が毎日元気に登校し、生き生きとした学校生活を送っております。さらに、現在在学している定時制の二年生、三年生にあっても、定通併修や大検の活用等によって三年間で卒業できるようにという目的意識を持ち、意欲的に学習に取り組んでいます。
 このように、単位制高校三校については、その特色を十分生かした教育が行われていると評価しております。
 次に、議員ご指摘のとおり、これからの高校教育のあり方については、第十四期中教審答申を受け、国においても高等学校教育の改革の推進に関する会議を設けて検討が重ねられ、その第一次報告において総合的な新学科の設置、全日制高等学校への単位制課程の導入、学校間連携の推進、専修学校での学習成果の単位認定などが提言されたところであります。
 高校教育は、これまで進学率の上昇に伴って教育内容の多様化が図られてきたところでありますが、今後はさらに、一人一人の生徒に焦点を当て、光の当たる教育をより一層推進することが重要な課題となっています。
 本県においても、従前の枠組みを超えて個性化を推進する新しい高校教育のあり方について、二十一世紀を創る人づくり推進協議会等においてご意見をいただきながら、県教育委員会としても多面的に検討し、前向きに対処してまいる所存であります。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 46番森本明雄君。
○森本明雄君 ゴールドプラン、救命士、エイズの三点につきまして、私の意見、要望等、申し上げておきたいと思います。
 まずゴールドプランの関係でございますが、厚生省が本年発表した平成二年版「老人福祉マップ」によりますと、本県は特養ホーム定員率は全国平均を上回るものの、ショートステイやデイ・サービスの在宅福祉サービス利用状況は平均を下回っている、施設偏重型と報告されていました。ショートステイについては年間延べ利用人員がゼロの市や未実施の町村があり、デイ・サービスに至っては、県としても全国平均を大幅に下回り、未実施の町村が七割を超えるという実態でございました。
 県は、在宅福祉サービス施設の充実、ホームヘルパーの増員、また気軽に在宅福祉サービスを利用できるよう相互利用券制度を全国に先駆けて取り入れるなど、福祉和歌山の名に恥じない取り組みをしてきたと思います。その結果、利用状況においては、三年度の実績では市町村によりばらつきはございますが、元年に比べまして大幅な伸びを示しており、今後さらに伸びるものと思います。
 当局よりいただいた資料によりますと、在宅介護支援センター、ケアハウスなどの充実がおくれていることと、在宅介護三本柱の一つであるデイ・サービスが四年度末においてなお十六市町村が未実施という実態、これは残念な状況だと思います。
 ご承知のように、家族介護にはさまざまな悲劇がございます。それをどれだけ改善できるかという点でありますが、家族の介護のためにすべてをなげうつとか、生計を保つ仕事までやめざるを得ないというようなことがないよう、介護体制を十分整備することが肝要だと考えます。つまり、この計画が終了したときに和歌山県の福祉水準はどこまで保障されているのか、だれもが、いつでもどこでも気軽に在宅福祉サービスを受けられることが実現しているのかどうか、最も重要なことだと思います。県は、市町村に対しましても、指導あるいは財政的支援等を含め、その実現に協力していただきたいことをお願いしておきたいと思います。
 次に救命士ですが、先ほど申し上げたとおり、県内での一一九番通報を受けてから医療機関までの平均所要時間は二十二分であります。近年、この所要時間は定着して時間短縮への改善は進まないようでございます。通報を受けてから医療機関までの平均所要時間の最も短いのは太地町の十三分〇六秒、続いて和歌山市の十五分、逆に最も長いのは龍神村の一時間三十五分、続いて本宮町の一時間八分三十秒でございます。この実態は、過疎や道路事情もございますが、医療機関や搬送体制の拡充が進まず、救急医療の地域格差解消が進んでいない状況を浮き彫りにしておるのではなかろうかと思います。
 救急救命士の完全配置までの当面の目標としては、県内二十一消防本部に最低一隊の配置だと思います。員数的には平成十三年には配置できることになりますが、複数配置に先行するであろう和歌山市の事情を勘案した場合、そのめどがなかなかつかないのではなかろうかと思います。したがって、養成計画の前倒しを行い、体制の充実を図っていただきたいと思います。
 課題の一つに、受け入れ先や救急救命士に指示を与える救急医療施設や病院などバックアップの問題がございますが、県内で二十人と少ない救急医の実情から見まして、各医療機関の中で二十四時間救急医が詰めているのは皆無だと考えます。救急救命士の業務が円滑に進むよう、医療・消防機関初め、関連行政機関の連携体制の確保を図っていただきたいと思います。
 三点目のエイズでございますが、厚生省の発表によるとエイズ患者、感染者の最も多いのは東京で、続いて茨城県、長野県と、最近は地方へ波及しているようでございますが、西岡・日赤中央血液センター技術顧問は、「これは単に、これらの地方にまじめな医師がいて、エイズを熱心にフォローし、報告しているからにすぎない」と分析しています。また、先日、全国紙に掲載されておりましたが、これまでに十七人のエイズ感染者を確認した土浦市の開業医・鈴村医師は、「東南アジア系女性が働くスナックなど全国どこにでもあるはず。ここだけに集中して感染者が発生するなど疫学的にもあり得ない」と指摘しています。
 昨日も、県内で確認された患者、感染者は三人と報告されました。全国的に見て県内では少人数とは言え、鈴村医師の指摘のとおり、油断はできないと思います。また、先ほど述べたように、本年三月時点で感染者の実際の数は報告の四・三倍といたしますと、本年二月分で換算して約八千六百人に及ぶ推計結果が出ます。それが七月には十倍へと大幅修正されたわけでございますので、我が国における感染者が既に一万人以上に達していることを認めているわけであります。こうしたことは、日本のエイズ感染がもう一段危険性の高い段階に入ったことを意味しているものと思います。
 このままでは、エイズが身に覚えのない人にも忍び寄り、二次感染、三次感染、母子垂直感染などで感染者が爆発的にふえるのは確実だと思います。相当な社会的混乱を未然に防止できるかどうか、今後、一、二年の対策にかかっていると言ってよいと思います。県は、今後のエイズ対策に国を超える対策を講じていただきたいことを要望しておきたいと思います。
 私の意見、要望を申し上げまして、質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で森本明雄君の質問が終了いたしました。
○議長(馬頭哲弥君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 43番浜本 収君。
  〔浜本 収君、登壇〕(拍手)
○浜本 収君 四点、質問をいたします。
 その一つは、田辺湾総合リゾート開発の中止についてであります。
 燦黒潮リゾート構想の中核に位置づけられた田辺湾総合リゾート開発は、去る九月二十一日、田辺市長から田辺市議会の同開発調査特別委員会に対し、「総合商社丸紅との共同事業を見直す」と報告したところであります。昭和六十三年八月以来、四カ年にわたって進めてきたこの大規模構想は、率直に言って、ここに終止符を打ったのであります。
 さきの六月県議会において私は、「二千億の事業費を七百億に縮小して今後もその事業を進めるというこの縮小案は、急に取りやめると言えないから一時的に縮小すると言った偽装発表ではないか」と半信半疑の中で取り上げたが、この縮小案も発表後わずか五カ月を待たずに中止となったのであります。二千億、七百億、そして中止となったのであります。
 県は、この計画を燦黒潮リゾート構想の中核事業として位置づけ、その推進を行ってきただけに、この現状についてどのように認識をしているのか。また、本議会を通じて四回質問をさせていただき、繰り返し述べたように、リゾート形成に対する行政や企業の最大の課題は、住民とともに生きる、住民との共生に立った住民合意の形成でなければならないことを、中止せざるを得なかった重要な視点として把握すべきだと思うが、改めて見解を問うものであります。
 また、県は燦黒潮リゾートの基本構想の中で、豊かな黒潮ラインに沿って七つのリゾートを重点的に整備するとして、一、加太・紀泉地区、国際交流リゾート、二、和歌浦湾地区、海洋都市リゾート、三、西有田・白崎地区、味覚体験リゾート、四、田辺・白浜地区、学ぶ・働く・鍛える・憩うの総合リゾート、五、枯木灘地区、農林水産業体験リゾート、六、潮岬地区、太陽とたわむれるリゾート、七、勝浦・太地地区、人間回復のリゾート等々をうたい上げております。それぞれの地区のリゾートの性格なり方向を今ある姿に基づいて名前をつける、そういう性格を示しているものとして私はそれなりに理解はするけれども、ただ、皆さんもお気づきのように、今七つ読み上げた中で、田辺・白浜地区の学ぶ・働く・鍛える・憩うという性格づけは何か学生を対象にしたようで、他の六地区のそれとは異質に思えるが、説明を求めます。
 また、この燦黒潮リゾート構想の内容として、南部・田辺・白浜地区に特定民間施設としてテニスコート、乗馬場、サイクルセンター、ゴルフ場、集会所、宿泊施設など、その運営は公開型、会員制等の六十九の諸施設を計画予定に挙げているが、この六十九施設のうち中止になった田辺湾総合リゾート関連のそれは三十一施設、また特定民間施設以外の特定施設七カ所のうち二カ所は中止となっている。全体として、この地域の再検討を要請し、質問にかえるものであります。答弁を求めます。
 次に、関西電力会長の発言に対する県の見解について質問をいたします。
 関西電力の小林庄一郎会長は、去る七月二十四日の定例記者会見で、和歌山県の日置川町に立地を計画している日置川原発について──よく聞いてください──「ねらいをつけたら必ず立地するのが関西電力の伝統である」と述べ、引き続き立地を推進する方針を明らかにしたのであります。しぶとい発言であります。したがって、しぶとくこれに対決してまいりたいと思います。
 さきの六月県議会において私は、六月二十八日の日置川町長選挙後の関西電力立地部長のコメント、すなわち「当社としては、引き続き原子力発電に対する地元の皆様のご理解が得られるよう、粘り強く努力を重ねたい」としたコメントについて県の見解をただしたが、「県としては、地元の意向を尊重しつつ、三原則を堅持し対応する」という四年前の答弁に終始したところであります。
 そこで私は、「ねらいをつけたら必ず立地するのが我が社の伝統である」とするこの発言について、県の見解をただすものであります。
 一、この発言は、選挙という民主主義の手続による原発の賛否の決定がどうあれ、私的な「我が社の伝統」の方が公的なそれよりも優先するのだという会社のエゴ以外の何物でもない。それは民主主義に敵対する言動ではないか。にもかかわらず県は「電気事業者の立場からの発言である」として、現実に事実として示された民主主義と政治の評価を避けた答弁を繰り返しているが、そんなことでいいのかどうか、再考を促し、答弁を求めるものであります。
 二、県の答弁は「今後とも、地元の意向を尊重しつつ、三原則を堅持し対応する」と、私だけではなく、だれもがもう暗唱できるほど何回もこの言葉を繰り返しているが、この答弁は新たに立地しようとする地点──現実には存在しないけれども──に対する方針であって、日高町や日置川町には通用しないものであります。なぜならば、住民の意向は「原発ノー」を選択しているからであります。これ以上なお「地元の意向を尊重していく」とは、何をせよというのか。理解に苦しむのであります。わかりやすい答弁を求めるものであります。
 次に、医大小児科病棟の改善について質問をいたします。
 この夏、といっても七夕の前日、私は知人の子供さんを見舞うために医大病院の小児科に行ったが、冷房の冷気が流れる廊下を汗をふきながら歩いた私は、暑い病院やな、狭い病室やなということを感じたのであります。しかしながら、千羽鶴に飾られた何本もの竹ざおに結ばれた、子供たちの平癒を祈る父や母の願いのこもった短冊の一つ一つの言葉に、優しさと安らぎすら覚えたのであります。
 多忙なお医者さんや看護婦さんたちの仕事ぶりに接しながら、この病棟のせせこましさが少々気になった私は、後日、この病棟を訪ね、小児科の先生や患児の親たちからいろいろ話を聞かせてもらう機会を得ましたが、以下、幾つかの点について、私なりに感じたこの病棟の改善について要望し、質問をいたします。
 今、私は「私なりに感じた」と申し上げましたが、こういった問題については全くずぶの素人であり、間違った発言をするかもわかりませんことをあらかじめご容赦願いと思います。
 一、この小児科病棟内には入院患者(子供さん)たちのプレールームや食堂がないため、患児には不自由な入院生活が強いられ、また患児が気楽に遊んで過ごす場所がないため廊下で遊び回るので、職員カンファレンスルームをプレールーム用に開放しているが、患児用のプレールームと食堂を病棟内に設置できないものかどうか、お伺いをいたします。
 二、この病院の患者処置室は狭苦しいが、その狭い処置室に沐浴槽を一つ設置しているために、お医者さんと看護婦さんが処置の最中に別の患者の入浴を看護婦さんと患者の付き添いが行うことが起こり、その結果、処置の清潔操作が厳守できないこともある。したがって、この処置室を広くし、処置室とは別のところに沐浴槽を二個ぐらい設置できないものかどうか。
 三、現在、小児病棟は六人部屋四、四人部屋一、二人部屋一、個室二、計三十二床だが、個室以外は部屋が狭く、付き添いベッドをつけると身動きができない。したがって、六人部屋を四人部屋に、四人部屋を二人部屋に、二人部屋を個室にして、不足病床十一を新たに個室につくり変えられないかどうか。お話を聞きながら、あるいは私の意見として、そんなことを思ったのであります。
 ふと気づいてみますと、この病棟の北側に屋上──約七十平米と聞きました──がございます。そこに、今述べている病床や処置室、プレールーム、食堂などの増設ができないものかな、建築法上これは難しいのかなと、素朴に思ったりもいたしましたが、その可能性を問うものであります。
 四、現在の病院には無菌室を初めとする骨髄移植用の設備がないため、患者は東海大学や兵庫医大で骨髄移植を行ってもらっており、今まで当院小児科の八名がそういった病院で骨髄移植を受けているが、医大病院内に骨髄移植用の設備と人員の確保ができないものかどうか。
 以上、お答えを願いたいと思います。
 重複いたしますが、学校週五日制の問題について質問をいたします。
 学校週五日制の実施は、きのうもお話がございましたが、明治五年の学制発布以来の三大改革の一つだけに、先月九月十二日の土曜休日の実施は、テレビ、新聞等を通じ、全国的にも大きく報道されたところであります。県内においても、幼・小・中・高六百十七校、十六万四千八百五十三名の児童生徒も、初の土曜休日を過ごしたところであります。
 県教育委員会は、近代美術館や博物館、紀伊風土記の丘、自然博物館、体力開発センターの無料開放を実施し、また和歌山市では、市立博物館、こども科学館、市民温水プールなど市立の教育施設について、この日から毎月第二土曜日の午前中を無料開放と定めたところであります。こども科学館には正午までに千人以上の子供たちが訪れ、また和歌山城公園には約六百名の子供たちが集まり、身近な材料を使ったさまざまな遊びに挑戦し、園内に歓声があふれたとのことであります。
 また、田辺市みどりの少年団は、みずからを「森の休日探検隊」と名づけ、田辺営林署と田辺木材協同組合の協力のもとに、遠くはすさみ町佐本の宮城川の国有林を訪ね、木に関するクイズや鳥の巣箱づくり、樹齢三百年のトチの木の大きさに歓声を上げ、十人の子供たちが手をつないでやっとその幹の周りに届いたという、そんな休日を過ごしたとのことであります。
 また一方、私の専門ではございませんが、全国のカラオケボックス約二千店が加盟する日本カラオケスタジオ協会は、この日、入場無料サービスを初め、カラオケ家族カーニバルのキャンペーンを実施するなど、親と子供が参加する多彩なイベントが実施されたところであります。
 そこで、私は学校週五日制の現状と今後のあり方について、以下数点、質問をいたします。
 一つ目。文部省は、「9・12サタデープラン」の呼称のもと、官公庁、教育機関、民間団体などに対し、土曜休日の受け皿づくりの協力を求め、これを受けた都道府県市町村教育委員会もそれぞれのイベントを行ったが、教育委員会は今後とも土曜休日ごとにこのような多彩な催しを奨励していくつもりなのかどうか、まずお答え願いのであります。
 私の答えを申し上げます。奨励すべきでないという立場であります。このようなイベントが第二土曜日に行われ、子供たちに参加を求めていく傾向が助長されていくとするならば、それは学校五日制の本来の趣旨と矛盾しないのかどうか、検討を促し、答弁を求めるものであります。
 二つ目。第二土曜日が休日、だから、なくなった授業の埋め合わせが月曜から金曜までのどこかで行われ、特に中学校では、高校受験を控えているだけに、平常日の授業時間の上乗せが行われ、子供たちの中には疲れを訴えるケースもあるという。あるというというよりも、現に私が聞いたのであります。
 土曜休日は、ゆとりのある教育を志向するためにと言いながら、他の日に子供たちに重苦しくのしかかっていく。やがて月二回の土曜休日となり、月四回の土曜休日となれば、現在の学習指導要領の改訂は必至であります。およそ一つの制度を実施する場合、執行者は──この場合、文部大臣を指すのでありましょう──あらかじめ生じるであろう問題をまず解決する立場で処理するのが通常の姿でなければならない。教える量や質をそのまま放置し、今の学習指導要領のまま土曜休日を行っている状況は、無責任な行政態度であります。
 したがって、学習指導要領の抜本的改訂はすべてに先立って行われなければならない課題であります。この自明のことについて、教育長の答弁を求めるものであります。
 三つ目。全国の私立学校のほとんどは、第二土曜日を平常どおり行った。近畿六府県の私立高二百七十校のうち五日制に踏み切ったのは、わずか十二校にすぎなかった。また、県内では智弁和歌山中・高を除いて平常どおりの授業が行われたが、今後の対策について答えられたいのであります。世耕先生の私立の学校も授業をしたと聞いてございます。
 四つ目。各市町村教育委員会は、小・中学校に第二土曜日の午前中のクラブ活動の自粛を要請、とりあえずこの日の午前中のクラブ活動は見送られたが、高校のほとんどの運動部は土曜日の午前中から練習に励んだ。今後、授業がなくなるこの午前中は絶好の練習時間になりそうだという声が現にも聞こえてございますが、こういったことについて今後の方策を伺うものであります。
 五つ目。学校五日制の一環としての土曜休日は、本来的には今の日曜日の状態と何ら変わらない扱い方に位置すべきものと私は考える。そうでなかったら学校五日制の意味はないと、私は思います。今の日曜日の過ごし方がどうだこうだというようなことはだれも言わない。そういう状態に位置づけることが学校五日制の意味であります。
 したがって、過渡的な段階の中で先ほど述べたような多彩なイベントが行われたにしろ、文部省や教育委員会が奨励すべきものであってはならないと私は思う。前段二項でも述べましたが、授業時間数や学習指導要領の改訂等、五日制に則した制度と内容の全面的な変更を国に求め、その確立を定めない限り、真のゆとりや豊かさは保障されないし、今のような状態で行ったら永遠に混乱が起こるであろうということを予言すらもして、私の質問を終わりたいと思います。見解を求めたいと思います。
 以上で終わります。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの浜本収君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答え申し上げます。
 田辺湾の総合リゾート開発計画につきましては、企業に対し、早期事業化のために一層の努力を求めてきたところでございますけれども現状に立ち至ったこと、まことに遺憾に思っておるところでございます。
 しかしながら、当計画については、田辺市が市の主体的な地域開発事業として位置づけ、長期整備計画に基づいて開発を進めることになったという報告を受けておりまして、県としても、実現に向けて努力してまいりたい、支援してまいりたいと考えておるところでございます。
 なお、お話ございました住民合意の問題でございますけれども、こうした事業の円滑な実施を行うためには、地元の人々の理解と協力ということが最初の前提ではないかと思っておるところでございます。
 それから、小林会長の発言でございますけれども、これは私は、電力安定供給を使命とする電気事業者の立場からの発言であろうと考えますけれども、おのずから節度ある言動が求められるものだと考えておるところでございます。
 詳細につきましては、企画部長から答弁いたします。
○議長(馬頭哲弥君) 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 燦黒潮リゾート関連及び関西電力会長発言についてのご質問にお答えをいたします。
 まず、燦黒潮リゾート構想における田辺・白浜重点整備地区の整備の性格づけについてでございますが、本地区は本県海岸線のほぼ中央にあり、白浜温泉等、既存の観光リゾート地としての集積が高く、加えて南紀白浜空港を初め道路、鉄道といった交通の面での整備状況等から、燦黒潮リゾート構想においては本地域をリゾート整備の中核地域として位置づけ、北部に都市型リゾート、南部に自然型リゾートをそれぞれ配し、一体的な海洋性リゾートの形成を目指したものでございます。
 本地区の整備方針については、本地域が有するすぐれた資源を積極的に活用し、千里海岸のアカウミガメ、神島原生林等の自然資源、南方熊楠に代表される文化的資源、弁慶市等経済活動を通じた交流の場、温暖な環境のもとでのリゾートオフィスの立地、ヨット、スキューバダイビング等の海洋スポーツ及び温泉資源等、これからのリゾートライフに求められると考えられる多様な機能を総合的に備えたリゾート地としての性格を特色づけるために、学ぶ、働く、鍛える、憩うとのコンセプトに基づき整備していくこととしたものでございます。
 次に関西電力・小林会長発言についての対応でございますが、私の立場で、去る八月五日、担当支配人に対し遺憾の旨を申し伝えたところでございます。
 次に原子力発電所立地問題でございますが、従来から、地元の意向を尊重しつつ、三原則を堅持し、対応してまいったところでございます。日置川町においては、三原則の一つである地元の同意が満たされた状況にはないと認識してございます。したがって、三原則を堅持する立場からいたしまして、地元の同意なしに進むものではないと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 総務部長山中昭栄君。
  〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 医大附属病院の小児科病棟の改善についてでございますが、ご指摘のとおり、現病院は非常に老朽化、狭隘化しておりますために、患者の皆さんに大変ご迷惑をおかけしてきております。
 これに対応するため、病院の本館については昭和六十一年度から五カ年計画で、順次、改修をしてきております。病院の別館も非常に狭隘化をしている中で、ご指摘の小児患者のプレールームとしてカンファレンスルームを開放していることや、処置室の中に沐浴槽があり、大変手狭になっていることなどの解消のために、他の場所でのプレールーム、食堂、沐浴槽の設置について検討をいたしましたが、余剰スペースがなく、現施設の中では極めて困難でございます。
 また、大部屋病床の解消についても、現施設の中で実施をするとなると病床数を減らす以外にその方法がございません。常時三十二床が満床で、しかも大勢の入院待機者がおられる中で病床数を減らすことは困難な状態でございます。
 なお、小児科病棟の北側の屋上に増設をできないかということでございますが、北側の持ち出し部分はリハビリテーション室の屋上になっており、地下へのスロープの壁を利用した建築となっているために、構造的にはこれ以上の荷重に耐えるようにはできておりません。また屋上には採光取り入れ口を設けており、これをふさぐということになると建築基準法違反となるといった問題もございまして、遺憾ながら増設は困難でございます。
 今後、移転整備計画の中で十分検討をしてまいりたいと考えておりますので、ご理解を賜りたいと存じます。
 また、骨髄移植については、本格的には移転整備計画の中で検討をしてまいる所存でございますが、附属病院としては、当面、輸血部を中心に、現在設置している高度集中治療センターの無菌室を利用していきたいということでございます。私どもとしても、病院側とよく協議をしてまいりたいと考えております。
○議長(馬頭哲弥君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 学校週五日制の五点についてお答えをいたします。
 学校週五日制は、激しい社会の変化に対応し、これからの時代に生きる子供たちの望ましい人間形成を図るため、学校、家庭及び地域社会での学習や生活を通して、みずから考え、主体的に判断し行動できる資質や能力を身につけさせることをねらいとしてございます。
 「9・12サタデープラン」については、学校週五日制の円滑な実施に当たって、文部省が幅広く国民にその内容と趣旨を周知徹底するために行ったキャンペーンでございます。本県においても、学校週五日制のスタートに当たり、子供たちの活動の場として学校、社会教育施設の開放により、さまざまな催しやイベントを実施したところでございます。このことは、学校週五日制が家庭や地域社会に定着するまでの過渡的な取り組みであると考えてございます。
 今後、県教育委員会としては、市町村教育委員会や関係機関、団体等との連携を図りながら、子供たちが自由に選択して行動できる多様な活動の場や機会の提供に努めてまいる所存でございます。
 次に授業時数の確保に係る問題でございますが、このことについては、休業日となる土曜日を見通して授業日数及び時数の確保に配慮して年間教育計画を作成するよう指導してきたところであります。小・中学校については、学校裁量の時間の活用や学校行事等の精選、短縮授業の見直しを行うことによって、特にいわゆる授業時間の上乗せをすることなく、当面対応できるものと考えております。
 新しい学習指導要領は、臨時教育審議会や教育課程審議会の答申を受け、二十一世紀を目指し、社会の変化に主体的に対応できる心豊かな人間の育成を基本的なねらいとするとともに、学習内容の精選や指導方法の工夫を図りながら、学校週五日制の段階的な導入をも視野に入れて改訂されたものであります。
 私学の学校週五日制の導入については、公私立高等学校教員会等において、学校週五日制の趣旨についてより一層理解と協力を求めていかなければならないと考えております。
 休業土曜日における運動部活動については、学校週五日制の趣旨を踏まえ、生徒の家庭や地域での自発的な活動を制約することのないよう、また、学校開放に関する地域の要望にもこたえていくよう十分配慮しなければならないと考えております。ただ、生徒が自主的、自発的な活動の場を学校の運動部活動に求め、教員も進んで協力する場合は、生涯スポーツの観点や種々の条件をも踏まえ、当分、配慮する必要があろうかと考えてございます。
 最後に、今後、学校週五日制を拡充していくことについては、調査研究協力校の研究結果を踏まえ、総合的に研究し、慎重に対処するとともに、学習指導要領との関連の問題も含め、都道府県教育長協議会等を通じ国に働きかけてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 43番浜本 収君。
○浜本 収君 ねらいをつけたら必ず実施する、選挙がどうなろうが何がどうなろうが、ねらいをつけたらわしはやるんや──これには二つの評価があります。偉い人だな、信念の人であるという評価が一つあります。もう一つは、悪代官のようだなと。私は、後者が正確な見方だと思います。ただいま答弁をいただきましたが、そういったことに対する政治評価、政治家・仮谷志良としてそういう発言についてどう思うか、こういう観点が不足しているようで、私は物足りなさを感じます。
 ただ、この発言について八月五日、ちょっとおそいけど、企画部長が遺憾の意を表明したという答弁がございました。
 しかし、ただいまのこれら議場における発言、特に小林発言に対する質疑応答の概要を、この九月県議会終了後、文書あるいはまた口頭で必ず企画部長から関西電力に申し伝えるよう、私は要請をいたします。そんなことを議会だけで話したというのではなしに、それを必ず実行していただくように申し上げておきます。してなかったら、十二月の議会でまた「したか」ということを聞かしていただきます。答弁は不要であります。要請をしておきます。
 質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で浜本収君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時四十三分休憩
  午後一時三分再開
○副議長(大江康弘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(大江康弘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 27番堀本隆男君。
  〔堀本隆男君、登壇〕(拍手)
○堀本隆男君 お許しを得まして、順次、質問に入らせていただきます。
 まず、リゾート問題について質問をお願いします。
 先日、県から資料の送付がありました。タイトルは「今後のリゾート整備のあり方について」とあります。国土庁が委嘱した総合保養地域整備研究会が中間的に取りまとめたものであります。既に皆さんもお読みになられていると存じますが、一般論としてリゾート整備の現状と問題点を次のように述べております。
 「現在整備が進められているリゾートの一部については、自然破壊や環境汚染に関する批判が生じている。これに関しては、各地方公共団体において開発規制や自然環境保全のための条例等を制定して規制を行ったり、総合保養地域整備については、国の基本方針に基づいて基本構想の中に自然環境の保全との調和のために必要な事項を盛り込み、相応の配慮が行われているところであるが、自然環境や景観の破壊、環境汚染の問題を指摘されているものもある。また、地域振興への寄与が不十分、高い料金で大衆が利用できない、どこも同じような施設である等の批判もある。一方で、最近の経済社会情勢の変化により開発事業者が撤退してしまい、当初の計画どおり整備が進んでいない事例が見られる。これらの批判の中には事実を十分客観的に分析していないものもあるが、指摘されている問題はリゾート整備にかかわる重要な論点を含むものであり、当研究会としてもこれらの問題提起を真剣に受けとめ、検討を行うこととした」とあります。
 そして、「このような批判や問題が出てきた背景には、好景気とリゾート開発ブームの到来の中で、時流に乗りおくれまいとする意識が先行し、関係者のリゾート整備の理念と配慮すべき事項についての理解が不十分なまま開発事業者に過度の期待を持った結果、自然環境の保全や地域振興の観点よりも短期的な事業の成果が重視されたこと、また、これらの観点からの真のリゾート整備についてのノーハウ、技術、人材が著しく不足していたことが大きく作用していたと考える」と反省を行っているところであります。
 そして、今後のリゾート整備の見直しの基本的方向について、国のリゾートについての政策理念の再確立を掲げ、一、長期的な視点に立った整備、二、国民のためのリゾート、三、地域のためのリゾート、四、新たな国土形成におけるリゾートの四点について提言を行っております。
 ところで、県内のリゾート整備の現状はどうか。一般の受けとめ方は、県が人と金をつぎ込んで頑張っているマリーナシティだけが今のところ順調で、その他はうまくいっていない。コスモパーク加太構想は全く展開がないし、田辺市の丸紅、鹿島も撤退を決めた。そして、盛んになったのは住民運動で、リゾート整備法の廃止やゴルフ場を初めとするリゾート事業の中止が各地で求められており、新聞各紙もリゾート開発に厳しい論調であることは、皆さんご承知のとおりであります。
 こうした動きに対し、新聞情報では、知事は燦黒潮リゾート構想は変更しないと語ったとあります。前後の説明がないので若干正確さが欠けた表現に思われます。私なりに解釈いたしましたが、本県の長期計画では県土の基本進路をテクノ&リゾートとうたっており、リゾート立県の方向は変わることはない、それを実現するためにリゾート整備法に基づき策定した燦黒潮リゾート構想はつくって三年目、先般来のバブルの崩壊で各般の影響があるが、朝令暮改的変更は十年、二十年単位のリゾート事業になじまない、もう少し時間の経過の上に立って考えていきたいというふうに受けとめております。
 そこで、お尋ねいたします。
 一、燦黒潮リゾート構想の重点整備地区七カ所ごとの進捗率と全体としての進捗率は何%か。ちなみに、全国三十五県の重点整備地区の事業の進捗状況はいかがか。概括で結構です。大手企業の撤退状況もあわせてお伺いします。
 二、燦黒潮リゾート構想の区域外におけるリゾート整備事業の進捗状況はどうか。また、最近、新たにリゾート整備事業に着手する地区があるのかどうか。
 三、田辺・白浜地区から丸紅、鹿島が撤退したが、今後のリゾート構想はどうなるのか。
 四、紀南の市町村の中には、重点整備地区の重点事業の変更や、新たに重点整備地区の指定を望んでいる市町村がございます。こうした変更要望に対する県の基本的な考え方をお聞かせ願いたいのであります。
 現在のバブル経済の崩壊に伴うリゾート開発の教訓は何か。私なりに考えますことは、初体験のリゾート基地づくりでありながら、バブルの絶頂期に壮大な夢を追い過ぎた。健全な経営に根差すべきを採算を無視した不動産の騰貴を当てにした開発に走り、大手資本による開発を当てにし過ぎ、大手は不動産の売り逃げを当初からもくろんでおり、問題があり過ぎた。住民の自然保護のうねりも予想外に強烈であったことであります。
 景気の動向に余り左右されることなく、フランスのラングドック・ルシヨンのリゾート開発は着実に伸びていると聞きます。一度、本県のリゾート整備もレビュー、つまり国の中間報告的なものをする考えがないか、お伺いいたします。
 私は、二十一世紀に向かうリゾート産業の将来の発展に、いささかの揺らぎも持っておりません。国際社会に対して約束した千八百時間の労働時間、ライフスタイルの変化に伴う余暇需要──ちなみに、余暇開発センターの「レジャー白書」によりますと、平成元年の余暇市場六十三兆円が二〇〇〇年には百五十兆円に成長すると予測し、特に観光リゾート産業の成長が高いとしております。バカンス法等の制定などがあれば、ゆとりを求めてバカンスを楽しむ国民が一気に拡大すると思います。そのことは、先進諸国を見れば我が国の将来もおおむね予想がつくわけであります。
 中間報告においても、そのことを認めております。将来、多様な余暇活動が増加し、その一つとして滞在型のリゾートライフも増加し、今後の施策を検討する際、家族が一週間程度滞在するようなリゾートライフを実施できるようにすることを想定に整備を進め、適正な料金水準も示唆しているのであります。このほか、将来のリゾート整備の方法について、地域の主体性や一つの方向として農山漁村の景観や文化を生かすグリーンツーリズム──これは西独の農村活性化の原動力になったものであります──の検討、現存の温泉地の再整備も提言しております。
 私は、本県のリゾート整備を進める上で最も大きな問題点は、自然環境の保全だと考えております。つまり、自然や人間に優しい、シンプルなリゾートの整備が求められるわけであります。同時に、高速道路の紀南延長やJRくろしお特急のスピードアップと快適性というアクセスの飛躍的な改善が特に急がれます。
 参考までに、「日経リゾート」九月二十一日号には、「リゾート最前線」として十一ページにわたって白浜・田辺地区を特集してございます。「アクセス改善で開発熱衰えず」との見出しで、「全国のリゾートプロジェクトが停滞する中で、この地区の中小規模のプロジェクトに活気がある」とし、ホテル、マンション、会員制リゾート、ゴルフ場等を例に挙げて、「白浜は今や通年リゾートの条件を満たしつつあり、開発の動きは、アクセスの充実を見込み南部町から串本町まで伸びそうである。和歌山県南部は二十一世紀には全国有数の広域リゾートに発展する可能性を秘めている」と書いております。
 大阪に住む私の友人も、「和歌山県はすばらしい。定年後に住みたいので土地を紹介してほしい」と言ってきており、私はふるさとでは、「紀南の生きていく方向はリゾート産業をおいてほかにない」と断言してございます。リゾートの整備はようやくスタート台に着いたばかりであります。二十年、五十年かけて全国に誇れるリゾート基地をつくるスタンスで当局は頑張っていただきたいのであります。
 次に、国道四十二号。
 先般、九月二十一日に、国道四十二号(田辺~新宮間)改良促進協議会では現道視察会を行いました。参加した皆さんの一致した感想は、改めてカーブの多い危険な道の連続に驚いたということであります。田辺市、西牟婁郡、新宮市、東牟婁郡選出の県議会議員、市町村長、市町村議会議長のメンバーのほかに、行政から県事務所、土木事務所、そして建設省は紀南工事事務所長と工務課長、道路管理課長の約六十名がバス一台に乗り、各市町村から要望の出ている箇所ごとに現況と改修計画を聞かせてもらい、また各般の質疑を行って、大変意義ある視察で、こうしたケースは国では初めてということでありました。
 改修しなければならない箇所は山ほどあります。それは、国側も認めており、昭和三十三年から四十二年に行った第一次改修が急いで実施された結果、十分な規格を満たした道となっておらず、さらにその後の車両の激増と大型化のうねりの中で、四十二号の悪さが目立ってきたのであります。
 ところで、時間短縮効果の最も大きい椿防災道路の区間については、現在調査が進められているとのことでありますが、巨額の資金が必要なことと、高速道路の延長ルートとの絡みで、事業化に向けての見通しは今のところお話しできないということでありました。
 紀南工事事務所では、国道四十二号の改良によく取り組んでくれております。しかし、何分にも国からの事業の予算配分が少ない。ちなみに、紀南工事事務所では、用地先行取得事業は一〇〇%消化してまだ足りない現状であります。紀南浮揚の最大のインフラである国道四十二号の改良すら遅々として進まない。生活大国とは一体何か、言うべくしてむなしいのであります。
 第十一次道路整備五箇年計画に向けて、県ではこの国道四十二号田辺─新宮間の改良促進に力強いご支援を賜りたいのであります。あわせて、椿防災道路の今後の見通しについて、土木部長のご答弁をお願いいたします。
 次に、大島架橋について質問をいたします。
 本年四月十六日に知事は串本町に来られましたが、その際、架橋地点を視察され、さらに県土木部の幹部職員と串本土木の幹部職員に対し、建設を軌道に乗せるよう強く督励されたとのことで、地元では大変喜んでいる次第であります。
 そして、先般、串本町大島架橋促進協議会では、町長を先頭として知事に一日も早い建設促進の要望にお伺いいたしましたが、知事の確かな建設促進へのご回答をいただき、一同、納得して帰ってございます。ありがとうございます。その席上、知事が言われましたこと、すなわち用地買収には地元住民が全面的に協力すること、巡航船問題及びフェリー問題については町が責任を持って解決に当たることも、改めてみんなで強く認識して帰った次第であります。
 そこで、お聞かせ願いたいのは、来年度の事業内容とその後の大まかな計画についてであります。そして、これに関連して、串本土木事務所の事業量の増大が当面の課題となっており、組織、人の面での当局のご配慮をいただかなければならないと考えますが、土木部長の答弁をお願いします。
 さて、先日、ある大阪のコンサルの社長からこんなエピソードを聞きました。熊本県の天草地方で島にかける大きな橋の設計を検討されたとき、当時の熊本県の知事は首脳会議の席上、「百年たっても残るのは文化だ。この橋を熊本県を代表する橋、風格のある文化遺産として残すよう努力しよう」と提唱され、そのためには世界の一流の建築家に設計をお願いしようということになった。建設省で認められる基準設計費は五千万円程度であります。いろいろと設計家を検討した結果、関西国際空港のターミナルビルの設計者、フランスで活躍中のレンゾ・ピアノ氏に白羽の矢を立てました。
 ところが、担当者がレンゾ・ピアノ氏と交渉したところ、基準設計費、施工監督費を含めて二億五千万円ということであります。担当者はびっくりして帰って、「とてもだめだ。高過ぎて経費の捻出の方法がない」と、上司に反対の復命を行ったのであります。これを聞いた知事は、「百年後に残す文化遺産をつくることを目標に決めたのだから、資金を集めることに努力しよう」というふうに言われて、県単独事業費の支出と、一つは熊本県アートポリス財団からの支出と県内の有志の寄附を仰いで二億五千万円を調達したとのことであります。現在、設計も終わり、その模型も完成して展示され、近く工事に着手するということであります。
 串本の大島架橋も、その設計に仮谷知事は心を砕いていると聞いてございます。二億五千万円は別として、広く全国から設計を募り、後世、文化遺産として評価されるものを本県の名橋としてお願いしたいのであります。知事のお考えをお聞かせ願いたいのでございます。第一回万国博覧会の目玉として建設されたエッフェル塔は、百三年たった今もパリの名所の一つであります。
 次に、がんの問題に入ります。
 大変恥ずかしい話でありますが、人間というものは、いや私は、自分自身が成人病に冒されているのではないかと疑いを持ち、四月下旬、県立医大に検査入院をしましてから、悪性新生物つまりがんについての関心が高くなり、新聞、テレビ、日刊紙等のがん特集には多少忙しくても目を通すようになった次第であります。
 さて、私が検査入院後に読んだのが「文藝春秋」九月号に登載されて反響の高い「がん検診・百害あって一利なし」という近藤誠・慶応義塾大学医学部講師の論文であります。かなり長文なので、可能な限り要約いたしますと、がんの検診についてでありますが、今やがんの検診は国民的行事になり、胃、子宮、乳房、大腸の検診が市町村によって行われ、九〇年度は胃は四百万人、肺は五百三十万人、その他の職場検診、人間ドックを入れると膨大な人数に上るが、こうした検査の盛んなのは日本だけで、欧米では皆無に等しい。
 近藤先生の言わんとすることは、医療行為の通則に「有効とは限らぬが不利益(副作用)は必ず生じる」と言われているが、当然がん検診に伴う負担や不利益、副作用があるわけで、例を挙げればバリウムによる便秘、放射線による発がん作用もあり、胃透視だけでも年間二百人以上が白血病やがんにかかると言われ、心理面への影響も乳がん、子宮検診ではなお大きい。また、検診で異常が見つかり精密検査となると、さらに負担が増大します。
 胃、大腸、肺の内視鏡による疼痛、出血、食道・胃・大腸壁が突き破られることもあります。また、そうした苦闘の上、見逃しや誤診も出ております。見逃し率というのは、胃で一〇%、大腸で二〇%、肺で三〇%とされております。元検事総長の故・伊藤栄樹さんのように、毎年人間ドックに入りながら大腸がんを見逃された例もございます。顕微鏡でみる病理診断で良性なのにがんと間違える誤診もあります。他病院からがんと言われて近藤先生のところに来た乳がん患者三十名のうち一〇%が良性で、誤診率を一〇%といたしますと、一昨年の乳がん患者発生数は二万三千人なので年間約二千人以上の切除せずに済む乳房が切り落とされたことになる。病理の誤診はどの臓器でもあり、どんな名医にも生じますが、名医は誤診率が低いだけであります。
 要精密検査となる率は臓器によって異なりますが、精密検査でがんが実際に発見されるのは千分の一いるかいないかであります。つまり、千人に一人のがんを見つけるために九百九十九人の検診と百四十九人の要精密検査がむだになるわけであります。
 割り付け検査法でテストを重ねてきた欧米では、大腸検診は行われず、国際対癌連合も「現時点では大腸がんの検診を行うことは公衆衛生の施策として正当化できない」と述べておられ、近藤先生は「検診は、ある国では無効でも、他の国では有効になるものだろうか」と、疑問を投げかけております。
 肺がん検診の有効性も、欧米では既に否定されております。それは、検診を受けた群と受けない群の最終的死亡数が変わらないからであります。いわゆる進行型がんに対し、のんびりがんがあります。人を死に至らせない無害がんや潜伏がんが、さらに、いずれ消える消失がんもある。検診はこれらを掘り起こすからであるとのことであります。
 現在、症状が出てから発見の場合、つまり病気になってからのがんでございますが、胃がんでは五年生存率は五〇%、大腸や子宮、乳房はもっと高い生存率であります。さらに、人間のもろさと申しますか、がんをせっかく見つけても、臓器を摘出され、抵抗が弱まり、死ぬ時期は何もしない場合と同じになるかむしろ早まるかもしれない。検診にはさまざまな不利益があり、社会的システムとするには有効性がもっと確実でなければならない。にもかかわらず、国は目下、検診受診率を現行の一〇%から三〇%へと三倍増をもくろんでいるが、現在でもパンク状況の病院に増加する要精密患者は収容できなくなってしまう。さらに、多くの医師と看護婦を検診にくぎづけにしてしまうのではないか。それよりも、こうした優秀なスタッフを老人福祉に活用すれば福祉の質をうんと高めることができるのである。
 がんとは何か。年齢が倍になると、がんの発生率は十六倍になるという。それならば、老化の一種ではなかろうか。我々は、がんと共存する生き方を考えよう。放置観察した胃がん患者の全国集計では、一番成績がよかったのは何も治療を受けなかった患者で、五年生存率四〇%、抗がん剤や免疫療法剤を使った患者は五年生存率一〇%と、成績不良であります。手術の場合の生存率五〇%と比べ、考えさせられることが多いのであります。
 そして、今後、国や市町村はどうすべきか。少なくとも検診の宣伝をしてはならないし、職場検診も強制すべきではないと近藤講師は提言しているのであります。
 私がなぜこのがん検診についての論文を取り上げたかと申しますと、このような日本の検診行政の根幹を揺るがすような論文に対する県当局の見解をお聞きしたいのであります。
 まず第一点は、この論文の主張に妥当性があるのかどうか。
 第二点は、県下の市町村におけるがん検診受診率の高低とがん死亡率に因果関係があるのかどうか。つまり、がん検診の受診率の高い市町村ほどがん死亡が少ないかどうか。
 第三点は、本県の医療圏域ごとにがん死亡率が異なる特色があるのかどうか。
 第四点は、がん死亡率の高い本県にはがん発生を誘因する食生活内容が多いとか、生活環境の低位性、下水道の未整備等が原因で遺伝子を傷つける物質がはんらんするがためにがん患者が多いのか、その他の原因があるのかどうか、お伺いしたいのであります。
 つまり、質問のポイントには、がん検診の受診率が低いためにがん死者が多いのか、がん死の原因はもっとほかにあるのか、原因がわかれば具体策が立てられるのではないかということであります。保健環境部長に答弁をお願いします。
 次に、県立医大統合移転に関連して質問いたします。
 がん制圧の願いを込めて、日本癌学会総会が去る九月二十九日から十月一日まで大阪市で開催されました。全国からがんの研究者、医師など六千人以上が参加し、二千五百余の研究発表が行われました。一九八一年以来、日本人の死因のトップを占めるがん。去年のがん死者は二十二万人を超え、全死者の四分の一以上ががんで亡くなっております。
 本県の場合、総務庁統計局から出されている「時系列で見る県のすがた」一九九一年版によりますと、人口十万人当たりのがん死者は二百十七・三人で、全国五位であります。その前年は全国四位、前々年は全国二位でありますので、毎年着実に順位が下がり、喜ばしいことでありますが、絶対数はまだまだ高く、がん撲滅への努力が求められます。
 厚生、文部、科学技術の三省庁は、九四年度から新しいがん十か年総合戦略の検討に入りました。そして今や、がん研究は九〇年代以降、遺伝子の時代に入ったと言われ、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、移転遺伝子などの遺伝子が深く関与していることがわかり、がんにかかっているか、かかりやすいかを調べる遺伝子診断も可能になり始め、がんの遺伝子治療の試みもスタートしております。
 そして、がん研究の成果を治療に結びつけるという意味で、国立がんセンターなどトップレベルの病院では、がん患者の手術後の五年生存率が五五%に達しております。がん治療の上で、今後、地方の病院の底上げを図り、どの病院でも最先端の治療を受けられるようにすることが国の大きな課題となっております。
 そこで、お尋ねいたします。たしか統合移転の構想の段階でありましたが、この機会にがんセンターをつくろうという話が出ておったと思います。それが基本計画の中に入っていないように思います。仄聞するところでは、独立したがんセンターをつくると二重投資になる、講座制の問題とか組織、人材、経費の面で膨大な資金を要するので本県の今の財政事情では無理だとのことで、計画から外したとのことであります。
 今や、全国の自治体病院ではがん制圧に最も力を入れており、例えばNHKテレビで埼玉県立がんセンターの模様を見ましたが、非常に進んでおります。そして、患者も安心して入っております。本県では、検討段階で「がんセンター」という名前をつけると患者が来なくなるのではないかとの心配論も出たそうですが、先端医療機関ではがんの告知が問題なのではなく、今や、患者が医師と相談して自分のがんに対してどういう治療法を選択するか、副作用の多い抗がん剤をとるか、放射線治療をとるか、温熱療法をとるか、それとも治療を行わずモルヒネ注射によって最終を迎えたいとするか、患者自身が選択する時代に入ったということであります。
 新しくできる県立医大は、県内の高度医療、先端医療の頂点に立つ中枢医療機関であることを考えますとき、がんセンターはぜひ必要と思うのでありますが、ご見解を賜りたい。二重投資になるというのであれば、附属病院のもとにがんセンターの名称の機関を設置し、統合移転後の一つの特色を出されてはと考えるものであります。
 次に診療機器でありますが、私が県立医大附属病院に入院して感じましたことは、さすが大病院だということであります。とりわけ、医師、看護婦の対応ぶりは非常によく、精神的にも満足して入院させていただきました。ありがとうございました。
 ただ、医療機器の整備について、若干気になりましたことをお聞きいたします。
 私は第二内科でお世話になりましたが、入院中の幾つかの診察の中で、エコー診療つまり超音波診断装置を受けました。病人の心理は、自分が病気になってわかるものであります。健康であれば何の関心もないエコー性能も、その機器で自分の体の悪いところを診てもらうとなると、少しでも新しいよい性能の機器で診てもらいたいものであります。
 診察室で順番待ちをしているときに複数の医師が相談しながら内臓の処置の場所を探しており、その際、「この機械も古くなってなかなか見づらくなった。大体、患部はこの辺と思うが」と見当をつけておりました。私はそれを聞きまして、後刻「見づらい古い機械ということは、今は新しいよい機械ができているのか」と聞きますと、「カラードプラー超音波診断装置が最新の機器で、体内の血流がカラー表示され非常に診断しやすく、侵襲なし、リアルタイムでわかります。臓器診断には新しい機械が欠かせない。腫瘍の血流も見えます」とのことでした。そこで、「なぜ購入しないのか」と問いますと、予算がないのでなかなか買ってもらえないそうであります。今や、全国の大学病院では十分配備されているが県立医大は一台しかなく、各診療科で困っている、一台約二千万円ぐらいで買えると思うとのことであります。
 医大当局もよい機器の購入に心を砕いておられ、努力していることは評価いたしますが、私ども素人にもわかるこうした必需品的な機器の購入にも努力を賜りたいのですが、答弁を県立医科大学長にお願いいたします。
 次に、JR紀勢本線についての質問に入りますが、この問題については、既に下川議員が平成元年十二月議会において、紀南における総合交通体系の整備として陸海空にわたって的確な質問をされており、くろしお特急のスピードアップについても幾つかの提言をなされております。そして昨日も、新型車両とスピードアップの問題を再び訴えておられました。私も、串本に住んで遅い特急のやりきれなさを痛感している一人として、大方の皆さんのご支援を賜りたく質問をいたしますが、質問のダブる点についてはご了承をいただきたいと思います。
 紀南地方のすべての問題は交通問題の解決に尽きると、識者の意見は一致しております。そして、紀南に住む県民のすべてが一日も早い実現を心から待ちわびていることは、ご承知のとおりであります。
 新聞情報でありますが、去る九月二十八日に白浜町で開かれた第二回目の「紀伊半島における高速交通体系整備構想に関する調査」検討委員会の意見が出ておりました。問題点は、県内主要都市間、特に県南部の都市への交通アクセス整備がおくれている、高速道路の整備が低レベルと指摘し、基本的考え方では鉄道の整備が最重要課題とした上で、在来線鉄道の高速化、ミニ新幹線の運転、快適性のある車両の導入などを挙げております。特に、紀南における鉄道のサービス水準が低いという指摘はもっともだと思うと同時に、産業の発展、観光リゾートの発展を売り物にしていく紀南に住む私どもの責任でもあると痛感いたします。
 そこで、お尋ねいたします。
 平成元年の下川議員の質問に対し、その後、当局におかれてはJR西日本に対しどのような申し出を行われたのか、あわせてJR西日本の回答の内容を教えていただきたいのであります。
 新型車両によるグレードアップと時間短縮の努力の成果がどのようなものであるか。JR東海が本年四月十四日からダイヤ改正を行って、名古屋─勝浦間に登場した新型特急「ワイドビュー南紀」は極めて好評で、四十分の時間短縮とリゾート地へ行く感覚をくすぐるグレードの高い車両とによって、乗客人員が飛躍的に伸びております。本年七月二十日から八月二十日の一カ月間で、名古屋市内からの乗客数は一年前の同期に比べ、何と一九五・四%と約二倍の伸びであります。
 私の記憶では、紀勢本線にいまだかつてこうした新型の専用車両が導入されたためしはありません。すべてよその路線で走らせたセコハンばかり回していると思います。白浜、勝浦という全国有数の観光リゾート地を抱えながら、紀勢本線の位置づけがJR西日本では低い。JR東海で走らせられてJR西日本では走らせられないと私は考えられません。紀勢本線にヨーロッパのようなリゾート特急を走らせていただきたいのでありますが、当局のお考えをお伺いいたします。
 ある人が私に、「紀勢本線の白浜─勝浦間は、明治の規格でつくられた鉄路の上を明治のスピードで走っている。線形改良と踏切改良を行わない限り、ミニ新幹線を走らせても今のスピードは上げられない」と断言しております。私も、スーパーくろしおの先頭車両に乗り見ているのでありますが、時速四十五キロできしみを上げながらのカーブとトンネルの連続に、これではスピードアップは無理だと思います。
 しかし、財政的に無理だという理由でJR西日本にいつまでも放置されますと、紀南に住む私どもは明治のスピードの世界に置かれ、二十一世紀の生活大国と縁のない地域となってしまうのであります。国道でも県道でも、今、改良工事が積極的に進められているのに比べ、余りにもJR西日本は時代おくれと言わざるを得ません。線形改良とスピードアップについての見通しをお伺いしたいのであります。
 特に検討していただきたいのは、特急料金の割引制度についてであります。くろしお特急の平均時速を調べますと、天王寺─和歌山間は時速百八キロ、和歌山─田辺間は九十二キロ、田辺─串本間は何と五十八キロであります。ちなみに、常磐線の特急は平均時速百十二キロであり、田辺─串本間の二倍のスピードで走っております。にもかかわらず、特急料金は同一というのは納得できません。経済の論理で言いますと、同一区間同一スピード、同一料金であるべきであります。新幹線の特急料金が高いのも、一時間延着すると料金払い戻しがあるのも、経済の論理が働くからであります。日本一遅い特急の料金をもっと引き下げられないか、質問いたしてほしいのであります。
 JRも今やスピード化の時代に入った。そうしないと飛行機や高速バスに客が奪われるからであります。私鉄などの競争相手のない紀南地方では、JR西日本は鉄路の改良に全く背を向けているとしか思えず、紀南におけるリゾート産業の発展のおくれは、結果的にはJRの客が伸びないということに思いをいたしてほしいのであります。
 以上、企画部長に答弁をお願いいたします。
 ご清聴ありがとうございました。
○副議長(大江康弘君) ただいまの堀本隆男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 堀本議員にお答え申し上げます。
 リゾート整備に関する見直しについてでございますけれども、お話ございましたように、リゾート整備を取り巻く社会経済環境というものが大きく変動してきていることは事実でございます。しかしながら、本県の県土づくりの基本方針としてのテクノ&リゾートは長期的な視点に立った考え方でございまして、着実に推進してまいりたいと考えておるわけでございます。現在、余暇社会への移行が進みつつありますし、また良質なリゾートへの志向も社会動向として定着しつつあるような現状だと存ずるわけでございまして、現時点では構想自体を抜本的に見直す考えはございません。
 しかしながら、現在、総合保養地域整備研究会の最終報告により、国の動向や社会経済動向などを総合的に勘案しながら、適切に対応してまいりたいと思っております。
 それから、大島架橋についての問題でございます。
 橋の景観等については、私も大きな関心がございまして、例えば和歌山市においても、あしべ橋、また毛見のマリーナシティへの橋、海南からの橋、雑賀崎の斜張橋、紀の川河口大橋等々、景観等について十分配慮しておるわけでございます。
 大島にかかる橋につきましては、本州の最南端の海を渡る架橋でございまして、また橋そのものも串本地方のシンボルとなると思いますし、観光資源でもございます。したがいまして、景観や周囲との調和などを配慮して、形式とかデザイン、色彩などを十分に検討してまいりたい。特に、和歌山県ではコンピューターグラフィックが進んでおりますから、そうした自然景観とのマッチの中で十分検討してまいりたいと思います。
 他の問題は、関係部長から答弁いたします。
○副議長(大江康弘君) 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) まず、燦黒潮リゾート構想に関連するご質問にお答えをいたします。
 燦黒潮リゾート構想の進捗状況でございますが、当構想に位置づけられている民間、公共を合わせた全プロジェクト七十五件のうち、全部または一部が完成したものが十一件で全体の一五%、現在整備中のものが十二件で全体の一六%、さらに事前協議済み、事前協議中のものが十一件で全体の一五%でございます。全体の四五%に当たる三十四件のプロジェクトが何らかの形で進捗しつつございます。
 これを重点整備地区について見ますと、加太・紀泉、和歌浦湾及び西有田・白崎の北部三地区では、完成したプロジェクトが四件、整備中のものが六件、協議済みのものが一件、事前協議中のものが六件でございます。合計十七件のプロジェクトが進捗しつつございます。
 中核地域である田辺・白浜地区では、完成したプロジェクトが二件、整備中のものが三件、事前協議中のものが四件で、合計九件のプロジェクトが進捗しつつあります。
 枯木灘、潮岬、勝浦・太地の南部三地区では、完成したプロジェクトが五件、整備中のものが三件でございます。南部三地区では八件のプロジェクトが進捗しつつございます。
 なお、リゾート整備に関する全国の動向については、本年三月時点で国土庁が実施した進捗状況調査によると、統計数値的な分析はございませんが、総評として「全体としてはまだ緒についたところであるが、中には既に供用しているものや整備に取りかかっているものもある」と報告されているところでございます。
 また、大手企業の撤退の状況でございますが、新聞報道によれば、香川県、兵庫県、愛媛県等で撤退の事例が見受けられます。
 次に、燦黒潮リゾート構想の区域外におけるリゾート整備事業についてでございます。
 全県にわたる詳細な把握はしてございませんが、宿泊を伴うリゾート施設の整備状況を見ますと、例えば本宮町での温泉保養施設を中心とした温泉リゾート基地の整備、龍神村での龍の里づくり、大塔村でのフィッシングパークの整備など、それぞれの地域で取り組まれているところでございます。
 次に、新たなリゾート整備事業に着手する地域についてでございますが、県内陸部を対象として、地元市町村と共同でその地域の特色ある資源を活用したリゾート整備計画を策定し、それに基づき順次事業化を進めるべく、地元市町村等と協議を行っているところでございます。また本年度、新たに二カ所を対象にリゾート整備計画を策定することといたしてございます。
 次に、田辺湾リゾート開発計画等については、地元主導により今後とも引き続き、長期的視点に立って新たな民間活力の導入も図りながら推進されていくものとなってございます。県としても、地元市町村と連携しながら、地域に根差した良質なリゾート地の整備促進に努めてまいる所存でございます。
 次に、変更要望に対する県の基本的な考え方についてでございますが、施設規模等の軽微な変更については、計画熟度が高まり実施段階になった時点で変更を行っていくこととしてございます。また、既存の重点整備地区内への新たな施設の追加については、当該地区の整備方針に沿い、地元の意向をも尊重しつつ、積極的に対応してまいりたいと考えてございます。
 次に、重点整備地区の新たな設定など、重要な変更については、計画の内容や地元住民の意向等、総合的に勘案しながら慎重に対応してまいる所存でございます。
 次に、JRくろしお特急に関連するご質問にお答えいたします。
 まず高速交通体系整備検討委員会についてでございますが、去る九月二十八日、現地調査も兼ね、第二回目の調査検討委員会が白浜町で開催されたところでございます。第二回目の委員会においては、現在の高速交通体系の問題点、望ましい高速交通体系に関する基本的な考え方について意見交換が行われ、本県における高速交通機関としては鉄道の整備が最重要課題と考えられ、快適性、利便性にすぐれた高速交通体系を整備する必要があるなどの考えが示されたところでございます。基本的な高速交通体系整備構想については、次回以降の委員会において具体的な検討が行われ、本年度末には調査結果が取りまとめられる予定となってございます。
 次に、平成元年十二月議会における下川議員からのご質問のその後の取り組みの状況についてでございますが、下川議員からは、JR紀勢本線特急くろしお号のスピードアップ、輸送力増強等につきましてご質問をいただいたところでございます。
 県としても、県民の利便性の向上や観光、産業の振興を図るため、JR西日本と随時、意見交換の場を設けてスーパーくろしお号の増両、増便等、一定の成果をおさめてまいったところでございますが、なお多くの解決すべき課題もございまして、今後ともJR西日本を初め関係機関に協議、要請してまいりたいと存じます。
 次に、議員ご提言の新型車両の導入についてでございますが、特急くろしお号については、昭和五十三年十月の紀勢本線の電化に伴い、スピードアップ等を図るため、振り子式の新型車両が投入されたところでございます。その後、平成元年七月の新大阪、京都駅乗り入れを契機としてパノラマグリーン車の導入、さらには座席の改良等も随時行われ、車両のグレードアップや乗り心地の向上が図られてまいったところでございます。
 さらに、さきにお答えさせていただきました調査検討委員会に車両関係の専門家の方にも参加をいただき、一層の高速化や快適性の向上を図るという観点から検討が行われてございます。今後、この調査結果を踏まえ、JR西日本を初め関係機関とも協議しながら対応してまいりたいと存じます。
 次に、議員ご提言の紀勢本線の線形改良についてでございますが、トンネルや橋梁の数が多く、とりわけ田辺以南では急なカーブが数多くございまして、線形改良には多額の投資を必要とする状況にございます。こうした意味から、さきにお答えさせていただきました調査検討委員会においても、高速化を図るという観点から白浜─新宮間の線形改良も含めて検討を行っているところでございます。今後、この調査結果を踏まえ、JR西日本を初め関係機関とも協議しながら対応してまいりたいと存じます。
 次に、特急料金の設定についてのご質問でございます。
 現在のくろしお号については、紀勢本線の和歌山─新宮間を最も早く走る列車として位置づけられ、運輸大臣の認可を受け、特急料金が決定されてございます。しかしながら、議員ご指摘のとおり、他の線区の特急と比較しても白浜─新宮間の表定速度は相当低くなってございまして、今後、特急にふさわしい高速化が図られるよう、JR西日本を初め関係機関とも協議しながら対応してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 土木部長山田 功君。
  〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) お答えを申し上げます。
 まず国道四十二号の改良促進でございますが、田辺市から新宮市間の道路現況については、四十二号開設当時と現在とでは道路交通事情等も変化をしており、議員ご指摘のとおり改修を必要とする箇所がございます。
 椿防災道路については、早期事業化は厳しい状況ではございますけれども、今後とも引き続き、強く国に要望してまいります。また、現在国においては平成五年度を初年度とする第十一次道路整備五箇年計画の策定中であります。総投資額の大幅な拡大が最重要課題となっております。
 このため、県においても最大限の努力をしているところでございますが、県議会におかれましてもこのことに対して絶大なご支援を賜りますよう、お願いを申し上げる次第でございます。議員ご提案の国道四十二号田辺市から新宮市間の交通隘路区間の解消についても、当該五箇年計画にぜひとも位置づけられるよう、強く国へ要望してまいりたいと存じます。
 次に大島架橋の問題でございますが、現在、島内の用地補償を行っております。橋について、串本町当局初め地元皆様のご協力を得ながら、来年度事業化に努力をしてまいります。
 今後、測量、防波堤の改修の予備設計、取りつけ道路のループ橋予備設計等を行い、事業化後は詳細設計及び本工事に着手をする予定であります。また、架橋に伴う組織や人員については、串本土木事務所の事業量等を見きわめながら検討してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 保健環境部長遠藤 明君。
  〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) がん検診についてお答えを申し上げます。
 近藤講師の論文の妥当性についてでございますが、当論文は、がん検診において見逃しや精密検査に伴う不利益が生じることを強調する一方、がんが早期発見されることによる利益を過小に評価しているもので、県としては、がん検診によりがんが早期発見され、早期に治療されることによりとうとい命が救われるという大きな利益があることから、がん検診を推進してきているところでございます。
 また、成人病検診管理指導協議会を設けて検診の制度管理を行い、検診の効果を高めるよう努力しているところでございます。
 次に、県下市町村におけるがん検診の受診率とがん死亡率との因果関係についてでございます。
 受診率が高い市町村でがん死亡率が低くなることが期待されるわけでございますが、現在までのところ両者の間に明確な相関関係は見られておりません。これは、検診の受診率がまだ低いこと、またがんの死亡率には高齢化の状況や食生活を初めとする環境因子、さらに医療など多くの要因が関係しているためと考えられます。
 第三点の、県下の医療圏域ごとにがん死亡率が異なるかということでございますが、一般的に和歌山市及びその周辺で死亡率が低く、紀南地方の死亡率が高いという状況にはございますが、これは各地域の高齢化の状況を反映しているものと考えます。
 最後に、がん誘発物質あるいは低位な生活環境に起因するがん死亡率についてでございます。
 食品その他の環境物質とがん発生との関係については、たばこや食塩、かびなどの影響が指摘をされているわけですが、現在もなお研究が続けられているところでございます。今後、研究機関における研究成果を踏まえ、本県のがん対策を推進してまいりたいと考えております。
 なお、本県の県民栄養調査の結果によりますと、がん予防に有効と考えられている緑黄色野菜や乳製品の摂取が本県ではやや少ないことから、グリーン&ホワイト運動によりこれらの積極的な摂取を県民に呼びかけているところでございます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 総務部長山中昭栄君。
  〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) がんセンターの設置の問題でございます。
 基本構想の段階において、悪性新生物に対する集学的治療や末期がん患者に対応する附属治療施設の設置について検討する、病床数は病院全体の八百床程度の範囲内とするということで、二百床を擁する組織を考えていたわけでございますが、基本計画の策定作業の中で、既設の各県立がんセンターや大学附属がんセンターなどの規模、組織、運営状況、成果といったことを種々検討した結果、運営面、特に教員、看護スタッフの確保に極めて困難な面が多いことから、今回の移転整備に際しては、放射線部門や検査、手術部門を拡充してがんに対する診断、治療の充実を図るとともに、がん治療における病床を別途確保し、集学的治療を必要とする患者への対応やがん患者に対するターミナルケア部門、主として疼痛緩和医療を行う施設の充実など、がん対策に特色ある機能を発揮し得る附属病院として整備することにいたしております。
 また、先端的教育研究やがん治療施設における集学的治療を支援することなどを目的とした教育研究施設を新設することといたしておりますので、ご理解を賜りたいと存じます。
○副議長(大江康弘君) 医科大学学長田端敏秀君。
  〔田端敏秀君、登壇〕
○医科大学学長(田端敏秀君) それでは、堀本隆男議員のご質問であります医科大学の医療機器の整備、殊にカラードプラー超音波診断装置の整備についてお答えを申し上げたいと思います。
 ご承知のように、最近の医療機器の進歩には目をみはるものがございまして、各診療科からの購入希望が非常に多くございます。したがって本学としては、病院内に備品委員会を設け、優先順位を検討し、購入することにいたしております。
 なお、本年度の高額機器としては、尿路結石症等の治療機器として体外衝撃波結石破砕装置、それに乳がん検査診断のための乳腺超音波診断装置、並びに各種外科手術に使用する手術用顕微鏡システム等の最新鋭の診療機器を購入いたしました。
 議員のご指摘をいただいている超音波診断装置でございますが、現在、学内には二十九台ございますし、そのうちカラードプラー超音波診断装置は二台設置いたしております。
 今後とも、診療機器の整備につきましては、共同利用等、効率的な整備を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(大江康弘君) 以上で、堀本隆男君の質問が終了いたしました。
○副議長(大江康弘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 33番鶴田至弘君。
  〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 お許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 通告に従いまして、まずリゾート政策とリゾート博についてお尋ねをいたします。
 数年前までは、ほとんどの人が「リゾート」という言葉は知らなかったと思うんですけれども、最近では随分と一般的になってまいりました。県の立県政策も「テクノ&リゾート」ということで、行政の中でもリゾートといえばもうにしきの御旗の感もございます。話題の種であります。しかし、現実にまた一方では、うさん臭い話もつきまとってくるというのもリゾート開発の現状であります。
 ところで、和歌山県がリゾートにふさわしい自然条件を持っているということについては万人の認めるところでもあろうかと思いますし、「リゾート立県」というスローガンも、一般的な意味合いにおきましては私も賛成であります。ただ、その具体的政策において当局といささか異なった意見を持っておるわけでございます。
 リゾート政策といいますと、二つの側面があろうかと思います。一つは、お客さんを呼び込んで圏域に金をどっさり落としてもらう、いわゆる地域振興策と言われる面。それからもう一つは、どのようにしてリゾート施設を県民に安価に提供し、余暇を有意義に使ってあすの英気を養ってもらうか、また、そのために経済的ゆとりをどういうふうに保障していくのかという面があろうかと思います。リゾート立県、リゾート政策を唱えるならば、常にこの二つの側面が追求されなければならないかと思います。
 そのような観点からいたしますと、ここ数年来のにぎにぎしいリゾートの叫びの中に、県民のリゾート要求をどう満たしていくのかという側面が余り聞かれないような気がいたします。燦黒潮リゾート構想におきましても、専ら地域振興の側面から語られております。そのような点から、地域振興政策そのものが地域の人々の間に矛盾を生んだり、自治体行政に混迷を深めさせたり、巨億の金を注ぎながら、コスモパークのごとくその展望をいまだに見出し得ない状況が生まれたりしていると思います。
 経済事情による側面もありましたが、根底には、県民のリゾート要求を勘案しながら地域振興策を講じていくという県民や地域の主体性を軽視した行政姿勢、あるいはエゴイスティックな企業の利潤追求とあえてそれを許してきた、国を含めた行政の姿勢があろうかと思います。田辺湾のリゾート策のとんざの教訓をも踏まえて、いま一度燦黒潮リゾート構想を見直してはいかがなものでしょうか。知事の答弁を求めたいと思います。
 県民のリゾート要求をどう満たしていくかという政策的、行政的措置は、この地域振興政策の措置に比べまして、その姿勢において格段のおくれがあるように思います。私は、この側面の重視があってこそ、地域活性化政策も地についたものとなり、県民の支えの中で発展すると考えるものであります。ついては、県民のリゾート要求をどう把握されているのか、またその要求にこたえるべくいかなる施策が講じられているのか、明らかにしていただきたいと思います。
 続いて、リゾート博についてお尋ねをいたします。
 鳴り物入りで宣伝され、五十億の巨費を投じて開催されるものでありますが、主人公たる県民の姿がどうも見えてまいりません。完全に官主導で、目下、県民は、何かあるらしいという気分で眺めている調子であります。一体、県民は今、リゾート博に何を期待しているでしょうか。あるいは、何がその中で得られると考えているでしょうか。そういうことが現在の段階で全く考慮されずに事が進められているのではないでしょうか。少なくとも県民への問いかけはありません。「県民総参加」がうたわれておりますが、これではいかなる参加が期待できるでしょうか。自分たちのふるさとの誇りとしてのリゾート博にならない限り、主体的な参加はあり得ません。単に一部の方々の、行政からの要請によるお手伝い的参加に終わるのではないでしょうか。あるいはまた、単なる見物人としての参加に終わるのではないでしょうか。だれのためのリゾート博か、県民にとってリゾート博とは何か、ここが不明瞭のまま事が進められている限り、「県民総参加」とはていのよいスローガンに終わるのではないかと危惧いたします。
 次に、第二次実施計画の理念のところを私なりに読ましていただいて幾つかの疑問点を感じましたので、その点について質問をさせていただきたいと思います。
 第二次実施計画の二ページにリゾート博の基本理念の項がありまして、「このリゾート博は二十一世紀のリゾートの理想像を形成していくものである」といった文言があります。さらに、「二十一世紀を踏まえたリゾートのあり方を内外へ提言していくんだ」とか、「世界リゾート博は、本当の豊かさをつくり出すための具体的な提言メディアとして大きな役割を果たさせるんだ」といったような内容の言葉もあります。
 この理念の項に、私はいささか疑問を感じるのです。二十一世紀のリゾートの理想像やそのあり方を提言するとあるわけですが、理想像とかリゾートのあり方とかは、一体どこでだれが考えているんでしょうか。そのようなことを一つの博覧会場で、ほとんどが一日だけの参加者を相手にして示すことができるものでしょうか。
 リゾート要求とは、所得、年齢、家族構成、あるいはその人々の文化的水準によって異なってまいるはずであります。私は、二十一世紀のリゾートの理想像を提言したり、これがこれからのリゾートのあり方だと示すというのは、いささか大言壮語に過ぎるのではないかと考えるわけであります。
 また、基本理念の中にある「本当の豊かさをつくり出すための提言メディアとして大きな役割を果たす」とは、一体どういうことでしょうか。本当の豊かさとは、極めて総合的なものであります。経済、労働、文化、自然、社会福祉、その他、人的・自然的環境がどのようにその人々を取り巻いているか、そういう中で考えられなければなりません。本当の豊かさとは、そのような中で探り出されるものだと思います。
 リゾートという一つの側面だけで、本当の豊かさは語れるものではないと思います。二十一世紀のリゾートの理想像、二十一世紀のリゾートのあり方、豊かさをつくり出す提言メディア等々、大上段に振りかぶった言葉が華々しく並んではおりますが、私にはいささかうさん臭く感じられてなりません。そういうことを一つの博覧会場で、わずか一日のみに参加する多くのお客さん方に提供することができるとは私には思えないからであります。
 また、「リゾートにおけるさまざまな魅力を実際に体験することのできる機会を提供する」とあります。きのうも先輩議員の質問の中に体験の問題が出てまいりましたけれども、私はこの「機会を提供する」ということについて、いささか疑問を感じています。
 そもそもリゾートとは、一定期間、非日常性の中で保養することなどというふうに考えるならば、狭い会場で──「狭い」というのは相対的な意味です。大自然に比べて相対的に狭い会場で、一日一万数千の人々が、あるいは場合によっては二万に近い人々が、あくせく駆けめぐり、パビリオンの前で長い行列をつくって、うたわれているようなリゾート体験が果たしてできるでしょうか。その限りにおいての楽しさは当然あるでしょうし、部分的な楽しみとしての体験はさまざまあるでしょうが、先ほど紹介いたしましたように、二十一世紀のリゾートの理想像、あるべき姿というような大きな構想を掲げておられる中で、このような体験が果たしてふさわしい体験と言えるでしょうか。
 私は過日、議員の皆さん方の後にくっついてハウステンボスというのを見学させていただきました。朝から一日、きょろきょろと物珍しくやかためぐりをしてまいりましたが、その一日の行動を振り返って、リゾート気分というものをほとんど味わえませんでした。もちろん、リゾート博はあのような施設よりもはるかに内容がある博覧会であろうとは思いますが、時間、空間、人数の点から、リゾートを実際に体験できるとは到底思えないのでありますけれども、私の想像力の貧困でありましょうか。
 以上、リゾートとリゾート博について県民がどのような立場に置かれているかという側面から、感ずるところを述べてみました。お答えをいただきたいと思います。
 なお、本博覧会の経済的波及効果、また、和歌山館の博覧会終了後の使用目的などについてもお示しいただければと思います。
 次に、和歌山県下で使われている社会科の教科書の問題について、ちょっと触れたいと思います。
 県下で使用されている中学校、高等学校の教科書の記述の中に、実は「日本共産党」に関して誤った記述があるように思われます。私も共産党に所属しておりますので、質問が党派的立場からされるのではないかとお気遣いになられる方もあろうかと思いますけれども、そういうことではなくて、歴史的事実の扱い方という立場で、不正確なもの、あるいは誤っているものは正すべきだと考えますので、その点を指摘して教育委員会に善処方を求めたいと思います。
 指摘したいのは、一九四〇年代、日本歴史の中で軍国主義が猛威を振るっていた時代のことでありますが、例えば「中学社会 歴史的分野」という教科書です。発行所は特に伏せておきますが、「一九四〇年には、労働組合も解散して産業報国会となり、政党もみずから解散して大政翼賛会にまとまり、民間では隣組がつくられ、政府に協力することになった。こうして国民のすべてが戦争に協力するしくみがつくられた」という記述であります。すべての政党がここで解散したことになっています。また「高等学校 新日本史」では、「一九四〇(昭和十五)年第二次近衛内閣の新体制運動の一環として、すべての政党が解党して大政翼賛会が設立され、労働組合や労働団体も解体して大日本産業報国会に結集された。また、隣組がつくられ、政府の方針を忠実に伝達し、国民を戦争に協力させる役割をはたした」と、こういう記述があります。
 この点について、歴史的事実との間に食い違いがあるように思います。記述は、今紹介いたしましたように、一九四〇年、政府の指導によってすべての政党が解散し、大政翼賛会に合流して政府の戦争政策に協力したことになっておりますけれども、日本共産党は解散していないと思います。この点いかがでしょうか。
 当時、侵略戦争反対を叫んでいた日本共産党は、それゆえに治安維持法によって猛烈な弾圧を受けておりました。それは言語に絶した拷問を伴い、終身刑という生命刑を伴う刑によって弾圧されておったわけであります。共産党員は、そのあらしにさらされていたにもかかわらず、反戦・侵略戦争反対を叫び続け、そしてそれがゆえに獄につながれたのであります。また、党を解散しなかったがゆえに、弾圧の前に命をさらさなければならなかったのであります。著名な学者・野呂栄太郎、市川正一、小説家の小林多喜二等が日本共産党員として戦争反対を叫んだがゆえに虐殺され、あるいは獄死したことは、多くの方々のご承知のことと思います。
 以上の点を語るだけでも、すべての政党が解党して大政翼賛会に合流し、戦争政策に協力したというのは誤りであろうかと思います。このことは、歴史的には確定された事実として社会的に承認されていることではありますが、例えばここに、自由民主党の方々はとうの前に承知のことと思いますけれども、昭和五十四年八月に発行された「日本の政党」という自由民主党の皆さん方の研修双書の一のコピーがございます。
 その五十三ページには、「社会党を含めて他の政党が何らかの形で戦争に協力したのに対し、ひとり共産党は終始一貫戦争に反対してきた。従って共産党は他党にない道徳的権威を持っていた。このため共産党に心をよせる大衆も少なくはなく、また知識人の間にも共産党は大いにもてはやされた」という記述がございます。以下またぼろくそに書かれておるんですけれども、戦前のこの部分についてはこのようにきちっと評価をされているわけでございます。このような事実からしても教科書の誤りは歴然としたものであると思うのですが、いかがお考えでしょうか。
 誤解を避けるためにまた一言申し添えますが、私は日本共産党の反戦平和の戦いを教科書に特別にこうふうに書けと言っているわけではないのでございまして、その点ご理解いただきたいと思います。教育委員会として善処されるようお願いする次第です。
 ついでに申し上げます。中学校の公民の教科書の中には、日本共産党の創立が一九四五年(昭和二十年)と読み取れるものもあります。一九二二年と書かれたものもあります。正しくは一九二二年であります。これも少し大きな国語辞典、例えば岩波書店の「広辞苑」などでも、「日本共産党」というところを引いていただければ一九二二年創立というふうに記載され、人口にも膾炙されたことであります。
 どうして事実と著述にこのような乖離が生じたのか私はわかりませんが、しかるべき訂正の措置が講じられるべきではないかと思います。いかがでございましょうか、教育長のご見解を示していただきたいと思います。
 それから、今、教科書の内容の点について申し上げたのでございますが、常日ごろお願いしたいと思ってまいりました、教科書の採択に至る過程に父母や教員の声を反映させる積極的な措置をとっていただけないかという質問でございます。
 現在、県下の教科書は八つのブロックに分かれておりまして、それぞれの単位で選択されているようですが、かつては学校の主体性において採択されていたようであります。そこでは、当然、教員の教科書選択に対する主体的な研究努力というものが求められ、教師みずから、教師としての精励があったろうと思われます。教科書の無償制と引きかえに教科書検定と現行選択制度が導入されたわけでありますが、ここで教師は教科書選択と基本的に隔離されてしまいました。それは、学校教育に最も責任を持つ教師たちがみずから使う教育の教材を選択する場をなくしたということであります。
 ユネスコの「教員の地位に関する勧告」の一節に、次のような文言がございます。「教員は生徒に最も適した教材および方法を判断するための格別な資格を認められたものであるから(中略)教科書の選択、教育方法の適用などについて不可欠な役割を与えられるべきである」とあります。まさに至言であろうかと思われます。
 ついては、現在、教科書の採択に当たって教師の意見はどのように反映されているのか、どのようなシステムになっているのか、明らかにしていただきたいと思います。
 また、この際、父母の教科書採択に当たっての役割はどのように考えられ、その声はどのように吸収されるようになっているのか、教科書展示等の具体的措置を含めてお示しいただきたいと思います。
 また、教科書を選定する委員会等の方々のお名前も公開されることがより民主的な選択につながるのではなかろうかと思いますが、いかがでございましょうか。
 次に、高等学校の四十人学級についてお尋ねをいたします。
 小・中学校に次いで高校四十人学級が求められ、議会にも請願が上がっているところであります。和歌山県教委としては、本年度から八校について四十人学級を実施されまして、その先見性等については大いに評価したいと思いますが、さらに来春からすべての高校が四十人学級になるように、ぜひ本県として特別の努力をいただきたいと思うのですが、考え方をお示しいただきたいと思います。
 次に、古墳とゴルフ場に関係して申し上げたいと思います。
 和歌山市東部に所在する古墳群を含む地に、ゴルフ場建設の話が進んでおります。貴重な文化財保存のために関係当局は一肌脱いでほしいと願って質問をする次第でございます。
 昨年、業者から和歌山市に届けられ、また業者自身が関係する地元に説明会を開いたところによりますと、和歌山市の東部に位置する寺内、山東、吉礼地区にまたがる丘陵に、東西一・五キロ、南西一・〇キロメートル、約百八十万平方メートルをゴルフ場として開発したいとのことであります。
 和歌山市の方々なら十分ご承知のことでしょうが、この地は国の特別史跡、和歌山県の史跡公園として建設された「紀伊風土記の丘」の南ろくに当たります。岩橋千塚の古墳群は、研究者によりますと、五世紀後半から六世紀、紀の川平野一帯を支配した紀氏あるいは大伴氏の支配者層の墓地とされており、その数約七百と言われております。出土遺物は大陸との関係を示唆するものも多く、この地域を治めた首長は大和政権とかかわる中で大陸との関係をも有して勢力を強め、政治基盤を築いたものと推定されるなど、極めて貴重な歴史的遺跡であるとされております。
 興味深いのは、終戦直後に物資難による貧困対策から本古墳群にも開発の話が出たようですが、住民の間から古墳の保存運動が起こり、開発が阻止されたという歴史があるようであります。戦後の貧困の中にあっても歴史を保存しようとした地区の先人の気概をほうふつさせる話でありますが、その後、行政により、史跡古墳などとしてその一部が保存されたわけであります。
 ゴルフ場の対象になっているのは、まさにそこに隣接する一角であります。開発予定地は古墳時代に築かれた百基余りの古墳群が確認されており、岩橋千塚七百基のうちの重要な部分を占めております。聞くところによりますと、対象地区内の古墳群の中には、直径約三十メートル、高さ四メートルもある大型円墳や全長八十六メートル、高さ六メートルに及ぶ横穴式石室を持つ「天王塚」と称せられている前方後円墳、さらには高句麗式の積み石塚古墳数基や須恵器の窯跡など、考古学上極めて重要な遺跡が数多く存在しているそうであります。しかも、この百数十基の古墳の中で公式に調査がなされたものはわずか六基しかなく、調査が進めば新たな貴重な遺跡が発見される可能性もあるようであります。
 かつてこの地を調査された同志社大学の森浩一教授は、「岩橋千塚は日本の史跡保存のシンボル的存在である。史跡指定の部分だけでなく、群集形態を知る上でも古墳群全体が貴重。県市は全面的に保存に協力すべきだ」というようなお話をされていたそうであります。また、この古墳群を知る方々のほとんどすべての意見は、ぜひ保存してくれとの声であります。
 私は、実は考古学の知識は全くございません。ただ、文化的遺産の保存について当然そうあるべきだと考えております。ついては、県教育委員会にあっては、この古墳群の歴史的価値をいかに認識されているか、考えをお示しいただき、もし重要な歴史的遺跡と考えるならば、ゴルフ場開発を再検討してもらうべく積極的にプレーされてはいかがでしょうか。
 さらに、業者、地権者等の要望も勘案いたしまして、当該地を買収するなどして紀伊風土記の丘を拡張し、和歌山県の誇るべき一大歴史公園として整備されてはいかがでしょうか。図書館、美術館、博物館と並んで大自然の中に建設される紀の国の歴史館として発展させれば県民の喜びもまたひとしおであろうかと思いますが、いかがでございましょうか。
 以上で、第一問を終わります。
○副議長(大江康弘君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
 田辺湾の総合リゾート開発計画でございますけれども、これにつきましては、けさも申し上げましたとおり、地元主導により今後とも長期的な視点に立って推進されていくものと考えておるわけでございまして、県としましても、地元の意向を尊重しながら良質なリゾート地の整備促進に努めてまいる所存でございます。
 なお、燦黒潮リゾート構想につきましては、社会経済情勢の変動等もございますが、長期的な視点に立って着実に推進してまいりたいと考えてございます。
 他の問題は、部長から答弁いたします。
○副議長(大江康弘君) 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 県民のためのリゾート政策についてのご質問にお答えをいたします。
 リゾート需要につきましては、「県政に関する世論調査」結果によりますと、リゾート開発を進めるべきだと答えた人は約六割を占めてございます。また、「レジャー白書」や「観光白書」等を通じリゾート需要の把握に努めてございまして、その需要を利用者の立場から見てみますと、非日常的な高級なリゾート、家族単位で楽しめるリゾート、安価な利用料金で長期にわたって滞在できるリゾートなど、多様なものがあると認識してございます。一方、地域振興の立場から、リゾート産業の立地に伴う雇用機会の増大、地元消費の拡大など、地域の活性化に対する期待も大きいものがございます。
 次に、リゾート需要に対応した施策につきましては、燦黒潮リゾート構想の推進を通じまして、家族単位はもとより、広く若者から高齢者、さらには外国の方々等のさまざまな需要にも対応できるよう、多様なリゾート施設の整備を進めているところでございます。また、来訪者を初め地域に暮らす人々にも豊かな自然のもとで多様な余暇活動を楽しんでいただけるスポーツ・レクリエーション施設、文化施設、温泉保養施設などを整備し、快適な生活環境づくりを推進しているところでございます。
 さらに、このリゾート整備を補完し、多岐にわたるリゾート需要に対応するため、県内陸部を対象としまして、その地域の特色ある資源を積極的に活用することにより、地域に根差した個性あるリゾート地の形成に向け、地元の市町村とともに取り組んでいるところでございます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 知事公室長市川龍雄君。
  〔市川龍雄君、登壇〕
○知事公室長(市川龍雄君) リゾート博についてお答えいたします。
 まず、このリゾート博に県民の方々が何を期待し、何を得ることができるかについてでございますが、この博覧会では、県下各地域の特性や豊かな自然、文化、歴史資源を生かした展開をすることによって、本県のイメージアップを図り、地域活性化につなげてまいりますとともに、県民の方々にこの博覧会を主催する側の立場でできるだけ多く参加する機会を持っていただくことにより、連帯感や郷土愛の醸成が図られるなど、県民の期待に十分こたえられるものと思ってございます。
  〔副議長退席、議長着席〕
 また、どのような形で県民の総参加を求めていくのかという点でございますが、この博覧会を成功させるためには、行政と民間団体などが一体となって県民総参加のもとに準備、開催、運営に万全を期す必要がございます。そのためには、県といたしましては「緑と花づくり運動」を中心とした県民運動を積極的に展開するために今回もまた予算をお願いしてございますし、また、博覧会場内でのボランティア活動にも積極的に参加をお願いしたいと考えてございます。
 こうした県民総参加の展開を図ることによって県民の連帯感や郷土愛の醸成が図られ、この博覧会が、すぐれた自然環境と歴史にはぐくまれた文化資源を大切にする、リゾート基地としてふさわしい町づくりを目指す一つの起爆剤ともなるものと考えてございます。
 次に、基本理念や県民参加の点でございます。  議員ご指摘の第二次実施計画の基本理念でも触れておりますように、本県は有数の自然環境を初めとする、リゾートをつくり上げる上で貴重な資源を持ってございます。また、世界リゾート博は主会場がマリーナシティであり、会場全体がリゾート空間であるという特性を持ってございます。世界リゾート博は、リゾート立県を目指す本県にとりましても、こうした特性を生かし、物と心のバランスのとれたリゾートはいかにあるべきかを内外に広く考えていただく端緒になるものと考えてございます。
 そうした意味におきまして、テーマ館として現在計画を進めてございますリゾートロードは、来場された方々がリゾートを考える場として位置づけ、さまざまなリゾートに関する情報提供を行っていくものでございます。また、和歌山館を初めとする各パビリオンにつきましても、テーマ性を重視し、いろいろな視点から本当の豊かさをつくり出すリゾートを具体的に考えていただけるものにしたいと考えてございます。
 県民の皆様の参加につきましても、児童から高齢者の方々まで幅広く参加をいただき、リゾートについて考えていただける場を提供する博覧会としたいと存じます。なお、来年七月から県内各地で開催するリレーイベントにつきましても、各開催市町村や地域住民の方々と一体となったイベントとしてまいりたいと考えているところでございます。
 また、リゾート博の会場は混雑しないかということでございますが、会場面積はマリーナ等の海上部分を含め約四十一ヘクタールと、他の博覧会に比べましてゆとりのある会場となってございますが、博覧会という性格上、限られた面積の中でパビリオンなどの会場計画を立て、さまざまな展開を図っていく必要がございます。したがいまして、ピーク時にはある程度の混雑はやむを得ないものと考えてございます。会場内の施設やイベントなど、あらゆるものを通して来場者にリゾートを体験してもらえるよう計画を進めてまいりたいと考えてございます。
 また、世界リゾート博開催の経済波及効果についてでございますが、入場者数百万人、会場建設費五十億円とした場合の推定結果がこの九月に和歌山社会経済研究所から発表されてございます。それによりますと、博覧会会場建設と入場者の消費支出による総生産誘発効果は総投資額の一・七八倍、これに伴う雇用誘発効果は三千四百人余と推定されてございます。
 なお、今後、目標入場者数の見直し、また和歌山館を初めとする大規模施設、関連公共投資等によりまして、一層の経済波及効果が期待できるものと考えてございます。
 最後に、博覧会終了後、和歌山館をどのように使用していくかについてでございますが、本県の自然と文化、観光のすばらしさを県内外に広くアピールしていくことを目的にしたPRコーナーをメーンに据え、一部ミュージアム機能を取り入れた、だれもが気軽に利用できる施設を考えてございます。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題、三点についてお答えいたします。
 教科書につきましては、ご承知のとおり、民間で著作・編集されたものが文部大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会の答申に基づいて検定を受け、作成される制度になってございます。
 検定は、教科用図書検定基準にのっとって、各教科の内容等が教育基本法や学校教育法に定められている教育の目標に基づき適切であるかどうか、学習指導要領に準拠し児童生徒の心身の発達段階に適応しているかどうか等について行われ、厳正に審査がなされているものであります。
 したがいまして、ご質問の社会科の教科書につきましても、その内容について十分な検討の過程を経て、文部省の責任において検定がなされ、刊行されたものを各学校において使用していると判断しておりますので、ご理解願います。
 次に教科書の採択についてでございますが、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律に基づき、各市町村教育委員会が県教育委員会の指導助言や各地域ごとに設置される採択地区協議会の調査研究及び審議事項を踏まえ、決定することになってございます。
 県教育委員会としましては、文部省の検定合格済みの見本本の記述内容について、県の教科用図書選定審議会における検討を踏まえて参考資料を作成して各市町村教育委員会に配付するとともに、公正な採択等について指導助言を行っているところでございます。
 また、教科書の内容を保護者や教員等に周知するため、国の定める基準の期間をさらに五日間延長して十五日間の展示会を県下八地域で開催するとともに、会場でアンケートをとるようにしております。さらに、保護者の意見や考えなどを反映するため、保護者の代表を教科用図書選定審議会の委員とするなどの改善を行ってございます。
 委員の氏名の公表につきましては、教科書の採択に及ぼす影響との関連も含めて、現在、同審議会に検討をお願いしているところであります。今後とも、教科用図書選定審議会の答申を踏まえながら、教科書の採択が公正かつ円滑に実施できるよう市町村教育委員会の指導に努めてまいる所存でございます。
 次に学級定員についてでございますが、学級定員を四十人とすることは、個性に応じたきめ細かい教育を実践し、教育の効果を高めることにつながるものと思っております。
 平成三年六月の県議会において「学級編制及び教職員定数の改善に関する意見書」が議決され、国に提出されました。こうしたことを踏まえ、平成四年度は八校の高等学校について第一学年の学級定員を四十人としたところであります。
 今後の実施に当たっては、国の学級編制基準の改善措置の動向を踏まえる必要があり、現在、国の動向の掌握に努めているところであります。今後とも、全国教育委員長・教育長協議会等を通じ、実現に向けて強く要望を続けてまいる所存であります。 次に古墳群の問題ですが、古墳群等の埋蔵文化財は、他の文化財とともに、先人の知恵を学び、地域の成り立ちを知る上で大切であります。また、私たちの生活にゆとりと潤いを与え、あすの新しい社会を創造していく力となり、その保存について努力しているところであります。
 地域開発に伴う埋蔵文化財の取り扱いについては、県教育委員会といたしましては、市町村教育委員会が事業者と事前に文化財の保存協議をする中で、分布調査等による確認調査を実施し、埋蔵文化財を安易に破壊し後世に憂いを残すことのないよう、これらを開発計画から除外し、埋蔵文化財の保護と開発との調和を図るよう指導してきているところであります。
 ご質問の紀伊風土記の丘に隣接する丘陵南斜面につきましては、今回和歌山市教育委員会が行った分布調査からも、五世紀から六世紀ごろに大型前方後円墳などを密集して残した日前宮周辺に勢力を持っていた紀氏一族の古墳群、いわゆる国の特別史跡となってございます岩橋千塚古墳群とは若干様相を異にしていますが、正しい歴史的価値を判断するにはさらに詳細な発掘調査を実施しなければならないと考えております。
 県教育委員会といたしましては、こうした観点に立って、今回の開発計画につきましても、現状保存を基本としながら、詳細な発掘調査の結果、貴重な古墳群などが確認された場合は、その調査結果を検討し、保存範囲を設定の上、国、県、あるいは市の指定とするほか、記録保存、模型の作製など、保存方策を講じるよう和歌山市教育委員会を指導してまいりたいと存じます。
 なお、この開発計画地を史跡公園紀伊風土記の丘に編入する問題につきましては、今後研究課題としてまいりたいと思っております。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 33番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 再質問をさしていただきます。
 岩橋千塚の問題につきましては、現状保存を基本としながら今後も指導していくというその部門にひとつ力点を置いて評価さしていただきたいと思いますが、貴重な文化財ですから、ぜひ守っていただくようにお願いをしておきたいと思います。
 教科書選択の問題につきましては、今後の課題として考えていただきたいことがたくさんあるわけです。実際、教科書を使うのは教師です。その教師が直接その選択に携われないという法的なシステムになってしまっているんです。今後、その改善方の努力を、私どももしたいと思いますので、ひとつ教育行政の担当者としても願いたいと思います。
 また、教科書の展示等につきましても、父母は全く知らされていないんです。見る場所もなく、意見を申し述べる場所もないというような状態になっている点については、ぜひ改善をしていただきたいと思います。
 選考に当たられる審議委員等の方々の氏名公表も、ぜひ考えていただきたいと思います。
 それから、教科書の記述の問題について再質問をいたしたいと思います。
 私は、社会の教科書にかくかくしかじかのことが書かれている、これは間違いではないかということを、若干の歴史的事実を加えながらお尋ねいたしたわけです。そうしますと、教育長は、ちゃんと検定もしているし指導要領にも沿っている、要するに法律と手続はちゃんと踏んでおる、文部省の責任において検定がなされ刊行されているものだと、こういうふうな答弁でした。だから正しいんだということは言っていませんけれども、言外にそうなっているんです。
 これは非常におかしな話だと思うんです。子供たちから「先生、この教科書に書いていることはちょっとおかしいのと違いますか」と尋ねられたら、教育長、どう答えますか。「文部省がかくかくしかじかの法律に基づいて検定をし、こういうふうな叙述になっておるのであります」とお答えになりますか。そうはならんと思うんです。教科書に書かれていることはなぜ正しいのかということを説明されると思うんです。そして、間違いであれば、びっくりして、この訂正方をいろんな形で講じられると思うんです。
 そういうようなことが本来のあり方であります。私も一生徒と同じような形で、この教科書の問題はこうなっているんだ、これはおかしいじゃないかというふうにお尋ねしているにもかかわらず、随分と見当違いな形のところへ逃げ込まれてしまいました。
 私はこれは、ただ単に逃げただけだというよりも、その基準を文部省の検定あるいは法律的手続といったところに求められるというのは、教育行政としてはまことに残念なことだと思うんです。あくまでも事実がどうなのかというところから出発していただかないと、教育というのはずっと曲げられていくんじゃないかと思うんです。
 教科書の間違いというのは、過去にも幾度もあるんです。年に一回ぐらい小さく新聞に載っているし、訂正されるという事実もあるんです。そういうこともあるのを承知の上でこういうふうなご答弁がされるというのは、全く残念でなりません。
 歴史的な問題ですから即断できないという面もあるかもわかりません。私は、こんな答えを期待していたんです。一つは、鶴田の言うとおりだと。あるいは、それは違うぞと。それとも、指摘された点はこれからもう一回研究してみると。あんたが言うているのが本当か教科書が本当か、どっちかわからないから研究してみると。このいずれかのような答弁が出てくるんだろうと期待しておったんです。ところが、この基準は文部省にあるというふうなことになってしまっているんです。非常に残念です。これは、教育行政を担当する長として十分考えていただかなければならないのではないかと思います。
 私は、私の主張を教育長や教育委員会に押しつけるつもりはありません。ありませんけれども、真実に対しては忠実であってほしいということについては押しつけたいと思うんです。そういう態度をぜひ堅持していただきたいと思うわけです。
 参考までに申し上げますと、同じような質問が函館市の市会であったそうなんです。そうすると、私と同じような質問をした方に教育長が「歴史的な事実としては、記述の方がちょっとおかしい」という答弁をして、早速教科書会社へ「これはちょっとおかしいのと違うか」という申し入れをして、教科書会社の方は「これは重要な問題だから一度真剣に検討してみます」と。そういうことがあったという報道がありました。これが普通なんですよ。
 非常に残念ですので、ひとつ再度、私が今申し上げたような立場からご理解いただいて、最初の質問に対する答弁をいま一度いただきたいと思います。
 それからリゾート政策につきまして、またお尋ねをいたしたいと思います。私は、地域開発政策にちょっとウエートが置かれ過ぎて、「県民のリゾート」という点が十分考慮されないまま、だあっと進んでいるんじゃないかという危惧を抱いているわけなんです。実際問題として、「リゾート、リゾート」と言いながら、和歌山県の人々が安価な費用で数日間ゆっくりできるなんていう場所も和歌山県内になければ、その機会もないんです。
 私は、いつも思うんです。県庁の職員の皆さん方がどれだけのリゾートを楽しまれておるだろうかと。これは一つの平均として考えられるんじゃないかと思うんです。私もちょこちょこ聞いてみるんですが、家族、奥さんと子供さん二人を連れて一週間ゆっくりしてきたよというようなことは、まずありませんね。それは、単にリゾート施設がないからというだけじゃなくて、懐の問題もありますし、いろんな要素があると思うんです。しかし、そういうふうにゆっくりしたいかと聞くと、みんなゆっくりしたいと言うんです。ところが、そんなこと言われても、銭がないやないか、暇がないやないかということになるんですよ。
 何とかそういう要望にこたえられるような施策が一貫して追求されないかと、私はそれを願うんです。そういうような行政の中にあっては、恐らく多くの県民の方々も、リゾート政策とはこういうことなのか、燦黒潮リゾート構想とはこういうことなのかと、十分理解していただけると思うんです。
 冒頭の質問でも申し上げましたように、和歌山県がリゾート立県という点につきましては、私も賛成です。この豊かな自然をどう生かしていくか、そういうことは本当に考えられなければならないと思います。しかし、一部の業者が旗を振って行政がそれに追従していくというようなことでは、本当に県民の理解が得られ協力が得られるというような状態にはならないのではないかと思うんです。そういう観点が貫かれたリゾート立県でなければならんと私は思っているわけです。
 もう一つ、リゾート博の問題について申し上げますと、私は、この理念の問題で、二十一世紀のリゾートのあり方を提言するとか理想像を形成するという大言に対して、いろいろと難しいことを言いました。これは、聞き方によってはこの文言にいちゃもんをつけているのと違うかというふうにとられるかもわからない。それでもあえて言ったのは、こういう問題が県民のリゾート感覚と全くかけ離れているからなんです。二十一世紀のリゾートのあり方を示してほしいとか理想像を見たいとか、そんなことを思っている人って本当に少ないと思うんです。ただ、何ぞあるらしいな、おもしろいらしいぞと、こういうような状況の中では、リゾート博が県民総参加でやられるなんて絶対考えられないと思うんです。その理念と県民の要求とに大きな隔たりがある博覧会になりつつあるのではないかということなんです。
 そういうことになると、博覧会が終わった後、和歌山は有名になるでしょうし、外国の方々も見学や遊びに来られて満足の意を表して帰られるかもわかりませんが、県民の胸に何が残るか。そこが問題だと思うんです。県民の胸の中に、私たちのふるさとが誇れるものとして残るかどうか。今の段階から、県民のためのリゾートをどうつくるかという運動の上に立ってのリゾート博ということになれば展望が出てくると思うんですが、そうでないと、それが終わった後、ただ特定企業があのマリーナシティで営業するための前夜祭的なリゾート博になってしまうのではないかと、そういうふうに懸念をするわけです。非常に大きな事業です。私は、現段階でそのリゾート博が県民の気持ちとかけ離れたところで進行しているということに大きな疑問を感じております。
 二問目のリゾート関係の問題につきましては、答弁は要りません。私の意見です。ぜひそういう点をお考えいただきたいと思います。
 よろしゅうお願いをいたします。終わります。
○議長(馬頭哲弥君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) お答えいたします。
 さきの答弁でも申し上げましたように、教科書検定を経てこれに合格したものを使用しているわけでありまして、多くの歴史教育あるいは歴史専門家によって生徒の発達段階に対応して執筆がなされ、さらに厳正な検定を経て刊行された教科書につきましては、その記述内容に信頼を置いていくべきであるという私の基本的立場であります。
 以上でございます。
○議長(馬頭哲弥君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「もういいです。また委員会でやります」と呼ぶ者あり〕
○議長(馬頭哲弥君) 以上で、鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(馬頭哲弥君) この際、お諮りいたします。議案第百三十四号の人事案件は、任期の関係から、本日議決いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(馬頭哲弥君) ご異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
○議長(馬頭哲弥君) お諮りいたします。本案については、委員会付託等を省略し、これより直ちに採決いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(馬頭哲弥君) ご異議なしと認めます。よって、本案は委員会の付託等を省略し、これより直ちに採決することに決定いたしました。
○議長(馬頭哲弥君) それでは、採決に入ります。
 議案第百三十四号和歌山県監査委員の選任につき同意を求めるについてを採決いたします。
 この採決は、無記名投票をもって行います。
 議場を閉鎖いたします。
  〔議場閉鎖〕
○議長(馬頭哲弥君) ただいまの出席議員数は、議長を除き三十九人であります。
 投票用紙を配付いたします。
  〔投票用紙配付〕
○議長(馬頭哲弥君) 配付漏れはありませんか。──配付漏れなしと認めます。
 投票箱を改めます。
  〔投票箱点検〕
○議長(馬頭哲弥君) 異常なしと認めます。
 念のため申し上げます。投票は無記名であります。投票用紙に、本県監査委員に玉井一郎君を選任することについて同意することに賛成の諸君は「賛成」と、反対の諸君は「反対」と記載の上、点呼に応じて順次投票を願います。
 点呼いたします。
  〔氏名点呼〕
  〔各員投票〕
○議長(馬頭哲弥君) 投票漏れはありませんか。──投票漏れなしと認めます。
 投票を終了いたします。
 議場の閉鎖を解きます。
  〔議場開鎖〕
○議長(馬頭哲弥君) お諮りいたします。立会人に、12番井出益弘君、21番平越孝哉君、33番鶴田至弘君、43番浜本収君の四君を指名いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(馬頭哲弥君) ご異議なしと認めます。よって、立会人に以上の四君を指名いたします。
 なお、この際、白票を無効といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(馬頭哲弥君) ご異議なしと認めます。よって、白票は無効とすることに決定いたしました。
 これより開票を行います。
 立会人の立ち会いをお願いいたします。
  〔投票点検〕
○議長(馬頭哲弥君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数 三十九票
 うち有効投票 三十九票
 無効投票 〇票
 有効投票中
 賛  成 三十七票
 反  対 二票
 以上のとおり、賛成多数であります。よって、議案第百三十四号和歌山県監査委員に玉井一郎君を選任するにつき同意を求めるの件は、これに同意することに決定いたしました。
○議長(馬頭哲弥君) 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○議長(馬頭哲弥君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後三時十一分散会

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