平成4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(下川俊樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時三分再開
○副議長(大江康弘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(大江康弘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 3番下川俊樹君。
  〔下川俊樹君、登壇〕(拍手)
○下川俊樹君 お許しを得まして、質問を行います。
 県の懸命な努力により、和歌山は大きな未来と明るい話題が聞かれるようになってまいりました。私も、県議会の一員として大変うれしく、ありがたく、まずもって仮谷県政の努力に対し評価を申し上げたいと存じます。しかしながら、このことをいま一歩進めて地域的な視点で分析いたしますとき、紀南地域選出の議員として指摘しなければならない問題が山積していると申し上げざるを得ないのでございます。
 私の立場からの問題点は、紀北地域には議論すべき施策があり、紀南地域にはその対象となる施策が少ないということでございます。仮谷知事も、さきの知事選挙当選直後の記者会見でこのことに言及され、「紀南の振興が今後の重要な課題である」とコメントしておられました。
 紀南地域の振興を考える場合、いたずらに紀北地域と紀南地域とか、県政の北高南低といったレベルでこの問題をとらえるのではなく、紀南地域が残されてきた現在の姿、現状というものを直視し、今の紀南地域が今日の時代傾向的に、あるいは国土的視点から何が期待されているのか、何をなし得るのかといった視点からの検討が必要であると思います。同時にまた、このことが長い目で見て必ずや紀南の真の豊かさにつながるものであると確信いたす次第でございます。
 今さら申し上げるまでもなく、紀南地域──ここでは熊野地域と読みかえて話を進めてまいりますが、熊野地域にはすぐれた歴史文化と豊かな自然環境が温存されてございます。高度成長時代にあっては、この熊野の資源は隠れた存在にしかすぎませんでした。今や、我が国は生活大国という新たな国づくりの段階に入る中で、世界的に環境という問題がクローズアップされてまいりました。環境、生活大国という中で、ようやく熊野にも風が吹き、日が当たり、そして出番がめぐってきたと考えるべきではないでしょうか。
 こうした認識のもとに、私は本日、次の三点について質問をいたしたいと存じます。第一点は、熊野地域全体の将来ビジョンの策定であり、第二点は、この各論としての熊野学研究センターについてであり、第三点は、再生の新熊野に最もふさしわいテーマである浮島の森の復活についてでございます。
 まず最初に、熊野の将来ビジョンについてお尋ねをいたします。
 熊野は、我が国では出雲と並んで日本のふるさとであり、我々の心のふるさととも言うべき歴史に彩られた貴重な地であります。我が国誕生の第一歩とも言うべき神武東征が語り継がれ、遠く秦の国からは皇帝の命を帯びて徐福が不老長寿を求めた地であります。華やかな熊野もうでが繰り広げられる一方、西方浄土を求めた修行僧の悲しい歴史もあります。小栗判官が病をいやし、平維盛滅亡の言い伝えは歴史にロマンを添えております。さらに熊野の魅力を続けるならば、熊野はこれらの歴史をタイムカプセルのごとく、今にそのままの姿で私たちに引き継いでくれていることであります。このことが、熊野を今日、より魅力あるものにしている大きな理由であります。長い歴史と文化、これが熊野の魅力です。
 大台ケ原に降る雨は、紀伊半島のうっそうたる森林を守り、渓谷に清流を注いでおります。熊野灘を流れる黒潮は、漁業の恵みとともに、雄大な海岸美と広大な海洋空間を見せてくれます。随所に我が国を代表する温泉が湧出し、彩りと風情を提供してくれます。そして、これらが織りなす環境は、熊野の温かい人情と素朴な風土を育ててくれます。豊かな自然環境は、熊野の大きな資源です。
 しかしながら一方において、熊野を大辺路と中辺路に囲まれた地域と定義いたしますと、熊野は約十四万六千人が住み、働く生活の場でもあります。観光、農林漁業、商業を中心とする人々の生活があります。この生活を守り育てていくことが熊野の大きな課題であります。地域の人口構成を見ると若者の比率が少なく、若者をどう定着させるか、若者が魅力を感じる定住条件をつくり上げていかなければなりません。定住条件の整備が熊野の大きな課題です。
 熊野を取り巻く交通条件を見ると、近畿自動車道は日高川を渡り、内陸部では水上栃谷線、宇井苔峠のトンネル工事が完成間近でございます。白浜空港の拡張も、おおむね順調に推移をしていると聞いてございます。新宮市内のヘリポートも、関係者のご努力により整備が順調でございます。また、本年三月からJR東海のワイドビュー南紀号により名古屋方面のスピードアップが図られるとともに、車両の快適性が向上してきてございます。熊野の悲願とも言うべき交通体系の整備が急速に進んでまいりました。知事が提唱されている県内三時間交通の完成も間近と申せましょう。熊野への時間距離は短縮されつつある、これが熊野の現状でございます。
 さらに、この熊野に数多くの人々を引きつけるためにはさらなる鉄道の活性化が必要であり、JR西日本においても新型車両を導入し、よりよい交通体系を確立する必要があると思いますが、県当局の取り組みについてお伺いをいたします。
 熊野の資源、熊野への期待、熊野の悩み、熊野の現状を大ざっぱに整理してまいりました。
 最後に、熊野の整備は県民や地元の力のみでは無理があろうかと思います。国の力、民間の力を導入しながら、長期の視点に立って整備を進める必要があろうかと思います。私は、そのためにも、皆さんが熊野に注目をしていただいている今、熊野の長期にわたるビジョンを策定することが必要であろうと考えます。そして、そのことが外部の力を熊野に結集する原動力にもなるものと考える次第でございます。
 「熊野は、国民の保養基地である」との新全国総合開発計画の一節が、今も思い出されます。生活大国を標榜するに至った我が国の経済的、社会的、文化的等の状況を踏まえ、さらには本県の紀南地域に対する長期的な基本認識をあわせ、今後の県当局の熊野地域に対する基本的な取り組みをお伺いするものであります。
 次に、熊野学研究センターについてお伺いいたします。
 ことしの二月、新宮の御燈祭の日に那智勝浦町において開催された第一回「熊野を語るフォーラム」に参加し、また八月二十七日、和歌山市において第二回「熊野を語るフォーラム」と、今注目されている熊野について大変有意義なものが開催されました。
 熊野をテーマとした熊野学研究センター構想は、紀南の人々にとっても、熊野の復権、熊野から全国へ、世界へといった熱い期待をかけるものであり、紀南活性化の大きな柱であると考えます。二月議会において中村利男議員もご所見を述べられてございますが、本構想の具体化についてお伺いをいたします。
 まず、施設の概要についてでございます。
 施設については、本県のみならず、日本全国、いや地球全体を考えたものとしたらどうか、お伺いをいたします。
 学術研究センターはもとより、物的にも、精神的にも熊野が理解できる博物館を、さらに熊野といえば精神的にも肉体的にも「行」の熊野ですから、児童生徒はもとより老弱男女まで楽しめる体験学習の場をつくられてはいかがか、お伺いをいたします。
 次に、施設を支え、運営していく人材についてでございます。
 熊野学とは、これからの学術研究であります。黒潮に乗ってきた文化、徐福のように大陸から来た文化等、熊野は多種多様な文化の到着地であり、ご存じのとおり、歴史文化は大変豊富です。歴史文化の核づくりは人づくりと考えますが、その人づくりとして広く学術研究を初めとする人材をどのように集められ、どのように育てられるのか、お伺いをいたします。
 続いて、本構想を核とした場合、その外枠としての地域とのかかわりについて提案いたします。
 紀南の人々の熱い期待をセンター設置への醸成とし、さらに参加意識を高めるため、市町村においては歴史文化の見直し、掘り起こしを行い、市町村ごとに熊野のテーマを持つイベントを開催する。例えば、熊野を演出するシンボリックな祭りを興し、それらのネットワーク化を図り、季節ごとに熊野を訪れ、熊野に溶け込んでいただく。また、全国的には三千三百社あると言われる熊野神社を巻き込んだ全国的なイベント──例えば、熊野といえば火、燃え盛る火のイメージがあります。そこで、三千三百社から熊野の火を送り届けてもらい、また熊野三山から三千三百社へ熊野の火を送り出し、各地との交流を図る。さらに国際的には、徐福が不老不死の薬を求めて渡来したとのことから、中国との交流はもとより、世界各地から不老長寿と言われる薬草を集め、不老長寿の里づくりを行うことを提案いたします。
 次に、浮島の森についてお伺いをいたします。
 浮島の森とは、正式名称を新宮藺沢浮島植物群落と言い、新宮市の真ん中にあって、湧水にぽっかりと浮かぶ植物の森であり、周囲の面積約五千平米、植生はヤマモモ、シダ等百三十種類に及び、特に暖地、寒地両方の植物がそろって生育をしている、まことに貴重な島と申しますか森でございまして、このため昭和二年、国の天然記念物に指定されてございます。
 周辺の都市化が進み、下排水がこの島を覆い、森を浮かべていた地下水にも変化があらわれてまいりました。この結果、先ごろ新聞等にも報道されてございましたように、植生にも影響が見られ、貴重な生態が崩れつつあります。新宮市といたしましてもその保存は大変重要なテーマでございまして、市当局はもとより地元の有志の方々による研究、対策が積極的に行われているところでございますが、環境の悪化は対策を超えたスピードで進んでございます。さきの熊野フォーラムにおいても、「熊野は、病めるものの再生の地である」との指摘が多くの先生方から語られました。今、私たちは、目の前に病める浮島の森を抱えております。この森の再生こそが熊野の真価を問い、地域の良心を問い、和歌山県の良識を問いかけているのであります。
 先ほども申し上げたように、この森の生態はほかに類を見ない環境によって支えられております。この対策は、水質、水温にまで及び、極めて慎重を要すると同時に、早急な手当てが求められているのであります。対策がおくれればおくれるほど取り返しのつかない結果を迎えることになります。私たちは、貴重な物と心を失うこととなります。事態は、今や地元を超え県のレベルにあると申せましょう。和歌山県の貴重な文化資源を保存するという観点に立って、まず本格的な学術調査の実施をお願いするとともに、抜本的、総合的な対策を早急に実施されるよう提案し、知事にこの問題に対するご所見をお伺いするものであります。
 次に、浮島の森と深いかかわりのある市田川、浮島川の浄化対策についてお尋ねをいたします。
 私たちを取り巻く自然環境は、近年、次第にその本来の姿が損なわれつつあるものが少なくありません。また、特に都市とその周辺においては、健康な人間生活を支える環境条件が次々と狭められ、あるいは失われつつあります。こうした社会的な背景は、残存する貴重な自然空間として人々の目を改めて河川環境に向けさせ、環境的価値の見直しと再認識を促すこととなりました。豊かな未来を築くためには環境の保全整備が必要であります。水質浄化を考え、さらには下水道整備をも考えねば環境の保全整備はおぼつきません。
 新宮市における公共下水道整備の整備計画、並びにその総事業費とそれに対する地方負担額はどうなっているのか、またどのように指導されるのか、お伺いをいたします。あわせて、本県全体の下水道整備を進めるに当たりどのような将来計画を持っておられるのか、お伺いをいたします。
 新聞報道によりますと、市田川の浄化事業は近畿地建紀南工事事務所が十一月から着手するとのことであります。このことは、私も以前から強い要望を踏まえてお願いをしてきたところでありますが、近畿地建紀南工事事務所による特段の配慮をいただき、進められてきたものであります。この計画は、新宮川本川から浄化用水を導水して希釈浄化するものであります。この国の浄化計画とともに、県としては市田川、浮島川の浄化整備をどのように考えておられるのか、土木部長にお尋ねをいたします。
 次に、学校週五日制についてでございます。
 国民の注目を浴びながら、学校週五日制が去る九月十二日からスタートいたしました。このことについてはマスコミでもいろいろな角度から取材をし、九月十二日当日に開放された学校のグラウンドや体育館における子供たちの活動状況や公立施設の利用状況、各地の催しなどについて報道されてございます。
 教育長は、これまで本会議等において、「学校週五日制は、子供が家庭や地域における生活時間を多くして、できるだけ幅広い体験の機会をふやすことにより、豊かな道徳性と社会性を養い、心豊かでたくましく生きていくことを目指すものである。そのためには、学校、家庭及び地域社会相互の連携をより密にして、それぞれの教育力を高めることが大切である」との見解を表明されております。県民の多くは、スタートしたばかりのこの教育上の大きな改革が国民の間にスムーズに定着し前進していくのかどうか、強い関心を持っております。
 そこで、教育長に次の点についてお伺いをいたします。
 一点目は、当日の各学校や社会施設の対応状況はどのようであったのか、二点目は、子供の学力について、保護者などから心配や不安が出されている中で、県教育委員会はどのような指導をしてきたのか、三点目は、県下で十四の調査協力校を指定していると聞いているが、それらの学校の状況はどのようであったのか、四点目は、本制度がスタートしたばかりであり、その成果なり課題が整理されていない現時点にあって時期尚早の感なきにしもあらずでありますが、巷間議論されている学校週五日制の月二回以上の実施について教育長はどのように考えているのか、以上お伺いをいたします。
 続いて、スポーツ振興についてお尋ねをいたします。
 現在、山形県において「べにばな国体」が開催されており、本県の代表選手の皆さんが力いっぱい競技を展開している最中であります。選手の皆さん一人一人が郷土の名誉を担って奮闘しておられる様子をテレビ、ラジオ、新聞等で拝見しているわけでありますが、ここ数年、国体の成績が低下しつつあり、スポーツ県和歌山として長年高い実績を上げてきたことを考えると一抹の寂しさを禁じ得ません。また、そのことが青少年、ひいては県民生活全体の活力の低下につながることを懸念するものであります。スポーツは国体だけでなく、第三回全国スポレク祭の開催を契機として生涯スポーツの振興にも力を入れておられることは承知しておりますが、競技スポーツの成績も上がってこそ生涯スポーツに弾みがつき、県民の生活に活力が生まれるものと考えるのであります。
 そこで、近年の国体の成績を踏まえて、和歌山県のスポーツの振興についてどのような計画を持っておられるのか、お考えをお伺いいたしたい。
 また、聞くところによりますと、二巡目の国体誘致が取りざたされているようでありますが、本県のスポーツ振興を考える上で大きな影響力を持つ国体の誘致について、できるだけ早い時期に実現できるよう選手強化や施設の整備等、諸準備を進める必要があると思いますが、教育長のお考えをお尋ねいたします。
 最後に、県立看護婦養成所の設置についてお伺いいたします。
 近年、我が国における医療情勢は、医療技術の高度化あるいは専門化、がん、心臓病、脳血管疾病等の急増を初めとする疾病構造の変化など、ますます複雑多様化していることはご承知のとおりでございます。さらに、他国には類を見ない急激な高齢化社会の到来に向けて、保健医療福祉サービスを提供するマンパワーの確保がますます重要な課題となってございます。とりわけ、看護職員の不足は今や全国的な社会問題となっていると申し上げても過言ではないと思うのでございます。
 紀南地方においても同様でございまして、看護婦の不足は今や慢性的な問題となっております。私どもは、以前から紀南地方へ看護婦養成所の設置をお願いしてまいったところでございます。仮谷知事におかれては、このたび新宮市蜂伏に一学年定員四十名の県立看護婦養成所を設置する議案を提出していただきました。心から厚くお礼を申し上げ、あわせて県が計画している看護婦養成所のねらい、施設の内容、規模、建設のスケジュール等についてお伺いするものでございます。
 またこの際、知事に要望しておきたいことがございます。ご承知のとおり、新宮市には新宮市医師会附属准看護学院がございます。これは定員三十名で、当地方唯一の看護職員養成所であり、新宮市を初め三重県南牟婁郡を含む近隣の医療に大きく貢献をしていることは事実でございます。本学院の存在は、当地方にとって貴重なものでございます。また、この学院の学生は従来から新宮市民病院で実習を行っておりますが、県立看護婦養成所を設置していただくことにより准看護学院の学生の実習に影響がないのか、両校の学生の実習が可能なのか、その点大変心配をしているわけでございます。この点について影響が及ばないように、知事に特段のご配慮をお願いする次第でございます。
 以上で、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○副議長(大江康弘君) ただいまの下川俊樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
  〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 下川議員にお答え申し上げます。
 熊野地方の振興について質問をいただいたわけでございます。第一点の、熊野地域全体の将来ビジョンの策定についてでございます。
 お話のように、現在、社会が求めつつあるものを考えるとき、熊野地域の新たな展開への大きな可能性を実感するものでございます。ともすれば経済偏重だった社会が、ゆとりや心の豊かさを求める時代に変わりつつあります。まさに、熊野地域の持つ資源や特性が脚光を浴びる時代が到来しつつあるのではないかと考えられるわけでございます。これまでもその資源に着目して、日本文化デザイン会議の誘致、古道ピア、熊野フォーラムの開催等、内外に広くその魅力をアピールしてきたところでございます。これらを受けての地元における取り組みも芽生えつつあるということで、非常にうれしい限りでございます。
 今後とも、交通基盤や産業対策を中心とした定住条件の整備を積極的に進めていくとともに、国民的な財産とも言える熊野のすばらしい資源を十分に生かした地域活性化のあり方について、地元の皆さんの参画を得ながら、新しい視点、長期的な視点からそのビジョンづくりに取り組んでまいりたいと考えており、現在その手法をどうするかの検討を進めているところでございます。
 いずれにいたしましても、二十一世紀に向けて生活大国の一部を担えるような地域を目指して、夢と希望に満ちたビジョンを策定し、国、民間等の力をおかりしながらその実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、熊野学研究センターでございます。
 ご承知のように、専門的分野からご意見、ご提言をいただくために、熊野の歴史、文化に造詣の深い諸先生方に集まっていただいて、第二回「熊野を語るフォーラム」を八月末に開催いたしたところでございます。諸先生方から、熊野学研究センターの基本的な性格について貴重なご意見を承りました。そしてまた、議論の中にもあったわけでございますけれども、熊野文化を世界に向けて発信する拠点としての位置づけ、研究機能はもとより、一般を対象とした展示機能、体験学習機能、文化交流機能等を持たせて、熊野をわかりやすく紹介できる博物館的な施設の建設に向けて具体的に研究を進めてまいらなければならないのではないかと考えております。
 しかし、熊野学といっても、これは各分野にわたる、学問的で幅広い総合的な研究でございます。そのスタッフについても、まず日本や世界に通ずるような人をリーダーとした形で考えるとともに、その後進の育成、充実を図っていくことが極めて重要でございます。ですから、そのリーダーをだれにするかということが先決でございまして、そうした人を得るように努力しつつ考えてまいりたいと思っております。ただ、残念に思っておりますのは、熊野大学を主宰して熊野のために大変努力していただいていた中上健次さんが亡くなられたことでございます。この人がおられたならば大きな相談相手になっていただけたと、残念に思うわけでございます。
 それから、運営面の問題でございます。地元のご意見、ご協力をいただきながら、県としても、何をなすべきかということを十分見きわめて取り組んでまいりたいと思っております。
 また、議員からご提言ございましたイベントの開催、各地との交流等についても、熊野学研究センター構想の具体化とあわせて研究してまいりたいと考えておるところでございます。
 次は、浮島の森でございます。
 私も、浮島の森は全国的に見て貴重な植物群落であり、県の宝であり、非常に関心を持っておるわけでございます。
 現在、国、県、市で環境整備に取り組んでおるわけでございますけれども、お話のように、これからなお一層大切に保存して立派な形にしていかなければならないと思っております。詳細については、教育長から答弁させていただきます。
 次に、県立看護婦養成所の設置でございます。
 お話ございましたように、かねてから東牟婁、新宮地方より看護婦養成所の設置を訴えられておったわけでございます。また、高齢化、福祉化が進む中で、保健、健康の面、福祉行政の面からも、看護職員の確保ということが県政において非常に重要な課題でございます。そうした意味において、このたび新宮地方に看護婦養成所の設置を進めているところでございます。
 その施設の概要でございますけれども、一学年定員四十名と考えており、校地面積五千八百平方メートルに教室及び体育館等、校舎面積三千平方メートルを建設するものであります。本年度は、用地買収並びに実施設計を行い、平成五年度に建設に着工し、平成七年四月の開校を予定しております。
 なお、お話ございました地元の准看護学院との実習の問題でございますけれども、この点については私たちも十分配慮して進めてまいりたいと考えております。
○副議長(大江康弘君) 土木部長山田 功君。
  〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 河川浄化及び下水道整備についてお答えをいたします。
 新宮市の公共下水道整備については、新宮と三輪崎の二処理区として計画されており、事業費としては総額約二百七十七億円、うち地方負担額は約百六十八億円となっております。なお、地方負担額のうち約百五十三億円が起債対象となる予定であります。
 下水道整備は多額の費用がかかるため、新宮市に対して段階的な財政計画により早期に事業着手を行うよう指導しているところでございます。また、県全体の下水道整備については、平成七年度を目途とする第七次下水道整備五箇年計画を促進することはもとより、現在、各市町村で作成している下水道整備基本構想に基づいて、地域の実情に応じた下水道整備を促進してまいりたいと考えております。
 次に、市田川、浮島川の浄化についてでございます。
 これらの河川の水質は、生活排水、農業排水などが流入すること、感潮区間のため河川に堆積物がたまりやすいことなどにより悪化してきております。このため平成三年度より、国、県、市から成る市田川総合河川対策検討会において、水質浄化対策を含めた河川環境の整備を目的とした総合的な計画の検討を進めてまいりました。国においては、この一環として、本年度より市田川への浄化用水導入事業に着手することにしております。県といたしましても、関係機関と十分協議しつつ、浮島川の浄化整備に向け取り組んでまいりたいと存じます。
○副議長(大江康弘君) 企画部長佐武廸生君。
  〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) JRくろしお号のグレードアップについてお答えいたします。
 交通体系の整備については、道路や南紀白浜空港のジェット化整備、さらには下川議員に大変お力添えをいただいております新宮川のヘリポートの整備など、関係機関の協力をいただきながら交通基盤の充実に取り組んでいるところでございます。
 議員ご指摘の新型車両の導入についてでございますが、特急くろしお号については、昭和五十三年十月の紀勢本線の電化に伴い、スピードアップ等を図るため振り子式の新型車両が投入されたところでございます。その後、平成元年七月の新大阪駅、京都駅乗り入れを契機として、パノラマグリーン車の導入、さらには座席の改良等も随時行われ、車両のグレードアップや乗り心地の向上が図られてまいったところでございます。こうしたことについては、JR西日本と随時意見交換の場を設け、要請してまいったところでございます。しかしながら、なお多くの解決すべき課題もございまして、今年度、調査検討委員会を設け、車両関係の専門家の方にも参加をいただきまして、一層の高速化や快適性の向上を図るという観点から検討が行われてございます。
 今後、この調査結果を踏まえ、JR西日本を初め関係機関とも協議しながら対応してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題の三点についてお答えいたします。
 国指定天然記念物新宮藺沢浮島植物群落は、新宮市の市街地に所在し、杉、ヤマモモ、アカマツなどの樹木が繁殖し、特に寒地性のヤマドリゼンマイ、ミズゴケ類や暖地性のシダ類が混生し、植物の生態や分布の上からも、また浮島という全国的に見てまれな地形をなしている、貴重な植物群落であります。
 新宮市において、昭和二十八年からしゅんせつ、囲さく構築、排水路工事等を実施してきたところであります。しかし近年、周辺の環境の変化、とりわけ都市化による地下水の減少や汚水の流入により、植物群落の生態に悪影響を及ぼしているのが現状であります。
 このため、文化庁の指導に基づき、新宮市において昭和六十三年から専門家から成る浮島植物群落調査委員会を組織し、気象、地下水等の環境調査、花粉分析、植物相の変遷等について調査研究してきているところであり、県教育委員会も参加してございます。
 この調査結果の方向づけに基づき、現在、新宮市において、建設省、県の土木部、保健環境部、教育委員会、新宮市の関係部局から成る浮島植物群落保存対策協議会を設けるとともに、市田川総合河川対策検討会においても、新宮川等からの水の導入方法や汚水措置、排水施設等の整備や植物群落の保護について総合的に検討しているところであります。また新宮市において、本年度から減少した植物の保護増殖や環境改善工事についても着手することとなっております。
 今後、浮島植物群落調査委員会の方針に基づき、管理団体である新宮市と協議しながら具体的な方策を進めてまいる所存であります。
 次に、学校週五日制についてでございます。
 学校週五日制最初の休業土曜日であった九月十二日当日の状況については、幼稚園、小学校、中学校、高等学校のほとんどで、校庭、体育館、図書室等の学校施設を開放いたしました。これらの学校施設で活動した子供たちは、合わせて約六千八百人でございました。また特殊教育諸学校においても、家庭や地域社会で主体的に活動することが困難な子供たちを対象にして、体育館、プール、校庭等を開放し、五十人余りの子供たちがトランポリンや水遊び等を楽しみました。
 子供たちの指導については、幼稚園や小・中学校では、PTAの役員、管理職、教職員のボランティアの協力が得られました。特殊教育諸学校では、県教育委員会が委嘱した指導員や保護者、教職員等が対応いたしました。
 また公共施設等の開放については、県立の紀伊風土記の丘、博物館、自然博物館、体力開発センターを無料開放するとともに、県下の市町村の公民館、歴史民俗資料館等の社会教育施設を開放し、合わせて約七千人の子供たちが利用いたしてございます。
 自然博物館には約四百五十人が来館し、体力開発センターのプールでも約三百人が水泳を楽しみました。また、県の事業である子どもスポレクフェスティバルinこざに約五百人が参加したのを初め、家事手伝い、図書館利用、カヌー遊び、紀伊風土記の丘に登るなど、子供たちは家族との触れ合いを深めたり、公共施設等を利用したり、郷土の自然や伝統文化財に触れるなど、主体的にさまざまな過ごし方をしてございます。
 次に、学校週五日制と学力の問題であります。
 このことについて、これまで教育水準の維持向上を図るため、子供の学習の負担感に配慮しつつ、学校裁量の時間の活用や学校行事等の精選、短縮授業の取り扱いの見直しなどにより授業時間の確保に努めるとともに、教材等の精選、指導内容の改善や指導方法等の工夫を行うよう指導してきております。
 月二回を休業日とする県下の調査研究協力校の状況については、事前に保護者や児童生徒に学校週五日制の趣旨の徹底を図るとともに、いきいきカードやふれあいカードをつくるなどして創意工夫を凝らし、休業土曜日を過ごすよう指導を行っております。
 子供たちは、グラウンド、体育館等におけるスポーツやゲーム、また開放講座でのワープロ教室や手芸教室に参加するなどして有意義な休日を過ごしたとの報告を受けてございます。
 学校週五日制については、これまで子供たちのさまざまな活動を支えるための指導員やボランティアの養成、施設、設備のあり方等について研究してきたところでございます。
 今後、月二回以上段階的に拡充していくことについては、まず月一回の実施状況を分析して諸課題を明らかにするとともに、月二回実施している調査研究協力校の調査結果を踏まえ、国の動向等も見守りながら慎重な対応が必要であると考えてございます。
 次にスポーツの振興については、あすを担うたくましい青少年を育成するとともに、活力ある県民生活を実現する上で重要な課題であると位置づけ、競技スポーツと生涯スポーツの振興に取り組んでいるところであります。
 黒潮国体開催から二十年を経過したこともあり、現在、県スポーツ振興審議会に二十一世紀を展望した本県のスポーツ振興方策について諮問しているところであります。諮問の内容としては、生涯スポーツの振興方策、競技力の向上方策、スポーツ振興に係る諸条件の整備などがあり、その中で指導者の養成、スポーツ施設の整備、スポーツ振興のための財源確保の方策など、総合的な観点から審議いただいているところでありますので、答申をいただいた後、その内容を踏まえて具体的な振興方策を進めてまいる所存であります。
 また二巡目国体の誘致については、昨年の九月県議会で知事の答弁がありましたとおり、議員各位のご協力を得ながら、誘致に向けて諸条件の整備を進めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(大江康弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(大江康弘君) 以上で、下川俊樹君の質問が終了いたしました。

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